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金田一「犯人は、この中にいる」唯「え……」#1 【ミステリィ】





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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 21:44:56.92 ID:8UtbYjMgO

澪「わ、私たちの中に……」

律「犯人が……」

紬「いる……」

唯「……」

美雪「ほ、本当なの? はじめちゃん」

律「だ、誰なんだよ!」

金田一「それは……まだわからない。けど、必ず暴いてみせる」

金田一「ジッチャンの名にかけて」

……。





4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 21:46:07.56 ID:8UtbYjMgO

……。

唯父「じゃあ、いってくるよ」

唯母「またお留守番、お願いね」

唯「うん、いってらっしゃい」

憂「気をつけてね」

唯父「はははっ、大丈夫だよ」

唯母「そうよね。うふふ」

二人「?」



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 21:48:49.87 ID:8UtbYjMgO

えらくニコニコとした二つの笑顔が、玄関先に並んでいる。

それを見つめる姉妹……。

両親二人で海外旅行に出かける事。

姉は、いつもの事だと思い特別何の感情も浮かべずにその二人を見つめていた。

唯(私たちも、もうすぐすれば合宿があるんだもん)

唯(今回は憂や純ちゃんも一緒で……とにかく盛りだくさんな合宿なのです)

ふふっ、と誰にも気付かれないように姉は小さく笑った。

目の前にいる、二人は……その笑顔のまま玄関から出ていった。

これでまた、隣にいる妹と一緒に過ごすいつもの時間が始まるんだ、と唯は思った。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 21:50:02.83 ID:8UtbYjMgO

唯(早く合宿の日にならないかなあ)

誰もいなくなった玄関の後ろからは、付けっぱなしにしたテレビの音声が聞こえている。

『続いてのニュースです。一部上場の……コーポレーションの……』

……経済がどうとか会社の株がどうとか。

合宿を目前に控えた女子高生にとっては、どうでもいいニュースが玄関にまで響いていた……ような気がする。

唯の耳には、もうその音は届かない。

唯(楽しみだなあ、合宿)


これが合宿の始まる二週間前の事だった。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 21:55:43.46 ID:8UtbYjMgO

二週間後。

佐木「せんぱ~い、早く来て下さいよ」

金田一「ぜぇ……ぜぇ……ま、まっちくり~、もう……つかれ……」

美雪「もう、情けないわね。そんな体力で沢登りがしたいだなんて」

金田一「う、うるへ~。元々は佐木と二人で来る予定だったのに……なんで美雪までついてくるんだよ」

美雪「そんな情けない姿が、簡単に想像できちゃうからですっ」

金田一「お前な……」

佐木「お、先輩いい表情ですよ」

金田一「佐木……お前もビデオまわしながら、元気なもんだなぁ」



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 22:02:26.86 ID:8UtbYjMgO

美雪「……にしても、沢登りっ言うよりは谷を見ながら散歩してる感じね」

佐木「いざとなったら、バスもありますからね。この辺はあまり人も通らないみたいで、一日に一本のバスしかありませんけど……」

美雪「ふ~ん。でもこんな急な崖ばっかの奥地でも、ちゃんとバスは通っているのね」

金田一「……っくしょう。元々はレジャーに来たお姉ちゃん達をナンパする予定だったのによ」

金田一「美雪がいる、おまけにこんな山奥じゃあ、ナンパどころか、観光だって……」



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 22:07:19.65 ID:8UtbYjMgO

佐木「まあ、半分は予定無しの行き当たりばったりなプランでしたからね。人がいないのも仕方な……」

金田一「ん、雨……か」

美雪「あら大変。雨ガッパ着ないと」

金田一「お、美雪。俺にも雨具頼むよ」

美雪「え? はじめちゃんの分なんて持ってないわよ。甘えないの」

佐木「先輩、何も持って来なかったんですか?」

金田一「……」

美雪「……もう、だったら雨宿り出来そうな場所を探しましょう」

金田一「探しましょうったって……こんな森の中まで来たら建物なんて……」

ザーッ。

佐木「わ、わ、カ、カメラカメラ!」

金田一「降ってきたな……」



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 22:11:45.61 ID:8UtbYjMgO

美雪「……あれ、ねえ。あそこに明かりが見えない?」

金田一「へっ?」

美雪「ほら、あの……木の奥に」

佐木「本当だ、玄関に明かりが灯ってる。誰か住んでるんですよ!」

金田一「こんな奥地に民家ね~……大方、どっかのお金持ち様の別荘かなんかじゃないのかね」

美雪「このまま濡れてるよりマシでしょ。さ、行くわよはじめちゃん」

金田一「へいへい。ま、優しいお姉さんがいる事を期待して……」

美雪「……馬鹿言ってないで行くわよ」

金田一「い、いてて! み、美雪。耳を引っ張るなって、わ、わかったから……っ!」

佐木「……♪」ジー



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 22:17:36.46 ID:8UtbYjMgO

ピンポーン。

金田一「……」

ピンポーン。
ピンポーン。

佐木「留守ですかね」

金田一「そんなはずねーだろ。窓からも明かり漏れてるしよ」

美雪「……別荘。ペンションみたいな感じね。ここ、お店かしら?」

ピンポーン。

金田一「なんにしてもよ~、誰か出てきてくれないと寒くて凍死しちま……」

『……あ、の。ど、どちら様でしょう』

美雪「あ、すいません。実は私たち、雨宿りがしたくて……」

『ま、まあ。そうですか。そういう事なら……少々お待ち下さい!』

金田一「おい、佐木。可愛らしい女の子の声だったぞ。こいつは俺たち、運がよかった……」

佐木「……美雪先輩、しっかりこっちみてますよ」



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 22:23:31.65 ID:8UtbYjMgO

ガチャッ。

紬「あ、あの。雨宿りですか」

美雪「あ……はい。雨が止むまで、こちらの方にお世話になっても……」

紬「そうですか。それはお困りでしょうね」

美雪(うわあ、綺麗な人。髪の毛も金色で……お嬢様ってカンジ)

紬「……あら、そちらの方は顔にお怪我をされているのですか?」

金田一「ひ、ひえ。だいじょうぶれしゅ……」

佐木「先輩、全力ビンタなんていい絵が撮れましたよ」

金田一「佐木……うるへーっての」

紬「……くすっ。とにかくあがって下さい。すぐにタオルを用意しますから」

佐木「お邪魔しま~す」



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 22:31:52.46 ID:8UtbYjMgO

一階中央・団欒室

唯「あ、おかえりムギちゃ……って、うわあ団体さんだ~」

律「おっ、なんだか一気に賑やかになったな~」

紬「細かい話は後よ。今はお客様にタオルを貸してあげないと……」

憂「はい、タオルですよ」

紬「あ、ありがとう~憂ちゃん。さあ、どうぞ」

美雪「あ、ありがとうございます」

金田一「ど、どうも……」

金田一「お、おい佐木。こ、この状況は……」

佐木「先輩。今度は右だけじゃなくて左頬にも紅葉マークがついちゃいますよ」



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 22:37:52.33 ID:8UtbYjMgO

金田一(そ、そうは言っても……)

梓「……こんな所にお客さんなんて珍しいですね」

純「この辺て観光する場所あるのかな?」

紬「ん~、あまり人がいない静かな別荘を選んだんだけど……」

美雪「あ、あの。もしかしてお邪魔でしたか? だったら早めに出発して……ね、はじめちゃん」

金田一(女の子がいっぱいって、ええもんやなあ……うんうん)

美雪「……はじめちゃん」

金田一(そうだなあ。みんな可愛いけど俺の好みで言ったら……)

美雪「はじめちゃんてば!」

金田一「は、はいっ!?」

美雪「……話、ちゃんと聞いてた?」



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 22:45:53.97 ID:8UtbYjMgO

紬「あ、迷惑とかじゃないんです。私たち、ここで合宿をしていたんですよ」

金田一「合宿?何か部活の……」

唯「私たちはけいおん部なんだよ!」

美雪「けいおん部って、楽器の?」

紬「はい、今日が合宿初日で……」

佐木「それだったら、なおさら邪魔も出来ないですね」

律「ああ~、ウチはそこまで根つめて練習しないから大丈夫だよ」

梓「大丈夫じゃありません! 律先輩、部長なんだからちゃんとして下さいよ!」

純「あ、梓が怒ってる……」

紬「練習しないというのは、ともかく……」



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 22:50:42.59 ID:8UtbYjMgO

紬「雨が止むまで、ゆっくりしていって下さい」

唯「そうだよっ! せっかく知り合えたんだからお話しようよ~」

律「お~お~、さすが天然な唯ちゃん。それに比べて……」

澪「……」

律「さっきから何も喋らない澪しゃん」

澪「……う、うるさい」

美雪「え、えっと」

律「この子人見知りでさ~。まあ、あんま気にしないで下さいな」

澪「……」

紬「ふふっ、とりあえず自己紹介からね」



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:02:37.84 ID:8UtbYjMgO

……。

律「へえ、二人とも高校二年生かあ~」

唯「あ、じゃあ一応私たちのが先輩だね!」

梓「……そんな事で鼻息荒くしないで下さい」

律「あ、でも敬語とか先輩とか気にしなくて大丈夫……ですわよ」

澪「律、意識すると変になるぞ……」

憂「ふふっ。さすがに私たちは気を遣いますけど、ね」

佐木「ああ、それなら僕も同じです。気兼ねなく話過ぎてもどうも……」ジー

紬「……あら、そのカメラ。今一番新しいタイプのですよね」

佐木「え! わかりますか?」



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:11:36.73 ID:8UtbYjMgO

紬「はい」ジー

そう話した紬の左手に、いつの間にかビデオカメラが握られていた。

佐木「そ、それは! 次の春に発売されるはずの最新モデル! ど、どうしてここに……」

唯「ムギちゃんちはお金持ちだからね。この別荘だって、ムギちゃんの持ち物なんだよ!」フンス

梓「いや、唯先輩が威張んないで下さいよ」

紬「……ふふっ」

金田一「はあ、本当にお嬢様の別荘だったわけね」

律「……にしてもさあ」

律「その隣の男の子、カレシ~?」

美雪「!」

澪「か、か、かれ……!」

梓「り、律先輩。いきなり何を言うんですか!」

律「いやあ、だって考えてもみろって」



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:19:13.50 ID:8UtbYjMgO

律「こんな所に男女二人……付き合ってなきゃこれないってば」

紬「ま、まあ! そうなんですか!」

美雪「そ、そんなことないですよ。そ、それより!」

純(あ、今ちょっと嬉しそうな顔した)

美雪「み、皆さんはけいおん部なんですよね。だったら何か演奏聴かせて下さいよ!」

佐木「あ、それいいですね」ジー

澪「え、演奏!」

律「マジ?」

梓「練習の時間でちょうどいいじゃないですか。やりましょうよ!」

澪「で、でも……恥ずかしいよ」



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:23:43.27 ID:8UtbYjMgO

紬「ふふっ、じゃあこのビデオで私たちを記録に残して貰わないと。えっと、佐木さん、お願いできますか?」

澪「ムギ!」

唯「よ~し、頑張るぞ~」

澪「ゆ、唯まで……」

純「ああ、生で練習してる所が見れる……頑張って下さいねっ!」

澪「うう……」

律「……観念した?」

澪「わ、わかったよ。やるよ……」

律「よ~し。じゃあみんな娯楽室に移動~」

澪「うう……」

美雪「なんだか、楽しそうな部活ね」

金田一「ああ……そう、だな」



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:34:58.68 ID:8UtbYjMgO

娯楽室。

美雪「うわあ、すごい。ドラムにギターに……本格的」

金田一「スゲー……このギター、一体いくらするんだ?」

唯「ふふん、ムギちゃんのお陰で五万円で買えたんだよ!」

金田一「たかっ!」

律「それでも安くしてもらえたんだよ。普通に買ったらその六倍くらいの値段は当たり前で……」

金田一「……はあ、俺だったらそんな金、全部ゲームに消えちまうよ」

唯「お、ゲーマーですか。なんのゲームするのかな?」

金田一「……聞いて驚け。バイオ2ならナイフのみで……」

唯「ええっ、すごいよ~」

金田一「ぬわっはっはっ」

律「……なんか、変な所で気が合ったな」

純(ああ、こうやっていつも練習から脱線してるんだ)



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:40:15.40 ID:8UtbYjMgO

紬「じゃあ佐木さん、カメラを……って二つも持ちながら撮影は出来ませんかね?」

佐木「ああ、敬語じゃなくて大丈夫ですよ。カメラ二つは確かに辛いですけど……」

紬「んん~、じゃあ演奏しない……えっと、憂ちゃん」

憂「はい?」

紬「このカメラでみんなを撮影してくれない?」

憂「あ、いいですよ」

紬「ふふっ、お願いね。ここが録画で、ズームと……」

律「……おし、じゃあそろそろ始めるか!」

唯「お~!」


律「ワン、ツー、ワンツー……」

……。



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:50:26.04 ID:8UtbYjMgO

唯「……笑わないで、どうか聞いて」

佐木「……」ジー

憂「……」ジー

美雪「……すごいね」

金田一「あ、ああ」

美雪「こんな風に何かが出来るなんて、うらやましいな」

金田一「そうかぁ~?」

美雪「そうよ。はじめちゃんだって、勉強もスポーツも出来ないけど、推理力だけは誰にも負けないし……」

金田一「美雪さん。誉めるか落とすかどっちかにしてくれ……」

唯「想いよ~、と~どけ」

美雪「音楽、かあ……」

金田一「……」

娯楽室には楽しげなメロディーが響いていて……外で激しく降り続いている雨なんて、俺たちの耳には入らない。

演奏をしているメンバーも、それを聴いている他の人間も……この音をもう聴く事が出来なくなるなんて、思ってもいなかった。



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/29(土) 23:58:43.18 ID:8UtbYjMgO

二階・客室前廊下。

美雪「でも本当にいいの? いきなり三人も泊まっちゃうなんて……なんだか悪いわ」

紬「気にしないで、部屋なら余っているから」

金田一「よかった~、フカフカベッドで寝られるぜ!」

美雪「もう……少しは遠慮しなさい」

律「まま、気にしない気にしない。賑やかなのはいい事だ」

紬「ええ。それに……雨もまだ止んでないみたいですし。外を歩くのは危険よ」

佐木「僕もそう思います」ジー



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:03:07.96 ID:6idzxo5kO

美雪「じゃあ、お言葉に甘えて……」

憂「あ、お姉ちゃんこっち向いて~」ジー

唯「えへへ、ピ~ス」

純(いいなあ、各々楽しそうで)

梓「純? どうかした?」

純「な、なんでもないよ~」

純「……」

純(……あれ、なんか私だけ会話に入れてない?)

澪「……」

純(先輩みたいに、人見知りってわけじゎないんだけどな……)



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:07:32.24 ID:6idzxo5kO

二階・純の部屋

合宿二日目、午前0時。

純(……)

純(眠れないや)

純(シャワーでも浴びようかな)

純(……あ、でもどうせだったら一階の大浴場にしよっかな)

純(……うん、それがいい)

純(梓に連絡、は迷惑かな)

純(仕方ない、一人風呂といきますか)

純(バスタオルだけ持って、と)

純(よし)



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:12:34.22 ID:6idzxo5kO

一階・大浴場

午前0時15分

純(……はあ)

純(合宿に誘われて来てみたけど)

純(なんだろう、この疎外感)

純(うう……)

純「……ダメダメ、こんなんじゃ」

純「せっかくの合宿なんだもん。楽しまないと!」

純「そうだよ、まだあまり話してないけど……新しい友達だって出来たんだから」

純「えへへっ。うん、ポジティブに行かないと!」

純「……そろそろ、部屋に戻ろっかな」



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:20:43.49 ID:6idzxo5kO

階段前

午前0時28分

純「~♪」

トン。

トン、トン。

リズムに合わせて、木造の階段を上がる。

一階から上り、踊り場でクルリと体の向きを半回転。

この階段を上って、右に曲がって……手前から二番目の部屋が、私の戻る部屋。

純(早く寝ちゃおっと)

階段を、一歩、また一歩……軽い足取りで上がっていく。

段差がなくなり、右に……そう思った瞬間。

「……!!」

純(え……)

誰かが、視界に入ってくる。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:29:14.83 ID:6idzxo5kO

純(あ……)

そう思った一秒後には、その誰かが私の視界から遠ざかる。

上り終えたはずの階段を……私は。

その誰かを遠目に見ながら、背中に何もない空間を下りて……ううん、落ちていった。

ドッ。

頭の方から、鈍い音がした気がする。

音は、首の方からも聞こえたみたいだ。

純「……」

「……」

さっきまで私がいた階段の一番高い所には、じっとこっちを見ている一人の……。

ああ、私にはもう意識がありません。

もう何も、わかりません。

……。



54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:38:53.86 ID:6idzxo5kO

一階・団欒室

二日目、午前11時過ぎ。

金田一「ふわぁ~あ。おはよっす」

律「おっす、はじめちゃん~」

澪「り、律。その呼び方……」

律「こういうのは、フレンドリーな方がいいんだよ」

美雪「はじめちゃん、もうお昼前よ?」

金田一「ん~、てっきり誰か起こしに来ると思ったんだけど……ほら、合宿なら早起きが当たり前だろうからさ」

梓「……ウチは、その当たり前が通用しないんですよ」

唯「むにゅ……むにゅ……」

憂「お姉ちゃん、また寝ちゃってる」ジー

佐木「先輩もほっといたら寝ちゃうんじゃないんですか」ジー

金田一「うるへー。カメラマンは、バッテリーの心配だけしてろい」

澪「……あれ? そう言えば鈴木さんは」



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:46:37.98 ID:6idzxo5kO

律「んあ? そう言えば来てないな~。まだ寝てんのか~?」

紬「そろそろお昼ご飯だから、起こしに行った方がいいかしらね?」

憂「そうかもしれませんね」ジー

律「お~し。じゃあ唯隊員!」

唯「すぴ~……」

律「……いいや。澪、行こうぜ」

澪「う、うん、わかったよ」

律「てわけで、ちょっくらいってきま~す」



57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 00:52:22.44 ID:6idzxo5kO

五分後。

ドタドタ。

律「た、大変だ」

金田一「ん?」

美雪「一体どうしたの?」

澪「鈴木さんが……部屋にいないんだ」

梓「え?」

紬「いないって……バスルームは?」

律「一応見てきたけど、やっぱり見当たらないんだよ。部屋には誰もいなかった……」

金田一「……」

美雪「……は、はじめちゃん」

全体が沈黙する中で、雨がまた一段の強く窓を叩いた。

金田一「……手分けして探そう。この天気だ、外には出ないだろうから……」

美雪「じゃあ一階と二階で別れましょう」



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:01:40.11 ID:6idzxo5kO

一階には金田一と佐木が。

二階は女性部屋が殆どと言う事で、残りのメンバー(唯はソファーで熟睡)で探索する事に。

一階には中央の団欒室、そこから大浴場、調理場、客間、そして楽器が置いてある娯楽室の五部屋がある。

金田一「……と、一応色々探してみたものの」

佐木「見当たりませんね」ジー

金田一「ん~、隠れてそうな場所も探したし、後はやっぱり二階に……」

佐木「……あれ、先輩。ちょっと」

金田一「ん、どうした佐木」

佐木「……この階段の下に扉があるんですけど」

金田一「お、本当だ」

佐木「物置部屋かなんかですかね?」



59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:05:06.88 ID:6idzxo5kO

金田一「スペース的にはそうかもな。お~し」

ガチャッ。

金田一「!」

佐木「階段……ですね。地下に続いてるみたいだ」ジー

金田一「ううっ、さぶっ。なんだ、この冷たい空気……」

佐木「きっと地下だからですよ。ここに……いるんですかね?」

金田一「わからん。とにかく、探すしかない」

佐木「……」ジー



60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:10:48.75 ID:6idzxo5kO

金田一「さびぃ~!」

佐木「冷たいというより、冷気ですね。なんだろう、冷蔵庫でも入ってるんですかね」

金田一「うう……こんな所に隠れる訳はないよな……」

佐木「あ、もう階段も終わるみたいですよ」

金田一「……空間が開けた。ここは一体」

佐木「先輩、早く進んでくださいよ~」

金田一「ま、待て佐木。こう暗くちゃ足場が……って、押すなバカ!」

ガッ。

金田一「と、と……わっ!」



63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:17:29.66 ID:6idzxo5kO

佐木「先輩?! 大丈夫ですか?」ジー

金田一「い、いてて……何かにつまづいた……」

佐木「……あ、電気のスイッチありましたよ。ほら」ジー

カチッ。

純「」

佐木「う……」ジー

金田一「う、うわぁああああ!」

佐木「こ、これは」ジー

金田一「……」

冷気の中で、寝巻きと、タオルを体に巻いて横たわる彼女は……本当に眠っているかのようにそこにいた。

寒さに震える事もなく、ただ静かに目を閉じていた。




64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:25:38.94 ID:6idzxo5kO

一階・団欒室。

午後12時過ぎ。

梓「う……ぐすっ……」

律「……」

澪「……」

紬「……」

唯「えっと、本当なの? その……」

唯「……」

憂「お姉ちゃん……」

金田一「……」

美雪「はじめちゃん……」

律「ま、まあ……嫌な事故だった、な」

紬「……」

梓「ううっ……純……純っ……」

唯「あずにゃん……」



66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:32:54.11 ID:6idzxo5kO

紬「……とりあえず、警察と救急車は呼んだから。後は……」

律「……もう、合宿を楽しむ気分じゃないよな」

澪「鈴木さん……」

律「部長である、私の責任だ……どうケジメつければいいんだよ、クソッ」

梓「り、律先輩はっ……ぐすっ、わ、悪くなんかないですよっ……」

梓「わたしが……わたしが一緒にいてあげてたら……う、うわぁああん!」

澪「梓……」

憂「梓ちゃん……仕方ないよ」ギュッ

美雪「はじめちゃん……」

金田一(妙だ、なんか引っ掛かる)

金田一(あれは本当に……事故なのか……?)

……。

プルルルル。

プルルルル。



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:39:31.96 ID:6idzxo5kO

全員「!」

澪「で、電話か……び、びっくりした……」ガタガタ

ガチャッ。

紬「……はい、琴吹です。あ、警察の……え?」

紬「それは本当……ですか? わかりました、はい、はい……」

ガチャッ。

唯「ど、どうしたのムギちゃん?」

澪「け、警察は? 警察が来るんだろ?」

紬「それが……この豪雨でこの別荘までの道が崖崩れを起こしたらしくて……」

!?

憂「そ、そんな……」

紬「こんな場所じゃあヘリも飛ばせないし、道が復旧するまで私たちは……」

紬「この別荘に、閉じ込められた事になるわね」

金田一「……」



69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:47:57.03 ID:6idzxo5kO

佐木「それで、復旧にはどれくらいかかる予定なんです?」ジー

紬「最低でもあと三日は……雨が弱まらなければ、もっと長くなる可能性も……」

澪「ぐっ……ぐすっ……」

律「澪!」

唯「み、澪ちゃん。泣いちゃだめだよ~」

澪「だ、だってぇ……ぐす……」

律「……心配すんなって。ほら、手握ってやるから。そしたら少し落ち着くだろ……」

澪「りつ……りつぅ……」

唯「私も、ギュ~だってするしお菓子もあげちゃうよ。だから……泣かないで、ね?」

澪「ゆい……うわぁん……」

唯「よしよし」

美雪「……とっても仲がいいのね、みんな」

金田一「ああ……そう、だな」

梓(……)

梓(純……)



71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 01:58:04.91 ID:6idzxo5kO

二階・金田一の部屋。

午後14時5分。

金田一「……」

佐木「先輩、どうしたんです。難しい顔しちゃって」

金田一「……事件の事を、考えていたんだ」

美雪「え? だってあれは事故……」

金田一「みんなの手前、言えなかったけどな。どう考えても……不自然なんだ」

佐木「……どういう事ですか?」

金田一「考えてみろよ佐木。どうして彼女はあんな場所にいたんだ?」

金田一「それも、薄いパジャマ一枚で」



72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 02:04:23.05 ID:6idzxo5kO

佐木「それは……興味本位であの地下室を覗いて、そのまま……階段から転げ落ちてしまって……」

金田一「確かに、あれが普通の地下室ならそれもあったかもしれない。でも思い出せよ佐木、俺たちが初めてあの扉を開けた時の事を」


佐木『階段……ですね。地下に続いているみたいだ』ジー

金田一『ううっ、さぶっ。なんだこの冷たい空気……』



佐木「あっ!」

金田一「そう、扉を開けただけであれだけ冷たい空気を感じるんだ。そこからパジャマ一枚で階段を降りていくのは、どう考えても不自然なんだ」



73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 02:11:01.78 ID:6idzxo5kO

佐木「なるほど。でも、彼女……好奇心旺盛な感じでしたからね。もしかしたら、寒いくらいはへっちゃらで……」

金田一「いや、あの時の彼女に限って、それはあり得ない事なんだ」

金田一「彼女の体に巻かれていた……タオル」

佐木「……あ! バスタオル!」

金田一「そう。あれが毛布や膝掛けなら可能性もあるけれど……バスタオルを持ち歩いてあの部屋に行く事は、どちらにしろ不自然なんだ」

美雪「じゃあ、はじめちゃん……もしかして」

金田一「……でもな。本当に事故の可能性もあるんだ」

金田一「俺には……あのメンバーが殺人を犯すとはどうも考えにくい」

美雪「はじめちゃん……」

佐木「先輩……」



74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 02:15:07.81 ID:6idzxo5kO

金田一「あんな仲のいい姿を見てたら……さ」

金田一「……というわけで。今からちょっと現場を調べてくるよ」

金田一「何かあった時が、嫌だからな」

佐木「あ、じゃあ僕も行きます」

金田一「おう、ビデオカメラは心強いからな。バッチリ頼むぜ佐木」

佐木「任せといてください!」

美雪「……気をつけてね、いってらっしゃい」

金田一「あ、あと。さっきの事はみんなには秘密な。余計な心配かけたくねえからさ」

美雪「うんっ、わかってる」

金田一「じゃあ、また後でな」

バタン。

美雪「……はぁ」

美雪(……本当に、私出来ないなあ……こんな時に待ってるだけなんて)

美雪(はじめちゃん……)



75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 02:20:47.07 ID:6idzxo5kO

二階・階段

梓「……あ」

金田一「っと。梓ちゃんだっけ、どうしたのさ、階段で座っちゃったりして」

梓「……いえ、これ。純に持っていこうかなって思ったんですけど」

佐木「毛布?」

梓「純、ずっと寒い所にいるから……凍えて、風邪ひいちゃうから……」

梓「でも、でも……やっぱり純と向き合うのが怖くて……何も話してくれない親友と会うのはやっぱり……ううっ……」

金田一「……」

スッ。

梓「金田一、さん?」

金田一「心配すんなって。これは俺が純ちゃんに届けておくよ」

梓「で、でも、でも……」

金田一「あと、この毛布にくるまってるお菓子も一緒に、さ」

梓「金田一さん……」



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 02:26:04.81 ID:6idzxo5kO

梓「う、ううっ……あ、ま、また……泣かないって決めた、のにっ」

梓「純のために、笑おうって決めたのに……ぐすっ」

金田一「……純ちゃんはさ、多分お腹出したまんま寝ちゃう子だと思うんだ」

梓「え? ……ぐすっ」

金田一「だから、この梓ちゃんからの毛布をちゃんと巻いて眠ってもらえば……あっという間に風邪をひかない純ちゃんになるってわけ」

梓「う……く、ぐすっ、純。風邪ひかないでちゃんと眠りますよね……」ニコッ

金田一「ああ、梓ちゃんの毛布なんだから。きっと……大丈夫さ」

梓「うん……うん……」ニコッ



77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 02:34:36.10 ID:6idzxo5kO

地下室

佐木「先輩もいいとこあるじゃないですか」

金田一「……うるせー。あんなに泣かれちゃ、男失格だっての」

佐木「またまた~」

金田一「ったく……もう。さっさと調べて戻るからな」

佐木「は~い」

金田一「電気をつけて、と」

カチッ。

金田一(……被害者の様子は変わっていない)

金田一(階段のすぐ下に、転げ落ちた様子で横たわっている)

金田一(確かに、ここが現場にも思える、が……)

金田一(コンクリートの床には、血痕がほんの僅か飛び散っている)

金田一(頭部の損傷の割に……血が少なすぎる。これはやっぱり……)

金田一(……)

眠っている彼女に毛布をかけ、俺たちは階段を上がっていった。



80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 02:41:36.69 ID:6idzxo5kO

一階・中央団欒室

午後19時

唯「……」モグモグ

澪「……」モグモグ

梓(純……もう、一緒にご飯は食べられないの?)

次第に、自分の中に……「どうして」という感情が沸いてくるのがわかる。

どうして純はあんな所に行ったんだろう。

どうして、私に何も話してくれなかったんだろう。

どうして、純じゃなきゃいけなかったんだろう。

そして……。

梓(……)

私の頭には、どうしても拭いきれない一つの考えがあった。

それは、時間が経ってきて気持ちが落ち着けば落ち着く程……私の中で大きくなった。

それは……。

梓(純は誰に……殺されたんだろう)



82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 02:46:21.43 ID:6idzxo5kO

梓(確信があるわけじゃない……)

梓(本当に事故なのかもしれない)

それでも、もしかしたら。

唯「……」モグモグ

物静かに食事をしている。

律「……」モグモグ

この中の誰かが。

澪「……」モグ

紬「……」

憂「……」

梓(純を……殺した)

金田一「……」モグモグ

あの三人も含めて、私は人を疑う事にした。

違っていたら謝ればいい。

もしそれがわかってしまったら、私は……どうするんだろう。




83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 02:46:46.84 ID:64rG/l5v0

あの死んだヤツが白黒になる容疑者覧思い出す





84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 02:51:03.71 ID:6idzxo5kO

梓「あ、あの。ムギ先輩」

!?

食事の手が止まり、全員が一斉に梓の方を向く。

梓(落ち着け……これだけ。これだけだから)

紬「ど、どうしたのかしら?」

ムギ先輩は少し慌てている。

多分誰に質問をしても、同じような反応で会話が進むんだろう。

例え……純を殺した犯人であっても。

梓「気になったんですけど……あの地下室って一体何なんですか?」

紬「ん……」

ムギ先輩は意外、ともとれるような顔をしていた。

私は誰にも気付かれないように目配せをし、全員の顔を盗み見る。



86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 02:57:15.42 ID:6idzxo5kO

梓「……」

誰も顔色を変える事なく、私を見ている。

私はムギ先輩の返答を待った。

紬「あの地下室は……食料貯蔵庫、いわば冷蔵庫ね」

梓「冷蔵庫、ですか?」

紬「ええ。普段の食料とは別に、非常用の食材を常備してあるの。中には冷蔵庫しかないから……他には何も」

律「……どうして鈴木さんはあんな所に」

紬「説明しておかなかった私が悪いのよ。まさか、あんな事に……なるなんて」

「……」

再び団欒室が沈黙に包まれた。

盗み見た表情の中で……金田一さんが何かを言いたそうだったが言葉を呑み込んでいたように見えた。

が、私はそのまま何も言えずに、二日目の夕食を終えた。



90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 03:04:39.71 ID:6idzxo5kO

紬「……じゃあ、お皿片付けちゃうわね」

美雪「あ、私手伝います」

紬「大丈夫よ。お片付けしたら美味しいお茶を用意するわね」

唯「わ~い、久しぶりだな~ムギちゃんのお茶」

律「……昼時に飲んだばっかだろ~」

澪「でも、ムギが出すお茶は本当に美味しいからな」

紬「ふふっ」

金田一「……へえ。お嬢様かと思ったらそんな事まで」

佐木「先輩も何度か飲んでるじゃありませんか。何をいまさら」ジー

金田一「いやあ、あんまそういうのは気にしない質で……」

美雪「……もう、はじめちゃんたら」

憂「くすっ」ジー

紬「ふふっ」



94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 03:10:44.99 ID:6idzxo5kO

二階・梓の部屋

午後22時過ぎ

梓「……」

梓(結局あれからお茶を飲んで……でも頭はモヤモヤしてばっかで)

梓(……よし)

地下室を調べに行こう。

もしかしたら何かわかるかもしれない。

そして、証拠を見つけて……純を……。

梓(でも、一人じゃちょっと怖いかも……)

夕食の後、雑談もそこそこに。

みんなが部屋に入ったのは21時くらいだろうか。

普段の合宿では考えられないくらいだが……。

梓(起こしちゃうと迷惑かな……でも……)

悩んだあげく、私は憂を誘って地下室に向かう事にした。



95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 03:18:09.14 ID:6idzxo5kO

梓『憂、起きてる?』

メールを憂の携帯に送ってみる。

彼女も起きていたのか、すぐに返事がくる。

憂『起きてるよ、どうかした~?』

梓『実はね……地下室を調べに行きたいんだ。でも一人じゃ怖くて……憂にちょっとだけ付いてきて欲しいな~、って』

……。

一分もしないうちに返事が来た。

憂『うん、わかった。ちょっと支度に時間かかるけど、いい?』

いきなりの提案、それでも付き合ってくれるのは本当にありがたい。

でも、私の気持ちは焦っていたんでしょう……。

梓『大丈夫だよ。じゃあ私先に行ってるから……準備ができたらまた連絡してね』

そう返信すると、一枚小さな毛布を肩に巻き、誰もいない廊下へ飛び出して行った。

目指すは、純のいる地下室。



97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 03:25:06.93 ID:6idzxo5kO

地下室

梓「……」

薄暗い階段を、ゆっくり、ゆっくりと降りていく。

冷たすぎるくらいの空気が、私の体に絡み付いてくる。

寒い、というより……痛い。

純に近づく度に、胸が締め付けられるような感覚がする。

階段を降りきった梓は、地下室の電気を付けた。

梓「純……」

丁寧に巻かれた毛布にくるまっているその膨らみの下に、彼女がいる。

梓(少しだけ、ごめんなさい)

毛布を退けると、そこには目を瞑ったままの親友の姿があった。

首が変な方向に曲がっている。

少し「ひっ」と言った金切り声が出てしまう。

梓「純……」



98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 03:29:41.90 ID:6idzxo5kO

その姿を見たら、また泣きそうになってしまう。

梓(でも……我慢我慢)

とりあえず、素人調査でも……本で読んだ知識だけを頭に、純の遺体を調べ出す。

梓(首が曲がって、頭に傷……。体は……打ったのかな。よくわかんないや)

梓(でも、ここの床に血があまり付いてないから……純はここで死んだんじゃないのかもしれない)

梓(そうだよね、こんな寒そうな格好でここに来ないよね)

梓(じゃあ……本当の犯行現場は?)



99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 03:35:35.04 ID:6idzxo5kO

梓(地下室、大浴場、娯楽室、……)

梓(全部の部屋、どこで殺したとしても発見は時間の問題)

梓(じゃあどうしてわざわざ地下室に純を運んだの?)

梓(……)

梓(それに、階段で死んだってなった場合……この別荘にある階段なんて)

梓(一階と二階を繋ぐ階段のみ)

梓(……ちょっと、そっちも調べてみようかな)

梓(おやすみ、純。また来るから、ね)

毛布をかけ直し、電気を消して階段を上がろうとしたその時。

上の方から、扉の閉まる音がした。



102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 03:44:55.01 ID:6idzxo5kO

梓(わ、真っ暗。憂かな……タイミング悪いなあ、まったく)

足音が、コツコツと上から下へ降りてくる。

私も上った階段を少し戻って、電気をもう一度付けようかとも思ったけれども……携帯の光を頼りに、階段の上の人影を照らす事にした。

梓「来てもらってごめんね。もう大丈夫だから上戻ろう?」

コツ。

コツ。

話しかけても、その足音は何も反応を返さない。

無機質な足音だけが、ただ地下室と私の耳にだけ響いている。

梓「う……憂?」



103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 03:50:57.46 ID:6idzxo5kO

その足音が、一歩、また一歩と近付いてくる。

そしておそらく目の前にいるであろう距離までそれが近付いてきた……次の瞬間。

梓「!!!」

誰かが……私の首を絞めてきた。

梓(こ、これ……ぐっ……)

苦しい。

声にならない。

本気だ、本気でこいつは私を殺すつもりなんだ。

真っ暗闇の中で、私は……結局、誰が私を殺して。

誰が純を殺したのか。

何もわからないまま……冷たくなった純に寄り添うように、眠るのでした。

梓「」
純「」

「……」



105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 03:57:55.60 ID:6idzxo5kO

一階・団欒室

三日目、午前1時。

律「うっ……」

澪「あず……さ……」

唯「ううっ……うわあああん……」

紬「どう……して……」

憂「……」

ガチャッ。

美雪「あ、ど、どうだったはじめちゃん」

金田一「これは……殺人だ」

「!」

律「さ、殺人……?」

紬「梓ちゃんが誰かに……」

澪「殺され……た」

金田一「……ああ」



107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 04:04:06.67 ID:6idzxo5kO

憂「……して」

唯「う、うい?」

憂「どうして……梓ちゃんが」

憂「さっきまでメールして、確かに生きていたのに」

憂「ねえ、どうしてなの……」

金田一「……」

金田一「憂ちゃん。辛いかもしれないけれど、そのメールの時の様子を教えてくれないかな」

憂「……」

唯「憂……」

憂「わかりました、お話します」

憂「メールが来たのは、私が眠ろうと思っていた頃です」




106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 04:01:04.45 ID:QVEJrDa60

今更だけどさわちゃんどした?



109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 04:11:16.93 ID:0//3Vf7S0

>>106
叙述トリックで、実はいるんだけど台詞が省かれている
気づきにくいけどもう一人いるような描写がこれから出てくるよ





113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 04:18:24.71 ID:6idzxo5kO

>>109
今回はいません。
トリックでも何でもないです……すいません



112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 04:16:56.99 ID:6idzxo5kO

金田一「……そうか」

憂「はい、これがそのメールです」

金田一「……この、最後のメール。22時30分の後は?」

憂「えっと、私着替えてから地下に向かったんですよ。で、ちょっと準備に手間取っちゃって……15分くらいかな」

金田一「準備を終えて地下室に向かったら……」



115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 04:31:54.62 ID:6idzxo5kO

憂「はい。梓ちゃんが倒れていて……私、みんなを呼びにいって……ううっ……」

金田一「他に、何か変わった事は?」

憂「そんな余裕なかったですよ……」

金田一「例えば、奥に誰かの雰囲気を感じたとか、純ちゃんの様子が変わっていたりとか……」

憂「……奥まで行く勇気は無かったですけど気配とかは感じなかったと思います」

憂「純ちゃんは……毛布がかかっていたくらいです。それ以外は何も……ううっ」

佐木「……先輩、今日はもう休んでもらった方が」ジー

金田一「そう……だな」

澪「……」ガタガタ

律「澪。私の部屋に来いよ……一人じゃ眠れないだろ?」



116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/01/30(日) 04:37:52.20 ID:6idzxo5kO

澪「……」コク コク

紬「じゃあ……休みましょうか」

唯「……みんな、戸締まりだけはちゃんとしようね」

「!」

その言葉に、全員が凍りついた。

金田一(そう……)

金田一(中野梓を殺した犯人は、この中にいるんだ……)

金田一(仮面を被って、この状況を見つめている)

明日からまた調査をするという事を考えると、眠気はすぐにやって来た。

部屋に戻ってから目が覚めて……三日目の朝が始まった。




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タイトル:
NO:4119 [ 2011/10/19 18:37 ] [ 編集 ]

金田一やらバーローやらの殺人犯はタイミング悪いよなー
まあ、金田一の場合は関係なくてもおっさんに呼ばれることがあるけど

タイトル:
NO:4420 [ 2011/11/20 21:35 ] [ 編集 ]

探偵ものの主人公って事件に出会しすぎだろって思って冷めるけど これ
みたいにけいおんの合宿に~って感じだと自然に読めるなぁ 軽音部もssの中で何百回も合宿してるしそりゃ殺人くらい起きても不思議じゃないよねとか思ったり とりあえず後編が気になる

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