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唯「ゾンビの平沢」★4 【ホラー】


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唯「ゾンビの平沢」★index




117 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 01:20:42.37 ID:oU4XMhGz0

★4
唯3年 7月17日

またあの日の夢を見た。
あの日から二ヶ月近くも経っているのに、
まるで昨日の事の様に鮮明に頭の中に残っている。

時計を見ると、目覚ましが鳴る10分前だった。
寝汗を掻いてしまったので、シャワーでも浴びよう。

シャワーの後、いつもの様に身嗜みを整え、朝食とお弁当を準備、
起きてきた憂と朝食を食べ、家を出る。

玄関を出ると、いつものように和ちゃんがいて、互いに挨拶をする。
今日も昨日と変わらない、いつも通りの一日が始まる、

この時の私はそう思っていた。

ふと空を見上げると、今にも雨が降り出しそうな程、
黒く厚い雲に覆われていた。

和「午後から激しい雨が降るそうよ」

大丈夫、私はギターに掛ける防水カバーと、傘を2つ持ってきていた。





118 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 01:23:10.79 ID:oU4XMhGz0

教室に入り席に座る。
窓から空を眺めると、雨がしとしとと降り始めていた。
外はまるで夜の様に暗く、それを見ていると私の心まで暗くなる。

早く音楽室に行きたい……。

私はさわちゃん先生が来るのをひたすら待っていた。

さわちゃん先生は、大体8時40分頃に私達の教室に来る。
しかし、今日は遅い。時計は既に9時を回っていた。

心臓の鼓動が早く、激しくなった。
あまりにも遅すぎる。
教室がざめき立ち始めた。

さわちゃん先生は、この学校の最後の教師だった。
そういう意味で、軽音部以外の生徒達にとっても彼女は特別な存在だった。

この場所が今でも「学校」であり続けられるのは、
彼女の存在があったからこそだと思う。
その彼女がいなくなってしまったら……。

私の体は震えていた。
私はどうにかしてそれを止めようとした。
しかし、私の体は荒波に漂う筏の如く、
自分の意思ではどうにも出来ない状態だった。



119 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 01:26:44.14 ID:oU4XMhGz0

突如、停電が起き、教室も街も光を失った。
その時私達は、この停電が一過性のものだと思っていた。

しかし、失われた光が戻る事は無かった。
その理由はすぐに想像できた。
ライフラインを管理する「ゾンビ」達に異変が起きたのだと。

現代の人間は、電気に依存し過ぎている。
それを失えば、私達の生活は根底から崩壊する。

それは人間の精神を破壊するのに十分過ぎる出来事だった。

外からあの声が聞こえてきた。
まるで地獄の釜の蓋が開いたように。
私の脳裏には、あの日の映像がフラッシュバックされていた。

実際、あの日の再現がこの教室で起こりつつあった。



120 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 01:30:34.97 ID:oU4XMhGz0

「世界は終わったんだ!」
「私達はもう終わりだ!」
「こんなのもう嫌!!」

教室から一斉に悲観と絶望に満ちた叫びが響いた。

和「……ここから出ましょう」

和ちゃんの一声で、私達は教室から出る事にした。
私はギターケースを背負い、席を立った。

「待ちなよ」

一人の生徒が私達の前に立ちはだかった。

「なんでお前だけ『人間』なんだよ……」

その子は私を睨み付けた。
その一言にクラス中の視線が集まった。
彼女のその言葉に含まれた意味を、皆即座に理解した。

『一人だけ人間のままなんて許せない』

『お前もゾンビにしてやる』



121 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 01:40:53.79 ID:oU4XMhGz0

律「そこを退けよ……」

律「退けって言ってんだよ!!」

りっちゃんが立ちはだかっていた子を突き飛ばした。
それが乱闘のきっかけになった。
軽音部とクラスの子達の総力戦となった。

りっちゃん達は服の内側に隠し持っていた武器を取り出した。
軽音部の皆はこういう時の為に武器を携帯していた様だ。
そんな事、私は全然知らなかった。

和「近づくな!!」

和ちゃんが叫んだ。初めて聞く怒声だった。
先頭にりっちゃんと和ちゃんが立ち、サバイバルナイフを振り回した。
躊躇している余裕など全く無かった。
二人のナイフがクラスメイト達を切り裂いた。

いちごちゃんとしずかちゃんと澪ちゃんは、私を取り囲み、
近付いてくる子達に容赦なく一撃を浴びせていた。
いちごちゃんは、アイスピックの様な物で相手の顔を狙い突き刺した。
澪ちゃんとしずかちゃんは、果物ナイフのような物を振り翳していた。

それらの一連の動きに、一切の無駄は無かった。
恐らく、私が知らない間にあらゆる事態を想定して、
行動の打ち合わせをしていたのだろう。

この中で私だけが無力だった。



122 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 01:45:03.47 ID:oU4XMhGz0

「おねえちゃん!」

入り口の方から、憂の叫ぶ声が聞こえた。
その手には、大きな出刃包丁が握られていた。
それで憂は近づく者を薙ぎ払い、いつの間にか私のすぐ横に来ていた。

梓「唯先輩!!」

扉付近にあずにゃんと純ちゃんが見えた。
二人はスタンガンの様な物を持っていた。

クラスメイト達は、あずにゃんと純ちゃんが私達の仲間である事を知っていた。
二人が教室に入ろうとするや、彼女達に数人の子が襲い掛かった。
咄嗟にスタンガンを押し付けたが、ゾンビの勢いに圧倒され、二人は押し倒された。

律「梓ぁぁぁぁぁー!!」

その時、アカネちゃん、三花ちゃん、ちかちゃんの3人が、
あずにゃん達に襲い掛かってる子達を引き離した。
そして、そのままその子達と取っ組み合いを始めた。

やっぱり3人は私達の味方だった。



123 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 01:48:34.12 ID:oU4XMhGz0

和「憂、唯を安全な所へ連れて行って! 早く!!」

憂「わかった、和ちゃん!」

憂は私の手を引っ張り走り出した。
あずにゃん、純ちゃん、澪ちゃんが私達に付いてきた。

和ちゃんとりっちゃんは、まだ教室内で戦っていた。
いちごちゃんとしずかちゃんは、アカネちゃん達に加勢していた。

奇声、悲鳴、怒号、それらが混じり合い、学校を覆い尽くした。
それに呼応するかの様に、1年生、2年生が次々と凶暴化し、私達の前に立ちはだかった。

先頭に憂が立ち、行く手を阻む者達を容赦なく皆殺しにした。
ある者には側面から首に包丁を突き刺し、ある者には心臓に包丁を突き立てた。

憂が一刺しすれば、刺された者は瞬く間に崩れ落ち、動かなくなった。

私達は音楽室に向かった。
憂は前方の敵を全て排除し終えると、
今度は素早く後方に移り、追ってくる者達に刃を振るった。



124 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 01:52:07.23 ID:oU4XMhGz0

私達は音楽室の前まで辿り着いた。
階段の下には、私達を追ってきたゾンビ達もいる。

あずにゃんと純ちゃんは、スタンガンを私に手渡し、
入り口に置いてあったバットを手に取った。

梓「唯先輩と澪先輩は中に! 私達はあいつらを食い止めます!」

そう言うと、私を音楽室に押し込め、ドアを閉めた。
澪ちゃんは即座にドアの鍵を閉めた。

梓「私達が言うまで絶対にドアを開けないで下さい!」

純「梓、来る!!」

梓「澪先輩、唯先輩をお願いします!」

そう告げた後、階段を下りて行く音が聞こえた。
ドアの向こうからは、金切り声が絶え間なく響いてきた。

澪ちゃんはソファーに座って震えていた。
怖がりの澪ちゃんにとって、今の状況は耐え難いものの筈だ。
澪ちゃんが私を守るんじゃない。私が澪ちゃんを守るんだ。

私は両手にスタンガンを持ち、音楽室の入り口を見据えた。



125 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 01:55:11.30 ID:oU4XMhGz0

澪「唯……ごめん……」

澪ちゃんが突然小さな声で私を呼んだ。

唯「何? 澪ちゃん?」

澪「唯……ごめんな……」

唯「澪ちゃん……どうして謝るの?」

澪「私は……もう駄目だ……もう耐えられそうにない……。
  私もあいつらと……同じになる……」

唯「澪ちゃん……」

私は、ソファーに座っている澪ちゃんの正面に移動した。
澪ちゃんは震えながら、制服の袖を捲り上げ、自らの右腕にナイフを突き刺していた。

唯「澪ちゃん! 何してるの!?」

澪「もう駄目だ……痛みでも抑えられないんだ……」

澪ちゃんの右腕の肉は削げ落ち、白い骨が見えていた。



126 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 01:59:01.97 ID:oU4XMhGz0

私はその傷を見て、全てを理解した。
何故澪ちゃんがベースを弾かなくなったのか。

弾けなかったんだ。

あの様子では、右腕の神経は完全に切断されている。

澪「私は弱い人間なんだ……律みたいに強くなれないんだ……。
  唯の事が大好きだったから、唯を傷付けない様に頑張った……。
  私がもっと唯を好きだったら……もっと頑張れたかもしれない……。
  ごめん唯……ごめんな唯……」

澪ちゃんは俯き、呻き声を上げた。

私の目から涙が溢れた。

あの痛がりの澪ちゃんが、血を見るのが怖い澪ちゃんが、
骨が見えるまで自分の腕を傷付けていたんだ……。
私を傷付けない為に、自分をこんなに傷付けていたんだ。
それなのに……それなのに澪ちゃんは私に謝るなんて……。

澪ちゃんはこんなに頑張ってくれた。私なんかの為に。

彼女が私に謝る事なんか何一つ無い。
むしろ私が謝らなければならないのに。



127 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:03:33.50 ID:oU4XMhGz0

私は澪ちゃんを抱きしめた。
ごめん、ごめんね澪ちゃん……。
澪ちゃんの腕がこんなになっても気付かないでいてごめんね。

嗚咽しながら、私は澪ちゃんに謝罪を繰り返した。

恐らく、他の皆も同じだろう。
私が考えている以上に、皆の病状は進行している。
そして、衝動を抑える為に自らを傷付けているのだ。

痛みで自我を保っていたんだ。

だから、夏なのに冬物を着ていたんだ。

自らの傷を隠す為に……私に悟られない様に。

思えば、私は憂の腕の肌すらずっと見ていない。
憂はいつからか、家でも常に長袖の服を着ていた。

そんな妹の変化にも気付かなかったなんて。

皆、自分を犠牲にして私を守っていたんだ。
私はそんな事も露知らず、自分の事ばかり考えていた。

私はなんて罪深いのだろう。



128 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:06:04.08 ID:oU4XMhGz0

その時、ドアを叩く音がした。

律「澪、唯、私だ! 駐車場に行くぞ! 和達が車で待機してる!」

私はドアまで走り、鍵を開けた。
ドアを開けると、りっちゃんとあずにゃんと純ちゃんが立っていた。

唯「りっちゃん……澪ちゃんが……澪ちゃんが……」

律「澪がどうした? 澪?」

ソファーに座ったまま、澪ちゃんは立とうとしない。

律「何してる澪、行くぞ!」

澪「私は行けない……律、唯を任せたぞ……」

律「何言ってんだよ澪! お前も来い!」

澪ちゃんは静かに立ち上がり、こちらを見た。
右手からは血が滴り落ちている。
それを見て、りっちゃんも理解した。

律「澪……」

りっちゃんは澪ちゃんに近寄り、力強く抱き締めた。



129 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:07:43.98 ID:oU4XMhGz0

律「唯、行ってくれ。梓、純ちゃん、唯を頼む」

梓「……分かりました。」

あずにゃんが私の手を引っ張った。
私はそれに抵抗する事も、何か言葉を発する事も出来ずにいた。
ただただ、私は引き摺られる様に歩いた。

澪「何で……律が……まだここにいるんだ……?」

律「お前を残して行けるわけないだろ……」

澪「律は強いな……私達よりずっと前に感染しているのに……」

律「私が居なくなったら、澪は一人じゃ何もできないだろ……」

澪「律には……食肉衝動が無いのか……?」

律「……。」



130 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:09:50.57 ID:oU4XMhGz0

澪「あるんだな……。いつからだ……? どうして今まで……何も言わなかったんだ?」

律「……それを言ったら、お前が怖がるだろ……」

澪「律なら……怖くない……。何があっても……お前なら怖くなんてない……。
  ゾンビになっても……私はお前にずっと傍に……いて……欲しかったんだ……」

律「そっか……。私はお前の傍にいていいんだな……?」

澪「当たり前だろ……馬鹿律……」

律「なら、私はずっと澪と一緒にいるよ……」

澪「ありがとう、律……」

律「……馬鹿。」

澪「律……」

律「何だ、澪?」

澪「律……私を……殺して……くれないか……?」



131 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:13:22.46 ID:oU4XMhGz0

外は激しい雨になっていた。

駐車場に着くと、憂が私達を見つけて手招きをしている。
その近くの車から、エンジンを掛ける音が聞こえた。
運転席には和ちゃんが乗っているのが見える。
あの日に死んだ教師のスポーツワゴンだ。
和ちゃん達は、事前に車のキーを確保していたらしい。
いざという時に、車で逃れる為に。

和「いちごとしずかは来ないわ。早く乗って!」

二人は怪我をしたアカネちゃん達を残して行けなかったらしい。

ゾンビ達……崩壊者達がすぐ後ろに迫ってきていた。
憂は助手席に、私達3人は後部座席に乗り込んだ。

和「しっかり掴まってなさい!!」

和ちゃんは勢いよくアクセルを踏み込んだ。
私達は、その衝撃で座席に体を打ち付けた。
和ちゃんは、立ち阻む者達を勢いよく跳ね飛ばした。
フロントガラスにはヒビが入ったが、そんな事はお構いなしだった。

純「和先輩って運転出来たんですね」

和「操作の仕方はネットで調べたわ」

梓「この辺はもう駄目ですね……」

和「そうね。それじゃあ、梓の家に行くわね」



132 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:17:20.81 ID:oU4XMhGz0

私達はあずにゃんの家に来た。
家の広さ、構造から、何かあった時はここに避難する予定だったという。
窓やドアは頑丈に補強されていて、食料や日用品、武器等が貯めてある部屋もあった。
ここに立て篭もれるよう、少しずつ皆で集めていたらしい。

またしても、私の知らない所で物事が進んでいた。
こういう計画は、主に和ちゃんとりっちゃんが立てていたらしい。

私達はあずにゃんの部屋に集まった。

梓「電気とガスは駄目です。水道はまだ平気みたいですね」

和「ここに来るまでの街の様子からみて、この街はもう終わりね……」

憂「……」

純「……これからどうします?」

和「街を出るしかないわね……」

梓「行く当てはあります?」

皆の家族は既にいなくなっていた。
携帯の連絡がつかない事から、
死亡しているか、崩壊者になっている可能性が高かった。
私の両親もずっと音信不通だ。



133 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:19:12.78 ID:oU4XMhGz0

和「都市部なら物資は豊富だろうけれど、その分、危険かもしれないわ。
  地方の方が、人が少ないから安全性は高いと思う。
  それに、場所を選べば自給自足だって可能よ」

純「サバイバル……ですか?」

和「問題無いわ」

梓「和先輩がそう言うと、何か安心できますね」

憂「和ちゃんは何でもできるんだよ~」ニコ

和「フフフ、ありがとう」

和ちゃんは小さい頃から何でも出来た。
和ちゃんが問題無いと言うのなら、その通りなのだろう。

それに比べて私は……。

唯「ちょっとお手洗いに行ってくるね」



134 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:21:43.85 ID:oU4XMhGz0

私はそんなに切り替えが早く出来る人間ではなかった。
ここに居ない友人達の事を考えると、胸が苦しくなった。

何も出来ない私が、こんな事を言える立場じゃないのは分かっている。
私が一番皆の足を引っ張っていた事も自覚している。
その事を思うと、私は眩暈がし、吐き気を催した。

私はトイレで何度も嘔吐した。
暫くすると、胃から吐き出す物は何も無くなっていた。

部屋に戻ろうと扉の前まで来ると、中から会話が聞こえてきた。

純「……唯先輩をゾンビにすべきです」

私はドアノブに手を掛けようとしたが、それを止めた。



135 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:27:19.72 ID:oU4XMhGz0

梓「純、あんた何言ってんの? そんな事出来るわけないでしょ!?」

純「じゃあ、これからずっと唯先輩を守っていけるの?
  澪先輩だってああなっちゃったんだよ?
  もしかしたら、私達が唯先輩を殺しちゃうかもしれないじゃん!」

憂「……。」

和「梓も純も落ち着いて……」

純「私達だって、いつ凶暴になるか分かんないでしょ?
  みんな痛みで症状を紛らわせて隠してるだけじゃん!
  唯先輩がゾンビになれば、少なくとも襲われる事は無いんだよ?
  他の奴らにも、私達にも! 私の言ってる事、間違ってる?」

梓「そ、それは……」

和「純……。私も憂も、唯をゾンビにする気は無いわ。
  私達は、何があっても唯を守り続けるから」

純「和先輩達はいいですよ。
  和先輩は唯先輩の幼馴染だし、憂は妹だし。
  唯先輩に対する想いが強いから、自我を保てるでしょうね。
  でも、私と梓は違うんですよ。
  この中で凶暴化するとしたら、まず私で、次に梓でしょう?
  そうしたら、和先輩はどうしますか?」

和「私は……貴女達が凶暴化したら、躊躇無く貴女達を殺すわ」



136 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:32:09.05 ID:oU4XMhGz0

純「でしょうね。貴女にとって大切なのは唯先輩と憂ですもんね。
  私と梓なんて、邪魔になったらいつでも切れるんでしょ?
  貴女にとって、私達はその程度の存在なんですよね。
  私だって、貴女が梓を殺そうとするなら、貴女を殺す事に躊躇しませんから。
  ぶっちゃけ、私達と和先輩の人間関係なんてそんなもんですから、ねえ?」

憂「純ちゃん……」ポロポロ

梓「そんな事言うのやめてよ純……」ポロポロ

純「私は梓の為に言ってるんだよ。
  梓が唯先輩を大好きなのは分かってる。
  でも、和先輩や憂に比べたら、その気持ちは敵う筈が無い。
  だとしたら、そのうち梓も唯先輩を傷付けるかもしれないんだよ?
  大好きな唯先輩を傷付ける事になってもいいの?」

梓「それでも、私は唯先輩にゾンビになんかなって欲しくない……。
  私が凶暴化しても、憂と和先輩が唯先輩を守ってくれる……。
  私は唯先輩の為なら……死んでもいいの!」

純「何で梓はそこまで……私達がゾンビになったのだって、唯先輩のせいじゃん!」

唯「それってどういう事……?」

私は純ちゃんの言葉を聞いて、無意識のうちにドアを開けていた。

梓「唯先輩……」



137 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:34:34.75 ID:oU4XMhGz0

純「私達は憂を追い掛けて校舎に入った後、
  ゾンビに襲われて多目的室に隠れたって言いましたよね。
  その時は私達、まだ噛まれて無かったんですよ。」

梓「純……やめて……」

純「物陰に隠れて、ゾンビ達をやり過ごそうとしてたのに……」

梓「もう……やめてよぅ……」

純「唯先輩、梓に電話したでしょ?」

梓「やめてぇぇぇぇぇぇー!!」

唯「あ……あぁ……」




138 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:35:45.50 ID:Etv4e7vbo

うわーっほんと救われねぇ・・・





139 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:35:54.92 ID:oU4XMhGz0

純「バイブって、静かな所だと結構響くんですよ……音が」

唯「あぁ……あぁぁぁぁ……」

純「唯先輩の電話のせいで、私達ゾンビに見つかって噛まれたんですよ!!」

唯「うああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

私は目の前が真っ暗になって、その場に倒れ込んだ。

憂「お姉ちゃん!!!」

唯「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……
  ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……
  ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」

私はそのまま意識を失った。



140 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:39:14.02 ID:oU4XMhGz0

どの位眠っていただろうか。
目を覚ますと、私はあずにゃんのベッドの上にいた。
横を見ると、憂がベッドに寄り掛かり、居眠りをしていた。
憂にもちゃんと毛布が掛けられていた。

和「目が覚めた?」

唯「……あずにゃんと純ちゃんは?」

和「別の部屋にいるわ……」

時計の針を見ると、午後の4時を指していた。

唯「和ちゃん……もう無理だよ……」

和「大丈夫、唯は何の心配もしなくていいのよ……」

唯「嫌だ……もう嫌だ……限界だよ……」

和「大丈夫、大丈夫だから……。唯なら絶対大丈夫だから……」

唯「何で和ちゃんはそんな事言うの……?
  酷いよ……。私は和ちゃんみたいに強くないから……」

和「私は強くなんかないわ……出来る事をしているだけなの」

和ちゃんの目からは涙が溢れていた。
和ちゃんは私を強く抱きしめた。



141 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:41:47.27 ID:oU4XMhGz0

和「唯がどんなに辛いか分かってる。
  唯がどんなに悲しんでいるのかも分かってる。
  それでも、私は唯に人間のままでいて欲しいの。
  私が唯にお願いする、最初で最後の我侭なの。
  お願い唯、最後まで諦めないで。
  唯が諦めてしまったら、私も諦めてしまうから。
  唯が諦めなければ、私は私のままでいられるから……」

唯「ずるいよ和ちゃん……。
  私は今までずっと和ちゃんに迷惑を掛けてきたから……、
  そんな事を言われたら……私は和ちゃんに逆らえないよ……」

和「私はずるい女なのよ……」

唯「和ちゃんの意地悪……」

和ちゃんは私の頭を優しく撫でてくれた。

唯「和ちゃん、左腕を見せて……」

和ちゃんは制服を脱ぎ、ワイシャツを捲くって腕を見せてくれた。
広範囲に包帯が巻かれ、その包帯は血で黒く染まっていた。
それはゾンビ達に因るものではない。
その傷は、和ちゃんの自傷行為に因る物だ。



142 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:47:17.11 ID:oU4XMhGz0

唯「私は和ちゃんをこんなに傷付けていたんだね……。
  和ちゃんだけじゃない、他のみんなも、私が傷付けていたんだ……。
  ごめんね……ごめんね和ちゃん……」

和「唯……、これは傷なんかじゃないわ。
  これはね、私がまだ人間であるという証なの。
  大好きな人を守ったという勲章なのよ。
  私はね、何があっても最後まで人間でいたいの。
  確かに、体はウイルスに侵されてゾンビになってしまったかもしれない。
  でもね、心は……心だけは、絶対にゾンビになんかなったりしないわ」

その時、ドアの向こうから啜り泣く声が聞こえてきた。
ドアが開き、あずにゃんと純ちゃんが入ってきた。

和「……聞いてたの?」

梓「ごめんなさい……」



143 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:49:40.66 ID:oU4XMhGz0

純「ごめんなさい、和先輩……。
  私、和先輩の気持ちなんて、全然考えてませんでした……。
  ただ自分が苦しくて、辛くて、どうしようもなくて、
  梓の為とか言って、自分の不満をぶつけていたんです……」

純「ごめんなさい、唯先輩……。
  唯先輩は悪くないって分かってるんです……。
  誰かの所為にしてしまいたかっただけなんです……。
  ごめんなさい……ごめんなさい……」

純ちゃんは大声を出して泣き出してしまった。
和ちゃんは純ちゃんを抱きしめた。
その声で憂は目を覚ました。

憂「純ちゃん、泣かないで……」

憂も純ちゃんを抱きしめた。
私もあずにゃんも、純ちゃんを抱きしめた。

私は、軽音部の4人で抱き合って泣いた日の事を思い出していた。

その日、私達は涙が枯れるまで泣き続けた。
泣き疲れた私は、そのまま眠りに落ちてしまった。



144 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:54:26.98 ID:oU4XMhGz0

翌日朝7時、私達は目覚ましのベルで目を覚まし、
身支度を整え、この街を出る為の準備に取り掛かった。

朝食を済ませた後、あずにゃんの家の大きなワゴン車に必要な物を詰め込んだ。

和「それじゃあ、出発しましょう」

目的地は長野の軽井沢に決まった。
以前、そこに核シェルターを作ろうという話があったのを、
ネットで見た気がすると、あずにゃんは言う。

誰もそんな話を信じているワケではないけれど、
どうせ行く当てもない旅だ。
もしかしたら、本当にそれがあって、
そこに避難している人達がいるかもしれない。
そんな淡い夢を見ていた。

カーナビを軽井沢駅にセットして、私達は軽井沢へと向かった。

今回は安全重視の為、法定速度以下のスピードで走っていた。
その途中で、私達はこの国で起きている惨状を目の当たりにする。

荒れ果てた街並み、放置されたままの死体……。
桜ヶ丘町はそれらに比べれば断然ましだった。

途中、瓦礫や放置された車によって通行出来ない道もあった。
迂回したり、車から降りて障害物を取り除いたり……。

軽井沢駅に着く頃には、すっかり辺りは暗くなっていた。



145 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 02:59:49.76 ID:oU4XMhGz0

和「ここも電気は駄目みたいね。
  電気が無いと、建物の中は暗くて危険だわ。
  今日は車内で寝ましょう」

和ちゃんは、車を駅の駐車場に止めた。
今日はここで一泊する事になる、誰もがそう思っていた。
そんな時、駅の方から人影が近付いて来るのが見えた。

唯「誰か近付いてくるみたい……」

皆武器を手にした。私も両手にスタンガンを握った。
けれど、昨日スタンガンを手にしたあずにゃんが、相手に押し倒されている所を思い出し、
私は2つのスタンガンをポーチの中にしまい、代わりに金属バットを手にした。

私達は息を潜めて、相手の出方を伺っていた。
どうやら、こちらの存在に気付いてはいないらしい。
人影は私達の車から離れていった。

しかし、安心してはいられなかった。
駅の中から次々と人影が現れたのだ。
耳を澄ますと、奇妙な声が聞こえてくる。
私達は確信した。彼等は「人間」じゃない。

幸いにも、彼等は私達に気付いていなかった。
このまま息を潜めていればやり過ごせる、そう思っていた。

その時、荷物の中の目覚まし時計が鳴り響いた。
時計は7時を示している。
今日掛けた目覚ましを完全に止める事を忘れていた。



146 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 03:03:01.93 ID:oU4XMhGz0

私達に気付いた彼等は、奇声を発しながら物凄い勢いで私達に向かって来た。

和ちゃんはエンジンを掛け、一気にアクセルを踏み込んだ。
どこに向かうのかなど、考えている余裕は全く無かった。
とにかく、この場が離れる事だけを考えていた。

道なり数百メートル進んだ所で、突然車は停止した。ガス欠だった。
後ろを見ても、彼等の姿は見えない。
しかし、彼等が発する奇声は、確実に私達に近づいて来ていた。

和「車は捨てて行きましょう!」

私はギターケースとポーチ、バットを持って車を降りた。
暗闇の中、私達はただ只管に走った。

梓「あの建物に隠れましょう!!」

そこはこの街の公民館だった。




147 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 03:04:19.67 ID:Etv4e7vbo

うわぁもうやばいフラグが





148 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 03:06:15.06 ID:oU4XMhGz0

私は入り口のガラス戸をバットで破壊した。

私達は、その公民館の最上階である3階の一室に身を潜めた。
その部屋は見晴らしが良く、私達が走ってきた道路を見渡せた。

また、バルコニーには非常階段が設置されていて、
万が一の時には、素早く外に逃げる事も可能だ。
和ちゃんとあずにゃんは、そこから外の様子を伺っていた。

暫くして、二人が部屋に戻ってきた。

和「アイツ等は私達を見失ったみたいよ」

梓「明日になったら、一度荷物を車に取りに行きましょう」

和ちゃんは頷いた。

和「軽井沢って、夏なのにこんなに涼しいのね。
  今日がずっと曇りだったからかもしれないけれど。
  毛布か何か無いか、ちょっと探してくるわ」

梓「私も行きます」

二人は部屋から出て行った。



149 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 03:09:26.74 ID:oU4XMhGz0

和ちゃんの言う通り、ここは凄く肌寒かった。

あの日以来、あまり私に寄り添う事の無くなった憂が、
ぴったりとくっ付いて、うつらうつらとしていた。
その様子を、純ちゃんが部屋の隅っこで一人体育座りをして見ていた。

唯「純ちゃんもこっちにおいで……」

純ちゃんは立ち上がり、私の横に来てちょこんと座った。
純ちゃんは私の肩に頭を寄り掛からせた。

もこもこの髪の毛が私の顔に当たり、少し擽ったかった。
私は二人を優しく抱き抱えた。

唯「あったか、あったかだよ……」

純「あったかいです……」

純ちゃんは小さく呟いた。
私はそのまま眠りに落ちていた。



150 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 03:12:04.34 ID:oU4XMhGz0

ふと、目が覚めた。
外は既に明るくなり始めていた。

私達は、いつの間にか毛布を掛けられ、布団の上に綺麗に寝かされていた。
右には憂と和ちゃんが、左には純ちゃんとあずにゃんが小さな寝息を立てていた。

私は彼女達を起こさぬよう、静かに布団から出た。
部屋からこっそりと抜け出し、私はお手洗いに向かった。

用を足し、手を洗っていると、廊下の方から物音が聞こえた。

唯「誰?」

私が廊下に出ると、そこには血塗れの巨漢が立っていた。
男は私を無感情な目で見詰め、次の瞬間、奇声と共に私に襲い掛かってきた。

私は反射的に悲鳴を上げた。

私の声に反応して、皆が部屋から飛び出してきた。
私は男から離れようとしたが、すぐに掴まってしまった。
男は私の首を両腕で締め上げる。

憂「お姉ちゃん!」
和「唯!」
梓純「唯先輩!!」

4人は一斉に巨漢に飛び掛り、男の腕を私から引き離そうとした。



151 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/02/01(火) 03:14:11.09 ID:oU4XMhGz0

急いで来た為か、誰も武器を持っていなかった。
腕力には圧倒的な差があり、男の手はなかなか私から離れない。
私は目の前が真っ白になり、意識が朦朧としていた。

純ちゃんが男の腕に思いっ切り噛み付き、
あずにゃんが男の目に指を突き刺した。

刹那、私は重力を失った。
私は男に投げ飛ばされ、壁に頭と体を打ち付けた。

唯「ううぅぅぅ……」

男は奇声を上げ蹌踉めき、手摺りから階下へ落下していった。
私の名前を呼ぶ声がしたけれど、頭がぼーっとしてよく分からない。

私はそのまま意識を失った。



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唯「ゾンビの平沢」★4
[ 2011/02/03 21:31 ] ホラー | | CM(2)

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タイトル:
NO:2370 [ 2011/06/05 09:49 ] [ 編集 ]

唯が一番守ってもらってるわりに緊張感ないしぬけてるし
ゾンビになてまえと思いまんた。W

タイトル:承認待ちコメント
NO:6725 [ 2012/11/16 15:12 ] [ 編集 ]

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