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澪「その未来は今」#前編 【SF】


http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1297097562/l50





1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 01:52:42.16 ID:YJWM2rnVO

代理





2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 01:53:32.22 ID:4LvY5CuwP

梓「せーんぱいっ」ぎゅっ

澪「ひいっ?!って何だ、梓か…」

梓「そんなに驚かなくても…」

澪「ち、ちがうって!びっくりしただけだよ!」

梓「えへへ。一緒に帰ろっ?」

澪「あぁ」

まだ少し寒さが残る春。
私と梓は桜舞い散る帰り道を歩いていた。

今日は4月14日。
私と梓が付き合って、2ヶ月となる日。

きっかけは、バレンタインデーだった。




4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 01:56:39.69 ID:3LTgXwNUO

切り離されたロケット~♪



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 01:58:22.06 ID:h81JuNMqO

聞け声無き声~♪








6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 01:58:00.30 ID:4LvY5CuwP

――――――
――――
―――
――


梓「あのっ、私…。ずっと澪先輩のことが―――」

放課後、一人音楽室に呼ばれた私は梓に告白された。
耳まで真っ赤にしてチョコを差し出す梓の顔は、今も鮮明に覚えている。

私も、梓のことが好きだった。

とはいえ私には告白する度胸なんてあるはずもなく、
その想いを胸の内に秘めたままの日々を過ごしていた。
だからあの時の梓の告白は本当にうれしかったし、その反面ずっとうじうじしていた自分が惨めでもあった。

澪「………私も」

澪「私も、梓のことが…好き」

私も自分の想いを伝えた。
後出しというちょっとずるい形ではあったけど。
そして私たちは付き合うこととなった。



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:03:44.55 ID:4LvY5CuwP

何日かして軽音部のみんなにそのことを報告した。
隠すようなことでもなかったし、言ったところで何か変化が起こるような仲ではないからだ。

唯「えっ」

律「なん…だと…?」

紬「いま、何て?」

澪「だ、だからっ!私と梓は付き合ったんだって」

紬「もう一回いいかしら?」

澪「あの、その…。だから…///」

紬「えっ?!なに?!!もっと大きな声で!!!」

唯「ム、ムギちゃん…?」

紬「さぁ、さぁ!エビバディセイッ!!」

澪「うぅぅ…」

梓(澪先輩かわいい…)



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:08:14.75 ID:4LvY5CuwP

紬「でもすごくいいと思うわ。お似合いよ2人とも」

律(さっきのはいったい…)

澪「そ、そうかな…えへへ」

唯「あずにゃんはみんなのものなんだぞー!澪ちゃんずるーい」ぶーぶー

梓「ちがいますよ、私は澪先輩のものですから♪」

澪「あ、あずさぁあぁぁああぁ////」

律「うわ、出た!いま惚気やしたぜ唯隊員!」

唯「バカップルってやつですねりっちゃん隊員!」

紬「………」

紬「………」つー

唯「ムギちゃん鼻血!」

リアクションはそれぞれだったけど、みんな純粋に祝福してくれた。



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:15:57.83 ID:4LvY5CuwP

それからというもの、交際は順調に進んでいった。
みんな(というより律)は恥ずかしがる私をおちょくるのが好きなようで、
ティータイムの時にはよく茶化されたものだった。

澪「私のケーキにいちごが乗ってない…。明らかに取られた跡があるんだが」

梓「私のには2個乗ってます…」

唯「わぁ!そりゃ大変だ!」

律「はーい!梓のいちごを1個澪にあげればいいと思いまーす!」

澪「お前ら…。謀ったな…!」

梓「まぁ、それもそうですね。はい、澪先輩」ひょい

澪「あ、あぁ…。ありがとう」

紬「梓ちゃん!何やってるの!!」

梓「えっ…?その、1個あげようかと…」

紬「あーんよ、あーん!」

梓「」

澪「」



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:20:10.84 ID:4LvY5CuwP

最初の頃はこんな感じで何度も顔を真っ赤にされていたものの、
ひと月もすると慣れてしまい当たり前のようになってきた。

澪「梓のタルト、おいしそうだな」

梓「一口食べます?はいっ」

澪「あーん」ぱくっ

澪「あ、おいしい…。私のチーズケーキも一口あげるよ」

梓「ありがとうございます」ぱくっ

梓「ん~♪おいしいです」

律「………」

律「つまんなぁぁぁい!!!」

澪「なにがだ!」

随分と律は退屈してしまったようだ。
とまぁ、こんな感じで順調に交際をしていた。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:26:04.69 ID:4LvY5CuwP


――
―――
――――
――――――

梓「どうしたの?」

澪「いや、なんでもないよ」

ぼーっとしていたようだ。
梓に声をかけられ我に帰る。

梓「手、痛い?」

澪「ん?あぁ、平気だよ。ありがとう」

梓は私の手に貼られている絆創膏を見つめる。
この傷は唯と律が部室に連れ込んだ野良猫によるものだった。

澪「はぁ、新学期早々ついてないなぁ…」

梓「私もびっくりしたよ。最初はあんなにごろごろしてたのに、いきなり先輩に襲いかかるんだもん」

猫の気まぐれの犠牲(といっても引っかかれただけだが)となった私は、自分の手から流れ出る血を見て気を失ってしまったらしい。
自分の血を見て気絶してしまうだなんて、先が危ぶまれるといったものだ。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:34:10.40 ID:4LvY5CuwP

澪「…3年生、か」

新学期早々、という言葉を口にしてふと思った。
私たちは3年生。今年で卒業。
合宿を行ったり、文化祭でライブしたり、私の高校生活は軽音部とともにあった。
まだ1年ある、とは思えなかった。それくらい、毎日が充実していたから。
もう1年しかないんだ、そう思うと急に寂しくなった。

梓「先輩たちは、今年で卒業しちゃうんだよね…」

梓「………」

梓は遠い目をしていた。
私たちが卒業してしまったら、軽音部は梓だけになってしまう。
ずっと5人でやってきたのに、そんなの寂しすぎる。
私と同じように、梓にも軽音部と共にあった3年間であったと感じてほしい。
だから―――。

澪「私たちが卒業しても寂しくないように、新入部員を集めないとな」



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:40:00.51 ID:4LvY5CuwP

梓「そうだね。もっと軽音部を盛り上げなきゃ!」

澪「そのためにも、まずは新歓ライブだ」

梓「うんっ!絶対成功させるんだから!」

梓「…でも」

澪「ん?」

梓「先輩が一年生に構ってるの見るのは、ちょっと妬けちゃうかも…」

澪「そんなことないって。私が人見知りなの知ってるだろ?」

梓「でもでもっ…先輩かわいいし、しかもかっこいいし…。誰かにとられちゃったらどうしよう…」ぎゅっ

つないでいる手がほんの少し強く握られる。
この期に及んでそんないらぬ心配をしている梓がたまらなく愛しかった。

澪「大丈夫。私は梓一筋だよ」

梓「…本当?」

澪「あぁ、本当だ」

梓「えへへ、そっか♪」



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:45:17.47 ID:4LvY5CuwP

こんなにも私のことを想ってくれる人がいる私は幸せ者だった。
寂しい思いをさせたくない、いつまでも笑っていてほしい。
だから、今年の新歓は絶対に成功させるんだ。
いつも以上に私は意気込んでいた。

澪「それじゃあ、また明日な」

梓「あ、待って先輩」

それから私と梓はぶらぶらと寄り道をしながら他愛のない話をしていた。
そしていつもの交差点で別れを告げようとすると、梓が私を呼びとめた。

澪「ん?」

梓はごそごそとバッグの中を漁り始めた。
バッグから手を取り出した梓は、何かを握っている。

梓「…記念日、おめでとうございます」

梓はそう言って私の首にその握られていた何かをつけてくれた。
見てみると、小さなハートの形をしたかわいらしいネックレスだった。

澪「…えっ?あ、梓?!」



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:50:57.61 ID:4LvY5CuwP

梓「えへへ、びっくりした?」

梓のサプライズにももちろんびっくりしたが、それ以上に申し訳ないという気持ちがあった。
私の方はこれといって特に何かを用意しているわけではなかったからだ。
もちろん2ヶ月の記念を祝わないというわけではない。
けど、一方的にもらうにはあまりにも申し訳ないようなプレゼントだった。

澪「そ、そんな!悪いよこんな高そうなもの…」

梓「いいの。私があげたかっただけだから」

澪「で、でも…」

梓「祝・最上級生って意味もこめてね♪」

澪「今度私もプレゼント用意するから、その時に交換しないか?」

梓「…そんなにやだ?」

澪「……!」



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 02:57:49.17 ID:4LvY5CuwP

これ以上は梓に失礼だと思った。
こんなの梓の好意をないがしろにしているだけじゃないか。

澪「…ありがとう、本当にうれしい。必ずお返しするから」

梓「いいよ、そんなの。先輩のその顔が見れただけで私は十分だよ♪」

梓「それじゃ、またね!」

梓はそう言って歩いていった。

澪「梓、ありがとう!」

私は大きな声で叫んだ。
梓は振り向いて手を振ってくれた。
その顔は、暗い夜道にも映えるぐらいの笑顔だった。



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:03:28.65 ID:4LvY5CuwP

澪「さてと!」

私も踵を返し家に向かった。
いくら春とは言えまだ少し夜は寒い。
早く帰ろう。帰って梓にもう一回お礼言わなきゃ。
私の足は自然と早くなっていった。

・・・・・・

澪「…ん?」

家まであと5分といったところだろうか。
一際暗い道に差しかかる。
いつもなら早足で駆けていくところを、私は立ち止まった。
何かちがう、そう思ったからだ。

この暗さの原因でもある雑木林の奥から光が漏れていた。
電灯とかそういった人工的な光ではない、もっと優しい光。

なんだろう。
よくわからないけど、不思議な光だった。
無意識のうちに、私はその光に吸い寄せられるように雑木林の奥に入っていった。



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:09:47.06 ID:4LvY5CuwP

近づくにつれ、その光源が見えてくる。

澪「………」

月だ。月の光が差し込んで、そこを照らしているのだ。

澪「わぁ…」

足を踏み入れた私は思わず息を漏らした。
それほどまでに幻想的な場所だったからだ。
周りに比べ雑木の少ないこの場所は特別光が差し込み、まるで切り取られた別の世界のように神秘的だった。

澪「今度、梓も連れてきてあげようかな」

2人だけの秘密の場所、なんてのもいいかもしれない。
そんなこと思いながら空を見上げた。
見上げる先には、大きな月。その儚げな光が夜を照らしていた。
でも、私が普段見ているそれとは少し違う印象をうけた。
なんて言えばいいのかわからないけど、不安になる光だった。

すると突然、地面が大きく揺れた。

澪「じ、地震?!」



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:13:38.13 ID:4LvY5CuwP

揺れの規模はかなり大きい。
立っているのもままならなかった。

澪「……うっ」

バランスを取ろうと足腰に力を入れようとした途端、頭痛が起こった。
ただの痛みじゃない、何かに締めつけられてるような痛みだった。

澪「な、なんだ…これっ…。き、気持ちわる…い…っ」

徐々に気分も悪くなってきた。
意識が遠のいていくのがわかる。
視界もぐるぐると回り、ぼやけていく。

澪「…うぁ―――」

そして、私の意識は深い暗闇に落ちていった。

――――――
――――
―――
――




37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:18:20.85 ID:4LvY5CuwP

澪「…ん」

目が覚める。
まるで長い眠りから覚めたような感覚だった。
辺りを見渡す。ここは私の部屋だ。

澪「あれ…」

記憶の糸をたどる。
昨日の帰り梓からプレゼントをもらったことまでは覚えてる。
が、そこから先がおぼろげだった。
その帰りに何でかわからないけど雑木林に入って、それから………。

澪「…夢か」

普通に考えて私が寄り道なんかするはずがない。
ましてや雑木林。あんな暗くて怖いところ一目散に通り過ぎるはずだ。

少し落ち着きを取り戻し、時計を見る。
時刻はもう8時を回っていた。

澪「………」

澪「うわああああ!!ち、遅刻だぁぁあぁ!!」

ベッドから飛び起きた私は急いで制服に着替えた。
玄関を飛び出す。陽の光が眩しい。
4月のわりには、少し暑い感じがした。



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:23:18.58 ID:4LvY5CuwP

【学校】

澪「はぁ…はぁ…」

教室に入る。
全速力で来たので息が上がっていた。
さわ子先生が教室から出ようとしているところだった。
どうやらホームルームは終わってしまったようだ。

さわ子「秋山さん、どうしたのその格好?」

澪「……?」

どうしたもこうしたも制服じゃないか。
何を言っているんですか、先生。
そう言おうとした矢先だった。

澪「え…」

教室を見渡す。
先生の言っていることの意味がすぐにわかった。
見渡す限り視界に映る薄手のシャツ、ベージュのニットベスト、少しだけ丈の短いスカート。



みんな、夏服だったのだ。



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:32:28.69 ID:4LvY5CuwP

澪「は?えっ…?」

私だけがブレザーを羽織っていた。
確かに今日は暑いけど、そんな薄着をするような時期じゃ…。

さわ子「まぁいいわ、あとで職員室に来てね。最近遅刻多いわよあなた」

思考の整理が追いつかないまま、先生が教室から出ていく。
私は先生の影で隠れていた黒板の文字を見て愕然とした。





9月9日





真っ白なチョークで、9月9日と書いてあった。



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:38:31.50 ID:4LvY5CuwP

澪「え……」

何かの冗談に決まってる。
そう思って携帯を取り出そうとポケットに手を入れたが、携帯はなかった。
急いで家を出たから忘れてきたのだろう。
みんなが物珍しい目で私を見る。
誰かに確認したかったが、出来なかった。
それほどまでに、みんなの目が冷たかったからだ。

澪「……!」

バンッ

私は教室を飛び出した。
向かったのは、2年生の教室。梓のクラスだ。




41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:43:11.13 ID:ny3ZFebR0

気づかれなーいでー止めを刺す♪





42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:44:15.69 ID:4LvY5CuwP

【2年1組】

ガラッ

澪「梓!!」

梓のクラスもちょうどホームルームが終わった頃のようだ。
勢いよくドアを開けたせいか、クラス中の視線を浴びてしまった。
しかしそんなことは気にも止めず、梓のもとに向かう。

梓「…!」

梓はどことなく元気がなかった。
私の存在に気づいた途端、目線を下に落としうつむいた。

澪「なぁ梓。携帯、見せてくれないか?」

梓「………」

澪「聞いてくれよ梓。教室に入ったらみんな夏服でさ…」

澪「しかも黒板みたら9月9日だって書いてあるんだよ」

澪「まったくひどいイタズラだよ、おおかた律が主犯だろうな」

梓「………」

梓は何も言わなかった。
口を閉ざし、私に目を合わせようとはしなかった。



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:50:05.88 ID:4LvY5CuwP

梓「…何を言ってるんですか」

澪「梓…?」

急に不安に駆られた。
梓だけじゃない、他の人もみんな夏服だった。
黒板には、やはり9月9日と書かれていた。

澪「何を言ってるって…。今日は4月15日だろ?昨日私にプレゼントをくれたじゃないか!」

澪「あっ、わかったぞ。梓も私を騙そうとしているんだな?」

澪「まったく、律のやつめ。あとで―――」

バチン

澪「えっ…?」

頬に走る鋭い痛み。

梓「………」

少し経ってからようやく自分の身に何が起きたのか理解した。
私は、梓にビンタをされたのだ。

梓「…何がしたいんですか」

梓「………最低」



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 03:56:34.69 ID:4LvY5CuwP

梓はそれだけ言い教室を去ってしまった。
教室のあちこちでどよめきが起こる。
私が梓を追って教室を出ようとすると、後ろから腕をつかまれた。

純「澪先輩」

純「もう、やめてあげてください」

純「梓のやつ、先輩と別れてからずっとつらい思いしてるんですよ?」

純「先輩も軽音部を辞めて色々あったのはわかりますけど、だからって―――」

澪「…は?」

私が軽音部を辞めた?!
今日は9月9日で、私は軽音部を辞めてて、梓とも別れてて…。
まったくもって意味がわからなかった。
今日は4月15日で、梓とも仲良しで、今日から新歓ライブに向けて練習するはずだろ?

純「…澪先輩?」

自分の身に何が起きているのかさっぱり理解出来なかった。
頭の整理も気持ちの整理もつかないまま、ふらふらと梓の教室を後にした。



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 04:02:49.37 ID:4LvY5CuwP

澪「あっ…」

自分の教室に戻る途中、律と唯と目が合った。

この2人なら何か話しかけてくれるかも知れない。
もしかしたら、ドッキリだとかネタばらしだとかしてくれるのかと期待もした。
いや、そうであってほしかった。

律「いこーぜ、唯」

唯「う、うん…」

しかし2人とも視線を逸らし、私に話しかけようともしなかった。
ドッキリとか、イタズラとかそういう類のものではないと感じた。

澪「………」

自分の教室に戻った私はカバンを持ち、先生の呼び出しも無視して家に帰った。



49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 04:14:20.01 ID:4LvY5CuwP

家に帰るなりすぐさま携帯を手にとった。
メール、着信、フォルダ、ありとあらゆるものをチェックした。
どれも身に覚えのないものばかりだった。

―――――――――――――――――――――
From 梓
Subject Re:
ねぇ、戻ってきてよ。みんな待ってるよ。
誰も怒ってなんかないし、気にしてないよ?
―――――――――――――――――――――
From 梓
Subject Re:
意地張らないでよ…。また一緒に練習しよう?
先輩のベースがないと、寂しいよ。
―――――――――――――――――――――
From 梓
Subject Re:
どうして…?
もう私のこと嫌い?
軽音部、好きじゃない?
―――――――――――――――――――――
From 梓
Subject Re:
なんで…。なんでそんなこと言うの…?
私、先輩が何考えてるのかわかんないよ…。
―――――――――――――――――――――

澪「………」

もう、目も当てられなかった。



51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 04:28:10.50 ID:4LvY5CuwP

ベースにもずっと触っていなかったようだ。
ケースから取り出すとの埃かぶっていた上に、弦も錆びていた。

澪「ウソだ…。こんなの、ウソに決まってる」

そうだ。これはきっと悪い夢だ。また目が覚めたら元に戻ってるさ。
疲れてるんだ。そうに違いない。そう思いながら眠りについた。

・・・・・・

翌朝。
ぼんやりと目が覚める。
夢であってほしい。
その期待を裏切るかのように携帯の液晶には「9月10日」と表示されていた。

「遅刻するわよ」

澪「うん…」

ママにけしかけられ、しぶしぶ夏服に着替える。
顔を洗いに向かうと鏡に頬が少し腫れている自分が映っていた。
今年は残暑が続くのだとか。朝ごはんを食べながら見ていた天気予報でそう言っていた。



まぎれもなく、これは現実だった。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 04:30:07.70 ID:4LvY5CuwP

ダメだ限界。おやすみ




53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 04:41:47.76 ID:TIPgZtpK0

気になるところで…



54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 05:08:37.56 ID:GpnceZhyO

待ってるだけじゃつまらなくて~♪
僕らは走ってる~♪
二度と戻れない道を~♪アウイエ~♪
目を覚まして夢を知った~♪
その未来は今~♪ヘェ~イ!!!

このあたりの歌詞をからませてくるのか?



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 06:01:36.35 ID:yCL3/R/Ri

スレタイだけでよくpillowsにつなげられるなお前ら





65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 13:30:10.29 ID:4LvY5CuwP

寝てもうた



66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 13:33:23.63 ID:4LvY5CuwP

澪「あっ…」

紬「……!」

教室に向かう途中、ムギに会った。
ムギにも律たちと同様に目を逸らされてしまった。
気まずさに耐えられなかった。逃げ出したかった。

澪「………」

しかし諦めるわけにはいかなかった。
何か、何かを得なければ。この5ヶ月の間に何があったのか。
私は勇気を振りしぼってムギに話しかけた。

澪「あ、あのさ…ムギ」

紬「…なに?」

やはり気まずそうな様子だ。

澪「いや、その…どうしてるのかなって」

澪「軽音部のこと」



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 13:41:32.16 ID:4LvY5CuwP

紬「………」

ムギは数秒黙ったあと、口を開いた。

紬「りっちゃん悩んでるよ、文化祭どうするか。今は唯ちゃんと私と3人しかいないから」

紬「ジャズ研から合同で出ないかって話もきたんだけど、唯ちゃんがそれはやだって…」

紬「りっちゃんもあぁやって元気に振る舞ってはいるけど、内心すごくつらいと思う」

澪「…そっか」

どうやら梓も軽音部を辞めたらしい。
もしかしたら、梓が辞めたことも私と何か関係があったりして。
そう思った私は、無茶を承知でムギに尋ねた。

澪「あの…さ、私。なんで軽音部やめたのかな…?」



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 13:45:21.91 ID:4LvY5CuwP

紬「何言ってるの…?」

紬「澪ちゃんが自分で辞めるって言ったんじゃない」

澪「私?!私が辞めるって言ったのか?」

紬「…澪ちゃん。ふざけるのもいい加減にして」

紬「みんながどれだけつらい思いをしたと思ってるの…!」

ムギの言葉に静かな怒りを感じた。
初めて見るムギの表情に戸惑いを隠し切れなかった。

紬「私たちがいくら聞いても教えてくれなかったじゃない。それを今さら…」

澪「バカなことを言ってるのはわかってる。でも、知りたいんだ」

紬「澪ちゃん、大丈夫…?」

澪「…頼む」

紬「………」

はぁと一息ついたムギは、口を開いた。

紬「新歓ライブ」



69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 13:51:00.14 ID:4LvY5CuwP

澪「?」

紬「新歓ライブの演奏中にね、ベースの弦が切れちゃったの」

紬「よくある事故だし、しょうがないことだと思う」

紬「それで動揺しちゃってぐだぐだなライブになっちゃったのはあれだけど…」

紬「でも梓ちゃんは大丈夫だって、5人のままでいいって言ってくれたじゃない」

紬「それなのに澪ちゃんは私のせいだ私のせいだって自分を責めて…」

紬「それで、澪ちゃんは勝手に軽音部を辞めて。梓ちゃんも辞めちゃって」

紬「何度も声をかけに行ったのに、澪ちゃんは―――」

澪「…ごめん。もういいや、ありがと」

これ以上聞きたくなかった。
私はムギの話を遮り、昇降口に戻った。
学校になんかいられるわけがなかった。



70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 13:57:27.02 ID:4LvY5CuwP

梓「…!」

昇降口で梓に出会った。
ちょうど学校に来たところのようだ。隣には憂ちゃんもいた。

梓「………」

澪「………」

お互い立ち止まって目が合うも言葉はなかった。
梓は無言で私の横を通り過ぎようとした。

澪「…梓」

梓の腕を掴んだ。

梓「………」ぶんっ

しかし呆気なく振り払われた。
梓は何も言わず行ってしまった。
周りの目が痛い。私はそのまま昇降口に向かい学校を出た。



72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 14:03:09.88 ID:4LvY5CuwP

【放課後】

ガチャ

和「入るわよ」

唯「あ、和ちゃん!」

律「おぉー、和。どうした?」

和「文化祭のことについて話に来たんだけど、いいかしら?」

紬「お茶淹れるね」

和「ありがとう」

和「それで、軽音部はどうするの?そろそろ参加申請書の締め切りだけど」

唯「………」

紬「………」

律「……あー…、うん。今年は無理かも」



73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 14:08:22.92 ID:4LvY5CuwP

和「最後の文化祭なのよ、いいの?」

律「よくないけど…、現状が現状だしな」

和「…そう。一応ぎりぎりまで待つから、じっくり考えて」

律「なんか悪いな。気遣ってもらって」

和「いいのよ。それじゃ行くわね。ごちそうさま」

バタン

律「…ふぅ」

律「どうする?やっぱジャズ研と合同で出る?」

唯「やだ…。私は、放課後ティータイムで出たい」

律「んなこと言ったってなー…」

紬「………」

紬「…あのね。今日、澪ちゃんとお話ししたの」



74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 14:13:53.30 ID:4LvY5CuwP

律「澪と?あいつ今日学校来てなくね?」

紬「ううん、朝は来てたの。私と話したあとそのまま帰っちゃったんだと思う」

律「それで、なんだって?」

紬「私が何で軽音部を辞めたのかって」

律「はぁ?なんだそりゃ」

紬「私にも何を考えてるのかさっぱり…」

律「…まぁ、あいつにも色々あるんだろ。私たちがあれだけ言っても聞かなかったんだし」

律「前から受験だなんだうるさかったしな」

律「もう私たちがどうこう出来るもんじゃないんだよ、あいつは」

唯「うっ…ぐすっ」

律「あーあー、またか唯。ほら泣くなって」

唯「だって…。みんなで文化祭出たいよ…。最後なんだよ…?」

律「ったく、泣きたいのはこっちだっつーの」




75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 14:14:09.33 ID:KEuNKEC8P

りっちゃん(;_;)



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 14:20:36.01 ID:H6PiBjIc0

悲しいな





77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 14:20:58.52 ID:4LvY5CuwP

【学校】

さらに翌日。
学校に来るなり、クラスメイトに怒られた。
ここ数日の早退と欠席で、クラスの出し物(どうやらロミオとジュリエットの寸劇らしい)の練習に参加していなかったからだ。
私はロミオ役らしい。何でよりにもよって主役なんだ…。
対するジュリエットは、いちごだった。
まぁ、ジュリエットのイメージとしては一番合ってるかも知れない。

いちご「澪、どうしたの?全然セリフ言えてないみたいだけど…」

澪「えっ…。あ、うん…」

そんなことを言われても困る。
“私”がこの台本に目を通すのは初めてなんだから。
それに加えて、劇の主役ときた。
ただでさえ目立つことが嫌なのに主役なんておいそれと務まるわけがなかった。

いちご「もう本番まで時間ないんだよ?」

澪「ご、ごめん…」

結局その日の練習はひどい有様だった。
終わったあと演出や脚本やの人に叱られた。
自分から立候補しておいて何事だ、真面目にやってくれ、って。

はは…。こっちの私は随分と積極的じゃないか。



79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 14:25:32.51 ID:4LvY5CuwP

劇の練習が終わって帰ろうとすると、クラスメイトから知らないCDを返された。
どうやら私が貸していたものらしい。もはや気味が悪かった。

家に帰った私はひたすら泣きじゃくっていた。

澪「もう嫌だよ…。帰りたい…。元の場所に、戻りたいよ…」

こんなの、私の未来じゃない。
なんだよ、なんなんだよ…。
何でこんな目に遭わなきゃいけないんだ。

ピンポーン

苦悩に打ちひしがれていると、インターホンが鳴った。

プッ

澪「…はい」

いちご『若王子ですけど…』

意外なことにインターホンを鳴らしたのはジュリエット役のいちごだった。



81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 14:31:09.43 ID:4LvY5CuwP

ガチャ

澪「どうしたんだ?」

いちご「どうしたって。前から約束してたじゃない」

澪「えっ?」

いちご「今日は澪の家で練習するって」

どうやら劇の練習をうちですることになっていたらしい。
そんなことするくらい私といちごは仲が良くなっていたのか。

澪「あ、あぁ…そうだった。上がってよ」

いちご「おじゃまします」

断る理由もないので、いちごを家に上げた。
律以外の人を家にあげるのなんて久しぶりな気がした。



82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 14:37:17.38 ID:4LvY5CuwP

【澪の部屋】

いちご「…やっぱり変」

しばらく2人で劇の練習をしていると、いちごが口を開いた。

いちご「もっとセリフだって覚えてたはずだし、演技もちゃんと出来てたのに」

いちご「澪、どうかしたの?」

いちごがそう思うのは当然だ。
なんたってここにいる私は5ヶ月前から飛んできたんだから。
どうかしたのかなんて私が聞きたいぐらいだった。

澪「いや、なんでもないよ」

いちご「ならいいけど…。何かあるんならちゃんと言って」

素っ気ない印象が強かったが、もしかしたらそれは誤解だったのかも知れない。
いちごの何気ない心遣いが、今の私にはとてもうれしかった。

澪「…ありがとう」

いちご「…!ほ、ほら。練習するよ」

照れくさそうな仕草を見せたあと、ふたたび練習に戻った。
思えば、こっちに来てからまともに誰かと会話をするのは初めてだった。



83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 14:42:15.76 ID:4LvY5CuwP

いちご「私、そろそろ帰る」

澪「あ、あぁ」

そう言うといちごはすっと立ち上がり身なりを整えた。
その仕草に育ちの良さというか、どことなく気品を感じた。

澪「いちご」

いちご「なに?」

澪「ありがとう」

私はいちごにお礼を言った。
いちごといたおかげで、ほんの少しだけ気が楽になったから。

いちご「何、いきなり。変な澪」

いちご「ちゃんと覚えてよ。時間あんまりないんだからね」

いちご「それじゃ」

澪「うん」

いちごはあまり多くをしゃべらず、私の家を出て行った。



84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 14:49:56.77 ID:4LvY5CuwP

【学校】

キーンコーンカーンコーン

澪「…はぁ」

放課後のチャイムが鳴った。
私がこっちに来て一週間が経とうとしていた。
劇の練習もあるし、学校を休むわけには行かない。
学校が次第に文化祭ムードで賑わっている中、私は一人沈んでいた。
授業中はほとんど机に突っ伏して寝ていた。
5ヶ月も先に来てるのだ、授業についていけるわけもなかった。
怠惰な授業を受け、放課後には劇の練習。そんな毎日の繰り返しだった。

澪「また明日」

何人かのクラスメイトに上辺の別れを告げ、教室を出た。

澪「………」

もう、このままでいいのかも知れない。そう思い始めた。
妥協というよりは、諦めの方に近かった。
戻る方法もわからない、そもそもどうしてどうやってここに来たかもわからない。
もしかしたら、一生このまま戻れずに過ごすのかも知れない。

そう考えているうちに、元に戻ることよりもこっちでどう生きていくかに意識が傾きかけていた。



85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 14:56:09.99 ID:4LvY5CuwP

いちご「みお」

澪「ん?」

いちご「一緒に帰ろう」

澪「あぁ」

あれからいちごといる時間が増えた。
互いの家で練習したり、お昼を共にしたりと。
文化祭の劇がなかったら、ここまで仲良くなることもなかっただろう。

結局いちごには事情を話さなかった。
梓とも軽音部とも無関係のいちごを巻き込むわけにはいかなかったからだ。

いちごは元気のない私をいつも気にかけてくれた。
いつしかそれは私の支えにもなっていたし、その優しさに甘えたくもなった。


このままいちごと一緒にいるのも、悪くないのかも知れない…。


そう思うようになっていった。



86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 15:01:36.42 ID:4LvY5CuwP

いちごと階段を下りようとすると、上の階から音が聞こえた。

ギターだった。

唯だろうか。ギター以外の音はしなかった。
ムギと律はまだ教室にいたから、おそらく一人で弾いているのだろう。

―――みーおせーんぱい!―――

―――手、つなごっ?―――

聞き覚えのあるフレーズとともに、梓の顔が浮かぶ。
私の横を幸せそうに歩く梓。
くしゃっとした顔で笑う梓。

―――………最低―――

そして、冷たい目をした梓。

澪「………」

……いったい何をやっているんだ私は。



87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 15:06:32.42 ID:4LvY5CuwP

その場に立ち止まった私は、
諦めていいわけがない。受け入れていいわけがない。

いちご「どうかしたの?」

澪「ごめん、いちご。用を思い出したから先に帰ってくれないか?」

いちご「?いいけど…」

唯のギターで目が覚めた。
戻らなきゃ、元の世界に。

軽音部じゃない私なんて、私じゃない。
梓の隣にいない私なんて、私じゃない。

澪「このままじゃ、ダメだ…!」

そうつぶやいた私は、あるところに向かった。



94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:44:20.18 ID:4LvY5CuwP

【生徒会室】

向かった場所は生徒会室。

コンコン

私は生徒会室の扉を叩いた。

「はい」

ガチャ

澪「…失礼します」

和「あら、澪じゃない。どうしたのこんなところに」

憂「あ。澪さん、こんにちは」

生徒会室には和だけでなく憂ちゃんもいた。
クラスでの出し物に関する書類を提出しに来ていたようだ。
文化祭が近いからか、机には書類やらがたくさん積まれていた。

和「今ね、憂とちょうど澪の話をしていたところだったのよ」



95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:49:40.23 ID:4LvY5CuwP

澪「私の話?」

和「最近の澪、ちょっと様子が変というか…ぼーっとしてる時が多いような感じがしてたから」

憂「この前も昇降口で腕を掴んだりしてたじゃないですか」

憂「別れてから梓ちゃんのことをずっと避けてたのに、急に梓ちゃんのところに来るようになったから…」

憂「それで、どうかしたのかなって2人で話していたところだったんです」

澪「………」

なるほど。
梓とは別れてから一切関わりを持っていなかったようだ。
それが急に関わりを持とうものなら、誰だって変に感じるだろう。
和も最近の私に違和感を覚えていたらしい。

澪「…梓は、最近どんな感じなのかな?」



96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:53:15.62 ID:4LvY5CuwP

憂「梓ちゃん、ですか?」

澪「うん…」

とりあえず、今の梓のことが気になった。

憂「相変わらず…ですね。ぼーっとしてて、上の空って感じで」

憂「ここ最近は澪さんとのこともあってか特に元気がなくって」

憂「澪先輩が何考えてるかわかんない、って泣いてました」

澪「…そっか」

想像していた通りだった。
私が梓にどんなことをしたのかは、怖くて聞けなかった。
でも少なくとも梓の心に大きな傷を負わせてしまったのは確かなようだ。

憂「あの…。何か、あったんですか?」



97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 16:58:16.03 ID:4LvY5CuwP

澪「………」

和「…澪?」

ほんの少し、打ち明けるのが怖くなった。
軽音部を去り、梓とも別れ、どうしようもない日々を送っているこの世界の私に対しても、2人は変わらぬ態度で接してくれている。
事情を話したら、もしかしたらそれすら失ってしまうのかも知れないという不安にかられたからだ。

憂「言えないようなら、無理に言わなくても大丈夫ですよ?」

憂ちゃんは気を遣ってそう言ってくれた。

…ちがう。一番怖いのは、この未来を受け入れてしまうことだ。

失うものなんてもう何もないじゃないか。
私は揺らいでいた決心を固め直し、そして…。

澪「実は…」

2人に事情を説明した。



98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:06:37.61 ID:4LvY5CuwP

和「5ヶ月前から来た?」

澪「うん…」

和「疑うわけではないけど、いくらなんでもそれは…」

憂「記憶喪失とか、そういうのではないんですか?」

2人の反応はもっともだった。
いきなり5ヶ月前からやってきただなんて話、誰が信じるだろうか。
当然といえば当然のその反応に挫けそうになる。しかし私は話を続けた。

澪「…これを見てくれ」

私は手に貼られている絆創膏を剥がす。

澪「4月14日に、猫に引っかかれて出来た傷だ」

澪「5ヶ月も経ってるなら、とっくに治ってるはず」

澪「それに、この髪も」

そう言って私は携帯を開いて2人に見せた。
8月終わりの頃に撮った写真(もちろん覚えはない)を見ると、私の髪は今に比べだいぶ短くなっていた。

和「…確かに、言われてみれば澪の髪が急に伸びた感じはしたけど」

澪「こんなの、5ヶ月前の私がそのまま来なきゃありえないことなんだ」

澪「今2人の前にいる私は、私じゃないんだ」



100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:10:41.94 ID:4LvY5CuwP

自分でも何を言っているんだろうと思う。
私は私じゃないなんて。

憂「…ですけど」

憂「仮にここにいる澪さんが5ヶ月前から来た澪さんだとして、“今”の澪さんはどこに…」

澪「そんなの、こっちが聞きたいぐらいだよ…」

確かに言われてみれば不明した点はいくつかある。
なぜ目が覚めたら雑木林ではなくベッドにいたのか。
“今”の私はどこにいるのか。
だけど、そんなこといちいち考えてはいられなかった。

澪「私、このままなんて嫌だ」

澪「梓もいない、軽音部も辞めてる。こんな未来、私は認めない…」

澪「元の場所に…帰りたいっ…」

藁をもすがる思いだった。
顔は涙でぐしゃぐしゃ、情けない姿を見せてしまっていた。



102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:14:48.97 ID:4LvY5CuwP

澪「……っく、えぐ…」

憂「澪さん」

泣きじゃくっている私に、憂ちゃんは声をかけた。

スッ

憂「涙、拭いてください」

そういって憂ちゃんはハンカチを渡してくれた。

澪「…?」

和「事情はわかったわ。戻れるのかはわからないけど、出来る限りやってみましょ」

澪「……!」

憂「私も手伝います」

澪「……ありがとう。本当に、ありがとう…」

やっと味方が出来た。
戻るんだ、元の場所に。



103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:18:16.00 ID:4LvY5CuwP

ちょい席外しやす。
また夜にでも。




104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 17:50:31.99 ID:msTzP3T1O

了解



106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 18:12:49.92 ID:tqqngKbjO

了解
待ってるぞ



107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 18:39:54.32 ID:uQ1MOaVu0

その未来は今ーヘーイ ナーナーナーヘイヘイヘーオウウオウウォーヘイヘイヘーーーーーエエエエーーイエーーー



121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:21:15.59 ID:ZATjpdHV0

その未来
未来は今
その未来は今
知ってる限りで3つ浮かんだ





122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:36:48.99 ID:4LvY5CuwP

戻りやした。
遅くなりまして。



124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:41:28.13 ID:4LvY5CuwP

それからは3人で生徒会室に集まって話し合うことになった。

和「それで、どんな状況でこっちに来たの?」

澪「家の帰り道にさ、雑木林があるんだ」

澪「その雑木林から不思議な光が出てて…。よくわからないんだけど、それに惹かれるように足を踏み入れたんだ」

澪「そこからはあまり覚えてない、目が覚めたらベッドにいて…」

和「何か変わったことはなかった?」

澪「…特に何も」

憂「うーん…。タイムスリップみたいな感じですかね」

和「まさかそんなことが現実に起こるとはね…」

三人寄れば文殊の知恵、などとはよく言ったものだ。
こんな現実離れした現象、そう簡単に原因がわかるわけもない。
あぁでもないこうでもないと試行錯誤する日々が続いた。



125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:46:27.48 ID:4LvY5CuwP

何日かして和が興味深い話を持ち出した。

和「ねぇ、澪。時震って知ってる?」

澪「時震?『地震』じゃなくて?」

和「少し4月14日について調べてみたんだけど…」

和「その日の夜、ちょうど澪が意識を失ったあたりの時間帯に大きな地震が起きてるの」

憂「それと澪さんにどんな関連性があるんですか?」

和「これよ」

そう言うと和は雑誌を出した。
見出しには『神かくし?超常現象?』と書かれていた。

記事によると、その地震の発生後例の雑木林から動物が一匹もいなくなっていたらしい。
もともと近隣の住民はその雑木林に住む野良猫やらネズミやらに手を焼いていたのだが、
その地震以降ぱったりと被害がなくなったようだ。
原因は不明。時震?神かくし?などと言ったオカルト的な内容で話が締められていた。

澪「これは…?」

和「ちょっと前の雑誌の記事よ、図書館にバックナンバーがあったから持ってきたの」



126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/08(火) 23:52:54.23 ID:4LvY5CuwP

和「読んでみるとわかるけど、その地震以降雑木林から動物が消失したらしいの」

和「こんな紛い物の記事、信用に値するかはわからないけど…」

和「もしかしたら澪はその時震に巻き込まれたのかも知れない」

耳を疑うような話だった。
これが本当なのだとしたら、私はタイムトラベルをしたことになる。
それこそSFの世界での話、にわかに信じられることではなかった。
しかし現に自分の身にそれが起きてるわけで、今はオカルトだろうと何だろうとそれにすがる他なかった。

澪「じゃ、じゃあ…その時震?が来たら元に戻れるってことなのか?」

和「もしかしたらね。けどそんなに言うほど簡単なことじゃないわ」

澪「?」

和「地震は言ってしまえば災害。正確な予知なんて出来ないもの」

和の言うとおりだった。
地震が起こったとして、それが時震である確証はない。
それに、もし時震だったとして元の時間に戻れるとも限らないのだ。



127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:00:47.46 ID:fKec/+yAP

憂ちゃんとは、何度も雑木林に足を運んだ。
懸命に手がかりを掴もうとしたが、何も得られなかった。

学校では着々と文化祭に向けて準備が進められている。
無責任なことも言っていられない。劇の練習も必死にした。
クラスメイトとも徐々に打ち解けられるようになっていった。
というか元々こっちの“私”は割と広い交友関係を持っているようで、
お昼なんかも色々な人と食べるようになっていた。

軽音部のみんなとは相変わらず気まずいままだったが。

いちご「ほら、澪。やるよ」

澪「うん」

劇の練習もいよいよ本格的なものとなっていた。
文化祭は、着実に迫っていた。



128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:06:12.79 ID:fKec/+yAP

澪「ありがとう、憂ちゃん。また明日」

憂「はい、おやすみなさい」

夜も更けてきた頃、憂ちゃんと別れ帰路についた。
今日も日課のように雑木林に足を踏み入れる。
私なりにも色々と調べてはいるが、ちっとも解決の糸口にはつながらなかった。
果たして本当に帰れるのだろうか…そんな不安が日々押し寄せてくる。

憂ちゃんには梓の話もよく聞いた。
別れたばかりの頃は学校を休みがちだったとか。
唯も、めっきり元気がないらしい。
よくも私はそんな中で平然と過ごせていたものだ。

澪「……梓」

梓は、今なにをしているのだろう。

そんなことばかり考えていた。



129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:13:02.59 ID:fKec/+yAP

【澪の家】

ガチャ

澪「ただいま…」

パソコンに電源をつける。
これもこっちに来てからは日課となっていた。
何か手がかりを、そう思っての行為だ。

カチ、カチ、カチ…

無機質なクリック音だけが部屋に響く。

カチッ

澪「ん?」

思わず手を止めた。
視線の先に映るのは何気ないニュースのページ。

『今年2度目の月食、観測か』



132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:21:37.32 ID:fKec/+yAP

興味本位でページを開く。
目を引いたのは、赤銅色をした月の画像。

澪「これって…確か」

この画には、見覚えがあった。
そう、あの時の夜見たものと同じ。
おぼろげだった記憶が紐解かれる。

澪「そうだ…。私、この月の光に誘われて…」

あの時私は雑木林から漏れる不思議な光に誘われるかのように足を踏み入れたんだ。
そして、この赤銅色の月を見た途端に揺れに襲われて…。

記事を読み進める。
前回の月食は4月14日の夜。(画像の月もその日のものだった)
月食の観測後、特定の地域で大きな揺れを確認。
月の潮汐力によって地震が引き起こされる可能性もあるのでは?
などと小難しいことも書いてあった
そして、私の中で一つの仮説が生まれた。

もし、この月をあの場所で見ることが出来たのなら…。

保証はない。あくまで仮説に過ぎないのだから。
でも、信じるしかなかった。
私は慌てて2人に電話をかけた。

もしかしたら、帰れるかも知れない―――!



135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/09(水) 00:32:44.25 ID:fKec/+yAP

澪「………」

もう夜も遅いというのに私は電気もつけず部屋で物思いに耽っていた。
2人に電話をすると、それぞれよろこびの声が返ってきた。
やっと帰れる可能性が見つかった。こんな狂った未来ともおさらばだ。(まだわからないけど)
だけど、私の心は晴れなかった。もやもやとした何かが引っかかっていた。

帰りたくないということではない。
そう思う原因は例の月食の観測日にあった。
次の月食が観測出来るのは9月27日の夜。

文化祭の日だった。

こんな間違った未来で何をしたって無駄だと言うことはわかってる。
わかってる、けど…。

私は軽音部を、取り戻したかった。
文化祭のステージで、みんなと演奏がしたかった。
このまま文化祭が終わるまでだらだら待っているだけなんて、嫌だった。

澪「……よし」

私は固く決心した。
迷っていても仕方がない。
やれるだけ、やってやる。


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澪「その未来は今」#前編
[ 2011/02/09 17:59 ] SF | 澪梓 | CM(0)

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