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紬「けいおん自給自足」#むぎあず 第三部 【非日常系】


ニュー速VIP避難所(クリエイター)より


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紬「けいおん自給自足」#むぎあず 第一部
紬「けいおん自給自足」#むぎあず 第二部




39 名前:むぎあず:2010/10/04(月) 00:08:34.03 ID:3BHRwJko

日付が変わる前に投下したかった第三部の開始。

――――――――――――――――――――――――――――――――
引っ越してから一週間以上たった。
新しい環境にもなれ、後は入学式を待つのみだった。

もっとも、私が落ち着いていられるのは三つの理由があるからだった。

ひとつは、唯ちゃん、りっちゃん、澪ちゃんの存在。
みんなこっちへ越してきて、一緒に小物などを買いにった。
私はあまり買うものはなかったのだけれど、みんなでお茶わんやカップを選んだりととても楽しかった。
皆が私が選んだものを買ってくれた時、私はすごく嬉しかった。

買い物が済むと、私たちは決まってあるところへ行った。
りっちゃんと澪ちゃんの部屋。
2人は一つの部屋(といっても、二人に一つずつの部屋とダイニングキッチンの3部屋がある)を
かりて一緒に住んでいた。
私にはわからないけれど、このほうが家賃が少なくいい部屋に住めるのだそうだ。
りっちゃんは澪の一人暮らしなんて危ないからなーと言っていた。

でも、それだけじゃないんだろうな。

私は2人が羨ましかった。
お互いを必要とする関係。
ふと、梓ちゃんの顔が浮かぶ。
梓ちゃんも、私を必要としてくれるのかな……

皆といると、私は笑顔になる。
皆も、笑顔でいる。
それだけで嬉しかった。





40 名前:むぎあず:2010/10/04(月) 00:13:56.46 ID:3BHRwJko

もう一つは、梓ちゃんの存在だった。

私が引っ越した日から、夜に梓ちゃんと電話をするのが日課になっていた。
始めに電話をかけたのはどちらからだったか忘れてしまったけれど、今はかけるのは私から。

色んな事を話した。
軽音部に憂ちゃんと純ちゃんが入ってくれたこと。
純ちゃんが唯ちゃんみたいで世話がかかると梓ちゃん入っていた。
でも、言葉の端から梓ちゃんの幸せが伝わってきて、私の心がぽかぽかした。
私が皆とお出かけしたことを話すと、梓ちゃんは寂しそうにした。
梓ちゃんが心配で、羨ましい?のと聞くと
「そ、そんなことないです!」
と言った。
少しさみしくなって、梓ちゃんは私がいなくても大丈夫なの?と聞いてしまった。
聞いてしまって、きかなければよかったと思った。
梓ちゃんを困らせてしまうし、何より。

拒絶されてしまったらどうしよう……

出してしまった言葉は戻すことはできない。
数秒の沈黙。
そんなに長くなんてなかったけれど、私にはまるで処刑を待つ罪人のように感じた。

「大丈夫なわけ……ないじゃないですか。
 寂しくないわけないじゃないですか……」

ごめんなさいと私はあやまった。
申し訳ないという気持ちの奥に汚い喜びを感じて、私はまた申し訳なく思った。



41 名前:むぎあず:2010/10/04(月) 00:20:00.96 ID:3BHRwJko

その日いつもの時間。
電話をかけようと携帯を手にした時、ふと一つの考えが浮かんだ。

いつも電話をかけているのは私。
もし、私が電話をしなかったら、梓ちゃんは電話してきてくれるだろうか……

携帯を握りしめベットへ飛び込む。
携帯電話とにらめっこしていても、着信は来ない。
私からかけてしまおうか……
そんな気持ちがわいてくる。
それでも我慢して、私はまた携帯電話をじっと見る。


何度繰り返してしまっただろうか。
もう我慢できない、そう思ってかけてしまおうと思ったときにはもう大分時間がたってしまっていて。
今かけてしまうと迷惑になる。

―――――もう寝てしまおう。

そう思ったはずなのに全然眠くれなくて。
私は自分の寂しい気持ちに気づいてしまった。

かけてしまおうか。
いや、だめ。
そんな考えが私の中でループして、私はどちらへも行けなくなった。


梓ちゃんは私がいなくても大丈夫なんだ……
そう思ってしまうと私は悲しくなる。
駄目だと思うほど、また私のダムに水がたまっていくのを感じる。
ぐっと涙をこらえる。
着信は、な―――――――――――



プル……



42 名前:むぎあず:2010/10/04(月) 00:27:11.68 ID:3BHRwJko

「うわっはや!
 っていうか何で泣いてるんですか?!」

私は梓ちゃんに説明した。

「……すみません。そんな風に思ってるなんて気が付きませんでした」

梓ちゃんが悲しそうにしているのがわかる。
梓ちゃんが悪いわけじゃないの。
私が悪いの。

「ムギ先輩は何も悪くありません!
 実は、私もなんです。
 何度か私からかけようと思ったんですけど、なんとなく迷惑なんじゃないかって。
 ほら、そっちにはみなさんがいるじゃないですか。
 だから、ムギ先輩はもう大丈夫なんじゃないかって……
 寂しいのは私だけなんじゃないかって思っちゃって……」

梓ちゃんも、さみしいの?
憂ちゃんや純ちゃんと楽しそうにしてると思っていたのに。

「たしかに、二人といても楽しいですよ。


 でも……
 こっちにはムギ先輩がいないじゃないですか」



43 名前:むぎあず:2010/10/04(月) 00:31:55.97 ID:3BHRwJko

私?

意外だった。

梓ちゃんは他のみんなとのほうが仲がいいと思っていた。

「皆さんは確かに特別です。

 でも、ムギ先輩は中でも特別っていうか……」

私はどうなんだろうと考えるまでもなかった。
ちょっと前まではみんな特別だった。
でも、こんな風に何でも話して、弱いところも汚いところも見せたのは梓ちゃんが初めてだった。
私の中で、梓ちゃんは特別。
ううん、きっとそれ以上のものだった。

「なんだか恥ずかしいですね……
 でも、私がムギ先輩の中で特別になってるなら嬉しいです」

私も、すごくうれしかった。

だから、打ち明けようと思った。
打ち明けるのはすごく怖い。
でも、知っておいてほしいと思った。
琴吹紬という人間を。
私と言う存在の意味を。


「ねえ、梓ちゃん。
 遊びに……来てくれる?」



44 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/10/04(月) 00:33:30.79 ID:3BHRwJko

sageていたことに今気づく。
アドバイスなんかもあればぜひかいてくだしあ



45 名前:むぎあず:2010/10/06(水) 22:19:59.30 ID:NCBk/eQo

梓ちゃんが私の部屋へやってきた。
隠そうとしていても、困惑している様子が伝わってくる。
やっぱり、驚いたよね。やっぱり、普通じゃないよね。


こんな私でも、受け入れてくれますか?


「いらっしゃい。 驚いたわよね」



46 名前:むぎあず:2010/10/06(水) 22:21:51.33 ID:NCBk/eQo

ムギ先輩の部屋は、所謂マンションの最上階というやつだった。
それも、賃貸の安い部屋でなく、それなりの値段がしそうな分譲マンションの、だった。

私がオートロックのマンションの一階でインターフォンを鳴らした時、出たのは男の人だった。
私が間違えてしまったのかとオロオロしていると、
「中野様でございますか?」
良く聞くと、少し聞き覚えのある声。
ムギ先輩の執事の人の声だった。
「お嬢様からお聞きしております。
 どうぞお入り下さい」
そうして玄関を抜けエレベーターで指定された階に向かうと、一応廊下はあったのだけれど、部屋へ入るドアはひとつしかなかった。

すごいのはここまでではなかった。

たったひとつのドアの向こうにあったのはムギ先輩の部屋ではなく、応接間のようなところだった。
そこで一人のメイドさんと、さっきの執事さんが私を出迎えた。

「いらっしゃいませ。 良く来て下さいました。
 上の階で紬お嬢様がお待ちです。」

上?!
これ以上上があるのか……



47 名前:むぎあず:2010/10/06(水) 22:22:37.14 ID:NCBk/eQo

ムギ先輩のいるという上の階へは階段で繋がっていた。
マンションの上に一軒家があるという感じだった。
2階にあがると、ガラス張りの壁から庭があるのが確認できた。

私があっけに取られてキョロキョロしていると、
「梓ちゃん、こっちよ」
とムギ先輩がよんでいて、ムギ先輩に着いて行って、ようやく私はムギ先輩の部屋に到着したのだった。



48 名前:むぎあず:2010/10/06(水) 22:24:39.34 ID:NCBk/eQo


「いらっしゃい。 驚いたわよね……」

私はちくりと胸がいたんだ。
電話で私に来てほしいといった時と同じ声。
悲しそうな声。

そんなことない。
そんな言葉が出てしまいそうになるけれど、私はそれを飲み込んだ。そんなこと望んでいないだろうから。
すぐに嘘だと見破られてしまうだろうから。

だから私は出来るかぎりの強がりで、何でもないように言う。
驚きましたよ、と。

「普通じゃないよね……」

私は言葉に詰まってしまう。
何と言えばいいのかいろんな言葉が頭の中を渦巻くけれどどれも陳腐でとても言えない。
そして、その沈黙が肯定を表しているようで私は悔しくて俯く。

ムギ先輩も悲しそうな表情をする。
その顔を笑顔にする方法が思い付かなくて、私はさらに俯く。



49 名前:むぎあず:2010/10/06(水) 22:28:31.23 ID:NCBk/eQo

「ごめんね……
 こんな事されても梓ちゃんを困らせるだけだよね」

そんなことないです。
ただ、ムギ先輩がそんな顔してるのに、何も出来ないのが悔しくて……

そこまで言うと、ムギ先輩がギュッと抱きしめてくれた。
唯先輩とは違う、優しくて心までと抱きしめられているかのような、そんな抱擁。

「梓ちゃんは優しいわね」

そんなことはない。優しい人なら、きっとムギ先輩にこんな表情をさせないのに。

「私はね、なにかしてほしくて呼んだわけじゃないの。
 ただ、知っておいてほしかった。
 これがね、琴吹紬なの。
 みんなといたただの女子高生だったのも私だけれど、今ここにいる琴吹の娘も私。」





ああ……私はばかだった。
今日見たもので、ムギ先輩が遠くに行ってしまった気がしていた。
自分が感じる恐怖でいっぱいになっていた。

先輩の暖かさが感じられてようやく、私は気がつくことができた。




少し考えればわかったのに。
少し優しければわかったことなのに。



暖かな体が、こんなに震えていることを。
私と同じ、ううん。それ以上の恐怖を感じていることを。



50 名前:むぎあず:2010/10/06(水) 22:47:01.12 ID:NCBk/eQo

「ねえ、梓ちゃん。
 やっぱり、普通じゃないよね」

私は、やっぱりなんて言っていいのか分からなかった。
でも、勇気を振り絞って打ち明けてくれた先輩に対して、私も本当の気持ちを伝えたいと思った。

私の知っている普通ではない、と。

私を抱く体がこわばる。
だから、離れないように。
今度は私がその体を強く抱いた。

今日でムギ先輩の事、いろいろと知りました。
はっきり言ってしまえば、もしかしてムギ先輩がすごい遠い人なんじゃないかって思いました。
でも、やっぱりムギ先輩は私の大好きな、ムギ先輩です。

「こんな私でも、好きって言ってくれるの?」

はい。
私にとって、当たり前のことだった。

「こんな私でも、梓ちゃんのこと大好きでもいい?」

そ、それはムギ先輩が決めることなんじゃないでしょうか……?
でも、ムギ先輩が好きだと言ってくれるのは素直にうれしかった。

「こんな私を、受け入れてくれますか?」

もちろん。
こんな私でよければ。

「ありがとう、梓ちゃん。
 大好き! 大好き! 大大だーい好き!」

ちょ、ちょっと!

ムギ先輩が体重をかけてきて私は後ろに倒れてしまった。



51 名前:むぎあず:2010/10/06(水) 22:57:45.04 ID:NCBk/eQo

ムギ先輩が頬ずりしてくる。
何度も、何度も。
私は恥ずかしくて、やめてくださいと言ったが聞き入れてはもらえなかった。
私が下になる形で抱きつかれているので、より暖かさと……そして甘い良い香りが強く伝わってくる。

口では嫌がって見せるけれど、引き離す気にもなれなくて結局私はなされるがままだった。

「ね、梓ちゃん。
 大好き」

この体勢で言われると何というか……
ムギ先輩の色気がすごいというか……
とにかく、とても恥ずかしかった。



52 名前:むぎあず:2010/10/06(水) 23:13:07.51 ID:NCBk/eQo

急に頬ずりがやむ。
暖かさが離れていってしまうのを感じて少し名残惜しく思ってしまった。

「梓ちゃん」
そう言うとムギ先輩は目を閉じた。



……

…………

………………

……………………

…………………………これって、もしかしてアレ?だよね


意識してしまうと急に気恥かしくなってしまう。
っていうか何なんだろう。
これはあれなんだろうか、ムギ先輩の中では仲のいい女の子同士でじゃれあってする感覚なんだろうか。
いやそうに違いない。
そう思いたい。
鼻が敏感になってムギ先輩の匂いを強く感じる。
陶器のような肌、ふわふわの髪、整った鼻、全てが近い。

うわっ、すごくまつ毛が長い。

そして――――――唇はぷくっとしていて、まるでそこだけ別のもののようだ。

心臓が痛いほど脈打つ。
意識がムギ先輩の唇に集中する。
目が、離せなくなる。

とても甘くておいしくて、いとおしいものに思えてくる。

触れたい―――
感じたい――――――

誘惑は悪魔のささやきで。
私の正気はすでに色香に飲まれていて。
つまり、それは。







―――――――――――――――――――――




53 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/10/07(木) 00:05:39.35 ID:7ZkZJmoo

続きが読みたい!



54 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/10/07(木) 01:00:27.40 ID:xlm.peso

くそっ!
こんなところでとめやがって!

覚えてやがれ!





55 名前:むぎあず:2010/10/07(木) 14:24:47.42 ID:7GePCsDO

携帯から少しだけ投下。
携帯でかくと文体が変わってしまうのが痛い。
-----------------------
頭がぽーっとする。

ぼんやりと、考える。
ああ、これが私のハジメテなんだ……

初めてはレモン味なんて、信じてたわけじゃないけれどやっぱり嘘っぱちだった。
味なんてしなかった。




私の初めては、柔らかな感触と、




むせ返るような、ムギ先輩のにおいだった。



56 名前:むぎあず:2010/10/07(木) 14:27:52.87 ID:7GePCsDO

ムギ先輩が離れる。
同時に、少しだけ、理性が帰ってくる。
軽く触れただけ。
なのに、脳の芯まで溶かされて、まるでどろどろに溶けてしまったかのような不思議な感覚。

ああ、しちゃったんだ――――――


人差し指で唇をなぞる。
さっきとは、全然違う感触。
だから、感じる。
ここに、ムギ先輩の唇が……


私、ムギ先輩と、キス、したんだ――――――――


味はやっぱりしなかった。
でも、とても甘くて、暖かくて、ほんの少しだけ酸っぱくて。
レモンっていうのは、味の事じゃないんだなぁと、そんなことを考えた。



59 名前:むぎあず:2010/10/08(金) 12:27:44.82 ID:Ry61toDO

「梓ちゃん、嫌じゃなかった?」

もう、何でそんなことを聞くんだろう。
嫌だったら断ってる。
好きだから、してもいいと思ったから私は、私から……
そう、私から…………
こんな事を言えと言うのだろうか?
考えるだけでも顔から火が出そうなのに。
いや、ひょっとしたらもう出てるかも知れなかった。

でもずっと黙っていてもそれはそれで恥ずかしい。
ムギ先輩の顔が近いから。
さっきあそこに触れたのだと、考えてしまうから。
だから私は、嫌じゃないですと、声を搾り出した。

「ありがとう」

ムギ先輩が微笑むと唇の形が変わって……って、私は一体どこを見ているんだろう。
なにかいわなきゃと思う。
『こちらこそ』
『ごちそうさまでした』
『おいしかったです』
ああもう私は何が言いたいんだろう。
どうやらまだ脳が蕩けていて、体はふわふわとまるで宙をさ迷っているようだった。

ああ、えっと、その、あの

言葉にならない声だけが、私の口から出てしまう。




ああもう、一体私は何をしてるんだろう―――――――――――――――!



60 名前:むぎあず:2010/10/08(金) 12:31:28.18 ID:Ry61toDO

「私の初めて、梓ちゃんにあげちゃった」

ああ、この人はずるい。
本当にずるい。
可愛すぎてずるい!
そんなこと言われたら、また嬉しくなっちゃう。

「ねえ、梓ちゃんは初めてだった?」

ああもう、私だって初めてです!
私の顔からはきっともう火が出ているに違いなかった。

「えへへ、梓ちゃんの初めて、貰っちゃった」
ムギ先輩は、本当にずるい。
そんな顔で笑われたら、もうだめ。
落ちてしまう。

「嬉しい」

私だってこんなに嬉しいですよ!
私は素直じゃないからそんなこと言えなくて。
ムギ先輩の天使のような笑顔を見ながら、
何となく、初めてがムギ先輩でよかったなんて思い始めていた。



61 名前:むぎあず:2010/10/08(金) 12:37:05.57 ID:Ry61toDO

ムギ先輩、こういうことはそんな簡単にしちゃダメです。

私はそういった。
それは照れ隠しでもあったし、無邪気で純真なムギ先輩を思っての言葉だった。

でもムギ先輩はわかっていないような顔で言う。
「どうして?」

どうしてって、それは。
キスは、大事なものだから。
本当に好きな人とだけ、するものだから。
いくら女同士とは言えこんな簡単にするものじゃない、と思う。

「私は、梓ちゃんの事大好きよ?」

今大好きっていうのは、ずるい。
でも、私は言う。
言うというよりも、口から思ってもいないことが出てしまう。
私もムギ先輩の事は大好きだけど、キスをするような好きは、恋人とかそういう人に向ける好きなんだって。

「ふふ」

何でそこで笑うんですか!
私は真面目にですね……

「梓ちゃん。
 私は相手が男の人でも、女の人でも、梓ちゃん以外にキスなんてしないわ」


うっ……
ずるい。
ずるいずるいずるい!
そんなこと言われてしまったら、何も言えなくなってしまう。
そんなこと言われたら……


嬉しくて仕方なくなってしまうじゃない。


「安心した?」

私は何も言えなくて俯いてしまう。



62 名前:むぎあず:2010/10/08(金) 12:39:27.88 ID:Ry61toDO

もう、ただの友人とは思えなかった。
でも、恋とも違うかもしれない。


だけれど、私は。

ムギ先輩に―――琴吹紬の魅力に。
すっかりと落とされてしまったのだった。




63 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/10/09(土) 20:23:57.96 ID:5J0cYIAO

続き期待してもいいよね?





64 名前:むぎあず:2010/10/10(日) 20:26:48.19 ID:1vCg20co

>>63
エロはないよ!

―――――――――――――――――――――――――――――
梓ちゃんの顔が離れていく。

思っていたよりずっと、私は冷静でいられた。
まるで夢のようだ、そう思えるけれどそうでない実感がある。
目の前の少女。
誰よりも、愛し人。
天使だと、そう思っていた女の子。
でも、彼女が本当に天使でなくてよかった。
こうして触れ合って、自分の想いを伝えることができる。

私は臆病で、どうしようもない人間だった。
直前になって、やはり勇気を振り絞ることができなかった。
拒絶されるのではないかと。
そう思うとそれ以上進めなくなってしまった。

だから、彼女からしてくれて、本当に嬉しかった。
それは、私の不安も、私の想いも。
全てを受け入れてくれたような気がした。


言葉だけでは伝わらない想い。
私の気持ち。
伝わったかな。
伝わるといいな。



65 名前:むぎあず:2010/10/10(日) 20:34:40.35 ID:1vCg20co

その日、私はムギ先輩のお家に泊まることになった。
本当は帰ろうと思ったのだけれど、ムギ先輩が夕ご飯を作るから食べてほしいと言った。

意気込んだムギ先輩を止めるなんてことは私には出来なかった。
それに、ムギ先輩が私のために作ってくれる、なんて言われたら。
嬉しくて、断ることなんてできなかった。

夕ご飯はとても美味しくて。
私がおいしいというとムギ先輩が喜んでくれて。
私は自分が満たされていくのを感じていた。



66 名前:むぎあず:2010/10/10(日) 20:50:25.69 ID:1vCg20co

「ねえ、梓ちゃん。
 梓ちゃんにとって私は何?」

すごく難しい質問だった。
それは私のこの迷いをチクチクとつついてきた。

「もう、私は先輩じゃないよ?」

私の心臓がドクンと跳ねる。
私とムギ先輩のつながりとは何なのだろうか。
先輩でも後輩でもない。
だとしたら、ムギ先輩にとって私は何?
赤の他人?
声を出そうとして、気づく。
まるでのどがカラカラになっているようだった。
私はまるで駄々っ子のように声を振り絞っていう。
ムギ先輩にとって私は――――――

「私にとっての梓ちゃんはね、とても大切な人よ。
 先輩後輩なんかじゃとっても言い表せない。
 親友って言うのも、なんだか変な感じ。
 そんなものよりずっと。
 大切な、大切な人よ」

言葉だけではなかった。
声に乗せて伝わって来たもの、それはムギ先輩の想いだった。
痛いほど、切ないほど伝わった。

私は、すごく恥ずかしくなる。
こんなに思っていてくれているのに。
こんなにも愛されているのに。
信じることができなかった。

「私もね、同じよ。
 梓ちゃんは優しいから。
 私はどこかで本当は求められてなんかいないんじゃないかって思ってしまうの。

 だから、できれば聞かせてほしいな。
 梓ちゃんの本当の気持ち。」



67 名前:むぎあず:2010/10/10(日) 20:53:58.25 ID:1vCg20co

もう何度も言った気がする。
でも、先輩が信じられないというなら。
この想いが伝わるまで何度でも言おう。
ムギ先輩が求めるのなら、声が涸れても伝えよう。



ムギ先輩、大好きです。



68 名前:むぎあず:2010/10/10(日) 21:34:17.12 ID:1vCg20co

「ただの先輩以上に思ってくれるなら、呼び捨てで呼んで」

ああ、そう言うことだったのか。
前に、初めてあだ名で呼ばれて嬉しかったって言ってたっけ。

「それもそうだけど。
 やっぱり梓ちゃんには呼び捨てで呼んで欲しいの。」

ムギ先輩のストレートな思いが伝わってきて恥ずかしくなる。

ムギ―――――


すごく喜んでいる。
なんだか私も距離が近づいた気がして嬉しかった。

「……あずさ」

うっ……
駄目だ……
嬉しさと恥ずかしさで顔が赤くなるのを止められない。

「あずさ」

ムギ

「あずさ」

ムギ

2人で笑いあう。
確かに、ムギせ――― さっき言っていたこと、わかる気がした。
呼び名一つだけだけど。
たかがそれだけだけど。

たしかに、心の距離は近づいていた。





「敬語も、少しずつ、ね」

……善処します




69 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/10/11(月) 01:37:36.99 ID:3XQtppgo

いい感じじゃん





70 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 22:14:21.78 ID:X4S8Clso

待ち遠しかった制作復帰。
投下していきますが、視点がころころ変わるので注意。
基本的には線で時間か視点が切り替わるようになっています。
自分でもいい方法がわからないのでこうしたらいい、という意見は常に募集しています。



71 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 22:15:07.89 ID:X4S8Clso

そして新しい生活が始まった。

以前のように毎日電話することはなくなった。
それは、私が大学が始まり忙しくなったことや、梓が受験生になったこと、いろんな原因があったと思う。

でも、それは私たちの距離が離れてしまったというわけじゃない。
離れていても、相手のことを思っている。
繋がっている。
そう言う確信が私にはあった。

だからと言って、ずっと一緒にいるのが当たり前だとも思わない。
私と梓のつながりは脆いもので、いつ切れてしまうかわからない。
私と梓は、別の人間だから。
完全に理解するなんてことはできないから。

だから私は、大切にする。
何よりもいとおしく思う。
このつながりを。
この心の暖かさを。



72 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 22:21:41.44 ID:X4S8Clso

その日私たちは電話をしていた。
かけたのは……どちらでも同じことかな。

「ムギは、どうやって曲を書いてる?」

そっか、澪ちゃんもわたしももういないから、梓ちゃんが曲を作るんだ。
……聞きたいな、梓ちゃんの曲。

「うっ――――
 なんかそう言われると照れくさいね。
 でも、澪先輩もムギもいなくなっちゃて曲のことまかせっきりだったなぁって。
 私の番が来てやっとその難しさに気づいたよ」

だから、曲の書き方を教えてほしいということらしかった。
でも、曲を書く、といわれてもピンとこない。
書こうと思って書いたことがないとは言わない。
でも、私にとって曲は書くものではない。
私の心が、感情が旋律になってあふれていくもの、それが私にとって曲だった。

「想いが、あふれ出るもの……
 なるほど」

難しく考える必要はない。
子供のころから音楽に接してた梓なら想いを旋律にできるはず。
口でなく、手足でもなく、楽器を使って表現するだけ。

「出来るかな……私にも」

できるわよ、絶対。

「私にもムギみたいに、心に響く曲が作れるかな」

梓なら、私よりもっと素敵な曲が作れるわ。

「伝えられるといいな。
 私の気持ち」



73 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 22:25:12.27 ID:X4S8Clso

ねぇ、梓。
今の気持ちを、私に"聴かせて"もらえる?



74 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 22:26:33.04 ID:X4S8Clso

『梓の気持ちを聞かせて』

難しい。
結局、それは来週までの宿題になった。

『自分の気持ちを、素直に見つめて』
『あふれ出る気持を旋律にするの』

私は素直じゃないから。
自分の気持ちを素直に見つめるのはすごく難しい。

でも、少し私は変わったんだと思う。
先輩たちの卒業で、わかったことがある。

変わらない物なんてないことを。
大切なものも、大切な人も全部。
当たり前にあるものなんて、ないんだ。

キュンと胸が苦しくなる。
当たり前すぎて気付けない?
違う。
考えたくないから考えないだけ。

今あるものすべて、私の大切なもの。

放課後ティータイムも、今の軽音部も。
私の、大切なものだから。
私が大事にしなくてはいけないものなんだ。



75 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 22:28:16.17 ID:X4S8Clso

私の周りには、大切なものばかりだ。

目を閉じれば幸せな時間。
私一人では得られない時間。

私は、とても幸せな人間だ。
うぬぼれでも何でもなく、そう思う。

だから、大事にしなくちゃいけない。
大好きな人たちといられる、この時間を。

そして――――――



76 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 22:40:24.64 ID:X4S8Clso

土曜日。
ムギ先輩との約束の日。
私は、なんとか曲を作った。

部室のソファに座る。
安物だから、少し硬い。
でも、私の心は深く沈んで行く。

疲れてるのかもしれないし、怖いのかもしれない。

そういえば、憂たち遅いな……

―――――ダメだな。
ずっと曲と、自分の感情と向き合っていたせいだろうか。
まるで親の迎えを待つ子供みたいに、悪い想像ばかりが膨らんでいく。

「ごめーん、梓ちゃんおまたせー」
「おまたー」

ああ―――――
私の暗闇に手が差し伸べられる。

どうしたの? 憂が遅刻するなんて珍しいね。

「あれ? 今日はお小言なし?
 てかなんで笑ってんの?
 あ、もしかして私たちが来ないかもって思って寂しかったの?」

変なところで鋭いなぁ。
でも…



77 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 22:41:16.22 ID:X4S8Clso

「そうかも、って……梓どうしたの?
 熱でもあるの?」
 
「純ちゃん、それひどい」

ううん、いいよ。

「ねぇ梓、本当に大丈夫? 体調とか悪くない?」

こうして見つめてみると、よくわかる。
自分がどれだけこの友人に甘えていたか。
どれほど助けられていたか。

律先輩とおなじ。
自分勝手なようで、実は一番人に優しいのだ。

そして、一番助けられていた人は、私。

純は、すごく優しいね。

「や、やめてよ
 なんか梓に言われると恥ずかしいって言うか……」

「でも、純ちゃんはすごく優しいよ」

「やめて! あんまり私を褒めないでー!」

「でも、本当に梓ちゃんどうしたの?
 なんだかいつもの梓ちゃんじゃないみたいだけど」

それはたぶん。
自分の深いところにふれたから。
でも、たぶんこれは伝わらないだろうな。
だから私は言う。

ちょっとだけ素直に生きることにしたんだ、って。



78 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 22:53:41.07 ID:X4S8Clso

――――――ジャーン

「今のいい感じだったんじゃない?」

……サビのところ、純だけ走ってたよね。
憂が合わせたから私も走っちゃったけど。

「あれ? そうだった?」
「あはは…… ごめんね梓ちゃん」

ねぇ、純、憂?
サビのところはもっと走ったほうがいいと思う?

「え……?
 怒ってんじゃないの?」

「……私はつられちゃっただけで、ちょっとどっちがいいかって言われても。
 ごめんね」

「私は走ったほうが好きかなあ。
 やっぱ曲が盛り上がったらこう、心も走っちゃうって言うか」

それは、わかるかな。

「梓ちゃんもしかして曲調変えるつもりなの?」

「え? マジで」

それはないよ。
確かに曲に気持ちを乗せるのは大事だけど、演奏してるほうの自己満足じゃ仕方ないし。
それにこの曲は、私たちが作ったものじゃないしね。

「……ごめんね」

いや、別に攻めてるわけじゃないよ。
やるならやっぱりアレンジとか

「アレンジかぁ」

「アレンジ! いいじゃんやろうよ」

それよりも、私実は――――――



79 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 23:02:23.24 ID:X4S8Clso

――――
――――――――
――――――――――――――

「あ!」

「どうしたの?」

「ごめん、憂、梓!
 今日家にいとこ来てて出かけるから早く帰ってきてって言われてたんだ!」

「梓ちゃん、実は私も今日はお姉ちゃんが帰ってきてて、できたら早く帰りたいなぁって」

そう言うことじゃ、仕方ないよね。
じゃあ今日はここまでにしよっか。

「代わりと言っちゃなんだけどさ、明日も練習しない?
 午前中だけとかさ」

「私は賛成かな。新歓ライブ成功させたいし」

うん、私も2人ともっと練習したいな。

「じゃあ、そう言うことで!
 憂、帰ろう」

「うん、純ちゃん帰ろう」

あ、待って、私も……

「ああ! 梓はもうちょっと練習していきなよ!」

「そうそう、せっかくギター引けるんだしアレの続きとかしたらいいよ!」

「「じゃあ!」」

え? ちょっと二人とも

「明日、楽しみにしてるから!」
「梓ちゃんの曲、聞かせてね!」



80 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 23:05:27.84 ID:X4S8Clso

そういって2人は去っていく。
私を置いてけぼりにして。
最近、少しこういうことが増えた気がする。
なんだか、二人の間に入っていけないって言うか。

ちょっと、疎外感。

首を振ってその考えを振り棄てる。

2人は、私のことを気遣ってくれたんだろう。
じゃないと、あんなに不自然なウソをついたりしないだろうし。

――――あぁ、また私は優しさに甘えてしまってるんだな。
やっぱり、二人は私の宝物だ。

この気持ちを、弦に乗せる。
聞いた人に、この気持ちが伝わるように。
幸せを、そしてありがとうを。





そして――――――
私が気付かぬうちに――――――



81 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 23:09:30.19 ID:X4S8Clso

―――――――
――――――――――――
―――――――――――――――――
「ねえ、純ちゃん」

「んー? 何?」

「梓ちゃんの曲、どんな曲なんだろうね」

「そうだねー。
 そりゃちょっとくらいは想像つくけど」

「……私には、わかんないや」

「あーもう、そこでいじけないのー」

「そういうわけじゃないんだけど。
 やっぱりね、私は他人の気持ちなんてわからないよ。
 私は、やっぱり違うんだよ」

「……うん、違うよ。
 梓と憂は違う。
 私と憂も、違う」

「……やっぱり」

「でも、私と梓も違うよ。
 いいじゃん、それで。
 私にも憂や梓が何考えてるのかなんてわかんない」

「それでもっ――――!」

「それでも!
それだから、憂は私のこと理解しようとする、そうだよね?
 じゃ、それでいいんだよ」

「――やっぱり純ちゃんは優しいね」

「そんなことはないと思うけどね。
 ま、憂からの言葉ならありがたく受け取っておくよ」


―――――――――――
――――――――
―――――



82 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 23:16:37.31 ID:X4S8Clso

そして――――――
私が気付かぬうちに――――――

その人は、私の目の前に。

「びっくりした?」

当たり前だよ……
何でここにいるの?

「今日は、約束の日だから」

それだけのためにわざわざ?

「それだけ、って言うのは酷いわ。
 でも、確かにそれだけじゃないけど」

何のために、は伏せられた。
でも、私も追及しなかった。

できれば、同じ気持ちであってほしいと思うから。
たぶん、同じ気持ちだと思うから。
会いたいと、そう願っていたから。

お久しぶりです。
ムギ先輩



83 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 23:17:06.18 ID:X4S8Clso

「ええ、お久しぶり。梓ちゃん」

私の意図をくみ取ってくれたのか、そう返してくれる。

もしかしたらムギも懐かしんでいるのかもしれない。

ムギと梓でなく、ムギ先輩と梓ちゃんとして。
あの頃と同じように。
私たちがこの場所で笑っていたあの頃と。

「そのまま続けてくれる?」

もうどこまで弾いたか忘れちゃいましたよ。

「そっか。
 じゃあ、改めて。」

そう、ムギ先輩は区切った。

「梓ちゃんの曲、聞かせてくれる?」

はい。そして私は答える。
弦をはじく。
ビーンと鳴る。
ギターは、いつも素直だ。
だから私も。
素直に心を響かせる。



84 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 23:18:45.28 ID:X4S8Clso

――――――――――――

その曲は、とても軟らかく暖かな曲だった。
アップテンポというには少し穏やか過ぎるくらいに。
心地よい、心躍るリズム。

伝わる、梓の気持ち。
だって、私も同じだったから。
同じ時間を過ごしていたから。

そしてたぶん、今梓の周りにいる人たち。
憂ちゃん、純ちゃん。

きっと、みんなへの想いでこの曲は出来ている。

皆を思う、梓の気持ちで出来ている。

優しくて、奇麗。
だけど、それだけではなく、激しく強い思い。
それが込められている。

まるで梓の人となり、そのもののようだった。

私がなぜ梓に惹かれるのか。
それが少しわかった気がした。



85 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 23:20:09.90 ID:X4S8Clso

「どうでした?」

そうね、優しくて暖かい、いい曲だったわ。
梓の気持ちが素直に伝わってきたよ。

「そうですか?
 正直、本当にただ詰め込んだだけになってしまったような気がするんですが」

そうね。
でも、私も最初はそうだった。
梓は小さいころから音楽に囲まれているから、私が初めて作ったものよりずいぶん形になっていると私は感じた。

確かに、梓には作曲に対する知識も経験もない。
でも、それは後から付けられる付けられる。
大事なのは、想いをこめること。
想いを伝えられること。

少なくとも、私はそう思っている。

そして、私はまたこうも思った。
羨ましいと。
その強さが。
激しい想いが。
だけれども、これはナイショにしておく。
なんだか、これを言ってしまうのは、まるで告白のようで恥ずかしかったから。

「私の想いは、届けられると思いますか?」

今の段階ではまだ難しいかもしれない。
でも、きっと届くものにできる。
そう思った。



86 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 23:21:17.30 ID:X4S8Clso

―――――――――――
「どうしよっか?
 曲についてもっとこうしたらいい、って言うのは言えるけど、たぶんそれは憂ちゃんと純ちゃんと相談してもいいし……
 そうだ、歌詞はちょっとくらい考えてる?」

私は迷う。
実は、まだあるのだ。
私の曲が。
さっきの曲を作っているときに、あふれてきたもう一つの感情。
だけれども―――
その曲は―――――――

今を逃すともう、きっとこの曲を弾くことはないだろう。
そのほうがいい、そう私の強がりな心が、弱い心が言う。

だけど、決めたから。
もう少し素直になると。
だから、

聞いてください。
知ってください。
私を。
弱くてもろい、さみしがりな私を。



87 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 23:22:16.64 ID:X4S8Clso

想いは、確かにあふれた。
しかし、あふれた想いをコントロールすることはすごく難しかった。
曲に飲まれ、感情が暴走する。
考えなくてもいいことばかり頭に浮かんでくる。

今が幸せであればある程、暗く、深く、冷たく。
堕ちていく。
手が凍えて止まってしまいそうになる。
それでも、私は手を止めない。
止められない。

知ってください。
私の想いを。
受け止めてください。
私のことを。

そしてできることなら。





愛してください



88 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 23:27:20.30 ID:X4S8Clso

―――――――――――
それは、叫びだった。
始めは、バラードのように弱く、悲しく。
そして、ある時、抑えきれなくなったそれは爆発する。
強く訴える。
心からの叫び。

私は鳥肌が立った。
梓の、むき出しの感情。
ぶつけられる。
私の、矮小な本質が、裸にされる。
梓が、震わせて叫ぶ。
私の心が揺さぶられる。




そして


共振する。




気がつけば
私の目からは涙があふれていた。



89 名前:むぎあず:2010/10/20(水) 23:27:48.86 ID:X4S8Clso

「これで、終わりです」

梓の顔を見る。
泣きそうな顔をしている。

伝わった、梓の気持ち。

私の気持ちとおんなじ。

常に考えてしまう。
それは、『失う恐怖』。
一人ぼっちになる寂しさ。
それを考えてしまう、心の弱さ。

決して口には出来ないけれど、心の奥ではずっと叫んでいる。


『私を愛して』、と。


私は梓を抱きしめる。

そして言う。
伝わったと。
愛していると。



90 名前:むぎあず ◆8Mj6VMVRzQ:2010/10/20(水) 23:31:33.19 ID:X4S8Clso

今日はここまでで。
ちょっと話が脱線している気がしないでもないような。
でも大事なとこだけおってくと何もないまま割とすぐ終わっちゃいそうなんで。

今後携帯からも投下していくかもしれないので一応酉つけておきます。

あと作者はムギが大好きです。
でも和ちゃんはもーっとすきです。




91 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/10/21(木) 00:18:49.82 ID:XAWqV3Eo

むぎゅうううううう乙
続き期待



92 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/10/21(木) 01:14:20.27 ID:DM3/sLQo

ほう
和ちゃん出演にも期待するか





93 名前:むぎあず ◆8Mj6VMVRzQ:2010/10/22(金) 18:45:01.86 ID:lYhTywwo

聞きたいことがあるんですけど、オリキャラってあんまり出したくないんだけど出しても大丈夫かな?
むぎあずでは出す気ないし次のカプでも出す気ないんだけど和ちゃんとか律とか澪とか単独でできそうにないんだよね……

ってかむぎあずも展開は決めてるのに遅筆すぎて全然終わらないんだけど……

あと彼氏とか出したら発狂するのかな?



94 名前:むぎあず ◆8Mj6VMVRzQ:2010/10/22(金) 19:23:45.37 ID:lYhTywwo

軽音部後輩の名前募集ちう
漢字一文字で分かりやすく名前つけるのむずかしい……

後輩A、1って考えてエーコとワン子にしようかと思ったけど




95 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/10/22(金) 20:20:03.24 ID:pJqkZ7ko

そのオリキャラがいないと全く話が進まないならどうぞ
しかし話に絡みすぎると荒れる可能性がup



96 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/10/22(金) 20:28:46.67 ID:8orYtbY0

オリキャラや彼氏が嫌いなのに出るとわかって読む人達は
読み飛ばすなり斜め読みするだろうから自分が書きたいものを書いてもいいのよ

後輩は茜…いや、映子とか市子はどうだろう





97 名前:むぎあず ◆8Mj6VMVRzQ:2010/10/22(金) 23:08:35.07 ID:lYhTywwo

ありがとうございます。
とりあえず軽音部後輩はワン子、エーコで行きます。
――――――――――――――――――――――――――――
「そういえばさ、今年はどうするの?」

どうするって……なにを?

「合宿だよ合宿!
 えーっと、一昨年は海で去年は夏フェスでしょ?
 私たちだって行きたいよ!」

遊びに行くんじゃなくて練習しに行くんだよ?

「私も合宿行きたいなぁ」

……どうしようかなぁ。
確かに学祭に向けて練習したいし、一年生と交流を深める意味でも合宿はやるべきだというのはわかる。
分かるんだけど。

そっか……この二人にはまだ言っていなかったっけ。

「え? ムギ先輩の別荘!?」

「あはは……
 さわ子先生にそんなことが」

そう。
だから今年はあんまりあてがないんだよね。

「……ムギ先輩にお願いしてみる、とか?」

ダメ。
あの人のことだから絶対いいって言うから。
迷惑はかけられないよ。

「だよねぇ……
 でも合宿はしたいよ」

「皆で安いコテージ探して借りるとか、ダメかな?
 5人で割れば一万円以内でなんとかできる所あると思うんだけど」

憂も乗り気だね。

「うん。みんなとお泊りできるなんて楽しみだよ」

うん……そうだよね。
遊ぶことも、お喋りも、全部私たちを形作る大事な物なんだから。
皆で探して、行こう。
きっとこの苦労だっていつかは良かったと思えるから。



98 名前:むぎあず ◆8Mj6VMVRzQ:2010/10/22(金) 23:10:18.22 ID:lYhTywwo

で、こうなるわけですか。

「迷惑だったかしら?」

「あずにゃんしどい!」

迷惑だ何て、むしろ私たちが迷惑掛けてるんじゃないですか?

「そんな事ないわ。
 私はむしろ楽しみでしかたないの」

「梓、私たちは梓たちとがいいから言ってるんだ。
 こっちの都合は気にしないでくれていいんだぞ」

「そうだぞー。
 大体5人で借りるより9人のほうが安くすんでいいだろ?
 それにさ、私たちのほうから持ちかけてるんだから迷惑なんてあるわけないじゃん」

そうですね。
私も先輩たちとがいいです。
後輩にもいい刺激になるでしょうし。

「ふふっ。
 すっかり部長になっちゃってるわね」

「ああ、律より全然安心できるな」

「澪しゃんそれは言わない約束だろー」

「あずにゃん! 楽しみだね」

そうですね。
楽しみです。



99 名前:むぎあず ◆8Mj6VMVRzQ:2010/10/22(金) 23:11:25.36 ID:lYhTywwo

―――――――――――――――――――――――
「ついたー。
 思えば長い旅だった……」

「何言ってるんですか、純先輩。
 コテージはもうすぐなんだから頑張ってくださいよー。
 ほら!見えてきた」

「ワン子は元気だねえ」

「まぁ、ドラマーですから!」

「……あのぅ」

ん? どうしたの?

「あの、コテージなんですか?
 なんだか、その。
 すごく大きいんですけど……」

そうだよ。

「……」

「どったの、エーコ? 
 言いたいことがあるならはっきり言わなきゃ伝わんないぞー」

「あの、その……
 えっとですね、その、すごく大きくてきれいだなぁって」

「そりゃそうさ!
 部長が頑張って見つけてくれたんだからね!」

……たぶんそういうこと言いたいんじゃないと思うけど。
4泊5日。長い。
大きくてきれいな海沿いの貸切ペンション。
そして、周りに他の建物も、無し。
私がみんなから集めたのは、一人五千円。

そりゃ割に合う金額じゃない。

もう一人、たぶんもう気づいているだろう憂は我関せずで笑顔を見せている。

だから私も、知らん振り。
穴場だね、なんて言ってみる。
納得できない顔をしているけど、まぁ、いいだろう。

この子たちのびっくりする顔が楽しみだ。



100 名前:むぎあず ◆8Mj6VMVRzQ:2010/10/22(金) 23:13:10.53 ID:lYhTywwo

「ねぇ、部長」

あ、驚いてる。
エーコのほうを見ると?って顔。

そっか。
ワン子は去年の学祭見に来てるけど、エーコは知らないんだ。

貸切のコテージ。
なのに、そのコテージ前には人がいる。

今回、私たちと一緒にコテージを貸し切った人たちが。

「お前たちが来るのを待っていたー!」

「こら律!」

「みんな久し振り~」

「ごほん!
 ようこそ桜丘高校軽音部の皆さん!
 私たちは軽音部OGの放課後ティータイムです。

 まぁ、何はともあれ聞いてください!」

そう言って先輩方はうなずきあう。
手にそれぞれの楽器を持って。
そして始まる。
以前とおなじ、律先輩の合図で。

「ワン、つー、スリー―――――――――



101 名前:むぎあず ◆8Mj6VMVRzQ:2010/10/22(金) 23:14:49.58 ID:lYhTywwo

演奏が終わる。
それぞれの顔を見る。
純は、興奮で大変なことになっている。
憂は、笑顔で見ているかと思いきや、真顔で聞き入っていた。

そして、ワン子とエーコの二人は、食い入るように見つめていた。
ふと、私が一年生の頃を思い出す。
新観ライブを見に行ったとき、私もこんな風だったのだろうか。
もし、そうだとしたら、これがいい刺激になっただろう。

私たちは放課後ティータイムとは違う。
だから、超えるだとか、負けるとかそういうのはなくていい。

ただ、聞いた人の胸に届くように。
届いた人の心に残るような。
そんな演奏をしたいと思ってくれるなら嬉しいと思う。


だから、私は言う。
ほら、いつまでもボーっとしないの。
次は、私たちの番だよ、と。



102 名前:むぎあず ◆8Mj6VMVRzQ:2010/10/22(金) 23:15:40.59 ID:lYhTywwo

私たちの演奏も終わった。
無意識のうちに私はあの人を見てしまう。
目をつむり、柔らかに微笑んでいる。
私も微笑んでしまう。


「さて、じゃあ私たちが後輩にきっつーい指導を」

「え、マジですか?」

「おう、ドラムは私だぞ。
 ビシバシ行くからな!」

「私は、澪先輩の指導ならむしろ受けたいです!」

「うん、みっちりやろうか」

「ギターは私だよ!
 よろしくね」

「あ……は、はい……」

「私は憂ちゃんねー」

「はい、ムギさんよろしくお願いします」


「だが! その前に!





 泳ぐぞーーーーーーーーーー!」

「はい! りっちゃん隊長!」

「お、おい! ちょっと律!唯!
 ってムギまで?」

「今年はちゃんと下に水着着てきたわ!
 じゃあ先に行って待ってるから」

「……ごめんな。
 こんな先輩で……」

頬が緩む。
変わってないな、先輩達。




103 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/10/23(土) 11:50:49.75 ID:xiPo2K2o

いいなあ。





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