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唯「お母さんには黙ってようね」#2 【シリアス】







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唯「お母さんには黙ってようね」#1




110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 02:24:04.05 ID:qYY8yQWK0


 長らく授業を聞き流しついにやって来た昼休み、りっちゃん達はまた教室を出ていった。

 各教室を回って勧誘活動をしているらしい。

唯「……んー」

和「どうしたの、唯?」

唯「りっちゃん達、よく頑張るなぁって」

和「そうね。でも、気持ちは分かるわ」

 お弁当をつつきながら和ちゃんが言ったことが、少しひっかかった。

唯「……ん、なんで?」

和「なんでって。部員を集めるのは、軽音部の今後のためでしょ?」

唯「うん、そう言ってた」

和「律たちは、未来のことを考えてるのよ。それが自分たちに直接関係は無くても」

唯「……みらい」

 無性に口ごもりたくなって、ジャムパンをかじる。



111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 02:27:04.89 ID:qYY8yQWK0


和「だから、そういうところは私も共感できるなって」

 和ちゃんが眼鏡のレンズを通して私をじっと見つめる。

 私は何も言えずに、ひたすらジャムパンに食いつく。

和「……どれだけ頑張っても、誰も入部しなかったら何も未来には残らないけれど」

 やがて和ちゃんは目を反らして、そんな風に言った。

 それでも、視線は私を見続けているようだった。

唯「……そーだね」

 私はようやく口を開いたが、和ちゃんがそれ以上突っ込んでくることはなかった。

 あとは私次第だ。私がそう理解できたことに、和ちゃんも気付いているんだろう。

 ジャムパンはすっかり少なくなっていた。

 その割に、満腹感はほとんどなかった。



112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 02:30:04.79 ID:qYY8yQWK0


 午後の授業を終えて、すぐに教室へ憂を迎えに行く。

 毎日のことだから、憂の教室では私は少し有名人らしい。

唯「ういーっ」

 教室のドアを開け、遠慮なく入っていく。

 憂は教室の奥で、髪を二つ結びにした子と立ち話をしていた。

憂「あっ、お姉ちゃん!」

 けれど、私の顔を見つけるとすぐに駆け寄って抱きついてくる。

 そう、なんでも「抱きつき姉妹」と有名なのだとか。

 二つ結びの子が苦笑しながら、カバンを2つ持って歩いてきた。

 いつも憂と話しているから、純ちゃんという名前は覚えてしまった。

純「ほら憂、バッグ置いてかないの」

憂「あっ、ごめんね純ちゃん」



113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 02:34:41.42 ID:zYmZJ1hDO


 私から少し名残惜しそうに離れると、

 憂はカバンを受け取って、肩にかけた。

純「相変わらずですねぇ」

憂「からかうのはやめてってば」

 顔を赤くしながら、憂は手に指をからめて握ってきた。

純「あはは、ほんとアツアツ。つきあってるみたい」

 純ちゃんが危ない発言を投げかけてきた。

 もっとも、その顔は冗談ぶっていたから、慌てることもない。

憂「だからっ、そういうこと言わないの!」

 憂も軽く頬を膨らませるだけだ。

 こういう疑いへの対応もなかなか慣れてきた。

 とにもかくにも、普通に返すだけでいいのだ。



114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 02:37:13.68 ID:zYmZJ1hDO


純「ごめんごめん。さてと……」

 純ちゃんはカバンを置くと、壁に立てかけた黒いものを背負った。

唯「なにそれ?」

純「ベースです。わたし、ジャズ研なので」

唯「ベース? あぁ、澪ちゃんの。……でっかいねぇ、重くないの?」

 憂が私の顔を覗きこみ、見上げてきた。

純「え、えぇ。まあ重いですけど、持って来なくちゃ練習できませんし」

唯「どうして……」

 重たいのにわざわざ持ってきて、わざわざ練習をするんだろう。

 そんな疑問を口にしようとしたが、憂に手を引っぱられて言葉を飲みこんでしまった。

憂「お姉ちゃん、もう行かない?」

唯「……ん、そだね」



115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 02:40:05.96 ID:zYmZJ1hDO


純「じゃあね憂、唯先輩もさよなら」

唯「ばいばい純ちゃん」

憂「また明日ね」

 憂に連れられて教室を出て、下駄箱へ急ぎ足で向かう。

憂「……おねえちゃんっ」

 靴を履き替えるために別れる前、憂が耳をつまみ、耳もとにくちびるを寄せた。

唯「なあに?」

憂「今日は……帰ったら、すぐね」

 いっちょまえに嫉妬に燃えているらしく、憂はそのまま軽く耳にくちづけまでしてきた。

 これが、今年の憂の誕生日より前にされたことだったら、素直に興奮していたかもしれない。 

 けれど少なくとも今日の私は、帰ってすぐにしたいという気分ではなかった。

 それでも憂がしたいという以上拒みはしないし、

 行為が始まれば結局燃えてしまうのだけれど。



116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 02:42:28.06 ID:zYmZJ1hDO


 ひとまず靴に履き替えて、昇降口で再び手を繋ぐ。

 校庭へ出ると、運動部や帰宅部の生徒がひしめいていた。

 その中でまた、異質な存在感を放つ着ぐるみが立っていた。

憂「軽音部の人達も大変だね」

 私の視線を追って、憂は言った。

唯「……うん。大変だよ、ほんとうに」

憂「お姉ちゃん?」

 憂の手を引いて、私は一番近くにいた猫の着ぐるみのもとへ歩いていく。

憂「ちょっとっ、やだよ」

 足をつっぱって抵抗する憂を引きずる。

 それでも、どうしても訊かなければ収まりがつかなかった。



117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 02:45:12.11 ID:zYmZJ1hDO


猫「あっ唯ちゃん。……ど、どうしたの?」

 上品な所作から、中身がムギちゃんなのは分かっていた。

 そんなのはどうでもいい。軽音部であれば、誰でも。

 着ぐるみの前までどうにか憂を引き連れてくる。

唯「ねぇ、なんでっ?」

 息が整うのも待たず、私はたまりかねた質問をぶつけた。

猫「……えぇ?」

唯「なんで、そんな頑張るの? 着ぐるみなんて着てさ……」

 繋いでいた手を振りほどくと、ムギちゃんの着ぐるみの頭を奪いとる。

 蒸れた匂いがして、裸の憂が脳裏をよぎった。

唯「こんなに汗だくになってまで、どうして部員を集めるの? ……変だよ」



118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 02:48:05.79 ID:zYmZJ1hDO


 私の行動は思っていた以上に目立ったらしく、

 視線と、そして残り3つの着ぐるみが私たちに集まってきていた。

唯「大変なこと、どうして頑張るの? 部活なんてさ……」

 私はもしかしたら、この疑問に対する答えを知っているのかもしれない。

 だからこそ、当事者と答え合わせがしたいと思っているんじゃないだろうか。

 ムギちゃんはにこりと笑った。

 くってかかるように詰問する私の前で。

 きっと私に向けて笑ったのではなく、

 この疑問に対する答えを言う時、彼女は自然と笑ってしまうのだろう。

紬「それはだって、軽音部は楽しいから」

唯「……楽しい、から?」

 やっぱり、私の答えは合っていた。



119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 02:51:06.68 ID:zYmZJ1hDO


犬「唯、なにやってんだ?」

 棘のある口調でりっちゃんが言う。

 が、ムギちゃんの笑顔を一目見ると、また私に顔を向けて、

犬「どうかしたの?」

 と柔らかく訊いた。

唯「……りっちゃん、軽音部って楽しい?」

犬「ん? まぁそりゃあな。楽しくなかったらやらないよ」

唯「澪ちゃんは?」

馬「えっ、うん……そうだな。楽しいよ」

 馬の着ぐるみをかぶったまま、澪ちゃんは照れ臭そうにそっぽを向けた。

唯「……きみは梓ちゃん?」

 背後に立っていた豚の着ぐるみの子にも話しかける。



120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 02:54:21.85 ID:zYmZJ1hDO


豚「はい」

唯「軽音部は、楽しい?」

豚「は、はい、それは、まぁ……そこそこに」

犬「なーにすかしてるんだよ、梓」

 犬が豚に頭突きをする。

犬「もっと語れるだろ、けいおん部愛! 10分くらい」

豚「そっ、そんなには無理ですよ!」

紬「多少は語れるって事ね」

豚「うぁっ、もうムギ先輩まで!」

 カラフルな着ぐるみに囲まれて、私はすこし笑った。

 胸の奥で決心が固まっていく。



121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 02:57:16.18 ID:zYmZJ1hDO


唯「澪ちゃん。私にも頑張れるかな」

馬「へっ?」

唯「私でも頑張ろうって思えるくらい、軽音部は楽しいかな?」

憂「おっ、お姉ちゃん!」

 憂が叫んで、背中から飛びついてくる。

唯「うおっと……」

犬「唯? あのぉ?」

馬「それってまさか、入部したい……ってことなのか?」

唯「うん。……だめかな?」

 言った瞬間、憂の腕がきつく締めつけた。

憂「やだやだやだっ、だめお姉ちゃん!!」



122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:00:03.12 ID:zYmZJ1hDO


唯「う、うい?」

憂「やだっ、そんなのやだっ、お姉ちゃん帰ろうよっ、一緒にいてよ!」

 抱き返すために振りほどこうとしても、

 憂の腕は固く私を抱きしめて、ちっとも解ける気配がありません。

犬「ええっと……」

 遠慮がちにりっちゃんが言う。

犬「ポジションが空いてないわけじゃないんだけど、さ」

唯「……うん」

犬「一旦、ご家族の方とよく相談されるべきじゃないかな。でないとこっちも返事できないわ」

唯「そうだね……」

 猫の頭をムギちゃんにかぶせる。

唯「うい、憂?」



123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:04:13.51 ID:qYY8yQWK0


憂「いやだよぉ……」

唯「お家帰ろう、ね? うーいってば」

憂「……ん」

 憂は鼻をすすったあと、顔をぎゅっと押しつけてすぐ私の手を掴んだ。

憂「……すいません、さよなら」

唯「また明日ね、みんな」

犬「あぁ……気を付けて帰れよ」

馬「またね、唯!」

猫「唯ちゃん、妹さん大事にね!」

 空いている左手で応え、私は憂と校門を出た。

 帰り道の間、涙を浮かべている憂にたくさん他愛ないことを話しかけたけれど、

 何を言っても憂は反応せず、私の手を両手に握り、胸の前で抱きながら歩き続けるだけだった。



124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:07:09.76 ID:qYY8yQWK0


――――

 家に到着して靴を脱ぐと、憂はすぐ階段に駆けていった。

 その背中を見ても、私の決意は揺るがない。

 けれど、憂には分かってもらう必要がある。

 憂はきっと、嫌われたとでも勘違いをしているはずだ。

 その誤解を解かないと、軽音部に入る意味がない。

 私は憂が脱ぎ捨てた靴を下駄箱にしまっておき、ゆっくりと階段を上がる。

 階上からドアを閉める音がする。

唯「っ……ん」

 少しだけ眠気を感じた。いつもならこれから眠る時間だ。

 話は睡眠のあとでもいいかもしれない。

 のんきに思いながら、3階へ上がり私たちの部屋のドアを開ける。



125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:10:15.98 ID:qYY8yQWK0


 ベッドにはすでにシーツがぴんと張られ、

 ブラウス1枚になった憂が脱いだ制服をクローゼットにかけていた。

 私もまずは着替ようと思った。

憂「いいよ、お姉ちゃん」

 上着のボタンを外そうとすると、憂に止められた。

 代わりに私の手に重ねて、憂がボタンを外していく。

憂「今日は私が脱がせてあげる」

唯「憂?」

憂「ごめんね、最近お姉ちゃんにちゃんとできてなかったね」

 憂は手際よくタイを解き、ブラウスのボタンも外していく。

 スカートのジッパーを下ろし、憂と同じ格好にさせられる。



126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:12:27.92 ID:qYY8yQWK0


憂「だから軽音部に入りたいなんて言いだしたんだよね?」

唯「そういうわけじゃなくって」

憂「ごめんね、お姉ちゃん。今日からは私からもたくさん気持ちよくしてあげるね」

 憂がぎゅっと抱きついたかと思うと、腰から全身を綿の柔らかさが包んだ。

 天井が一瞬見えて、すぐに憂が覆いかぶさってくる。

唯「ういっ……んむ」

 くちびるが暖かな感触に包まれる。

憂「ん……お姉ちゃんべろちゅー好きだよね。いっぱい、いっぱいしたげる……」

 間髪入れず、舌が入りこんでくる。

 無味の、けれど自分のものとは違う味を持った唾液が舌にふれる。

唯「まっふぇ、んんっ、憂……」

 確かに舌を絡めるのは好きだけれど、

 その前に話がしたかった。



127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:15:49.16 ID:qYY8yQWK0


 舌先をつつき、応えるように憂が舌の表を合わせてくると、

 ぐっと力を入れて、自分の舌ごと憂の口まで押し返した。

憂「ふっあぁ」

 私の上で、憂が腰を震わせた。

 少し逃げようとしているその背中を強く抱きしめておき、

 舌をひるがえして憂の舌裏にある唾液のプールへ忍ばせる。

憂「んっんんっ! んっ、むうぅ!」

 溜まっている唾を掻きまわすように舌を動かし、下あごと舌裏を同時に舐めさする。

 あっさりと形勢は逆転し、憂が首元にじわりと汗をかく。

 私を押し倒した時の力はもう抜けていた。

唯「んむうぅーっ」

 くちびるが勢いで離れないよう強く吸いついてから、

 ぐるりと体を回転させて、憂を押し倒し返す。



128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:19:16.16 ID:qYY8yQWK0


唯「ぷぁっ。はぁ、はへ」

 くちびるを離し、舌に残ったつばを憂のぼんやり開いた口に垂らしてあげる。

 私の唾液の割合が多いわけでもないのに、幸せそうに憂はそれを舌に受けていた。

 過分な唾液を垂らしきると、私は舌をしまう。

唯「ねぇ、憂」

憂「ん……?」

唯「憂は勘違いしてるよ。私はそんな理由で、軽音部に入ろうと思ったんじゃないの」

 きょとんとした憂の瞳を見つめる。

憂「……けいおんぶ」

 そしてまた憂の顔が歪もうとする。

 私はくちびるを静かに重ねて、それを抑えた。

 頭を撫でてあげながら、何度か軽くキスを繰り返す。



129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:22:10.87 ID:qYY8yQWK0


唯「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ」

憂「ん……うん」

 ほっぺを赤くし、憂は微笑んで頷いた。

唯「お話の続き、していい?」

憂「……軽音部の?」

唯「うん。っていうよりは、私たちの話だけどさ」

憂「どういうこと?」

唯「憂はさ……」

 体を起こして、ベッドに座りこむ。

唯「高校卒業したらどうするかって、考えたことはある?」

憂「それは、お姉ちゃんについていこうって」

 さっきの一悶着のせいか、憂の下着がずれていた。

 指でつまんで、元の位置に戻す。



130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:24:53.30 ID:qYY8yQWK0


唯「お姉ちゃんがなんにもしなかったら?」

憂「そしたら私もなんにもしないよ」

唯「進学も就職もしないで、家でゴロゴロしてても? 私と同じになる?」

 黙って憂は頷いた。

 私は肩を落とすと、憂の側に寝そべった。

唯「そんな風になっちゃうのは……いけないと思う」

憂「……うん」

唯「私がこのまま、そういうだめな人間になっちゃったら、憂を守れないよ」

 しばらく見つめていなかった天井を見ると、

 まだら模様を覆うように黄じみが広がっていた。

 セックスは幸福だ。

 だけど、セックスで人生は幸福にならない。



131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:27:02.90 ID:qYY8yQWK0


唯「私は、一生憂といたいよ。だからね、このままじゃいけないって思ったの」

憂「それがなんで、軽音部に?」

唯「……まず、頑張れそうなことからって思って。とにかく、毎日エッチだけじゃだめなんだよ」

 まだ私は甘いのかもしれない。

唯「そうやって私が変われたら、大学でも就職でも、なんだってしてやろうっておもう」

 時間はもっと足りなくて、状況は差し迫っているのかも知れない。

 だけど今はとにかく、頑張ろうという以外のことが思いつかなかった。

唯「だから憂には、私を応援してほしいな。いつかのために」

憂「……いつか、かぁ」

唯「うん。だけど、そのいつかは必ずやってくるからさ。今がんばろうよ」

憂「お姉ちゃん、ちゃんと頑張れる?」

唯「もちろんっ、頑張るよ!」



132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:30:18.25 ID:qYY8yQWK0


 憂はため息をつく。

憂「私のことも、今までと同じくらい大事にしてくれる?」

唯「あたりまえだよ。むしろ今まで以上に愛しちゃうっ!」

 横に転がっている憂を抱き寄せて、私の上に覆いかぶせる。

憂「……だったら、いいかな」

 私から瞳をそらしたまま、憂は言った。

憂「お姉ちゃんとのエッチが減っちゃうのは嫌だけど……しょうがないよね」

唯「ん。そのかわり、落ち着いたらその日はたぁっぷりしようね」

憂「楽しみにしとくよ」

 ようやく、りんごのほっぺが笑ってくれる。

 そして、そのまま憂は目を閉じた。

 綿雪のように、キスが降ってくる。



134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:35:42.25 ID:zYmZJ1hDO


唯「んぅ……」

 くちびるが触れあった瞬間、床から唸り声が聞こえてきた。

 途端に、夢心地から現実へ返る。

唯「んっ、憂」

 携帯のバイブレーションだ。

 マナーモードにしている間でも、

 両親からの連絡だけはバイブレーションをさせるように設定している。

憂「お母さんかな」

 憂は興がそがれたような顔でベッドに転がる。

 起き上がって、床に落ちた制服のポケットから携帯を取り出す。

 母親からのメールが1通きていた。

 そこに書かれていた文面を見るなり、私はげんなりした。



135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:38:24.21 ID:zYmZJ1hDO


唯「うい……」

憂「来ちゃった?」

唯「うん、明日の昼帰ってくるって。……今日はできないね」

 私が高校に入ったあたりから、両親の仕事が忙しくなった。

 なんでも仕事の拠点が海外に移ったらしく、

 家に帰ってくるのは月に1度か、多くて2度。

 時には半年ほど帰って来ない時もあった。

 しかしそれは、私たちにとって都合がよかった。

 両親がいなければ、この家には私たちしかいなくなる。

 親の目が無ければ、いつでもセックスができる。

 親に連絡が行く可能性があるので、学校は休めなかったが。



138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:41:38.69 ID:zYmZJ1hDO


唯「部屋も元に戻さないと……制服、あっちの部屋にかけてくるね」

 床に落ちたままにしていた制服を拾い集める。

憂「じゃあ、枕と……着替えとかも全部だね」

唯「ん。枕ちょうだい。憂は着替えよろしく」

憂「わかった、持っていくね」

 私たちはその少し前まで行為に及ぼうとしていたことなどすっかり忘れたかのように、

 そそくさと両親の帰宅に向けて準備を始めた。

 枕を投げてもらい、受け取ると普段は空室になっている元わたしの部屋に入る。

 ほこりが薄くたまっていて、掃除をしなければ過ごすにも支障がありそうで、

 何より生活感のなさに関係を怪しまれそうだった。

 窓を開けて、空気を入れ替える。

 机の上に積もったほこりを撫で、制服と枕を抱えたまま憂の部屋へ戻る。



139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:44:23.39 ID:zYmZJ1hDO


唯「だめだだめだ、先に掃除しないと」

憂「掃除?」

唯「部屋中ほこりでいっぱい。あのままじゃ、あの部屋で寝れないよ」

憂「そしたら、布団もお外に出さないとだめだね」

唯「大掃除だ、大掃除」

 憂と2人がかりで部屋に掃除機をかけ、ほこりを取り、

 布団をベランダに出してはたく。

 換気が済んでから着替えを移し、布団を戻した。

 久しぶりに浴槽に湯を張って、二人で暖まる。

 ほんの少しじゃれついたりしたあと、

 明日別々の部屋で寝るぶん、きつく抱き合って眠った。

 しかし憂が何度か私をゆさぶって行為を懇願したせいで、

 満足のいく眠りより先に空腹が訪れてしまい、私たちは眠たいままベッドを降りることになった。



140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:47:26.69 ID:zYmZJ1hDO


――――

 夕食とお風呂のあと、まだセックスをせがむ憂をなんとか寝かしつける。

 憂にとっては、体を重ねることが一番の愛情表現らしい。

 私たちが結ばれたきっかけがセックスだったから、

 そんなふうに思うのも無理はない。

 私だって、別にそれが間違っているとも思わない。

 けれど憂の場合は、この他に表現を知らないから問題なのだ。

 寝付いた憂を起こさないよう、静かに部屋を出る。

 掃除した部屋へ戻り、久しぶりに布団に入る。

 長く放置していたベッドからは、人の匂いがしなかった。

 私は憂の匂いを思い出しながら、固く目をつぶって眠りにつく。

 翌朝は、憂と1日中抱き合ったときのような倦怠感が体を包んでいた。



141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:51:04.35 ID:zYmZJ1hDO


憂「おはよう、お姉ちゃん」

 しばらく寝転んでいると、憂が部屋のドアを開けた。

 それでようやく携帯を見ると、朝の7時30分だった。

唯「あー……おはよ」

 ベッドから這い出て立ち上がる。

憂「どうしたのお姉ちゃん、体調悪いの?」

唯「ううん、寝過ぎた感じ。体が重いかな……」

憂「お姉ちゃんも? 私もなんだかだるいんだ」

唯「エッチして体動かさなかったからかなぁ?」

憂「そうかもね」

 不機嫌そうに憂は言い捨てた。

唯「へそ曲げないでよぉ」

憂「曲げてないよ。ご飯作ったから、顔洗っておいで」



143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 03:55:29.71 ID:zYmZJ1hDO


 顔を洗い、朝食をとり、制服に着替える。

 部屋で一人制服のボタンを留めながら、

 もし憂とあんな関係になっていなければ、これが私たちの日常だったのだろうと考える。

 結局、この日常も同じようにすっからかんだ。

 だったらこうして、憂と生きるために何か変わろうとした私のほうが、

 よほど有意義な人生を送ろうとしている。

唯「うむっ」

 鏡の前に立ち、頷く。

 私が選んできた道は間違いじゃない。

 制服もいつもより真っ直ぐ伸びている気がする。

 今日から、私のためだけではない私の日々が始まるのだ。

 私が憂を守ってあげる。

 憂と一緒に生きるために、強くなる。



144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:01:06.46 ID:zYmZJ1hDO


 手を繋ぎ、憂と並んで家を出る。

 春の暖かい風が、私と憂の髪を撫でるように揺らしていった。

 いつもの道を歩くにつれ、憂が私の手を強く握りしめていく。

 通りに桜ケ丘高校の制服が多く見えるようになって、憂は腕にぎゅっとしがみついた。

唯「歩きにくいよ、憂」

憂「うん、私も……」

 こけてしまわないよう、首を憂のほうに傾けて、

 頬を寄せ合うようにしながら歩いていく。

憂「お姉ちゃんさ……」

 学校が近付いてきたころ、憂はふと立ち止まった。

唯「うん?」

憂「私も……軽音部に行っていいかな?」



146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:03:18.81 ID:zYmZJ1hDO


 憂の気持ちを考えれば、当然の提案だった。

 私が放課後を軽音部で過ごすとなると、憂はその間家で一人になってしまうのだ。

唯「りっちゃんに訊いてみないと分かんないけど、多分大丈夫だよ。……さっ、行こうよ」

 歩き出すように促すが、憂は足を棒立ちにさせたままだ。

唯「ご希望のパートとかあるのかな?」

憂「あ、んっと、そうじゃなくて」

唯「んぇ?」

憂「軽音部には入らないけど、お姉ちゃんが練習してるところは見たいっていうか……」

 恥ずかしそうにほっぺたを掻く。

唯「なるほど」

 憂にしてみれば、軽音部はお姉ちゃんとの時間を奪ういやな存在といったところらしい。

 入部してやるなんてもってのほかだろう。



147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:06:43.38 ID:zYmZJ1hDO


唯「じゃあそういう風にりっちゃんに相談するよ。……だいじょぶ、だめだなんて言わせないから」

憂「ん……頑張ってね」

 ようやく憂の足が動きを取り戻した。

 抱きつかれたまま歩いているせいか、いつもより視線が集まっているような気がする。

 さすがに「抱きつき姉妹」として通っているのは憂のクラスだけだろうし、

 あまりベタベタしているのを見られると怪しまれるかもしれない。

憂「んー、お姉ちゃぁん……」

唯「……うい」

 けれど、今日ばかりは仕方ないか。

 私はカバンを肩にかけると、ぽんぽんと憂の頭を撫でた。

 照れ臭そうに笑う憂の声が耳をくすぐって、

 そのまま抱き合いたい気分になった。



148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:09:12.86 ID:zYmZJ1hDO


 校門をくぐると、今日も着ぐるみがビラを配っていた。

 豚と目が合ったので、笑顔を向ける。

 会釈をするように豚が小さく腰を曲げた。

憂「梓ちゃんかぁ」

 昇降口に近づいたあたりで、憂はぽつりと言った。

唯「ん?」

憂「梓ちゃんね、同じクラスなんだ。軽音部だっていうのは知ってたけど……」

唯「仲良くないの?」

憂「特にはね。でも、お姉ちゃんが軽音部に入るなら、話しかけてみようかな」

唯「うん、友達は多いほうがいいよ」

 下駄箱の前で繋いだ手を離す。

 上履きになってからは手を繋がず、階段の前でしばしの別れを惜しんだ。



149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:12:59.19 ID:zYmZJ1hDO


 教室へ行き、自分の席にカバンを置くと和ちゃんに抱きつく。

唯「おっはよ、和ちゃん」

和「おはよう唯。……あら、何かあったの?」

唯「へ?」

和「顔色が少し悪いみたいに見えるけど」

唯「あー、ちょっと寝過ぎて……」

和「ふぅん……?」

 和ちゃんは疑っているような目で私を見る。

 何がそんなに引っかかるのだろう。事実を言ったまでだ。

 10年以上の付き合いがある和ちゃんにだって、私と憂の関係は明かせない。

唯「そんなことより、聞いてって和ちゃん」

 早いうちに、話題をそらす。



150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:18:51.05 ID:zYmZJ1hDO


和「はいはい、どうしたの?」

唯「あのね、私けいおん部に入ることにしたの!」

和「へぇ、軽音部……」

 和ちゃんは興味なさそうに言って、英単語帳に目を落とした。

 そして、ひとつページをめくり、

和「えぇっ!?」

 と大袈裟に驚いた。

唯「ベタやなぁー」

和「ベタとかそういう問題じゃ……えっ、だって、唯!?」

唯「まぁまぁ落ち着いて……」

和「落ち着くったって……もう」

 眼鏡を押さえてため息をつくと、和ちゃんは英単語帳を閉じて机に置いた。



151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:21:38.71 ID:zYmZJ1hDO


和「3年から部活を始めようなんて前代未聞よ」

唯「うん、わかってるよ。……でも、何もしないよりはましだと思ったんだ」

和「……軽音部が何かの役に立つわけ?」

唯「分からないけど……何か打ち込めるものが欲しかったんだ」

 エリちゃんとアカネちゃんが、軽音部のビラを持って一緒に教室に入って来た。

 二人はしばらくビラを眺めていたけれど、

 やがて苦笑して、それを丸めてゴミ箱に入れてしまった。

唯「このままじゃ私、だめになるって。和ちゃんもそう思うでしょ?」

和「……もうとっくにだめになってると思ってたけどね」

唯「うぁ。そういうのはいいんだってば」

 こほん、と咳払いをする。

唯「とにかく、自分にできることから変わらないといけないんだって」



152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:24:25.17 ID:zYmZJ1hDO


和「たしかに唯の場合、最初はなにかやり抜くことから始めるべきかもしれないわね」

唯「うん。私がやり通せた事って今までないし」

和「そうかしらね。受験の時はなんだかんだで合格しちゃったじゃない」

唯「あれはだって……最後のほうはほとんど勉強してなかったし」

 2年前、憂の誕生日から関係が始まってから、

 その日から私の桜ケ丘高校を目指した受験勉強はほとんどストップしていた。

 塾に行っている時間が無ければ、間違いなく不合格になっていただろう。

和「それでも合格したってことは、やり切ったってことよ。結果論だけど」

唯「結果論、かぁ」

和「そう。まぁ唯がなに企んでるか知らないけど、良い結果になることを期待してるわ」

唯「企んでるなんてことないもんっ」

 意地悪な物言いに頬がむくれた。

 ごめんごめん、と和ちゃんは笑いながら、また英単語帳に気を取られてしまった。



153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:27:52.53 ID:zYmZJ1hDO


 今日もホームルームが始まったあと、軽音部が駆けこんでくる。

 山中先生の注意がそこそこで済むのは、軽音部の顧問も兼任しているからだろう。

 りっちゃんによれば、「暇そうなさわちゃんを拉致って買収した」らしい。

 買収と言っても具体的にどう、とは教えてくれなかったが。

 軽音部に入れば、そのあたりのところも分かるのかもしれない。

 軽い注意を受け終えて席に着くと、りっちゃんが私のほうを振り向いた。

唯「にぃ」

 りっちゃんにしても気がかりなようだし、私も早く伝えたかったから、

 歯を出して笑い、Vサインを作る。

 りっちゃんが軽く頷いた。

 休み時間になったら、詳しい話をしよう。

 今は、始まる授業に意識を向けてみることにした。



154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:30:41.19 ID:zYmZJ1hDO


――――

律「……おつかれさん」

 りっちゃんが50分戦い抜いた私の肩に手を置いた。

澪「唯が真面目に授業受けてたから驚いたよ」

唯「まぁ、たまにはね……」

 机につっぷしたまま呻く。

 見かねたムギちゃんが後ろから抱き起こしてくれる。

澪「いいよムギ、寝かせておこう」

唯「いや大丈夫……大事なお話だしさ」

 りっちゃん達の顔を見回す。

唯「昨日はあんな風になっちゃったけど、憂は納得してくれたよ」

澪「それじゃあ、入部できるの?」

唯「うん。そっちがよければだけど」



155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:34:12.09 ID:qYY8yQWK0


紬「大丈夫よね、りっちゃん?」

律「おう。それで、パートについてなんだけど……唯にはヴォーカルをやってもらおうと思う」

唯「ヴォーカルって!」

和「ちょっと律、本気?」

 言い渡された責任重大な役柄に、和ちゃんまでもが驚いた。

律「だってよ、学祭まで7ヵ月しかないんだぞ?」

 わかってないなぁ、と肩をすくめるりっちゃん。

律「受験勉強しながらじゃ、披露できるぐらいの演奏の腕にはならないだろ」

唯「じゅけ?」

律「うん、受験」

 さらりと言われる。

 りっちゃんの口から受験なんて言葉が、こうも淀みなく出てくるなんて。



156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:37:46.37 ID:qYY8yQWK0


紬「私たち、大学でも放課後ティータイムを続けるつもりだから」

 放課後ティータイムというのは、りっちゃん達が組んでいるバンド名だ。

 それは知っているが。

唯「だいがく……」

澪「うん、大学。そうそう、唯にはヴォーカルと並行して、ギターの練習もしてもらうからな」

律「大学生になったらすぐギター持ってステージに立てるようにな」

 それは目に見えないながら、大量の課題のプリントを目の前に置かれたようだった。

律「……怖気づいたかぁ、唯?」

唯「……そんなこたぁないよっ!」

 渡された課題は確かに重い。

 まず、大学に行くこと。そしてギターとヴォーカルの練習。

 憂も可愛がってあげたいし、可愛がらなければいけない。



157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:48:07.39 ID:qYY8yQWK0


 けれど、ここですぐ無理だと音を上げていては、私は一生変われない。

 だめ人間のままじゃいけないんだ。

 憂に辛い思いをさせてまで変わろうと決心したのに、

 私が頑張ろうとしないでどうするんだ。

唯「ギターの練習ってことは……ギター買わなきゃいけない?」

律「備品がないわけじゃないけど、卒業したら使えないわけだから自分用を買った方がいいわな」

唯「ふむ……いくらぐらいするの?」

澪「後輩の梓のが、確か6、7万したとかだったか?」

紬「そのくらいって言ってたわね」

唯「そんなに高いの?」

澪「安いのもあるよ。1万くらいの。でもそこまで安いのでもよくないんだ」

律「まぁ5万くらいが相場かなー?」



158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:51:27.43 ID:qYY8yQWK0


唯「5万円……」

 私が口座からひと月に引き出していい額の10倍だ。

 もっともお小遣いを使う機会は少ないから、いくらか貯金はあるけれど。

唯「……お母さんに言うしかないか」

律「唯はバイトしてないしなー」

唯「ニートを後悔する日が来るとは……」

 今日はちょうど両親も帰ってくる。

 久々に顔を合わせるのだから、小遣いを数ヶ月前借りするぐらいはたやすいだろう。

 そこで休み時間終了を告げるチャイムが鳴った。

律「んじゃ、また次の休み時間な」

唯「あ、うん」

 そういえば、まだ憂のことを切り出していない。

 それを知ってか知らずか、りっちゃんはそう言って席に戻っていった。



162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 04:58:31.91 ID:qYY8yQWK0


 次の時間は数学だった。

 これまでの内容はちっとも理解していなかったけれど、

 教科書にかじりついて先生の説明に耳を傾けていれば、問題を解くことはできた。

 問題が複雑になるとついていけなかったけれど、

 今までに比べたら絶大な進歩だ。

 そして休み時間になり、再び私の席の周りに軽音部が集まってきた。

唯「それでさ、妹の……憂のことなんだけど」

紬「やっぱり何かあったの?」

唯「……うん、まぁそれなりに」

 昨日の憂の錯乱ぶりを思えば、こう言われてしまうのも仕方ないだろう。

唯「軽音部には入らないんだけど、憂は見学がしたいんだって」

澪「へ? 入らないのに?」



163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 05:01:04.97 ID:qYY8yQWK0


唯「そう。ちょっと変だけど、憂も一緒にいさせてもらっていいかな?」

紬「問題ないわよね、りっちゃん」

律「んまぁ、別に邪魔になるってことはないだろうし」

唯「じゃあオッケー?」

律「好きにしていいぞ」

 難航するかも、と少し思っていたが、みんなは憂に対して何も感じていなかったらしい。

 あるいは関係を疑われることが一番恐ろしかったけれど、

 やっぱり普通はそこまで考えないらしい。

 私たちはあくまで絆の深い姉妹と考えられているようだった。

唯「……えへへっ。ありがとね、みんな」

律「なーに言ってるんだか」 

唯「うへぇ、りっちゃんが照れてる」

律「なんだよその酸っぱいものを見る目は」



164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 05:04:41.13 ID:qYY8yQWK0


 なんとか力尽きずに授業をこなし、放課後になる。

 週末までにお金を工面し、日曜に楽器をみんなで選ぶことになった。

 お金はおそらく問題ない。

 来週までは部員集めに奔走するらしく、活動はまだ行わないらしい。

 することのない私に、りっちゃんはひとまず楽譜とカセットテープを渡して、

律「なんとなくでいいから、覚えといて」

 と自習課題を出した。

 それをカバンに詰めてから、ようやく憂を迎えに行く。

 教室に行き、飛びついて来た憂を抱っこして、憂の見学が認められたことを伝える。

 あやうくキスされそうになったが、ほっぺたを差し出してごまかした。

 純ちゃんがへらへら笑っている。

 この教室では、意外とこのぐらいまでやっても問題ないのかもしれない。

 くちびるにキスしたらどうなるかな、と試したくなったけれど、

 もちろん実行はしない。



165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 05:09:09.70 ID:qYY8yQWK0


 憂を降ろし、手を繋いで家へ帰る。

 校門を出たあたりから、憂の顔が少し緊張し始めた。

 私も気を引き締める。

 昼に帰る、と言っていたから恐らくもう家には両親がいるはずだ。

 私たちが姉妹の関係を外れたことをもっとも悟りやすく、

 もっとも悟られてはいけない相手。

 初めて一線を越えた日にも、まず最初に内緒にしなければいけない相手は両親だった。

 両親は、私たちが一緒に生きる上では最大の敵になる存在なのだ。

 まず間違いなく、私たちを引き離そうとするだろう。

 それが私たちを思ってのことだというのは理解できる。

 だけど、たとえどんな安寧の暮らしがあっても、

 憂が隣にいなければそれは私にとって価値のある人生ではない。



167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 05:13:43.13 ID:qYY8yQWK0


 当然、いつかは両親に私たちのことを話さなければならないだろう。

 けどそれは、私たちが自立して、私たちだけで暮らせるようになってからのこと。

 今はまだ、引き離されてはいけない。

 お母さんたちに気付かれてはいけない。

 なるべく顔が強張らないよう繕いながら、少しゆっくりとした歩みで家へと帰る。

 証拠は昨日のうちに隠滅してある。

 大丈夫、大丈夫と言い聞かせ、また手汗をかきながら歩いていた。

 白い我が家が見える。

 憂がぎゅっと手を握った。

唯「気を引き締めていこう、憂」

憂「ん。油断しちゃだめだね」

 顔を見合わせ頷いてから、玄関のドアノブに手をかけた。

唯憂「ただいまーっ!」



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