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紬「江戸時代の私達」#六~十話 【歴史】


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紬「江戸時代の私達」#六話:心中
紬「江戸時代の私達」#七話:過去2
紬「江戸時代の私達」#八話:過去3
紬「江戸時代の私達」#九話:一蓮托生
紬「江戸時代の私達」#十話:一蓮拓生2




221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:08:30.59 ID:OlK5fEC4O

【第六話:心中】

梓「団子だぁ!団子だぁっ!」

紬「喉に詰まらせないように食べるのよ?」

梓「三日振りの飯だぁ!」

団子を手当たり次第に食べる食べる。

梓「美味しい……美味しいです!」

純「そりゃあ私が作った団子だもんマズイ分けがない」

美味しい……本当に美味しい……。

梓「美味しいです……美味……ぐむっ!」




223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:13:21.24 ID:OlK5fEC4O

梓「ぐむむむっ!」

純「梓?梓!?」

い、息が出来ない……。
団子が喉に喉に……。

純「ほ、ほら水!」

純から水を受け取り一気に飲み干す。

梓「ぷ、ぷっはぁーっ死ぬかと思いました……」

紬「だから最初に忠告しておいたのに……」

梓「だって三日振りの飯なんですもん……」



224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:16:50.62 ID:OlK5fEC4O

純「団子屋の私が言うのも何だけど団子は飯じゃない。菓子よ!」

梓「腹に入れば何でも飯ですよ」

紬「食いしん坊ねー」

違うただ死にそうなぐらい腹が減っているだけだ。

純「あ、そう言えば二人共知ってる?心中があったんだよ」

紬「へぇ~心中があったのね~」

梓「し、心中……」



225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:24:58.96 ID:OlK5fEC4O

純「ほら、ここからすぐ近くに蕎麦屋があるでしょう?その近くで男女が心中してみたい」

紬「何だ男女なのね」

心中したのが男女と言う事に何か不満があるのかこの人は……。

純「男の指が切り落とされ……ハメたまま死んだらしいよ」

梓「ハ、ハメたまま…………」

紬「ふぅん」

梓「でも、良くその男女は心中しようと思いましたね」



227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:33:37.65 ID:OlK5fEC4O

純「本当……私ならいくら愛する人でもそれだけは無理」

本来、心中の意味は『真心』と同じで男女の『二心たき処を表す印』を指す。

その行為は誓紙・爪はぎ・入れ墨に指切・貫肉そして行き着く先が心中死。

真心の死である。

それに心中は大罪だ。



228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:42:59.94 ID:OlK5fEC4O

心中死は大罪……心中死をした者を弔ってはいけない。
一方が残った場合主犯とし斬首。

双方が残った場合、三日間日本橋に全裸で晒され公民権を剥奪。

若い娘が全裸で晒され手荒な仕打ちを受ける事もある。

梓「怖いなぁ……」

純「怖いね……」

心中があった事を話しておいて何が怖いね……だせっかくの団子がまずくなったじゃないか。



229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:51:31.96 ID:OlK5fEC4O

紬「心中なんてやるもんじゃないわね~」

梓「そうですよね……」

紬「日本橋に晒され男達に無理矢理犯されるだなんて嫌だわ~」

この人は恐ろしい事を随分と涼しい顔で言う。

梓「そう言えば紬さん今日仕事は?」

紬「休みよ~梓ちゃんは絵を書かなくていいの?」

梓「書いたって売れないですもん……」

純「元気だしなよ。団子一つやるから」

梓「本当ですかぁっ!いただきます!」



231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 06:57:14.96 ID:OlK5fEC4O

梓「はぁ~……久しぶりに水以外でお腹いっぱいになりました!
  紬さんと純さん奢ってくれてありがとうございます」

紬「いいのよ~じゃあお金かえして?」

梓「……へ?」

紬「冗談よ~びっくりした?」

梓「あ、当たり前ですよ!」

紬「それじゃわ私達はもう行くわね。純ちゃんさようなら」

梓「さようならー」

純「また来るんだよ~」

梓「お金があったらね……」



233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 07:07:24.83 ID:OlK5fEC4O

梓「ふわぁ~……お腹いっぱいになったら眠たくなって来ましたよ」

紬「太るわよ~」

梓「ううっ……あれ?この蕎麦屋……」

紬「純ちゃんがあった心中があった場所ね~」

遺体は回収されたらしい。
地面には血が太陽の光りに照らされ渇いていた。

梓「何か……怖いですね。早く行きましょう」

紬「そうね~あら?あそこにいる人って……」

紬さんが指を指した方向を見てみると澪さんが立っていた。



234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 07:15:27.82 ID:OlK5fEC4O

紬「澪ちゃん?」

澪「紬さん……ですか?」

紬「そうよ~」

彼女は目が見えない。
だから、声で人を判断しなくちゃならない。

私はあまりこの人とは話した事はないから喋べらない方がいいだろう。

紬「そこの蕎麦屋で心中があったらしいわね~」

澪「えぇ知ってます。誰が話してるのを聞きました」



235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 07:24:58.91 ID:OlK5fEC4O

紬「物騒よね~」

澪「はい……」

何だか澪さんは悲しそうな顔をしている。

澪「心中……あの、私帰りますね」

紬「えぇ、今日は三味線は弾かないの?」

澪「すみません……そう言う気分じゃないので」

紬「そう、なら仕方ないわね」

澪「じゃあ私はこれで……さようなら」

紬「さようなら澪ちゃん」



236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 07:33:35.82 ID:OlK5fEC4O

梓「何であんな悲しそうな顔をしていたんですかね?」

紬「分からないわ。気になるけど触れないようにしなきゃ」

梓「え?どうしてですか?何があったか聞けばいいじゃないですか」

紬「知る事を欲くばってたら人間関係がおかしくなっちゃうわ」

梓「そうなんですか?」

紬「そうよ。それに澪ちゃんは何か困ってる事があれば私に相談するわ。
  それまでは無理に聞きたくはないの!」



237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 07:41:19.73 ID:OlK5fEC4O

どうやら澪さんと紬さんは仲が良いらしい。
仲が良さそうには見えないけど。

紬「それじゃあ私そろそろ帰るわね~」

梓「あ、はい!気をつけて下さいね」

紬「わかってるわよ~それじゃあまたね」

梓「はい、また……」

私も帰るか……。
久しぶりにお腹もパンパンだし今日はいい夢を見れそうだ。


第六話
おわり



242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 08:14:34.07 ID:OlK5fEC4O

【第七話:過去2】

律と交合った日から一ヶ月が経った。

あの日から私は律とは会っていない。

目が見えないから律の家へ行く事も出来ずに私はただ彼女を待ち続けた。

あの日……律は見合いを断ると言っていた。
もしかして親と何かあったのだろうか?



243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 08:21:47.95 ID:OlK5fEC4O

思えば律と出会ってから毎日のように彼女と会っていた。

律が私の部屋に来て私を外へ連れ出して……辺りの風景や花の名前を教えてくれる。

そんな日々が一ヶ月も無い。

私には律と一ヶ月会っていないだけで拷問のように感じる。
早く律と会いたい。

また彼女に辺りの風景や花の名前を教えてもらいたい。



244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 08:27:20.17 ID:OlK5fEC4O

この日も律が私の家へ来る事は無いだろう。

そう思い床に着いて寝ようとした時に律は来た。

一ヶ月振りに聞く彼女の声はとても新鮮だった。

律「澪、またせてごめんな」

澪「り、律か?」

律「あぁ……私だ」

今まで何をしていたんだ。ずっと待っていたんだぞ……とは言えなかった。

彼女が泣き始めたからだ。



245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 08:34:28.75 ID:OlK5fEC4O

律「澪ぉっ……私無理矢理……無理矢理っ!」

澪「どうしたんだ?」

彼女が泣く声は始めて聞いた。
ヒグラシが鳴く声よりも悲しい声だ。

律「無理矢理、婚約させられたっ……!」

澪「無理矢理?」

律「だから……逃げて来たんだ……なぁどうすりゃいい?」

澪「…………私の家に住めばいい」



247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 08:38:47.01 ID:OlK5fEC4O

律「ダメだ……私が毎日お前の家に行っている事は親にバレている」

澪「律の親が訪ねて来ても嘘を付けばいいじゃないか!」

律「嘘はいずれバレもんだ……その場凌ぎにしかならないさ」

澪「じゃあ……どうする?」

律「…………」

澪「とにかく今日は此処に泊まれ親が来ても私が嘘を付いて追い払うから」

律「あぁ…………」



249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 08:45:08.79 ID:OlK5fEC4O

幸いこの日は律の親は来なかった。

後で聞いた話だと律と見合いをした相手は有名な歌舞伎役者で金を腐る程に持っているらしい。

だから、無理矢理。婚約させられたのか……律が不敏で仕方が無かった。

好きでも無い者と契りを交わす。

私の想像以上に彼女は深く傷付いただろう。

今は疲れて寝息をたてている律を手探りで探す。

手が頭に触れ彼女の頭をそっと撫でた。



250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 08:51:56.96 ID:OlK5fEC4O

私も寝よう……そう思い彼女の横に寝転んだ時にトントンっと家の戸をを叩く音が聞こえた。

体を起こし耳を澄ましてみる。
トントントントン。

澪「来た……か」

律を踏まないように慎重に立ち上がり戸を開けてみる。

聡「姉ちゃん……いますよね?」

幼い少年の声が聞こえた。



251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:01:17.23 ID:OlK5fEC4O

そう言えば律は弟がいると言っていた。
こんな夜中に小さな弟を私の家へ差し向けるとは……何と言う親だ。

澪「……いないよ」

律の弟には悪いが帰って貰おう。

聡「嘘……ですよね?姉ちゃんが行きそうな所って此処以外に無いですもん」

澪「だからいない……悪いが帰ってくれ」



252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:09:18.95 ID:OlK5fEC4O

聡「姉ちゃんと合わせて下さいよ!」

澪「何度も言わせるな律はいない」

聡「…………」

律「聡……か?」

いつの間にか律が私の後ろに立っていた。

今出て来たら連れ戻されるのに……何を考えているんだ。

律「澪、聡は大丈夫だよ。私が逃げられたのは聡のおかげなんだ」

澪「……え?」



254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:19:33.00 ID:OlK5fEC4O

話しを聞いた。
親に見張られ逃げ出せない律を救ったのは弟らしい。

律「こんな夜中に外を出歩いたら危ないだろ!」

聡「姉ちゃんごめん……でも、心配だったから」

律「心配するのは私だって……」

澪「とりあえず。朝まで此処に止まるといいよ」

聡「ありがとうございます……」

律「全く……」

心配して来たのにその言い草は無いだろう。
そう言いたかったがこの状況だ彼女を攻める事は出来ない。



255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:24:55.90 ID:OlK5fEC4O

律「聡、今日もう寝ろ」

聡「うん……あ、母ちゃん達には言わないから」

律「当たり前だ」

聡「それじゃあ……おやすみ」

律「あぁ……おやすみ」

澪「良い弟さんじゃないか」

律「……そうか?」

澪「あぁとても姉思いの弟さんだ」

律「やめろよ……聡が聞いてるだろ……ってもう寝てる」

澪「疲れたんだろう。ゆっくり休ませてやろう」



257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:30:22.07 ID:OlK5fEC4O

律「なぁ……澪?」

澪「どうしたんだ?」

律「私、夢を見たんだ」

澪「寝てる時なら誰だって夢ぐらいみるさ」

律「違う……何か現実的な夢だったんだ。怖くて目が覚めたら聡がいるんだもんびっくりしたよ」

よっぽど怖かったのだろう。
律の額には汗が光っていた。



258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:34:54.74 ID:OlK5fEC4O

澪「どんな夢を見たんだ?」

律「私がお前を殺す夢……恐ろしいかった」

澪「大丈夫ただの夢だ安心しろ」

律「あ、あぁ……」

澪「そろそろ私達も寝るか……」

律「そうだな……おやすみ澪」

澪「おやすみ律」



259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:44:24.26 ID:OlK5fEC4O

ドンドンドンドンドンドンドンドン。
五月蝿い……。

戸が激しく叩き付けられている。

律「来た……」

聡「姉ちゃんどうするの?」

澪「二人共隠れてて私が何とかするから」

律「わ、わかった……聡隠れるぞ」

聡「うん……」

戸を開けた瞬間、誰かが私の肩を力強く掴んだ。



260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 09:53:04.35 ID:OlK5fEC4O

「律は律は何処なの!?」

肩を揺さぶられながら甲高い女の声が聞こえた。

「ここにいるんだろ!出せ!」

次に野太い男の声……律の両親だ。

澪「律はここにはいません。律に何かあったのですか?」

「ここにいるのは分かってるの!早く律を出して頂戴」

澪「だからいません!帰って下さい」

「早く出せ!」

私の言葉を聞く耳を持っていない……か。
どうやって追い返そう?



262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 10:05:18.91 ID:OlK5fEC4O

澪「だからいないって言ってますよね!帰って下さいよ」

「もういい!退け!」

体が強く押され尻餅を付く。

「律!此処にいるんだろ?相手は金持ちなんだ!無理矢理にでもお前を結婚させるぞ」

驚いた……この両親。
律を金持ちと結婚させて自分達だけ楽をするつもりか……。

澪「いくら探してもいないって言ってるだろ!早く帰れ!」

「五月蝿いわ!目が見えない癖に生意気な小娘ね」

左頬に鋭い痛みが走った。

澪「うぅっ……」



264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 10:17:19.46 ID:OlK5fEC4O

律「澪に手はだすなよ!」

澪「り、律……」

今、出て来たら連れ戻されるぞ。

「見付けた……」

「ほら、帰るわよ!」

律「嫌だ!私は……私は絶対帰らない」

「五月蝿いんだよ!だから、コイツを岡場所か吉原に稼ぎを送らせればよかったんだ!」

澪「…………」

腹の底から……黒い感情が巻き上がって来る。



266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 10:26:23.36 ID:OlK5fEC4O

「男なら俺の仕事の跡を継げるが男じゃない……
 対して金も稼ぐ事すら出来ない!ただ婚約するだけで金持ちになれるんだ早く来い!」

律「絶対に……嫌だ!」

「いいから早く来なさい!」

私は手探りで探していた。
確かここら辺に私の杖があったはずだ。

澪「……あった」

手に硬い感触。
紛れも無い私の杖だ。



268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 10:38:38.73 ID:OlK5fEC4O

杖を持ち立ち上がる。

言い争う声で分かる……律の両親が居る場所。

声がする方向に私は杖を振りかざす。

律「み、澪……?」

力強く……杖を振ると硬い物が何かに当たった。

「ぐぅっ……」

見事に当たったようだ……。

澪「律!早く逃げろ!」

律「あ、あぁ……!お前も一緒に来い!」

律は私の手を取り走り出した。
そして、私達は疲れなど忘れてひたすら走り続けた。



269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 10:46:31.39 ID:OlK5fEC4O

律「はぁっはぁっはぁっはぁっ」

澪「はぁっはぁっはぁっはぁっ」

律「あは……あははははこんなに走ったのは久しぶりだな澪!」

澪「はぁっはぁっ……そうだな」

律「お前の三味線が取られた時もこんなにいっぱい走ったよな」

澪「そんな事もあったな……」

律「あぁ、あの時の澪の顔と来たらもう傑作だったよ!」



270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 10:57:26.25 ID:OlK5fEC4O

澪「………………」

律「まるでさ!猿のような顔をしてさ私の商売道具がー!商売道具がーってさ叫んでてさ!」

澪「………………」

律「三味線を澪から奪った男をさ……二人で走って追い掛けて……楽しかった」

澪「………………」

律「あの時が1番楽しかった……もう、あの頃には戻れないのかな?」

澪「………………」

律「何か言ってくれよ……なぁ澪!」



272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 11:08:40.38 ID:OlK5fEC4O

澪「分からない……ごめん分からないよ律」

律「……だよな。私はこれからどうしよう」

澪「私の家で一緒に住もう!」

律「ダメだ……また私の親が来る。何よりお前に迷惑が掛かるし……」

澪「……じゃあ二人で何処か遠くに行こう」

律「もうお前に迷惑は掛けたくないんだ……澪」

澪「掛けていい!沢山掛けていいから……」

律「…………結構ツライんだよ」

澪「ツライ……?」



273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 11:16:51.22 ID:OlK5fEC4O

律「好きな奴に迷惑を掛けるのってツライんだ」

澪「律…………」

律「なぁ澪?私の最後の頼みを聞いてくれるか?」

澪「あぁ……何でも聞くよ」

律「……一緒に心中しよう」


第七話
おわり



276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 11:49:44.70 ID:OlK5fEC4O

【第八話:過去3】

私は小さい頃から親に虐待をされていた。

茶をこぼしたら殴られ夜遅くまで起きていたら全裸で家の外に出されたりした。

弟の方は私と比べてみると親の対応が違いもの凄く可愛いがられていた。

憎くは無かった。
ただ、羨ましかった。

私には見せた事は無い母親の笑顔を聡は毎日のように見ていたんだから。



278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 11:54:23.19 ID:OlK5fEC4O

私が十八才を過ぎた頃……街を歩いていると三味線の音色が聞こえた。

綺麗な音色だ……そう思って三味線の音色の方へ無意識に足が動きだしていた。

三味線を弾いている人は綺麗な人だった。
長い黒髪に細く白い指。

私は三味線の音色と彼女の美しさに目を奪われ、ただ三味線を弾く彼女をジッと見詰めていた。



279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 11:59:49.61 ID:OlK5fEC4O

彼女は三味線を弾き終わり、しゃがんで地面に何かの絵を書いていた。

いいや、絵を書いているんじゃない。
小銭が入った椀を手探りで探していた。

彼女は目が見えていない。
そうわかった瞬間、私は椀を拾いあげ彼女にソッと手渡した。

ありがとう。
最初に聞いた彼女のこの言葉を今でも鮮明に思い出せる。



280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 12:08:50.40 ID:OlK5fEC4O

それから、私達は日が落ちるまで話し続けた。

親近感……そんな物を感じたのは私の方では無かったと思う。

この日から私は澪と友人となった。

家に招待され夜が明けるまで狂ったように話続けた。

喜怒哀楽をあまり人に見せない人間なんだろう。
澪はあまり笑わない。

笑う時は愛らしい笑顔を見せるのだけど。



281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 12:19:23.21 ID:OlK5fEC4O

月日が経つにつれて私達は更に仲が良くなった。

笑顔も当たり前のように私に見せてくれた。

喜怒哀楽の感情も全て私に見せてくれた。

喜んだ時は子供のようにあどけなく怒った時は凄く怖い。

悲しんでいる時は私まで悲しくなり楽しんでいる時は私まで楽しい気分になる。

澪は私の光だ。



282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 12:30:54.72 ID:OlK5fEC4O

澪「……心中か」

長い沈黙を破り彼女はポツリと呟いた。

家族からも見捨てられた……だけど私は一人では生きてはいけない。

このまま澪と暮らすのは悪くは無いが彼女にまた迷惑は掛けたく無い。

いや、一緒に心中死をする事も彼女にとっては大きな迷惑だ。

本当に我が儘な頼みだ。
私は何て馬鹿なんだろう……さっきの話は無しにしよう……
そう言おうとした瞬間、澪がまた沈黙を破った。

澪「心中者は死後の世で結ばれると言われている」



284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 12:37:48.77 ID:OlK5fEC4O

律「……え?」

澪「死後……来世に至ってまで変わらぬ己変わらぬ愛を誓う」

律「なぁ澪?……さっきの話しは……」

澪「お前と心中するのも……悪くは無いかもな」

律「…………澪」

澪「お前と心中し……死後の世界でも私達は結ばれる。
  来世でも結ばれる……何故、心中死は大罪扱いされるんだろうな律」

律「…………」



286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 12:49:34.19 ID:OlK5fEC4O

澪「私は律となら心中をしても良いよ」

律「死ぬのが怖くないのか?」

澪「怖いよ。だけど、お前のこれから先の人生を考えるともっと怖い」

律「……………」

澪「心中をしよう律……死んだ後も極楽浄土で同じ蓮華の上で生まれよう」

律「本当に……いいのか?」

澪「あぁ、来世ではお前の顔が見られるかも知れないしな」



287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 13:02:14.41 ID:OlK5fEC4O

私達は二人で川へと向かった。

近くに止めてあった船から縄を調達しお互いの体に巻き付けた。

律「……本当にいいのか?」

澪「あぁ……」

澪の生唾を飲み込む音が聞こえた。

律「やっぱり私……親の元に帰り婚約するよ」

澪「それだけは駄目だ!……駄目だ。
  嫌なんだ律が他の人の物になるのは……お前が悲しい思いをするのも嫌なんだ」



288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 13:11:08.79 ID:OlK5fEC4O

律「…………もし、生きてたらどうする?」

澪「その事は考えないようにしよう……良い事だけを考えながら死のう」

律「……そうだな」

澪「じゃあ……行こうか……」

律「……うん」

私達は川の中へと歩を進めた。
冷たい水が気持ち良い。



289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 13:20:17.66 ID:OlK5fEC4O

律「また来世で会えるかな?」

澪「会えるさ必ず……」

律「………………」

川が急に深くなり私達は足を取られ沈んだ。

死ぬと言う恐怖の中、私達はお互いに抱き締め合い接吻を交わした。

二人の体が水の中へ沈んで行く。
段々と意識が薄くなる……。

目をうっすらと開いて澪を見た。
彼女は最初に私に見せたあの笑顔を私に見せてくれた……。

死んだ後も……極楽浄土で……同じ蓮華の上で生まれよう。



291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 13:28:03.64 ID:OlK5fEC4O

・・・・・・・・

犬……の声が聞こえる。

澪「ん……ふぅ……」

何も見えないは目が見えないから当たり前か……。

そうだ、もし私が死んだのなら律がいるはずだ。
音を頼りに彼女を探してみるが犬の声以外、何も聞こえない。

和「あ、やっと目を覚ましたみたいね」

知らない声が聞こえた。
この声の主は神様なんだろうか?



293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 13:37:48.60 ID:OlK5fEC4O

澪「アナタは神様ですか?律は何処にいるんですか?」

和「え……違うし知らないわよ。それより大丈夫なの?アナタ川の浅瀬で倒れていたのよ?」

澪「……え?」

和「見付けた時は顔が青白かったの。最初は死んでいると思ったけど……生きててよかったわ」

生きてて……生きててよかった?

澪「ここは極楽浄土では無いんですか?」

和「いいえ。違うわよ」



294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 13:49:52.69 ID:OlK5fEC4O

澪「嘘だ…私は死んでいるんですよね?」

和「何処からどう見ても生きてるわよ?」

じゃあ私は……私達は。

澪「律は?律は何処にいるんですか!?
  川で私を見付けたんですよね?女がもう一人いませんでしたか?」

和「いなかったわね……」

私達は……心中を失敗した。

澪「律、律……ううっ……」



297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 13:58:52.95 ID:OlK5fEC4O

律はあのまま川の底へと沈んだのだろうか?
それとも、流されたのだろうか?

もしかしたら……もしかしたら律は生きているのかも知れない。

唯「ワン!」

さっきよりも近くで犬の声が聞こえた。

憂「あ!お姉ちゃん!」

足に何かが這い身震いをした。

唯「クゥーン……クゥーン……」

多分、犬が私の足を舐めているのだろう。



299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 14:02:08.52 ID:OlK5fEC4O

憂「ご、ごめんなさい……」

澪「………………」

唯「クゥーン……」

律を……律を探さなきゃ。
立ち上がり歩くが何かにぶつかる。

澪「痛っ……」

憂「だ、大丈夫ですか?」

和「……貴女、もしかして目が見えないの?」



301 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 14:08:54.87 ID:OlK5fEC4O

澪「……はい」

和「やっぱり……最初、私と話す時、
  人の目を見て話さないから人見知りだと思っていたけど……憂、彼女の体を支えてあげて」

憂「はい!」

憂と呼ばれた女が私の肩を掴んだ。
足元には犬がいるのだろう毛が私の足をくすぐっている。

和「ねぇ?よかったらでいいんだけど何で川で倒れていたのか教えてくれない?」

澪「…………誰にも言わないと約束してくれますか?」

和「勿論、約束するわ」



302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 14:15:04.64 ID:OlK5fEC4O

澪「心中したんです……最愛の女性と……」

憂「し、心中!?」

澪「お互いの体を縄で縛って……川で心中をしようとしたんですけど……」

和「そう……辛いだろうからそれ以上は話さなくていいわ……見付けたのが私でよかったわね」

澪「……ありがとうございます」

もし見付かったのがこの人では無かったら……今頃、私は酷い仕打ちを受けていただろう。



303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 14:25:54.15 ID:OlK5fEC4O

澪「律を……律を探さなきゃ」

和「その律と言う人は一緒に心中をした人?」

澪「……はい、今も何処かで私を待っているかも知れません……だから探さないと」

和「でも、貴女以外の人は川にいなかったわ……その律と言う人はもう……」

澪「……川に連れて行って下さい。律はまだ生きています……」

根拠は無かった……。
だけど、律がまだ生きている……そう思わなければ救われ無かった。



306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 14:38:23.06 ID:OlK5fEC4O

和「わかったわ……じゃあ憂この人を川まで連れて行ってあげて」

憂「あ、はい!分かりました」

澪「……ありがとうございます」

憂「いえ……それじゃあ行きましょっか!お姉ちゃん行くよ」

唯「ワン!」

今、この人は犬に向かってお姉ちゃんと呼んでいたのか?

もし、そうだとしたら……犬をお姉ちゃんと呼んでいる人はこの人だったのか。



308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 14:47:37.13 ID:OlK5fEC4O

憂「着きましたよ!」

唯「ワン!」

澪「……誰か人はいないですか?」

憂「私達、以外は誰もいませんね」

澪「そうですか……」

その場に座り込む。
涼しい風が心地良い。

澪「今日は私……ここにいます。付き合わせる分けにもいきませんし……帰っていいですよ」

憂「え?で、でも…………」

澪「お願いします……一人になりたいんです」



309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 14:57:05.72 ID:OlK5fEC4O

憂「分かりました……それじゃあ私達はこれで……行くよお姉ちゃん」

唯「ワン!」

澪「…………わざわざ送って貰いありがとうございます」

憂「いえ……いいんですよ……あの、死んじゃ駄目ですよ!」

澪「はい……律を見付けるまでは死ねません」

憂「……律さん見付かると良いですね!じゃあさようなら」

唯「ワンワーン!」

澪「さようなら……」



310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 15:09:25.82 ID:OlK5fEC4O

いくら待っても律は私の目の前には現れなかった。

少し肌寒い。
鈴虫の鳴く声がちらほらと聞こえる。

澪「律……まだかな」

寂しさを紛らしたくて一人言を呟いてみた。

誰も返事はしてくれない。
余計に寂しくなるだけだった。

澪「律……何処にいるんだろう?」

ジャリ……背後で足音がした。

澪「まさか……律?」



311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 15:20:59.09 ID:OlK5fEC4O

紬「ごめんなさい。人違いだわ」

澪「…………」

律じゃ無かった……。

紬「こんな夜に一人でずっと座ってるわね~気になって来ちゃったわぁ~」

澪「ほっといて下さい……」

紬「ほっとけ無いわよ!」

お節介な人だな。
私にあまり関わって欲しくない。

紬「貴女、探し物があるんじゃない?」

澪「……え?」



312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/09(土) 15:33:20.00 ID:OlK5fEC4O

紬「何かを無くしたからこんな所でずっと座っているんでしょう?」

澪「…………」

紬「もしよかったら私も貴女が無くした物を探すのを手伝うわ」

澪「簡単に見付かる物じゃないですよ……」

紬「そうなの?それじゃあ一人で探すのは不安よね~
  どう?私と一緒に貴女が無くした物を探してみない?」

澪「…………」

紬「私は探し屋と言う仕事をやっているの。私にまかせれば貴女の探し物すぐに見付かるわ!」


第八話
おわり



348 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 02:08:09.23 ID:vxp2Xg+yO

【第九話:一蓮托生】

澪「ぐうっ……く、苦しい……」

見た私は見た。

澪「やめ……やめてっ……」

いくら待っても姿を現らわさない律の姿を私は見た。

暗闇の中、蛍の光りのような淡い光を放ちながら私の首を絞める律の姿を見た。

澪「苦しい……ぐるじっ……」

確かに律の姿を私はこの目で見た。



354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 02:46:48.45 ID:vxp2Xg+yO

梓「はぁー……」

お腹が減り過ぎて絵を書く気にもならない。

梓「団子が食べたい…」

何故、私はこんなにも金が無いのだ。

紬「梓ちゃーん!」

梓「……ん?」

どうやら来客のようだ。
家の外から紬さんの声が聞こえた。



355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 02:50:51.98 ID:vxp2Xg+yO

梓「どうしたんですか?」

紬「饅頭怖くない?」

梓「いえ怖くないです」

紬「私には梓ちゃんが饅頭を恐れてるように見えるわ~」

何を言ってるのか全く理解が出来ない。

梓「何で私が饅頭を怖がるんですか?」

紬「素直に饅頭怖いと言っていれば梓ちゃんに饅頭をご馳走したのに……」

あぁ……成る程、落語か全然気付か無かった。

梓「饅頭怖いです!」



357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 02:57:30.70 ID:vxp2Xg+yO

紬「じゃあ一緒に饅頭を食べに行きましょう!」

梓「え?……いいんですか?」

紬「勿論よ」

この前の団子の時もそうだが紬さんは人に色々と食べ物をご馳走するのが好きらしい。

有り難いのだが何か裏がありそうで怖い。

紬「早く行きましょう!」

梓「あ、はい!」

まぁ、タダで饅頭が食えるのだ。
先の事は考えないようしよう。



358 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 03:04:12.67 ID:vxp2Xg+yO

饅頭屋に辿り着いた私と紬さんは席に座り饅頭を頼んだ。

梓「饅頭なんて久しぶりに食べますよ!」

紬「売れない絵師だからあんまり饅頭が食べれないのね!」

梓「失礼な!頑張って絵を書いてるんですからね!」

紬「梓ちゃんの絵って見ていて面白くないのよね~」

梓「なっ……何ぃっ!」



359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 03:14:53.33 ID:vxp2Xg+yO

紬「色使いも下手だし……この前に見た燕の絵なんて死んでいる燕を見ているみたいだったわ~」

随分と真っ直ぐに色々と言ってくれる……。

梓「あはは……」

紬「まぁ頑張ってね梓ちゃん!」

梓「はい……」

紬「あ、ほら!饅頭が来たわよ~」

梓「饅頭!」



360 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 03:24:20.19 ID:vxp2Xg+yO

梓「饅頭……美味しいです」

紬「そう?よかったわぁ~」

梓「紬さんも食べないんですか?」

紬「口の中に物を入れて話さないの」

梓「あ……すみません!」

紬「私は饅頭は食べなくていいわぁ~」

梓「そうですか。じゃあここにある饅頭は全部……」

紬「梓ちゃんのよ~」

梓「本当ですか!ありがとうございます!」



362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 03:35:58.23 ID:vxp2Xg+yO

紬「これで梓ちゃんは私の助手になったわね!」

梓「ぶっふーっ!」

思わず饅頭を吐き出してしまった。
今……この人は何て言った?

梓「じょ……助手?」

紬「梓ちゃんは今日から私の助手よ~」

梓「へ?それは一体どう言う意味ですか?」

紬さんは饅頭を指差した。

梓「あ…………」



363 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 03:44:35.90 ID:vxp2Xg+yO

紬「私の助手になれば饅頭沢山食べられるわよ!」

梓「饅頭……沢山……」

紬「毎日毎日、饅頭が食べられるわよ?団子も食べられるわよ?」

梓「饅頭……団子……」

紬「もっと沢山食べたいわよね?」

梓「饅頭……団子……沢山食べたい……」

紬「じゃあ助手になる?」

梓「な、なります!」

紬「それじゃあ決定ね~」



366 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 03:54:54.70 ID:vxp2Xg+yO

食べ物につられて助手となった分けだが……何とも情けない話だ。

梓「はぁ……」

まぁいいだろう。
探し物を探すだけで饅頭や団子が沢山食べれる。
以外と悪くは無い話なのかも知れない。

紬「あら?饅頭もう全部食べ終わったの?流石、食いしん坊の梓ちゃんね!」

何度でも言うが私は食いしん坊では無い。
ただ、死にそうなぐらい腹が減っているだけだ。



367 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 03:59:54.23 ID:vxp2Xg+yO

紬「それじゃあ探し物を探しに行くわよ」

梓「えー!もうですか!」

紬「当たり前よ。ほら、早くと立ち上がって」

梓「はぁ……分かりました」

紬「梓ちゃん凄い怠け者ね~」

私は怠け者じゃない。
飯を沢山食った後は動くのが面倒なだけだ。

梓「あ、そう言えば何を探すんですか?」

紬「澪ちゃんの恋人よ~」



369 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 04:08:59.26 ID:vxp2Xg+yO

梓「澪さんの恋人……?」

澪さんに恋人なんていたのか……。
行方不明にでもなったのだろうか?

紬「頼まれた日から探しているんだけど中々見付からなくてね~困ってるの」

梓「へぇ~何時、頼まれたんですか?」

紬「去年の夏よ~」

梓「去年の夏!?」



370 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 04:16:06.73 ID:vxp2Xg+yO

紬「そうよ~本当に見付から無いの~」

私のむったんや憂の布を探し当てた紬さんでも見付けられない物があるみたいだ。

でも、この人が見付られないんじゃ……私が手伝っても無駄だと思うんだけどなぁ。

梓「澪さんの恋人ってどんな人なんですか?」

紬「分からないわ~律と言う名前と女性って事は分かってるんだけどね~」

あぁ……そうか。
澪さん目が見えないから容姿を伝えようにも伝えられないのか。

梓「ん?……女性?」



371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 04:26:49.47 ID:vxp2Xg+yO

紬「どうかしたの?」

梓「あれ?女性って言いました?」

紬「言ったけどそれがどうしたの?」

梓「澪さんの恋人を探すんですよね?何で女性なんですか?」

紬「澪ちゃんの恋人は女性なのよ~」

梓「は、はぁ?それって……同性愛ですか?」

紬「そうよ~いい物よね~」

ここは突っ込まないようにして置こう。

梓「澪さんの恋人は女性何ですね……」



373 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 04:36:49.63 ID:vxp2Xg+yO

紬「あ、こんな所で長話してないで早く行きましょうよ」

梓「は、はぁ……」

去年の夏から行方不明になった澪さんの恋人。
本当に探しても見付かるのだろうか?

梓「まずは何処に行くんですか?」

紬「此処から少し離れた場所に川があるでしょう?そこに行きましょ!」

梓「何で川なんですか?」

紬「澪ちゃんとその恋人はそこで別れたらしいの~」



374 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 04:47:14.21 ID:vxp2Xg+yO

梓「別れた?」

紬「えぇ!別れたって言っていたわ!」

梓「別れたのなら澪さんは律さんが何処に行くか聞いてるんじゃないんですか?」

紬「さぁどうかしら?私も詳しい事は彼女に聞いていないのよね~
  律と言う女を探して欲しいとしか聞いていないの~」

梓「名前と性別が分かった所で本当に見付かるんですかね?」

紬「先の事は分からないわ~それじゃあ川に行きましょう?」

梓「あ、はい!」



375 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 05:01:57.44 ID:vxp2Xg+yO

川へと着いた私達は律と言う女がいないかすぐに探した。

だが、私達以外に人の姿は見えない。

梓「人一人いませんね……無駄足でしたね」

紬「いいえまだ分からないわ!座りながら人が通るのを待って、その人が律さんかどうか聞くのよ~」

梓「は、はぁ……」

紬「日が落ちるまで梓ちゃん聞き込み頼んだわよ!」

梓「えぇー!私がですか?」

紬「……饅頭」

梓「もう……分かりましたよ」



376 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 05:12:35.40 ID:vxp2Xg+yO

梓「はぁ……でも、此処人通りますかね?」

こんな場所に川があったなんて始めてしった。

紬「時々、来るわよ?」

梓「時々ですか……」

紬「ほらほら!背筋伸ばして!そんなんじゃ探し物を見付けられないわよ!」

梓「うぅ……あれ?」

私の視界の隅っこで何かが動き物影に隠れた。
イタチや猫かと思ったがどう考えても大きさが違う。

梓「今、何かいましたよ」



377 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 05:30:34.80 ID:vxp2Xg+yO

紬「本当?猫かイタチじゃない?」

梓「いえ……人間一人分の大きさでしたよ」

紬「じゃあ行ってみましょう!律さんかも知れないわ!」

梓「はい!」

私達は物影に隠れた人を見る為に歩き出した……が。

どうやら、そこまで行く必要は無かったようだ。
物影に隠れた人はひょっこりと頭を出し額の汗を拭っていた。

紬「あら?澪ちゃん?」



378 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 05:36:39.48 ID:vxp2Xg+yO

私が見た人は澪さんだった。
それにしても……額に凄い汗が出ているなぁ。

澪「紬さん……?」

紬「そうよ~澪ちゃんどうしたの?凄い汗ね~」

布を取り出して澪さんの汗を拭いながら紬さんは言った。

澪「髪留めを無くしたみたいで……探しているんです」

あぁ、だからこんなに汗を流していたのか。



379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 05:45:27.56 ID:vxp2Xg+yO

紬「髪留めを無くしたの?よかったら私達も一緒に探そうか?」

澪「はい……お願いします」

紬「それじゃあ梓ちゃん探すわよ~」

梓「あ、はい!分かりました」

落とした物を見付ける……そんな簡単な事でさえも
目が見えない彼女にとっては、山に落とした針を見付ける事ぐらいに難しい事なのだろう。

私達は目を凝らしと澪さんの髪留めを見付け始め……。

紬「澪ちゃんの髪留め見付けたわよ~」

流石だ早い。



381 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 05:53:14.21 ID:vxp2Xg+yO

澪「ありがとうございます……見付かってよかった」

紬「いいのよ~」

梓「紬さん早かったですね……」

紬「そうかしら?」

澪「あの……そちらの幼い声の方は?」

幼い声……。
これでも二十歳なのにそんな事を言われるのは始めてだ。

紬「あ、まだ紹介していなかったわね~私の助手であり売れない絵師でもある梓ちゃんよ~」

売れない絵師は余計だ。



382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 06:00:53.70 ID:vxp2Xg+yO

梓「こんにちは……貴女の事は紬さんから聞いてます」

澪「そうですか……」

紬「澪ちゃんまた律さんを待っていたの?」

澪「はい……」

紬「本当に何処に行ったのかしらね~全然見付けられなくてごめんね」

澪「いえ、いいんです」



385 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 06:11:44.77 ID:vxp2Xg+yO

ん?澪さんの首筋に何か黒い痣がある。
よく見てみると人間の手の様な痣だ。

澪「紬さん……?」

紬「なぁに?」

澪「今朝……律を見たんです」

見た?彼女は目が見えていないはずだ。

紬「そう、よかったわね~」

紬さんは澪さんに髪留めを渡しながら言った。
紬さんは澪さんが言った事に疑問を抱いていない……そんな表情をしていた。



386 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 06:22:04.07 ID:vxp2Xg+yO

澪「だから……此処に行けば律とまた会えるそんな気がして……」

梓「あぁ!私律さんを見付ける為にいい事を思い付きました!」

紬「いい事?」

梓「何で今まで気が付かなかったんだろ……番屋ですよ!番屋に言えばいいんじゃないですか?」

澪「それだけは辞めて下さい!」

澪さんは怒鳴るように言った。

澪「番屋だけはダメなんです……それだけはダメなんです!」



388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 06:27:42.47 ID:vxp2Xg+yO

梓「何で番屋じゃダメなんですか?」

澪「とにかく番屋じゃダメなんです……」

行方不明を手っ取り早く探すには番屋に言うのが1番なのに……番屋に頼れない理由が何かあるのか?

澪「お願いします……番屋には言わないで下さい」

梓「わ、分かりました……」

紬「ねぇ澪ちゃん?」

澪「……何ですか?」



389 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 06:38:15.06 ID:vxp2Xg+yO

紬「澪ちゃんさっき律さんを見たって言ったわよね?」

澪「はい……」

紬「どんな容姿をしてたか分かる?」

澪「分かりません……覚えていないんです」

紬「覚えていない?」

澪「確かにこの目で始めて律を見ました……だけど容姿が思い出せないんです」

紬「そう、それなら仕方がないわね~」

目が見えないのにどうやって律さんを見る事が出来る?
何故、大事な恋人の姿を始めて見たのに思い出せない?

考えた結果、私の頭にある事が思い浮かんだ。



390 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 06:47:44.49 ID:vxp2Xg+yO

彼女は夢を見ていたのではないだろうか?

私も幸せな夢を見ていて朝起きると全く思い出せない事が多々ある。

例えば夢の中で団子をお腹いっぱいに食べるが、
朝起きると夢の中で何をお腹いっぱい食べていたのか思い出せない……そんな事が多々ある。

だけど彼女に貴女が律さんを見たのは夢なんじゃないですか?なんて言えるはずがない

そんな事、残酷過ぎてとても私には言えない。



391 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 06:55:23.32 ID:vxp2Xg+yO

紬「あ、気になっていたんだけどその首の痣はどうしたの?」

澪「首に痣なんかありますか?」

紬「えぇ、まるで人の手のような痣があるわよ」

澪「きっと律の手だ。今朝私の元に現れて律に首を絞められましたから……」

梓「首を絞められた……?」

澪「はい……」

紬「澪ちゃん律さんに首を絞められるような事を何かしたの?」

澪「してないです……」



393 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 07:03:11.61 ID:vxp2Xg+yO

紬「何もしていない?じゃあなんで大事な恋人の首を絞めるのかしら?」

澪「きっと……律は怒っているんです」

紬「怒っている?」

澪「約束を破ってしまったから……」

紬「律さんと何かを約束していたの?」

澪「はい……これから言う事は絶対誰にも言わないで下さい」



395 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 07:11:48.03 ID:vxp2Xg+yO

……全て聞いた。
律さんの親の事も心中死しようとした事も全て聞いた。

澪さんは大粒の涙を流しながら全て話してくれた。

紬「ありがとう全部話してくれて……」

澪「ずっと……罪悪感を感じていたんです……
  お金も取らず理由も聞かずに律を探してくれている紬さんにずっと罪悪感を感じていたんです……」

紬「ううん、いいのよ……」

澪「ずっと律を探してくれて本当に本当にありがとうございます……」



396 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 07:21:21.40 ID:vxp2Xg+yO

紬「澪ちゃん今日は疲れたでしょう?家まで送ってあげるからゆっくり休んだ方がいいわ」

澪「はい……そうします……」

紬「梓ちゃん行きましょ?」

梓「はい……」

澪さんにこんな悲しい過去があった何て……私は知らなかった。

そして、彼女の大事な恋人を意地でも探したいと思った。



397 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 07:31:45.41 ID:vxp2Xg+yO

澪さんを送り届けた後、私達は近くの飯屋へと入った。

梓「澪さん……可哀相ですよね」

心中をしようとして失敗……
今も生きているか分からない恋人を探す為に暗闇の中を生き続ける……そんなの悲し過ぎる。

紬「梓ちゃん?」

梓「はい……どうしたんですか?」

紬「律さんが見付からない訳がわかったわ」



398 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 07:41:06.75 ID:vxp2Xg+yO

梓「……え?」

紬「死人に口無し……いくら私でも広い川の中に沈んだ死体を探すのは難しい……」

梓「それって……」

律さんが死んだって事なのか?

紬「探すのを投げ出した分けじゃないわ……これは飽くまで私の予想よ」

梓「じゃあもしかしたら律さんは生きているのかも知れないって事ですか?」

紬「可能性は低いわね……」



399 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 07:53:57.19 ID:vxp2Xg+yO

梓「……じゃあ澪さんの首の痣は……アレは律さんが付けたんですよね。
  それが本当なら律さんは生きているはずです!」

紬「そうね。生きているといいわね……」

紬さんは何かを悟っているような口調で私に言った。

紬「私も律さんに生きていて欲しいわ……澪ちゃんの為にもね」



400 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 08:02:35.16 ID:vxp2Xg+yO

紬「そろそろ行きましょうか」

梓「行くって何処にですか?」

紬「澪ちゃんの家よ。私の予想が当たっていれば今夜律さんの行方が分かるわ」

梓「ほ、本当ですか!?」

紬「多分……律さんの姿は生か死か今日、全てが分かる」


第九話
おわり



403 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 08:39:30.33 ID:vxp2Xg+yO

【第十話:一蓮拓生2】

澪「家に泊めて欲しい?」

紬「えぇ!泊めて欲しいの~」

今日で律さんの行方が分かる何て本当だろうか?
それに何で澪さんの家に泊まる必要があるのだろう?

澪「いいですけど……何も出ませんよ?」

紬「大丈夫よ~あ、澪さんの為に団子持って来たのよ~」

本当、何を考えているか分からない人だ。



404 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 08:45:28.31 ID:vxp2Xg+yO

澪「団子……ですか」

紬「えぇ!純団子って店の団子屋なの!結構美味しいのよ~」

澪「……立ち話も何ですしとりあえず入って下さい。」

紬「わかったわ~あ、梓ちゃんは団子食べちゃダメよ!」

梓「なっ……!」

紬「これ全部、澪ちゃんのだから~」

梓「わ、分かりましたよ……」



406 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 08:53:32.35 ID:vxp2Xg+yO

澪さんの部屋の中は荒れていた。
浴衣の帯が床に投げ出され部屋の隅には蜘蛛が巣を作っている。

澪「汚いでしょう?」

梓「そ、そんな事ありませんよ!個性的なお部屋ですね!」

澪「掃除をしたいんですが……
  出来なくて困っているんです……今まで律が全部してくれていたから」

紬「いい人ね律さんは……あ、団子を食べましょ?」

澪「……はい」



408 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 09:04:49.94 ID:vxp2Xg+yO

私は団子を食べる澪さんをずっと眺めていた。

団子が食べたいから眺めているんじゃない。
団子を食べる彼女の顔……とても悲しそうだ。

澪「美味しいです……」

紬「本当?気に入って貰えてありがたいわぁ~」

澪「律もこの団子好きでした。純団子と言うお店……神社の近くですよね?」

紬「そうよ~」

澪「あの神社には犬をお姉ちゃんと呼んでいる人がいるらしいですよ」



410 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 09:13:08.84 ID:vxp2Xg+yO

梓「犬をお姉ちゃんと呼んでいる人……」

憂の事だ……。

澪「私はあの人達にも世話になった事があります……何時かお礼を言わないと」

梓「私も憂には世話になりました」

澪「憂……?」

梓「あ、犬をお姉ちゃんと呼んでいる人の名です」

澪「そうですか……憂と言うんですね。悲しい名だ」



411 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 09:20:10.70 ID:vxp2Xg+yO

梓「でも、人の事を思いやれる良い人でした」

澪「私も彼女には感謝しています……私を拾ってくれたあの人にもあの犬にも……
  紬さんにも貴女にも礼を言わないといけない人が沢山いる」

紬「優しいわね澪ちゃん」

澪「いえ……私は優しくなんか無いですよ。団子もういりませんお腹いっぱいになりました」

紬「そう……残りは梓ちゃんにあげていい?」

澪「……どうぞ」



413 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 09:34:12.89 ID:vxp2Xg+yO

梓「むふぅ~美味しい」

澪「私そろそろ寝ますね」

梓「あ、はい!」

澪「おやすみなさい……」

紬「おやすみなさい澪ちゃん。いい夢見られるといいわね」

澪「……はい」



414 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 09:42:40.94 ID:vxp2Xg+yO

梓「じゃあ私達も寝ましょうか!」

紬「あ、言うの忘れてたわ今日は徹夜よ」

梓「て、徹夜!?」

紬「まぁ訳を話したいから外に行きましょう?」

梓「わ、分かりました……」

澪さんを起こさないように私達はそっと外に出た。

梓「それで何で徹夜をするんですか?」



415 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 09:55:15.40 ID:vxp2Xg+yO

紬「律さんが来るからよ~だから徹夜をするの」

梓「律さんが来る?」

紬「澪さんが言ってたでしょう?律さんが来たってだから今日も来ると思うの」

梓「まさか……澪さんには悪いんですけど……夢じゃないんですか?」

律さんが首を絞める夢を澪さんは見た。
その夢を澪さんは現実と勘違いしてしまって夢だと疑ってもいない。
そんな私の考えを紬さんは真っ向から否定した。

紬「夢なんかじゃないわ」



417 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 10:03:56.34 ID:vxp2Xg+yO

梓「夢じゃ……ない?」

紬「えぇ澪さんが話した事は夢じゃない……
  彼女は律さんの姿を見たし律さんは彼女の首を締めた。これは紛れも無い現実よ」

梓「あはは……まさか」

紬「だから徹夜して待っていれば律さんは来ると思うの」

私には律さんが来るとは到底思え無かった。

今まで姿を現らわさなかった律さんが何故今になって姿を現す?

考えれば考える程、疑問が疑問を呼ぶ。



419 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 10:22:03.40 ID:vxp2Xg+yO

紬「それじゃあそろそろ戻りましょう」

梓「え?……は、はい!」

再び澪さんの家へと戻った私達はすっかり眠っている澪さんを見た。

紬「幸せそうな表情ね」

きっと律さんの夢を見ているのだろう。
彼女は笑みを浮かべながら寝ていた。

彼女の笑顔を始めて見た。
とても美しい。

紬「じゃあそろそろやりましょうか!」

梓「何をですか?」

紬「決まってるじゃない掃除よ」



421 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 10:29:04.40 ID:vxp2Xg+yO

澪さんは掃除をしたくても出来ないと言っていた。

朝になるまでの暇潰しにもなるし、何より澪さんの為にもなる。

梓「はい!掃除やりましょう!」

紬「じゃあ私は寝るから梓ちゃん頼んだわよ~」

梓「えぇぇー!」

紬「うふふ。冗談よ冗談!」



422 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 10:38:30.40 ID:vxp2Xg+yO

一通り掃除をし終わり私達は休憩を取る事にした。

梓「結構、綺麗になりましたね」

紬「えぇ!澪ちゃん喜ぶと思うわ~」

梓「そうですね!」

ギシッギシッ。
何かが軋む音が聞こえた。

澪さんが寝返りを打っているのか……。
最初、私はそう思っていたが違うようだ。

急激な冷気が部屋を包みまた何かが軋む音が聞こえる。



425 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 10:45:26.11 ID:vxp2Xg+yO

ギシッギシッギシッ。

梓「な、何ですかこの音……」

紬「しーっ黙って」

ギシッギシッギシッ。

私は見た。

澪「ぐうっ……!」

私達以外、誰もいないこの部屋に急に現れ澪さんの首を絞める女の姿を見た。

澪「く、苦じい……っ!」

律「澪……澪ぉっ!」



427 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 10:57:49.80 ID:vxp2Xg+yO

澪さんの名前を呼んでいる女は透けていた。

彼女越しに壁が見える。
幽霊……彼女はもしかして幽霊なのか?

この寒いぐらいの部屋の冷気に透けた体……。

律さんの行方は生か死か……今日、全てが分かる。

紬「貴女……律さんよね?」

彼女は律さんなのか?



429 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 11:08:39.59 ID:vxp2Xg+yO

律「……お前らは誰だ?」

幽霊は澪さんの首を絞めるのを止め私達を見た。

紬「私は紬この人は梓……澪ちゃんの友達よ」

幽霊とはもっと怖い物だと思っていた。

私は彼女に恐怖の感情は抱いていなかった。
むしろ、彼女を見て悲しいと思った。

だって彼女は涙を流している。
幽霊も涙を流すんだね……。



430 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 11:19:17.86 ID:vxp2Xg+yO

律「そうか……澪の友人か……私は律だ」

紬「そう……やっぱり律さんなのね」

律「あぁ……」

紬「ずっと貴女を探していたの澪ちゃんも私も……ずっと探していた」

律「そうか……」

律さんは澪さんを見た。

律「綺麗な寝顔だ……狂うぐらいに愛おしい」

夜明けを伝える鳥の声が聞こえた後……律さんは消えた。



431 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 11:28:37.55 ID:vxp2Xg+yO

紬「やっぱり律さんは死んでいた……みたいね」

梓「……はい」

生きている者は幽霊にはならない。

紬「この事を澪ちゃんに伝えないと……あまり言いたくは無いのだけど……」

戸の隙間から太陽の日差しが差し込んだ。

それから、数時間後……私達は澪さんに律さんが死んでいる事を伝えた。

彼女の泣き顔は直視出来ない程、悲しい表情だった。



434 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 11:37:42.84 ID:vxp2Xg+yO

紬「未練が残っていたのよ」

団子の串を食わえながら紬さんは言った。

紬「心中死するも自分だけが死に……愛する者はまだ生きている。
  だから彼女は幽霊となり澪ちゃんの元へ現れた」

この世に大きな未練を残す者は幽霊となると言われている。

梓「でも……何で澪さんの首を絞めてたんですかね?」

紬「……幽霊は自分が居ると言う事に気付いて貰えないと寂しくなるらしいわよ」



435 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 11:43:20.17 ID:vxp2Xg+yO

梓「寂しくなる?」

紬「そうだから印を残すの」

梓「あぁ……澪さんの首の痣」

律さんは澪さんに伝えていたんだ。
私は側にいると……。

梓「また律さん……澪さんの元に現れるんじゃないですかね?」

紬「ううん……彼女はもう気付いていると思うわ……律さんが何時でも側に居ると言う事を」

梓「だから……もう現れない」

紬「えぇ、現れない」



436 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 11:49:48.58 ID:vxp2Xg+yO

梓「何で紬さんは律さんが幽霊として出るって分かったんですか?」

紬「川で澪ちゃんの話しを聞いた時……思い出した事があるの」

梓「思い出した事?」

紬「これよ」

紬さんは私に瓦版をそって手渡す。

川で白骨死体が見付かる。
瓦版にはそう書いていた。

紬「もしかしてこの白骨死体は律さんじゃないかな?と思ったの」



440 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 12:16:22.25 ID:vxp2Xg+yO

紬「それから……澪ちゃんの首の痣を見てもしかしたら
  律さんが幽霊として、側にいると伝える為に痣を付けたんじゃないかなって思ったの」

梓「よくそんな事を考えましたね」

紬「本当よね。自分でも当たっているか不安だったわ……」

でも、当たっていた。

梓「紬さん……やっぱり貴女は凄いです。普通の人ならこんな事思いもしませんもん」

紬「あら?皮肉?」

梓「とんでもない。褒めてるんですよ」



441 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 12:28:43.44 ID:vxp2Xg+yO

紬「じゃあ、そろそろ行きましょう」

梓「そう……ですね」

紬「後で番屋に行きましょう。そこに律さんの骨があるから団子を供えましょう」

梓「はい……あ、澪さんも誘いませんか?」

紬「そうね。このまま無縁仏として弔われるのはあまりにも可哀相だものね」

心中死をした者は弔う事は許されていない。
だが、私達にはそんな事気にもならないし私達以外にその事を知るのは誰もいない。

律さんが愛する者を思いながら死んだ。
それでいいじゃないか。



442 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 12:36:38.00 ID:vxp2Xg+yO

―――私は何時ものように三味線を弾きに行こうと思った時、律の声を聞いた。

こっちだよこっちだよ。
律は私にそう言っていた。

杖を手にし外へ出て彼女の声を追い掛けた。

こっちだよこっちだよ。

澪「り、律……待って!」

声が遠くなって行く。
私は必死に追い掛けた。

律は死んだと聞いた……私もその現実を受け止めた。

なのに、聞こえるんだ律の声が聞こえるんだ。



443 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 12:42:31.03 ID:vxp2Xg+yO

必死に追い掛けた。
もっと近くで律の声を聞きたい。

澪「待って!律待って!」

何かにぶつかりながらも必死で彼女の声を追う。

「おい!待てっ!」

こっちだよこっちだよ。

澪「律!待って!」



446 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/10(日) 12:53:31.40 ID:vxp2Xg+yO

幻影を追い続ける足はやがて宙を切り水の中へと沈む。

狂うぐらいに愛おしい澪の顔を私は見た。

ずっと見たかった律の顔を私は見た。

「身投げだァー!女が一人川の中へ飛び込んだぞー!」

薄れ行く思考の中、 私の手に律の手が重なった。

律「会いたかったよ澪」

彼女の笑顔を見た後、眩しいぐらいの光が私を包んだ―――

死んだ後も極楽浄土で同じ蓮華の上で生まれよう。

第十話
おわり




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