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澪「……好きだ」 【非日常系】


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紬「けいおん自給自足」#澪唯





1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 20:46:39.68 ID:BuO1CMUb0

「お前のそれは、恋じゃないよ」

律は私にそういった。

何で?

私には、律しかいないのに。
律がいなきゃダメなのに。

どうして?

「……言ってもわかんないだろうけど、いつかお前も分かると思う」

わかんない。
そんなのわかんない!

「ううん。きっと分かるよ。
 私は澪の望んでた王子様なんかじゃないし、夢に見たような恋人でもないって事がさ」

私は、そんな夢見る少女じゃない。
王子様も、いらない。
律だけいればいい。
律がいるだけでいいのに。

なのに

「違うよ」

そう否定して





2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 20:47:23.85 ID:BuO1CMUb0





私の元から、去っていった。





3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 20:48:17.56 ID:BuO1CMUb0

私は泣いた。
この気持ちをどうにかすることなんて、出来なかった。

いつもなら。
いつも、私が泣いているときは
必ず律がそばにいてくれた。

悲しい時は、何もいわずにずっとそばにいてくれた。
励ましてほしいときは、励ましてくれた。
だから私は、すぐに立ち直れた。

だけど、その律は、もう私のそばからいなくなった。

私は、一瞬にして立ちかたを忘れてしまった。

もう二度と、立ち上げることなんて出来ないんじゃないかと、そう本気で思った。



だけど――――――



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 20:49:00.61 ID:BuO1CMUb0

私には、まだ―――――――



「澪、ちゃん?」



差し伸べられる、手があった。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 20:50:19.23 ID:BuO1CMUb0

髪もぼさぼさで、この寒い時期に上着も着ないで、私の元へ駆けつけてくれる。
そんな手が、私にはまだ差し伸べられていた。



唯――――――



私は、何も言えなかった。
だけど、唯は、私を抱きしめてくれた。

そして私は、唯の腕の中で泣いた。



10 名前:某所に投下したものの直しなので:2011/03/02(水) 20:51:22.24 ID:BuO1CMUb0

唯は知ってか知らずか、何も聞かずにずっとそばに居続けてくれた。
気がつけば私は唯の家の住人になっていた。

家に帰るのが、律にあってしまうのが怖かったから。
唯がくれる優しさに甘えていたかったから。

唯はそれでも、ずっといてもいいといってくれた。

私が立ち上がるのを、ゆっくりと待ってくれる。
望めば、何時だって手を差し延べてくれる。
だから、私は甘えた。


この、心地いい、泥沼に。



11 名前:どこかで見たことあっても:2011/03/02(水) 20:52:29.70 ID:BuO1CMUb0

私は、気付いていた。

このままでは、何処にも進めない。

ただ泣きじゃくって座っているだけでは、何処へも行けない。

だから、私は。
立って歩こうと決めた。



そばにいてくれる、唯のために。



13 名前:そっとしておいてくれるとありがたいです:2011/03/02(水) 20:53:14.75 ID:BuO1CMUb0

唯のおかげで、私は少しずつ笑えるようになった。
それは、唯が隣で笑っていてくれたからだ。

私は、律と、会った。
会って、話すことが出来た。
それは、唯がそばにいてくれたからだ。

それでも私は、家に帰ることは出来なかった。
律とルームシェアをしている今の部屋。
帰ったら、きっと。律と二人きりにならなければいけないから。
だから――――――

唯が、強く私の手を握る。
私の顔から不安を読み取ったのだろう。
それでも、多くは言わず、
ただ「ずっとここに居てもいい」と、そういってくれた。

それが、とてもありがたかった。



16 名前:そっとしておいてくれるとありがたいです:2011/03/02(水) 20:55:09.06 ID:BuO1CMUb0

私が自分自身と向き合えるようになって。
私は、伝えなければいけなかった事を伝えた。

ずっとずっと、ありがとうと。

唯が居たから立ち直れた。
唯が居たからまた笑える。

だから、ありがとう。

そう伝えた。




それを聞いた唯は、

なぜか

とても悲しそうな顔をした。



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 20:56:29.80 ID:BuO1CMUb0

何で、そんな顔をするの?
私がそう聞こうとすると

「ねぇ、澪ちゃん

 キス、しよっか」

え?と
私がその意味を理解するより前に。

唯の唇が、私の唇に触れた。



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 20:57:19.19 ID:BuO1CMUb0

「ふふ、しちゃったね」

そういって笑う唯の顔は、何時も通りの笑顔だった。
なのに
なぜか今にも泣き出しそうにも見えた。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 20:58:53.16 ID:BuO1CMUb0

私の心を支配したのは驚き、そして困惑。
唯はなんで、こんなことを?

「ねえ、澪ちゃん――――――」

ゾワリと背筋から寒気が走る。
初めて見る、唯の表情、声色、そして目。

それは、まるで唯が急に知らない人間になってしまったような恐怖と―――

そして、

「抱いて」

確かな感情の昂ぶり。



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:00:06.24 ID:BuO1CMUb0

私は、自分の中の下卑た欲求に気付いていた。
そして、私の中の理性が、それが唯を傷付けることになるということも理解していた。

だけど、その逡巡は、唯にはお見通しだった。

「ねえ、澪ちゃん。
 私の事好き? 嫌い?
 好きなら、めちゃくちゃにしてくれていいよ
 嫌いなら、傷つけてくれてもいい

 ……私はね、

 


 澪ちゃんのしてくれることなら、何でも嬉しいんだ」



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:01:10.63 ID:BuO1CMUb0

そう言った唯は私の知らない唯で
とても優しくて
慈愛に満ちていて
そして―――女で

その顔に浮かべた笑顔の意味が分からなくて



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:02:19.99 ID:BuO1CMUb0




ひどく、気味が悪い――――――――。




26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:04:52.10 ID:BuO1CMUb0

――――――――――――――――――――――――――
私は後悔していた。
唯を抱いてしまったことを。

唯を抱くのは、きっと私の自己満足。
私にされることは何でも嬉しいと、そう言ってくれた。

だけど

私のしたことは、唯を傷つけるほうではなかったのだろうか。

唯はそれを知っているのだろうか。

私には分からなかった。
それでも弱い私は、唯に依存する以外の生き方が解らなくなってしまっていた。



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:06:05.53 ID:BuO1CMUb0

時間と、そして唯が、私を立ち直らせた。
今なら、律の言いたかったことが分かる。
私はただ、今の現状を壊したくなかっただけ。

好き、ではなく。
ただの、停滞。

律が私のもとを離れるのが怖かった。
それが嫌で、駄々をこねていた。

そう、ただそれだけ。

私はもう、律と以前のように接することができる。
今も変わらず、親友でい続けられる。


私はそれで満足だったのだ。



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:08:39.90 ID:BuO1CMUb0

だけど―――――――

逆に、分からなくなってしまった……いや。

今もなお、分からなくなっていくものがある。

「澪ちゃん……抱いて?」

私は未だ唯の家に『帰り』続けていた。
そして、この関係もまだ続いていた。

一度、私は聞いてしまったことがある。

私は唯を傷つけてるだけじゃないか?と。

唯は、あの笑顔で答えた。

「私に悪いと思ってる?
 私は嬉しいんだけどな」

と。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:10:14.10 ID:BuO1CMUb0

私の心は、容易に汲み取られてしまう。
なのに、私には唯の気持ちがわからない。

それでも

「ねぇ」

背筋がゾクリとする。
まるで、誰か知らない人のよう。
いつものふわふわした女の子でない、唯があらわれる。

「澪ちゃんのしたいことを、して。
 キスしたいなら、して。
 殴ってくれても、蹴ってくれてもいい。
 澪ちゃんにされることなら、なんでも幸せだから」

わからなくなる。

「だから、お願い。


 シテ」


弱い私はまた唯と体を重ねる。


重ねるほどに、解らなくなっていく。



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:11:17.85 ID:BuO1CMUb0

律と、笑って話せる。
少し前までは当たり前だったこと。
でも、今、またこうしていることが幸せだった。

全て唯のおかげ。

ありがとう。

でも

「ごめん、私帰るね」

どうして?

なんでそんなことを言うの?
どうして走って逃げるの?

追いかけようと足が動く。でも、すぐに立ち止まってしまう。

追いかけて、何をすればいい?
追いついて、何を言えばいいの?



ねぇ唯



私、唯のことが全然わかんないよ……



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:16:34.19 ID:BuO1CMUb0

【唯’s side】

ダメだった。
解っていたのに。
堪えられると思っていたのに。



携帯を握りしめる。
着信が着てほしくないのに。

泣いちゃダメなのに。
いつも通りでいないとそばにいれないのに。
与える側じゃないといけないのに。

涙が止まらない。
震えが止まらない。
求めて、止まらない。


助けてよ
澪ちゃん――――――――――



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:17:17.45 ID:BuO1CMUb0

唯――――――

家へ帰ると、唯はいた。

「ねぇ」

まただ。
また、あの感覚。
私の背筋を舐めるような、あの声、あの匂い。

そして、あの眼。

「シテ」

どくんと、鼓動がなる。
でも、それは高ぶりではない。

気づいてしまった。

そう、それはきっと―――罪悪感。



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:18:10.04 ID:BuO1CMUb0

唯の体に付けた無数のキスマーク。
無数の傷後。
全てが過ちのような気がしてきた。

唯が望んでいると、そう自分に言い聞かせてきた。
そうやって自分を騙してきた。

でも

もしかして、唯はずっとこんなに壊れそうな眼をしていたのか?



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:19:44.62 ID:BuO1CMUb0

「そっか」

唯は一人頷いた。
解らない。
なにが『そっか』なんだ?
なんで一人だけ解ったような事を言うんだ?
なぁ、唯は何を考えてるんだ?

「出てって」

なっ――――――
どうしてなんだよ!
傷つけたなら謝るから。
だからそんなこと言うなよ!

「いいじゃんか。
 もうりっちゃんの事吹っ切れたんでしょ?
 また戻ってきたんでしょ?
 つらいときも、楽しいときも、ずっとそばにいてくれるよ。
 だからもう」







「出てって」



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:20:37.37 ID:BuO1CMUb0

解らなかった。
唯がなんであんな事を言ったのか。
唯が何を望んでいるのか。
どうして苦しんでいるのか。
どうすればまた笑ってくれるのか。



なぁ、唯。
お前は、一体どんな気持ちであんなこと言ったんだ?



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:22:11.35 ID:BuO1CMUb0

―――――パシン

ひりひりと、私の頬が痛む。
久しぶりの、痛み。
私を心配してくれる、痛み。

それがひどく嬉しい。

「お前の一番の間違いは、私のとこに相談しに来たことだ」

そう律は言った。

分かってる。
分かってるさ。そんなこと。
だけど、なんて言えばいいかわからない。
何を望んでいるのかわからない。
私には、唯がわからないんだ。



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:22:54.54 ID:BuO1CMUb0

「そして、唯のこと解らないなんて言って考えるのをやめたことだ」

言われて、気づく。
私は、ちゃんと唯のことを考えていたか?
唯のためにと、そう自分に言い聞かせて結局唯の言うとおりにしてきただけ。
きっと唯が望むものは、あんなことじゃなかったはずだ。

私が考えるのをやめてしまったせいだ。

だから、私は唯を傷つけ続けた。



唯は私のためにしてくれたのに。
私は唯のために何かをしたことなんて一度たりともなかったんだ。



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:23:40.61 ID:BuO1CMUb0

「そして何よりも私が怒っているのは、
 そうやって逃げて自分だけ傷つかないようにしてることろだ」

「悪いって思うんならなんで逃げんだよ。
 傷つけたって思うならなんで私のところに来るんだよ。
 どうして唯が泣いてるってわかってんのにお前はここに居るんだよ!」

そういうと律は溜息をついた。

「ほんとはだいたい気づいてんだろ?
 だけど傷付くのが怖いからそうやって向き合おうとしないんだ。
 わかるわかんないじゃなくて少しは行動しろよ」



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:24:35.00 ID:BuO1CMUb0

「もう帰ってくんなよ」

律はそういって私を追い出した。
律はやっぱり優しい。
私を怒るふりをしてちゃんと答えを導いてくれる。
今だってそう。
私を追い出すことで『行動せざるをえない』状況を作ってくれた。


ありがとう、律。
やっぱりお前は最高の親友だよ。


そして、唯。
ごめんな。
今度こそ、ちゃんと向き合うから。



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:25:34.65 ID:BuO1CMUb0

【唯’s side】

一人ぼっちの部屋。
広くて、冷たい。
あはは、と渇いた笑いがこぼれる。
私に相応しいじゃないか。
望みすぎて、結局我慢できずにこの有様だ。

もっとうまく演技出来ると思っていた。
嘘なら、つきとおせると思っていた。

近くにいられるだけで良かった、なんて嘘。
一番になろうとして、一番になれなくて、癇癪を起こした結果がこれ。
馬鹿らしくて滑稽だ。

本当に馬鹿だ。

馬鹿らしくて、馬鹿らしくて






涙が、止まらない



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:26:23.31 ID:BuO1CMUb0

「みお、ちゃん」

私が出て行ったときのまま、唯はいた。

「え? うそ!? どうして」

唯の言葉を無視して私は唯に近づいていく。

「止めて!
お願い! 来ないで!!」

唯は叫ぶ。
だけど耳を貸さない。
唯の手首を掴む。

「嫌! 離して」

離さない。
唯が私の手から逃れようと暴れる。
だけど、絶対に離さない。

唯の手はひどく冷たかった。
こんなになるまでにしたのは、私のせい。
だから、もう離さない。



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:27:29.84 ID:BuO1CMUb0

唯が私の手を振りほどこうと暴れる。
ごめんな、ちょっと痛いかもしれない。
でも、もう逃がさない。逃げないから。
私は強く唯の手をつかんだ。

「なんで? もういいじゃん!
りっちゃんは帰ってきた!
だったら澪ちゃんももう帰りなよ!」

嫌だ。

はっきりそう告げる。
唯が何かを叫ぶが、もう無視する。

唯を無理矢理押し倒す。
その目は、赤く、充血していた。



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:28:22.76 ID:BuO1CMUb0

ごめん、唯。私のせいだよな。

「違う、これは私の罰だよ」

違わない。

「違うよ、澪ちゃんは何も悪くないよ」

なあ唯、今だけは自惚れさせてくれ。
唯を泣かせたのは私だって。
全部私が悪いんだって。

「違う!違っん――――」




唯の唇を塞ぐ。

ごめんな、唯。
私が馬鹿なせいでずっと傷つけて。
我慢させて。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:29:20.26 ID:BuO1CMUb0

「……だめだよ、澪ちゃん。
キスは、好きな人じゃなくちゃしちゃいけないんだよ」

今更なにを――――――――――――――





マテ




なにか、大事なものを見落としている、そんな直感。

キスは、好きなひととだけ。

なら、なんで

考えろ、
考えろ。

なぜ今それを言うのか。
ならなんで唯は―――――――――



53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:30:14.35 ID:BuO1CMUb0

解った。
まるでパズルのように、ピースがはまっていく。
次々と、全ての事がはまっていく。

そして、それが意味すること。
確信に変わる。

だから、私はいう。


ねぇ、唯。
キスをしよう。



54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:30:56.70 ID:BuO1CMUb0

「だから、キスは好きな人にじゃないとしちゃダメなんだってば」

うん、だから、しよう。
いや、これではダメなんだ。

私が、私の意思で、唯にキスを、する。



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:31:53.66 ID:BuO1CMUb0

「――――――――――
 ……ねぇ、なんでこんなことするの?」

唯。
好きだよ。

「うそ」

嘘じゃない。

私は唯と、キスをする。
唯にだけ、する。

だって、好きな人だから。
ううん、これじゃダメなんだよね。
唯が、世界で誰よりも好き。
だから、私がキスをするのは唯だけ。

「うそ」

嘘じゃない

「うそ」

嘘じゃない

「……嘘だよ」



56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:32:41.42 ID:BuO1CMUb0

「嘘だよ。
 だって。どんなときでも澪ちゃんの中にはりっちゃんがいたもん。
 最初から一番はりっちゃんだったんだもん。

 解ってたよ、最初から一番になんてなれないって。
 だから、一瞬だけでよかった。
 澪ちゃんが求めてくれるなら、一瞬でも私で独占できるならいいと思ってた。


 でも、だめだった。
 りっちゃんと笑ってるのを見るだけで我慢できなかった!
 結局たった少しの間でも!私が独占出来たことなんてなかった!
 ずっと!ずっとずっとずっと!
 りっちゃん! りっちゃん!! りっちゃん!!!
 私を見てくれた事なんて一度だって……」



57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:33:30.76 ID:BuO1CMUb0

今になって、全てを知って。
私は、唯の傷の深さを知った。

ずっと唯はこんな気持ちだったのか。
私が自分勝手に体を重ねたときも、自分勝手に泣いてすがったときも。
ずっと都合のいい唯でいなくてはと。
自分の気持ちを押し殺して、私にとって都合のいい唯でありつづけるようにと。

私が唯に感じていた、違和感。
その正体。
ずっと壊れそうな感情を押し殺して演じつづけた、私にとって都合のいい唯。

望んだのは、唯。
甘えたのは、私。
続けさせたのも、私。
そして、唯に今も尚続けさせようとしているのも、私。

望んだのが唯だとしても、結果傷つけたのは私だ。

だからもう終わりしによう。

これ以上、唯が傷付くのなんて我慢できない。



だから、キスをする。
私の気持ちが届くように。
唯が、私の好きを受け入れてくれるまで。



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:34:20.05 ID:BuO1CMUb0

ごめん、唯。
これからは、ずっと唯を見ているから。
だから、もう我慢しないで。
泣きたいときは泣いてくれ。

ずっと、離さないから。
ずっとずっと、一番そばにいるから。



そうして、『やっと』唯は泣き出した。



ずっと、我慢させていたんだろう。
全部吐き出してくれ。
今までの分を全部。

そうしたら、今度は謝らせてくれ。
今までの分全部。

そうしたら、ここから始めよう。

これからの私たちの関係を。



59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:35:14.24 ID:BuO1CMUb0

「ねえ、澪ちゃん。
 もう一回、好きだって言って。
 好きって言って、キスして欲しい」

一度なんて言わせたくない。
何度だってしてやる。
私はキスをする。
私の好きな人に。
私の好きが伝わるように。

唯が笑う。
それが酷く久しぶりな気がする。
これからは、私がこの笑顔を作ってやる。
そう決めた。

だから、唯。
私と付き合ってください。



60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:35:54.61 ID:BuO1CMUb0

そういうと唯はまた泣き出してしまった。
ごめんな、唯。





「ごめんね、これは違うの」



62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:36:50.26 ID:BuO1CMUb0







「嬉しすぎて、わけわかんないの」






63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:37:32.31 ID:BuO1CMUb0

これからはずっと唯の近くにいよう。
唯が唯でいられるように。
私の好きを伝えていこう。
もう不安になんてさせないように。


今、ここから始めよう。
私たちの新しい関係を。
恋人としての、私たちを。



65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:38:19.03 ID:BuO1CMUb0

―――――――――――――――

はぁ……
偉そうなこと言って、何様のつもりだろう。

澪が、告白してくれて。
私は嬉しかったんだ。

だけど、分かっていた。
ちょっとだけ、私のほうが気付くのが早かっただけ。

同じだから。
澪の感情は恋じゃないって。

私たちは互いに近すぎて。
それで、きっと片方が欠けてしまうなんてありえない。
だから錯覚してしまうんだ。

でもそれは好意じゃなく、恐怖でしかない。



66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:39:23.52 ID:BuO1CMUb0

だけど。

それももう過去の話だ。

私には澪が必要で、澪には私が必要だった。

だけどもう、澪には唯がいる。

私には……いったい何が残る?



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:40:07.99 ID:BuO1CMUb0

怖い。
たまらなく怖い。

澪に頼られなくなるのが怖い。
一人でいることが怖い。


そして、こんな私を見られて

皆が私を必要としなくなることが怖い



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:41:13.84 ID:BuO1CMUb0

私は、強い人間なんかじゃない。

澪がいなくなっただけでこれだ。

手が震えて、足に力が入らなくて。

なぜか涙がこぼれてしまう。



いつかは、こうなると覚悟していたのに。

なのに。








「律先輩――――――?」



69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:42:24.12 ID:BuO1CMUb0

あ、ずさ―――?

どうして、なんで、こんなときに?!

私は涙をぬぐい、足を無理矢理立たせて玄関に向かう。

そこには間違いなく、梓がいた。

「唯先輩が澪先輩と付き合うことになったらしいですね」

淡々と、梓は言った。

ああそうだな――――。

その一言が、たった一言が私の胸に突き刺さり出て行こうとしない。

梓は唯をとられちゃって残念だったな、なんて軽口を叩いてみる。

だけど



「……逆でしょ? ね? 律先輩」




言葉のナイフで私を貫いた。



70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:43:28.05 ID:BuO1CMUb0

「―――――――無様ですね。


 自分では澪先輩を振っておいて。訳も話さないで。
 それで澪先輩がどれだけ落ち込んでたかわかってるんですか?

 それなのに澪先輩が自分から離れていくとなったら今度は自分が落ち込んで。
 滑稽ですね。

 いった――――――――ぐっ」



72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:44:52.86 ID:BuO1CMUb0

「―――――――せんぱ―――」


激昂した私は


気がつくと、





梓の首を締めあげていた。



73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:45:38.29 ID:BuO1CMUb0

「――――はぁ、はっ、はぁ」


一体私は何をしようとした?




梓を[]そうと?





そんな―――――――――



74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:47:09.31 ID:BuO1CMUb0

全て、手遅れ

全て、終わった

その実感が、私の手に残る。

もう、立っていられない。

立つことも、できない



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:47:43.36 ID:BuO1CMUb0

「ねぇ、律先輩」

梓は私の正面に来ると、やさしく声をかけた。
やめてくれ――――――私に――――――――優しくしないでくれ。

「苦しいですか? 悲しいですか?
泣きたいですか? それとも誰かにあたりたいですか?」

やめてくれ――――――お願いだから――――――やめて――――――!!!


だけど、

「いいですよ」

梓は私にそう言った。



77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:48:33.53 ID:BuO1CMUb0

「どんな律先輩でも、受け入れます。
 愛します」

それは、私の一番求めていたことで。
だから私は――――――――


「泣きたければ、私のもとで泣いてください。
 人恋しければ、私を抱いてください。
 なんなら、殴ってくれても、傷つけてくれてもかまいません」

あ、ずさ――――?

「私は、律先輩がしてくれることなら、なんだって嬉しいですから」


そう言った梓は私の知らない梓で
とても優しくて
慈愛に満ちていて
そして―――女で

その顔に浮かべた笑顔の意味が分からなくて



78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:49:16.17 ID:BuO1CMUb0






ひどく、気味が悪い――――――――。






79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/03/02(水) 21:50:01.63 ID:BuO1CMUb0

お    わ    り



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澪「……好きだ」
[ 2011/03/02 23:27 ] 非日常系 | | CM(4)

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タイトル:
NO:1202 [ 2011/03/03 03:52 ] [ 編集 ]

わー!オチ!

タイトル:
NO:1250 [ 2011/03/05 20:07 ] [ 編集 ]

色々あったけど唯と澪が解り合えてきれいに治まったけれど、
りっちゃん切ないのう…と思わせておいてこのオチですか。
しかもこの律と梓は諌める者が居ない為にとめど無く堕ちてしまいそうで怖い。

タイトル:
NO:2004 [ 2011/05/16 13:29 ] [ 編集 ]

世にも奇妙を見た感じだな、しかし唯澪はどんな展開関係でも美味しいから勝ち組だろう。
あとは律梓で続いて欲しいぜ、そして紬が戒めて紬さわor紬和になるのだろう。

タイトル:
NO:3312 [ 2011/07/07 20:30 ] [ 編集 ]

普通にコメントさせてもらうと文才がすごいwwwちょっとダークな感じのssなのに脳内再生が余裕でした。また書いてください

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