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梓「Have A Good Die」#第1話 【シリアス】


SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)@VIPServiseより


http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1302437096/



1 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:04:56.64 ID:ylk7FBUWo

昔やってた某ドラマが元ネタでそれに沿って進む部分多め
一部キャラ周りの設定変えてあります
重い話でタイトル通りの展開です
百合要素あり
原作けいおんの大学編&在校生編設定は無視してます



2 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:05:32.27 ID:ylk7FBUWo

―― 2010年12月 放課後・職員室前


梓「失礼しました」ガラガラガラ

梓「はぁ……職員室に呼び出されたと思ったら
  明日健康診断の再検査に行けって、面倒くさいなぁ……」

梓「先輩方待たせちゃってるし早く部室行かなきゃ」





3 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:06:25.03 ID:ylk7FBUWo

―― 部室

 去年の学園祭を最後に部活動を実質引退した先輩達だけど、
 今も受験勉強をするために部室に来ている。

梓「こんにちは、お待たせしました!」

律「おー、今日随分と遅かったな梓。」

澪「何かあったのか?」

梓「すいません、ちょっと職員室に呼び出されてたもので」

唯「わーい、ちょっと遅くなったけど今日のあずにゃん分補給~」ぎゅー

梓「ちょっ!いきなり何ですか!やめてくださいよ」

紬「まあまあ、とりあえずお茶にしましょ」

梓「それが、急に健康診断の予定が入って
  胃カメラ飲まないといけなくなったので今日は何も食べれないんですよ」

澪「健康診断?先月やったんじゃなかったのか?」

梓「それが、先月の検査で何か引っかかったそうで
  病院で再検査する事になったんです」

唯「あずにゃんお菓子食べすぎだからだよ」

梓「唯先輩に言われたくないです」

唯「ぶー、あずにゃんシドイ」

 はぁ、それにしても健康診断だなんて、
 何もないの分かってるけどそれでもいい気がしないよ。



4 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:10:07.02 ID:ylk7FBUWo

―― 翌日

 この日は朝から病院にすし詰め、
 血を抜かれたりX線浴びせられたり 大きな機械の中に寝たまま入れられたり
 バリウム飲まされてカメラ突っ込まれたり……
 
 噂には聞いてたけどバリウムって本当吐きそうになる位気持ち悪い。
 
 午後からは学校に戻って授業、放課後の部活は今日は休みと言われたので
 すぐ帰ろうと下駄箱で靴を履き替えて外に出ると……



5 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:12:15.28 ID:ylk7FBUWo

梓「あ、雨だ……どうしよう、天気予報見てこなかったから傘持ってないよ」

唯「お、あずにゃん発見!」ぎゅー

梓「にゃっ!?ゆ、唯先輩いきなり後ろから不意打ちしないでください!
  それに他の人達が見てるでしょう」

唯「よいではないかよいではないか」

梓「はーなーれーてーくーだーさーい」

唯「えへへー、って、あれ?
  それにしてもあずにゃんこんなとこで一体どったの?」

梓「今更ですか……傘持ってくるの忘れちゃったから困ってるんです」

唯「ふふふ、実はですね、こんな事もあろうかと、傘を用意してきました!」

唯「一緒に帰ろ、ね?」

梓「すいません、それじゃお言葉に甘えて」

唯「あずにゃんと相合傘だよー。雨の日も捨てたモンじゃないですなー」

梓「よくそんな言葉が恥じらいもなく出ますね」



6 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:18:23.09 ID:ylk7FBUWo

 しばらく歩いた頃、私はある事に気が付いた。
 今親は仕事で全国ツアーの最中で家にはいない。
 
 当然家事全て自分でやる必要があるし、
 夕食の買出しもしなきゃいけないのに今日1日忙しすぎてうっかり忘れてた。
 
 今日は疲れてたから外食にしようかな……
 でも何か1人でお店に入るのって緊張するし思い切って唯先輩を誘ってみよう。
 二つ返事でOKしてくれた。何でも憂がお泊りで今日は家に誰もいないそうな。



7 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:21:10.07 ID:ylk7FBUWo

―― 近所の焼鳥屋


唯「それにしても、あずにゃんがこんなお店知ってるなんて意外だったよ」

梓「そうですか?私の家族、家を留守にしている事が多いから
  こうやって1人で外食する事がよくあるんですよ。
  でもこのお店、前にも一度先輩と来た事があったんですよ?」

唯「うーん、そんな事あったかなぁ。思い出せない……」

梓「覚えてませんか?
  私が1年の時の学祭の後、今日と同じように2人で来たじゃないですか」

唯「そういえばそんな事があったよーな無かったよーな」

唯「あ、思い出した!
  そうだよ、前にも来た事あったよ。確かあの時は私から誘ったんだよね」

梓「ええ」

唯「あれからだよね。よく帰りに2人で寄り道するようになったのは」

梓「そうですね、なんか随分昔のように思えますよ。
  まだ1年ちょっと前の出来事なのに」

梓「そうだ、唯先輩、私ここの他にも色々おいしいお店知ってるんですよ。
  よかったら今度時間空いてる時に行きませんか?」

唯「いいねー、行こうよ行こうよ。
  あずにゃんの知っているお店ならきっとおいしい筈だもんね」

梓「ふふっ、何ですかそれ」

唯「それはそうと……
  あずにゃん前来た時も確かそれ食べてたよね、なんだか美味しそう……」じゅる

梓「鶏皮ですよ。 私ここに来たら必ずこれ注文するんです」

唯「よし、じゃあ私もそれにしよっ! すいませーん」

梓「まだ食べるんですか?もう結構頼んでますよ」

唯「平気平気。だってあずにゃんと一緒なんだもん!もっと楽しまなきゃ」

梓(やっぱり唯先輩といると楽しいし落ち着くな……誘ってみてよかった)



8 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:23:45.95 ID:ylk7FBUWo

―― それからしばらく経ち、翌年1月のある日・琴吹総合病院

 あの検査の日からしばらくの間、
 私は何度も病院で検査をさせられ検査入院までする事になった。

 でも病気で入院したわけでもないのですぐに退院でき、
 今日は診断結果を聞きに来ている。

梓「こんにちは」

金田「こんにちは」

 この人はこの病院の外科医で私の主治医でもある金田先生。

金田「今日は先日の検査の結果を聞きに来たんだよね」

梓「はい」

金田「中野さん、ご家族の方は今どちらに」

梓「あの……学校戻らないといけないのでなるべく早くしてもらえませんか」

金田「できれば、検査結果はご家族の方と一緒に聞いてもらいたいんだけどね」

梓「ですから、私は今急いで……」ハッ

梓(ちょっと待って!何で結果を聞くだけなのに
  家族も一緒に居て欲しいなんて言うのかな…普通言わないよねそんな事)

梓(先生とても険しい顔をしてる。なんか嫌な予感がする)

梓「親は仕事で出張していてしばらく帰ってこれそうにないです」

金田「そう」

梓「それで、私は何の病気なんですか?」

金田「肝臓に腫瘍が見つかった。
   胃から転移した物のようでとても悪性度が高いものです」

梓「え……」

金田「スキルス性の胃癌でね、
   既にかなり進行して手術で完全に除去するのは不可能な状態です」

梓「そんな……治す方法は無いんですか?」

金田「残念ながら、現在の医学では完全な治療法は確立されていません。
   出来る事は抗癌剤で進行速度を抑える位です」

梓「それで、私はあとどれだけ生きられるんですか」

金田「放置していたら半年、薬で進行を抑えた場合もってあと1年」

梓「1年って……」



9 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:28:58.41 ID:ylk7FBUWo

 私は頭の思考回路が完全に停止した。
 気が付いたら自分の部屋にいた。
 ここまでどうやって戻ってきたのかすら記憶にない。
 
 ベッドに飛び乗り横になる。
 今はもう何も手に付かずただ時間だけがすぎて行く。
 
 どれ位たっただろうか、玄関のチャイムを鳴らす音が聞こえたので
 私はしぶしぶドアを開けに行った。

新聞屋「ちわっす! 新聞屋です。
    実はお客様の新聞の定期購読の契約が来月までとなってまして、
    契約の更新に伺わせていただきました」

梓「はい」

新聞屋「どうでしょうか? 来月以降もまた続けてくれますでしょうか」

梓「はい」

新聞屋「ありがとうございます。
    それではこの書類のこことここにサインをして……ここに印鑑お願いします」

新聞屋「出来れば、長期でとって貰えれば嬉しいんですが2年契約というのは如何でしょう」

梓「はい」

新聞屋「いやー、ありがとうございます本当に。
    ではこれはつまらない物ですがお礼の品と、契約書の写しです。
    では失礼します!」ばたん

梓「……2年じゃ長すぎたかな」ぼそっ

 17年間生きてきた。明日という日が来るのは当たり前の事だと思ってた、
 
 そう……今までは。

 私は今日、余命1年と宣告された。



10 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:32:23.40 ID:ylk7FBUWo

―― 翌日・学校 2年1組

梓「……」ぼー

純「よっ、おはよ梓っ!」

梓「あ……純……おはよ」

純「どうしたのー?なんか浮かない顔してるけど」

梓「ううん、別に何もないよ」

純「何も無いような顔してないじゃん。
  これは……ははーん、さては恋の悩みですな」

梓「違うよ……だから何も無いって言ってるでしょ」

純「そ、そう(いつもみたいに突っかかってこない、これは変だ)」

憂「おはよう、純ちゃん、梓ちゃん」

純「おはよー憂」

梓「おはよ……」

憂「梓ちゃんどうしたの?て目に隈できてるよ!大丈夫?」

梓「平気だよ。昨日ちょっと夜中までTV見てて寝不足なだけだから」

梓(本当は一睡もしてないよ、寝れるわけないじゃん)

純「TV見てて寝不足だなんて、なんだかんだで抜けてるよね梓も。
  それで授業中寝てて指名でもされたらどうすんのー」

梓「……」

純(こりゃダメだ……)

憂(どうしたんだろ……なんかおかしいよ今日の梓ちゃん。
  絶対タダの寝不足じゃないよ。なにかあったのかな)

純「まっ、何かあったら相談してよね。困った時位友達を頼りなさい!」

憂「そうだよ、私達いつでも待ってるからね」

梓「ありがとう」

純「そうそう、まだまだ人生これからなんだからさ。もっと気楽にいこうよ!」

梓「これから……か」

憂「どうしたの?」

梓「あ、いや……何でもないよ。ただの1人言」

梓(ごめん……純……憂……
  でもこれは私自身の問題であって誰にも解決出来る事じゃないから)

 その日は部室には行かなかった。
 とてもじゃないけどそんな気分じゃないし先輩達に気を使わせたくなかったから。



11 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:35:59.78 ID:ylk7FBUWo

―― 翌日

梓「あ、もうこんな時間。学校行かなきゃ遅刻しちゃう」

梓「……」

梓「喉かわいちゃった。ちょっと何か飲んでから行こうかな」

梓「冷蔵庫空っぽだ……そっか、買い物行き忘れてたんだっけ」

梓「あ……これお母さんの缶ビール……」

梓「お酒はハタチになってから、か……よく考えたらハタチになれないじゃん私」

梓「飲んでもいいよね」ぷしゅっ

梓「うわっ、苦っ!」

梓「はぁ……でも飲んでると何か嫌な事忘れられそうな気がする」

梓「もう今日は休もうかな」

梓「……今更学校なんか行ってもしょうがないもんね」



12 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:40:16.54 ID:ylk7FBUWo

――  放課後・部室

澪「え?梓が無断欠席?」

唯「うん、さっき憂がそう言ってたんだよ」

律「あのマジメな梓がなぁ…無断欠席って…」

紬「そういえば昨日も来なかったね、何かあったのかしら」

唯「なんかね、昨日からあずにゃんの様子がおかしかったんだって」

唯「憂と純ちゃんが言うには
  今まで見た事ない位落ち込んでて思い詰めたような顔してたんだってさ」

律「あいつ、相談も何もしないで1人で悩み事かよ。
  私等じゃ頼りにならないってのかよ」   

唯「私、あとであずにゃんの家行ってみる。だって気になるもん」

紬「そうね、それなら私達も一緒に」

律「いや、ここは唯に任せよう。あんまり大勢で行くと逆効果だと思う」

澪「そうだな、唯、悪いけど頼めるか?」

唯「うん!まっかせなさいりっちゃん澪ちゃん!」



13 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:45:35.91 ID:ylk7FBUWo

―― 中野家

ぴんぽーん

梓「うるさいなぁ、誰なのもう」

ぴんぽーん

梓「さっさと帰ってよ、うるさい」

唯「あずにゃん出ないなぁ……留守なのかな」

ぴんぽーん

梓「ああもう!誰か知らないけど私に構わないでよっ!」

 この時の私はまさか唯先輩が
 わざわざ家まで来てくれているなんて事は知る由もなかった。
 でも会わなくて正解だったのかも、あの人見かけによらず勘がいいから。
 
 私は布団に潜り込んで呼び鈴の音を無視し続け
 やがてその音も聞こえなくなった。

 その後も私は学校を休み続けた。
 家に居てもやる事もないので外をぶらつく事にした。
 普段は学校にいるから平日の街は少し新鮮にうつった。
 
 どうせあと1年しか生きられないのだから
 今までやらなかった事をやってやろうと思った私は
 いつもなら絶対1人で行かないような場所に行った。
 
 ゲームセンター、パチンコ屋、1人カラオケ等等、
 学校にバレたら大事だろうけど今の私には全然気にならなかった。
 
 もしバレて謹慎や退学になっても
 来年卒業できるかどうかも分からない私にとっては関係のない話なのだから。
 
 こうしている間1人ぼっちだけどそれも気にならない、
 人付き合いがあまり得意でない私は高校に入るまで
 こうしている事がよくあったから
 むしろ先輩達や同級生の友達に囲まれてる今の方が珍しいんだ。



14 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:53:12.50 ID:ylk7FBUWo

 そんなある日の帰り道……

梓(あれ?家の前に誰かいる。誰なんだろこんな夜遅くに)

梓(え!?唯……先輩……!?)

唯「あずにゃん……」

梓「どうしたんですか唯先輩こんな夜遅くに家の前で」

唯「えっへへへ、あずにゃんに
  ここの所ずっと会えなかったからあずにゃん分が不足してましてなぁ」ぎゅー

梓「わっ!?ちょっ!いきなり抱きつかないでくださいよ」

唯「……どうして」

 抱きついた状態のまま唯先輩は私の耳元でそう呟いた。

梓「え??」

梓(唯先輩すごい寂しげな顔してる……そりゃそうだよね)

唯「どうして急に何も言わずに学校来なくなっちゃったの?
  メールしても返事してくれないし」

梓「それは……」

唯「みんな心配してるんだよ?」

梓「すいません、実はインフルエンザにかかってて連絡できる状態じゃなかったんです」

梓(我ながら苦し紛れな嘘だなぁ……)

唯「あずにゃん、嘘だよね?流石に苦しいよ?」

梓「……」

唯「本当のこと、話すつもりはない?」

梓「すいません……今はまだ」

唯「分かったよ……じゃあ今は無理に聞いたりとかはしないよ。でもね」

唯「あずにゃんの気分が落ち着いてからでいいからね、
  その時になったら私達に教えて欲しいな」

梓「はい……」

唯「あずにゃんには早く元気になって欲しいから。
  そんな顔似あわないし私も嫌だから」

梓(先輩……)

唯「来週の月曜、学校来れるかな?」

梓「はい、何とか行けると思います」



15 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:53:59.31 ID:ylk7FBUWo

唯「絶対だよ!絶対だからね!」

唯「じゃあ、はい!指きりしよっ」

梓「え?」

唯「指きりげんまん、嘘ついたら針千本のーますっ!と」

唯「約束だからね!絶対来てよね」

梓「大丈夫です」

唯「えへへ、じゃああずにゃん、また月曜ね!おやすみー」

梓「はい、また月曜に、おやすみなさい唯先輩」

梓(はあ……何やってんだろ私、とにかく家に戻ろう)

梓(TVでもつけよっか)

『続いてのニュースです。
 先日〇市で死者9人を出した通り魔事件で逮捕された〇容疑者ですが、
 警察の取調べで動機はタダの暇つぶしでやったと供述しており
 容疑を認めておりますが反省の言葉は一切口にしませんでした。
 この件についてry』

『次のニュースです。
 先日の不正献金問題で野党から辞任要求の上がっている〇大臣ですが
 今日の記者会見で改めて続投の意思を表示しました。
 既に証拠となる書類も検察庁に送られており
 起訴も時間の問題と言われてますがここにきての強気な発言に議会はry』

梓「何で私なんだろ……」

梓「何で私だけがこんな目にあわなきゃいけないのよ」

梓「なんで私なの!」

梓「どうして、どうしてなのよ!」



16 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:55:51.12 ID:ylk7FBUWo

―― 翌日・病院

梓「先生、ちょっといいですか?」

金田「中野さんどうしたの?今日は診察日じゃなかったよね。どこか痛むの?」

梓「間違いなんじゃないんですか?
  私の検査の結果。本当は間違いなんじゃないんですか?」

金田「え」

梓「検査結果、誰かのと入れ替わったんじゃないんですか」

金田「それはないよ」

梓「でも、1%でも0.5%でも、間違いが起こる可能性はあるんですよね?」

金田「どうしてそう思うの」

梓「私は17年間地道に生きてきたんです。
  私は別に、大きな成功とかそういう事を望んでいたわけではありません」

梓「毎日平穏無事に暮らせればいいんです。
  そりゃあ小さい事は色々ありますよ。
  でも大きなトラブルは1度となく過ごしてきたんです」

梓「そんな私がこんな目にあう筈ないんですよ。
  おかしいと思いませんか、そんなの不公平ですよ!!
  これは絶対何かの間違いなんです。そうですよね先生!!」

金田「そうだね。君がそう思うなら間違いかもしれない」

梓「……」

金田「でも確かな事が1つある」

金田「それは今君が生きている事、生きているという事に間違いはない」

金田(告知は重すぎたかな、この子にとって)



17 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 21:58:09.26 ID:ylk7FBUWo

 この後後家に帰った私は
 ふと昔を思い返したくなってアルバムを漁っていた。
 
 見つかったのは小学校の卒業アルバム、
 そこには幼い頃の私の写真と将来の夢が書かれていた。

梓「なになに?将来の夢……プロのギタリストになって
  大勢の人達の前でライブ、かぁ。あの頃はそんな事も考えてたっけなあ」

梓「結局諦めたんだけどね。理想と現実って違いすぎるし」

梓「ん?他にも何か書いてある、何書いたんだろ私」

 『私は将来幸せな人間になりたいです。
  幸せな人間とは後悔のない人生を生きている人だと思います』

梓「ふふっ、私ったら随分生意気な事書いちゃって……ふふっ」

梓「今まで17年何事もなく無難に生きてきたんだから
  後悔する事なんて何もないもん、本当に生意気だよあの頃の私」

梓「本当に生意気……ぐすっ……あれ、何で涙が……どうしてよ」ぽろぽろ

梓「ひっく……うぅっ……ぐずっ……」

 実は私は後悔していた。
 本当にやりたい事もやらず、やろうとしなかった今までの日々を。



18 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 22:01:31.50 ID:ylk7FBUWo

―― 月曜

梓「ご心配をおかけしました」

律「おっ、体の方はもう大丈夫か?」

梓「え?」

澪「唯から聞いたぞ。インフルエンザで寝込んでたんだってな」

梓「あ、は、はい」(そっか……唯先輩わざわざ言わないでいてくれたんだ)

律「心配したぜ全く、いきなり何も言わないで学校来なくなるんだもんな」

梓「す、すいませんでした」

 その後先輩達が勉強している間、私は1人でギターを弾いていた。
 
梓「……うっ!」

 演奏中突然お腹に激痛が走りギターの音が止まる。
 
梓(な、なにこれ……これって病気が進行してるって事!?)

 痛みはすぐに治まった。だけど言いようのない不安が私の頭の中を錯綜する。

唯「あれ?どったのあずにゃん、急に演奏やめて」

梓「な、なんでもないです。
  それより先輩はちゃんと勉強に集中してください!ちゃんとやらないと落ちますよ」

唯「うっ!受験生にその言葉は禁句だよっ」がーん

梓(無理矢理だけどなんとかごまかせたかな……)

梓(先輩達は受験で大変な時期なんだから
  もうこれ以上気を使わせて迷惑かけたくはないもんね)



19 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 22:02:43.76 ID:ylk7FBUWo

 その夜、私は部屋でじっと携帯電話のモニターを見つめていた。
 モニターに映っているのは親の電話番号。
 
 病気の事を言わなきゃいけない…
 告知された日に本当は言うつもりだったけど
 言うのが怖くて言い出せなかった。
 
 今日こそ言わなきゃね、うん。

梓「もしもし、お母さん?あのね、私病気にかかっちゃったみたいなの」

梓「スキルス性の胃癌って知ってる?
  私それにかかってあと1年しか生きられないんだって」

 言ってみたけど実は発信ボタンは押していない、
 どう切り出すか考えて自分を落ち着かせるために練習で言ってみただけ。
 
 でもいざとなったら右手の親指をちょっと押し込むだけの簡単な動作が出来ない、
 出来ずにいる。
 
 告白してどう反応されるのかが怖くて言えない。

 私はそっと携帯を折りたたんで部屋の隅に置いた。



20 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 22:05:15.53 ID:ylk7FBUWo

梓(あれ…ここはどこ?)

梓(こんな場所しらないよ…何時の間にこんなとこに)

梓(あそこにいるのは先輩達だ…どうしたんだろあんなとこに集まって)

すたすた

梓(え!?先輩達どうしたんだろう、泣いてる?)

梓「せんぱーい!」

唯澪律紬「……」

梓(おかしいな、聞こえてないのかな私の声…あれ?何見てるんだろ…)

梓(木の箱?あの大きさ…中に何が入ってるのかな)

梓(え!?私だ!私が寝てる…これって私の……!?)

梓「そんな……いやあああああっ!!」

ガバッ!

梓「はぁっ…はぁっ…」

梓「ゆ、夢…!?」

梓「なんなのアレ、いくらなんでも縁起でもないよもう……」

梓「2時……か」

時計「ちっちっち」

梓「時計の音……気になるなぁ。TVでもつけよっと」

時計「ちっちっち」

梓「……っ!」

 時計の刻を刻む音が今の私にとっては黒板を爪で引っ掻く音より苦痛だ。
 これが1つ刻まれる度に死へと少しずつ近づいていると連想させられるから。
 
 時計の音が聞こえないようにTVの音量を上げ耳を塞ぎ
 一睡もせずにそのまま朝を迎えた。



21 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 22:07:48.36 ID:ylk7FBUWo

―― 病院

 この日私は診察日ではないけど病院にいた。
 こうしている間にも少しづつ「その時」が近づいている、
 
 それもあと1年もの間毎日怯えながら過ごすのが怖くて
 先生にある事をお願いするために来ていた。

梓「あと1年と思ってましたけど、考え直しました。1年て結構長いですよね」

金田「そうだね」

梓「楽にしてください」

金田「何言ってるの」

梓「死ぬ事考えたらすごく怖いんですよね」

梓「すごく痛いんだろうなとか苦しいんだろうな、とか。毎日毎日怖いんですよ」

金田「そう感じるのは当然だよ。でも、残りの人生それだけじゃない」

梓「何の痛みも感じないまま楽にしてください。そういう方法ちゃんとありますよね」

金田「落ち着くまでこのまま少し入院しましょうか」

梓「楽にしてくれるんですね」

金田「そんな事法が認めないよ。例え法が認めたとしても私が認めない」

金田「少し待っててくれる?空きベッドの確認をするから」

 これ以上お願いしても進展はない、
 それにこのまま病院で薬漬けにされるのも嫌なので私は何も言わず足早に診察室を出た。

 私はもう諦めている。
 私に残されたのはあと1年、それまでただ待つしか道はないのかな……



22 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 22:11:56.37 ID:ylk7FBUWo

―― その日の夜・病院の診察室

コンコン

金田「どうぞー」

紬「お邪魔します、
  お父様に頼まれていた今度の会議のレポートをお持ちしました」

金田「お嬢様自らわざわざ、ご足労かけます」

紬「いえ、たまたま私も暇でしたので……先生もこんな時間までお疲れ様です」

金田「いえいえ、丁度患者のカルテの整理をしてましたので」

紬「CTとMRIの画像ですか」

金田「ええ、最近私が担当する事になった患者のカルテなんですが……癌患者なんですよ」

紬「癌患者……先生のその表情を見る感じだともう手遅れなんですね?」

金田「ええ、まだ17歳の女子高生なのにですよ。
  本人も相当参ってるようで今日も相談に来たんです」

金田「誰か相談できる人がいれば心の支えになってくれるんですけどねぇ」

紬「そうですね……」

金田「おっといけない。これ以上はお嬢様といえど患者のプライバシーに関わる事なので」

紬「そうですよね、それでは私の用件も済みましたしそろそろお暇いたします」

金田「はい、お父様によろしく伝えておいてください……あっ!」ぱらっ

紬(先生が立ち上がった拍子に袖が机の上のカルテに当たって私の足元に……)

紬(患者の名前が書いてあるわ……え!?なんで、ウソでしょ!?)

金田「これは、失礼しました。ここは片付けておきますので」アセアセ

紬(ナカノアズサって……見間違いか同姓同名の他人よね?
  でも最近の梓ちゃんの行動を照らし合わせてみると辻褄が合う……)



23 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 22:14:37.85 ID:ylk7FBUWo

―― 数日後・某海岸

 私は海に来ていた、目の前には断崖絶壁の崖、
 
 その先は吸い込まれるような青い海が広がる。

 別に海水浴に来てるわけでも
 
 観光に来てるわけでも詩を書きに来ているわけでもない。

 楽にしてもらえないのなら自分自身で楽になろうと、
 
 そう思いわざわざここまで足を運んだんだ。

 崖ギリギリまで行き下を見下ろす、あまりの高さに足がすくんだ。

 変だよね、飛び込むつもりで来たのに足がすくむなんて……

 黙ってこんなとこ来ちゃって先輩達怒るだろうなきっと……
 
 なんだかんだでやっぱり気になってるんだ私。

 一呼吸置いた後私は下を見ずに視線を正面に向けた。
 
 そこには視界いっぱいの水平線と私の心情とは裏腹の青空が広がっている。

 憂、純……勝手にいなくなってごめん……

 唯先輩、律先輩、澪先輩、ムギ先輩、こんなダメな後輩ですいませんでした。

 お母さん、こんな親不孝な娘でごめんなさい……

 一通り謝罪の言葉を頭の中でした私はその後、両足を一歩ずつ踏み出した

 その直後全ての意識が途絶えた。

 これで全てが終わった……終わったんだ……



24 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 22:15:34.06 ID:ylk7FBUWo

梓(ん、ここは?もしかして私、生きてるのかな)

 意識を取り戻した私の視線に最初に入ったのは
 
 見慣れない天井、見慣れない部屋だった。

梓(というか何で私生きてるの!?)

金田「気が付いたようだね」

梓「先生!?という事はここは病院なんですね。私何で生きてるんですか」

金田「やっぱり死のうとしてたんだ」

梓「どうして私ここにいるんですか」

金田「この人が浜で君を見つけて運んでくれたんだ」

紬「……」

梓「え……ムギ先輩……どうしてここに、そうだ、ここ琴吹病院だから」

紬「ええ、ここは私のグループの病院よ」

金田「まさか君がお嬢様の後輩だったなんてね、驚きだよ」

梓「ムギ先輩がここにいるって事は……私の病気全部知ってるんですよね」

紬「ええ、この前カルテを見てしまってまさかとは思ったけど
  最近梓ちゃん様子おかしかったでしょ?
  もしやと思って万が一を考えて身辺探らせてたの」



25 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 22:18:06.85 ID:ylk7FBUWo

梓「私は自分で死ぬ事もできないんですか?」

金田「そうだよ」

梓「余計な事しないでください」

金田「余計な事はしていないよ」

梓「私の命ですよ。どうしようと勝手じゃないですか」

紬「いい加減にしなさい!」

梓「……っ!」

紬「あなたに自分で死ぬ権利なんかどこにもないわよ!」

梓「先輩や先生に何が分かるんですか、他人のくせに!」

紬「他人だから何だって言うのよ!」

紬「梓ちゃん、あなたまだ生きてるでしょう?
  まだ生きているのなら精一杯生きて、それから死になさい!」

梓「……」

金田「中野さん」

金田「ついさっきね、僕の患者さんが死んだ。
   1ヵ月後に娘さんの結婚式があってね。
   何とか1ヶ月、1ヶ月でいいから生きたいって最後まで言ってた」

金田「僕はそういう人を何人も見てきたんだ。
   気持ちが安定するまで入院してもらうよ。お嬢様もそれで構いませんよね?」

紬「はい、お願いします」

金田「僕には君の残りの人生を支える義務があるから」

金田「それでは僕は診察があるのでこの辺で、
   お嬢様、あとお任せしますがよろしいですか?」

紬「ええ、後はお任せください」

ガチャリ

梓「ムギ先輩……私……」

紬「とにかく今夜1日冷静になってよく考えてみて。
  学校とりっちゃん達には今回の事は秘密にした上で
  しばらく休むって連絡しておくから」

梓「はい……」

紬「大丈夫よ、病気の事も黙っておいてあげる。
  病気の話は梓ちゃんの気持ちの整理がついたら
  自分の口で言ってあげて。その方がいいと思うから」

梓「わかりました」

紬「落ち着いたらみんなを連れてお見舞いに行くからね。
  その時はケーキも持って行くからみんなでお茶しましょうね?」

梓「はい……」



30 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 22:49:56.08 ID:ylk7FBUWo

 翌日、軽音部の先輩達、憂、純が放課後の学校帰りにお見舞いに来てくれた。

唯「あずにゃんおいーっす!」

澪「こら唯、病院なんだから静かにしろ」

唯「えへへー、あずにゃんの顔見たらなんか安心しちゃったんだー」

澪「梓は絶対安静の身なんだからな、抱きついたりするなよ」

唯「ちぇー」

律「てかびっくりしたぞ、梓が入院したってムギが言い出したからさ」

憂「そうだよ、しかも自殺しようとした友達を止めようとして
  巻き込まれたって聞いたからホントに焦ったんだから」

梓(え?ムギ先輩本当に秘密にしてくれたんだ)

純「でも梓は悪運強過ぎだね、あんな高さから落ちて打撲で済んでるんだから。
  ま、私がお見舞いに来てやったんだから安心しなさい!」

梓「別に純が来たって安心するような要素ないでしょ」

純「ぶーっ!ひどいぞーそんな事いうなんてー」

律「まー見た感じ元気そうで何よりってとこだな」

唯「それはそうと、落ちる時『私死ぬのかなー?』とか思ったりしたの?」

梓「死ぬつもりでしたよ」

梓(そのまんまの意味だけどね)



31 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 22:51:08.01 ID:ylk7FBUWo

澪「でもなかなか出来る事じゃないよな。
  自殺しようとしてる相手を体張って助けるなんてさ」

憂「それでそのお友達はどうなったの?」

梓「え、ああ、ちゃんと無事だよ。別の病院に運ばれただけでピンピンしてるよ」

純「ああそうだ、何かヒマ潰しになるかと思って
  梓の机の中の使えそうな物持ってきたよ」

梓「え?ありがと純。
  あれ、この本、昔買って読まずにしまっておいた本だ。こんなとこにあったんだ」

純「感謝しなさいよー?わざわざ持ってきてあげたんだからさ」

梓「そういう事にしといてあげる」

純「はいはい、あいかわらず素直じゃないんだから」

律「さて、そろそろ面会時間も終わりそうだし私らそろそろ帰るなー」

梓「はーい、今日はわざわざありがとうございました」

紬「お大事にね」

唯「……」

唯(死ぬつもりだった……って言ってたよね。私の考えすぎかな。でももしかしたら)



32 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 22:55:17.00 ID:ylk7FBUWo

―― 診察室

コンコン

金田「どうぞ」

唯「失礼します」

金田「あなたは?中野さんのお友達ですか?」

唯「私、梓ちゃんと同じ軽音部に所属している平沢唯といいます」

金田「はじめまして、中野さんの主治医の金田です」

唯「実はちょっと先生に聞きたい事がありまして……」

金田「どんな?」

唯「梓ちゃんの今回の入院の件なんですけども、もしかして……」

金田「中野さんの件に関しては完全に事故です。
   自殺だと思われてるかもしれませんが決してそんな事はありません」

唯「事故の詳しい内容分かりますか?」

金田「申し訳ありませんが患者のプライバシーは秘密厳守となっておりますので」

唯「そうですか……なんかあの子、最近様子がおかしかったんです。
  だから今回の事件もなんか不自然に思ったんですけど
  先生がそう言うなら大丈夫なんですよね」

金田「ええ、あの子なら心配いりませんよ。
   これからもお見舞いに来てあげてください。
   それがあの子にとって一番の励みになりますので」

唯「はい、勿論です」

金田「それはそうと……平沢さんでしたっけ、あなたは中野さんにとっての特別な人?」

唯「え?」

金田「いや、いいんです。大した意味はありませんので」

唯「そうですか、それでは私はこの辺で」

金田「はい」

唯「失礼します」



35 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 23:03:08.66 ID:ylk7FBUWo

 その夜、私は暇を持て余していた。

梓(暇だなぁ……8時かー、まだ寝るには早いし病院てホントやる事ないなぁ)

梓(ちょっと病院の中散歩してみようかな)

梓(やっぱり真っ暗だな廊下……戻ろっかなやっぱ)

梓(あれ?あそこだけ明るい、なんだろう、行ってみよう)

梓(赤ちゃんがいっぱいいる……みんな産まれたばかりみたい。
  そっか、ここ新生児室か)

じー

梓(この子達にもこれから長い人生が待っているんだよね)

梓(そういえば私にもこんな時期があったんだよね……さすがに記憶はないけど)

梓(私は周りから何を期待されて、私自身は何をやりたくて生きてきたんだろ)

梓(そうだ、少し確かめたいこと思いついた)

 私は公衆電話の前にいた。
 病院では携帯電話が使えないので
 電話を使う時は必然的に公衆電話を使う事になる。
 おもむろにダイヤルしある人に電話をかける。



36 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 23:05:44.92 ID:ylk7FBUWo

『もしもし』

梓「あ、もしもしお母さん?私、梓だけど」

『あら梓、どうしたのこんな時間に』

梓「ううん、ちょっとお母さんの声が聞きたくて電話してみたんだ」

『そうなの、珍しいわね。留守の間何も無かった?』

梓「何もないよ、私なら平気。
  あとちょっとお母さんに聞きたい事があるからそのまま聞いてくれる?」

梓「あのねお母さん、私を産んでくれた時どう思った?」

梓「うん、ちょっと気になってね、聞いてみたくなったんだ」

『そうねぇ……やっと会えたねって』

『そして、この子の為なら自分の命を捨てられる、そう思ったかな』

梓「……!!」

『どうしたの?』

梓「なんでもない、私今友達待たせちゃってるからそろそろ切るね」

『あんまり友達待たせちゃダメよ。それと体には気をつけるのよ。
 来月には私達一度そっちに帰れそうだからそれまで我慢してね』

梓「うん、わかってるよ、ありがとうね」

梓「大丈夫、私しっかりやっていけてるから」

梓「じゃあ切るね、うん、またね」


 電話をきった私は誰もいない待合室に行きそこの椅子に腰をおろした。
 
梓(私のためなら命も捨てられる、か……)

梓(それなのに私、なにをやってたんだろ……)

梓(自分で死ぬ権利なんかない、か……)

 手元には忘れ去っていた手付かずの本がある。
 私は照明が落ちて薄暗い待合室の椅子に腰掛け
 本の表紙をじっと見つめながら物思いにふけっていた。

梓(私この本買ったけど読もうとしなかった……
  純が持ってきてくれなかったらずっと読まずに忘れてたままだったんだろうな)

梓(何もやらずにいたらいつまでたっても変わらないもんね……
  なら私はこれからの1年、やりたい事を全てやって悔いがないようにしなきゃ)

梓(私が長く生きられない分、他の人達には私の分まで長く生きていて欲しい……
  なら私はその人達の為にも生きなきゃいけない)

梓(1年しかないのなら残りの1年を17年よりも長いものにして、
  1日1日を大事にして生きていこう)



37 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 23:08:26.62 ID:ylk7FBUWo

―― 学校・部室

梓「こんにちは!お久しぶりです先輩方!」

唯「あずにゃーん、待ってたよぉー」ぎゅっ

梓「にゃっ!?もう、唯先輩ったら……」

唯「えへへーっ」すりすり

澪「梓、退院おめでとう、もう体の方は何ともないのか?」

梓「はいっ!おかげさまでこの通りです」

律「よかったよかった、
  来期の部長に何かあったら部の存続に関わるからなー」

紬「とりあえず一件落着ね?梓ちゃん」

梓「はいっ!私、精一杯がんばります」

紬(ふふっ、何か吹っ切れたようね梓ちゃん、これでいいのよね)

澪「よし、それじゃ梓も無事に復帰した事だし」

律「お茶だな」

澪「勉強だろっ!」ゴチン

唯「ええーっ、私まだあずにゃん分の補給が終わってないよぉー」

律「そうだそうだー!たまには気分転換でお茶だー」

澪「何言ってるんだ、もうすぐ受験なんだぞ、さ、戻った戻った」

唯律「ちぇー」

梓「それでは私はあっちでギターの練習してますね、
  ずっと演奏してないからなまっちゃってて」

 私はもう決めた、治らない病気ならせめて向き合って行こう。
 そう、私は生きる、人生最期の日まで
 
 第1話 終



38 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/10(日) 23:15:31.66 ID:ylk7FBUWo

引き続き2話いきます。
自分で書いててこんなの言うのも何だけど重すぎコレww
でも多分ここまでが作中一番重い部分だと思います



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[ 2011/04/21 11:10 ] シリアス | | CM(0)

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