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梓「Have A Good Die」#最終話 【シリアス】


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梓「Have A Good Die」#第1話
梓「Have A Good Die」#第2話
梓「Have A Good Die」#第3話
梓「Have A Good Die」#第4話
梓「Have A Good Die」#第5話




198 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 22:51:36.37 ID:+mvlBbuio

 最終話

―― 9月のある朝

唯梓「ごちそうさまでした」

唯「今日は私が片付け当番だったね」

梓「そうでしたね。それではよろしくお願いしますね」

唯「まっかせなさい!」

唯(あずにゃんのお皿、おかずもご飯も半分以上残ってる……
  もうあんまり食べられなくなってきてるんだ……)

唯(大丈夫だよね!今日はたまたま食欲がなかっただけだよね!うん)

梓「どうかしましたか?」

唯「え?な、何でもないよ。ちょっと考え事してただけだから」

梓「そうでしたか。
  そろそろ学校行く時間なので遅れないようにしてくださいね」

唯「うん、わかってるよー」





199 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 22:52:17.84 ID:+mvlBbuio

―― 午後 N大・部室 

唯「未来は誰にも撃ち落せなーーい♪」ジャジャーン

澪「今日はここまでにしようか」

紬「そうね。もう今日は40分やったものね」

律「つっかれたぁーっ!今日は随分多めにドラム叩いた気がするぜ」

唯「それはそうと、来週いよいよ予選だね」

紬「そうね、ここまで来たらもうやれるだけの事をやるだけよ」

梓「そうですね」

純「大丈夫かな……
  こんな大舞台経験するの初めてだしなんか緊張するよ……」

澪「なんか想像したら私まで緊張してきたじゃないかよ……
  失敗したらどうするんだよ……」gkbr

純「あ、す、すいません。つい」

梓「いいじゃないですか。結果はどうであれ、
  頑張ったって事実は絶対後に残る財産になるんですから」

律「そうだ!あと少しなんだからみんな気合いれていくぜー!」

HTT「おー!!」

唯「それじゃ帰ろっかー。
  今日は夕食の買い物しにスーパー寄ってかなきゃいけないからね」

梓「」ふらっ

律「梓、どうした?大丈夫か?」

梓「はい、何とか」

純「ねえ本当に大丈夫なの?ちょっと休んだ方がいいんじゃない?」

梓「平気平気!ちょっと練習しすぎただけだから。
  もう、純は心配性なんだから」

純「……」

唯「純ちゃん、この後時間空いてる?」

純「はい。特に用事はないですけど」

唯「だったらさ、
  悪いんだけどあずにゃんを家まで送ってあげてくれないかな?
  買い物なら私1人でもできるし」

純「はい、それぐらいなら」

梓「そんな……悪いですよ。唯先輩にお使い押し付けるなんて」

唯「いーのいーの、たまには先輩に甘えなさい!」

純「そうだよ梓、
  唯先輩がこう言ってくれてるんだし今日くらい休んだ方がいいって」

唯「じゃあそーゆー事だから後よろしくっ!」

澪「それじゃあ純、梓をよろしく頼むな」

純「はい」



200 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 22:55:18.69 ID:+mvlBbuio

―― 唯&梓の家

梓「ありがと純、あとはもう私だけで何とかなるからさ」

純「……分かった。あんまり唯先輩に迷惑かけちゃ駄目だよ」

梓「何いってんの。親みたいな説教しないでよ」

純「それじゃあ帰るよ。また明日ね梓」

梓「うん、また明日……うっ!」

純「どうしたの梓」

梓「げほっ!ごほっ!ごほっ!」

純「ちょっ!梓!どうしたのよっ!!」

梓「大丈夫……大丈夫だからあんまり大きな声ださないでよ」

純「馬鹿っ!大丈夫なわけないでしょうが!
  ……って、あんたその手血まみれじゃん……」

梓「ドジだな私も……
  純の目の前でこんな格好悪い姿見せるなんてさ……ふふっ」

純「梓、病院いこ?無理だよその体じゃ!」

梓「それだけは駄目だよ……
  病院行ったらコンクール出れなくなっちゃうもん、絶対にそれだけは駄目」

純「コンクールなんかより梓の命の方が心配だ!」

梓「ごめん純、私どうしてもステージに立って演奏したいの。
  私の最期の我侭…聞いてよ……お願い」

純「最期って……なに言ってんの梓」

梓「私ね……もうあんまり長くないかもしれない。予感がする」

純「縁起でもない事言わないでよ!」

梓「私の体だからさ……何となく分かるんだ……
  だから純に今の内に話しておきたいんだ」

梓「もし私の身に何かあったらさ、先輩達に……」

純「嫌だよ」

梓「純?」

純「私言わないから!梓の口から先輩達に直接伝えてよ!」

梓「え!?」

純「あんたまだ生きたいんでしょ!?音楽続けたいんでしょ!?」

梓「うん」

純「だったら死ぬなんて軽々しく言わないで!!
  次言ったら本気で怒るからね!!」

梓「そうだったね……
  ごめん純、変な事言っちゃって。私ちょっと弱気になってたかな」

 がちゃっ

唯「ただいまーあずにゃーん。
  おっ、純ちゃんあずにゃん送ってくれてありがとねー」

唯「おかえりなさい先輩」

純「お邪魔してます」

 思い返してみると私の人生は色々な人に支えられてたんだな……
 大好きな人に愛されて、最高の親友に囲まれて……



201 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 22:56:35.29 ID:+mvlBbuio

―― 病院

紬「そうですか……もうそこまで症状が」
                   はしゅ
金田「ええ、先月の検査で腹膜播腫とリンパ節への転移が発見されました。
   正直言ってあまり時間的猶予は残されていないと見ていいでしょう」

紬「あとどれくらいなんでしょうか、
  梓ちゃんの残りの……その……もうすぐ予選も控えてますし」

金田「明確には言えませんが
   遅くてもコンクールの決勝が終わったら入院してもらうかもしれません」

紬「……」

金田「本来ならすぐにでも入院して欲しいというのが医者としての意見です。
   ただ医者ではなく中野さんを見守る1人の人間として、
   あの子には晴れの舞台に立ってもらいたいという気持ちもあります」

金田「なので中野さんにも平沢さんにもこの話はまだしていません。
   職務より私情を優先させるなん医者失格ですかね僕は」

紬「そんな訳ないじゃないですか。本当に心遣い感謝します。
  あと1週間……何とかもってくれればいいのですが……」



202 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 22:57:41.57 ID:+mvlBbuio

 予選の日は9月18日、それまでは練習とお茶の日々が続いた。
 幸い重篤な病気の症状はあの日以来出る事はないけど
 正直ただ立ったり座ったりするだけでも相当身体が辛いし
 もうほとんどご飯も喉を通らない……でもなんとか予選の日を迎えられそうだ。
 
 私のこの身体、もってくれればいいな……いや、もたせてみせなきゃ!



203 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 22:58:21.28 ID:+mvlBbuio

―― 9月17日 夜

 今日は部屋で平沢姉妹と私の私物の身辺整理をしている。
 私がいつ死んでもすぐに実家へ荷物を送れるように準備しておく必要があったし
 唯先輩と憂に余分な仕事をさせたくなかったから。
 
 ここに来る時に必要最低限の物しか持ってこなかったせいか
 整理は早く片付きそうだ。
 
 生活日用品以外の物を次々とダンボール箱の中に詰めていく度に
 部屋の中の隙間が増えていった。
 
 そして3人でやった甲斐もあり思っていたより早く作業は終わった。
 
梓「なんとか終わりましたね」

唯「そだねー。でも部屋の中が寂しくなっちゃったなぁ」

梓「憂もわざわざ手伝いに来てくれてありがとね」

憂「気にしなくていいよ。
  私も久しぶりにお姉ちゃんと梓ちゃんに会いたかったし」

梓「そうだ、そこの引き出しの中に私の預金通帳と保険関係の書類が入ってます」

梓「それに私が死んだ時に
  連絡して欲しい人の住所と電話番号が書いてある紙もまとめて入ってます」

唯「うん、分かったよー」

梓「大丈夫ですか?まあ憂もいるから問題ないとは思いますけど」

唯「私を信用しなさい!」

梓「はあ……」

憂「コンクール、いよいよ明日だよね!
  お姉ちゃん、梓ちゃん、頑張ってね!私も会場見に行くからね」

梓「うん、ありがとう憂」

唯「まっかせなさい!」

唯「そうだ!あずにゃん、本番に向けて私からプレゼントがあります!」

梓「え?プレゼントですか?」

唯「今日憂と一緒に探しに行って買ってきたんだ。はい、どうぞ」

梓「開けてもいいですか?」

唯「どうぞー」

梓「わぁ……ピックじゃないですか。
  しかもこれ、隕石で出来たピックですよね?」

憂「そうだよ、何件も廻ってようやく見つかったんだー。
  お姉ちゃんがどうしてもそれがいいって聞かなくてね」

梓「なんか悪いですよ……これすごく高かったんじゃないですか?」

唯「金額なんてどうでもいいんだよー。
  あずにゃんに喜んで貰いたかったからさ。それに、ほれ」

梓「先輩も全く同じピックを……こんな高級なの2つも買ったんですか!?」

唯「うん、明日はお揃いのピックでやりたいもんね。へへ」

梓「ありがとうございます唯先輩、憂。
  私、大事に使いますから!……ペアルックかぁ、嬉しいなぁ」

憂「じゃあ私は用事も終わっちゃったしそろそろ帰るね。明日朝早いから早く寝ないと」

梓「おやすみ憂、明日はよろしくね」

唯「ういおやすみー。明日は頼むよー」

憂「またね、お姉ちゃん、梓ちゃん」バタン

唯「私達も寝よっか」

梓「そうしましょうか。寝坊なんかしたら洒落になりませんからね」




参考画像:Google 隕石 ピック





204 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 22:58:52.00 ID:+mvlBbuio

―― 9月18日 朝

梓「そろそろ時間なので行きましょうか」

唯「うーん」

梓「どうしました?」

唯「あのねあずにゃん。洗面所の蛍光灯がね、チカチカしてるんだ。
  もうすぐ切れちゃいそうだけど替え置いてあったっけ」

梓「蛍光灯の替えならこの前買って置いた筈ですよ。
  たしかこの押入れの中に……あったあった、ありましたよ」

唯「おおっ!」

梓「でももう行かないと
  待ち合わせに遅れちゃいますから帰ってきてから付け替えますね」

唯「おっけー」

梓「それじゃこの蛍光灯は洗面所に置いておいて、と。
  むったんも昨日先輩からもらったピックもちゃんと持ったし……
  唯先輩、ちゃんとギー太持ちましたか?」

唯「ちゃんとあるよー」

梓「私の1年目の学祭の時みたいに
  忘れて取りに戻るなんてもうしないで下さいね」

唯「ぶー!わかってるよぉ、あずにゃんの意地悪ー」

梓「じゃあ、行きましょうか」

唯「うん!いってきまーす」

梓「いってきます」



206 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:09:16.80 ID:+mvlBbuio

―― コンクール会場・市民ホール

律「私等の出番は午後の一発目、1時からだ」

紬「今は10時、まだ結構時間あるね」

律「演奏する曲は1組1曲だそうだ。
  それと来週の決勝に残れるのは5組だけだってさ」

純「結構ハードル高いんですね」

梓「まあプロの登竜門とか言われてる大会だからね。競争率高くて当然だよ」

澪「演奏するの1曲だけか……
  それなら今回の為に作ってきた新曲でいいんじゃないか?」

律「そうするかー。折角作ったのに披露できずにお蔵入りじゃ勿体無いもんな」

梓「まだ負けると決まったわけじゃないですよ」

律「まーそうだけどさ」

澪「あとは……舞台のセットの打ち合わせ今の内にしておかないか?」

純「そうですね」

紬「それじゃあお茶でも飲みながら決めましょ」



207 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:09:51.46 ID:+mvlBbuio

―― PM12:30

律「どうだ唯?客席の様子は」

唯「思ったより人少ないね。まだ予選だからかな」

純「そうですね。空席目立ちますし」

澪「十分多いじゃないか……」

―― PM12:50

憂「お姉ちゃーん」

唯「おおっ、ういー来てくれたんだねー。それにさわちゃんまで」

さ「教え子達の晴れ舞台だもの。そりゃあ見に来るわよ」

係員「放課後ティータイムさーん。
   そろそろ出番ですので準備の程よろしくお願いしまーす」

HTT「はーい」

さ「時間ね。行ってらっしゃい。しっかりやるのよ」

唯「うん!」

憂「みなさん、頑張ってくださいね!」

梓「任せてよ!」

純「そうそう、
  かるーく勝ち抜いてくるから大船に乗ったつもりでみててよ」

梓「純が言うと泥舟に見えてくるって」

純「なにをーー!」

憂「ふふっ」

律「よし、みんな用意はできたか?」

唯「おっけーだよ!」

紬「いつでもOKよ」

梓「やってやるです!」

純「いつでもいけます!」

澪「……ああ」gkbr

律「よっしゃ行くぜぇー!!!」

HTT「おー!!」



208 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:15:22.71 ID:+mvlBbuio

―― PM13:00 
 
 私達はステージに上がって周りを見渡した。
 正面に審査員らしい人達が数人、
 その後ろにそれ程人数は多くないけど観客の人達がいる。
 
 スポットライトが私達を照らす。
 とうとう夢の舞台に足を踏み入れたんだよね……改めて実感した気がする。
 
 配置は高校の軽音部時代と同じ、ボーカルの私が真ん中に立っている。
 今年入った純ちゃんは私の右斜め後ろ、澪ちゃんとの間。
 まあ澪ちゃんが前に出るのを嫌がってこの配置になっただけなんだけどね。



209 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:15:59.86 ID:+mvlBbuio

唯「どもどもー、放課後ティータイムでーす」

 いつもと同じように、というより本能的にMCを始める私。

律「ライブじゃないんだからMCはいらないんだよ!」

唯「えへへ、そうでした!それじゃ早速行きます!Utauyo!!MIRACLE」

♪~

唯「大好き 大好き 大好きをありがとう♪」

唯「歌うよ 歌うよ 愛をこめてずっと歌うよ♪」ジャーン

唯(終わったぁー)

 大成功だった。
 私も、他のみんなもミスをする事なく完璧にこなせた気がした。
 これなら行けるかな?期待で胸いっぱいな私でした。



210 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:18:54.82 ID:+mvlBbuio

―― PM13:15 楽屋前の廊下

律「いやー、最高だったぜ、な?そう思うだろ?」

唯「うん!私すっごく楽しかった!」

紬「そうねー。これなら予選突破間違い無しよ」

純「やっぱ唯先輩のボーカル上手いなー。さっすが憂のお姉ちゃん」

律「あとは結果を待つだけだな。のんびり待とうぜー」

憂「お姉ちゃーん!」

唯「ういー!どうだった?私達の演奏」

憂「最高だったよ。もっと聴いていたい位にね」

さ「あなた達お疲れ様」

紬「先生も今日はお疲れ様でした」

さ「あなた達ほんと上達したわねぇ…元顧問としても鼻が高いわよ」

唯「もっと褒めてよー褒めてよー」



211 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:28:46.39 ID:+mvlBbuio

梓「……」

澪「?梓、どうした?」

梓「い、いえ……大丈夫です……
  気合入れすぎて少し疲れただ……うぐっ!」

憂「梓……ちゃん?」

梓「ゲホッ…ゴフッ!うぅ……がはぁっ!!」

 何が起きたか分からなかった。
 今の状況がスローモーションで展開されているようだった。
 私の目の前で突然あずにゃんが口を押さえて苦しみだしたんだ。

澪「お、おい……梓……」

紬「梓ちゃん!?」

 あずにゃんの突然の異変に
 場の空気がさっきまでとうって変わって一気に凍りついた。
 
 私はすぐにあずにゃんに走り寄ろうとした。
 だけど私の手が届く直前、
 あずにゃんはまるで全ての力を出し尽くしたかのようにその場に倒れてしまった。
 
唯「あずにゃあああんっ!!!」

 私は悲鳴にも似た大きな声を上げながら走りこみ抱き起こそうとする。
 よく見るとうつ伏せに倒れたあずにゃんの顔の周りの床に
 赤い水溜まりが出来て広がっていってる。
 
 水なんかじゃなかった……
 この瞬間、私は頭の中に最悪のケースを想定した。
 
 私は血まみれになりながらあずにゃんを抱き起こし
 その小さな身体を両手で抱きかかえて何度言ったか分からない程名前を呼び続けた
 みんなも悲痛な声で必死にあずにゃんの名前を叫んでいる。
 けど反応はない……

さ「あなた達落ち着きなさい!すぐ救急車呼んでくるからそこで待ってるのよ」

 なんだかんだでさすが先生……緊急事態でも冷静に判断してるよ。
 
 すぐに救急車はやってきた。
 救急隊の人達があずにゃんをストレッチャーに乗せ
 救急車に運び入れるのを私達はただ黙って見守っている。
 そんな中、りっちゃんが後ろから私に話しかけてきた。

律「唯、お前は梓についてろ。それに純と憂ちゃんもだ」

唯「え?でもそれじゃ」

律「後は私達が何とかする。結果聞くなんて別に全員じゃなくてもいいだろ」

律「唯、お前梓に約束したんだろ!
  『何があっても離れない』って。だったらさ、一緒にいてやれよ。
  純と憂ちゃんもさ……梓の一番の友達なんだからついていてやって欲しい」

純「分かりました。私梓についていきます」

憂「私もいきます。すいません、後はお任せしますみなさん」

唯「りっちゃんありがとう!私いくね!」

律「ああ、行って梓を元気付けてやってこい」



212 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:29:16.28 ID:+mvlBbuio

―― 夕方 病院

 私と憂と純ちゃんは手術室前のベンチに座って
 ただじっと手術が終わるのを待っていた。
 
 「手術中」の赤ランプが無機質に点灯してるのを私は見つめている。
 もうここに運び込まれてから5時間位経ってるんだよね……
 その間私も憂も純ちゃんもこのベンチから1歩も離れたりしていない。
 2人は完全に憔悴しきっているようだった。
 
 私は声をかけてあげれなかった、
 何を言っても気休めにもならないだろうから……
 それだけ今が絶望的な状況なんだろうと改めて思い知らされた。

 しばらくして手術室の反対側の廊下の向こうから足音が聞こえてきた。
 1人じゃない、複数だ。



213 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:29:42.46 ID:+mvlBbuio

律「唯!」

唯「りっちゃん!それにみんな来てくれたんだ」

 りっちゃん達は全力で走ってきて私の前で息を切らしながら話しかけてきた。
 
澪「それで、梓の容態は?」

唯「……心停止で危険な状態なんだって……」

澪「心停止って……嘘だろ……おい……」

憂「梓ちゃん……ぐすっ」

純「あずさぁ……ひっく……ぐすっ」

律「梓なら絶対戻ってくる!
  だってそうだろ、まだ決勝残ってるんだから
  梓ならほったらかしたりなんか絶対したりしないだろ!」

唯「という事は私達予選通過できたんだ……」

紬「ええ、決勝は来週の28日の金曜日よ」

律「だからそれまで梓が死ぬわけないんだよ。
  あいつが一番……楽しみにしてたんだからさ」

唯「そうだよ、そうだよね!
  みんな、あずにゃんを信じてあげようよ。ね?憂、純ちゃん」

憂「うん」

純「そうですよね……」

 その時だった、手術中のランプが消えた。
 私達全員が手術室に注目する。
 
 しばらくして中から金田先生が出てきて私達の前に。

律「梓は!梓は無事なんですか?」

金田「大量の吐血をしてかなり危険な状態でしたが
   一応今の所は命は取り留めました」

 え?「一応」って?一応ってどういう意味!?
 その意味は次の言葉で分からされる事になる。
 それはまさに非情通告という物に相応しいものだった。

金田「しかし胃からの出血はもう止められません。
   物は食べられませんしまた吐血する可能性も高いので
   ずっと輸血が必要になります」

唯「退院できる事はもうないんですね」

金田「はい、今日のところは大丈夫ですが
   今後はいつ急変してもおかしくない状態です」

金田「ご家族とご友人の方には心の準備が必要かと思います」

 とうとう一番聞きたくなかった一言を聞かされちゃった……
 もうすぐ……あずにゃんは私達の前からいなくなってしまう……



215 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:30:40.74 ID:+mvlBbuio

―― 夜 唯の部屋

 私と憂は部屋に着替えやら荷物やらを取りに戻ってきていた。
 今は憂がせっせと私の荷物をまとめてくれている。

憂「お姉ちゃん、用意できたよ」

唯「うん、ありがと憂」

憂「そろそろ行こ?梓ちゃんが待ってるし」

唯「そうだね」

 部屋を出ようとした時、ふと洗面台が目に入る。
 完全に電気が切れた蛍光灯の下に新品の蛍光灯が置かれていた。
 そう、今朝あずにゃんが押入れから出してきて置いておいた蛍光灯だ。
 本当なら今頃あずにゃんがこれを交換してくれてた筈なんだけど……

憂「もう梓ちゃんこの部屋には帰ってこないんだよね……」

 私は憂に返事はしないで新品の蛍光灯を手に取り部屋を見渡す。
 2人で仲良く使い続けてたお揃いの2本の歯ブラシとお箸、
 夫婦茶碗、もう使う機会は無くなっちゃったんだよね。
 
唯「どうして……替えてくれるって言ったのに。
  あずにゃん、帰ってきたら取り替えるって言ってくれたのに……」

 私は震える声でそう言い蛍光灯を強く抱いた。



216 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:31:08.28 ID:+mvlBbuio

―― 同時刻 病院の休憩所

 唯先輩と憂が出て行った後、
 私達は病室のすぐ横にある休憩所で休んでいた。
 
 休憩所といっても自販機があって
 椅子が置いてあるだけの仕切りも何もない狭い場所だけど。

 私も含めて全員疲れきった顔でうなだれている。
 澪先輩なんかもう今にも泣き出しそうな顔をして鼻をすすっている。
 
 この張り詰めた空気が耐えられない、
 何とかしたいけどどうしたらいいか分からない。
 だけどその空気は突然破られる事になる。

紬「悲しくなんてないの!」

 その場にいた人全員がムギ先輩を見た。
 その顔は台詞とは全く逆の表情だったが
 とにかく作り物でもいいから笑顔でいようとしている顔にも見えた。
 
紬「もって1年て言われたのに半年以上も長く生きられたのよ!
  悲しいわけ……ないじゃない!」

 再び沈黙が訪れる。
 そんな雰囲気の中、澪先輩が呟いた。

澪「……唯がいたからだよな」

律「ああ……きっとそうだよな……
  唯がずっといてくれたから生きてこれたんだ」



217 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:32:10.93 ID:+mvlBbuio

―― 9月19日

 翌日、あずにゃんが目を覚ましたと連絡を受けた私は病室へと向かった。

梓「唯先輩……」

 呼吸器は外されていたけど、
 誰の目から見ても明らかな程あずにゃんの表情はやつれていた。
 
梓「あの……予選の方はどうなったんですか?」

唯「残ったよ。決勝は来週の金曜だって」

梓「残れたんですか……よかったぁ…」

 ここで不意に病室のドアが開いた。

金田「中野さん、気分はどう?」

梓「はい、もう大丈夫です」

金田「そうか、それは良かったよ」

梓「それで先生、私はいつ退院できるんですか?
  金曜までには退院したいんです」

金田「……残念だけど無理かな」

梓「どうしてですか?」

金田「君の身体が一番よく分かってるんじゃないかな?」

唯「……」



218 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:33:05.93 ID:+mvlBbuio

 先生が病室を去って少しした後、あずにゃんのお母さんがやってきた。
 昨日私が連絡して仕事先から飛んできたようだった。

梓「お母さん!?どうしてここに」

梓母「あんたが倒れて意識不明になったって
   唯ちゃんから連絡もらって飛んできたのよ」

梓「で、でも仕事が……」

梓母「仕事なんかどうでもいいでしょ!娘がこんな大変な時に……」

梓「ありがとうお母さん」

 お母さんはあずにゃんのやつれ変わり果てた姿を見て涙を流していた。
 私も釣られそうになったけど我慢した。
 だけどもう泣かない、あずにゃんを笑顔で送り出そうと決めたから。

梓母「唯ちゃん、梓の事今まで本当にありがとう。
   唯ちゃんにはお礼を言っても言い切れないわ」

唯「いえ、私は別にそこまで大した事してませんよ」 

 コンコン、とここで病室のドアをノックする音がした。
 どうぞーと返事をするとりっちゃん達がきてくれた。
 
 だけどみんな表情が重い、あずにゃんの姿を見て
 本能的にもう残された時間が少ないのを察したのかも。

律「よっ梓、調子はどーだ?って、唯ももう来てたのか」

唯「うん」

紬「その方は?」

梓「紹介しますね。私の母です」

梓「お母さんにも紹介するね。
  この人達は私がお世話になってる軽音部の先輩方と同級生の友達」

 お母さんはみんなに1人づつお辞儀してまわってる。
 みんなもそれぞれお辞儀して返す。
 そういえばみんな初対面だったっけ。



219 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:33:34.22 ID:+mvlBbuio

梓「今日は皆さんに言っておきたい事があります」

憂「なに?梓ちゃん」
 
梓「今の内に皆さんにお礼を言っておきたいんです」

澪「お礼って何だよ梓、言ってる意味が……」

梓「みなさん、今まで本当に私の我侭を聞いてもらってありがとうございました。
  正直、こんなに長く皆さんと音楽続けられるとは思っていませんでした。
  今は退院のメドがたたなくなりました」

律「退院できないって……嘘だろ……」

梓「嘘ではありません。
  もしかしたらみなさんとまた演奏するのも
  決勝の舞台に立つのももう無理かもしれません」

 みんな俯いてる……かける言葉もないように見える。

梓「唯先輩、澪先輩、律先輩、ムギ先輩、憂、純、
  みなさんと出会えたお陰でこの3年半は
  私の中でとても有意義で忘れられない思い出になりました。
  本当に……ありがとうございました」

律「くそっ……何でお前そんなに落ち着いていられるんだよ!
  それに何で私達より年下の梓が死ななきゃいけないんだよ!
  出来るなら代わってやりたい気分だ」

梓「律先輩、そんな事言っちゃダメです!」

律「え?」

梓「もし律先輩が私に代わってこんな身体になったら
  今度は先輩を愛してくれている人が悲しむ事になるんですよ。
  代わってやりたいだなんて気持ちは嬉しいですけど言わないでください」

梓「決勝、見にいけそうにないですけど
  先輩方ならきっと出来ると信じてますから」

律「分かった……決勝は私達で何とかしてみせる。
  梓にいい報告が出来るようにしてくるからさ……」

梓「はい、先輩方ならきっと上手くいきますよ」

唯「それじゃー明日からまた部室で練習だね!」

律「いや、唯、お前はダメだ」

唯「どうして!?どうしてなのさりっちゃん」

律「お前は梓の傍にいてやれ。後は私達で何とかするからさ」

紬「そうね……唯ちゃんは梓ちゃんに付いていてあげて」

唯「でもそれじゃギターがいないよ!」

澪「そんなの何とかなるさ。
  コンクールはこれから先何度も機会はあるけど
  梓といられる時間は今しかないんだからさ」

律「そういう事だ。これは部長命令だからな」

唯「うん……」

律「じゃあ私達は打ち合わせあるからそろそろ帰るな」



220 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:34:26.43 ID:+mvlBbuio

 病室の外・帰り道

澪「なあ律」

律「なんだー澪」

澪「お前何にも考えてなかっただろ」

律「あ、バレた?」

澪「当たり前だろ!どうするんだよあんな事言って」

律「まーなんとかなるっしょ。
  それに唯と梓には最後までずっと一緒にいて欲しいだろ」

紬「でも現実問題ギターがいないのは事実よ。
  今から代わり探すと言っても……」

律「うーん」

澪「とにかく何とかしなきゃな。今更後には引けないしな……」



221 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:35:19.95 ID:+mvlBbuio

 9月20日

憂「お姉ちゃん、私に用って何?」

唯「憂に渡しておきたい物があるんだ」

憂「なに?」

 私はここで憂にギターケースを差し出した。
 そう、これは勿論私のギー太だ。

憂「何でこれを私に?お姉ちゃんの大切なギー太なのに」

唯「憂には私の代わりにコンテストに出て欲しいんだ。
  勝手なお願いかもしれないけどね」

唯「昨日さ、りっちゃんは大丈夫って言ってたけど
  絶対強がりで言ってたと思うんだ。私達に気を使ってね」

憂(やっぱりお姉ちゃん気が付いてたんだ……)

唯「憂さ、2年の時の学祭で私が風邪引いた時に
  私に変装してりっちゃん達の前でギター弾いた事あったよね?」

憂「うん」

唯「あの時の憂のギターね、もしかしたら私よりも
  上手く弾けてたかもしれなかったんじゃーないかな?と思ってね」

憂「でも出来るのかな私に……
  あの時はただの見よう見まねで少しだけ弾いただけだったし」

唯「大丈夫だよ。私にも出来たんだから憂が出来ない筈ないよ」

 憂はしばらく考え込んだ後、意を決したようにギー太を受け取ってくれた。

憂「私やってみるね。
  お姉ちゃんと梓ちゃんが喜んでくれるなら私何でもやってみせるから」

唯「ありがとう憂」



222 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:36:30.37 ID:+mvlBbuio

 その数時間後・マック

律「なるほどなぁ、やっぱ唯にはバレてたか」

憂「はい、だからお姉ちゃんは私にギー太を…」

澪「憂ちゃん、高校の軽音部じゃキーボードだっただろ?」

憂「そうですよ。
  でも昔からお姉ちゃんがギター弾いてるの何度も見てますし
  弾かせてもらった事もあるので」

律「確かに憂ちゃんなら
  練習すれば出来る様になりそうな気もするよなぁ……」

律「じゃあいいのか憂ちゃん。やってくれるのか?」

憂「はい!よろしくおねがいします!」

律「ギターが決まった所で……次はボーカルだな。
  さーて、どうしよっか」

澪「私がやるよ……」

紬「澪ちゃん……」

律「澪、急にどうしたんだ?
  あれだけ嫌がってたボーカルを自分からやるだなんて」

澪「今更恥ずかしがってなんかいられないだろ。
  まあちょっとは恥ずかしいとは思うけどさ。
  私だって一応HTTのボーカルなんだから!」

紬「本当にいいの?もう後には引けないのよ?」

澪「何だってやってみせるよ。
  後輩があんなに大変な思いをしてるんだからこれくらい何ともないさ」

律「よし!そいじゃーあと1週間
  出来る限りの事をしていこうぜ!出れない唯と梓の分までさ。」

澪「ああ!」

紬「どんとこいです!」

純「はいっ!」

憂「やってみせます!」

澪「そうだみんな、今思い出したんだけど私から1つ提案があるんだ」

律「なんだ澪、いきなり流れぶった斬って……」

澪「あのさ……」



223 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:37:29.79 ID:+mvlBbuio

 それから日は流れ9月27日の夜

 私は病室であずにゃんと一緒にいる。
 他に誰もいない部屋で2人きりの時間を過ごしていた。
 あずにゃんはベッドに横たわったまま私を見つめていた。

唯「あずにゃん」

梓「どうかしましたか?唯先輩」

唯「手、握っていい?」

梓「はい……」

 私はあずにゃんの手を両手で握った。
 その手はとても弱弱しく
 あずにゃんに残された時間がもう余り無いのを実感させられ
 息が詰まりそうになってしまう。
 
 あずにゃん自身今はただ寝ているだけでも
 すごく痛く大変な筈なのに私をじっと見つめて笑いかけてくれている。 
 
 私はいたたまれなくなり手を離そうとしてしまったけど、
 その離した手をあずにゃんはそっと握り返してきてくれた。

梓「ねぇ唯先輩」

唯「何?あずにゃん」

梓「思えば私達出会ってからよくこうやって手を繋いでましたね」

唯「うん……そうだったよね」

梓「私は今でも忘れていません。
  雪の日に先輩に手を繋いでもらって暖かい気持ちになった事も、
  駅に行った帰りに手を繋いでくれて安心させてくれた事も」

唯「まだ覚えていてくれたんだね」

梓「唯先輩、私の事忘れないでくださいね」

唯「当たり前だよ、
  忘れるわけないよあずにゃんの事。でも急にどうしたの?」

梓「でも……私に縛られないでくださいね」

唯「うん、わかってるから。私はちゃんと生きていくよ。
  私がしっかりしなかったらあずにゃんがゆっくり休めないもんね」

唯「でもね、どうしてもあずにゃんに会いたくなった時
  私どうすればいいんだろう」

梓「会いに来ますよ」

唯「え?」

梓「もしどうしても会いたくなったら、
  そうですね、私がプロポーズした場所を覚えてますか?」

唯「分かるよ。前に演芸大会に出る時練習したあの河原だよね」

梓「そこに来てください。必ず会いに行きますから」

 そう言ってより強く、精一杯の力で私の手を握ってきてくれた。
 私を安心させる為に笑顔を向けてくれているあずにゃんに応えるように笑顔を返す。



224 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:37:57.46 ID:+mvlBbuio

 夜中、病室を一度出た私は誰も居ないベンチに腰を下ろす。
 薄暗い中1人で佇んでいると隣に人の気配がした。

金田「ここ座ってもいいかな?」

唯「あ、先生……どうぞ」

金田「よければこれどうぞ。
  自販機でコーヒー買ったら2本出てきて得しちゃった」

唯「あ、はい、いただきます」

唯「あの、先生」

金田「どうしたの?」

唯「死ぬ事って終わる事じゃないですよね」

金田「そうだよ」



225 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:38:48.99 ID:+mvlBbuio

 9月28日 AM9:00 病室

梓「いよいよ今日は本番の日ですね」

唯「そうだねー」

 あずにゃんはベッドから起き上がって会話をしてる。
 何とか起きる程度は出来るようになったみたい。
 さっきから時計をちらちら見てる……やっぱ気になるのかな。

 コンコン

梓「どうぞー」

金田「おはよう、2人とも」

唯梓「おはようございます」

金田「それで今朝の具合はどう?中野さん」

梓「先生、お願いがあります」

金田「何?」

梓「外出を許可してください。
  今から外出を許可してください。コンクールの会場に行きたいんです」

金田「中野さん、僕は医者として外出を許可する事はできません」

梓「どうしてもだめですか」

金田「はい」

梓「死ぬかもしれないからですか?」

金田「もちろん、その危険もあります」

梓「このままベッドでおとなしくしてれば
  少しは長く生きられるかもしれません。
  でもそれは私にとって生きたとは言えません」

梓「私は最後まで生きたいんです!生きたい!生きたい…」

 あずにゃんは真剣な表情で言葉強く訴えかけている。
 その剣幕に先生は一瞬悩んで視線を落とす素振りを見せたけど
 すぐに向き直って毅然と言った。

金田「……許可できない」

 そう言うと先生は病室を出て行った。



226 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:40:52.56 ID:+mvlBbuio

 PM13:15 コンクール会場

律「という訳で決勝は1組3曲づつだそうだ」

憂「3曲ですか」

澪「ふわふわ、ふでペン、ホッチキスでいいんじゃないか?
  私にとっても歌った経験ある曲だし」

紬「そうね、それなら憂ちゃんにとってもやり易いでしょうし」

律「じゃあホッチキス、ふでペン、ふわふわの順で行くぞ」

澪「ああ」

紬「ええ」

憂「……」

純「憂、どうしたの?」

憂「お姉ちゃんと梓ちゃんに見せたかったな、やっぱり……」

律「私達の想いを曲に乗せて届けてやろうぜ。
  それが私達放課後ティータイムの音楽だろ」

憂「そうですね。私思いっきりやります!
  お姉ちゃんが託してくれたギー太と一緒に!」

純「あの……少しいいですか?」

澪「どうした?純」

純「少し考えがあるんです。ちょっと離れる事になるけどいいですか?」

澪「何言ってるんだ、もうすぐ私達の出番が廻ってくるだろ」

律「……分かった」

澪「お、おい律!」

律「何か考えがあるんだろ。
  行ってこい。私達の事は気にしなくていいぜ」

純「ありがとうございます!行ってきます」

――

律「そういう訳で
  もしかしたらベースは澪1人になるかもしれないから頼むぜ」

澪「間に合わない可能性が高い……か」

紬「純ちゃんが向かった先って病院よね……」

律「ああ……ほんとお人よしだよなあいつ。あんま態度に出さないけどさ」



227 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:42:06.77 ID:+mvlBbuio

 病室、私は時計を見ている、2時を廻ってた。
 もうすぐ先輩方の演奏が始まる時間だな……
 見に行きたかったけど仕方ないよね……
 
 唯先輩は買い出しに出ていて
 今ここには私とお母さんしかいない。
 お母さんは私の乱れた布団を直してくれている。
 私はその光景をじっと見ていた。

梓母「どうかした?梓」

梓「どうもしないけどね…ありがとう……ありがとうお母さん」
 
 布団を直してくれたのを私がそうお礼をすると
 お母さんはハッとした表情をして私を見て足をさすってくれた。
 
 多分お母さんとこうして2人で水入らずの時間を過ごせるのは
 これで最後かもしれない、そう思ったのかも。

 その時だった、病室のドアが突然開いて純が入ってきた。
 
純「やっほー梓」

梓「純!あんたどうしてここに!?もうすぐ本番じゃなかったの?」

純「相変わらずつれないですなー梓は。
  せっかく差し入れ持ってきてあげたってゆーのに」

梓「差し入れ?」

純「ほれ、今梓が一番欲しがってる物もってきたよ」

 私は手渡された紙袋の中身を見る。
 そこには私の服が入っていた。

梓「純……自分が何やってるか分かってるの?」

純「……分かってるって。
  このまま何もしないでいたら私も罰が悪いからさ」

純「行ってきなよ梓。後は私が何とかするから」

梓「ありがとう純……今迄本当にありがとう」

純「お礼ならいいって。
  全部終わった時にまとめてお返しはしてもらうから」

梓「分かった……また会おうね純」

純「うん、きっとまた会えるよ梓」


 数分後金田先生が病室に飛び込んできた。
 梓が病院を抜け出したとの報告を看護婦の人がしてきたから。
 もちろん病室には梓はいない、いるのは私と梓のお母さんだけ。

純(あーあ……ホントいつもいつも貧乏クジ引かされてばかりだな私)

純(でも汚れ役なら私1人で十分だもんね……梓、しっかりやりなよ)



228 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:47:06.21 ID:+mvlBbuio

 私は会場への道を1人歩いていた。
 誰もいない銀杏並木の道幅の広い遊歩道、今迄何度も歩いていた道。

 銀杏の木は既に黄色くなっていて落ち葉の絨毯を路面に作っていた。
 その中を1歩、また1歩とおぼつかない足取りで歩いていく。
 もう殆ど足の自由はきかないし足先の感覚もない、
 それでも私は私のいるべき場所へと行かなきゃいけない。
 
 折角送り出してくれた純の気持ちを無駄にしちゃいけない……
 そして最後まで生きたいと誓った私自身の気持ちに決着を着ける為にも……
 だから這ってでも行かないと……先輩方の下へ……



229 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:47:37.47 ID:+mvlBbuio


 どれだけ歩いたんだろう、よく分からなかった。
 ただ普通の人が適当に歩いても10秒程度で歩ける距離を
 今の私はその3倍以上の時間をかけて歩いている。
 
 足を1歩踏み出す毎に体中が悲鳴をあげ
 顔が苦痛で歪み倒れそうになる……
 それでも倒れたりしないで歯を食いしばって耐えた。
 
 しかし遂に右足の踏ん張りが効かなくなってしまう。
 足に力が入らなくなり次に腰、
 まるで全身から力が抜けていくような感じがした。
 このままここで野垂れ死にしちゃうのかな……最悪だよ…
 この瞬間私は完全に覚悟した。

 だけど目前に迫る筈の地面が迫ってこない……
 完全に倒れると思っていたのに、どうしてなんだろう。
 ここで気が付いた。支えているのは私ではなかった。
 暖かく人を安心させる優しいこの感触、初めてじゃない。
 
 私はゆっくり横を見る。
 そこにはいつもいつも私に元気や温もりをくれた人の顔があった。
 
梓「唯先輩……」

唯「いこ?あずにゃん」

 唯先輩は微笑みながら私を力強く抱いてそう言ってくれた。
 そして私達は再び歩を進める、
 二人三脚で…今迄そうだったように……そしてこれからも。



230 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:48:04.57 ID:+mvlBbuio

 PM14:45 コンクール会場

澪「がんばれふでペン、ここまできたからかなり本気よ~♪」

 パチパチパチ

澪(あと1曲か……何とかここまで来れたけど…)

律(澪の奴、すげぇ気合入ってるな……
  今迄あんだけ恥ずかしがって嫌がってたボーカルなのに……)

澪「それでは次が最後の曲になります。聴いてください!ふわふわ時間!」

律「1、2!」

澪「キミを見てるといつもハート……!?」

 ガチャッ

澪(唯!?それに梓も!)

憂(お姉ちゃん!?梓ちゃんまで!)

紬(純ちゃん、あなたやっぱり思っていた通りの子ね)


 私達が会場に入った時には3曲目のふわふわが始まっていた。
 唯先輩に促され空いている席に隣同士並んで座る。
 ふとステージ上に立つ澪先輩と目が合い
 アイコンタクトを送られ私はそれに同じように返す。

澪「あぁカミサマどうして好きになるほどDream Night切ないの♪」

 そういえばこうやって客観的に先輩方の演奏聞くのって
 1年の時の新歓ライブ以来だったかな…あれから3年か、懐かしいな……

澪「もしすんなり話せればその後は…どうにかなるよね♪」

澪「ふわふわターイム」

紬「ふわふわターイム」

 あの時入部を決めたのはこの演奏を聴いたからだった、
 そして今でもこの人達の演奏は衰えはしないであの頃のまま。
 私は静かに聴き入っていた。 



231 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:51:47.40 ID:+mvlBbuio

 PM15:30 楽屋

律「結局2位か……」

澪「でもやれるだけやれたしこれで良かったんじゃないか?」

紬「そうね、私はこれで満足よ」

憂「はい、今日は皆さんと演奏できて楽しかったです!」

ガチャッ

純「どーも……遅刻しました」

律「遅いぞー、ってもう終わった後だけどな」

純「面目ないです……でも作戦は上手くいきましたよ」

律「だな、今回は結果Okて事にしとくか」

憂「それで、お姉ちゃんと梓ちゃんは今どこに?」

純「2人共まだ客席だよ。さっきまで私も舞台袖にいたから見てたし」

紬「余韻に浸ってるのかもね2人共」

律「じゃあ報告でもしに行こうか」

澪「ちょっと待て」

律「なんだー?何かあるのか澪」

澪「先週私が提案した事覚えてるか?」

紬「ええ」

澪「どうせならさ……やってみないか?」

憂「私はいいですよ」

律「私もOKだぜ」

紬「じゃあちょっと待ってね……」TEL

紬「もしもし斉藤?ええ、今私達がいるホール、
  すぐに貸し切るように連絡して!ええ、今すぐよ!」

紬「これで大丈夫。さ、行きましょ」

律「よっしゃ行くぜ!これが本当に最後の私達のライブだ!」

憂「はいっ!」

澪「ああ!」

紬「ええ!」



232 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/13(水) 23:59:10.20 ID:+mvlBbuio

 同時刻・客席

 コンクールも終わり誰も居なくなった客席で私と唯先輩は余韻に浸っていた。
 
梓「唯先輩」

唯「どったの?」

梓「ふと思ったんです」

唯「何を?」

梓「私は余命1年と知った時、それまでの17年の人生を後悔しました。
  だから残りの人生は悔いのないように生きようと思いました。
  そして生きました。」

唯「うん」

梓「後悔したはずの17年間が今ではとてもいとおしく感じます。
  褒められた人生ではありませんでしたけどとてもいとおしいです」

唯「うん」

梓「たった18年の短い生涯でしたけど
  80年の生涯より中身の濃い生涯だったと今では思ってます」

唯「うん……間違いないよ、私が保証するよ」

 唯先輩の目はこの時涙で溢れていた。
 泣かないって決めたんじゃなかったんですか?全くこの人は……

梓「もしあの時軽音部に入らなかったら
  どうなってたんだろうって考えたんです。
  でも全く考え付かなかったんです」

唯「そりゃそうだよ。
  私もあずにゃんと出会わなかった人生なんて思い浮かばないもん」

梓「そうですよね。病気になってしまったのは運命ですけど
  唯先輩と出会えた事もまた運命かな……って私も思います」

唯「運命なんて私は信じたくなかったけど……
  これだけは私も運命だと思うよ」

唯「で、あずにゃん、これからどうしよっか」

梓「次、ですか?」

唯「次は、打ち上げのパーティーとかかな?」

梓「いいですね、それ」

唯「パーティーの料理、どうしよっか?
  大抵はケーキとかチキンだけど……他に何がいいか考えようよー」

梓「唯先輩は相変わらず食いしん坊ですね」

唯「へへー」

梓「でもそうですね……
  色々やりたくてすぐに思いつきません。考えておきますよ」

唯「じゃあそろそろ病院戻ろっか」

梓「はい」



233 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/14(木) 00:17:43.89 ID:Mw+eiwULo

 そう言って私達が席を立とうとした時、
 突然ステージ上に軽音部の先輩方と憂が現れた。
 それぞれ楽器を持っていてライブをするポジションにつく。

澪「今日は梓に聞いて欲しい曲があるんだ。
  本当は私達の卒業式の日に歌うつもりだったけど
  完成が間に合わなくて演奏できなかった曲だ」

澪「遅れてしまったけど……
  これが梓に届ける最後のチャンスだと思ったから聴いて欲しい!」

澪「行くぞ、律、ムギ、憂ちゃん!」

律「いいぜ!」

憂「いつでも行けます!」

紬「やりましょう!」

律「1、2、3!」

 4人の楽器が音を奏で始める。
 
 観客はたった2人だけの
 放課後ティータイムのファイナルライブが始まった。



234 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/14(木) 00:18:45.59 ID:Mw+eiwULo

 ~♪

憂「ねっ、思い出のカケラに名前を付けて保存するなら宝物がぴったりだね♪」


唯「この曲……そっか……」

梓「知ってたん……ですか……?この……曲」

唯「うん、私達が卒業する時にあずにゃんに贈る為にみんなで作った曲なんだ」


澪「そっ、心の容量がいっぱいになるくらいに過ごしたねトキメキ色の毎日♪」


梓「そうだった……です…か。サプライズ…すぎます…よ」

 よく見ると舞台袖で見守っている純の顔も涙でボロボロになってるし。
 私にもステージ上の先輩方の気持ちが伝わってきて胸がいっぱいになる。

唯「私のパート、憂に取られちゃったな……ま、いっか」

梓「こんなと…こで……サボって…るから…ですよ…ふふっ」

唯「だよね、あずにゃん先輩やっぱり厳しいっす」

 唯先輩は普段どおりに接していてくれてる。
 私も普段通りに接しているけど、
 段々と視界がボヤけて意識が遠のいていく。


律「なじんだ制服と上履き ホワイトボードの落書き♪」

紬「明日の入り口に 置いてかなくちゃいけないのかな♪」


 もう視界がほとんどなくてどこに誰がいるのかも分からないよ。
 でもしっかりと歌声は私の耳に届いてきている。


憂律澪紬「でもね 会えたよ 素敵な天使に♪」



235 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/14(木) 00:19:11.59 ID:Mw+eiwULo

 視界が効かなくなった代わりに今度は私の脳裏に
 今迄の記憶が走馬灯のように蘇ってきていた。
 
 入部していきなり猫耳をつけさせられて
 「あずにゃん」て変なあだ名をつけられたのが始まりだっけ……

 初めて行った夏合宿じゃ夜中唯先輩と一緒にギター練習して
 嬉しそうに抱きつかれたっけな……
 
 思えばあの時知ったんだっけ、
 実は唯先輩は普段サボってばっかだけど
 裏では誰よりも練習してる人なんだって。

 純からあずにゃん2号預かって毛玉吐かれて困ってた時も
 唯先輩はすぐに駆けつけてくれたっけな……
 
 修学旅行のお土産でもらった「ぶ」のキーホルダー、
 今でも大事に取っておいてありますよ……
 
 演芸大会でゆいあず結成……あれが私達の最初の共同作業でしたね。
 あの河原で勉強の合間を縫って練習したの楽しかったですよ…
 
 それにしてもあの河原、
 私がプロポーズしたのもあそこだったし……深い縁がある場所なのかな。

 最後の学祭ライブ、先輩方みんな部室で泣いてましたよね?
 あの時は分かりませんでしたけど
 3年生になってライブに出た時ようやく分かりましたよ、涙の理由。

 卒業してからも唯先輩との思い出ばっかだ……
 初めてしたキス、一緒に撮った2人きりの写真、
 短かったけど思い出ばかり詰まった共同生活の日々、
 2人きりで入った温泉と夜中に泣きじゃくった私を優しく抱きとめてくれた先輩。

 でも一番思い出深かったのは初めて2人で出かけたあの焼き鳥屋。
 2人で楽しく食べたっけな……
 確かあの時唯先輩は私が頼んだのをマネして頼んだんだよね。

 今でも先輩の楽しそうな顔を見ながら食べたあの味は覚えてますよ。
 何食べたんだっけ……
 そっか、あれ私がいつも頼んでたやつだったか…あれは確か……

梓「とり……かわ……」



236 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/14(木) 00:19:37.57 ID:Mw+eiwULo

唯「ほえ?鶏皮って、パーティーで焼き鳥かー、
  あずにゃんにしては意外だけどいいんじゃないかな。
  ほら、昔2人でよく行ったお店に頼んでみてはどうなのかな?」

唯「あ、それより憂やりっちゃんにも手伝ってもらって
  みんなでお料理しあうってどうだろ?
  それでいろんな種類の料理をカラフルに並べてみよっか。
  考えただけで楽しくなるよねー?そうしよっか、ね?」

梓「」

唯「あず……にゃん?」

梓「」

 私が横を見るとそこには眠っているようなあずにゃんの顔があった。
 安らかに眠っているその顔を見て全てを悟り、
 もう動く事はないあずにゃんの手をそっと握る。
 
 その瞬間、今迄堪えていた涙が静かに流れ落ちてくる。
 そして椅子にもたれかかったあずにゃんの頭が私の方に倒れかけてきたので
 私はその頭に自分の頭をそっと付けてしばらく寄り添っていた。
 
 ステージの上での演奏の音ももう何も聴こえなかった…
 長い長い無音、私達2人だけの静寂な時間が流れていた。

唯「ありがとう……あずにゃん……」

唯「そして…また会おうね……」



237 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/14(木) 00:20:21.30 ID:Mw+eiwULo

 エピローグ

―― あれから5年後・桜ヶ丘高校

唯「こんにちはー」
 
さ「あらあなた達、久しぶりね」

 私達は数年ぶりに母校の門をくぐった。
 相変わらずさわちゃんはここで教師をやっているようだった。
 
 ちなみに未だに彼氏は出来てないらしい、
 もう三十路なのに……
 て、こんなの声に出したら何されるか分からないから言わないけどね。
 
さ「あなた達仕事の方忙しいんでしょ?
  わざわざこんなとこまで来てて大丈夫なの?」

律「今日は完全オフの日だからな、
  最近まで全国廻ってて昨日やっとこっち帰ってこれたから
  顔出しとこうぜって話になってさ」

澪「明日からは海外公演だけどな」

さ「売れっ子も大変ねぇ……」

紬「忙しいですけど
  いつもみんなと一緒にいれるからきついとか思ってませんよ」

唯「それでさわちゃん、今日は音楽室空いてる?」

さ「今日はみんな下校した後だから誰もいないわよ。
  でもあなた達もあまり長居しない方がいいわよ。
  生徒に見つかったらパニックになるんだから」

律「わかってるって、それじゃ行こうぜー」



238 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/14(木) 00:20:51.93 ID:Mw+eiwULo

―― 部室

澪「……私達がいた頃とあんまり変わってないな」

律「だよな……テーブルもティーセットもそのまんまだ」

紬「まだティータイム続いてるのねぇ」

 ふとティーセットの置かれている方を見ると
 棚に置いてあるカップを手に取って眺めている純ちゃんの姿があった。

唯「どしたの?純ちゃん」

純「このカップ、まだここにあったんですね……」

唯「これって……
  そっか、さわちゃん取って置いてくれてたんだ…懐かしいなぁ」

律「唯、純、どしたー?」

唯「ううん、何でもないよりっちゃん」

 純ちゃんは手に持ったピンク色の猫柄のカップを
 落とさないようにそっと元に戻した。

澪「そろそろ帰ろうか、あんまり長居すると学校にも迷惑になるし」

紬「そうね」



239 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/14(木) 00:21:17.99 ID:Mw+eiwULo

 帰り道

律「今夜は凱旋記念にパーッと飲みにでも行こうぜー!」

紬「さんせー!」

純「今夜は朝まで付き合いますよ!」

澪「ハメ外し過ぎて二日酔いなんてやめろよ。
  でもたまにはいいか……最近忙しすぎて飲みになんて行けなかったし」

律「唯はどうすんだ?」

唯「あ……私ちょっと寄るとこあるから遅れていくね。必ず後でいくから」

律「いいぜー。じゃあこっち向かう時にメールでもくれよ」

唯「うん、それじゃ私こっちだから、また後でね!」



240 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/14(木) 00:21:52.20 ID:Mw+eiwULo

 私は夕暮れの川沿いの道を歩いている。
 そしてとある川岸で足を止めてその場に座り
 背負っていたギターケースを下ろす。
 
 私の他に人の気配はなくただ川のせせらぐ音だけが聞こえてくる。
 
 私はギターケースからギターを取り出す、
 中に入っていたのは赤いギター……
 そう、大好きだったあの子が大事にしていたむったんだ。
 
 そして手に持った隕石で出来たピック、
 これはあの子とおそろで分け合った大事な物、
 今でもライブではこれを使っている。
 
 そして私は1人弾き始め語り掛ける。

唯「あずにゃん、今日は報告に来たんだ。
  私達ね、メジャーデビューしたんだよ?
  あずにゃんの夢だったプロになれたんだよ」

 そう、ここはかつてあずにゃんが私にプロポーズしてくれた
 私達2人にとっては思い出の場所。
 
 ここに来ればあずにゃんが「唯先輩!」とか言いながら
 ひょっこり出てくるような……そんな気がする場所。

唯「ずっと忙しくて報告遅れてごめんね。
  そうそう、ツアー最後のさいたまでのライブ、
  あずにゃんのむったんとおそろのピックでステージに立ったんだよ。」

唯「武道館じゃないけどね……
  でもあずにゃんと一緒にスポットライトを浴びたかったから……
  
  昔からの私達の目標だったんだから
  あずにゃんも一緒じゃないと駄目なんだよ」

唯「……私あずにゃんの事未だに忘れられないけど……
  だけど私はしっかりやってるし元気にやってるから!」

唯「りっちゃん達待たせちゃってるから
  私そろそろ行くね。バイバイ、あずにゃん、また来るね」

 私はギターを背負い思い出の河原を後にする。
 ふと背後に気配を感じる……懐かしいこの感じ……
 やっぱり約束通り来てくれたんだね。



241 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/14(木) 00:22:17.60 ID:Mw+eiwULo

 唯先輩、やっぱり来てくれたんですね……
 先輩が元気でやっているように私も天国で元気にやっています。
 私も忘れられませんよ、唯先輩と過ごした3年半の日々と最後の1年を。
 また寂しくなったらいつでも来てください、私はいつでもここにいます。
 
 私は生きた。あなたがいてくれたかけがえのない人生を。世界で1つだけの私の人生を……

                                   Fin



242 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(静岡県):2011/04/14(木) 00:29:01.42 ID:Mw+eiwULo

というわけでここで終わりです。

けいおんSS最近少ない>無いなら自分で書けばいいじゃん
>何かクロスでやろう>戦闘物やりたいけど描写難しい>じゃあドラマで

というのがこれ書いた理由です。
ちなみにこれのクロス元は「僕の生きる道」で作中出てくる金田先生はそっちのキャラです。
それでは読んでくれた人ありがとうございました。

次は重いのやめよう……w




243 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(大阪府):2011/04/14(木) 00:55:12.01 ID:9RiWNzDDo

おつかれさまです。。
涙が出まくりです。

本当にありがとうございました!
感動しました!



244 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/14(木) 01:13:23.87 ID:i7x9+uNIO

乙!泣いた!



246 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(関西地方):2011/04/14(木) 02:10:32.97 ID:eKDKBIJW0


本当にありがとう



247 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/04/14(木) 07:01:17.64 ID:ALks7t/uP


クロス元知らないけど泣いた



248 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区):2011/04/20(水) 08:36:47.76 ID:Bc7BpEnXo

馬鹿野郎泣かせやがって





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梓「Have A Good Die」#最終話
[ 2011/04/21 20:38 ] シリアス | | CM(9)

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タイトル:
NO:1666 [ 2011/04/21 22:25 ] [ 編集 ]

無理矢理ドラマと一緒にしてるから違和感が…プロポーズやら親がレズスルーやら…
人が死ぬ話って一番簡単に感動させられるんだよな。NHKの高校生放送コンクールでそんなんばかりだって偉い人が怒ってた。

タイトル:
NO:1667 [ 2011/04/21 23:56 ] [ 編集 ]

↓やっぱりそう思うよな

タイトル:
NO:1668 [ 2011/04/22 00:24 ] [ 編集 ]

確かに元ネタ有りという事で話はありがちで、
梓の病気が癌のままであるという事、梓の状況等には強引さを感じるが
皆のキャラ自体は十分に軽音部員に昇華されてると思う。
唯梓の名作の一つと考えても差し支えは無い作品ではないかな?

タイトル:
NO:1672 [ 2011/04/22 06:00 ] [ 編集 ]

元ネタ知らないからかもしれないけど、少し早送りしてるような印象だったかな。
展開と会話が淡々としてたというか。
あと最後の言葉に吹いてしまった…すまん……

タイトル:
NO:1673 [ 2011/04/22 09:31 ] [ 編集 ]

単純に良かった。ボロボロ泣いた。

タイトル:
NO:1691 [ 2011/04/23 21:48 ] [ 編集 ]

SSなんていつもはバラっと読むだけだけどこれは一気読みできなかった

タイトル:承認待ちコメント
NO:6685 [ 2012/08/08 07:44 ] [ 編集 ]

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タイトル:承認待ちコメント
NO:6705 [ 2012/09/05 19:55 ] [ 編集 ]

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タイトル:承認待ちコメント
NO:6748 [ 2013/01/26 23:37 ] [ 編集 ]

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