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律「そりゃあたしは、部長だからな」#中編 【SFホラー】


http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1283129546/l50/

律「そりゃあたしは、部長だからな」#前編




137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 14:38:40.61 ID:iSdzGiGo0


澪「おはよう、律!」

律「……おっす」

澪「どうした律、今日は元気ないな」

律「まーな……ちょい色々あってな」

澪「どうしたんだ。私でよければ、話を聞くぞ」

律「み……み…みおちゃーん!」

澪「な、なんだよやめろ!」

律「いてててて……いや、澪がいつもよりあまりにも優しいから、つい」

澪「お前……私はいつも通りだぞ」

律「……うーん、そうなのかな……そう言われてみればそんな気もする」

梓「律先輩、澪先輩、おはようございます!」





141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 14:43:07.30 ID:iSdzGiGo0

澪「おぉ梓、おはよう」

律「………梓もいつにも増して明るく、いい子に見える」

梓「何言ってるんですか律先輩、私はいつも通りじゃないですか」

律「……いつも通りって何だ、いつも通りって」

律「…………ごめん、最近ちょっと悩み事があって」

澪・梓「どうしたんだ」「どうしたんですか?」


――
―――



142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 14:44:46.21 ID:iSdzGiGo0

律(……ん…朝か…)

律(……最近夢の中で、現実での悩みを引きずってる気がするな…)

律(それにしても、夢の中の澪と中野さんは優しいよなー)

律(羨ましいなー、夢の中の私)

律(ん、でも、夢の中の私は、夢を見ている私であって……)

律(だとしたら、ずっと夢を見ていればいいんじゃないか?)

律(そしたら、現実を見なくて済む、いや、夢が現実になる)

律(………なんちって。いくらなんでもそりゃないっしょ)

律(………学校行くか)



146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 14:47:42.21 ID:iSdzGiGo0

律「おはよー澪」

澪「あぁ、律、おはよ」

律「なぁ澪、もしあたしが居なくなったら、どうする?」

澪「ん? ……なんだいきなり。また何か変なこと考えてるのか」

律「いやいやー、仮の話仮の話」

澪「そうだな………、悲しいだろうな」

律「そんで?」

澪「……すっごい悲しいと思う」

律「………それから?」

澪「うん、悲しいんじゃなかな」

律「……そんだけ?」

澪「そんだけって何だよ。お前が死んだら悲しいよ」

律「…………ま、そうだよな! 悲しいっすよねー、悲しいっちゃ悲しいっすよねー」

澪「? 変な奴……」



150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 14:53:32.63 ID:iSdzGiGo0

律(そして今日も授業が終わった……)

律(……さて、帰るか…)

律(……あー、学祭まであと3日か…全然関われてないな…)

律(…………学祭なんてなくなっちまえばいいのに…)

律(……全てが面倒臭いな)

律(あ、そういや)

律(元々あった軽音部の部室って、今どうなってるんだろ)

律(うわー、懐かしいな、音楽室。ここで4月一杯は一人で部員待ってたなー」

律(誰もこなかったけれどもさ)

律(まぁ、それは良い。で、この中って、どっか部活使ってるのかな…)



152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 14:57:54.42 ID:iSdzGiGo0

ギィ

律(誰も居ない。学祭期間中なのに)

律(……何か誰も居ない教室って、不気味だな)

律(黒板に、隅に寄せられた机……他は何もない)

律(…………去年の4月と何も変わってない)

律(お、この部屋、もうひとつ部屋があるんだ)

律(なになに……音楽準備室、か)

律(……何か気になったら止められない性格は、損ですよねー)

律(まぁ、何もないだろうけど、お約束ということで、開けちゃいますか)

律(………うわ、埃臭っ)

律(……………レコード、楽器……うわー、色々詰まってるなー)

律(足の踏み場もねぇや)

律(ん………奥の方に何か、ある。……何これ?)

律(え……、え? てか人? しゃがんでるけど、人……だよな?)



154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:02:53.81 ID:iSdzGiGo0

?「……!?」

律「!!」

?「り……っちゃん?」

律「え?」

?「りっちゃん……じゃない。どうしてここに。そうだ、あなたも気づいて、」

律「いや、別にこれと言った理由はないといいますか、てかあたしの名前を御存知で」

?「………そっか。こっちのりっちゃんは、私のこと知らないんだもんね」

律「……夢?」

?「とにかく、準備室の外に出ましょう」

律「…………あ、あなたは」

?「あ、初めまして、というのも変だけど……、私は紬。琴吹紬よ」

律「見たことある。てか、夢の中で会ったことがある。あなたが、琴吹紬さん、ですか」

律(……ほぉ、改めてみると、すごい可愛い……いや、高貴だ…
  ほっぺたとか微妙に触りたい気分…いや冗談)



156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:08:40.70 ID:iSdzGiGo0

律「まぁ色々聞きたいことは山ほどあるんだけど、まずどうしてこの部屋の中に居たの?」

紬「……居たかったから、かな」

律「そうかー、いたかったからかー」

紬「そうなのー、いたかったからなのよー」

律「はははは、って展開にはなりませんよね、琴吹さん」

紬「……ごめんなさい」

律「で、本当のところは」

紬「…………………」

律(お、ものっそい目がうるうるしてる。
  え、私女の子泣かしてる? でも質問してるだけだし……
  なんだこの罪悪感……)



157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:13:31.12 ID:iSdzGiGo0

紬「……信じてくれないとおもうけど…」

律「もう信じるも信じないもないから大丈夫、最近」

紬「私は、この世界じゃないところに住んでるの」

律「…………はい?」

紬「音楽準備室の隅の穴から抜けた先には、もう一つの世界があるの」

律「………………突っ込んだら負け?」

紬「りっちゃん、これは事実なの。事実なのよ。私も最初は信じられなかったけど」

律「ちょっと待ってストップ!!」

紬「!?」

律「………何か頭おかしくなりそうなんだけど。何?
  異世界? 何それ、おいしいの?
  もう何か最近訳分かんないんだよね。
  
  同じ夢ばっかみたり、夢と現実が微妙にリンクするけど完全にリンクしてなかったり。
  夢のせいで現実がカスみたいに見えたり
  あげくの果てには、誰かと共通の夢を見てたりさ」

紬「………」

律「もう沢山。もう沢山だよ。もうそういうのはイイ。
  退屈な世界も悪くない。退屈だけど、誰も傷つかない。
  ただ劣等感と無能感に堪えてれば、それで毎日が過ぎてく。
  けど、ここ1・2週間、何かを知る度にあたしは傷ついていく」



162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:22:02.35 ID:iSdzGiGo0


紬「……………」

律「なんか、もう、疲れた、かな」

紬「……りっちゃん待って。あと少しだけ耐えて」

紬「百聞は一見に如かずだと思う。
  ちょっとだけ行きましょう、あっちの世界に」

律「………」

結論から言うと、琴吹さんの言うことは
準備室の隅っこにある人が一人やっと通れる程度の穴を抜けた先には、
左右対称のもう一つの準備室があった。
そして、その準備室を抜けた先には……

紬「今部屋を出ちゃだめ」
律「おぅ!」

琴吹さんに思いっきり体を掴まれる。正直、結構痛い。

紬「みんなが来るわ」
律「みんな?」
紬「静かにして」
律「…………」

紬「……………」
律「…………………」

律「………………! え?」



167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:25:03.22 ID:iSdzGiGo0

「みおちゃーん、りっちゃーん、あずにゃーん」

「お、唯。何だよ今日も遅いじゃん」

「はぁ……はぁ…………やっと追試が終わりまして…今日からあたしは自由です!!」

「おぉ、良かったな!これでやっと学祭に向けて練習できるな!」

「おめでとうございます!」

「うっしゃあ、ボーカル兼ギター復活だ! あ、でもまだ紬は来てないみたいだな」

扉の向こうから、声がする。
聞いたことのある、声がする。

紬「驚きたい気持ちはわかるけど、お願い、今は声出さないで」

琴吹さんに、口さえも塞がれる。いや、そこまでしなくても……
そこまでされないと、私は大声で叫びだしていたに違いない。

澪の声。唯の声。中野さんの声。そこまではわかる。
何故接点のない3人がこんなに親しそうに戯れているのかとか、
唯が何故学校に来ているのかとか、
澪が練習できるとか言ってるのは、文芸部のことなのかどうなのかとか、

一番重要なのは、壁の向こう側から、ひとつ、耳慣れない声がすること。
嫌な予感がした。体中から汗が噴き出る。
嫌な予感がした。嫌な予感がした。



168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:27:53.57 ID:iSdzGiGo0

わかっていた。
そこに居るのは、私だ。


田井中律が、そこに居る。


律「……もう聞きたくない」
紬「…………そう」
律「…………苦しい」

本当に苦しかった。
胸が前後からきりきりと万力でしめられていくような感覚。

紬「……りっちゃんも音楽準備室に来たってことは、気付いてきた訳じゃないの?」

律「………気づくって、何にだよ…」

紬「……………いや、良いわ」

「そこに誰かいるのか?」

紬「…大変、りっちゃんが気付いちゃったみたい! りっちゃん、あっちに戻って早く!」

律「戻るって、どうやって……うぉ」

琴吹さんに尻を蹴られ、私は隅にある穴の方向へ飛ばされる。



169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:30:24.81 ID:iSdzGiGo0

「わっ!」

「うわ、びっくりした!」

「わーい、紬ちゃんだ!」

「ごめんなさい。
 みんなを驚かせようと思ったんだけど、出るタイミングを失っちゃって」

「あー、でも十分効果的だと思うぜ。なー、澪……って、おい澪?」

「……………」

「駄目だ、気絶してるみたいだ」

「澪せんぱーい、起きてくださーい!」

律「…………………」

これ以上聞きたくはなかった。
一刻も早く穴を抜け、元の誰も居ない音楽室へと急ぐ。

息が切れている。動悸がする。吐き気もする。
何だ、これは。
何なんだ、これは。

世界が、もうひとつ存在する。
澪が、唯が、中野さんが、もう一人ずつそこには存在する。
いや、まだ確証はない。ただ、声は同じだったというだけだ。確証はないんだ。



170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:33:28.24 ID:iSdzGiGo0

だがしかし。
突き飛ばされる刹那、視界の隅に移ったのは………
鏡と写真以外では見たことのない、あの顔。自分の、顔だった。

律「うぉ……えええええええええ………」
猛烈な吐き気。耐えきれずに、吐いてしまう。

どうなってるんだ。これは、本当にどうなってるんだ。
知らない世界があって、私がもう一人いるって。
信じられない。誰でも信じられないに違いない。
一番信じていないのは、当の私だ。

律「どうしよう……これから、どうすればいいんだろう」
頭の中がぐるぐると回りだす。ぐるぐるぐるぐるぐるぐると。
律「どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう……………
  どうすればいいんだよ…」

夢。唯。もう一人の自分。澪。冷たい澪。同じ夢。
穴。準備室。リンク。声。学祭。軽音部。ふわふわ時間。

律「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」



172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:40:19.19 ID:iSdzGiGo0

―――
――


律「その悩みっていうのがさー」

澪・梓「うん」「はい」

律「最近、同じ夢ばっかり見るんだよね」

梓「同じ夢、っと言いますと?」

律「同じ夢は同じ夢さ。それもひっどい夢でさ。
  私はすっごい淡泊な生活を送ってるの」

澪「淡泊? 律が淡泊な生活? 信じられないな」

律「一番信じられないのは私!
  でも、夢の中の私は、軽音部にも、何部にも入ってなくて、
  それで澪も冷たくて、梓とは知りあいでさえないんだ」

梓「うわ……何か嫌な夢ですね」



175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:47:25.67 ID:iSdzGiGo0

律「モンスターに追いかけられるとか、ナイフを突きつけられるとか、
  そういうアメリカホラー映画系怖さじゃないんだけど、
  じわじわくる怖さというか……
  梓はおろか、唯や紬もいないからな……」

澪「心配ごとでもあるのか?
  意識的にせよ無意識的にせよ、心になにか抱えてる時は、
  それが夢に反映されるって言うぞ」

律「それが、これと言って思い当たらないのが悩みって言いたいくらいで。
  もうそろそろ唯の追試も終わるだろ? 学祭に向けても、比較的順風満帆だし」

梓「おかしいこともあるもんですね」

律「だな。まーたかが夢だし、気にするのも野暮だけど、流石に毎日はきついんだよな……」

―――
――




178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:54:12.82 ID:iSdzGiGo0

次の日。
学祭の2日前。
私は学校を休んだ。

滅多に学校を休まない私が調子が悪いというので、
両親と弟は過剰に気づかってくれた。

その気遣いが、今は嬉しい。
熱もなく、風邪をひいている訳でもないのだが、
兎に角誰とも会いたくなかった。

そして、頭の中を整理したかった。
あの後、よたよたと保健室へ行き、3時間程寝てから家へ帰った。
唯に会いにも行かなかった。

その時は、ただひたすら寝たかった。夢を見たくもなかった。
何も考えず、頭を空にしたかった(結果として夢を見てしまうことにはなったが)。

一つの仮説を立てた。
私の夢は、あちらの世界の自分が見ている世界なのではないだろうか。
私が寝ている時に、断片的にあちらの世界の自分が見ている日常、
例えばどうでもいい会話とか、軽音部でドラム叩いてるとことか、
唯と澪からかってるとことか、等々が夢として自分の脳裏に入り込む。

その仮説が正しいとすれば。
いや、そんな非現実的な仮説を認めたくはなかったが、やむを得ない。
最近の訳分からない事柄に説明をつけるには、非現実的な仮説で対応するしかないのだ。

律(……これって、私が狂ってきてるってことなのかな?
  私には周囲の世界が狂って見えるっていうアレ……)

狂人にとっては、周囲の世界は狂って見えているらしい。
狂人は、自分が正しいと思い込もうとする。世界が狂っていると思い込む。

律(……だとしても)
だとしても、私は、自分が与えられている情報を信じるしかないのだ。



180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 15:59:13.26 ID:iSdzGiGo0

今の「同じ夢」を見始めたのは、つい3週間前くらいからだ。
最初は偶然かと思ったが、今まで途切れることなく、その夢を見続けている。

律(……その周辺にあったことはと言えば…)
律(………いや、特に何もないな。)
律(でも…その夢が微妙にこっちの世界にリンクしてるってことに気付き始めたのは…)
律(唯に会おう、って私が澪に提案して、実際に唯に会ってからだ…)
律(そこから、何だか自分にも歯止めが利かなくなって…)

知らなくても良いこと、というものは確実に存在する。
それを身をもって知らされた。

律「んで、こういう風にあたしは考えてるんだけどさ、唯」

唯「………」

律「ま、あほらしいって笑ってくれても良いぜ。自分でもあほらしいと思うし」

唯「…………」

律「でもあたしの仮説はさておき、あたしが経験してきたことは全て本当。
  もう一人の自分がそこに居たってのも本当。あ、そこにお前も居たぜ」

唯「………………」

律「すまん、誰かに話してないと、やってられなくてさ。こんな馬鹿らしいこと」

唯「………ねぇ、りっちゃん」



181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:04:41.13 ID:iSdzGiGo0

律「ん、何だ?」

唯「……なんで…なんで、紬ちゃんは居なかったんだろう?」

律「なんでって……そりゃ、琴吹さんは穴を通ってこっちの世界に来てたからだろ?」

唯「………ごめん。私が言いたいのは、
  ………紬ちゃんは「どっちの世界の」紬ちゃんかってことは、わからないってことだよ」

そういえば。
世界が二つあるならば、人物も二人居るはずだ。
こっちの世界の琴吹さんと、あっちの世界の琴吹さん。

律「……まぁ、そりゃまだわからないわな」

唯「………」

律「でも、いきなり何でそんなことを言い出すんだ?」

唯「………」


律「………でも、それは問題じゃない気がするぞ。
  あたしが会った紬があっちの世界の紬だったとすれば、
  こっちの世界の紬とあたしはまだ知りあって居ない。
  
  あたしがあった紬がこっちの世界の紬だったとしたら、
  あっちの世界の紬は、多分まだ音楽室に来ていなかった
  そういうことじゃないのか?」

唯「……………これ見て」



184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:12:37.42 ID:iSdzGiGo0

ドアの隙間から差し出される、A4用紙。
文字と写真が印刷されている。
YAHOOとかgoogleとかで普通に見れる、ニュースサイトのレイアウト。
これを読めということだろうか。

律「なになに…………」


女子高生殺害 他殺の可能性高し

○月×日( )、桜ケ丘高校グラウンド脇にて、生徒である琴吹紬さん(17)が遺体で発見された。
死因は絞殺で、首にひものようなもので絞められた跡が見られた。
○○警察は、詳しい死因と犯人の行方を調査している。

その記事の横には、昨日目にした琴吹さんの写真。
妙に神妙な彼女の面持ちが、昨日の彼女の印象と一致する。
しかし。夢の中の彼女は、もっと柔らかい印象だった………。

律「ってえ? うそ、ちょ、何、何コレ? 何なの、ちょっと唯!」

唯「………………」




185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:13:29.73 ID:97T6Cusn0

まさか…



186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:14:58.65 ID:otCJ7I/50

紬の野郎…





188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:17:50.39 ID:iSdzGiGo0

○月×日は、昨日。
死亡時刻は記事に書かれて居ないものの、
少なくとも、私が会っていた時に、琴吹さんは死亡していたことになる。

律「………………もうやめてよ、こういうの」

唯「……りっちゃん、落ち着いて」

律「もう嫌だ。もう嫌なんだって。もうやめよう。
  もう普通の生活に戻してよ。気持ち悪いよ。もうやめてやめてやめて」

唯「りっちゃん!!」

律「!?」

唯の鋭い声で、我に帰る。

唯「……今は、落ち着こうよ。ね、りっちゃん。
  疲れてるのは分かるよ。りっちゃん今まで頑張ってきたもんね。
  けど、今はちょっと我慢して」

律「…………ごめん」

唯「……いや、正直あたしも、
  いっぱい話すの慣れてなくて、疲れるんだけどね。ははは」



194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:25:38.78 ID:iSdzGiGo0

唯「この記事と、りっちゃんの紬ちゃんに会ったっていう話は、
  一見矛盾してて変だけど……だけど、」

律「………」

唯「ふたつの世界が存在してる、っていう紬ちゃんの話が仮に正しければ、
  りっちゃんの話も紬ちゃんが死んでるっていうこの記事も、何の矛盾もなくなるよね」

律「……つまり、」

唯「『どっちかの世界の紬ちゃんは死んでるけど、
   どっちかの世界の紬ちゃんは生きてる』ってこと。意味わかる?」

律「………なるほど。って、全然現実感も何もないんだけど、
  取り敢えず理論の上では合ってる、気もする。
  
  あたしも澪も唯も中野さんも、あっちとこっちの世界に一人ずつ居るんだから、
  仮にこっちの世界で一人死んでも、あっちの世界から一人来れば……」

唯「そういうこと………………つかれちゃった」

律「あー、お疲れ唯。唯がいきなり話すから、多少びっくりしちゃったよ」

唯「…………りっちゃん」

律「なんだ、まだ何かわかるのか、探偵ゆい」

唯「……明日、音楽準備室に行こう」

律「……………え?」



198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:33:09.49 ID:iSdzGiGo0

―――
――


律「大分イイ感じになってきた! この分だと学祭まで遊んでもいいくらいだぜ!」

澪「唯、お前追試勉強であんま練習できなかったのに、腕が全然落ちてないな」

唯「へへー、実は家で勉強しないで練習してたんだ」

梓「って先輩! 試験の方は大丈夫なんですか?」

唯「わかんない、けど何か、ギー太弾きたくてたまらなくなって」

律「……恐るべし天才肌、ギター中毒」

紬「私もスウェーデンまでピアノ持って行って、弾いてたよ、唯ちゃん」

律「……もう何も言うまい」

澪「でも何はともあれ、あとはさわ子先生の衣装が完成すれば……
  完成…しなければいいのに…」



199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:34:57.58 ID:iSdzGiGo0

唯「へへー、衣装楽しみだねー」

律「てか、いよいよ明後日なのに、まだ完成してなくて大丈夫なのか?」

梓「あの人なら何とかするでしょう……だって、さわ子先生ですもの…」

唯「さわちゃんなら、きっと何とかしてくれるよ! だってさわちゃんだもん」

律「まぁさわちゃんだしな!」

澪「……………そうだな…」

律「ちょっと澪ちゃん! 暗くならんといて! さ、次いくぞ、ふわふわ時間やろうぜ!!」

唯・梓・紬「おー!!」

―――
――




201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:43:08.24 ID:iSdzGiGo0

律(あっちの世界も学祭が近いみたいだな……)

律(時間までリンクしてるのか? まぁ今まで注意払ってなかったからわからないけど)

律(私も学祭ライブやりたいな……)

律(てか、あっちの世界に移住したい……もうこんな訳わかんないのに構ってたくない…)

律(いや……でも、行かなくちゃな。あとちょっと、頑張りますか)


律「え、今日学校休み?」

澪「知らなかったのか律?
  ほら、隣のクラスの琴吹さん、殺されたって言うだろ。だから、今日は学校休みだ」

律「あたしは昨日学校休んだから……いや、でもメールの1通くれたっていいじゃない」

澪「ごめん、つい知ってると思ってさ」

律(昨日一緒に学校行ってないもん、私が学校休んでるの知ってるだろ、こいつ)

律「じゃ、帰るわ。まぁどっちにしてもラッキーだしな」

澪「なぁ律」

律「んだよ」

澪「この頃お前、やっぱりおかしいよ」



203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:51:09.72 ID:iSdzGiGo0

律「ん、何が?」

澪「夢の話した時辺りから、突飛なこと言いだしたり、
  何かいつもイラついてたり……怖い。
  目つきがさらに悪くなってるしさ。何か悩みあるなら、共有しようよ」

律「……どの口がそんなこと言ってんだ」

澪「!?」

律「………今まで全然親身でもなく、
  ただ一人で学校行きたくないから私をお伴にしてただけの癖に。
  
  全然私に構ってもくれないしさ。変わったのはお前の方だろ、中学の頃からさ。
  文芸部文芸部言ってさ。挙句の果てに、昨日はメールもくれないし。
  一体何考えてるんだ、お前?」

澪「…………ごめん」

律(……何か言い返せよ、やりづらいから…)

律「……帰るから」

澪「…………」
  

律「ゆいー! 来たぞ! お前学校行きたいんだろ!」

唯「…………りっちゃん…ちょっと待って」



204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:52:35.87 ID:iSdzGiGo0

ドアが音を立てて開く。
埃が舞う。形容の出来ない、
思わず鼻をつまみ顔をしかめてしまう程の臭いが、鼻をつく。

そして、暗闇から、出てきたのは、紛れもなく、平沢唯だった。
白い肌はさらに白くなり、髪は腰のあたりまで伸びている。
清潔感のかけらもない。

前髪が伸びているので、目を見ることはできない。
けれど、その口元と輪郭から、私にはわかった。
ピンク色のパジャマの上下を着た、とても細身の少女。
彼女は、平沢唯だと。

唯「……お待たせ」

律「おぉ………久しぶり」

唯「………りっちゃんに会うの、初めてなんだけどね」

律「まぁ何と言うか……私もあんまし久しぶりって感じではないな」

唯「……いっつも夢で会ってるからね」

律「ですよねー!」

唯・律「はははは!!」

律「でも、流石にその格好じゃ、外に出ちゃいけないわ。
  ちょっと憂ちゃんにも頼んで、身づくろいしてから行こう」



206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 16:59:18.58 ID:iSdzGiGo0

憂ちゃんは、はしゃぎまわりながら唯の身だしなみを整えるのを手伝ってくれた。
一緒に風呂場に入って体洗ったり、
自分の服の中からおしゃれな服をチョイスしてくれたり……
てか、学校行くんだから、服チョイスしてもらってもあんまし意味ないよ!

律「うっし、あとは学校行く途中に美容院に行けば、一丁上がりってところかな」

唯「……りっちゃん、実はまだあんま外に出る心の準備が、
  ……そこまで出来てなかったりして」

そういえば、半年引きこもって口の聞いてなかったのに、
ここ2週間でいきなり外に出るのは、唯にとっても大変だろう。
それほどまでに唯を駆り立てるものって、一体何なんだろう?

美容室に行った後(夢の中の唯と全く同じ髪型になった)、私たちは学校へ向かった。
唯は、とてもゆっくりと歩いた。私はそれに歩調を合わせる。
一歩一歩踏みしめるように歩き、
桜高に着いたのは、午後1時をちょっと過ぎたくらいの時間。

唯「……誰も居ないね」

律「…………そりゃ今日学校休みだからな」

唯「でも、パトカーが居るね」

律「……見つからないように入れってことか」



209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:08:36.97 ID:iSdzGiGo0


しかし、案外忍び込むのは簡単だった。
琴吹さんの遺体はグラウンドで見つかったらしく、
校舎の中まで警察は入ってきて居なかったのだ。

それは詰めが甘いとしか言えない、
と私たちは彼らに詰め寄りたくなる気分になるのだが……。

私たちは今、音楽室の中の、音楽準備室に居る。
一昨日と、何も変わっていない。
私の吐瀉物までそこにあった……

唯「なんかゲロ臭いね」

律「だって、そこにゲロあるもん、しゃーないじゃん」

唯「まー、そうなんだけど」

唯は肩で息をしている。音楽室に至るまでの階段を昇るのが苦しかったらしい。
人が沢山居たら来れたかさえもわからない、と言う。

唯「……人自体が、怖いんだ。憂とりっちゃんとかは大丈夫なんだけど」

律「そういや、お前の不登校に至る経緯とか……聞いてなかったな…」

唯「……………ごめん、きいてほしくないんだ」

律「わかってるって! で、何でここに来たかったんだ、唯?」

唯「それは……」



214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:13:49.96 ID:iSdzGiGo0

唯は私を真っすぐに見据える。

唯「あっちの世界に、行ってみたいんだ」

律「そんな予感はしてました」
  そうじゃないと、ここに来ようとは言わないだろうし。

律「……正直、私はそこまで気乗りしないんだけどな」

唯「ごめんねりっちゃん。
  私、りっちゃん居ないと、ここまでさえ来れないだろうから」

律「憂ちゃんに頼めばいいじゃん」

唯「憂に変な話して、これ以上困らせたくないんだよ」

律「……それもそっか。で、何であっちの世界に行きたいんだよ。
  正直、私はあんまし行きたくはないよ。
  だって、自分がもう一人居る世界なんて、奇妙で奇妙で、
  正気を保ってられるかわからない」

唯「……私、生まれ変わりたいんだ」

律「………ん?」

唯「そこの窓、見て」



216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:17:43.35 ID:iSdzGiGo0

また何かがあるのか、と指差された方の窓に目をやると……

律「いや、どこにでもある普通の窓だけど」

唯「いや、その窓の下の方」

律「…………ん?」

確かに、何か傷ついたみたいな跡が……何か引きずったみたいな、いや、側面に?
でも………その赤黒い跡は……駄目だ、わからない。

唯「あれ何か分かる?」

律「分からないけど」

唯「……この窓の下、何があるか分かる?」

律「何って、グラウンド…………あ」

唯「………そういうことだよ」

頭の中で整合性を持たなかった情報が、今整列した。

律「じゃ、紬の遺体は、この窓から……」

唯「誰が投げたかっていう明確な証拠はないけど……、
  けど、「推測する」ことは出来るよね
  あれが音楽室から死体を投げる時に引っかかっちゃった跡だってことくらい」



218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:23:10.97 ID:iSdzGiGo0


律「もう、言わなくていい」

唯「………」

だいたいわかったから。
だいたい唯がしたいことが、わかったから。
恐らく、恐らくだけど、
琴吹さん……紬がしたことは、唯としたいことと同じなのだろう。

律「………じゃ、行くか」

音楽準備室のドアに手をかける。
これからどんなことが起こるのか、私は知らない。
音を立てて開くドア。

唯「……うん」

二人で中に入る。

そして、雑多に置かれ、つみあがった物の奥に、私たちはその穴を見る。
しかし、その穴からは微かな光も見えなかった。
いや、比喩的な意味ではなく。

どんなに暗いところでも、ちょっとでも光があれば、
目がその光をとらえて穴の輪郭を浮かび上がらせるはず。

律「ま、取り敢えず行ってみましょっか」



222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:28:49.42 ID:iSdzGiGo0


穴に頭から入る。そして、奥行き30センチ程度のその穴を抜けようと試みるが……

律「痛っ!」

頭を思い切り何かにぶつける。
何これ、何か置いてある? それとも、

唯「どうしたの、りっちゃん」

律「いや……穴が、塞がれてるみたい」

律(ベニヤ板……か? それだけじゃなさそうだけど……
  とにかく、何かであっちから塞がれてるみたいだ)

唯「……………」

律「………どうしよ」

唯「…………………」

律「……わかったよ、何とかするよ」

唯の視線を後ろに感じながら、私は穴に手を入れる。
そして、満身の力を入れて、穴を塞ぐ「何か」を押す。押す。押す。
パンチしてみる。何度も何度も。



223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:33:45.40 ID:iSdzGiGo0


6回くらいの試みで、それは少し壊れた。微かな光が私の目を捉える。
ただの板だ。もっと塞ぐなら頑丈なものでしないとな。

律「おい唯、この部屋に鋸とか無かったっけか?」

唯「……ない、んじゃないかな。ごめん」

律「勿論持ってる訳もない、っと」

唯「…………ごめん」

律「わかったよ、蹴り壊しますよ」

ガツガツガツガツガツガツガツガツ

と、何度も何度も蹴っている内に、板が後ろに倒れた。
どうやら両端から釘か何かで打ちつけられていたらしい。
塞いだ人、詰め甘っ!

いや……でも、ただでさえ暗い音楽準備室で、
塞がれた小さな穴に気付く人って…
塞ぐことが狙いじゃなくて、気付かせないことが狙い?

律「ま、良いんだけどね。行こうぜ、唯」
唯「……静かにね。誰か居るかも知れないから」



227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:41:03.62 ID:iSdzGiGo0

そして、「あちら側の世界」の音楽準備室に到達。
もう後戻りは出来ない、のかな。今なら引き返せるけど。

律「……外から音はしないな」

唯「そうだね」

律「誰も居ないのかな」

唯「…………」

ドアを少しずつ、ゆっくりと、音がしないように開ける。
恐る恐る覗き込むと、そこは、音楽室だった。
私たちの世界と、間取りと奥行きは全く同じの音楽室。
しかし、そこに存在する物品は、全くの別物。

ホワイトボード。沢山の落書き。「学祭頑張ろう!」の文字。
二つ連結した生徒用机の周囲に配置された椅子6つ。
黒板の周囲には、ドラム。キーボード。
壁に立てかけられている、ベース。

人は誰も居ない。助かった……のかな。

律「誰も居ないみたい」

唯「……そっか…よかったよー」



229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:46:51.53 ID:iSdzGiGo0

唯がへなへなと体勢を崩す。

唯「…………疲れがどっと出てきちゃった。猛烈に眠いよ、りっちゃん」

律「ちょっと今寝られるとまずいっす、唯隊員」

唯「わかってるますですよー、りっちゃん隊員」

「おぉ、律に唯、先来てたのか」

唯・律「え!」

視線をドアの方向へ。
そこには、……澪が居た。
正真正銘の、秋山澪だ。
あー、もう目にしちまった。澪が居るのを目にしてしまった。
自分の姿を視線の隅で見るってのと訳が違う。言い逃れは出来ない。
これで、あっち側の世界が存在するってのは「確定」って訳だ。

澪「どうしたんだ、二人とも。何か怖いものでも見たみたいな顔してるけど」

唯「……い、いやぁ、みおちゃん、これはですね、その、

律「あぁ、唯の奴が私のケーキ食べやがるから、
  ちょっとお仕置きしてやろうと思ってたんだけどさ、
  でも唯の野郎抵抗し始めて、そんでちょっと取っ組み合いしてたんだー、
  はは、ははははは」

何度も夢に見た、このシチュエーションが、そのまま役に立つなんて。



234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:50:45.38 ID:iSdzGiGo0

澪「? ……ん、ま、良いけどさ」

疑問が残るようだが、そのまま澪は椅子に座った。

澪「あー、明日学祭ライブ本番なんて、信じられないよなー」

律「……あ、あぁ、そうだな」

唯「そ、そうだね。全然、しんじられない、よねー!」

何故か片言で話す唯。私も似たようなものだが。

澪「……二人とも、何だかおかしいぞ。どうしたんだ」

唯「いや、これはですね……ちょっと緊張してしまいまして、
  ほら、明日学祭のライブだし? ね、りっちゃん」

律「あぁ、そうだな。それに澪、今私は猛烈にトイレに行きたいんだ。
  いや、唯もトイレに行きたいんだよな。なぁ、唯?」

唯「う、うん、そうなんだよみおちゃん、
  今結構やばい状態なんだよ、ちょっと行ってくるね!」

と言うや否や、私と唯は、猛スピードで音楽室の外に出る。
そして、猛スピードで1階のトイレへと駆け込み、
どちらが示し合わせることもなく、同じ個室に入った。



245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 17:58:37.00 ID:iSdzGiGo0

律「あー、びっくりしたびっくりした、死ぬかと思ったー」

唯「…………死ぬ、ってか死ぬ寸前まで行ったよ、アレは……」

お互いに息絶え絶え。そして、お互いに笑う。

律「ははははは、澪の奴、何も理解できてないって顔だったぞ!
  まさに「ポカンとした」って表現がぴったり!」

唯「そうだねそうだね! あんなにポカンとしたみおちゃん、始めてかもしれない!」

律「けど唯、お前澪と知りあいじゃないだろう!」

唯「……いや、まぁ…その、りっちゃん……ん…まぁ、夢で会ってますし、ね?」

律「ん? ま、そうですか」

それにしても。今後どうすればいいんだろう。

律「なぁ、唯。私はお前がしたいこと、だいたい推測はできてるんだけど、
  具体的にどうするのか、とか、段取り、とかは一切聞いてないんだ」

唯「……そうだね。でも、その前に、ちょっとだけ休ませて」

律「……うん、わかった……って、ちょっと待って唯、ここで寝るのかよ!
  寝るんなら、あたしが出て行った後、自分で鍵閉めてからにしてくれよ!」



247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:05:44.50 ID:iSdzGiGo0


唯は微かに微笑みを浮かべた

私は唯に感じている違和感。
それは、今私の目の前に居る唯は、夢の中の唯とは性格が違う、ということ。
外見はほぼ全く同じ(目の前の唯は、結構痩せて色が白いけど)、声も同じ、
服装も(夢の中の制服を着ている唯と)同じ。

だが、性格は大分異なる。
夢の中の唯は、何というか、もっとぽえっとした感じ。
頭もそこまで切れないし、もっと単純だし、もっと子供だ。
だけど、温かみがあった。人を惹きつける温かみが。

一方、こちらの唯は。
頭の回転が速い。私が提示した情報で、すぐに結論を導き出す。
喋り方も、幾分知的だ。
だが……、冷たい。目に宿る温かさも、消え失せてしまっている。
私は、夢の中の唯と目の前にいる唯を、別人と捉えてることが出来る。

そんなことを言えば、澪だって少し違う気もするが、基本は同じだ
(中野さんは会って日数が浅いので、わからない)。

なのに、何故唯はここまで違うのだろう。



250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:13:37.28 ID:iSdzGiGo0

なんてことを考えながら、廊下を歩いてみたりする。

生徒でごった返している。みんな楽しそうに笑って、大道具を作ったり、
劇の練習をしたり(わざわざ衣装まで着て!)、衣装を作ったり、
屋台の宣伝ポスターを作ったり。1年前に経験した学祭も、こんなんだったっけか。
勿論、あまり関わっていなかったので、良い思い出はないけれど。

またブルーな気持ちになる。
でも、ひとまず、だ。
知人に会ってはいけない。特に軽音部の面子とは。あと、「自分」と会っては駄目だ。
それこそ大問題。私はここには居られない(まぁあちらの世界に帰ればいいんだけど)。
けど、唯の願いを叶えてやるまでは、こっちに留まらないといけないからな。
あんま人目につかないところに行きたいところではあるな。

?「あ、りっちゃんじゃん」
律「ん?」

全然知らない女子。ジャージの色からして、私たちと同じ学年か。

?「軽音部の練習行ったんじゃないの?」
律「あー、そ、そうだったんだけど、ちょっと用事が出来ちゃって」
?「そうなんだ。その用事って何?」

笑顔で問い詰められる、私。笑顔で問い詰める、相手。
何なんだ、この構図は。



252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:21:56.33 ID:iSdzGiGo0

律「な、何って言われても」
?「大事な用事じゃなかったら、クラスのお化け屋敷手伝ってよ」
律「………んー」

これは、大丈夫なのかな?
もし軽音部のメンバーとか居たら……面倒なことになるな。
そこに唯とか紬とか居たら……特に紬は面倒なことになる。
あと、私とか居たら、大惨事。

?「あ、その顔は大丈夫ってことだね。じゃ、はい来る来る」
律「あ、ちょっと」

引っ張られるがままに、クラスへ。
クラスの中に引っ張られていく私。
中には、ジャージ姿で作業しているクラスメイト多数。
きょろきょろ見渡すが、幸いなことに軽音部の皆さまは居ない……らしい。

様々な角度から、クラスメイトが私に声をかける。
?「え、りっちゃん何で制服なの?」
?「またりっちゃんサボろうとしてたでしょ」
律「え、制服なのはちょいジャージが洗濯中だからで、サボるってのは、
  いや、軽音部の練習の時間がずれたの、サボりではない!」
?「まーたそんなこと言って」
律「あー、まー、本当かどうかはわからないんだけどね」
と、小さなこえで付け加えておく。



257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:29:18.07 ID:iSdzGiGo0

?「唯ちゃんと紬ちゃんは?」
律「し、知らねーけどな。買い出しとかじゃね?」

買い出し、とそれっぽい言葉をつけておけば、ごまかせるかも、という安直な考え。

?「じゃ、早速だけど、手伝ってね。そのすずらんテープ、そっちにつけて」
律「は……ははぁ…」

と、何となく断れない流れを形成されてしまう。
私、こういうの断るの苦手なんだっけ。

漫然と作業をしていく。クラスメイトとの会話を楽しみながら。
……会話を楽しみながら? 何て私らしくない言葉!
高校入ってから、クラスメイトと会話を楽しむなんてことがあったっけ?

最も、周囲から言葉なんてかかってこないから、
別にこちらから会話を投げ返さなくて良いし、楽なんだけどさ。

それでも、少しだけ、楽しくなった。学祭の準備。
このクラスには、私が顔を知ってる奴らもちらほら居た(勿論話したことある奴は稀だけど)。
けれど、その話したことない奴らでさえも、私に話しかけてくれる。

律(これは……)

これは、こっちの世界の私が、クラスに溶け込めるってことなんだろうな。
お調子者で面白いりっちゃん、って感じ。
中学までは私もそんなんだったから、懐かしい気分。

そして、ちょっとこっちの世界の私に嫉妬。

と。
ふと時計を見ると、17時ちょっと過ぎ。



258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:33:31.51 ID:iSdzGiGo0

作業始めてから1時間は経ってるじゃん。我に返る。
駄目だ! 温かさと懐かしさに埋没していた。
ここに居ることで、どんどん知りあいに会う確率が上がってくじゃん!

律「ごめん、今度はまじで軽音部の練習あるんだ!
  明日ライブだから、勘弁しておくれ!」

とか言い捨てて、私は教室を出る。
皆、何やかんや言いながらも、
「頑張れー」「ライブ楽しみにしてるよー」とか優しい言葉をかけてくれた。

優しい言葉を。

あー、本当にもう、わけわかんない気持ちにさせられる

早足で1階女子トイレに向かう。唯を起こす為だ。
無駄な動きなく唯が眠っているはずの個室へと、向かう。
向かうのは、良いが。

ノックする。
返事がない。
律「ゆーいー」
返事がない。

激しくノックしていると、気付く。
このドア、鍵がかかっていない。ということは。
急いでドアを開ける。
そこには、誰も、居ない。
誰もいないということは、唯が居ない。

そこは、確かに唯と私が別れた個室だった。
唯が、疲れたから眠る、と言って別れた個室だ。



259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:39:01.73 ID:iSdzGiGo0

……どうしよ。
あー、こんな可能性もあるってどうして事前に予測できなかったんだろう!
ずっと唯と一緒に居ればよかった!
もしくはこれが唯の狙い?
私の役目は別の世界まで連れてくるところまでですかい?

律「………わかんないけど」

取り敢えず、今は安全なところに身を隠そう。
学校を出よう。明日が学祭ライブなら、
軽音部メンバーは遅くまで練習に励む……はず。
だから、ここは元の世界に戻った方が安全だ。

……しかし。
冷静に元の世界とかこっちの世界とか考えている自分にも
多少戦慄を禁じ得ないが、そんなことより。

世界の間の出入り口が、音楽準備室にあるんなら、
軽音部が練習している限り、元の世界へは帰れないじゃん。

……ため息を一つ。
兎に角、学校から出よう。どっか喫茶店でも入ろう。そこで色々考えよう。
話は、それからだ。



260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:45:33.84 ID:iSdzGiGo0

学校の近くのファーストフード店
(この世界は地理は全く元の世界と同じ。学校の構造も然り。
 違うのは人間が置かれている境遇だけか?)
で、時間を潰す。

取り留めもなく考える。
唯の目的は、恐らくこの世界の自分の殺害。
そして、この世界の自分にすり替わって、
何事もなかったかのように、この世界で生きる。

「生まれ変わりたい」ってことはそういうことだろう?
加えて、紬はもうそれをやってる、はず。
あの窓の血痕は、わざわざ紬がこっちに死体を持ってきて、捨てたことの証拠。

そして、現にこっちで紬の遺体が発見されている。
……完全犯罪だよなー。自分が自分の殺人者なんて。
尚且つ自殺じゃないって、新しすぎるよ、犯罪の形体が。

そして、私の目的って何だ?
それは、最初からわからなかった。
私に、明確な目的がない。

唯をここに連れてくるってのは達成したけど、それからのことを全く考えていなかった。
……いつもの悪い癖だ。
私も唯や紬みたいに、自分を殺して、ここで生活するか?
それもありっちゃありかも知れない。
元の世界の自分なんて、死んでるようなものだし。

それもいいな。
それもいいかも知れない。



264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:51:44.00 ID:iSdzGiGo0

と、考え込んでる内に寝てしまったみたいだ。
店内の時計を見る。22時ちょっと過ぎ。
やばい、寝すぎた。どうしませう。

学校へ戻ろう。そして、元の世界に帰ろう。安全なところで考えるのが先だ。
帰ってくる必要が出れば、また帰ってくれば良い。……また塞がれてたらどうしおう。
ここは危険すぎる。

唯や紬が、私を殺す危険もない訳じゃない。

背筋が凍える。殺される。
文字にすると仰々しいが、それはあくまで「リアルな」言葉。
現に、一人死んでいる。

小走りで学校へと向かう。日は当たり前ながら完全に沈んでおり、
街灯の明かりが点々と歩道を照らしている。

「じゃ、また明日ねー」
「……おぅ! 風邪引くなよ、唯!」
「ひかないよ!」
「風邪ひいて憂ちゃんを替え玉にするとか、しないよな」
「あ、それもありかも」
「ありかも、じゃないですよ!」
「じゃーね、みんなー!」

と。
何てタイミングの悪い。
軽音部御一行様のお帰りだ。



268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 18:57:32.84 ID:iSdzGiGo0

横断歩道を挟んで、私の方の歩道に、唯と中野さん。
向こう側の歩道に、澪と……田井中律、つまり私。
紬は居ないみたいだ。

梓「いよいよ明日なんですね、ライブ」

唯「あずにゃーん、緊張してるの? 私が緊張ほぐしてあげる!」

梓「うわ、抱きつかないで下さい!」

唯「えー、だってあずにゃん抱きつき心地がいいんだもーん」

梓「ん……そんなこと言ってる唯先輩が一番緊張してるんじゃないですか?」

唯「……ばれちった、てへ☆」

梓「そうだったんですか……」

やばい、何も考えられない。逃げられない。
どんどんこっちに向かってくる二人。もうこれは、覚悟するしか。

唯「あ、りっちゃん」

梓「あれ、律先輩、どうしてこっちに? 澪先輩はどうしたんですか?」



270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:01:40.04 ID:iSdzGiGo0

唯「あ、りっちゃん」

梓「律先輩、どうしてここに? 澪先輩はどうしたんですか?」

律「あ、な、なんといいますか、これは、その」

唯・梓「?」

律「澪は疲れたから眠りたいって言ってたんだけどさ、
  わ、私は何か緊張しちゃって、もうちょっと、みんなと話したいな、
  っていうか、……ん、」

唯「あー、りっちゃんも緊張するんだねー、いがいー」

梓「……いえ、律先輩が澪先輩の次くらいに、隠れて緊張している
  タイプかと踏んでいましたが、まさか本当にそうだとは」

律「う、うっさいな! 誰だって緊張くらいするわ!」

唯「そうだよねー、ライブの前って、
  いっつもご飯食べられなくなるくらい緊張しちゃうよねー」

梓「……立話も何ですし、公園でも行きましょうか?」

律「そ、そうだな。それがいいな、ははは、ははははは」
(これは……ごまかせた、のか?)



276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:08:47.46 ID:iSdzGiGo0

近くの公園へ。
勿論、私たち以外は誰も居ない。
唯と中野さんと私。一つのベンチに座る。
少しだけ肌寒い。

唯「この3人って、何か珍しい組み合わせかもー」

梓「言われてみれば、そうかもですね」

律「…………」

唯の顔を見る。そして、確信する。
これは、元の世界の唯じゃない。「ここの」世界の唯だ。
喋り方も違うし、言葉の節々に怯えが感じられない。
私が毎日夢に見ていた唯だ。

唯「りっちゃん、ねぇりっちゃん」

律「ん? なんだ、なんだ唯?」

梓「……律先輩、相当緊張してるみたいですね、ふふふ」

律「ふふふって何だよ? し、仕方ないだろ!」
あなたがた思ってることとは違う意味で緊張してるんですけれどもね。

律「……そりゃ、緊張もするさ。こんな状況だとさ」

梓「………まぁ、そうですよね」



278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:11:52.96 ID:iSdzGiGo0

梓「覚えてますか、先輩。今年の4月のこと」

律「4月?」

唯「勿論覚えてるよー、あずにゃん。
  あずにゃんが軽音部に入ってきてくれたんだよね!」

梓「まぁそれもありますが」

唯「そんで、わたしたちがふまじめだったから、あずにゃん怒っちゃったんだよね…
  あの時はごめんね、あずにゃーん」

梓「そんなこともありましたね……けど、私が言いたいのはそれじゃないです」

律「………」

梓「新歓ライブのことですよ」

唯「新歓ライブ……」

梓「前も言いましたけど、先輩方の演奏が、すっごくかっこよくて。
  あ、上手! っていうのじゃなくて、かっこいい! って感じでした」

律「それを区別する必要ってあるのかよ」
思わず突っ込んでしまう。



281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:18:20.41 ID:iSdzGiGo0

梓「すみません。けど、私が言いたいのは、上手くなくたって良いってことです。
  上手くなくなって、カッコいい演奏が出来れば、それで良いんです。
  変に気負う必要はない、魂込めた演奏が出来れば、それで十二分です」

中野さんは……梓は、私に向かって微笑みかけた。
目を細めて。首を少し傾げて。
その笑顔を街灯が照らし出す。
無音。自分の心臓の鼓動しか、聞こえない。

律「……梓」

梓「す、すみません、偉そうに語ってしまって……
  けど、律先輩と唯先輩に、ライブの前に伝えておきたくて…」

唯「あずにゃーん……ありがとうぅ……」

梓「うわ、ゆ、唯先輩、何故にここで泣くんですか?」

唯「だって、何か感動しちゃってー!
  私は絶対カッコイイ演奏するよ! 歌詞も絶対間違えない!」

梓「そこからですか!」

唯「基本は大事だよー、ってあずにゃんが言ってたんじゃんー」

梓「それはあまりにも基本すぎます!」



287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:24:02.41 ID:iSdzGiGo0

2人は、楽しそうに笑う。
屈託なく、笑いあう。私も、つられて微笑んでしまう。

そして、何故か泣きそうになっている。意味もわからず。
ただ、ただ、この人たちは、特別なことは言っていないはずなのに。
ただ夢の中で話すように、楽しそうに話しているだけなのに、何で。

律「……なぁ、梓」

梓「はい、なんですか……って、律先輩まで泣いてるよ…」

律「な、泣いてなんかいないやい、これは汗だい!」

梓「はいはい。で、何ですか?」

律「あのさ、」

律「もしも、だよ」

梓・唯「………」

律「もしあたしがさ、突然消えたら、どうする?」



293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:29:33.32 ID:iSdzGiGo0

梓「絶対そんなことはさせません」

唯「りっちゃんは消えないよ」

即座に、二人とも、同時に答えた。

梓「もし消えても、探します。探して探して探しまくります」

唯「だって、りっちゃんが消えたら、すっごい泣いちゃうもん、わたし。
  だから、りっちゃんは消えたりしないの」

律「………ははは、二人とも、全然支離滅裂じゃん!」

梓「そ、そんなことないですよ!」

律「だって梓、私が消えるんだから、探しても見つからないの!」

梓「でも探すんです! 見つかるまで探すんです!」

唯「あずにゃん、わたしも探す! あずにゃんと一緒に探す!!」

律「じゃ、私が死んだら……」

静か。とても、静か。

律「私が死んだら、どうするよ?」



297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:37:39.84 ID:iSdzGiGo0



梓「……………」
 黙り込む梓。
 目に涙を浮かべて、口を一の字に結ぶ。

梓「な、なんでそんなこと聞くんですか、なんで……」

唯「だから、りっちゃんは、死んだりなんかしないよ、私は信じてる!」

唯の声は、明るい。ように聞こえる。しかし、それは確実に震えている。

唯「だって、りっちゃんは、みんなの頼れる部長だもん。
  だから、みんなを悲しませたりなんかしないんだよ。
  りっちゃんは意地っ張りだから、死にそうになったとしても、
  どうでもないよう顔で学校に出てくるの。そして、またお菓子食べたり、
  ドラムたたいたり、みんなで笑ったりするの
  ね、りっちゃん、そうだよね?」

律「…………」

梓「もし律先輩が死んだら……許しません」

律「……」

梓「律先輩が死んだら、私が先輩を許しませんからね。
  絶対死なないで下さいね、消えるとか言わないで下さいよ、
  …………うわあああああああああああん!!」



298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:43:12.51 ID:iSdzGiGo0



唯「でも、なんかりっちゃんが死ぬとか、考えたこともなかったね。
  考えるだけで、なんか、なんか、なんか、かなしくなるよ」

唯「りっちゃん、きえたらやだよ」

唯「絶対だよ、ぜったい消えちゃいやだよ?」

律「……わかった。わかったから、二人して抱きつかないでくれるか?」

ベンチに3つの影。
中央の影は私の影。
両脇に、唯と梓。
わんわん泣いてる、唯と梓。
誰か居たら……恥ずかしいけど、ま、いっか。

何で、この人たちは、人のことを思って、泣けるんだろう。

律「……ごめんな、唯、梓。変なこと言って」

律「………あたしは消えないから。安心しろ。
  ただ、ちょっと怖くなっちゃってさ。色んなことが」

律「……だけど、もう大丈夫。あたし、決めたから」


律「ありがと」



306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:51:10.04 ID:iSdzGiGo0

―――
――


澪「……なー律」

律「ん、何?」

澪「明日のライブ、楽しみだな」

律「あー、確かになー!
  私たちの調子も絶好調だしな!」

澪「……なぁ、律?」

律「ん?」

澪「いつも、ありがとな」

律「な、な、なにオッシャッテルノミオチャン?」

澪「……いっつも言う機会がないからさ」

律「……ハイ」

澪「ありがとう。お前と居ることができて、幸せだ」

律「へ、へーん、ありがとうって言われたからって
  こっちからありがとうって返すと思ったら、大間違いなんだからな!
  淡い期待してんじゃんーぞ、このばかみお!」



308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/30(月) 19:52:19.45 ID:iSdzGiGo0

澪「……ふふ、わかってるよ、りつのばーか」

律「………ははは」

澪「ははははははは」

律「よっしゃ、あの夕日に向かってダッシュだ!」

澪「もう真っ暗だよ! 夕日のゆの字も見えないよ!」

律「馬鹿野郎! 根性だ、少年!元気があれば、何でもできる! 澪、ありがとう」

澪「…………ふふふ」

律「じゃ、みおの家まで、最初に着いた方が勝ちね」

澪「え、私の家、律の家より近いんだけど」

律「関係ねぇやい! じゃ、位置について、よどん!!」

澪「よどんって何だよ、あーもう、律のばーか! ばーか! ははは!!」


――
―――



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