SS保存場所(けいおん!) TOP  >  ガンダム >  唯「グリプス戦役!」#最終話 生命 散って

お知らせ

SS保存場所は移転しました。
現在けいおん!関連の更新はしていません。
今後更新するかは未定です。
SS保存場所






唯「グリプス戦役!」#最終話 生命 散って 【ガンダム】


ニュー速VIP避難所(クリエイター) より

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1284974948/l50


唯「グリプス戦役!」#index




304 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:40:54.62 ID:COaJwCIo

最終話 生命 散って

純は、コロニーレーザーを真横から見ていた。
発射されているが、光はところどころ途切れている。
光が見えているところは、ゴミの多い宙域である。
それらがレーザーを受けて発している光なのである。
何も無いところでは、レーザー光は正面からしか見えない。

純「これで、アクシズは月には落ちませんね。」

アクシズは、グラナダへ落下する軌道をとっていた。
それを今、コロニーレーザーで防いだところなのだ。
純はほっとしたが、それで終わりではない。

和「見て、敵が来るわ。」

和は、のんびりと景色でも見ているように、言った。

姫子「あっちからも来るよ。アクシズ艦隊かな?」

まるで、祭りが始まるような気持ちだった。
きっとこれで、終わる。確証はないが誰もがそう思っていた。





305 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:41:34.87 ID:COaJwCIo

和は出撃前、艦長室にいた。

和「いきなり呼び出して、どうしたのよ?」

艦長「君の指輪を、くれ。」

和「嫌よ。あなたがくれたんじゃない。これは私のお守りなの。」

艦長「君には、これをやる。取り替えるんだ。」

そう言って、艦長は自分の指輪を差し出した。

艦長「必ず帰ってくるんだ。そうしたら、また交換しよう。」

和は、それを聞いてにこりと笑った。

和「分かったわ、私がちゃんと帰ってきて、二人が一緒にならないと使えないってことね。」

和はそれを紐に通して首から下げ、ノーマルスーツの下に滑り込ませた。



306 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:42:04.49 ID:COaJwCIo

和「ねえ、出撃前に言って欲しい言葉があるんだけど…」

艦長「何かな?」

和「…愛してるって、言って欲しい…/////////」

艦長は、少し考え込んだ後、言った。

艦長「…それは無理だな。」

和「何故?」

和は、ちょっとムッとしているようだ。
艦長が得意げに演説を始める。

艦長「私はその言葉、嫌いなんだ。
   誰からも咎められることなく欲望を正当化する卑怯な言葉だからな。うん。」

和「ハァ…いつもいやらしいこと考えている癖に。」

艦長「和、君のことが好きだ。」

和「ふん、必ず帰ってきて、いつか言わせてみせるから。」

艦長「その意気だよ。必ず帰ってくるんだ。」

二人は長いキスをして、離れたのだった。



307 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:42:47.16 ID:COaJwCIo

コロニーレーザーを奪い返せれば、戦局をひっくり返す事ができる。
出撃前にそんな意味のことを言われたが、紬にとってはどうでもいいことだった。

そんな事より紬は、戦場が不快でたまらなかった。
人の意志が、脳に直接入り込んでくる。

紬「みんな人間だ…私たちの幸せを邪魔する、醜い生き物!!」

紬「ここは、そんな連中の意志で満ち溢れている!!」

紬「私の大切な人形たち、奴らを皆殺しにするのよ!!」

唯梓「了解!」

三機は、流れ作業のように次々と敵を落としていく。
いや、味方も巻き添えにしている。
斉藤は、それを見て戦慄した。



308 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:43:29.57 ID:COaJwCIo

紬「あっはははははは!! もらったわ!!」

紬は敵と格闘戦をしている最中の味方機を、敵機ごとビームで貫いた。

紬「ウフフフ…唯ちゃん、梓ちゃん、私達以外はみんな敵よ!!
  ハハハハハ…邪魔ならこうして排除してもいいわ!!」

唯梓「了解!!」

それを聞いて、唯と梓まで味方を巻き添えにし出す。

紬「アハハハ!二人共いい子ね!!フフフ…」

紬のガブスレイがまた、味方ごと敵を撃った。

紬「ハハハハハ…私、こうしてみんなでゴミ掃除をするのが夢だったの~!!アハハハハハ…」

レシーバーから聞こえてくる音声の大半は、紬の笑い声である。
斉藤は、耳を塞ぎたくなった。



309 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:44:08.34 ID:COaJwCIo

出撃前、斉藤は紬の様子が心配だった。
何日も部屋からも出ず、食事ほとんども取っていない。

出撃を知らせると、紬はすぐさまMSデッキに直行し、二人の強化人間を抱きしめていた。

紬「よかった…やっと逢えた…私の大切なお人形さん達…」

紬「お父様が、隠すんですもの…あんなに大切にしていたのに…ひどいわよね…」

明らかに、様子がおかしい。
しかしそんな事より、出撃前に食事をとってもらわねばならない。
お嬢様、食事を、と簡易宇宙食を差し出すため、紬の肩に触れた瞬間、斉藤の体は宙を舞っていた。
壁に叩きつけられる。

紬「人間風情が、私に触らないでくれるかしら。私に触れていいのは、このお人形さんたちだけなの。」

さっきは、泣いているような声だったため、斉藤は紬の泣き顔を想像していた。
しかし紬の目は乾ききっていた。
まるで、人形にはまったガラスの目玉のように、冷たい目の光。
斉藤は、その視線に気圧されて、紬に食事を渡すことが出来なかった。



310 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:44:59.19 ID:COaJwCIo

グリプス2の防衛に当たっていたカキフ・ライから見える光景は、
宇宙空間に静かに横たわる防衛対象以外、360°地獄だった。
三つ巴の、殺し合いである。

艦長「一番から三番メガ粒子砲、前方のサラミス改に火線を集中!
   他は対空防御だ!!味方に当てるなよ!!」

火を吹いて制御不能になっているガザCが艦に突っ込んでくる。

艦長「おい、対空レーザー!!どこ見てる!!」

レーザーが手足を切り離したが、胴体がそのまま接触する。
艦内に衝撃が走った。

通信手「右舷居住区に敵機衝突!」

艦長「隔壁閉鎖!消火作業急げ!!
   クソ、あのガザC、冥土の土産に和の部屋を持って行きやがった!!」

艦長「敵を近づけるな!!いいな!!」



311 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:45:30.16 ID:COaJwCIo

副長「了解!!艦長、ゼータプラス隊は健在ですよ!!」

艦長「当たり前だ!!俺の和が死ぬもんかよ!!鈴木も、立花もだ!!」

副長「新手の艦隊、来ます!!」

艦長「ちまちま目標を示してらんねえな!!前方の艦隊だ!ぶっぱなせ!!どいつを料理するかは任せる!!」

砲手「了解!!全部沈めてみせます!!」

艦長「おう、やってみせろ!!できたら艦全員に特上の寿司を奢ってやるぞ!!」

艦内は、異様な興奮に包まれていた。
艦長は、ちょっと危険な雰囲気かな、と思った。

しかし、どうすることも出来ない。
戦場では、流れに身を任せるしかないことが多いのだ。

艦長は、ゆっくりと息をはいて和の指輪をぐっ、と握りしめた。



312 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:46:17.02 ID:COaJwCIo

何機落としたか、分からない。
異常な興奮状態だ。疲れも感じない。
その時、純の脳裏に梓のイメージが閃いた。

純「梓、見つけたよ!!」

姫子「鈴木さん!!」

純「手練のガブスレイが来ます!!見えないビーム砲も!!
  立花先輩は真鍋先輩の側にいてあげてください!!」

姫子「わ…分かったわ!無理しないで!!」

純「了解!!」

姫子は、純が戦闘機動に移行し、何発かビームを撃つところまで、見た。

彼女が純の機体を見た、最後の瞬間である。



313 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:47:20.67 ID:COaJwCIo

梓は、敵を明確に感じていた。
何度か戦った、あのガンダムもどきだろう。

梓「あれは、私にしか落とせない!!私が落とすべき、敵!!」

青白いビームが飛んでくる。
梓はそれをかわしながら、数発の牽制射を放った後、狙いすました一撃を見舞った。

梓「食らいやがれです!!」

敵機が螺旋状に飛んでビームをかわす。
間違いない、避けるとき螺旋を描くのは、あの敵だ。
距離が縮まる。
サーベル、と思った次の瞬間にはつばぜり合いが起こっていた。

敵の声が、聞こえる。

純「梓、私がわからないの!?純だよ、鈴木純!!」

梓「そんな奴知らない!!宇宙人の知り合いなんていないもん!!」



314 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:47:53.35 ID:COaJwCIo

敵の話を聞いていてはいけない気がする。
敵を蹴って距離をとった。
ビームを乱射する。敵が離れる。
これで聞いてはいけない言葉を聞かないで済む。

梓「ムギ先輩を泣かせる、許せない敵!!死んじまいやがれです!!」

梓のビームをくぐるように敵機が螺旋を描き、飛び込んでくる。

ビーム。
避ける。
応射。

結局、また距離が詰まってきた。
梓は、頭痛に舌打ちをして、サーベルを発振した。



315 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:48:34.66 ID:COaJwCIo

ガブスレイと交戦中である。
和も、唯を感じている。
しかし距離があるのでなかなか捕まえることは出来ない。
しかも唯のビームが和たちをガブスレイの周りに釘付けにしている。

敵は案の定かなり腕を上げている。
二機いるうちの一機は、最早別人である。
人間味すら、感じられないのだ。

和「あのパイロット、人であることを捨てている…?」

姫子が、一機のガブスレイをサーベルで貫き、通信を送ってきた。

姫子「一機倒した!残りのガブスレイは私が引き受けるわ!真鍋さんは、唯のところへ!!」

和「お願い!!」

唯の場所は、よくわかる。
和は、ウェイブライダーに変形し、感覚を頼りに飛んでいった。



316 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:49:11.93 ID:COaJwCIo

姫子は、目の前のガブスレイに接近戦を挑んだ。
さっきの奴とは気迫が違う。落とせないかも知れない。
接触回線で声がする。女だった。

「私のお人形さんを、取らないで!!」

姫子「何いってんの、こいつ?」

不意に、そのガブスレイが姫子のゼータプラスから離れて和を追う軌道を取った。
すかさず、斬りかかる。

姫子「あんたの相手は、このあたしだよ!!」

敵が、姫子の方を振り返る。
姫子にはそれが、ひどくゆっくりした動きに感じられた。

敵機が半身を見せるまで振り返ったとき、
MSの装甲越しから冷たい視線に射すくめられたように感じ、
姫子は一瞬、その動きを止めた。



317 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:50:03.17 ID:COaJwCIo

斉藤が、ガンダムもどきに落とされた。
それは、どうでもいい。
むしろ微笑ましい。
あいつは人間だから。

いけないのは、もう一機のガンダムもどきが
私の大切な唯ちゃんを奪いに行ったことだ。

紬「私のお人形さんを、取らないで!!」

斉藤を落とした敵をいなして、唯ちゃんを守りに行く。
しかし、その敵に邪魔される。

「あんたの相手は、このあたしだよ!!」

一瞬にして紬の中に、怒りが飽和する。
唯ちゃんのところに、いきたいのに。
邪魔をする、わるいやつ。



318 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:50:47.51 ID:COaJwCIo

紬「そんなに死にたいのなら、望み通りにしてあげるわ!!」

振り返りながら、横一文字にビームサーベルを抜き放った。
先程まで意志を持っていた敵は、二つの鉄くずに変わっていた。
そのまま一回転し、MA形態に変形、唯を助けに向かった。

ガンダムもどきが二つに分かれる瞬間を思い出し、紬は可笑しくてたまらなくなった。

紬「うふふふ…はははは…あーっはははははははは…」

紬「無様だわ!馬鹿な人間が、私の邪魔なんてするから…」

紬は、笑い顔から一転、恐ろしい形相になり、言った。

紬「見つけた!唯ちゃんを奪おうとする敵!!」



319 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:52:50.20 ID:COaJwCIo

和は、四方からのビームを回避し、唯の機体に接触した。
腕がない。
その時、和はMSの腕がビーム砲になっていることに気がついた。

和「あんたって子は!!まだそんな事やってるの!?」

唯「嘘つき和ちゃん!!もう許さないからね!!」

和「私がいつあなたに嘘を付いたのよ!!」

殺気、飛び退ると唯のガンダムの腕が、和を狙っていた。
かわし際に、そのうちの一つを撃ちぬく。

唯「腕はもう一つあるんだからね!!」

斜め後ろ。
かわした。

目の前に唯の機体。胸が光った。
危ない、と姫子の声が聞こえた。
拡散ビーム。

紙一重だ。危なかった。

和「こっちから攻撃を!!」

脚部にスマートガンを撃ち込んだが、かわされた。
腰のビーム砲で牽制射を放つと、後ろから殺気。
かわすと、ビームが飛んできた。

和「大した集中力ね!!さすがだわ!!」



320 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:53:51.81 ID:COaJwCIo

その時、突き上げるような殺気に、和の機体は反射的に飛びすさっていた。

ビームが空域を照らし出す。
人間の気配ではない、これは殺気そのものだ、と和は思った。
殺気の方に向き直ると、先程姫子に任せたガブスレイが突っ込んできた。

人であることを、捨てている敵だ。
姫子は、もういないのだろう。

サーベルを発振する。
二度、三度馳せ違い、つばぜり合いのまま縺れ合った。
回線から、正常ではない人の声がする。

「私の大切な唯ちゃんを取らないでよ!!この泥棒!!」

聞き覚えのある、声だった。

和「あなた、ムギなの!?」

紬「大切な、お人形さんなのよ!!お父様に隠されて、それをやっと見つけたの!!
  もう私からお人形さんを取り上げないで!!」

和「唯は人形じゃないわよ!!」

紬「一緒にいさせてよ!!それだけでいいのよ!!どうしてそんな簡単なことをさせてくれないの!?」



321 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:54:35.40 ID:COaJwCIo

唯は、おろおろと二人のマシンに付いて行くことしか出来ない。
二機の距離が近すぎて、掩護射撃が出来ないのだ。

唯「ムギちゃん、離れて!!サイコミュで支援するから!!」

紬は、目の前の敵に対する殺意に支配され、唯の言葉を聞いていない。

紬「唯ちゃん、待っててね、
  今嘘つき和ちゃんを倒してあげるから!!そうしたら、また一緒にいられるわ!!」

頭が、刺すように痛む。
唯は、二人が争っていることに、違和感を抱いた。



322 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:55:55.18 ID:COaJwCIo

スマートガンは、早々に梓のビームで抉り取られた。
バルカンは、弾切れだ。
腰のビーム砲も、片方しか生きてはいない。

純のゼータプラスは満身創痍だった。
梓のガブスレイも似たようなものである。
二機は、サーベルを弾きあわせている。
そのたびに純が語りかける。

純「梓は、けいおん部に入って、最初はヤル気のない先輩に嫌気がさしててさ、いつも怒っていたんだよ!!」

梓「うるさい!!お前の言葉は頭を痛くする!!」

純「自分の思い出で、具合悪くなってどうすんのさ!!」

梓のガブスレイの動きが、徐々に悪くなってくる。

純「梓は、夏になるといつも真っ黒に日焼けして、憂も私も、会うたびに誰?ってからかったんだよ!!」

梓「うわああああ…やめろおおおおおおおお!!」



323 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:57:19.43 ID:COaJwCIo

ガブスレイが斬りかかる。
サーベルで受け止める。スパークが眩しい。

もう少しだ。
純にはもう少しで、梓が何かをつかもうとしているという実感があった。

純「二年の夏休みには、梓と憂と私と、三人でプールにも行ったよね!!
  梓はそこで夏フェスの自慢ばかりしてた!!」

梓「うるさい うるさい うるさい うるさい!!」

純「ちゃんと聞いてよ!梓の思い出なんだよ!!」

梓「聞きたくない!!」

純「記憶を取り戻したいんじゃないの!?」

梓「お前に聞く必要がない!!研究所で取り戻す!!」



324 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:57:54.97 ID:COaJwCIo

梓が離れようとする一瞬の隙を付き、
ゼータプラスのサーベルがガブスレイの右腕をサーベルごと切り落とした。

そのまま純は自機を梓の機体に接触させ続け、話をつづけた。

純「研究所なんかより、梓の事は私が一番良く知ってる!!」

梓「どうしてそんな事が言える!!」

純「そんなの簡単じゃん!」

純「私たち、友達だもん!!」

梓「友だち…!?」

純「そう、友達!!」

その言葉を聞いた瞬間、梓の精神が強烈な拒否反応を起こした。

梓「う…うわあああああああああああ!!」



325 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 19:59:30.08 ID:COaJwCIo

不意に、ガブスレイの動きが、止まった。
反射的に、ゼータプラスが両腕でガブスレイに掴みかかり、抱き寄せた。

純「梓…どうしたの!?」

レシーバーからは、梓の苦しそうな息遣いが聞こえる。
喘ぎ声に混じって、必死に何かを伝えようとしているようだ。

梓「もう…体が…うごかな…い…」

純「梓!!」

純はここが戦場であることも忘れ、
ゼータプラスのコックピットから出て、ガブスレイのハッチに取り付いた。
ハッチの緊急開放スイッチをおもいきり叩くと、
コックピットが開いてぐったりした梓が視界に入った。

純「梓!どうしたの!?」



326 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 20:00:12.18 ID:COaJwCIo

敵機のコックピットに入り込み、バイザー同士をくっつけ、その振動で会話をする。

梓「この…からだ…もう…だめ…な…の…」

純「梓! 梓!」

梓「わたしを…出して…せまい…とこ…きら…い…」

純は、梓を抱き上げて、ガブスレイのコックピットから出た。

梓「わた…し…の…おもいで…もっと…しりた…い…」

梓「おしえ…て…」

純は、子供に昔話をする母親のように、笑った。

純「じゃあ、先輩たちが修学旅行に行った時の話、しようか。」

抱き合った二機のMSから、同じように抱きしめあう敵同士のノーマルスーツが浮かび上がった。

それは、およそ戦場の光景には見えなかった。



327 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 20:01:41.85 ID:COaJwCIo

カキフ・ライは、戦いのターニングポイントとなる通信を傍受していた。

通信手「アーガマから通信、ティターンズの艦隊に向けてコロニーレーザーを発射するそうです。
    味方機は射線から退避するようにとのことです!!」

艦長「ゼータプラス隊に伝えろ!!」

通信手「それが…ミノフスキー粒子が濃いうえに、
    この混戦で、先程からゼータプラス隊をロストしています!!」

艦長「無線で呼びかけ続けろ!!何度でもやれ!!」

通信手「了解!!ゼータプラス隊!!コロニーレーザーが発射される!!射線から退避しろ!!繰り返す…」

艦長は、味方機に通信が届いていることを願うばかりだった。

艦長(私は…無力だ…)

味方機が素早く退避している。
敵機もその雰囲気を感じ取ったか、それを追うように射線から離脱して、
カキフ・ライから観測できるコロニーレーザーの射線上はほとんど何もない空間になっていった。

残されるのは漂う残骸と、足の遅い敵艦だけだ。
あとは気づいていない遠くの攻撃目標位だろう。それには紬の父の艦も含まれている。

残骸の中に、抱き合う二人のノーマルスーツが混じっていることなど、もちろん分かるはずもないことだった。



328 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 20:02:58.11 ID:COaJwCIo

純「先輩たちにバレンタインチョコを渡した時なんかね、
  梓すごい恥ずかしがってて、なかなか渡せなかったんだよ。」

梓「わたし…そんなだった…んだ…」

梓が、一生懸命純に語りかけようとした。
純は話すのを止め、
とぎれとぎれな梓のセリフを聞き逃さないようにしっかりと耳を澄ませた。

梓「ねえ…まわ…り…だれも…いないね…」

純「うん?」

純は周りを見回した。敵味方のMSがほとんどいなくなっている。
残っているものも、逃げるように遠ざかっていく。

純「神様が、ちゃんと梓に思い出を伝えてあげられるように、
  周りの人達をどかせてくれたんだよ、きっと。」



329 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 20:04:23.44 ID:COaJwCIo

梓はもう、純の言葉が届いているのかもあやしかった。
荒かった呼吸も、静かになってきた。
梓が、純に抱きつく力を強めて言った。

梓「ともだち…あったかい…」

純「そうだね、梓もあったかいよ。」

ノーマルスーツは熱を遮断する材質でできている。
しかし二人にはお互いのぬくもりが確かに感じられていたのだ。

梓は目を閉じ、大きく息を吸い込んで、最期の言葉を吐きだした。

梓「と…も…だ…ち…」

純に抱きついていた梓の腕の力が抜けていく
それっきり、梓は動かなくなった。
梓の目には、涙の粒が輝いている。



330 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 20:06:07.68 ID:COaJwCIo

純が顔を上げると同時に、巨大な光の帯が宙域を照らし出した。
それが、徐々に迫ってくる。
戦闘後の宙域はゴミだらけだ。だからレーザーの光が横からでもはっきりと見えるのだろう。

正面に目をむけると、グリプス2が徐々にこちらに向きを変えてきているのが目に入った。
方向変換の為のスラスター光が瞬いているのが見える。
敵艦隊をなぎ払っているのだろう。

今から逃げても間に合わない。
それになにより純は梓を離したくはなかった。
苦労して、取り戻した友達なのだ。

純は、グリプス2を見据えながら独り、呟いた

純「そっか、私も梓と一緒に逝けるんだ…」

腕の中で眠る子供に語りかけるように、それを梓に報告する。

純「よかったね、梓。私も一緒だってさ。」

グリプス2はもう見る必要がない。
安らかな顔の梓を見つめ直し、その体を強く抱き締めて、言った。

純「今、逝くからね。」

純はふと、レーザー光を正面から見てみたいという願望に駆られた。


しかし、その瞳は最期の時まで梓を見つめていた。



331 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 20:07:23.81 ID:COaJwCIo

和は、紬の圧力が弱まっていることを感じ取っていた。

和「こんな事して、何になるのよ!!」

紬「うるさい!!お前の仲間が私の梓ちゃんを惑わせて壊した!!」

和「あの子はそんな事しないわ!壊したのはあなたでしょう!!」

紬「あ…梓ちゃんが!!!」

不意に紬のガブスレイが変形し、飛んでいった。

和「ムギ、ダメよ!!そっちはコロニーレーザーの射線に入るわ!!」

紬「梓ちゃんが、光の濁流に飲まれちゃう!!」

通信も使っていないのに、和の頭の中で確かにそう聞こえた。

程なくして、宙域に光の河が現れた。
ガブスレイの姿は、もう見えない。



332 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 20:07:54.48 ID:COaJwCIo

唯「むぎちゃああああああああああん!!!」

唯が紬を追おうとする。
和は唯の機体にしがみついてそれを必死にとめていた。

和「ダメよ!唯!!」

和のゼータプラスに衝撃が走る。
確認すると、有線サイコミュがゼータプラスの左足をもぎ取っていた。
和は舌打ちをしてビーム砲を打ち落とす。

和「唯、やめて!!」

唯「うるさい!!ムギちゃんのところに行くんだよ!!」

その時、唯の精神に何かが入り込んだ。

唯「な…なにこれ…うわああああああああああああ!!」

和「唯、どうしたの!?」



333 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 20:08:42.67 ID:COaJwCIo

和はその時、確かにプロトサイコのバックパックに設置された
サイコミュ・システムにたくさんの光の塊が吸い込まれていくのを見た。

和「なにこれ…やめてよ…唯に入らないでよ!!」

唯「私の中に、沢山の人が入ってくる…そんなに入りきらないのに…ああああああああああ!!」

コロニーレーザーに焼かれた者たちの情念がサイコミュを通して増幅され、
次々に唯の精神を犯していく。

心の器がいくつもの魂で溢れ、唯は自分の精神を見失いそうになった。

唯「嫌だああああああああああ!!出てって!!出てってよおおおおおおおお!!」

和「唯!そのマシンから出なさい!!」

和は、プロトサイコのハッチを開けようとゼータプラスを操作したが、
纏わり付く光が邪魔をしてか、ゼータプラスの力でもハッチをこじ開けることが出来ない。

和「なによこれ…どうなっているのよ!?」



334 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 20:09:13.67 ID:COaJwCIo

唯「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」

和「唯! 唯! ハッチを開けなさい!!」

機体を覆っていた光が、消えていく。
すべて唯の中に入ってしまったのだろう、と和は思った。

唯「あ…私が…もう私じゃなくなった…」

唯の機体は、それっきり動かなくなった。



335 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 20:09:41.56 ID:COaJwCIo

和「唯!今艦に連れて帰るわ!お医者さんに見てもらいましょ!!」

和は、プロトサイコを引っ張って艦に向かった。
途中、何度も話しかけたが、苦しそうな息遣いしか帰って来ない。

和「唯、大丈夫?医務室に行ったら、すぐ良くなるわ!」

唯「はあ はあ はあ」

和「艦に付くまで頑張ってね、唯。あなたならきっと大丈夫だから。」

唯「はあ はあ はあ」



336 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 20:10:19.93 ID:COaJwCIo

グリプス2周辺の戦闘は終了し、艦内は捕虜の収容などで慌しくなっていた。

艦長「何?もう一度言ってみろ!!」

通信手「真鍋少尉が戻ってきます!
    敵のMSを曳航しているようです。医者の用意をして欲しいと言ってます!!」

艦長「ガイド・ビーコンを出せ!!医務官をMSデッキに向かわせろ!!」

通信手「了解!」

艦長「副長、ここを頼む。引き続き鈴木と立花も探してやってくれ。」

副長「了解です。早く行ってあげて下さい。」

艦長は、素早くブリッジを出た。



337 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 20:11:09.43 ID:COaJwCIo

艦長がMSデッキに到着すると、
ティターンズのノーマルスーツが担架に乗せられて運ばれているところだった。
側で和が何かを必死に呼びかけている。

艦長「捕虜か?」

和「私の親友です!生命の危険があるんです!!」

ティターンズに、親友…!?
艦長は疑問を感じたが、話を続けられる雰囲気ではない。
そのまま、担架は医務室に運び込まれた。

唯は体中が痙攣しており、呼吸すらままならないようだ。
医務官が唯にヘッドギアをつけてオシロスコープを覗いている。

医務官「やはりだ、この子は強化人間だな。
    サイコミュの逆流が原因だろうと思うが、脳の活動が異常に活発になっている。危険な状態だ。」

和「御託はいいから早く何とかしなさい!」

医務官「手の施しようがないんだ!!」



338 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 20:11:59.02 ID:COaJwCIo

それを聞いた和の表情に絶望が影を落とした。
艦長がすかさず口を挟む。

艦長「苦しそうじゃないか。楽にしてやる方法はないのか?」

医務官「体のどこがっていう話じゃないんです。脳がやられている。
    どうにかするなら、脳の活動を何とかするしかないんです。」

艦長「何とかしてやればいいじゃないか。」

医務官「一思いに殺すってことですよ。」

艦長「…」

和「ゆい…ゆい…」



339 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/27(月) 20:12:45.03 ID:COaJwCIo

和は、唯の手を握って呼びかけ続けている。
唯は、小刻みに震える手で和の手を握り返し、苦しそうに口を開いた。

唯「の…どか…ちゃん…」

和「唯、喋っちゃ駄目でしょ!!」

唯「わたし…もうダメ…だ…から…」

和「もういいから、喋らなくていいから!!」

唯「さっき…の…ひとたち…に…つれて…いかれ…る…」

和「そんな事あるわけ無いでしょ!しっかりしなさい!!」

唯「さいご…に…ひとこ…と…だけ…」

和「唯!!」

唯「ありが…と…」

医務官「脳波レベルが急激に低下していきます。もう…」

和は、その場に泣き崩れていた。
艦長は、そんな和を、ただ見ている事しか出来なかった。

最終話 生命 散って  おしまい



関連記事

ランダム記事(試用版)




唯「グリプス戦役!」#最終話 生命 散って

コメント(アンカー機能)
●>>1と半角で書き込むと>>1と記事へのアンカーが生成される。
●*1と半角で書き込むと1とコメントへのアンカーが生成される。
上記の2つのアンカーが有効なのは該当記事のみ。

コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

サイト関連
メール ツイッター 最新記事一覧(30件)
ユーザータグ 検索

U:
P:
色々変更
好みのカラーコードをどうぞ

記事の背景色変更


本体の背景色変更


名前の色変更
IE8:重
火狐4.01:軽
chrome:軽


広告4
広告5
広告6