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澪「私たちは時代の中に消えていく」 【非日常系】


http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1246719838/




1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:03:58.52 ID:z+tFwh1j0

新宿のとあるライブハウスにて

ざわ……ざわ……

客A「凄い人だな……前の方はほとんどすし詰めだ」

客B「見た感じ、ざっと200人ってとこか?いや、ラウンジにも人がいるからもっとだな」

客A「はー!そんなに入ってるとは大盛況だな」

客B「無理もないだろ。なにせ8年ぶりのライブだからな」

客A「現役の時より客多いんじゃないか?」

客B「だな。まさかこんな人が集まるとは……」





3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:06:24.44 ID:z+tFwh1j0

憂「人がたくさん……お姉ちゃん達大丈夫かな?」

和「……あ、憂ちゃーん!こっちこっち!」

憂「和さん!……あ、すいません、失礼します」

和「久しぶりだね、憂ちゃん。全然変わってないね」

憂「和さんこそ。でも本当お久しぶりです」

和「8年ぶりかな?放課後ティータイムが解散して以来だもんね」

憂「そうですね。あれ以来みんなとも疎遠になっちゃって……」

和「あの時はみんな大変だったからね……」



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:07:36.58 ID:z+tFwh1j0

時は8年前にさかのぼる。
放課後ティータイムのメンバーが桜が丘高校を卒業して2年が経つ。
澪と紬は都内の大学へ、律は音楽の専門学校へ、
1年遅れて梓はジャズ学科のある音楽大学へと進学した。
唯は大学へも専門学校へも進学せず、近所のコンビニでアルバイトを始めた。
結成当初高校生だった唯たちは20歳になり(梓は19歳)、それぞれ違う道へと進んだが
バンドは今もなお継続し、時間の合間を縫って週1回スタジオに入って練習をしていた。

ライブも月1、2本のペースで行っていた。
毎回会場へ足を運んでくれる固定の客は何人か付いたが、
動員数はなかなか伸びず、ライブは常に赤字だった。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:08:41.65 ID:z+tFwh1j0

唯「今回も1人5000円の赤字だねえ」

紬「たくさん宣伝したんだけれど……」

梓「仕方ないですよ。どうしても学生バンドだと限界があります」

澪「梓の言う通りだ。いいじゃないか、楽しくライブができれば」

律「そーだそーだ!そんな事よりお腹空いちゃったよ。ファミレスいこーぜっ!」

紬「ふふ、りっちゃんったら……」

唯「そうだね、まずはご飯にしよう!」



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:09:43.99 ID:z+tFwh1j0

そんなある日、練習スタジオでのことだった。

唯「あずにゃん遅いねー」

澪「梓が遅刻なんて珍しいな」

律「よーし!罰として次のライブはネコ耳メイド姿でステージに立ってもらう!」

澪「またお前は……」

紬「ネコ耳……メイド……ハァハァ」

澪「(うちのバンドは大丈夫なのか……)」



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:10:29.89 ID:z+tFwh1j0

梓「すいません、遅くなりました!」

律「おそーい!罰として次のライブでネコ(ボカッ!)……グフッ」

澪「お前は黙ってろ……ん、その手に持ってる紙は?」

梓「そうそう!これ、今日学校の友達に教えてもらったんです」

唯「なにこれー?」

紬「学生……バンドフェスティバル?」



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:11:16.54 ID:z+tFwh1j0

律「バンドコンテストか!」

澪「なになに、『当イベントは学生バンドを対象にしたコンクールです』」

紬「『参加条件は23歳以下、メンバーに学生が在籍している事』……なら私たちは大丈夫ね」

唯「えーと……えっ、『優勝者には賞金10万円が贈られます』!?」

律「10万円!大変だ!一生遊んで暮らせるぞ!」

澪「そんなわけあるか。でも凄いな、副賞でも5万円もらえる」

紬「プレイヤー賞は楽器がプレゼントされるみたいね」



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:12:05.81 ID:z+tFwh1j0

梓「友達がこれに出るらしいんですけど、どうです、私たちも出ませんか?」

唯「いいね!出よう出よう!」

紬「こういうイベントもいいかもしれませんね」

律「10万!じゅーまん!」

梓「澪先輩はどうですか?」

澪「うーん、コンテストねえ……」

梓「乗り気じゃないですか?」

律「おいおい、もう人前で演奏したくないなんて言わないよなー?」



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:12:58.16 ID:z+tFwh1j0

2年前の澪ならいざ知らず、何度もライブをこなして行くうちに
澪の人見知りや上がり症はかなり改善されていた。

澪「いや、そういうわけじゃないんだけどさ」

唯「じゃあどうして?」

澪「あんまりコンテストって好きじゃないんだよね」

梓「そうなんですか?」

澪「音楽って優劣つける物じゃないと思うんだ。だからコンテスト自体に違和感があるし」

紬「うーん……」

澪「それに私はこのバンドでプレイできていればそれだけで楽しいんだから、
  あんまりそういう評価は気にならないというか……」

唯「そうかあー」



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:13:45.28 ID:z+tFwh1j0

梓「でもコンテストへの参加はタダだし、
  無料でライブが出来ると思えばやってもいいんじゃないでしょうか?」

澪「うー……」

梓「私も人の評価なんて気にする必要はないと思います。
  でもタダでライブができて、その上もしかしたら賞金ももらえちゃうんですよ」

律「そうだ!10万が!」

澪「そうだなあ……」

梓「それに私、このバンドの音をもっと色々な人に聴いてもらいたいんです。
  今は赤字続きだけど、絶対聴く人が聴けば、良いって言ってくれる。
  そういうバンドだと思うんです」



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:14:29.00 ID:z+tFwh1j0

唯「澪ちゃん、出るだけ出てみようよ」

紬「そうよ。結果がダメでも、今まで通りやればいいんだから」

律「賞金が入ったら何買おうかなあ……」

澪「お前はそればっかりだな……」

律「いや、でも賞金を貯金して、そこからライブのノルマとか練習代を捻出する方法もあるぞ。
  そうすればだいぶ金銭的にも助かる」

澪「なるほど……」

律「まあ賞金が取れなくても、楽しくやれればいいじゃん!」

澪「そうだなあ……よし、じゃあ試しに出てみるか」

唯「じゃあ決まりだね!わーい楽しみ!」

梓「じゃあ申し込みは私がやっておきますね」



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:15:21.20 ID:z+tFwh1j0

こうして放課後ティータイムはバンドコンテストへ出場する事になった。
結果がどうあれ楽しくやろう。という気楽なスタンスで応募したのだが
予想とは裏腹に、あれよあれよという間に予選を勝ち抜き、
とうとう決勝戦に進出してしまった。

唯「なんだか大変なことになっちゃったね」

紬「決勝戦に勝ち残っちゃうなんて……」

梓「私は最初っからそのつもりでしたけどね」

律「なんだとこいつめ、生意気だぞーっ!」

梓「にゃーっ!」

澪「明日はいよいよ決勝か……これに勝てば……」

律「待ちに待ったじゅーまんえん!」

澪「優勝だ!……まさかこんな大事になるとは……」



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:16:06.58 ID:z+tFwh1j0

唯「澪ちゃん緊張してる?」

澪「さすがに……ああどうしよう」

律「そんな気にする事かあ?」

澪「だって……」

律「別に優勝したところで、デビューできるとか、
  急に生活が変わるとかそういうわけでもないだろ」

澪「それはそうだけど……」

律「じゃあ何も心配する事はないじゃん。
  運動会と一緒だよ。勝ってやったー!それでおしまい」

梓「そうですよ。もっと気楽に行きましょう」

紬「ライブ見に来てくれるお客さんは増えるかもね」

律「そうだ、また澪ちゃんファンクラブができるかもしれないぞ」

澪「や、やめろおおおおお!」



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:16:50.57 ID:z+tFwh1j0

そうしていよいよ決勝戦の日がやってきた。
相手はルックスもテクニックも兼ね備えた正統派ハードロックバンド。
対する放課後ティータイムも、今までこなしたライブで身につけたステージングと
楽曲の持つキャッチーさで負けてはいない。
どちらが勝っても負けても、観客は納得のいく試合だった。
そしてそれは両バンドのメンバーも同じだった。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:17:32.44 ID:z+tFwh1j0

審査員「厳選なる審査の結果、今回の優勝者は……」

5人「……」

審査員「放課後ティータイムに決定しました!」

唯「やったー!」

梓「やりましたね!」

律「じゅーまんえん!」

紬「澪ちゃん、大丈夫?」

澪「うん……なんだか信じられない……」

律「夢じゃない!本当の事だよ!ほら、これでどうだ?(モミッ)」

澪「よーくわかった!(ボカッ)」

律「よかった……痛い……」



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:18:16.67 ID:z+tFwh1j0

こうして放課後ティータイムはバンドコンテストで優勝をし、賞金10万円を手に入れた。
賞金は当初律が話していた通り、バンドの資金として貯金され、
しばらくバンド経費に苦労することはなくなった。
金銭的に楽になった以外で変わった事はなかった。
今まで通り週に1度スタジオに入り、月に1、2回ライブを行う。
それまでと同じような光景がそこには変わらず繰り広げられていた。
しかしある日の事。



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:19:08.74 ID:z+tFwh1j0

練習後のファミレスにて。

唯「ねへみんふぁ(ねえみんな)」

律「食べながらしゃべるなよ……」

唯「(ゴックン)あのね、前にバンドのホームページ作ったじゃない」

澪「ああ、宣伝とかも兼ねて作ったっけな。あれ今どうなってる?」

唯「そういうの全然ダメだから、憂に任せっぱなしだったんだけど」

律「相変わらず有能な妹さんだ……」

紬「それで、そのホームページがどうかしたの?」

唯「うん、この間ね、メールが来たんだ」

澪「メール?」



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:19:53.23 ID:z+tFwh1j0

律「誰から?」

唯「誰だかわかんない人から、うちのレーベルからCD出しませんかって」

4人「……ええーっ!」

紬「それって凄いじゃない!」

澪「誰から来たんだ!」」

梓「どこのレーベルなんですか?」

律「印税がっぽがっぽ!」

唯「ちょ、いっぺんに言われても……」



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:20:35.65 ID:z+tFwh1j0

唯に聞いても埒が明かないということで、ひとまず全員で唯の家へ向かう事になった。

憂「あ、皆さんいらっしゃい!お久しぶりですね」

律「憂ちゃん久しぶりー」

梓「なんかレーベルの人からメール来たって聞いたんだけど……」

憂「そうそう、びっくりしちゃった。えっと、ちょっと待ってね。今見せるから」

メールの内容を要約すると、
「コンテストで放課後ティータイムのステージを見て、とても強い興味を持った。
ライブにも足を運ばせてもらったが、このバンドには人を惹き付ける力があると強く感じた。
ぜひよければ当レーベルからミニアルバムを出さないだろうか」
という事だった。



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:21:18.02 ID:z+tFwh1j0

紬「なんだか凄く評価されてるわね」

律「気持ち悪いくらいのべた褒めだ……」

憂「USAプロジェクトっていうレーベルの人みたいです」

唯「知ってる?」

律「何そのウソみたいな名前」

梓「なんてこと言うんですか!」

唯「あずにゃん知ってるの?」

梓「知ってるも何も……インディーズでは老舗のレーベルですよ!」

律「へえー」

梓「過去様々なバンドの作品がここからリリースされて、
  多くがその後メジャーに行ったんですよ。例えば……」



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:22:03.02 ID:z+tFwh1j0

梓の口から出たのは、ちょっとバンドをやっている人間なら誰もが知っているバンド名だった。
情報に疎い放課後ティータイムのメンバーも、それを聞いてにわかに色めきたった。

律「すげー!あのバンドもここからリリースされてたんだ!」

紬「そんな所から声を掛けてもらえるなんて……」

唯「CDデビューだ!すごいすごい!」

澪「これは凄いな……でもこれ、費用とかどうなるんだ?」

梓「CDのプレス費とかはレーベルが持つけれど、録音費はバンド持ちみたいです」

澪「レコーディングっていくらくらいかかるんだろう……そんなお金あるか?」

梓「この間の賞金がまだ残ってるじゃないですか!」

律「でもなんだかんだで、そろそろ残り半分くらいだけど」

梓「スタジオでバイトしてる友達がいるんです。
  その子に掛け合ってなんとか安く仕上げてもらいます」

澪「大丈夫なのか……?」



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:22:49.26 ID:z+tFwh1j0

こうして放課後ティータイムは録音作業に入った。
レコーディングは梓の友人が働く、都下にあるスタジオで半分泊り込みで行われた。

梓「夜中なら誰もいないから安く使わせてあげるって、オーナーが言ってたそうです」

律「今夜中の3時だぜ……眠いよ」

唯「ねむーい、おなかへったー」

澪「真面目にやれ!せっかく安く使わせてもらってるんだから」

唯律「はーい」

紬「まあまあ、みんなお茶にしましょう」

唯「わーいケーキだ!」

澪「まったく……」



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:23:30.40 ID:z+tFwh1j0

収録するのは合計6曲。
5人は夜中のスタジオを3日間に渡って借り、録音作業に取り掛かった。
夜に家を出て朝帰宅する、昼夜逆転の生活は厳しいものがあったが
それでも「自分達の曲を1つの形にしようとしている」という高揚感から
誰一人弱音を吐こうとはしなかった。

最後の曲を録音し終わった午前4時半、
疲れと睡眠不足でうまく働かない頭のままスタジオの外に出た5人は、
そこで今までに感じた事の無い充実感を得た。
お互いがお互いの顔を見、自然と笑顔がこぼれた。

それから3ヵ月後、ミニアルバム「放課後ティータイム」は発売された。



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:24:13.59 ID:z+tFwh1j0

発売当初、売り上げは芳しくなかった。
フリーペーパーの片隅にCDリリースを告げる小さい広告は載ったが、
誰も知らない新人バンドという事もあり、大した効果には繋がらなかった。

唯「あんまり売れてないみたいだね」

梓「せっかく一生懸命作ったのに……」

澪「まあこういう事もあるさ。いいじゃないか、1つ作品として形にできたんだから」

梓「でもー」

律「だけどバンドマン界隈では評判いいみたいだぜ。この間の対バンの人に褒められちゃった」

紬「私も。今度うちの企画に出てもらえませんか、って誘われたわよ」

唯「えー、いついつ?」

紬「来月の土曜日だって。みんなどうする?」

唯「出たい!」

律「私もー!」



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:24:56.56 ID:z+tFwh1j0

こうして売り上げ自体は決して順調とは言えなかったが、
CDを聴いたバンドマンからライブの誘いを多数受けるようになった。
最初は2ヶ月に1本ライブの予定が多くなる程度だったが、
それはだんだん増加していき、CD発売から半年経った頃には
毎週末にライブの予定が入っている状態になった。

ライブ数に比例し観客の数も増え、それと同時にCDも売れていった。
口コミで噂が広がり、ついに初回プレス分の500枚が完売。
追加で100枚プレスするという異例の事態を迎えた。



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:25:55.93 ID:z+tFwh1j0

唯「なんだかすごい事になってきてるね」

紬「この間の自主企画、ついに他バンドの赤字分も埋められるようになったわね」

梓「こんどうちのバンドとで2マンやりませんかって誘われましたよ!」

律「おおー!今まで赤字でひーひー言ってたウチらが2マン!」

唯「どんどん規模が大きくなっていくねー」

澪「……大丈夫なのかな」

梓「え、何がですか?」

澪「いや、なんでもない……」



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:27:17.02 ID:z+tFwh1j0

人気がじわじわ高まっていくと共に、バンド運営に必要な事務作業も増えていった。
ライブスケジュールの把握、告知、サイトの更新、スタジオの予約、金銭管理……。
急速に煩雑な作業が増加した結果、5人はにわかにパニック状態になった。

律「今週っていつ練習するんだ?」

唯「あれ、りっちゃん予約したんじゃないの?」

律「してないけど」

澪「それより明後日のライブのセットリストは」

紬「再来月やる自主企画の件、各バンドさんに連絡した?」

梓「ホームページのライブ情報が古いままなんですけど……」

このままではバンドが回らなくなる。
そう判断した5人は、事務スタッフを1人迎える事を決めた。

澪「でもスタッフやってくれる人なんているのかな」

唯「ふっふっふ、私に任せて」

澪「?」



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:28:03.00 ID:z+tFwh1j0

唯「というわけで、今日からスタッフとして働いてくれる平沢憂さんです」

憂「よ、よろしくお願いします……」

律「結局憂ちゃん頼みか……」

澪「ごめんね、面倒な仕事押し付けて」

憂「いえ、いいんです。でも私にできるのかな……」

唯「大丈夫だよおー、憂がいてくれるだけでいいんだよおー」

憂「お姉ちゃん……///」

梓「そうもいかないんだけど……」



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:28:54.89 ID:z+tFwh1j0

こうしてスタッフとなった憂は、目覚しい働きぶりを発揮した。
メンバー間や他バンド、ライブハウスへの連絡、サイトの更新、通販の受付……。
事務作業から開放された5人は、いよいよバンドとしての勢いを増していった。
ライブを行うごとにバンドのクオリティが高くなっていく。
常連も少しずつ増え、徐々に放課後ティータイムの名前は知れ渡りつつあった。

そしてミニアルバムを発売してから1年。
満を持して行われたワンマンライブは、150人の動員を記録し、大盛況の内に幕を閉じた。



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:30:14.99 ID:z+tFwh1j0

唯「それじゃあみんな、お疲れさまでしたー!」

全員「お疲れー!」

律「いやー、初ワンマン、無事終わってよかったよ」

紬「お客さんもあんなに来て頂いて……」

唯「こんなに来てくれるとは思わなかったね」

梓「私はこうなると思ってましたけどね」

律「生意気だぞこいつ!」

梓「にゃ、にゃーっ!」



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:30:57.27 ID:z+tFwh1j0

律「最初のミニアルバム出してからもう1年か」

唯「そろそろ新しいアルバム出したいね」

憂「それなんですけど……」

唯「どしたの?」

憂「梓ちゃんと夏にツアーやらない?って話をしたんです」

律「ツアー!」

梓「これだけ都内で人気が出たんですから、そろそろ地方を周ってもいいかなって思って」

紬「でもそれだったら、先にCDを作ってからの方が、宣伝も兼ねてでいいんじゃない?」

憂「そろそろ皆さん夏休みじゃないですか。
  長期休暇の内にそういうことをやった方がいいかなと思って」

梓「レコーディングならいつでもできますし」

律「なるほど」



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:31:40.94 ID:z+tFwh1j0

憂「代わりに、今までのライブ音源をまとめたデモCDを作ろうと思うんです」

唯「それいいね!」

紬「それなら作るのに手間も時間もかからなくていいわね」

律「じゃあそれを持って、この夏は全国に旅に出るぞ!」

梓「予定では西の方だけなんですが……」

律「気にしない!それじゃあツアー決定を記念して、かんぱーい!」

全員「かんぱーい!」

梓「(澪先輩どうしたんだろう……さっきから全然しゃべらないけど……)」

澪「……」



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:32:23.49 ID:z+tFwh1j0

その後、懇意にしているライブハウスの店長の協力を経て、正式にツアーの日程が決まった。
2週間かけて静岡、名古屋、大阪、岡山、福岡を周り、東京でラストを飾る。
旅費の節約のため、ワンボックス車に機材とメンバー5人、スタッフ1人を詰め込んでの移動となる。
肉体的にも精神的にも厳しい旅になりそうだが、初めてのツアーという事でメンバーの心は躍った。
1人を除いて。



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:33:54.86 ID:z+tFwh1j0

ツアー初日、静岡でのステージはまあまあの成果を得た。
対バン目当てで来た客の身体をリズムで揺らす事に成功し、
無料配布のデモCDはある程度の枚数がはけた。
良好な出足に一同の心は躍ったが、それが災いした。

次の名古屋で行われたライブは、対バン相手が地元の有名バンドだという事が災いし、
関東から来た名も知れぬバンドには誰も興味を示さない。
まずはその空気にフロントマンである澪が弱腰になった。
不安は伝染する。瞬く間にステージ全体を不安が覆う。
そしてこのステージで、梓が弦を切った。
普段では考えられないことだった。
曲は中断され、その場は唯のMCで繋いだが、
とうとう本来バンドの持つコンディションにまで持ち直すことはできなかった。



49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:34:37.84 ID:z+tFwh1j0

その夜、一同は名古屋を発った。
身体は疲れていたが、それよりもこの場所に居たくないという気持ちがそれに勝った。
大阪へ向かうために高速道路を走り続ける。
1人、また1人とメンバーの意識は夢の世界へ落ちていった。



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:35:20.54 ID:z+tFwh1j0

梓はふと目を覚ました。
車は止まっている。助手席から目だけを外に向ける。
どうやらここはどこかのサービスエリアのようだ。
隣に目をやると、さっきまで運転をしていた澪の姿がない。
一体どこへ行ったのだろう?
身体を起こし、そっとドアを開ける。途端に身体は夏の生ぬるい夜風に包まれた。
少し歩くと、自動販売機の前に置かれたベンチに座り、缶コーヒーを飲んでいる澪の姿が見えた。
どことなくその姿に精彩が欠けている。
梓は澪に近づいた。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:36:07.69 ID:z+tFwh1j0

梓「先輩……」

澪「ん……梓か……」

梓「……」

澪「……」

梓「昨日は……すいませんでした」

澪「……?」

梓「私が……弦を切っちゃったから……演奏が……」

澪「気にするな……梓のせいじゃない」

梓「だって……」

澪「昨日は全ての状態が悪かったんだ。誰のせいでもない」

梓「……」

澪「だから……もう泣くのはよせ」

梓「はい……ッ」



56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:37:43.62 ID:z+tFwh1j0

澪「ちょっと待ってて……ほら、ミルクティー。これ飲んで落ち着きな」

梓「……ありがとうございます」

澪「……」

梓「……」

澪「……」

梓「……澪先輩は」

梓「……ん?」

梓「このツアーの事、どう思ってるんですか?」



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:38:44.60 ID:z+tFwh1j0

澪「ツアー?……とても楽しいよ。
  バンドの推進力もどんどん上がってきてる。このまま続いていけばいいと思うよ」

梓「……ウソです」

澪「え……」

梓「だったらどうしてそんなに、暗い表情をしているんですか?
  ステージ上ではいつも通りなのに、降りたとたんに……」

澪「……」

梓「それに先輩、ツアーに出てから急に口数が減りました」

澪「……」

梓「どうしたんですか?何が気になってるんですか?」

澪「……放課後ティータイムの曲はさ」

梓「え?」



61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:39:55.79 ID:z+tFwh1j0

澪「全部私の子供みたいなものなんだ」

梓「……」

澪「それは私が書いた曲だからって意味じゃない。
  みんなでスタジオに入って、アレンジして、
  ここはこうした方がいいとか、そういう事を言いながらみんなで作った曲。
  そういうのも全部含めて、私の子供みたいなものなんだ」

梓「……」

澪「最初は楽しかった。みんなでわいわい言いながらスタジオで練習して、学園祭で演奏して、
  生徒みんな盛り上がってくれて。
  でもライブの規模が大きくなるにつれて、私は悩んだ」

梓「悩んだ?」

澪「どうすれば多くの人が聴いてくれるのか。どうすればたくさんの人が喜んでくれるのか。
  だんだんそういう事を意識し始めるようになった。
  そう思い始めたら、もう昔みたいに、純粋な気持ちで曲を書く事が出来なくなったんだ」



64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:40:55.75 ID:z+tFwh1j0

梓「それは……重圧のようなものですか?」

澪「それに近いかな。知らず知らずの内にプレッシャーを感じていたのかもしれない。
  でもそれだけじゃない。一番怖いのは、忘れられる事なんだ」

梓「……忘れられる?」

澪「梓、今確かに放課後ティータイムは人気が出ている。
  ライブをやればお客さんがたくさん来て、CDも売れて、こうしてツアーまでできる状態だ。
  もうひと頑張りすれば、メジャーにも行けるかもしれない」

梓「だったら……」

澪「でもさ、梓、一体この人気、いつまで続くと思う?」

梓「……えっ?」



66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:41:51.20 ID:z+tFwh1j0

澪「始まりがあれば終わりもある。いつまでも右肩上がりなんて事はあるわけがない。
  この人気だっていつか陰りが見えてくる。
  それは遠い未来の事かもしれないし、明日起こることかもしれない」

梓「……」

澪「私たちは時代の中に消えていく。
  いつかはわからないけれど、それは確実に待ち構えている。
  昔私たちの歌を聴いていた人も言うだろう。
  『放課後ティータイム?ああ、そんなバンドもあったね』って」

梓「……」

澪「そうやってその時限りの消費物として消費されていくのが怖いんだ。
  私の歌う言葉も、みんなで紡いだバンドの音も、
  全てが、いつかは記憶の彼方へ消え去ってしまう」

梓「……」

澪「だから私は思うんだ。そんな事して何になる?って。
  いつか忘れ去られてしまうのなら、始めからなかった事と同じだ」



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:43:05.00 ID:z+tFwh1j0

梓「それは……!」

澪「違うと思うか?ならどうして梓は音楽を続けているんだ?」

梓「……」

澪「ずっとこの人気が続いていくと思ってる?それとも誰にも忘れられないと思う自信が?」

梓「……」

澪「……悪かった。少ししゃべりすぎたみたいだ」

梓「……」

澪「私はそろそろ車に戻る。そろそろ出発しないとな。
  梓も少し寝た方がいい。今のうちに身体を休めておけ」

梓「……」



70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:44:05.31 ID:z+tFwh1j0

その後もツアーは続いた。
大阪、岡山、福岡と、地元の温かい観客に支持され、無事ステージをこなす事ができた。
無料配布のデモCDは全てはけ、ミニアルバム「放課後ティータイム」は在庫50枚全て完売となった。
対バンのメンバーからはまた一緒にイベントをやろうと言われ、
観客からは東京に寄った時にはライブを見に行きますと声をかけてもらった。
地方のファンも獲得し、ツアーはとても良い結果に終わった。

東京へ戻り、ツアーファイナルのステージを翌日に控えた日、澪は脱退を申し出た。



72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:44:56.04 ID:z+tFwh1j0

澪「バンドを、抜けようと思うんだ」

唯「……」

澪「理由はうまく説明できないけど……多分、このバンドでプレイする事はもうできない」

律「……」

澪「放課後ティータイムはいいバンドだ。私がいなくても十分やっていける」

紬「……」

澪「このまま進めばメジャーにだっていけるだろう。だけど私は、もう無理なんだ」

梓「……(ハラハラ)」



75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:45:42.65 ID:z+tFwh1j0

律「……言う事は、それだけか?」

澪「……すまない」

律「だったら……(スクッ)」

梓「……あ、あのっ!」

律「だったら、やめちゃうか。バンド」



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:46:27.52 ID:z+tFwh1j0

澪「……えっ?」

梓「え……」

律「このバンドはこの5人で『放課後ティータイム』だ。
  1人欠けてもダメなんだ。そうだろ、みんな?」

紬「ええ、そうね」

唯「澪ちゃんがいないと楽しくないもんー!」

律「別のメンバーを入れるくらいなら、いっそここで終わらた方がいい」

梓「皆さん……」



79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:47:13.28 ID:z+tFwh1j0

律「ま、近い内こうなるとは思ってたけどな」

澪「え?」

律「ずっと悩んでたんだろ?ツアー中」

唯「伊達に長く一緒にいるわけじゃないもんね」

紬「なんとなく察しはついていたけど、黙ってたの。
  だって私たちが言ってどうなる問題じゃないもの」

澪「みんな……」

律「このバンドは、メジャーに行きたいとか、
  お金持ちになりたいとか、そういう目的で組んだんじゃない。
  この5人で楽しくやりたいから結成したんだ」

唯「そうだよ!どんなにお客さんがたくさん見に来てくれても、
  澪ちゃんがつまらなかったら意味ないもん」



83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:48:05.21 ID:z+tFwh1j0

澪「みんな……ごめん……」

律「わー、泣くな泣くな。
  よし、じゃあ明日のツアーファイナルを持って『放課後ティータイム』は活動休止!」

紬「楽しくやれてよかったわ」

唯「あずにゃんは?」

梓「わ、私は……」

澪「梓、無理しなくてもいいんだぞ……」

梓「私は……私も、この5人じゃないと続けたくありません!
  5人揃って『放課後ティータイム』です!」

律「じゃあ決まりだな」

唯「憂には後で伝えておくね。今日呼ばなくてごめんね、うーいー」



84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:48:55.79 ID:z+tFwh1j0

時は流れて8年後、つまり現在

憂「みんなひどいですよ。私抜きでそんな大事な事決めちゃうんだから……」

和「大変だったんだね」

憂「本当に大変なのはその後ですよ。
  突然活動停止の知らせを聞いたファンの人から問い合わせが殺到したり……」

和「通販も急に注文が来て大変だったよね」

憂「あの時は手伝ってくれて本当にありがとうございました」

和「いえいえ。友達のバンドだもんね」



86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:49:57.29 ID:z+tFwh1j0

和「あの後みんなはどうしてたの?」

憂「澪さんと紬さんは大学を卒業して、2人とも普通の会社に就職しました。
  律さんは卒業した専門学校の講師をやってるみたいです」

和「唯は?」

憂「今もコンビニでアルバイトを……もう何年あそこに働いてるんだろう」

和「まあ、それも唯らしいね」

憂「でも一番の出世頭は、梓ちゃんですよね」



89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:51:00.98 ID:z+tFwh1j0

放課後ティータイム解散後、メンバーはそれぞれバンド活動から退いた。
しかし音楽を捨てきれない梓は、学校の友人とカンタベリー系のジャズロックバンドを結成。
凄腕のギタリストとして名を馳せ、
現在に至るまで様々なバンドでギターを弾くセッションプレイヤーとして活躍している。

憂「この間は有名なサックス奏者とアメリカを回ったって言ってました」

和「へえー、とうとう世界まで進出とはね」

憂「なんだか海外の方が評価高いみたいですよ。"Pretty-Cute Guitarist"って呼ばれてるみたいです」

和「そういう人が梓のバンド歴を遡って、放課後ティータイムに辿り着くのね」

憂「多分今会場にいる半数くらいの人は、そうやって後から知った人達なんじゃないでしょうか」

和「そういう意味では、梓が放課後ティータイムの名前を守っていた事になるのね」



92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:52:01.51 ID:z+tFwh1j0

和「でもなんで急に再結成する事になったの?」

憂「澪さんがみんなに声を掛けたみたいです。また放課後ティータイムをやりたいって」

和「そうなんだ」

憂「そもそも、解散ってわけじゃなかったみたいなんですよ」

和「そうなの?」



96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:53:07.35 ID:z+tFwh1j0

律「今日のライブを持って、しばらく放課後ティータイムはお休みします。
  だけど解散とか、そういう事ではありません。
  別に大したことではないんです。
  
  ただ少し、今まで走り続けてばかりいたので、
  少しゆったりとした時間を過ごしたくなったんです。
  時間を置いて、いつか、またこの5人で集まる日が来ると思います」

憂「って最後のライブのMCで言ってたので」

和「お休み、ねえ」

憂「お姉ちゃんは、長い夏休みだって言ってました」

和「本当に長かったわよ。あれから8年か……」



100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:53:58.77 ID:z+tFwh1j0

不意に照明が落ちる。
フロアがにわかにどよめき始める。

客A「おい、そろそろ始まるんじゃないか?」

客B「マジか、俺前の方行ってくる」

客A「おいおい、俺も行くよ。置いてくなよ」



103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:54:49.07 ID:z+tFwh1j0

梓「澪先輩」

澪「なんだ?」

梓「ずっと前に、言いましたよね?
  『忘れられるのが怖くないのか。どうして音楽をやっているのか』って」

澪「ああ……覚えてるよ」

梓「あの時私はその質問に答えられませんでした。でも、今ならその答えを言えると思います」

澪「……」

梓「私も忘れられるのは怖い。でも、だから音楽を続けているんです」



104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:55:55.45 ID:z+tFwh1j0

梓「誰もいなくなっても、なりふり構わず続けていく事が大事だと思うんです。
  私が音楽をやっている限り、放課後ティータイムっていう
  素晴らしいバンドがあった事実は消えないんですから」

澪「……」

梓「たとえ当時を知っている人がいなくなっても、
  続けてさえいれば、新しい人がこのバンドに興味を持ってくれる。
  そうすれば、誰からの記憶からも消え去ってしまうなんて事はないんです。
  例え時代に忘れ去られようと、誰か1人でも、興味を持ってくれて、
  そしてそれを次に繋げてくれれば、
  決して私たちのやっていた事は無意味な事なんかじゃないんです」

澪「……」



106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:56:48.25 ID:z+tFwh1j0

梓「……すいません、本番前なのにしゃべりすぎました。そろそろ出番ですよ。袖に行きましょう」

澪「梓……」

梓「なんですか?」

澪「……ありがとう。梓がいなかったら、このバンドは当の昔に忘れ去られていた」

梓「……それはこっちのセリフです。このバンドがなかったら、今の私はなかったんですから」



108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:57:39.81 ID:z+tFwh1j0

薄闇に包まれたステージ上。そこにゆらりと1つの影が現れた。
それに続いて、1人、もう1人現れる。
客席からは嬌声が上がった。誰かが「待ってたぞー!」と叫ぶ。
ステージ上の影が、一瞬はにかんだ風に見えた。しかし表情まで確認する事はできない。
5つの影が定位置に着き、楽器を構える。
音の具合を確かめるように、各々が楽器を鳴らす。
ステージの中央に位置する影が手を上げる。
BGMが徐々に小さくなり、そして会場は、
この5人が鳴らす音を待ちわびる観客の声以外何も聞こえなくなった。



109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:58:49.54 ID:z+tFwh1j0

ステージに照明が当たる。
そこには、8年前のライブより少し年を取った放課後ティータイムのメンバーがいた。

澪「大変永らくお待たせしました、お久しぶりです、放課後ティータイムです」

客席の歓声は最高潮に達した。
律がハイハットを叩く。
4つのカウントに合わせ、4人が一斉に楽器を鳴らす。
8年ぶりの音がステージ上に鳴り響いた。






130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:05:58.72 ID:z+tFwh1j0

というわけでおしまいです。
支援してくださった皆様、読んでくださった皆さまありがとうございます。
こういうSSは初挑戦の上、文章自体を久しぶりに書いたので
あちらこちらにボロが見え隠れしていますが……。

最近、どうしてバンドをやっているんだろう、
どうして音楽をやってるんだろうという事をよく考えます。
小難しい事を考え出すと、その分余計に頭がこんがらがり、わけがわからなくなります。
考えに考え、最終的には
「そもそもなんで『バンド』という選択肢を選んだのか?」という疑問に行き着いたのですが
このSSで1つの答えを出せたような気がします。
もっとも、答えを1つ見つけたところで、全体の答えはまだ見つからないのですが……。

けいおん!放送終了に絡め、こういったSSを書いてみました。
時代に消えて行く音楽もあれば新しく時代を台頭する野球もあり。
けれど忘れてはいけないもの、忘れてしまいたくない物もありますよね、
という事を言いたかったのです。

長くなりましたが、皆さま、最後までお付き合いいただきありがとうございます。
文章を書き始めると長くなる悪い癖を持つ>>1でした。




110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:59:05.25 ID:dvcdN5+MO

泣きそうだ…



111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:59:24.58 ID:MGZDYe5cP


いいSSだった



112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:59:25.15 ID:TTxjcDY5O

完がうまい



113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 00:59:44.02 ID:5OXfstysO

ぱい乙ぱい乙



114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:00:07.66 ID:Hy2ugQgvO

超乙



115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:00:21.56 ID:lsuAGLap0

面白い終わり方だな



116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:00:35.51 ID:yTsZS40t0

短かったけど楽しかったです
やっと安心して眠れるわありがとう



117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:00:40.44 ID:V9/zIcozO

八年後の和ちゃんもかわいいんだろうなあ



118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:01:07.94 ID:VY8HRgp3O


ここまでしっかり書き溜めしていた>>1は初めて見た



119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:01:09.54 ID:P9xQ5+kVO





120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:01:30.94 ID:R3KGuQvd0

乙でした!



121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:01:48.64 ID:ozie2IZL0

おつっしたー



122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:03:46.28 ID:fBeuC+scO

むしろ唯のフリーター珍道中が気になる



124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:04:15.22 ID:iFQ8iHd2O

SSで感動するなんて…




125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:04:16.79 ID:S06RGAWK0

これは良SSだった



126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:04:22.65 ID:An/tTuWZO


感動しました



132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:06:44.46 ID:9SLfbktK0





135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:11:02.67 ID:uBcWhTwN0





137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:13:06.39 ID:780HLAKyO

面白かったよ、>>1



138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 01:13:19.25 ID:ZSUX+DICO

投下スピード早かったからサクサク読めておもしろかった




147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 02:06:03.82 ID:WIsgrFZ9O

>>130
『くだらないこと考えてないですき放題音楽やれ。
 音楽ってのはなぁ最大の自己満足であり最大の自己中心なんだよ!
 ビートルズでもどこぞの売れ専バンドでもどんなバンドでもそうなんだよ!』

俺がバンドに悩んで専門学校の講師に相談したら言われた言葉。



151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 04:10:41.19 ID:Gy96GV1qO

>>1
久々にVIPで良いSSが読めた



152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 04:16:48.66 ID:/wDLpRonO

俺も頑張ろう



153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 04:17:45.65 ID:ozc+QJXd0

すげえ良かった
けいおん!観てて良かった



154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/05(日) 04:48:18.40 ID:ojNaLoYXO

見終わった
面白かった
ありがとう





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澪「私たちは時代の中に消えていく」
[ 2011/06/05 23:37 ] 非日常系 | | CM(6)

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タイトル:
NO:2380 [ 2011/06/06 00:58 ] [ 編集 ]

私たちは時代の中に消えていく、か・・・確かにそうだなでも俺は生きてる限り心の中でけいおん!とHTTの事を思ってるぜ!

タイトル:
NO:2382 [ 2011/06/06 01:38 ] [ 編集 ]

スレ立てされた一昨年よりも今の方がより重い意味合いを持った作品だと思う。
けいおんSSでは王道な展開だが作品の趣旨としれっとした小気味の良さは素晴らしい。
>>122の様に唯のコンビニバイト10年が気になる。

タイトル:
NO:2386 [ 2011/06/06 02:10 ] [ 編集 ]

俺は一生りっちゃんを愛で続けるよ。

タイトル:
NO:2387 [ 2011/06/06 05:29 ] [ 編集 ]

カンタベリーってこれ書いた人幾つだよwww

もしかして梓がフィル・ミラー的な・・・。

タイトル:
NO:2388 [ 2011/06/06 06:47 ] [ 編集 ]

三十路で再結成かぁ…

タイトル:
NO:2607 [ 2011/06/17 16:41 ] [ 編集 ]

これは良かった!
三十路なんてまだまだ若いぞ。
ローリングストーンズなんていくつだとwww

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