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唯「憂が起きてこない……」 【非日常系】


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 16:52:07.73 ID:pETYkdIgO

いつも通りの朝。
のはずだったのに、今日は何かが違いました。

唯「……あれー?」

リビングに降りてきても、一向においしそうな匂いが漂ってきません。
いつもならもうとっくに憂が朝ご飯を作ってくれている時間帯。
なのにリビングはしんとしていて物音一つ聞こえません。





3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 16:53:20.16 ID:pETYkdIgO

唯「憂ー、うーいー」

呼びかけてみても答えはなし。今日休みだったっけ? と首を捻ります。
ううん、ちがう。憂は休みの日も早起きだし。
私のほうが先に起きるなんてこと、今まで一度もなかったはず。
寝坊かな? だんだんと不安になってきて、私は階段を駆け上がりました。



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 16:54:46.26 ID:pETYkdIgO

唯「憂、いるー?」

ドアをノックして訊ねると、少しだけ間を置いて反応が返ってきました。

憂「おねーちゃん……?」

よかった、いた。ほっとした私はドアを開けて憂の部屋に入ります。
中は薄暗く、心なしか重たい空気が漂っているような感じがしました。
ふざけた口調で、ベッドに寝たままの憂をからかいます。

唯「もー、びっくりしたよ。起きたら憂がいないんだもん」

憂「ごめんね……ごほっ、ごほっ」

唯「憂……?」

憂の口から漏れた咳に、私は目を丸くしました。
暗がりの中でもわかるほど憂の顔は赤くなっていました。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 16:56:50.10 ID:pETYkdIgO

ベッドに近寄り、おそるおそる問いかけます。

唯「憂、もしかして……風邪ひいたの?」

憂「うーん、たぶん……」

苦笑しつつ、憂は頷きました。普段のおっとりとした表情じゃなくて、どこか辛そうな感じで。
健康そのものに見えた憂が風邪をひくだなんて思わなくて、私は心の底から驚きました。

考えてみれば昨日からその兆候はあったような気がします。
口数は少なかったし、食器の後片づけをしてすぐ寝ちゃってたし。
でも具合が悪いなんて一言も言っていなかったから気づくことができませんでした。

「あ、でも」と言い足して、憂が身体を起こします。

憂「いつもより長く寝たから、もう大丈夫だよ。ごめんねお姉ちゃん、すぐご飯の用意するね」

唯「え? あっ、えーと、えーと」

憂がベッドから降りようとしたところを言葉を濁して押し止めました。
風邪をひいてる憂に、朝ご飯なんて作ってもらうわけにはいかないよ……!



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:03:19.81 ID:pETYkdIgO

唯「ご、ご飯ならもう食べたよ!」

憂「えっ、そうなの?」

ぶんぶんと首を縦に振ります。憂が首を傾げて私の顔を覗き込んできます。

憂「食べるものって、何かあったっけ……。昨日の夜に全部使っちゃったはずなんだけど」

唯「パン食べた、パン。食パン!」

憂「食パンなら昨日の朝食べたので最後だったよ」

唯「間違えた、あんパンだった! おいしい粒あんだった!」

憂「買ってきてないよ、あんパン。……お姉ちゃん、本当に食べたの?」

もちろん! と言おうとしたときでした。
突如、部屋にぐう~~~という音が鳴り響きました。

唯「あ……」

憂「……」

室内が途端に気まずくなります。
お互いに顔を見合わせること、数秒。
部屋を出て行こうとする憂を、私が全力で妨害するというちょっとした攻防戦がはじまりました。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:05:40.08 ID:pETYkdIgO

唯「だめだようーいー! 今起きたらしんじゃうよぉ~!」

憂の腰にしがみつきながら叫びます。憂のほうも無理やり前に足を踏み出そうとします。

憂「でもこのままじゃお姉ちゃん、遅刻しちゃう!」

唯「私のことはいいんだよぉ~! 朝ご飯くらい食べなくてもっ」

憂「平気なの?」

唯「え?」

憂「朝ご飯なくても、平気なの?」

唯「……」

黙ってしまった自分がなさけない……っ!



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:08:26.75 ID:pETYkdIgO

憂「私のことはいいから、下行こう?」

唯「でもっ」

憂は私の肩を叩いて一足先に部屋を後にします。憂の足取りは見るからにふらついていました。
案の定次の瞬間には、ドアの段差に足をとられてバランスを崩してしまいます。

唯「憂!」

憂が倒れそうになったところを慌てて腕で支えました。
憂の身体に触れた私は、思わず驚きの声を上げてしまいました。

唯「熱い……」

憂の身体は、とても熱くなっていました。
呆然とする私に、憂が力のない笑みを向けてきます。

憂「えへへ、ごめんね。ちょっとくらっと来て」

唯「――やっぱりだめ!」

両肩を掴んで憂の身体をベッドに押し返しました。こんな状態で無理したら本当にしんじゃう!



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:13:27.28 ID:pETYkdIgO

唯「今お薬持ってくるから、憂は寝てて!」

憂「……お姉ちゃん、心配性~」

不満げな憂の声を尻目に、私は部屋を飛び出します。
リビングに戻ると早速お薬のある場所を探しました。が。

唯「お薬どこだっけ……」

あらかた棚を探しましたが、風邪薬が出てくることはありませんでした。
全身から血の気が引いていきます。どうしてこんな肝心なときに!



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:16:47.84 ID:pETYkdIgO

軽いパニックに陥りつつも、私は洗面所のほうに目を向けました。
と、とりあえず先に濡れタオルを用意しよう!
リビングを抜けて廊下を通り、駆け足で洗面所まで移動します。
タオルは私でもすぐわかる場所に畳んでありました。
手頃なタオルを洗面器に浸して憂の部屋に戻ります。

その途中でした。
あまりに急いでいた私は、制服姿だということも、
タイツを穿いていたことすらもすっかり忘れていて。
洗面器を持ったまま、いつかのときみたく盛大に転んでしまいました。

唯「Oh Yeah!?」



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:20:25.29 ID:pETYkdIgO

水浸しになった自分を見下ろして弱々しく唸ります。

唯「あー……」

逆さまになった洗面器を眺めていると、次第に視界がぼやけてきました。
なんでこんな……妹の看病もろくにできないんだろう。自分の不甲斐なさに嫌気が差します。

憂「お姉ちゃん」

頭上から声が投げかけられました。憂が壁に手をついて一段ずつ階段を下りてきます。
涙目で「う~い~」と泣きつくと、苦笑いした憂に頭を優しく撫でられました。

憂「大丈夫? お姉ちゃん、怪我とかしてない?」

唯「怪我はしてないけど心が痛いです……」

これじゃあまるでどっちが姉かわかりません。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:23:44.29 ID:pETYkdIgO

ブルーの極みに達した私に、けれどなぜか憂はお礼を言ってくれました。

憂「ありがとう、お姉ちゃん」

唯「そんな……」

お礼されることなんて何もしてないのに。むしろ余計に迷惑をかけただけなのに。

憂「お姉ちゃんが私のために頑張ってくれるだけで嬉しいよ。ありがとう」

憂はどうしてこんな満面の笑顔を浮かべてくれるんだろうと、
私は不思議な気持ちでいっぱいになりました。
何も言うことができないまま、廊下を掃除する憂にならって私も手を動かします。
結局掃除が終わる頃には、授業のはじまる時間をとうに迎えてしまっていました。



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:30:18.42 ID:pETYkdIgO


唯「あ、もしもし。りっちゃん?」

休み時間を見計らって電話をかけると、聞き慣れた声が返ってきました。

律『唯? どうしたんだ、急に学校休んで』

唯「うん、実はね……」

わけを説明しようとすると電話先がなにやら騒がしくなる気配を感じました。
「うわっ」とか「やめっ」とかいう声がスピーカーを通して伝わってきます。
しばらくして電話に出てきたのはなんとあずにゃんでした。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:32:50.42 ID:pETYkdIgO

梓『唯先輩! 憂ってそっちにいますか!?』

唯「ふえっ。あずにゃん? なんでそこにいるの?」

クラスどころか学年も違うのに。電話の向こうではりっちゃんが『携帯返せよ~』と呻いています。

梓『だって、憂が学校休んだりするなんて思わなくて』

律『だからって上級生のクラスにまで来るか? 普通』

梓『心配しちゃ駄目だって言うんですか!』

唯「まあまあ」



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:35:37.66 ID:pETYkdIgO

どうやらあずにゃんは憂が休んだ理由を訊きたくて私のクラスまで来たみたいです。
友達思いのあずにゃんに頬が弛みました。
どうしよう、憂に替わってあげたほうがいいのかな。あ、でもその前に。

唯「憂がね、風邪ひいちゃったんだ」

梓『風邪……?』

唯「うん。それで今まで看病してたの」

あずにゃんがりっちゃんたちに事情を説明します。
受話器にノイズが走り、話し相手がまた替わりました。



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:38:13.81 ID:pETYkdIgO

紬『もしもし唯ちゃん。憂ちゃん大丈夫?』

唯「ムギちゃん、おはよー! うん、さっき寝たところ」

紬『よかった。今日部活終わったら、お菓子持ってお見舞いに行こうと思うの。お邪魔していい?』

お菓子!

私は大きく頷いて「どんとこーい!」と答えました。
りっちゃんたちの呆れた笑い声がかすかに聞こえてきます。
休み時間ぎりぎりまで話して携帯を閉じると、私はもう一度憂の部屋に向かうことにしました。



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:42:54.95 ID:pETYkdIgO

お薬を出したり、濡れタオルを用意したり。
そういうことを憂が一人で全部やってしまったので、
結局私は手持ち無沙汰になってしまいました。
これじゃ何のために学校休んだのかわかんないや。
休んだのは制服がびしょ濡れになっちゃったからだけど。

憂は放っておいたら体調が悪いにもかかわらず家事をはじめそうなので、
早々に部屋に戻ってもらいました。ちゃんと休んでるかな……?
起こさないようなるべく音を立てずにドアを開きます。
憂は穏やかな顔ですうすうと眠っていました。




26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:43:54.24 ID:Dm1/GzB30

ムギが転校する話書いた人と同じ気がしてきた





28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:47:41.39 ID:pETYkdIgO

>>26
どもです。覚えててくれてありがとう


唯「ムギちゃんが……転校?」



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:47:41.39 ID:pETYkdIgO

唯(よかった……ちゃんと寝てた)

心持ち胸が軽くなりました。憂のことだし、
「今日休んだぶんの勉強をしておかないと」とか言って机に向かっていそうな予感がしたから。

ベッドに腰かけて憂の寝顔を観察します。
こうして寝顔を見るのはずいぶんと久しぶりな気がしました。
同じ部屋で眠っていたときは、二段ベッドの下を見下ろせばいつでも憂の寝顔を見られたのに。
部屋が別々になってからは憂の色んな仕草……見られなくなっちゃったなあ。

唯(成長してるのかな。憂も私も)

憂の前髪を撫でつつ、微笑みます。カーテン越しに射し込む日光が、憂の白い肌を照らしていました。



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:52:08.37 ID:pETYkdIgO

――懐かしい匂い。
苦しむ私に、お母さんが心配そうな顔を向けています。

「だいじょうぶ。おかあさん、ここにいるからね」

温かな眼差しに包まれて、前髪を撫でられて。額に感じるマシュマロみたいな柔らかさと温もり。
ああ、そうだ。これは……。

「だからゆいちゃん、はやくげんきに――」



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:55:41.95 ID:pETYkdIgO

唯「ん……」

はっとして顔を上げます。びっくりした、いつの間にか寝ちゃってたんだ。
窓から入ってくる光は橙色に変わっています。
ベッドのほうを見ると、憂は特に変わった様子もなく眠り続けていました。
私は無我夢中で身を乗り出して、憂の上に覆い被さります。

唯(今の夢……そうだ、こうすれば!)

私たちが幼いときにお母さんがしてくれたことを、私は思い出していました。
憂の前髪を濡れタオルごと掻き分けて、額を露出させます。
露わになった額に、私は自分の唇を近づけます。



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:56:57.42 ID:pETYkdIgO

唯「大丈夫。お姉ちゃん、ここにいるからね。だから憂、早く元気になって……」

唇を通じて伝わってきたのは、憂の高い体温と、濡れタオルのひんやりとした感覚。
風邪をひいた私たちにとって何よりも強い力となったお母さんの唇の感触を、
今の憂に感じさせてあげたくて。ただその一心で、私は憂の額にキスをしていました。



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 17:59:12.03 ID:pETYkdIgO

憂「おねえちゃん……」

真下から声が聞こえました。
唇を離すと、顔を真っ赤にさせた憂が上目遣いにこちらを見上げているのがわかりました。
どう話しかけていいかわからず、私も黙って憂の顔を見つめ返します。

憂「……なんか、お母さんみたいだった」

唯「あ、憂も覚えてたんだ」

こくりと頷いて、憂は可愛らしくはにかみました。

憂「ちょうどその夢を見てたの。
  『憂ちゃん、早く元気になってね』って、お母さんが私のおでこにキスしてくれる夢」

唯「わあ、一緒だ。私もさっき同じ夢見てた」

覆い被さった体勢のまま笑います。それからは本当にもうかける言葉が見当たらなくて、
お互い真面目な顔で黙り込んでしまいました。



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:01:15.41 ID:pETYkdIgO

時計の動く音だけがいやに大きく耳に入ってきます。

憂「……ねえ、お姉ちゃん」

憂の瞳には、憂と同じくらい真っ赤な私の顔が映っていました。

憂「あのね。今のじゃ足りないから、もう一度、今度は――」

ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴ったのは、そのときでした。



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:05:03.85 ID:pETYkdIgO

律「やっほー! お見舞いに来たぞぉー!」

梓「律先輩、声大きいですよ」

お昼に話していた通り、りっちゃんたちがお見舞いに来てくれました。
後ろに立つ澪ちゃんとムギちゃんは買い物袋を手に提げています。

澪「唯のことだから、ご飯とか準備できてないだろうと思って」

紬「約束通り、お菓子も持ってきたわよ」

私はとても嬉しくなって、早速みんなを招き入れました。

唯「みんなありがとー! さ、入って入って!」



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:09:16.89 ID:pETYkdIgO

買い物袋はキッチンに置いてもらって、みんなを先に憂の部屋まで案内することにします。
部屋に着くなりあずにゃんが憂のベッドに駆け寄っていくのが見えました。憂が目を丸くします。

梓「憂、風邪は平気?」

憂「梓ちゃん、わざわざお見舞いに来てくれたの?」

梓「わたしだけじゃないよ。先輩たちも一緒。ほら」

あずにゃんが身体を横にずらしました。ドア付近でりっちゃんが「やっほー」と手を振ってみせます。



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:12:09.29 ID:pETYkdIgO

ムギちゃんが不安げな声で訊ねました。

紬「本当に大丈夫? まだ気分が優れていなさそうだけど……」

憂「え。そ、そうですか? そんなことないですよ」

なぜか憂は少しうろたえ気味にそう答えました。
ちらりと私に視線を送ったかと思うと、すぐにムギちゃんのほうに向き直ったり。
喜んでるのはわかるんだけど反応がなんか変に思えます。

澪「今日は私たちが唯の面倒見るから、憂ちゃんは休んでてよ」

憂「そんな、悪いです!」

律「いーのいーの。こんなふうに休める機会なんてなかなかないっしょ?」

梓「いつも唯先輩に代わって家事やってるんだし」

みんなのじとっとした視線を感じて、私は「ふえ?」と小首を傾げてしまいました。
あれ。もしかして私、責められてる?



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:16:49.36 ID:pETYkdIgO


唯「じ、じゃあ私はここで憂の看病を……」

身の危険を感じた私はそう言おうとしました。が。

律「はいはーい。唯は私たちと夕飯の準備をしましょうねー」

唯「でも私、料理できないし……」

澪「私たちが教えてあげる。とにかく何もさせないってことはないから、覚悟しなさい」

二人に肩を掴まれ、私は部屋から引きずり出されました。
そ、そんな! じたばたしながら盛大な叫び声を上げてしまいます。

唯「いやー! りっちゃんたちにさーらーわーれーるーぅ!」

律「うえっへっへっへ。澪さんや、これまたうまそうな唯が一匹手に入りましたな!」

澪「何の芝居だそれは……」

梓「憂、あとで食べやすいもの持ってくるから」

あずにゃんたちも憂に手を振って部屋を後にします。
ドアが閉じられるのを目の当たりにした私は、
澪ちゃんたちに引きずられてそのままキッチンまで強制連行。
……私に拒否権ってないの? なんてひどい! みんなの鬼! 悪魔!



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:20:29.81 ID:pETYkdIgO

急に静まり返った部屋が逆に違和感たっぷりで、私はつい寂しさに顔を俯けてしまいました。

憂「はぁ……」

ベッドに倒れ込んで天井を見上げます。
ついさっき、ほんのついさっきまで目の前にはお姉ちゃんの顔があったのに。
――あと少し顔を上げれば、唇が重なるくらいの距離に。

憂「残念」

自ら発した言葉に意外と嫌悪感は湧かなくて、むしろ清々しいくらいに思えて。
私は軽く吹き出しました。「もったいない」という気持ちが心の奥底から溢れてきます。



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:23:09.04 ID:pETYkdIgO

お姉ちゃんの唇が触れたあたりを、指でそっとなぞってみます。

憂(すごい、どきどきしてる)

お母さんのときとは違う、私の胸を激しく高鳴らせるお姉ちゃんのキス。
これがもし口と口だったら一体どんなふうになっちゃうんだろ、私……。
コンコン。

憂「ひゃう!」

ドアがノックされる音を聞いて、私は身を跳ね上がらせました。だ、誰か来た!

憂「ど、どうぞっ」

紬「憂ちゃん」

ドアの隙間から顔を覗かせたのは紬さんでした。



49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:28:30.20 ID:pETYkdIgO

緩みがちだった表情を改めて、突然の来客に視線を向けます。

憂「ど、どうしましたか?」

紬「もしかして……お邪魔だった?」

紬さんの台詞にどきっとしました。

「そんな、まさかあ」笑い飛ばそうとしたところを紬さんの真剣な瞳に見据えられて失敗し、
思わず口をつぐんでしまいます。紬さんがベッドの縁に腰かけてこちらを覗き込んできます。



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:31:31.92 ID:pETYkdIgO

紬「憂ちゃん、本当はもうだいぶ具合がよくなってるんでしょ」

憂「……どうしてそう思うんですか?」

紬「顔つきが元気そのものだもの。頬がちょっと赤いのは別の理由かしら?」

紬さんに悪戯っぽくそう言われて、ああ、この人にはもう全部見透かされてるんだなと確信しました。
そういえば紬さんは「そういう話」を喜んで聞く人だって、梓ちゃんが話してたっけ。

憂「その」

紬「?」

憂「……相談に、乗ってもらえませんか」

紬さんは終始ニコニコしたまま、ええと快諾してくれました。
私はかけ布団を思いきり引っ張り上げて、躊躇いがちに話しはじめます。



53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:35:05.02 ID:pETYkdIgO

律「わー! 唯、落とす落とす!」

唯「ふえっ? あ、あ、ああーっ」

積み重ねたお皿が宙を舞い、床に激突する瞬間。
澪ちゃんが華麗な動作でお皿を掴み取りました。
りっちゃんと私で澪ちゃんに大きな拍手を送ります。

唯「すごい、すごーい! ピエロみたーい!」

律「澪、やるなぁ! もう一回やってみせてよ!」

澪「だ・れ・が、やるかあー!」

澪ちゃんの見事なげんこつを受けて、私たちは料理を再開しました。
包丁の握り方をあずにゃんに教えてもらっていると、
後ろからなにやらひそひそ話が聞こえてきます。



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:38:30.26 ID:pETYkdIgO

律「なあ……やっぱり唯をキッチンに立たせるのはさ」

澪「色々と問題かもな。私、今度という今度は皿を割らずにいられる自信がない」

むう。なんだかわりと酷いことを言われてるような。
思わず「そんなことないよー!」と反論しようとしたときでした。

梓「先輩、危ない!」

唯「え?」

包丁の先端が私の人差し指にぷすり、と突き刺さりました。

律「あ」

唯「あ」

キッチンの空気が凍りつきます。人差し指からは血がたらり。
私の背中からは冷や汗が、たらり。

澪ちゃんが顔面蒼白で頭を抱えます。

澪「い、……いやああああー!!」

しゃがみ込んでしまった澪ちゃんをりっちゃんがなだめました。

律「ちょっ、落ち着け澪! 唯、こっちはいいからお前は早く手当てしてこい!」

唯「り、りりりりょうかいしましたあ!」



57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:43:34.76 ID:pETYkdIgO

私は慌ててキッチンから飛び出します。去り際にりっちゃんが私の背中に向けて叫びます。

律「ついでにムギも探してきて!」

ムギちゃん……? そういえばどこ行っちゃったんだろ。
「あいよー」と返事して私はリビングに走りました。

風邪薬のありかを知らない私が当然消毒液のありかを知るわけもなく、
ムギちゃんの姿も見当たらなくて、仕方なく憂の部屋に足を運ぶことにします。
今日だけで何度あの部屋に行ったかわかりません。



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:47:30.16 ID:pETYkdIgO

階段を上がるとムギちゃんの話し声が届いてきました。

唯(あ、ムギちゃんいた。でもどうして……)

憂の部屋にいるんだろう?
不思議に思いながらドアの前に立つと、よりはっきりとした声が聞こえてきます。
ムギちゃんはどうやら憂とお話しているみたいでした。二人とも何を話しているんだろう。

唯「ねーねー二人とも、一体何を……」

紬「つまり憂ちゃんは、唯ちゃんとキスがしたいのね?」

Yeah?



59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:51:37.89 ID:pETYkdIgO

なんと……今ムギちゃんは、なんとおっしゃいました?

憂「そういうことです……」

憂も肯定しちゃってるし! えと、えとえと、これって一体どういうことー!?
私は無意識に胸の前で両手を合わせました。

唯「あいたーっ!」

紬「!?」

憂「お姉ちゃん!?」

人差し指に激痛が走り、自分でも驚くくらいの大声を発してしまいました。
ムギちゃんがものすごい速さで部屋から飛び出してきます。涙目の私の顔面を捉えて、

紬「唯ちゃん、今の話……聞いた?」

必死の形相でそう訊ねてきます。痛む指をくわえたまま、私は否定の態度を示しました。

唯「聞いてない、聞いてないよ!」

紬「本当に? 嘘ついたらお菓子はなしよ?」

唯「うーん……聞いちゃったかも……」

弱いなあ私! せめてもうちょっとだけ粘れないかな!



61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 18:56:09.05 ID:pETYkdIgO

紬「なんて最悪なタイミングなの……」

ムギちゃんが腕組みをして溜め息をつきます。
部屋からすすり泣く声が聞こえてきたのは、そのときでした。

唯「うい――?」

今のって、憂の泣き声? 私はムギちゃんを押しのけて部屋に飛び込みます。

唯「憂、どうしたの!?」

部屋に入った私は思わず呆然としてしまいました。
憂は頭から布団を被って、うずくまってしまっていました。
憂のこんな姿を見るのは久しぶりで、一体何が起きているのか全然わからなくて。
慌てふためいた私は、とりあえず床に膝をついて必死に謝ることにしました。



62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 19:00:34.95 ID:pETYkdIgO

唯「ご、ごめんね憂。私、憂とムギちゃんが話してるの知らなくて、それで」

憂からの反応はありません。ただかすかな嗚咽が中から漏れ聞こえてくるだけです。
私はいよいよどうしたらいいかわからなくなって、布団越しに憂の身体を揺さぶりました。

唯「ねえ憂、どうしちゃったの? お願い、何か喋ってよお……」

憂「出てってよ……」



64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 19:03:46.28 ID:pETYkdIgO

唯「え?」

まさかの一言に思考が停止します。憂の泣き叫ぶ声が、私の胸の奥深いところを鋭く貫きました。

憂「お願いだから部屋から出てってっ」

気づけば、私は青ざめた表情で何もできず固まってしまっていました。
焦点の定まらない目で憂の布団を見下ろします。
もう一度、次はもっと真剣に謝ろうとしたときでした。

紬「唯ちゃん、今はそっとしておいてあげましょう」

ムギちゃんが私の肩に手を載せてきました。
「でもっ」納得いかない私に、けれどムギちゃんは無言で首を横に振ります。
なんだかどうしようもなく悲しくなって、私はがっくりと肩を落としました。
ムギちゃんに連れられて憂の部屋を後にすることにします。
人差し指の痛みはとうに感じなくなっていたけど、代わりに激しい痛みが胸を襲っています。

唯(いやだよ……)

私は心中で呟きました。憂、どうしちゃったの……。私のこと、嫌いになっちゃったの……?



65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 19:09:29.88 ID:pETYkdIgO

ドアがぱたんと閉じられる音を耳にします。私は自己嫌悪でいっぱいになっていました。
お姉ちゃんは何も悪くないのに。ううん、誰も悪い人なんていないのに。
ただお姉ちゃんに嫌われるのが嫌で、お姉ちゃんの言葉を聞くのが怖くて、
あんな態度を取った私が悪いだけで……。

憂(もう、お姉ちゃんの顔……見られないよ)

先ほどの会話を聞かれたことよりそっちのほうが辛くて、
私は再び泣き出してしまいました。ごめんねお姉ちゃん。悪いのは私なの。
キスがしたいだなんて思った私のほうがおかしいだけなの……。

一人だけの部屋はさらに孤独感を増して、私を押し潰そうとしてきます。
今の私にそれを弾き返す力はありませんでした。
布団を引っ張る力を強めて、私はただ時間が過ぎるのを待ち続けました。



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 19:14:32.02 ID:pETYkdIgO

澪「唯。ゆーい」

梓「唯先輩、聞いてますかー?」

澪ちゃんたちの呼びかけで私は我に返りました。
時計は夜の八時を指しています。みんなはもう帰り支度をはじめています。

せっかくおいしそうなカレーを作ってくれたのに、
ほとんど口にできないまま片づけられてしまいました。
ムギちゃんのお菓子を前にしてもちらつくのは憂の顔ばかり。

お願いだから部屋から出てってっ――
あんなことを言われたのははじめてで、どうしたらいいか、
どんな言葉をかけたらいいのか、ちっとも頭が働きません。
このままずっと憂に嫌われて生きていくのかと思ったらっ……。

唯「ぐすっ……そんなの、いやだよう……!」

律「うわっ、どうした唯!」

梓「唯先輩、やっぱりさっきからおかしいですって!」



69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 19:18:20.25 ID:pETYkdIgO

みんなから心配されても流れ出る涙を止めることはできません。
すると、ムギちゃんが意を決したような表情で私の手を取りました。

唯「ううう……ムギちゃぁん……」

紬「ね、唯ちゃん。ちょっとだけ聞いて」

周りの視線も気にすることなく、ムギちゃんは真摯な声で語りかけてきます。

紬「唯ちゃんも憂ちゃんも、もう昔とは違うの。
  二人とも大きくなったのよ。お母さんのキスで単純に喜べる日々はもう終わったの」



70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 19:21:19.68 ID:pETYkdIgO

ムギちゃんが何を言っているのかわかりませんでした。
それでもムギちゃんから不思議と目を離すことができません。

紬「憂ちゃんはね。唯ちゃんとのキスに、
  お母さんのものとは違う、何か別のものを見いだしたの。
  唯ちゃんはそれに気づいてあげないとだめ」

唯「別のもの……?」

わからない。わからないけど。ムギちゃんが何かを訴えかけていることだけはよく理解できて。

唯「それに気づいたら、憂と仲直りできる……?」

紬「絶対とは言えないけれど、転がりようによっては、きっとね」

それなら。私は涙を拭うと、大きくかぶりを振りました。

唯「じゃあがんばる。がんばって、憂の気持ちに気づいてみせる」

ムギちゃんが満面の笑みを浮かべます。
何の話をしているのかさっぱりな澪ちゃんたちは、顔を見合わせて互いに首を傾げるばかり。



74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 19:26:36.40 ID:pETYkdIgO

澪「えっと、じゃあ何かあったらまた連絡してよ」

律「よくわからないけど、あんまり一人で思い悩むなよー」

帰り際、みんながかけてくれた言葉に、私は胸が温かくなるのを感じました。

唯「うん。澪ちゃん、りっちゃん、ムギちゃん、あずにゃん。
  今日は本当にどうもありがとう。また明日ね」

はにかみながら小さく手を振って、夜の闇に消えていくみんなを見送ります。
玄関のドアを閉めたのち、私は憂の部屋のある方角を振り向きました。
明かりの消えた廊下を前に、喉がごくりと音を立てます。

唯「憂……」

憂が何を求めているのか、知るのはちょっとだけ怖い気もするけど。
憂とこのままなんて嫌だから私は一歩足を踏み出すの。

憂の笑顔が見たいから。
もしかしたら二度と今の関係には戻れないかもしれないけど、一歩前に踏み出したい。

唯「よし」

覚悟を決めると、私は階段に足をかけました。



75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 19:31:47.58 ID:pETYkdIgO


唯「憂、入るよ」

ドアの奥には、依然として膨らんだままの布団が見えました。
私はベッドに腰を下ろすと、なるべく落ち着いた声で話しかけます。

唯「ねえ、出てきてよ、うい……。寂しいよ」

憂「……」

もぞもぞと布団が動いて、中から憂が顔を覗かせました。
布団から出てきてくれたのはいいものの、憂は私に背を向けて沈黙を貫き通します。
憂の背中はしゅんとしていて、見るからに落ち込んでいる様子が伝わってきました。
憂にもこんな弱々しい姿があったんだ……。
ずっと立派な姿ばかり見てきたから、もしかしたら忘れちゃっていたのかもしれません。



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 19:35:14.28 ID:pETYkdIgO

唯「ごめんね、憂」

私は後ろから憂を抱きしめました。憂が身じろぎして、真っ赤な目をこちらに向けてきます。

唯「私のせいで憂を傷つけちゃって……ごめん」

憂「お姉ちゃん……」

いつだって私の傍にいてくれた大切な「妹」。
でもきっと憂は、なんとなくだけど、それを望んではいないんだと思います。
だから考えるんだ私。憂がどうしてほしいのかを……。



77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 19:39:34.45 ID:pETYkdIgO

唯「ねえ、憂」

私は憂の耳許で囁きかけました。

唯「こっち向いてよ」

憂は首まで赤くして首を横に振ります。

憂「向けないよ……。私、もうお姉ちゃんに合わせる顔がないもん」

唯「どうして? 憂は何も悪くなんかないよ?」

憂「悪いよ。私、ちょっとおかしいの。
  お姉ちゃんとキスすること考えてたら、頭がぼーっとしちゃって。
  お姉ちゃんはこんな妹……嫌でしょ?」

唯「いやなんかじゃないよ」

本心からの言葉を紡いで、私は憂の頭を撫で回します。
「うそだよっ!」泣き顔で振り返った憂の口を、次の瞬間、私の唇が塞ぎました。



79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 19:43:09.80 ID:pETYkdIgO

憂「んっ……」

わずかに開いた憂の唇から吐息が漏れ出します。
驚きのあまり身を剥がそうとした憂を抱き寄せて、
キスを交わしたまま、まるでもつれ合うかのようにベッドに倒れ込みます。

どれくらいそうしていたでしょうか。
お互い真っ赤になりながら、ふわふわした感覚の中で素直な感想を口にしました。

唯「……キスってすごいねえ」

憂「……うん、すごいね」

見つめ合っていると妙におかしさがこみ上げてきて、
それは到底耐えられるものではなくて。私たちは熱っぽい笑顔を浮かべ合いました。
汗でへばりついた憂の前髪に心臓がどきりと高鳴ります。

あぁそうかと、私ははっとした気分になりました。
きっと……憂もこんな気持ちだったんだ。

今までわからなかった、あるいはわかっていて見ようとしなかった様々な感情が、
たった一回のキスで一気に解放されたような気がしました。
私、憂がいつからか……どうしようもないくらいに好きになってたんだ。



83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 19:47:44.02 ID:pETYkdIgO

唯「……ぎゅ~」

自覚した途端、今までとは違う「好き」って気持ちが私の全身を満たしました。
憂の身体に回した腕をさらにきつく締め上げます。

唯「ぎゅー、ぎゅー」

憂「お、おねえちゃん。苦しいよ」

そう言う憂は、けれど抵抗する気配は微塵も感じられなくて。
湧き出る愛情を抑えきれず、私は「ういー、うーいー」と名前を呼びながら
一心不乱に頬を擦りつけました。



85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 19:52:29.97 ID:pETYkdIgO

唯「一生大事にするよ。もう憂は私のもの。ずっとずっと私だけのものだよ」

憂「よ、よくわかんないけど。とりあえず気持ちが通じたみたいだし、喜んでいいのかな……?」

唯「もちろん。ね、もいっかいちゅーしようよ。ちゅー。ねー、うーいー!」

なんか、多くのことをほっぽり出しちゃった気もするけど。
憂も嬉しそうだし、これでいいのかなとも思います。
難しいことを考えるのはもう少しあとでいいや。
今はただ憂だけを見ていたい。憂のことだけを感じていたい。だから……。

唯「――好きだよ、憂」

憂「私も……お姉ちゃんが大好き」

他に誰もいない部屋で私たちは、それ以上言葉を交わすことなく、
互いの温もりを確かめあうことに集中します。
未来のことなんて全然わからないけど、
憂がいて、私がいれば、道が閉ざされることはない。そう思います。



89 名前:エピローグ:2009/07/04(土) 19:58:35.37 ID:pETYkdIgO

それからしばらく音楽室では、一冊のノートが部員たちによって回されることになりました。
  
○平沢唯観察日記
九月二日(火曜日) 記入者:田井中律

珍しく唯が家からお弁当を持ってきてたよ。間違いなく憂ちゃんが作ったものだと思うけど。
ご飯のところに大きなハートマークが描かれていたのが見えたな。
ありゃどう見ても愛妻弁当だよ、愛妻弁当!

↑ハートマークって何で作られてたんだ?
↑確か鮭フレーク
↑おいしそうね



91 名前:エピローグ:2009/07/04(土) 20:00:16.27 ID:pETYkdIgO

九月三日(水曜日) 記入者:中野梓

昨日から唯先輩が教室まで憂を見送りに来ています。
いつも一緒に学校来てるのは知ってましたけど、
あんなべったりしてるとは思わなくてびっくりしました。

あと、憂もなんか様子が変です。話しかけても上の空だし。
「お姉ちゃん……ふふ、ふふふ……」って突然笑い出すし。心配だなあ……。

↑うわ、それはやばいな……
↑おかしいのは唯だけじゃないってことか
↑むしろ憂の変貌っぷりが見ていて怖いです



93 名前:エピローグ:2009/07/04(土) 20:01:55.67 ID:pETYkdIgO

九月四日(木曜日) 記入者:秋山澪

おい、あれは一体何なんだ? ここ数日、唯が憂ちゃんの話しかしてないぞ!
お見舞いに行ったときも様子が変だったし、やっぱりこれはもう何かあったとしか……。

↑今日にでも問いただしてみるか!
↑賛成です!
↑でも、いいのかしら……そんなことして
↑だって気になるじゃん?
↑善は急げだ! やーるぞー!



96 名前:エピローグ:2009/07/04(土) 20:03:31.51 ID:pETYkdIgO

九月五日(金曜日) 記入者:琴吹紬

神は天にあり、世はすべてこともなし。
まさに雨降って地固まる、ね。おめでとう、憂ちゃん。唯ちゃん。
もしものときの旅費は私が出すから安心してね!

↑おーい、ムギ……いいのかそれで……
↑唯 先輩が幸 せ なら、そ れでい いと思い ます
↑字が震えてるぞ梓
  
――日記はここで終わっています。
  
おしまい。



102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 20:08:12.19 ID:pETYkdIgO

えっと、皆さん、今回もどうもありがとうございました。
ムギちゃん転校話から、続いて二作目になります。
唯×憂を欲望のままに書きつづりました。楽しんでいただけたら幸いです!
にしても姉妹の壁を越えるのって難しいですね。苦労しま……した……




97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 20:05:28.61 ID:xNcB4jK/O





98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 20:06:07.53 ID:VVraX5bm0

乙~



99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 20:06:35.64 ID:zK4SPcRxO

乙!ハートフルとはこの事か
やはり唯憂はいい、そして


ムギ
うま



100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 20:06:45.28 ID:Dm1/GzB30

乙!ムギだけ諸手を挙げて喜んでてわろたwww



104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 20:10:59.69 ID:VREbHY4vO

>>1
おかげで発狂できた



105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 20:13:40.90 ID:fr2G2SiPO



いいなぁ……
本当にこの姉妹いいなぁ……



106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 20:15:09.32 ID:rvyYe8NX0

やっぱ書き溜めてあるとサクッといっていいな
清々しい



107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 20:15:30.96 ID:Up1QNaI70

憂ちゃんがかわいすぎて生きるのがつらい



108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 20:19:19.84 ID:ZoUrtEyOO

>>102乙でした
また頼みます



109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 20:21:43.10 ID:YjbvPGgC0

あぁ…完璧だ…



116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 20:41:11.70 ID://8bHqSZO

荒んだ心が癒された
>>1



118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 21:09:38.49 ID:t9LlUIYmO

>>1
楽しかった、乙。
また何か書いてくれや



119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 21:13:26.62 ID:sZxkSYVuO

絵本口調いいなぁ~心が暖かくなるよ
本当に面白かったです乙でした



121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 21:20:13.95 ID:qhrd0acgO

良かったよ
感動しました。




122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 21:54:26.61 ID:gveoYcDpO

読んだ
面白かったで!
次回作も期待してます



123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 22:07:52.00 ID:fr2G2SiPO

なぜだろう、もう終わったのにまた読みたくなる

唯×憂が可愛いすぎるからいけないんだ!



128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 22:52:26.57 ID:2+eTRcCs0


おもしろかった



130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 23:11:19.25 ID:YYCqMLvzO

感動をありがとう



132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 23:25:48.04 ID:DY5kRXQT0

いいはなしでしたー



133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/04(土) 23:37:39.33 ID:eaJAxbl10

むずかしかたけど乙





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タイトル:
NO:2445 [ 2011/06/09 09:11 ] [ 編集 ]

世はすべてこともなし!
とっても和んでにやにやできました。

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