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梓「生徒会長直属特殊治安組織『軽音部』……知らんがな」#2 【アクション】


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梓「生徒会長直属特殊治安組織『軽音部』……知らんがな」#1
梓「生徒会長直属特殊治安組織『軽音部』……知らんがな」#2
梓「生徒会長直属特殊治安組織『軽音部』……知らんがな」#3
梓「生徒会長直属特殊治安組織『軽音部』……知らんがな」#4




50 名前::2011/05/19(木) 19:53:22.63 ID:1rWkWI6Xo



~~~~~

中間テスト1日目の放課後。

唯「一日目終わったぁー!」グダー

律「ヤマがことごとく外れた…もう終わりだぁ」グッタリ

澪「おいおい、あと2日あるんだぞ。帰って勉強しないと」

紬「でもせっかく部室に来たんだし、お茶でも飲みましょ♪」

梓「あ、私レモンティーで…」

テスト期間中は軽音部の仕事も量を減らしていたが、
『手品師(マジシャン)』の調査だけは5人で続けていた。
勉強との両立は過酷だったが、なんとかテスト初日は乗り切った様子だ。

澪「流石に今日くらいは『手品師』の調査はいいだろう」

律「ったく、なんでよりにもよってテスト期間中に仕事増やすんだよ…」ブツブツ

唯「でもさぁ、全然手がかりないし、もしかしたら本当に職員組合の自作自演かも」

紬「そんなことしても誰も得しないわ。動機と目的が分からない以上、
  調べるのが難しいのは仕方ないんだし地道にやっていくしかないのよ」

やや諦め気味の唯に対し、紬が諭すように話す。





51 名前::2011/05/19(木) 20:07:47.29 ID:1rWkWI6Xo

律「もうその話は止めようぜ。気が滅入る」

澪「そんなこと言って、お前は地味な仕事が嫌いなだけだろ」

律「もっとこう、どかーんと解決できる事件ないかな~」

律が愚痴をもらす。それに対し、梓は少し遠慮がちに話題を元に戻した。

梓「……あの、オカルト研の人たちが捜査対象になることはないんですか?」

紬「う~ん…。あそこなら確かにセキュリティ突破も可能かもしれないけど…」

澪「オカルト研…通称『異常魔技適合者隔離施設』か」

梓「はい…」

唯「でもオカルト研の人たちはみんな良い人ばかりだよ?そんなことするとは思えないよぉ」

律「唯がそう思っててもな…あそこは所謂、タブーの領域なんだよ。一般生徒は誰も近寄らない」

澪「あそこの人たちは確かに悪事を働くようなことはしないかもしれない。
  ただ、隔離施設と称して彼らを利用するやつが居ることも、ほぼ確実なんだよな…」



52 名前::2011/05/19(木) 20:12:20.79 ID:1rWkWI6Xo

梓「なら余計に調査するべきなんじゃ…!」

紬「いえ、オカルト研は軽音部の調査対象からは除外されているわ」

梓「…!なんでですか!?」

澪「…つまり、彼らを利用している奴ら…それこそ生徒会長ですら逆らえない上層部からの圧力だ。
  おそらくオカルト研の異常なほどの魔技能力を違法に研究、利用しているんだろう」

梓「そんな…!」

律「正直な話、今回の『手品師』事件の最重要参考人に上がることは間違いない。
  だけど私たちじゃどうすることも出来ないんだよ」

梓「でも…!!」

梓が語気を荒めて反論しようとした時、5人の携帯が一斉に鳴りだした。

ギュイッ ギュイッ ギュイッ

「!!」

全員に緊張が走る。
緊急要請の知らせは4月の巴マミの件以来だ。



53 名前::2011/05/19(木) 20:16:53.70 ID:1rWkWI6Xo

律「…アンプに繋げるぞ」

ザザ…というノイズと共にアンプから生徒会長、真鍋和の声が響く。

「緊急事態発生よ。軽音部は大至急職員室に来て頂戴」

緊急を知らせる割に淡々と告げる声はそこでプツンと切れた。

澪「どうやら出動要請というわけじゃなさそうだな」

唯「テスト中に何かあったのかな…?」

律「とにかく行ってみよう。『楽器』の準備は必要ない」

5人とも強張らせた表情を元に戻したが、それでも緊張感は残っていた。
不安な面持ちで部屋を出て、職員室へと向かう。

~~~~~

律「…失礼しまーす」ガチャ

和「来たわね」

軽音部が職員室に入ると、そこには生徒会トップの役員が数人、そして張りつめた空気を
更に重くするほど険しい表情をした教職員が大勢居た。



54 名前::2011/05/19(木) 20:20:18.75 ID:1rWkWI6Xo

澪「何が起きたんだ?」

和「……『手品師(マジシャン)』が現れたわ」

梓「!!」

和「そしておそらく、前回の事件より深刻な事態であることは間違いない…」

神妙に語る和に軽音部は困惑した。

紬「『手品師』は何を…?」

紬が質問すると、先生の一人が黙って一枚の紙を渡した。

律「?…なんだこれ」

3年生の数学のテスト用紙…傍目から見ればただの紙だが
答案を見た律は驚愕のあまり紙を落としそうになった。

そこに描かれていたのは赤ペンで塗りつぶされた人間の絵…
そしてその下には大きく文字が書かれていた。

『天罰を下す時が来た。悪を為す教員組合に正義の裁きを。血の祭りは学園祭の幕と共に上がる』



55 名前::2011/05/19(木) 20:32:04.74 ID:1rWkWI6Xo

澪「な……!?」

5人が言葉を失っていると、先生の一人が事の起こりを説明し始めた。

先生「犯行予告はこれだけじゃない。
   3年生の数学の解答用紙、全てに似たような落書きがあった」

唯「す、全てってことは…400人近い生徒がこれを!?」

先生「もちろん誰一人としてこの落書きには気付かなかった。
   魔技対策を施していた私たち教職員ですら、
   解答用紙を回収してここに持ってくるまで気付かなかったのだ」

澪「…生徒はこのことを知っているんですか?」

和「幸いにもこのテストを受けた生徒はみんな、
  自分がちゃんと数学の問題を解いたと思っているわ。
  だけど情報はどこから漏れるか分からない…拡散することだけは避けたいわね」

先生「当然、今回の数学のテストは返却しない。
   ただし今すぐにこの回答用紙を処分することもしない。
   君たち軽音部にこの事件の調査を依頼したいのだよ」

律「…ま、確かにこういう事件は私たちの得意分野ではあるけどさ…」

先生「君たちに拒否する権限はない」

律「へいへい、了解いたしやした…」



56 名前::2011/05/19(木) 20:37:06.95 ID:1rWkWI6Xo

先生「それから、中間テストは引き続き行っていく」

律「はぁっ!?」

先生「確かに今回の事件は前代未聞の非常事態と言わざるを得ない。
   しかしテストを中止する理由にもなるまい」

澪「それじゃあ私たちは『手品師(マジシャン)』の調査とテスト勉強を並行してやれと?」

先生「そうだ」

律が今にも怒鳴りそうな剣幕で一歩踏み出したが、和がそれを阻止した。

和「分かりました。ですが軽音部だけに負担をかけるのは得策とは言えません。
  これほど大規模な魔技の使用痕跡を調べるだけでもかなりの手間と時間がかかります」

先生「ほう、何か他に手段があるというのか?」

和「調査にオカルト研の協力を希望してもよろしいでしょうか」

先生「…! それは私の一任では決められないな。少なくとも教頭先生の許可が必要だ」



57 名前::2011/05/19(木) 20:41:05.04 ID:1rWkWI6Xo

教頭「私ならここに居る」

先生「!教頭先生…」

教頭「真鍋和生徒会長の意見ももっともだ。
   いいだろう、オカルト研の顧問の先生には私から言っておく」

和「ありがとうございます」

教頭「ただし、『手品師(マジシャン)』に関する事以外にオカルト研と接触することは禁止する。
   無用な詮索は認められない」

和「結構です。さっそく軽音部に調査を開始させます」

律「お、おい和…」

和「行きましょう」

和はそう言って軽音部を外に連れ出した。



58 名前::2011/05/19(木) 20:44:26.39 ID:1rWkWI6Xo

和《かなりキツイかもしれないけど、調査の方頼んだわよ》

廊下を一緒に歩きながら、突然『知覚網(シェア)』で軽音部に話しかける。
5人は顔色一つ変えずに『知覚網』に対応した。

律《テスト終わってからじゃ駄目なのかよ》

和《仮にもあなたたち防諜機関でしょ。情報は新鮮なうちに活用しないと》

澪《それはそうだけど…あの答案用紙で手がかりを掴むなんて短時間で出来るわけない》

和《そのためにオカ研の協力の許可を貰ったんじゃない》

律《…オカルト研が『手品師(マジシャン)』の隠れ蓑だって可能性に賭けるのか?》

和《そうじゃないわ。オカ研の人たちの力を借りるのよ。どんな魔技を使うのかは分からないけど、
  おそらくあなたたちよりも強い魔力を持っている。そういう意味で協力を頼んだの》

紬《…もしもオカ研がそれを断ったら?》

和《その時はオカ研を『手品師(マジシャン)』の容疑者として捜査すればいいわ》

澪《えっ…でもそれはしないという条件なんじゃ》

和《時には型破りの手段も必要よ。むしろそのための軽音部でしょう?上手くやって頂戴》



59 名前::2011/05/19(木) 20:52:40.14 ID:1rWkWI6Xo

律《…バレたら和の立場だって危なくなる。相手は教職員なんかより上の権力なんだぞ?》

和《分かってるわよ、それくらい。だけどこれはチャンスでもあるの。
  奴ら…教員組合が裏で不正や闇取引をしている証拠を掴むには絶好の機会だわ。
  今まで以上に危ない橋を渡ることになるけど、
  軽音部なら『手品師(マジシャン)』を捕まえることも、
  奴らの汚職を暴くことも不可能じゃない…そう信じてるわ》

唯「和ちゃん…」

和の意志を受け止め、軽音部は目的地へ向かった。

和「…さ、着いたわ。ここがオカルト研、いえ『異常魔技適合者隔離施設』ね。
  言っておくけどここから先は魔技は使えない。後は頼んだわよ」

一見、何の変哲もない教室の扉の前で5人は和と別れた。

澪「ここが…オカ研…」

律「…ビビってても始まんないぜ。堂々としてりゃいいんだって」

そう言うと律は思い切り扉を開けた。

律「たのもーっ!!」バンッ

?「ひぇっ!だ、誰ですかぁ!?」

澪「バ、バカっ!そんな大声だす奴がいるか!」



60 名前::2011/05/19(木) 20:58:44.34 ID:1rWkWI6Xo

唯「シャロ~元気してた~?」

シャロ「この声は…唯さん!?久しぶりですぅ~!」

梓「え…唯先輩の知り合いなんですか?」

手を取って喜ぶ二人を、軽音部の面々は茫然と眺めていた。

ネロ「シャロ~そいつら誰~?」

コーデリア「なんて美しい再会の喜び…ああ、そこは二人だけの世界…!」ウットリ

エリー「もしかして……一年の時の……軽音部の…人…?」

教室の奥から出てきたのは奇抜な格好をした生徒3人
――かつてミルキィホームズとして探偵クラブを作ったメンバーだった。
  
アンリエット「あなたたちが軽音部ですか?」

律「は、はい…(すげぇ美人な先生だな…おまけにボインだ)」

アンリエット「話は聞いています。
        この子たちが『手品師(マジシャン)』の捜査を手伝うということですが…」



61 名前::2011/05/19(木) 21:05:44.02 ID:1rWkWI6Xo

シャロ「私たちが唯さんたちのお手伝いをするんですか!?」

ネロ「なんの話だよぉ聞いてないぞそんなこと~」プンプン

アンリエット「正直、力になれるかどうか…」

アンリエット会長、つまりオカルト研の顧問の先生は困ったような口調で言った。
対する軽音部は揃って顔を見合わせ、
なんだか想像してたのと違うぞ、とでも言いたげな雰囲気だった。

律「(おいおい、ホントにこの中に『手品師』の鍵になる人物がいるのかよ)」ボソボソ

澪「(わ、私に聞くな…)」ボソボソ

ネロ「そこっ。何コソコソしゃべってるんだよ~」

澪「す、すいません…」

シャロ「まあまあ、ネロ。ところで唯さん、私たちが手伝うって、どーゆうことですか?」

唯「実はね、『手品師(マジシャン)』ていうすごい魔技使いが悪い事してるんだ~。
  私たちだけじゃ捕まえられないから、シャロの力を借りたいんだけど…」

シャロ「それでしたらお安い御用です!さあみなさん、唯さんたちに協力しましょう!」

ネロ「ちょっと、何勝手に決めてるんだよぉ~」プンプン



62 名前::2011/05/19(木) 21:09:21.32 ID:1rWkWI6Xo

アンリエット「シャロ、あまりみだらにトイズを使うのは駄目ですからね」

梓「トイズ?」

アンリエット「あなたたちで言う所の魔技です。
       この子たちはこの隔離教室に居る限りはトイズを使えませんが、
       一旦外に出たら収拾がつかなくなる恐れがあります。
       その時はちゃんと抑え込んであげて下さい」

紬「収拾がつかなくなる…どうなるんですか?」

アンリエット「所謂暴走です。特にシャロのトイズ『念動力(サイコキネシス)』は暴走すると危険ですから、
       そうなる前に平沢さんの『憑依(ジャック)』で無理にでも抑えてください」

唯「あれ?なんで私の魔技を知ってるんですか?」

アンリエット「私はさわ子先生と対魔技用思考楽器を共同で開発しているのです。
       軽音部の魔技については良く知っています」

律「そ、そうだったのかよ…意外な接点じゃねーか」

だったら最初からこんな回りくどいことをせずに
さわ子に頼んでオカルト研を調べられたのに、と律は心の中で思った。

澪「『念動力(サイコキネシス)』か…私の『念動波(テレキネシス)』とほとんど同じ能力だ」

シャロ「よろしくお願いします!軽音部のみなさん!」



63 名前::2011/05/19(木) 21:15:48.35 ID:1rWkWI6Xo


~~~~~

ネロ「…んでさ、私たちは何をすればいーの?」

律はとりあえずオカ研改めミルキィホームズの4人を部室へ招き、作戦会議を開いた。

澪「そうだな…今私たちがするべき事はこの答案用紙から魔技の痕跡を探ることだ」

澪は山積みになった答案用紙を指差して言った。

紬「ちなみにシャロさん以外はどんな魔技…トイズが使えるの?」

ネロ「私は『電子制御(ダイレクトハック)』だね。電気で動かせるものならなんでも操作、変形できるよ!」

コーデリア「私のトイズは『五感強化(ハイパーセンシティブ)』と言って、その名の通り五感を強化できるわ」

紬(…私と同じ感知系、もしくは意識干渉系ね)

エリー「わたしは……『怪力(トライアセンド)』…です」

律「お、もしかして私と一緒!?」

エリー「そ、それは……分かりませんけど…」オドオド

澪「……っていうか…」

梓(…この人たちの魔技、全然役に立たないんじゃ……)



64 名前::2011/05/19(木) 21:19:55.45 ID:1rWkWI6Xo

みるみる内に軽音部のメンバーに不安の表情が浮かんでいった。
そんなことはおかまいなしに、ミルキィホームズの4人は適当にくつろいでいる。

コーデリア「この答案用紙からトイズの特性を調べればいいのね?」

話が先に進まないと思ったのか、コーデリアが意見した。

律「特性…というか、まぁ何か手掛かりをだな…」

コーデリア「なら私に任せて!こういうのは得意よ」

澪「得意って…パターン分析とか一人じゃ出来ないだろ」

シャロ「大丈夫ですよ澪さん。コーデリアさんは感知系のトイズの限界を超えてますから!
    それぞれの用紙からどんな微細なトイズの痕跡も見つけ出せます!」

コーデリア「そういうことだから、ちょっと一人にしてくれないかしら。
      私のトイズは繊細だから周りに人が居ると集中できないのよ」

ネロ「コーデリアがそう言ってんだから行こうよ。そんでムギ、お菓子の追加お願~い」

ネロがムギのお菓子を両手に持ちながら部室から出て行こうとした。



65 名前::2011/05/19(木) 21:26:03.64 ID:1rWkWI6Xo

律「…まぁ任せてみるか。ちなみにどれくらい時間かかる?」

コーデリア「これくらいの量なら1時間もいらないと思うわ」

律「そりゃ頼もしい。あと、くれぐれも答案用紙は大事に扱ってくれよ」

コーデリア「はいはい」

シャロ、ネロ、エリー、そして軽音部の5人は部室を出て、
コーデリアの鑑定が終わるまでの間今後の作戦を話し合った。

律「…中間テストが終わったら2週間もしないうちに学園祭だ。
  それまでに『手品師(マジシャン)』をとっ捕まえないと」

紬「だけど私たちにもテストがあるし…それにライブに向けて練習もしなくちゃいけない」

シャロ「私たちでなんとかしてみせますよ!」

意気揚々とするシャロだったが、流石にミルキィホームズにこの件を丸投げするわけにはいかない。

律「シャロ…気持ちはありがたいけど、捜査するのは基本的に私たちだ。
  ミルキィホームズには必要な時に声をかける」

ネロ「私たちだって探偵だぞー!」

エリー「…とりあえず…コーデリアさんの鑑定の結果を見ないと…次の手は…打てないと思います…」

唯「エリーさんの言う通り、今はコーデリアさんが上手くやってくれるのを待つしかないよぉ」



66 名前::2011/05/19(木) 21:35:41.59 ID:1rWkWI6Xo

梓「そうですね…それはともかく」

これ以上『手品師(マジシャン)』の話をしても埒が明かないと思った梓は、話題を変えようとした。

梓「ミルキィホームズの皆さんはどういう経緯でオカルト研に?」

途端に全員の表情が固まる。
一瞬にして場が重苦しい空気に支配された。

唯「あ、あずにゃん…それは…」

シャロ「いえ、大丈夫ですよ唯さん。確か梓さんは今年1年生になったばかりなんですよね?」

梓「え、はい…そうですけど…」

何かまずいことでも言ってしまったのだろうかと梓も不安になった。

シャロ「なら知らなくても無理がありません。
    私たちは最初、とある事件の容疑者として捕まった身なんです」

律「……私も実は詳しい事は知らないが、噂程度に聞いたことがある。
  去年、まだ軽音部が今ほどに生徒会から権力を与えられていない頃だったから
  情報が入らなかったんだ」

先程まで元気にお菓子をパクパクと食べていたネロが伏し目がちになり、
エリーも話題に乗りたくなさそうに顔を背けた。

シャロ「………」



67 名前::2011/05/19(木) 21:42:07.09 ID:1rWkWI6Xo

澪「…梓、『手品師(マジシャン)』に関する事以外で
  オカルト研と接触してはいけない…もう忘れたのか?」

梓「あ……」

最初、ミルキィホームズが機密機関とは思えないくらい
能天気な人柄だったので梓はつい口を滑らせたのだ。

しかしオカルト研との関係性に話題が及んだ時のこの重い雰囲気から察するに、
きっと過去に何かしら重大な出来事があったのだろう。

シャロ「…これ以上しゃべると怒られちゃいますから…すいません」

本当に申し訳なさそうに頭を垂れるシャロに対し、梓も謝る。

梓「私の方こそすいません…無神経な質問しちゃって…」

全員の気分が落ち込んでいた時、不意に音楽準備室の扉が開いた。

コーデリア「みなさ~ん!解析終わりましたよ~……って、なんだか元気ないわね」

律「おお、かなり早いじゃんか。まだ20分経ってないのに」

コーデリア「正直、手掛かりになった部分はほんのわずかよ。
      かなり注意深くトイズの痕跡を消していたみたいだったから」

澪「そうか…ここじゃなんだし、部室で話を聞こう」



68 名前::2011/05/19(木) 21:45:40.36 ID:1rWkWI6Xo

メンバーがぞろぞろと部室へ入る。
それぞれ適当な所に腰かけてコーデリアの報告を聞いた。

コーデリア「まず、証拠として使えそうな答案用紙はこの10枚ね」

そう言って机の上に紙を並べていく。

律「?何も変わったところはないみたいだけど…」

コーデリア「実はこの10枚だけ他の答案用紙と比べて
      文字にトイズの搾りカスみたいなものが付着していたの。
      そしておそらく、これは各クラスで一番トイズ耐性の強い一般生徒の答案用紙だと思うわ」

紬(…私の『局所解析(ポインティング)』でも全く判別できなかったのに……すごい…!)

律「どうしてそんな事が分かるんだ?」

コーデリア「多分だけど、『手品師』はそれぞれのクラスのある生徒に『憑依(ジャック)』を仕掛けて、
      それを中心にクラス全員に『憑依』を感染させていったのね。
      その方が効率がいいし、なにより足が付きにくい」

梓「…でもなんでわざわざトイズ耐性の高い生徒を?それじゃ『憑依』するのが難しいんじゃ…」

コーデリア「『憑依』された生徒が自律的に『憑依』に対抗するための
      『対抗魔力』を発動させた痕跡もあったのよ。
      トイズ耐性の無い生徒は大きなトイズをかけられると
      『対抗魔力』が発生せずに『憑依』が中々解けないことがあるの」



69 名前::2011/05/19(木) 21:49:08.27 ID:1rWkWI6Xo

唯「??なんか良く分かんない…」

澪「…つまり徹底的に足跡を残さないために、
  わざわざ耐性のある生徒に『憑依(ジャック)』したのか…。
  耐性のある生徒10人に『憑依(ジャック)』しただけでも、
  信じられないくらいの魔技能力であることがうかがい知れるな」

ネロ「へぇ~、そんなすごい奴がいるもんなんだね~」

律「コーデリア、他に何か分かったことは?」

コーデリア「…そうね…この10枚の答案用紙を解析して分かったのは、
      『手品師』が意識干渉系のトイズに特化していること…
      そしてごく少量だけど、濃度の高い身体変化系、感知系、空間座標干渉系、
      時間操作系、物体生成系、現象系…あらゆるタイプのトイズが検出されたわ」

律「な…なんだと!?」

澪「そんなの有り得ない!
  10人同時に『憑依』するだけでも個人が持つ能力の限界を超えているくらいなのに、
  それに加えて高濃度かつ数種類の魔技タイプも使っているなんて……!」

コーデリア「いえ…おそらく私たちは何か、重大な勘違いをしていたのかもしれないわ」

エリー「…どういう…こと…?」

コーデリア「確かに澪さんの言う通り、そんな多岐にわたるタイプを一人で使いこなすのは不可能ね。
      でももし、一人じゃなかったら…?」

律「!!……『手品師(マジシャン)』は……複数犯…!?」



70 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県):2011/05/19(木) 22:00:09.97 ID:1rWkWI6Xo

コーデリア「これはあくまで憶測だけれど、それ以外に考えられないと思うわ。
      実際、この10枚の答案用紙…それぞれ別のタイプのトイズが検出されてるの」

紬「…複数の魔技使いが3年のクラスの生徒各一名を『憑依(ジャック)』した…
  しかもそれぞれがかなりレベルの高い魔技使いだなんて」

律「思ったより事態は深刻だな…。これは本格的にミルキィホームズの手を借りるしかなさそうだ」

シャロ「任せてください!何でも協力します!」

律「よし…それじゃあ効率よく捜査できるようにこれからはペアで行動してもらおう。
  ムギとコーデリアは『憑依』された3年生及び教職員の調査。
  梓とネロは学校の魔技管理データベースから『手品師』に繋がる情報の探索。
  澪とエリーはさわ子先生と協力して学園祭までに学校全体に魔技対策の防御壁、それからトラップの設置。
  唯とシャロは情報統制と学校内の監視、教職員のお偉い方の護衛にあたってくれ」

澪「了解。律は何をするんだ?」

律「…私は極秘任務にあたる」

唯「とか言いながら時間作ってテスト勉強するんじゃ…」

律「私がそんな真面目なことするわけないだろ」

梓「それもそうですね」

ネロ「後輩にバカにされてるぞ~」



71 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県):2011/05/19(木) 22:09:22.86 ID:1rWkWI6Xo

ひとまず休憩

壊滅的なネーミングセンスをどうにかしたいと悶々




72 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/19(木) 22:13:47.82 ID:lBYUNJDDO

おつかれさん!


軽音しかキャラ知らないからしんどいぜ…



73 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/19(木) 23:46:23.06 ID:FlOsVYOCo

むしろキャラが分かってると何となく先が分かるからそっちのがいいかも
それがあってるかはわかんないけど





74 名前::2011/05/20(金) 16:18:40.69 ID:VQS/rhoQo

律「私は生徒会長から直々に指令を受けてるんだ。
  内容は軽音部のメンバーにも言えない」

ネロ「そんなのズルイぞ~ボクたちにも教えろ~」

紬「まあまあ、りっちゃんは度々こういう指令を受けることがあるの。
  私たちも気を悪くすることなんてないわ」

一同は律に言われた通り、それぞれでペアを組んで調査に乗り出した。
すぐに打ち解ける者もいればぎこちない者もいたが、軽音部のテスト勉強も並行しつつ
ミルキィホームズのサポートを最大限に生かすにはこの組み合わせしかなかった。

今日の作戦会議はひとまず終了とし、今後なにかあった時は直ぐに全員に知らせるよう念を押し、
解散とした

【唯・シャロペア】

シャロ「…というわけで私たちは何をすればいいんでしたっけ?」

唯「確か…情報統制と監視と護衛だった気がする」

シャロ「なんだか私たちだけいっぱいやることありますね~」

唯「まぁ成るようになるよ~。まずは聞き込みして私の『憑依』で情報操作しとかないとね。
  変な噂流れちゃうと私たちも動きが取りづらくなるから」



75 名前::2011/05/20(金) 16:23:00.34 ID:VQS/rhoQo

【梓・ネロペア】

梓(…この人さっきからムギ先輩のお菓子食べてばっかだけど、ホントに大丈夫なのかな…)

ネロ「~♪………ん?」

梓「どうかしましたか?」

ネロ「そんな欲しそうな目をしてもあげないからなっ」サッ

梓「……いえ、私は結構です…」

ネロ「ならいいけど」パクパクモグモグ

梓「……あの、向かうのは魔技管理室じゃないんですか?」

廊下を悠々と闊歩するネロの後を追いかけていた梓は、
自分たちが魔技管理データベースの置いてある教室から遠ざかっていることに疑問を抱いた。

ネロ「ばっかだな~梓は~。今あそこのコンピュータをハッキングしたら確実に通報されちゃうじゃん。
   『無人軍隊(アームズ)』の世話になりたくなかったら、
   まずは情報通信ターミナルを直接いじるのが得策だと思うけどな」

平然と言ってのけたネロだったが、梓にしてみればハッキングも通信ターミナルをいじるのも
そう簡単に踏み込めるような領域ではない。
セキュリティの固い通信ターミナルに侵入するのは軽音部ですら難しい。



76 名前::2011/05/20(金) 16:26:19.18 ID:VQS/rhoQo

梓(…意外と考えてるのかも、この人)

ネロ「ま、無理やりハッキングするのもターミナルに侵入するのも大して変わらないけど、
   安全にデータベースを調べたいならちゃんとした手順を踏んだ方がいいからさ」

【澪・エリーペア】

澪「エリーさんはさわ子先生のことは知ってるの?」

職員室へ向かう途中で澪はエリーに話しかけた。

エリー「ほんの…すこし…」

言葉少ないエリーとなんとか会話を続けようとする澪だったが、もともと澪も
積極的に話しかけるような性格ではない。
またすぐに沈黙の空気が流れる。

澪(…なんで律は私をエリーさんと組ませたんだ…私こういうの苦手なのに~)

エリー「……あの…澪さん…?」

澪「…えっ?あ、ああ何?」

エリー「澪さんは…どんな魔技を…?」

澪「ん~…私が使う魔技は主に『念動波(テレキネシス)』なんだけど、他の魔技系統も少しは使える。
  あまり軽音部に使える人がいない魔技干渉系の魔技なんかもよく使うんだ。
  対魔技用の防御壁とかトラップの設置にあてられたのはそのせいもあるし」



77 名前::2011/05/20(金) 16:29:41.06 ID:VQS/rhoQo

エリー「そう…ですか……」

澪「エリーさんは身体変化系の魔技…トイズだっけ?」

エリー「はい……『怪力(トライアセンド)』だけですけど……」

澪「身体変化系ってことは治癒能力もあるはずだよ。律なんかは開放系の魔技と合わせて
  ただの攻撃バカになってるけど、本来は変身とか治癒方面で使うことが多い魔技系統なんだし」

エリー「……実は私たちのトイズは…一つの系統を…さらに細分化した…
    ある能力の一極集中特化型として覚醒したものなんです……
    なので…本当に『怪力(トライアセンド)』しか…使えないんです…」

澪「そ、そうだったのか…」

なるほど、それならさっきのコーデリアの異常なほどの感知系魔技にも納得がいく。
しかし教員組合のトップの連中は彼女らを使って何を企んでいるのだろうか。
一能力だけを極限まで高めて、それを何に利用するつもりだったのだろうか…

澪が物思いにふけっていると、いつのまにか目的地についていた。

エリー「ここが…職員室…」

澪「用事があるのはさわ子先生だけだ。
  場合によってはアンリエット先生の協力も必要かもしれないけどな」

澪のこの台詞に、エリーの肩が少し震えたのを澪は見逃さなかった。
不思議に思いながら職員室の扉をノックし、二人の仕事は始まった。



78 名前::2011/05/20(金) 16:34:10.64 ID:VQS/rhoQo



【紬・コーデリアペア】

紬「さて、私たちは『手品師』によって『憑依』された生徒をまず見つけないと」

コーデリア「残念ながら答案用紙から生徒個人を特定できるような情報はなさそうね。
      3年生の各クラスをしらみつぶしに調べていく他ないのかしら…」

紬「それには及ばないわ。魔技耐性の高い生徒を探すくらいなら
  私の『衛星解析(サーチ)』で出来るはず」

コーデリア「へ~、便利なのね」

紬は部室に置いてあるキーボードに手をかけた。

コーデリア「これは?」

紬「『対魔技用思考楽器』ね。みんなにはキー坊って呼ばれてるわ。
  どうやらさっきの私たちの会話を聞いて既に『衛星解析(サーチ)』を飛ばしているみたい」

コーデリア「…もしかして……」

紬「?」

コーデリア「いえ、なんでもないわ」



79 名前::2011/05/20(金) 16:41:16.09 ID:VQS/rhoQo

紬はキー坊と意識をシンクロさせ、衛星の射程を3年教室に絞った。

紬「一応コーデリアさんにも『知覚網(シェア)』しておく?」

コーデリア「…私に何かトイズをかけるというなら、オススメしないわ。
      よっぽどあなたの『対抗魔力』が高くないと
      逆負荷によってあなた自身が傷つく恐れがあるから…」

紬「…そう……」

それほどコーデリアの魔力が強大なのだろう。軽音部も潜在的な魔力は並ではなかったが、
対魔技用思考楽器による底上げによるものが大きいのもまた事実だった。

機械によるドーピングなしで紬を上回る感知能力を発揮したコーデリアなのだ。
紬は内心ある種の恐怖を感じたが、すぐにそれを払拭し、解析に集中した。

紬「…『手品師』に直接『憑依』されたのは確か、10人だったわよね?」

コーデリア「そう。各クラスに一人ずつだと思うわ」

紬「でもこれを見る限り、魔技耐性の高い生徒は3年生だけでもざっと20人以上はいるわ…
  それに今はテスト初日を終えて半数以上がもう帰宅しているから…」

そこまで言いかけた時、紬の『衛星解析』にある人物が映った。

紬「…!?これは…!」

コーデリア「どうしたの?」



80 名前::2011/05/20(金) 16:46:53.98 ID:VQS/rhoQo

紬「現時点で最大級の魔技耐性を示している生徒が一人、3年5組にいるわ」

コーデリア「…ということは、その人が『憑依』された生徒の一人…?」

紬「その可能性は十分あるわね…だけどこの魔技耐性は下手すれば唯ちゃん以上…
  そんな人に『憑依』できるものなの…?」

コーデリア「とにかく、まずはその人を探してみましょう」

紬とコーデリアは部室を出て3年の教室へと向かった。
テストが終わってからだいぶ時間が経っているせいか、いつもより学校の中は静かだった。



~~~~~



3年5組の教室の前――
紬はそっとドアを開けて中の様子を見た。
3年生の教室に入るのが始めてだったこともあり、緊張した面持ちで教室内を見回した。
誰もいない。そう思って首をひっこめた時、不意に後ろから声をかけられた。

マミ「何やってるの?あなたたち」

コーデリア「へぁいっ!?」

突然後ろから話しかけられたコーデリアは驚きのあまり尻もちをついた。

マミ「あら、ごめんなさい。別にそんなつもりじゃなかったんだけど…
   ってもしかしてあなた、軽音部の人じゃない?」



81 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県):2011/05/20(金) 16:49:45.29 ID:VQS/rhoQo

紬「…はい。巴…マミさん、ですよね?」

マミ「覚えていてくれたのね。随分前に軽音部にはお世話になったから」

コーデリア「あたた……紬さん、知り合い?」

紬「うん。……マミさんはここのクラスなんですか?」

マミ「そうよ。テスト勉強してたんだけど……
   軽音部がここにいるってことは、もしかしてまた事件が起こったの?」

紬「………」

紬はもしやと思い、『衛星解析(サーチ)』をもう一度調べた。

紬(……やっぱり…!あの大きな魔技耐性の持ち主はマミさんだったのね…)

コーデリア「…!この人からすごいトイズの反応がする…」

マミ「トイズ?」

紬「あわわ、な、なんでもないんです!
  ……ところでマミさん、一つ聞きたいことがあるんですけど…」



82 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県):2011/05/20(金) 16:54:56.80 ID:VQS/rhoQo

マミ「何かしら?」

紬「今回のテストで、何かおかしなことが起きませんでしたか?」

マミ「おかしなこと、ね…どうしてそんな事を聞くのかしら?」

ちょっと聞き方が直接的すぎたか、と紬は警戒した。

紬「いえ、実はとある先生が魔技対策を怠っていたみたいで、カンニング調査をしているんです」

紬は嘘をついた。

マミ「ふぅん…そういうことなら……おかしなこと、あったわよ」

紬「! ど、どんな風に?」

マミ「あれは数学のテストの時だったかしら…すごく頭がボーっとしたと思って、
   気がついたらテストが終わっていたの。ちゃんと問題も解いた記憶があるのに、
   なんだか夢を見ていたような 気分になったのよね」

コーデリア「それって完全に『憑依(ジャック)』されてたってことじゃ…」

マミ「『憑依(ジャック)』?」

紬「はわわ…ち、違うんです!ただ魔技の使用痕跡を…」

マミ「…ねぇ、あなたたち…何か隠してるでしょう」



83 名前::2011/05/20(金) 17:01:04.26 ID:VQS/rhoQo

紬「い、いえ何も隠してないですよ」アセアセ

マミ「私に出来ることなら何だって協力するわ。だから教えて頂戴。
   今回のテストで何か事件が起きたのよね?」

紬「な、なんでそこまで……」

マミ「私だって馬鹿じゃないわ。そっちの小さな黒髪の女の子が
   私たちの周りを嗅ぎまわっていたことくらいお見通しなんだから。
   わざと気付かないふりしてただけ」

紬(梓ちゃんの捜査がバレてた……!?)

マミ「そんなに信用されてないのかしら?」

紬としても、マミに『手品師』の事を話していいのかどうか迷っている部分があった。
梓の報告によれば、巴マミとその仲間は無所属でありながら高い魔技能力を持っている。

かなり利用しやすい相手ではあるが、
簡単に寝返る可能性もあるとして軽音部でも扱いに困っていたのだ。

コーデリア「いいじゃない紬さん!この人、悪い人じゃなさそうだし」

紬は思った。
何故だかこの3人は妙に似ているような気がする。
その漠然とした感覚が、紬に決心をつけさせた。

紬「…分かりました。巴マミさんに正式に捜査の協力を依頼します」



84 名前::2011/05/20(金) 17:06:35.16 ID:VQS/rhoQo



~~~~~


マミ「………事情は分かったわ。つまり私から『憑依(ジャック)』の足跡を探しだしたいってわけね」

紬はオカ研に関すること以外を洗いざらい話した。
マミがコーデリアの『局所解析(ポインティング)』に応じてくれれば、
『手品師』の手掛かりを掴む大きな一歩となる。

マミ「……良いでしょう。コーデリアさんの検査を受けるわ」

紬「ありがとうございます!」

紬はマミが素直に協力してくれたことで喜んだが、
実際にコーデリアがどうやってマミから魔技の痕跡を検出するのかは知らなかった。

コーデリア「じゃあさっそくやってみましょう♪まずは服を脱いで~」

マミ「ええっ!?そ、そんなの聞いてないわよ!」

コーデリア「でも肌を直接触らないと調べられないんだけど…」

マミ「なら顔とか腕でいいじゃない!なんで脱ぐ必要があるのよ///」

コーデリア「! 確かに…」

がっくりとうなだれたのは紬だった。



85 名前::2011/05/20(金) 17:13:28.72 ID:VQS/rhoQo

コーデリア「じゃあマミさん、両手を繋いでください」

マミ「こ、こう?」ギュ

コーデリア「ああっ、なんて柔らかい肌…!」

おもむろにトリップしかけたコーデリアをなんとか現実世界に連れ戻し、
マミの体に残る『憑依』の痕跡を探り始めた。

コーデリア「……物質生成系のトイズを使うのね。かなり強い魔力を感じるわ」

マミ「それはどうもありがとう」



コーデリア「………っ!!」ガタン!!

目を閉じてマミを検査していたコーデリアが突然体を震わせ始めた。

紬「!?コーデリアさんっ!どうしたんですか!?」

コーデリア「ちょ…ちょっとこれ…私のトイズが逆探知されてる……っ!?」ガクガク

マミ「なんですって!?」

体の自由が利かないのか、コーデリアは小刻みに震えたままその場から動かない。
マミもコーデリアに両手を掴まれているせいか、離すことができずにいた。



86 名前::2011/05/20(金) 17:16:34.26 ID:VQS/rhoQo

マミ「くっ…!」バタン!

マミが無理やり掴んでいた腕をひっぺがし、コーデリアの震えも止まった。
はぁはぁと息遣いを荒くして地面に座り込む。

紬「コーデリアさん、逆探知された…って…どういうこと?」

コーデリア「こ…この『憑依(ジャック)』に感知系のトイズが触れた瞬間、私の中に侵入してきたの…!
      罠だったんだわ…!!」

マミ「で、でも私自身は何も感じなかったわよ?」

コーデリア「『手品師』……こんなに見事に他人の中に逆探知できるトイズを残しておくなんて只者じゃないわ。
      マミさん自身が気がつかないのも無理ないわよ」

紬「そんな…!じゃあもしかしたら『手品師』は他の生徒にも似たようなことを?」

コーデリア「その可能性は大いにあり得るわね。いえ、むしろ確実と思ってもいいかも…」

マミ「…『手品師』はとことん、自分の情報を知られたくないのね」

コーデリア「でも安心して頂戴!逆探知されながらも私、ちゃ~んと『手品師』の痕跡はゲットしたから!」

紬「ホント!?コーデリアさんすごい!」

コーデリア「さっそく皆に知らせましょう!」



87 名前::2011/05/20(金) 17:21:07.88 ID:VQS/rhoQo

こんなにも早く手掛かりを見つけられるとは。
紬は喜び勇んでまだ学校の中にいると思われる軽音部のメンバーと『知覚網(シェア)』を繋いだ。

紬《みんな、聞こえる?『手品師』に関する貴重な追加情報を手に入れたわ!》

澪《本当か!?》

紬《ええ。コーデリアさんのおかげよ》

梓《それで、どんな手掛かりを?》

紬《コーデリアさんは『知覚網(シェア)』を使えないから、もう一度全員で集合してから
  口頭で伝えた方がいいかもしれない》

梓《分かりました。ところで唯先輩と律先輩とは繋がってないんですか?》

紬《唯ちゃんは繋がってるみたいだけど、りっちゃんは圏外か『知覚網(シェア)』を遮断してるわね》

澪《おーい唯~。どうした~》

唯は澪の呼びかけにも応じず、しばらく沈黙が続いた。

紬「……?」

紬が不思議に思っていた、その時。




唯《みんなっ!!シャロが!シャロがあああっ!!》



88 名前::2011/05/20(金) 17:25:39.59 ID:VQS/rhoQo


突然声を張り上げる唯に、澪がすぐに反応する。

澪《どうした唯!シャロがどうしたんだ!?》

唯《分かんない…っ!急にシャロが倒れたかと思ったら…私も吹っ飛ばされて!
  気がついたら教室も廊下も崩壊してて!!》

紬《落ち着いて唯ちゃん。場所はどこ?》

唯《第3棟の…とにかく棟全体がもう原形を留めてないんだよぉ…
  私は今2棟の渡り廊下にいるから、早く助けに来て!》

紬はハッとして窓から第3棟の方を見た。



マミ「な……なによ…アレ…!」

遠目からでも分かる。むしろ今まで何故気付かなかったのだろうか。

音も無く建物が分解し、コンクリートの壁が曲がり、ねじ切られた木片が
第3棟の一帯で中に浮かんでいる。
まるでファンタジーの世界のような異様な光景が広がっていた。


紬《私も今、肉眼で確認したわ!急いでそっちに向かう!》

紬は唯のいる第2棟渡り廊下へ走りだした。



89 名前::2011/05/20(金) 17:30:12.33 ID:VQS/rhoQo




~~~~~


ネロ「お~い、どーしたんだよ~」

梓「そ、そんな…信じられない」

ネロ「?…………」

ネロは、目を見開き体を硬直させたまま窓の外を見ている梓の目線を追う。

ネロ「うげっ!?あ…あれは…シャロ!?」

比較的第3棟に近い場所に居た梓たちは中に浮かぶ瓦礫を真下から見上げる形になった。
梓はその光景に圧倒され、言葉も出ない。

ネロ「まずい!シャロのトイズが暴走したんだ!梓、こんなことしてる場合じゃないぞ!
   早くしないと…桜高がつぶれる!!」

一直線に瓦礫の山へ走って行くネロの後を、梓は無言のまま追いかけて行く。

梓(あれがシャロさんの魔技『念動力(サイコキネシス)』……澪先輩の『念動波(テレキネシス)』どころじゃない…!
  桁が違いすぎる…あんなの、抑えられるわけない!)



90 名前::2011/05/20(金) 17:37:11.46 ID:VQS/rhoQo



~~~~~


エリー「澪…さん?」

澪「……シャロが暴走した」

澪がそれだけ告げると、エリーは口に手をあて、息を呑んだ。

澪「『手品師』は後回しだ。シャロを救出するぞ!」

エリー「ま、待って下さい…」

澪「…?」

エリー「シャロの暴走は…それがどんな原因であれ…私たちミルキィホームズの責任です…。
    軽音部の方々を…危険に晒すわけにはいきません…!これは私たちの問題です…」

澪「エリー……」

澪の袖を掴んだまま首を横にふるエリーの目は力強かった。
しかし…

澪「だけどエリー、それは違う。責任の有無じゃないんだ。
  被害を受けている人が居る…例えそれが暴走している魔技の使い手だとしても、
  私たちにはそれを助ける義務があるんだ。同じ魔技使いとしてもね…」

澪「それに軽音部はエリーが思っているほど弱くないよ。大丈夫、きっと助ける」

そう言って澪はエリーの手を掴み、一緒にシャロのいる第3棟へ向かった。



91 名前::2011/05/20(金) 17:45:05.54 ID:VQS/rhoQo



~~~~~


紬「ハァ…ハァ…ゆ、唯ちゃん!」

唯「ムギちゃん!コーデリアさんも!」

コーデリア「は、走るの…ツライわ…」ゼェゼェ

唯「そんなことより、シャロの魔技が…!」

唯の指差した方向は崩壊している校舎の中心部――シャロがいる場所だ。
しかし浮遊している瓦礫によって目視はおろか、近づくこともできない。

コーデリア「…!シャロのトイズの範囲が広がっている…!」

時間が経つにつれシャロを中心にした『念動力(サイコキネシス)』の半径が広がっていく。

コーデリア「早くしないと桜高全部が呑みこまれてしまう…!
      それでなくてもシャロの暴走が止んだ時、このままだとシャロが潰されちゃう!」

唯「そんな!私たちはどうすればいいの!?」

コーデリア「…前にも一度だけ暴走した事があったわ。その時は誰も手だしが出来ないまま
      シャロの暴走が止まるのを待つしかなかった。周りに物がなかったから…!」

コーデリア「あの子を止められるとすれば、平沢さん…あなたの『憑依(ジャック)』で
      シャロのトイズを乗っ取るしか方法はないわ…!」



92 名前::2011/05/20(金) 17:56:43.65 ID:VQS/rhoQo


唯「だったら行かなきゃ!」

唯がちぎれたコンクリートの海へと走りだそうとした。

紬「今行っては駄目!唯ちゃんも潰されちゃう!」

紬が唯の腕を引っ張り、それを止める。

唯「離してっ!ムギちゃん…っ!私が行かないと…シャロを助けられないんでしょ!?」

紬「今は無理よ!あの『念動力(サイコキネシス)』の領域がどうなっているのか状況が把握できない以上、
  迂闊に近寄ってはいけないわ!」

唯「でも!」

唯は強引に行こうとあがいた。

コーデリア「唯さん、気持ちはすごくありがたいわ…だけどシャロの『念動力(サイコキネシス)』は
      その領域に入ったもの全ての自由を奪ってしまうの。それに対抗する手段がなければ…」

唯「シャロの魔力そのものに対抗するなら、私の開放系魔技を使えば…!」


エリー「ゆ…唯…さん…!」ハァハァ

紬「エリーさん!?それに澪ちゃんも…!」

唯たちの元にエリーと澪が到着し、息を切らしたエリーが唯の言葉を遮った。



93 名前::2011/05/20(金) 18:01:44.76 ID:VQS/rhoQo


エリー「唯さん…いくら開放系の魔技を使っても…シャロの暴走したトイズを全身に浴びたら…
    ひとたまりもありません…!」

唯「確かに私は開放系に特化してないけど…やってみなくちゃ分かんないよ!」

澪「…ムギ、状況を説明してくれ」

澪が冷静に訊ねた。

紬「あの中心にシャロがいるの。
  それを助けるためには唯ちゃんの『憑依(ジャック)』を使わなきゃいけない…」

澪「なるほど…それで唯の魔技では対抗できるかどうか分からない…」

唯「澪ちゃん!」

唯がせがむように澪を見る。


澪「…よし…ムギ。ギー太の出力を150%にしてくれ」

紬「150%!?無茶よ!」

澪「それからエリザベス、むったん、キー坊、ドラ美をギー太経由で唯に」

紬「!!…駄目…今度は唯ちゃんが壊れちゃうわ!」

エリー「…?」



94 名前::2011/05/20(金) 18:07:12.13 ID:VQS/rhoQo


コーデリア「まさか…あの『楽器』を全部唯さんに…?」

唯「え…」

紬「そんなことしたら唯ちゃんのキャパシティが耐えられない!」

澪「でもそれしかないんだ。私は唯を信じてる」

澪が唯の方を向いた。

唯「澪ちゃん…」

澪「それに、もうすぐ『無人軍隊(アームズ)』も動く」

紬「!!」

澪「そうなってしまったらシャロは本当に助けられなくなる…!
  奴らは依頼を受けたら人質の命も省みない連中だ」

声は落ち着いていたが、澪の全身からは怒りが噴出しているように緊張していた。

澪「だからムギ…時間がない。やってくれ」

澪の迫力を前に、紬は観念したようにため息をついた。

紬「…分かったわ。私も唯ちゃんを信じる」



95 名前::2011/05/20(金) 18:13:58.18 ID:VQS/rhoQo


ズズズ・・・・・・

唯「うっ!?」


唯が苦しそうに体を丸めた。

コーデリア「唯さん!」

澪「唯!」

唯「だ…大丈夫。シャロは任せて!」

唯は苦悶の表情で無理やり笑ってみせると、そのまま『念動力(サイコキネシス)』の中へと走って行った。

紬「…どうか二人とも無事でいて…」


~~~~~


ネロ「くっそ~!このままじゃ近づけないよ!」

梓「ネロさん、ここは一旦引いた方が…」

ネロ「そんなこと出来るわけないだろ~!」

『念動力』の領域に入ることも出来ず、ネロは爪を噛みながら叫んでいた。

梓「あっ!あれは…唯先輩!?」

遠くで唯が瓦礫の山に突入していく所を目撃した。
すると微動だにせず浮いていたコンクリートの破片が轟音と共に次々と外へ放り出されていく。

ブォン! ズドォン…!!

ネロ「あいつ…『念動力』の作用を無理やりひっぺがしてるんだ!」



96 名前::2011/05/20(金) 18:17:44.28 ID:VQS/rhoQo


梓「そんなこと、唯先輩が出来るの…?」

ネロ「普通、シャロのトイズに物理的な干渉は効かない…
   エリーの『怪力(トライアセンド)』でギリギリ動きを止められるかどうかってレベルなんだ」

梓「じゃあ唯先輩はどうやって…?」

ネロ「あれはシャロのトイズに魔力を直接ぶつけて動かしてるんだ…。
   でもそれだけの魔力を開放して、肉体が無事でいられるわけが…!」

梓「!!」

ネロ「…ボクたちに出来ることは何もない。シャロのことはアイツに任せるしかない…」

梓「どうして!このまま見殺しにするんですか!?」

ネロ「うるさい!!」

突然ネロが怒鳴り、梓はビクッと体をこわばらせた。

ネロ「シャロだけじゃない…ボクたちも自分の力の強大さを前に無力だってこと、
   痛いくらい分かってるんだ…。今のシャロに対してミルキィホームズは何もできない…」

梓「………」

ネロ「だから今はボクに出来ることをやる!
   このまま生徒会執行部や『無人軍隊(アームズ)』を介入させるわけにはいかない!行くぞ梓!」



97 名前::2011/05/20(金) 18:21:37.20 ID:VQS/rhoQo




~~~~~~~~


同時刻、オカルト研にて

アンリエット「…シャロが暴走したようですね」

?「執行部は既に動いています。バレー部にも出動要請がかかったみたいですけど…」

アンリエット「こんな貴重なサンプルデータをみすみす生徒会ごときに渡すものですか。
       あなたの力を使って生徒会側に圧力をかけては頂けませんか?」

?「会長が直接行って執行部の犬どもを蹴散らしてやればいいのでは?」

アンリエット「…私が表舞台に立つことはありません。そのことはあなたも十分御存じでしょう?
       シャロのトイズをギリギリまで暴走させるために、執行部およびバレー部には
       事態が収まるまで『現状維持』を依頼しましょう…」

?「…ふふっ…会長もとことん鬼畜ですね」

アンリエット「…軽音部の妨害も、宜しくお願いしますよ」

?「任せてください…」


~~~~~~~~



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梓「生徒会長直属特殊治安組織『軽音部』……知らんがな」#2
[ 2011/06/15 17:27 ] アクション | 魔技 | CM(0)

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