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梓「生徒会長直属特殊治安組織『軽音部』……知らんがな」#4 【アクション】


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梓「生徒会長直属特殊治安組織『軽音部』……知らんがな」#1
梓「生徒会長直属特殊治安組織『軽音部』……知らんがな」#2
梓「生徒会長直属特殊治安組織『軽音部』……知らんがな」#3
梓「生徒会長直属特殊治安組織『軽音部』……知らんがな」#4



148 名前::2011/05/21(土) 20:52:27.21 ID:3mHTuewxo


桜高は、その物々しい警備体制など関係ないかのように学園祭らしい盛り上がりを見せていた。

澪《一応教職員関係者には全員、バレー部の護衛が付いてるんだよな?》

唯《うん。それ以外にも、校内巡回の執行部員もいるみたいだね》

律《そうか…生徒会執行部はともかく、バレー部は屋台もやってるはずなのに大変だな…》

紬《どうやら佐伯三花総指揮官直々に護衛にあたってるらしいわ。
  それから負傷している第1級、第2級補佐官の代わりに時期候補の部員が何人か回っているそうよ》

梓《…でも『手品師』の手口がわからない以上、
  果たして『無人軍隊』がどれだけ対抗できるか…。
  あそこは戦闘のスペシャリストであって
  対魔技を広範囲にカバーしているわけじゃないですし…》

澪《…正直言ってバレー部と上手く連携が取れるかどうか、不安ではあるけどな…
  いざという時は私たちにも緊急要請がかかるだろうけど、バレー部とはひと悶着あったしなぁ》

律《今はそんなこと心配しても始まらないぜ。巡回してる4人はどんな小さな異変も見逃すなよ》

律が全員に喝を入れ、それぞれが再び持ち場に集中した。

紬「ふぅ…」

紬がため息をつく。
巡回している4人の視覚に『衛星解析(サーチ)』を組み込み、さらにそれぞれの身体状態も
文芸部にモニタリングしているため、紬には常に負荷がかかっているのだ。





149 名前::2011/05/21(土) 21:03:25.40 ID:3mHTuewxo


長門「…疲れているならしばらく休んでも構わない」

長門が淡々と話しかける。

紬「だけどそれじゃ長門さん一人になっちゃうじゃない。
  疲れたらキー坊と上手く兼ね合いするから、私は大丈夫よ」

紬は数種類のモニターに目配せしながら言った。
今、文芸部の部室には紬と長門しかいない。
今年から正式に情報管理の権限を与えられた文芸部は去年まで廃部だったのが、
長門が入部したことによって異例の部員一名のクラブとして認められたのだ。

理由は魔技使いでないにも関わらず情報管理能力が著しく秀でていること。
事実、今まで情報管理を兼ねて活動していた技術部の仕事をほぼ全て長門一人で処理してしまったのだ。
これによって技術部の負担が減り、その分魔技兵器や対魔技用思考楽器の開発に
人員を割くことが出来るようになった。
軽音部の『楽器』たちの大幅なバージョンアップには、このような背景もあった。

紬「長門さんは何で技術部には入らなかったの?」

長門「………私の当面の目標に合致するクラブが文芸部しかなかった。
   技術部との協力は文芸部設立のための条件でしかない」

言葉少なに話す長門に対し、紬は妙な疑問を抱いた。

情報管理の権限を与えられる前の文芸部には何の特権もなかったはず。
強いて挙げるならば紙媒体の情報の閲覧に際して比較的自由な権限が与えられていただけである。

紬(…この子いつも本読んでるし、単に読書が好きなだけなのかしら)



150 名前::2011/05/21(土) 21:09:04.00 ID:3mHTuewxo


紬がちらりと長門を見る。
相変わらず彼女は微動だにせず、モニターを凝視している。

長門「……………!」

ス・・・と長門があるモニターを指差した。

紬「?」

紬はそれに反応し、すぐにモニターを見るが何も変わった所はない。

紬「どうしたの?」

長門「…………学校全体に魔技反応があった。極めて短い時間で発生した」

紬「!」

長門はそう言うと、魔技が発生した瞬間の映像まで巻き戻し、再生して見せた。
すると確かに魔技の反応が検出されているのが確認できる。

紬「これは…かなり微小で短時間だけど、ほとんど全域で反応してるわね…」

長門「技術部からの連絡を確認。ほとんど誤差の範囲だが念のため原因を探る、らしい」

紬(……誤差の範囲…?それにしてははっきりと反応しているように見えたけど…)



151 名前::2011/05/21(土) 21:11:32.79 ID:3mHTuewxo



~~~~~


律「…………」

ワイワイ
ガヤガヤ

律(……ちぇっ。私たちもライブやりたかったな……)

律はひっきりなしに人が入れ替わる講堂のステージを見ながら思った。
ちょうど先程ジャズ研の演奏が終わり、次の演劇部の発表までの間、
客が出たり入ったりと騒がしい。
  
「…デネー…ソウナノヨ……」
「マジデー……ウソー…」
「アハハ…タノシミー…」

律は呑気に学園祭を楽しんでいる生徒たちの会話を聞いていた。
ほとんどどうでもいいような内容ばかりだったが、ある2人の生徒の言葉に
律はハッと意識を向けた。



152 名前::2011/05/21(土) 21:15:14.55 ID:3mHTuewxo



「軽音部がね……『手品師』と……らしいよ」
「ほんとに?…………あのオカ研……とか?」

律(手品師だと…?)

律はもっとよく聞こうと、その生徒にさりげなく近づいた。

「じゃあ『手品師』は軽音部と裏で繋がってるってこと?」

律「!!」

思いもよらぬ言葉に律は驚いた。

律「…その話、どこで聞いたんだ?」

突然話しかけられ、その生徒はぎくりと肩をすくめる。

「えっ……あ、あの…」

律「…どこで聞いたんだ、と質問してるんだ」

律は自然と高圧的な態度になる。

「と、友達から…」



153 名前::2011/05/21(土) 21:20:46.52 ID:3mHTuewxo


律(……!! もしかして……)

律はそれ以上追及せず、他の生徒の会話にも聞き耳を立ててみた。

「軽音部と『手品師』って…」
「『無人軍隊(アームズ)』の邪魔した……そう、軽音部…部長が…」
「…学園祭を妨害するって……権力の乱用だって話……」

律(…なんで私たちの噂がこんなに流れているんだ…!?
  しかも悪い噂ばっかじゃねーか…『手品師』とつるんでるだと…!?)

基本的に軽音部もバレー部と同様に内部情報を公にしていないため、様々な噂が立つことは
おかしなことではない。

しかし『手品師』との繋がりなどとデマを流され、しかもかなりの生徒がその話をしている。

律は『知覚網(シェア)』で紬に話しかけた。

律《ムギ!何か変わったことはないか?》

紬《どうしたのりっちゃん?》

律《…何やら生徒の間で、軽音部と『手品師』の繋がりを示唆する悪評が流れている》

梓《律先輩!私の居る2年教室でもその噂が流れています》

唯《ど、どういうこと…?》



154 名前::2011/05/21(土) 21:23:08.19 ID:3mHTuewxo


梓の居る各学年教室は、この学園祭でも人が数多く往来する場所だ。
そこで噂が流れているなら、すでに広範囲に拡散しているに違いない。

紬《…実はさっき、校内全域にかなり微小な魔技の反応が検出されたの。
  技術部は魔技防壁ネットワークの誤差だと言っていたけど…》

澪《……全域に、微小な魔技…?》

唯《!! もしかして意識干渉系の魔技で、ありもしない噂を生徒に植え付けたんじゃ…!》

律《それだ!あの野郎、私たちに喧嘩売るつもりか!?》

律が見当違いの怒りを表す。

紬《で、でもこんなに広範囲に一度に意識干渉系を仕掛けられるかしら…?》

澪《…いや、この場合、軽音部と『手品師』が関係あるという情報だけを
  一般生徒に『記憶改変(インプット)』したんじゃないか…?》

唯《…確かに、それくらい単純な『記憶改変(インプット)』だったら私でも出来るよ》

唯が自信ありげに言う。

梓《…つまり限りなく薄めた情報を学校中に広く散布した…。
  でも発信源が局所的でなく、学校全体に反応したのは何故…?》



155 名前::2011/05/21(土) 21:30:49.98 ID:3mHTuewxo


通常、一人の魔技使いが魔技を使えば、それがどんなに広範囲に及ぶ場合でも
発信源は一つしかない。
しかし紬が言うことには、発信源が校内全域だということだ。

澪《……やはり魔技防壁ネットワークのエラーか…?》

澪がそう呟いた、その時――



ドオオオオオオオオン・・・・・・・!!!



全員「!!?」

桜高が揺れた。

爆発――どこだ!?

全員が轟音の鳴るほうを探した。

律《講堂だ!!屋根が吹き飛んだ!!》

攻撃されている。
律の叫びから、軽音部に一瞬にして緊張が走った。

律《唯だけ来てくれ!他は一般生徒の避難誘導を!》

どんな非常事態でも、軽音部は迅速に対応することが求められる。
メンバーは律の的確な指示に冷静に「了解」とだけ言うと、
迷わずに自分のするべきことを把握し、行動に移した。



156 名前::2011/05/21(土) 21:34:04.41 ID:3mHTuewxo



~~~~~


唯は講堂へと走った。
学校は一斉にパニックになり、唯はその流れに逆らうように前へ進む。

講堂は屋根が吹き飛んでいるだけでなく、壁などもほとんど崩れている。
逃げ惑う生徒たちの中に律が居た。

唯「りっちゃん!」

律は負傷した一般生徒を講堂の外に搬送していた。

律「唯、まずは負傷者を救助しろ!急げ!」

唯はそのまま講堂の中へ入って行った。
いつでも魔技を使えるように準備する。

唯(……酷い…!!)

先程まで輝かしい青春を謳歌していたはずの華の舞台は
土埃舞う地獄絵図と化していた。

逃げ遅れた生徒たちが瓦礫の下敷きになっている。
唯はその光景に絶句しながらも、急いで助けに向かった。



157 名前::2011/05/21(土) 21:39:41.00 ID:3mHTuewxo


「うう……」

唯「頑張って!今助けるから!」

唯は倒れている生徒に声をかけながら近づいて行く。

しかし様子がおかしい。

血を流し、今にも意識を失いそうな生徒たちは、唯の姿を見た途端に
異常に怯えだしたのだ。

「こ、来ないで下さい!」
「きゃあああああああああ!!」

唯「…えっ…?ど、どうしたの?私は助けに来たんだよ!」

唯がいくら救助に来たと伝えても生徒たちは怯える一方だ。
状況はますます混乱していく。

唯(…まさかこの人たち、私を敵だと勘違いしてる…!?)

もしかしたらこの生徒たちにも『記憶改変(インプット)』が掛けられているのかもしれない。
唯はこの異常事態を敏感に察知し、すぐに紬に講堂近辺の魔技反応を確認した。

唯《ムギちゃん!講堂周辺で魔技の反応がなかった!?
  生徒たちが更に『記憶改変(インプット)』された可能性がある!》

……しかし紬からは何も応答がない。



158 名前::2011/05/21(土) 21:42:39.12 ID:3mHTuewxo


唯《ムギちゃん!?》

律《ムギ…ザ…答…ろ…ザ…!》

澪《ザザ……どうし……!?…ザ…》

梓《…ザ……ザザッ……シェアが……えない!?……ザッ》

唯たちの『知覚網(シェア)』が不安定になっていく。
ノイズが混じり、もはや他のメンバーの声はほとんど聞き取れない。

唯(ムギちゃんがやられた…!?もしくは『知覚網(シェア)』に妨害が…?)

「助けてえええ!!」
「誰か…!!」

講堂に一人立ちすくむ唯の耳に悲鳴が聞こえる。

唯(…ッ!今は彼女たちを助けないと…!!)

拒否する生徒たちにも構わず、
唯は崩れた壁や天井を退けようと自身を『強化(ライジング)』した。


「そこまでです。軽音部」



159 名前::2011/05/21(土) 21:45:59.93 ID:3mHTuewxo


唯「!?」

唯の背後から威圧的な声が聞こえた。
即座に振り向く。

「軽音部を校長室襲撃及び中間試験の業務妨害、また無許可の魔技濫用罪の容疑で補導します。
 おとなしくお縄につきなさい!」

唯「え…?」

唯の表情が固まる。

「呑みこみが悪いんですね。あなたたちを『手品師』の一味として強制連行するってことです」

そんな馬鹿な。
私たちが『手品師』の一味?有り得ない。
そもそもこの人は誰?何故軽音部が?

めまぐるしく思考する頭の中で、唯は瞬間的に理解した。


――ハメられた…!


唯「あなたは誰!?」

かがみ「私はバレー部1年生の柊かがみです。教員組合及び生徒会からの要請で
    あなた方軽音部の反政府テロ行為の制圧に来ました」



160 名前::2011/05/21(土) 21:49:02.95 ID:3mHTuewxo


かがみは少しイラついたように話す。

かがみ「…軽音部にやられた瀧エリ先輩の代理として来ました。
    抵抗しても無駄ですよ。私、結構強いからね」

唯「…くっ…!そんなことより早くこの人たちを助けなきゃ…!」

唯は自分たちが捕まることよりも、瓦礫の下敷きになっている生徒たちのことを心配した。

かがみ「助ける?…何言ってんの…こんな事態を引き起こした張本人のくせに」

はぁ、とかがみがため息をつく。
その顔は呆れているようだった。

かがみ「…講堂が爆発した瞬間のライブ映像に、あんた達の姿がちゃんと映ってるんだから
    言い逃れはできないわよ。ここに居た人たちも全員、軽音部がやったって証言してるんだから」

唯「な…!?そ、そんなの捏造だよ!私たちがそんなことするわけない!」

かがみ「私に言われてもね…。バレー部は上の命令を実行するだけだから」

そう言ってかがみは唯に歩み寄る。

かがみ「それから抵抗した場合、再起不能、もしくは…殺害も認められていますので…」

かがみは面倒臭そうに言った。



161 名前::2011/05/21(土) 21:52:30.34 ID:3mHTuewxo



~~~~~


律「ムギ!応答しろ!おいッ!」

『知覚網(シェア)』は基本的に紬とキー坊を中心にネットワークを作る。
それが機能しないということは、紬が何者かによって攻撃されているということ…。

律(く…!何が起きてるんだ…!?)

現在、律は校庭で生徒の避難誘導をしていた。

律(唯がまだ講堂にいる…!)

律はこの場を執行部に任せ、講堂へ向かおうとした。


バキッ!!


律「ぐっ!?」ドサ

三花「はいはい、おとなしくしてね」

突然の衝撃と共に律は倒され、踏みつけるように佐伯三花が押さえつけた。

律「三花!?…テメェ!!なんのつもりだ!!」

三花「おぉ怖い怖い…そんな顔しても犯罪は犯罪だからね。
   軽音部をテロに加担した罪で強制連行しますよ…っと」



162 名前::2011/05/21(土) 21:56:55.31 ID:3mHTuewxo


律「はぁ!?」

三花「…ま、私が単独で相手してあげることを誇りに思うんだね。
   まさか軽音部が『手品師』だったとは知らなかったよ」

律「!!……訳分かんねェこと言ってんじゃねえ!!」バシッ

バゴン!!!

三花「危なっ!」ズ・・・

律が三花を吹っ飛ばそうと魔力を開放するが、三花がとっさに逃げる。
校庭に小さなクレーターができた。

三花「律の開放系と近接格闘は魔技兵器を纏った私にとっても脅威だからね…恐れ入るよ。
   さすが特A級の魔技使い、桜高でも3本の指に入る実力者…」

律「…全部お前らの仕業か?」

律の周辺の空気が歪む。
本気を出した律が解放する魔力は、空間をねじ曲げ熱を発生させるほど濃度が高い。
その魔力だけで人を気絶させることが出来る。



163 名前::2011/05/21(土) 22:00:47.35 ID:3mHTuewxo


三花「そんなの知らないよ~…あ、それから一つ忠告しておくけど、
   律のその魔技、ここではあまり使わないことをオススメするよ」

正面で対峙する三花が、グラウンドの方を顎で指しながら言った。

律「…!」

キャアアアアアアア

グラウンドに避難していた生徒たちから悲鳴が上がる。
生徒達が皆そろって律の方を指差し、逃げていた。

三花「ほらぁ、みんな怖がってるじゃん。
   もう軽音部がこのテロの犯人だってことは全校に知れ渡ってるんだから…」

律(や…やられた…ッ!『手品師』の狙いは最初から私たちだったんだ…!!)

全校生徒に『悪の軽音部』というメッセージを記憶させ、
目の前で『正義のバレー部』と対決させる。

これによって軽音部は動きを押さえられ、更にはバレー部による教職員の護衛も手薄になる。
その間に『手品師』は悠々と目的を達成してしまうだろう。

三花「あの時みたいに抵抗しないの?
   まぁここで私と律が本気でやりあったら確実に周りに被害がでるだろうけどね」

律「卑怯者…ッ!!」ギリ・・・



164 名前::2011/05/21(土) 22:03:43.22 ID:3mHTuewxo


なんとかこの状況を打開しなくては…。
必死で考えるが、少なくとも三花相手に逃げることは難しい。

軽音部のメンバーとも連絡が取れない今、律単体での行動は状況をさらに悪化しかねない。
いくら考えても、律が取るべき最善の手段はひとつしかなかった。

律(…畜生…ッ! …すまん、みんな…!)

律は開放していた魔力を解き、降参のポーズをとった。

三花「…ちょっと。抵抗しないの?」

律「…………降参だ。さっさと捕まえるなりなんなりしろよ」

律が吐き捨てるように言う。

三花「…なにそれ。つまんない」チッ

ドスッ

律「うッ!?」ガク

瞬間移動した三花はそのまま律の腹を殴った。
『硬化(ソリッド)』していない律はモロに攻撃をくらい、気絶する。



165 名前::2011/05/21(土) 22:07:51.64 ID:3mHTuewxo


三花「みなさ~ん!学園祭テロリストは見ての通り捕まえましたよ~!
   残りの犯人たちが捕まるまでしばらくグラウンドで待機していてくださ~い!」

三花は避難している生徒に向かって大声で知らせる。
怯えていた生徒たちは少しずつ落ち着きを取り戻していった。

三花「…ったく、とんだ茶番だよ…」ボソ


~~~~~


梓「はぁっ……はぁっ……」タタタ・・・

梓は追われていた。
校内はまだ生徒でごった返しているが、梓はその小柄な体を上手く利用して
人ごみにまぎれようと突っ込んでいく。

梓(一体なんなの…!?いきなり襲いかかってくるなんて…)

梓は文学部の教室へと走って行った。
紬の安否を確認するためだ。

「ま、待って~っ!!」

気の抜けた声が背後から聞こえる。



166 名前::2011/05/21(土) 22:09:58.39 ID:3mHTuewxo


「逃げないでぇ~っ!」

ザワ…ザワ…

梓と、梓を追いかける人物を周りの生徒が不審な目で見る。

「すいません、そこどいて下さい!私は特殊治安部隊バレー部特等兵の
 柊つかさです!道を開けて下さい!」

廊下にいる生徒が一斉にどよめき始めた。

つかさ「もぉ~っ!言って分からないなら実力行使です!」

走るのを止め、つかさがしゃがみこむ。。
さらに手のひらを地面につけると、つかさの髪がぶわっと逆立った。


パリ………


つかさ「ええいっ!!」

梓「!!」サッ


バリバリバリバリ!!


梓「ああっ!!」 バチッ



167 名前::2011/05/21(土) 22:12:56.32 ID:3mHTuewxo


梓の体に電流のような衝撃が走った。
筋肉が硬直し、呼吸が止まる。
梓はそのまま地面へと前のめりに倒れた。

バタ…バタ…

周りにいた生徒も残らず地面に倒れ伏した。

先程まで騒々しいほど賑わっていた3年教室廊下は一瞬にして静かになった。

つかさ「もう…一般人にはなるべく被害が及ばないようにって言われてたのに…」

梓「う……うう……」

体が動かない。

つかさ「えぇ~っと、軽音部の中野梓ちゃんね…
    あなたを行事執行妨害、その他多数の罪で強制連行します。…よいしょっと」

ぐったりと横になる梓を軽々と持ち上げ、つかさは静まり返った廊下を歩いて行く。

梓はつかさに担がれたまま、はっきりとしない意識の中でもがこうと必死だった。

梓(…そんな…! 何故バレー部が…? 何が起こっているの?)

しかし指先ひとつ動かせない梓は、そのまま連れて行かれてしまった。

~~~~~



168 名前::2011/05/21(土) 22:15:50.31 ID:3mHTuewxo



澪「ムギ!開けろ!ここを開けるんだ!!」

ドンドン!!

澪は誰よりも早く紬の異変を察知し、文芸部の教室に辿りついていた。

澪「くそっ!なんで開かないんだ!」ガチャガチャ

澪がいくら『念動波(テレキネシス)』で扉の空間座標を変換しようとしても、
まるでその一帯だけ違う次元の空間になってしまったように干渉できない。

澪(どういうことだ…!?)

誰とも連絡が取れないことに不安はどんどん募っていく。
澪はそれでも必死に紬の名前を呼んだ。



ふと、背後に人の気配を感じた……。



169 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県):2011/05/21(土) 22:32:58.64 ID:3mHTuewxo

続きは明日で。このペースでいけば多分明日中には終わると思います。
いまさらながら読み返すと軽音部の見せ場ほとんどないですね……vs魔女戦くらい?
学園祭パートはもう少し続きます。

次のレスで少しヒントになりそうなことを透明にして書いておきます。
そんなにネタばれにはならないと思いますが、とりあえず……



170 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県):2011/05/21(土) 22:52:24.45 ID:3mHTuewxo


今までの話の中で『手品師(マジシャン)』は既に登場しています。
ただし、安直に「これが犯人だ!」みたいな終わらせ方ではありません。
その辺は梓の推測が当たらずと雖も遠からず、といったところでしょうか。

この物語の一連の流れの中で、
軽音部、生徒会、教員組合、オカルト研、バレー部、マミさん一味
などの個々の思想や思惑は一つの現象に集約されています。

別に推理物というわけではないですが、
まあ大抵の推理物やサスペンスというのは一つの答え、
というか原因から色々な事件が発生するものですし・・・・・

ただ、このSSはそんなに厳密に考えているわけではないので多少の矛盾や無理はあると思います。
そもそも推測できるような判断材料をそんなに描写していないので、
読んで下さっている方々は気にせず気楽に読んで頂けると幸いです。





171 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(埼玉県):2011/05/21(土) 22:53:10.49 ID:izgQm0m+0


学園祭パート終わっても続くの?
面白いし、他作品との絡みも上手だから続けてほしい





172 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県):2011/05/22(日) 14:00:17.19 ID:If5/ty4ho

>>171
学園祭のあと、少し続いて完結する予定です。

では投下、いきます。



173 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県):2011/05/22(日) 14:04:03.22 ID:If5/ty4ho



~~~~~


文芸部教室内部…。

情報管理室としての役割も担うその教室は、至って静かだった。



―――目を覚まして、琴吹紬―――



紬「……はっ!」ガバッ

紬は意識を取り戻した。

慌てて周りの状況を確認する。

紬「あ、あれ……?」

紬は相変わらず椅子に座り、モニタの正面に居た。

しかしそのモニタには何も映っておらず、真っ暗だ。

長門「やっと起きたね。安心して。ここは現実世界から隔離された空間。
   何者もこの場所に干渉することは出来ない」


紬「長門……さん…!?」



174 名前::2011/05/22(日) 14:08:18.40 ID:If5/ty4ho


長門「僕は桜高1年生の長門有希じゃあないよ。ただ単にこの体を拝借してるだけ」

紬「何が……どうなってるの…?」

紬の頭は混乱していた。
部屋の外観はいつもと変わらないが、言いようのない違和感がある。

普通じゃない。
それだけは感じ取れた。

紬「! 唯ちゃんたちと『知覚網(シェア)』が出来ない…!?」

紬は長門を無視し、部屋から出ようとした。

ガチャガチャ

紬「っ!? どうして!?」

長門「紬、落ち着いて。今はこの部屋から出ることは出来ないよ。
   それより、僕の話を聞いて欲しいんだ…」


紬はハッと息を呑み、振り返った。
そこに居たのは紛れもない、長門有希の姿――。


しかし声や雰囲気は長門のそれとはまるっきり、似ても似つかない。
全くの別人がそこに居た。



175 名前::2011/05/22(日) 14:11:08.36 ID:If5/ty4ho


紬は後ずさり、背中を壁に沿わせ長門をじっと見据えた。

長門「そんな不審そうな眼で見ないでよ。僕は悪さするつもりじゃないんだしさ」

紬「あなたは……誰なの?」

用心深く、覗きこむように長門に訊ねる。


長門「そうだね……分かりやすく言うなら、僕は『手品師(マジシャン)』さ」


紬「!!」

紬は驚く。

警戒し、長門の様子を注意深く探るが、彼女は敵意を向けるどころか
あらゆる部分で無防備なように思えた。

紬「……長門さんの体を乗っ取って…私に何をするつもりなの…!?」

長門「…………」

長門の体を乗っ取った『手品師(マジシャン)』はしばらく黙った。。



176 名前::2011/05/22(日) 14:14:33.94 ID:If5/ty4ho


長門「…何から話せばいいのかな……
   そうだ、まずは今、僕とキミが置かれている状況を整理しようか」

『手品師(マジシャン)』は柔らかい口調で話し始めた。

長門「キミたち軽音部は今、かつてない危機に見舞われている。
   職員組合の陰謀によって現在、紬を除く4人は全員捕えられてしまった」

紬「な…っ!?どういうこと!?」

長門「ついさっきまで田井中律、平沢唯、秋山澪、中野梓は
   彼女らを捕まえようとするバレー部と応戦していた。
   だけど教員組合は軽音部が今回の学園祭テロの首謀者と断定し、さらにはそれを全校生徒に広めた…
   軽音部は桜高全てを敵に回してしまったんだ」

紬「私たちがテロの首謀者…!?」

長門「教員組合のインチキによって軽音部は崩壊した。
   残されているのは紬…キミだけだ」


長門の瞳に紬の顔が映り込む。

少しの間、静寂が2人を包んだ。



177 名前::2011/05/22(日) 14:17:03.20 ID:If5/ty4ho


紬「……講堂を爆発させ、生徒に『記憶改変(インプット)』したのは貴方ではないの?」

長門「…僕じゃないよ」

紬「でも貴方は学園祭テロの犯行予告をした……それに校長室侵入も貴方がやったんじゃないの?」

長門「その通りさ。その二つは正真正銘、僕がやった」

紬は長門の言っていることが良く分からなかった。

長門「…学園祭で起きた講堂の爆破、生徒の『記憶改変』、
   それらは教員組合のトップの連中が仕組んだ自作自演なんだ」

紬「…突拍子もないことを言わないで。そんなことをして誰が得を……」

紬はここまで言いかけ、ハッと気付いた。

長門「…紬も気付いたみたいだね。軽音部がいなくなることで得をする人間が誰なのか…」

紬「教員組合上層部…そのトップに立つ校長、そして政治的主権を握る教員議会…」



178 名前::2011/05/22(日) 14:19:00.70 ID:If5/ty4ho


桜高の政治的側面を担う教員議会――その役員は教員組合の上層部で固められている。
彼らによって桜高のルールは定められていた。

ただし独裁政治とならないために、
教員組合に意見を出せる生徒だけの組織…つまり生徒会の存在がある。
形としては教員組合の下部組織だが、実質的な立場はほぼ同等だ。

この二つの組織の均衡によって桜高は成り立ってきた。

風記を取り締まり、法の番人となる生徒会執行部は生徒会長がその最終司令官であるのに対し、
それとは別の法の番犬――バレー部は生徒会の更に上の役員たち、
すなわち教員議会が最終意志決定権を持っていた。

軽音部は、その少数精鋭の実力をもって生徒会と教員議員のバランスを取る役割もあった。

長門「校長たちは女子高生にしか使えない『魔技』という力を悪質な手段をもって研究し、
   この桜高の完全独裁政治の道具に使おうと考えている」

紬「完全独裁政治…!?」

長門「バレー部が使うような『魔技兵器』を用いた恐怖政治さ…紬は自分たちが使う
   『対魔技用思考楽器』や『魔技兵器』がどのようにして作られているか知ってるかい?」

長門が力を込めて言った。

長門「…この桜高に蔓延する、人ならざる異能の力…魔技の力そのものは、
   もとはと言えば全て『オカルト研』に所属する部員からむりやり抽出した人工超能力なんだ!」



179 名前::2011/05/22(日) 14:20:40.66 ID:If5/ty4ho


紬「…………」

紬はただ黙って『手品師(マジシャン)』の話を聞いていた。

長門「奴ら…教員議会の連中は、自分たちが魔技能力者でなくても魔技が使えるように
   実験的にオカルト研の能力を一般生徒にも普及させ、その力を試していった…」

長門「機械を用いた魔技能力の調整…それが『楽器』や『魔技兵器』が作られた本当の目的さ」

長門「僕はその事実を、ただみんなに知ってもらいたかった……
   腐った教員組合の不正を暴き、軽音部のみんなが信じていた正義を貫く…
   僕はそれがしたかっただけなんだよ!」

紬「…まさか、それで貴方は校長室に証拠を掴むために侵入を…?」

長門「………そうだよ。そして中間テストの場をもって堂々と宣戦布告した。
   奴らを血祭りにあげる、そう脅かしてね…」

紬「駄目よ!そんなこと…!いくら不正を暴くと言っても、犠牲者を出してはいけないわ!」

紬は自分の言っていることがどんなに都合の良いことか分かっていた。
犠牲者を出さずに悪を裁く……それがどんなに難しい事かも。

長門「…ふふっ。やっぱり軽音部だね…どんなに攻性の治安組織を名乗っていても、
   肝心の中の人たちは揃って理想主義なんだ」



180 名前::2011/05/22(日) 14:23:37.85 ID:If5/ty4ho



長門「でも、キミたちのそういうところ…嫌いじゃないよ。
   僕はいつだって軽音部の味方さ。犠牲者を出さないという信念も、理解できる」

紬(……軽音部の味方?)

紬は軽音部に協力するような犯罪者に心当たりはなかった。

長門「だから僕も、なるべく血を流さない方法で桜高の癌を退治しようとした。
   ……あの犯行声明は、もとから実行する気なんてさらさらない」

紬「……ということは…あの中間テスト乗っ取りテロは、ブラフだったってこと?」

長門「理解が早くて助かるよ。そう、最初から教職員を血祭りにあげる予定なんてなかった。
   僕がこの学園祭でやりたかったこと…それは歴史の闇に隠された真実を白日のもとにさらし、
   桜高が今後どうあるべきか、その判断を生徒たちに委ねることだった……
   それも今や僕の手では叶えられそうにないけどね」

『手品師(マジシャン)』はフフ…と自虐的に口元を緩ませる。

長門「…僕はまんまと上層部に利用されたのさ。
   その点に関して、奴らは僕よりも上手だったと言わざるを得ない」



181 名前::2011/05/22(日) 14:25:36.73 ID:If5/ty4ho


長門「僕は文芸部と技術部のデータベースに侵入し、隠蔽された教員組合と生徒会の癒着の証拠や
   オカルト研の過去、それに関わる魔技の秘密…それらの情報を一般生徒にばら撒こうと企んだ」

長門「だけど上層部の連中は『手品師』という強大なテロリストの名前を使い
   軽音部をその首謀者に仕立て上げ、僕の目論見を壊すどころか
   邪魔になる軽音部を始末することにも成功してしまった」

紬「………!」

長門「後は協力な魔技兵器を持つバレー部を傘下に生徒会含む全校生徒を
   恐怖で支配してしまえば奴らの目標は達成される…
   そうなったら真実を伝えるチャンスは無くなってしまうだろうね」

『手品師(マジシャン)』は再び紬に視線をむけた。

紬「……ひとつ疑問があるわ」

長門「なんだい?」

紬「なぜあなたはその強大な魔技能力を持っているのに、わざわざ学園祭を狙ったの?
  中間テストの乗っ取りの時に、なぜそれをしなかったの?」



182 名前::2011/05/22(日) 14:34:20.38 ID:If5/ty4ho


長門「…理由は二つある。まずひとつ目に、中間テストのように全校生徒が規律正しく
   教室に詰め込まれている状態で僕が情報をばらまいても、手段を選ばない上層部は
   全校生徒全員に瞬時に『記憶改変(インプット)』で記憶を消してしまうだろう」

長門「紬は、何故さっき桜高全域に魔技反応が出たか分かるかい?」

紬はこうなる前に、モニタに不可解な魔技反応が検出されたことを思い出した。

紬「あれは…魔技防壁ネットワークのエラーじゃないの?」

長門は首を横にふった。

長門「違う。あれが示しているのは魔技防壁ネットワークから直接
   『記憶改変(インプット)』が発生しているということなんだよ」

紬「ネットッワークから直接…!?」

長門「技術部の一部の人間は教員組合の上層部と密かな繋がりがある。
   奴らはあの魔技防壁ネットワークを使っていくらでも生徒を洗脳できるんだ」

紬「まさか……そんなこと出来るわけないわ!、
  何より私たちの監視がある限りいくら教員組合でも許されないはず…!」

長門「だから軽音部が邪魔だったのさ。連中は僕と同じように、魔技の発生源をごまかすために学園祭の時を狙った。
   それと同時に、魔技防壁ネットワークと呼ばれたシステムを別の意味で実験する目的もあったんだろう。
   魔技防壁ネットワークの真の役割……それは桜高全体をひとつの魔技兵器として機能させること」



183 名前::2011/05/22(日) 14:37:28.47 ID:If5/ty4ho


次々と明かされる事実に、紬は理解が追いつかない。

長門「そして僕がわざわざ学園祭を狙ったもう一つの理由……。
   確かに僕の能力をもってすれば全校生徒に
   『記憶改変(インプット)』することだって造作もないことだ」

長門「だけどそれじゃ意味がないんだ。
   桜高の生徒は自分の目で、耳で、この真実と向き合わなきゃいけない……
   そして今後の桜高の方向性を決めるのは僕ではなく、
   あくまで主体となるキミたち生徒たちに委ねたいという思いがあったからさ」

『手品師(マジシャン)』はそれだけ言うと、あとは黙って紬の言葉を待った。

紬「………貴方が言いたいことはだいたい把握したわ。
  証拠はないけど、確かにその話は筋が通ってる。
  何故だか自分でもよく分からないけど、信じてみたい…そう思える」

紬「ただ一つ、どうしても納得できないことがあるわ。
  これほどの魔技能力を持ち、不正を許さない情熱がありながら姿すら現さない…。
  貴方は……何者なの?」

紬は核心に迫った。
2人の間に緊張が走る。

長門「…………まだその問いに答えることは出来ない。
   ただしキミが僕の頼みに応じてくれるなら、然るべき時に僕の正体を明かそう」

紬「頼み…?」

長門「それはね………」



184 名前::2011/05/22(日) 14:40:02.56 ID:If5/ty4ho



~~~~~


律、唯、梓、澪の4人はバレー部によって捕えられ、魔技の使えない
拘置教室に放り込まれていた。

律「………くそ…ッ!」ガン!

澪「律、物に当たるな…」

4人はそれぞれ絶望していた。
唯はうずくまって何もしゃべろうとしない。
梓の表情も曇り、一点を見つめたまま動かないでいた。

律「…………ムギ……!」

律が紬の名前を呼ぶ。
軽音部が何者かの策略に呑まれ、こうやって無惨にも捕えられたことも腹が立ったが、
今の4人はそれ以上に紬のことを心配していた。

律「……文芸部教室で何が起きたんだ?」

澪「分からない……だけどムギが何か事件に巻き込まれたことは確かだ」

梓「…やっぱり、バレー部に攻撃されて…?」



185 名前::2011/05/22(日) 14:43:03.47 ID:If5/ty4ho


澪「…それならとっくにここに連れてこられているはずだ。
  おそらくまだ捕まってはいないんだろうけど…」

律「澪は攻撃された時、文芸部教室の前に居たんだろ?」

紬の居る所に唯一近づくことが出来た澪も、バレー部特等兵の泉こなたに見つかり、
ギリギリまで応戦したが結局捕まってしまったのだ。

澪「…文芸部教室が完全に閉鎖された空間になっていたことを、あの泉こなたも知らなかった。
  あの現象はバレー部によるものじゃないことはあの驚きようから分かる」

もともとこなたは紬のいる文芸部を狙っていたらしい。
その時ちょうど居合わせた澪は、そのついでに捕えられたのだ。


唯「……私たち、これからどうなっちゃうんだろう……?」

唯がボソッと呟いた。

その言葉に、全員が沈黙する。



186 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県):2011/05/22(日) 14:45:09.41 ID:If5/ty4ho


澪「………もしかしたら、軽音部はもう駄目かもしれないな」

梓「!!」

澪「何故かは分からないけど、私たちは学園祭テロの首謀者として扱われている……
  バレー部の連中の言うことが本当なら、例え軽音部が解散しなくても
  防諜機関として今までのように権限が与えられることはないだろうな」

律「畜生ッ!なんで私たちが……!それもこれも『手品師(マジシャン)』の野郎のせいだ!!」

律が怒鳴り散らす。
それでも他のメンバーは押し黙ったままだ。
虚しく、暗い空気が4人にのしかかった。


ギィ・・・


律「!!」

拘置教室の扉が開いた。

入ってきたのは、視線を落とし、口を固く結んだ紬だった。

澪「ムギ!!」

4人は息を呑み、一斉に紬の元に集まる。



187 名前::2011/05/22(日) 14:53:00.66 ID:If5/ty4ho


「おとなしくしてなさい」

紬をここまで連れてきた教職員は冷たく言い放つと、扉をバタンと閉めた。

唯「ムギちゃん!心配したんだよぉ!」ダキッ

勢い余って唯が抱きつく。
それでも紬は表情を変えず、その場に立ちつくしていた。

律「……無事だったか?」

紬「…うん。みんな、心配かけさせてゴメンね…」

紬がそれぞれの顔を見ながら言う。

梓「ムギ先輩が無事なら………」

梓は少し涙声になっている。

澪「ふぅ…、これでひとまずは安心したよ」

紬「…………」



188 名前::2011/05/22(日) 14:55:31.31 ID:If5/ty4ho


律「……どうしたんだ?ムギ…」

唯「ムギちゃん……?」

紬がしばらく何も言わないことを察知し、4人に再び真剣な表情が浮かぶ。

紬「………あのね、みんな……これから私が言うことを信じてほしいの…」

意を決したように紬は話し始めた。


―――――


――――


―――



189 名前::2011/05/22(日) 15:09:24.95 ID:If5/ty4ho



◆  ◆  ◆


時は経ち、12月某日―――。

日の当たる時間は極端に減り、少し前までは紅い葉を灯らせていた木々も
今やその木皮を冷たい風にさらしていた。

律「う~っ、さぶい~……」ブルッ

律は埃の被った音楽準備室のドアノブに手をかける。

ガチャ

律「………まだ誰も来てない…か」

薄暗い部屋に、寂しく椅子や机が並べられている。
あれからまだ1カ月程度しか経ってないのに、
まるで数年もの間放置されていたかのように音楽準備室は哀愁に満ちていた。

律は懐かしむように部屋を眺め、手前のドラムに手を添えた。

律「……こんなに長くお前に触らなかったのは初めてかもな……」

ぼそっと独り言をつぶやく。



190 名前::2011/05/22(日) 15:14:59.08 ID:If5/ty4ho


ガチャ

律の背後で扉が開く音が聞こえた。

律「……澪か」

澪「なんだ律、もう来てたのか……早いな」

部屋に入った澪も、律と同じような反応をする。

澪「……ほんのしばらく来なかっただけなのに、すごく懐かしい気がするな…」

律「電気、つけるか」

律が壁のスイッチをパチンと押す。

澪「……約束だと、確か今日の夕方5時に部室に集合だったよな?
  まだ30分くらいあるぞ」

律「つっても楽器弾くのは流石にな……休日だからすぐバレるだろうし……」

律と澪は静かに椅子に腰かけた。



191 名前::2011/05/22(日) 15:20:59.21 ID:If5/ty4ho



――あの日、軽音部は解散した。


5人は執行猶予期間に桜高から逃げだし、散り散りに去った。
生徒会の手が及ばない地区に潜伏したり、誰かにかくまってもらったり……

次に会う日を約束し、その場所を軽音部の部室に選んだのは紬だった。

澪「……ムギは私たちをここに集まらせて、何をするつもりなんだろう」

律「さぁな……今ここで生徒会に見つかったらたまったもんじゃねーってのは確かだけど…
  休日の学校に忍び込んでる時点でアウトだし」

律が机に突っ伏し、いじけたように言う。

ガチャ

唯「おい~っす!」ビシッ

律「お、来たな」

唯「あれ~?まだ2人だけ?」

澪「ああ。久しぶりだな」

唯「ほんと、一ヶ月ぶりだねぇ~」



192 名前::2011/05/22(日) 15:23:34.37 ID:If5/ty4ho


ガチャ

律「ん?」

唯に続いて扉を開けたのは、梓だった。

唯「あずにゃ~ん!!」ダキッ

梓「きゃっ、ゆ、唯先輩お久しぶりです……他の先輩方も…
  あれ? ムギ先輩はまだですか?」

紬「呼んだ?」ヒョコッ

唯「どぅわ!?ム、ムギちゃんいつの間に!?」

紬は梓のすぐ後ろから顔を出した。
どうやら梓の後をついてきたらしい。

梓「忍者ですか……」

梓がぼやく。
そんなことはお構いなしに、紬は懐かしげに部室を見渡す。

紬「みんな集まってるみたいね」



193 名前::2011/05/22(日) 15:26:21.53 ID:If5/ty4ho


紬が唯と梓に、座るように促す。
5人はかつて放課後にそうしていたように、それぞれの席に座った。

紬「部屋の明かりは消しましょう。外はもう暗くなってるし、バレるとまずいわ」

そう言うと紬は部室の電気を消す。

唯「暗~い」

律「……ムギ、本当に今、ここで全部話してくれるんだろうな?」

律がいぶかしげに聞く。

紬「私が知っている限りのことはちゃんと話すわ。
  そのあと私たちがどうするのか……それはみんなで決めることよ」

澪「だけど、なんでわざわざこの場所なんだ?
  私たちはもう軽音部じゃないんだ。この部屋に立ち入る権限はないのに…」

紬「………言われたの。この日に、この場所に来るように…って」

律「……誰に?」



194 名前::2011/05/22(日) 15:30:01.96 ID:If5/ty4ho


紬「『手品師(マジシャン)』よ」

その名前が出た途端、全員が驚いたように目を見開いた。


紬は、学園祭の時に起きた出来事を全て4人に話した。

長門に『手品師(マジシャン)』が乗り移ったこと。

『手品師』の本来の目的は達成されず、
その代わりに教員組合が自作自演し、軽音部を潰そうと企んでいたこと。

オカルト研が桜高の魔技能力の源となっていたこと。

教員議会がそれを利用し、魔技兵器による独裁政治を目論んでいたこと。

そして『手品師』が、紬にある使命を託したこと……。

全てを話し終えた時、4人はさまざまな反応を見せた。

澪「そんな……信じられない」

律「だけどつじつまは合うな……その『手品師』は一体何者なんだ?」

唯「やっぱりシャロは犠牲者だったんだ……教員議会…許せない…!」

梓「……でも正直、まだ不明な点だらけです……
  何故『手品師』は軽音部に肩入れしながらもあの場から私たちを助けようとしなかったんでしょう?
  軽音部が解散してしまったらますます教員議会の思うつぼでは……」



195 名前::2011/05/22(日) 15:37:36.49 ID:If5/ty4ho


紬「梓ちゃんの疑問ももっともだけど、私たちを解散させ、
  再びこの場所に集まらせることにその答えがあるみたいなの……」

律「しかしそれだけじゃ何も分かんねーぜ……ここに何かあるってのか?」

紬「『手品師(マジシャン)』はマザーを起動して、
  私たちの『楽器』との連携プログラムにアクセスするように言っていたわ……」

澪「マザーに……?」

唯「きっとそこに何か手掛かりがあるのかも!」

唯が興奮気味に身を乗り出す。

律「……行ってみるか……」

5人は重たく腰を上げ、マザーの置いてある倉庫へと向かった。

ギィ・・・

倉庫の中は暗く、埃っぽい。
その狭い空間には無理に詰め込んだような巨大なコンピュータがどっしりと構えていた。

先頭をきった律がけほ、と小さく咳払いする。

律「真っ暗だな……」



196 名前::2011/05/22(日) 15:40:33.00 ID:If5/ty4ho


手さぐりで電源ボタンを入れると、ディスプレイに青白い光が映りだす。

静かな闇の中で『元』軽音部の5人の顔が照らされる。

唯「……りっちゃん、マザーいじったことあるの?」

律「…初めてだ。っていうかここは澪の出番だろ」

律がぐいっと身を引き、澪にモニタの正面の席を譲った。

澪「よし……」

澪が鮮やかにマザーのキーボードを叩く。
画面上のメッセージが次々と現れては消えていった。

梓「…すごい速いですね。何をしてるのかさっぱりです」

梓、唯、律は感心したように澪のタイピングを見ていた。

澪「技術部のメインコンピュータはもっと面倒だったんだぞ。
  それに比べればマザーは5つの『楽器』を制御するだけだから楽なもんだ」



197 名前::2011/05/22(日) 15:44:27.35 ID:If5/ty4ho


カタカタとキーボードを叩く音だけが響く。
5人は画面を注視していた。

澪「……これがそれぞれギー太、エリザベス、むったん、キー坊、ドラ美との
  接続タスクだ。今はどれも起動してないから状態は0だけど……」

そう言って澪は全員に説明した。

澪「そして、これがマザーのメインプログラム……
  ここに各『楽器』との並列リンクや相互アクセスプログラムがある」

澪が指をさした箇所にはいくつかのファイルが置いてあった。

律「つまりこのファイルの中を見てみろ、ってことか?」

律は澪の言ってることがさっぱり理解できていなかったが、
分からないなりに意見してみた。

紬「『手品師』は外部からこのファイルに細工したってことかしら……」

澪「可能性としては最も高いな」

澪はファイルを開いてみた。



198 名前::2011/05/22(日) 15:50:13.95 ID:If5/ty4ho


澪「!!……これだ…!」

唯「ど、どれ!?」

5人に緊張が走った。

澪「これは……テキストデータというより、実行ファイルみたいだな」

紬「…やってみましょう」

律「お、おい…大丈夫なのかよ…?」

2人だけで先に進もうとする紬と澪に対し、律は不安そうに訊ねる。

澪「…このデータを解析してる暇なんてない。
  それにファイル名からしてこれを立ちあげてくれと言ってるようなものだ」

梓「ファイル名は…『magician_presents』」

唯「なんかすごく怪しいけど……」

律「…ま、やるしかないか……澪、頼む」

澪は軽く頷くと、ファイルを実行した。



199 名前::2011/05/22(日) 15:53:25.68 ID:If5/ty4ho


ヴン・・・・・・

すると、懐かしい慣れた感覚が頭の中に入ってきた。

《久しぶりだね、紬。急で悪いけど、キミたちの脳に直接おじゃまするよ》

律「『知覚網(シェア)』だと!?」

全員、一斉に警戒する。
攻撃か?いや、どうやら『知覚網』だけを張られているようだ。
実害はないとすぐに判断したものの、5人は用心しながらその声を聞く。

《僕は『手品師(マジシャン)』。便宜上そう名乗っておくけど、本来僕に名前なんてないんだ。
 ま、そこは今は置いておこう》

《紬は僕のこと、みんなに話してくれたかな?》

紬「ええ、話したわ……」

《なら話は早いね。僕はあの学園祭の日、色々なものを失った……
 教員議会に出し抜かれ計画が失敗し、キミたち軽音部も巻き込んでしまった》

《そしてあの日を境に、僕の魔技能力も失われた。もはや僕に残っている物なんて
 何もない。こうやってキミたちと話すことしか出来ないんだ》

律「……私たちをここに呼んで、お前の目的はなんなんだ?」

律が流れを切るように鋭く質問する。

《……そうだね…結論から言おう。僕はキミたち軽音部を救いに来たんだ》



200 名前::2011/05/22(日) 15:58:24.13 ID:If5/ty4ho


唯「救う……?」

《そう。そしてその先にある未来……軽音部だけでなく、この桜高の未来までも
 決定してしまう二つの選択肢を、キミたちに選んでもらう》

紬「……何を言ってるの?私たちを救うのに桜高の未来が関わる……?」

素朴な疑問を投げかける。
しかし手品師はそのまま話を続けた。

《ひとつは、キミたちの信じる正義を全うし、この桜高を悪の手から解放する。
 上手くいけばキミたちは冤罪を証明して元の軽音部に戻ることが出来るだろう》

澪「だけど私たちはもう何の権限も持たない、追われる身なんだぞ。
  この状況からどうやって……」

《このマザーの深層記憶領域に教員議会とオカルト研、およびその他の部活動や組織との
 関わりを示す証拠になるデータを隠しておいた。
 それを使えば、例え追われている身でも外部から桜高へ情報を浸透させることが出来るだろう》

《上手くやればキミたちは何のリスクも冒さずに桜高に復帰できる。
 生徒会長直属の防諜機関として、再び活躍できるはずだ》

律「……なるほど……そのデータを、学園祭の時にお前がやったように
  全校生徒にばら撒けばいいってか…」

唯「確実な証拠があるなら、むしろ部外者になった私たちにこそ可能なことなのかも……!」



201 名前::2011/05/22(日) 16:01:50.20 ID:If5/ty4ho


確かに『手品師(マジシャン)』の持っているデータが証拠になるのであれば、根回しの効いてる
軽音部メンバーにとって情報の拡散は不可能なことではない。

5人は『手品師』の説明に納得した。

紬「…貴方の持つ証拠を私たちが掴めば、起死回生の一手になることは間違いなさそうね…。
  それなら全てが元通りになるかもしれない……現教員議会の役員を桜高から追い出す以外は」

律「ならそれでいいじゃねーか。『手品師』さんよ、
  選択肢を用意する必要なんて無かったみたいだぜ」

律はもう勝ちを確信したかのように笑みをほころばせた。

《……僕が心配してるのは、その元通りになった桜高軽音部が、果たしてキミたちにとって
 本当に良い世界だと言えるのかどうか……そのことなんだよ》

唯「……どういうこと……?」

唯が不可解な表情に変わる。

《楽器も満足に弾くヒマもない、ティータイムも思う存分楽しめない……
 忙しく治安組織として桜高を守り続ける軽音部で、キミたちは幸せなの?》



202 名前::2011/05/22(日) 16:06:26.01 ID:If5/ty4ho


《キミたちが信じる正義を否定するつもりはない。この仕事だって、十分立派なものさ。
 だけどキミたちは知ってしまったはずだ……
 魔技と呼ばれる超能力が、ある人を傷つけてまで生み出された歪んだ力だってことを……》

5人はハッと思い出した。

自分たちの活動の源になっていた魔技は、
オカルト研…ミルキィホームズから強制的に抽出した人工能力だったことを。

《もし現教員議会の役員がいなくなっても、魔技能力者は残ったままだ。
 でもキミたちは魔技を使うことに疑問を持ちながらそれらと戦って行かなくちゃならない。
 それはとても辛く、苦しい道のりだよ……?》

《それに今の教員議会が一度解散しても、またそれに代わる存在が台頭するだろう…
 この世界には常に悪がいる。闘いは終わることなく、ずっと続くんだ》

律「……じゃあどうすりゃいいってんだよ!?そんなこと言ったって…
  今までだって私たちに出来ることを精一杯やってきたんだ!
  お前に何が分かる!?」

紬「りっちゃん、落ち着いて…」

紬が律をなだめる。
しかし律が怒る理由も、今の軽音部にはなんとなく理解できた。

自分たちだって、出来れば平和なままがいい……。
でもそれが不可能だと分かっているからこそ、こうやって軽音部として活動してきたのだ。



203 名前::2011/05/22(日) 16:12:45.80 ID:If5/ty4ho


《……その苦しみから解放される術を、僕は知っている》

澪「………なんだと?」

《キミたち軽音部は、本来こんな形で存在するべきじゃないんだ。
 本来の軽音部……それは毎日楽しく放課後を過ごし、何の事件も事故も起きない
 平和そのものの桜高で音楽を演奏し続ける世界の住人…》

律「そんなの幻想さ……」

《違う。幻想なんかじゃない。もうひとつの在るべき世界へ導く術を、僕は知っている。
 今の桜高に残るか、もう一つの桜高へ、もう一つの軽音部として生きていくか……。
 その選択を、キミたち5人に委ねる》

澪「……もうひとつの桜高に行ったら、私たちはどうなるんだ?」

《この桜高は、はっきり言ってしまえば『異常』な世界なんだ。
 幾多の平行世界がいびつに交差した結果、魔技なんていう能力が生まれた……
 元の世界に戻った時、軽音部は永遠の平和が約束される》

唯「永遠の……平和……」

にわかに信じがたい話だ。
先程まで迷うことなく『手品師』の証拠データを受け取ろうと考えていた律も、
その顔に曇りを見せていた。



204 名前::2011/05/22(日) 16:16:28.28 ID:If5/ty4ho


梓「その、元の世界に戻るための方法は……?」

《……ヒントは、桜高の人工魔技能力開発とは無関係に誕生したもう一つの魔技……
 巴マミたちの『魔法少女システム』だ》

唯「マミさんたちが……」

《彼女たちの魔法の生成ルートは、桜高のオカ研からの魔技抽出ルートから唯一独立している。
 そこに秘められた可能性は桜高の『魔技』以上だ》

《…キミたち軽音部が元の世界に戻るための鍵は二つある。
 ひとつは巴マミたち魔法少女を生み出すQBという存在……
 そしてもうひとつは、軽音部で唯一魔技を使えない人物……
 中野梓、キミだ》

梓「わたし……!?」

突然名指しされ、梓は戸惑う。
他のメンバーの視線が梓に向けられた。

《梓は魔技が使えないと言っても、実は潜在的に魔技使いになる条件をすでに満たしている。
 僕はこの可能性を残しておくため、今までわざと梓の魔技覚醒を防ぎ続けていた》

梓「!」

《詳しい説明は省くけど、今の梓にはQBとの魔法少女システムと桜高の魔技システムの
 両方を混同させた新しい可能性が秘められている。どちらの法則にも縛られない能力を
 持ってすれば、キミたちだけでなく他の人々も元の世界に戻ることだって出来るだろう》



205 名前::2011/05/22(日) 16:20:58.17 ID:If5/ty4ho


律「……なにやら良く分からねーが、そのQBってヤツに会えばいいのか?」

《とりあえずはそういうことだね。ちなみに今の梓ならQBが見えるはずだよ。
 巴マミたちの居場所はここに示しておく》

『手品師(マジシャン)』はそう言ってマザーのモニタに地図を表示し、、
巴マミ、美樹さやか、佐倉杏子、暁美ほむら、そして鹿目まどかの位置情報を示した。

《QBはだいたい鹿目まどかと一緒にいるから、彼女を追えばいずれ会えるだろう。
 後は梓が願えばいい。交錯した平行世界の紐を解き、
 それぞれの在るべき世界へと還元するように……》

『手品師(マジシャン)』の話はそこで終わった。
5人の反応を待っているようだった。

紬「……治安組織の軽音部としてこのまま生きていくか、事件も何も起きることのない
  別の世界に移るか……その二択なのね」

律「現実的に考えるなら、このまま証拠のデータを私たちが引き継いで軽音部として
  復活するってのが妥当だろうな」

律が全員を見渡す。

律「………多数決で決めよう」

一人一人の眼を見ながら言った。



206 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(茨城県):2011/05/22(日) 16:34:00.61 ID:If5/ty4ho

この辺で心折れました。
とりあえず書き溜めておいたエンドパートを投下します。
手抜きです。



207 名前::2011/05/22(日) 16:35:04.04 ID:If5/ty4ho










―――ずさ

―――あずさ…

――おい……梓……!



梓「…………う……ん……」

律「おい!梓、起きろって!」バシバシ

梓「ん……痛いですよ律先輩……えっ!?」ガバッ

梓はハッと目を覚ました。
勢いよく顔を上げ、辺りをキョロキョロと見る。

澪「?どうしたんだ、梓?」

梓「え?あれ?」

目を点にして顔をひきつらせる。
全く状況が呑みこめない。



208 名前::2011/05/22(日) 16:36:35.36 ID:If5/ty4ho


梓は軽音部の部室に居た。
外は明るい。

軽音部のメンバーは全員、定位置に座って梓を不思議そうに見ていた。

唯「どうしたのあずにゃん……なんだか変だよ?」

梓「えっと……あれ?……なんで……」

紬「…どこか具合悪いの?さっきまでぐっすり寝てたみたいだし…」

梓「ね……寝てた?」

梓の頭は強烈な違和感を覚えたが、それが何なのか分からない。
自分が知らぬ間に寝ていたからだろうか?

いや、そうじゃない。
何かもっと根本的なところで、自分が何か大切なことを忘れているような……

梓は妙な胸騒ぎがしたが、次第に今の状況を受け入れ始めた。

梓「す、すいません……ちょっと昨日の夜遅くまで起きていたので…」

律「それにしても気付いたら熟睡してんだもんなー。びっくりしたよ」

唯「遅くまで起きてるなんて、あずにゃんはイケナイ子だねぇ~」ニヤニヤ



209 名前::2011/05/22(日) 16:38:39.76 ID:If5/ty4ho


梓「……そういえば今日って何月何日でしたっけ?」

どうしてそんなことを聞くんだろう。
梓は自分で自分の言ったことに疑問を抱いた。

澪「え?4月10日だけど……」

澪が怪訝そうに言う。

梓「……そうですよね」

梓は思い出した。
そうだ。今日は新歓に向けて話し合う予定で集まったのだ。

梓は二年生。
唯たちは三年生になり、新入生を集めるべく真面目に新歓ライブの
作戦を練りましょうと言い出したのは他ならぬ梓だ。

梓「すいません、ちょっと気が抜けてたみたいで……」

紬「気にしないでいいのよ~」

澪「ま、梓の言う通り、今年の新歓祭はちゃんと勧誘のことも
  考えておかないとな」



210 名前::2011/05/22(日) 16:40:44.60 ID:If5/ty4ho


澪がそう言うと、それぞれ適当な案を出し合ったりして会議が始まった。
紬が淹れる紅茶やお菓子を口に含みながら、梓は唯たちの会話を黙って聞いた。

梓(……何かが違う……でも、別にいつもと変わらない放課後の部活のはず……)

そんなことを考えているうち、梓はハッとギターの仕舞ってあるハードケースに目をやった。

梓(………むったん…?)

心の中でつぶやく。

まるでそこにあるムスタングに語りかけるように。

ひょっとすると返事をしてくれるかもしれない……

そんな淡い期待を抱きながら―――





楽器たちは静かに軽音部の声を聞いていた。




おしまい




213 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/05/23(月) 20:18:39.50 ID:m75BkOj2o

今の世界を放置するほうってのはなんだかな…
まぎ自体を消滅させるって選択肢も出来た気がするけど

でも、乙。中々楽しかった





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梓「生徒会長直属特殊治安組織『軽音部』……知らんがな」#4
[ 2011/06/15 17:35 ] アクション | 魔技 | CM(1)

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タイトル:
NO:6504 [ 2012/05/20 12:33 ] [ 編集 ]

オチは納得出来るけど…色々やり残したことありすぎっていうか、バットエンドに近いノーマルエンドだよなこれ

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