SS保存場所(けいおん!) TOP  >  音楽 >  澪「放課後ティータイムは解散します」#第一部

お知らせ

SS保存場所は移転しました。
現在けいおん!関連の更新はしていません。
今後更新するかは未定です。
SS保存場所






澪「放課後ティータイムは解散します」#第一部 【音楽】


http://takeshima.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1248015802/

澪「放課後ティータイムは解散します」#第一部
澪「放課後ティータイムは解散します」#第二部




1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:03:22.53 ID:C9j0Q2iH0

ある日、放課後ティータイムのベーシストにして、
メインシンガーでもあった秋山澪は、音楽雑誌のインタビューに答えていた。

話題は、先日突如リリースが発表された彼女のソロアルバムについて――。

記者「この度の取材で聞きたいのではですね、
   なぜこのタイミングでソロアルバムを発表したかということなんですよ」

澪「…………」

記者「貴方の1stソロアルバム『MIO』聴かせていただきました。確かに良い出来でしたけれど……」

澪「私たちのバンド、放課後ティータイムが停滞状態にある今、
  なぜあえてそっちを放置してソロ活動を行うのか、ということですか」

記者「いや、停滞とまでは言いませんが、最近の放課後ティータイムには
   メンバー間の不和、グループ解散の噂が絶えないのは事実ですよね? 
   それで今までソロでの活動をいくら待望されても
   頑としてバンドとしての活動に拘った貴方がソロアルバムを発表するというのは……」

澪「放課後ティータイムは解散することになると思います」





3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:07:14.49 ID:C9j0Q2iH0

記者「え?」

澪「確かに法的にはまだ解散していないし、権利関係とかレーベルの運営とか色々、
  片付けなきゃいけない金銭的な問題もある。でも、もうメンバーの心はあのバンドにないんです」

記者「ほ、本当ですか?」

澪「ムギは今以上に曲を発表する場に飢えていて、梓もギタリストして独立したいはず。
  律は……わからないけど……極めつけは唯だ。
  あの子の心はもう完全に放課後ティータイムから離れてしまっている」

記者「やはり噂は本当だったのですか……。
   と、いうことは貴方のこのタイミングでのソロアルバムのリリースが意味することは……」

澪「ええ。私、秋山澪は放課後ティータイムを脱退しました」

記者「!!」

澪「もう、夢の時間は終わったんです」



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:10:44.67 ID:C9j0Q2iH0

こうして翌日のスポーツ紙には
『秋山澪、ソロアルバム発表を区切りに放課後ティータイム脱退。グループは解散へ――』
の大見出しが躍った。

レコード会社、特に彼女たちのマネージャーであり、
誰よりもメンバーのことをよく知る人物でもあった山中さわ子
(彼女は教師からロックバンドのマネージャーへ華麗な転身を遂げていた)
は、グループの解散は否定したものの、澪の脱退については口をつぐんだ。

そして、その衝撃的なカミングアウトをきっかけに、他のメンバーも徐々に独自の活動を展開し始め、
放課後ティータイムは自然消滅的に事実上の解散を迎えた。
日本の音楽界の歴史を変えたといっても過言でないスーパーバンドの、余りにもあっけない幕切れであった。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:12:21.11 ID:C9j0Q2iH0

律「よっ、ムギ」

都内のとある高級レストランのVIPルーム。
律は久方ぶりに顔を合わす友人にして元バンドメイト――琴吹紬を手招きした。

紬「わざわざ来てもらっちゃって、ごめんなさいね」
律「いいってことよ。それよりこの店もお前の家が経営してるんだってなぁ。さすがお金持ち!」

澪が放課後ティータイムからの脱退とグループの解散を暴露してからというもの、
律たちもまた、好奇心旺盛なマスコミに追われる生活が続いていた。
そして、紬が琴吹家経営のこの店を会合の場所に選んだのは、
外野に余計な気を使う必要がないからだった。

律「それで話っていうのはなんだい?」
紬「実は私、今度ソロアルバムをレコーディングすることが決まったの」
律「本当か!? そりゃめでたいなー。
  そういやムギは放課後ティータイムの最後の方から、かなり曲書き溜めてたもんな」
紬「…………」




7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:13:15.99 ID:/IqeiI3sO

今からでも遅くはない。
ゲット・バック セッションだ!





9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:14:26.74 ID:C9j0Q2iH0

そこまで言って律は自分が地雷を踏みかけていることに気付いた。

律「あ……ごめんな。それより用件に戻るけど……」
紬「ええ、話というのは他でもないの。律ちゃんに今度の私のソロアルバムで、数曲叩いて欲しくて」
律「何だよ、そんな話か。断る理由がないね!」
紬「じゃあ……」

「勿論OKさ! 全曲でも叩いてやるよ」――と、律はご自慢の明るい笑顔で快諾して見せた。
そして紬にとっても久しぶりに見る仲間の明るい表情
――それこそ高校時代に返ったような――は何よりの心の清涼剤だった。

紬「アルバムには律ちゃんの他に、梓ちゃん、澪ちゃん……
  そして唯ちゃんにもゲスト参加してもらう予定よ」
律「そうなのか!」

律は驚いたと同時に、『ゲスト参加』という言葉は余りにも悲しく感じてしまったのも確かだった。

紬「もっとも、皆が一緒にスタジオに集まってレコーディングするのは難しいから、
  バラバラで録音したパートを編集することになるんですけれど……」
律「そうか……」

眉毛を伏せる紬を見て、律は溜息を一つ吐いた。

律「確かに、今の私たちじゃ、一緒のスタジオ内には居れないだろうね」
紬「律ちゃん、私たち、またいつか5人揃って演奏できる日が来るのかしら……」
律「先のことはわからないよ。でも少なくとも私は諦めてはいない」
紬「私もです」

そうして二人は、少しだけ過去のことに思いを馳せた。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:16:53.15 ID:C9j0Q2iH0

放課後ティータイム。
桜高校の軽音部の仲良し部員5人組で結成されたこのバンドは、
在学中にメジャーのレコード会社に見初められ、
『今、最も熱い現役JKバンド』の触れ込みでアルバム
『プリーズ・プリーズ・ミオ』でデビューを飾った。

その話題性にたがわず、楽曲の質も高く、出すシングルは軒並みオリコン上位。
アルバムも、ただのアイドルバンドでない上質なクオリティで玄人筋の評論家を唸らせ、
名曲揃いの『タクアン・ソウル』や実験精神旺盛な『リツルバー』等の作品は、
その年のロッキンオンジャパンのディスクオブザイヤーに輝くなど、輝かしいスタートを切った。

ライヴツアーは満員御礼、テレビで彼女達の姿を目にしない日はなく、関連グッズも売れに売れた。

そして、この頃は顧問教師兼彼女たちのマネージャーであったさわ子がブチ上げる。

さわ子「日本は制覇したに等しいわ! 次は海外よ!」

満を持してのアメリカ遠征。
期待と不安の中、空港に降り立った5人は、
大勢のアメ公の群れが彼女達の到着を待って群れを成す光景に、心から驚愕した。

この時、『日本の民族衣装』という触れ込みで、5人はコスプレをしており
(唯:スク水、梓:猫耳、紬:ナース服、律:浴衣、澪:メイド服)、

飛行機のタラップから彼女達が手を振りながら降りてくる姿は、
今ではアメリカの歴史の教科書に載るほど有名なシーンとなった。

紬「あのコスプレ、澪ちゃんは相当こたえてたみたいですね」
律「なにせ、そのあとのテレビ生出演まで引きずって、『出たくない!』なんて駄々こねてたもんなぁ」



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:19:55.75 ID:C9j0Q2iH0

そのまま、全米へ生中継される音楽番組に出演した放課後ティータイム。
東洋の島国からやってきた『FAB5(ファブ・ファイヴ)』達にすっかり魅了されたアメ公達は、
こぞってテレビの前に陣取り、番組は恐るべき視聴率をたたき出したという。

律「あの番組に私たちが出演してた時間帯だけ、
  全米での犯罪発生率が減少したなんて話もあるくらいだったからなぁ」
紬「本当、素晴らしい体験でしたね」

その後、全米を横断したライヴツアーも軒並みソールドアウトの大好評。
あまりの人気ぶりに混乱して前後不覚となった唯が

唯『放課後ティータイムはもはやキリストより有名』

と発言し、バッシングを受けるという事件も発生したが、
それすら彼女達の名前を更に有名にする宣伝効果しかなかった。

律「ほんと、あの頃は楽しかったよ。私たち5人の力でなんかデッカイこと成し遂げてる気分でさ」
紬「寝る間もないくらい忙しかったですけど、充実していましたよね」



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:21:46.63 ID:C9j0Q2iH0

同時刻――。ところは変わって某スタジオ。

エンジニア「それじゃ梓ちゃん、もう1回、アタマから通しでいくよー」
梓「はい。お願いします」

ドラマーの流れるようなフィルインとともに、梓が愛機のフェンダー・ムスタングを掻き毟ると、
暴れ馬のいななきの如き活きのよいサウンドスケイプがスタジオ中に広がった。
そして放課後ティータイム時代は見られなかった可愛らしい歌声で梓がマイクに向かう。

梓『レイラぁ~、怒ってオナニー~♪』

放課後ティータイムの自然消滅後、梓はこれまでの活動で培ったツテを頼りに腕利きのミュージシャンを集め、
ちょっとキュートで骨太グルーヴのブルースロックを標榜する『アズニャン・アンド・ザ・ドミノス』を結成。
そして今日はバンドのお披露目ライヴのスタジオリハーサルであった。

エンジニア「しかし梓ちゃん、ライヴ活動をするのも久しぶりだよね」

梓「そう……ですね。ほぼ2年ぶりくらいでしょうか」

エンジニア「後期の放課後ティータイムはツアーどころか、単発のロックフェス出演とかもなかったもんね」

梓「……はい」

エンジニア「いやぁ~、ファンの人は待ってたと思うよ。
      あの元放課後ティータイムの中野梓の
      空気を切り裂くギタープレイがまたナマで拝めるっていうんだから」

梓「…………」

サウンドエンジニアの賞賛に恐縮しながら、梓もまた過去の回想に耽っていた。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:23:36.78 ID:C9j0Q2iH0

ちょうど2年前――。
日本全国を横断する大規模なライヴツアーの千秋楽を迎えようとしたある日の楽屋。

律「さわちゃん、ちょっと相談があるんだが……」

バンドのリーダー(部長)として、マネージャーのさわ子にそれを提案したのは律であった。

律「私たち、ライヴ活動をしばらく休止したいと思うんだ」

律の提案には誰もが同意するところであった。
実際、放課後ティータイムの人気ぶりはもはや狂信者的なところがあり、
ライヴ会場が阿鼻叫喚の地獄絵図と化すことが日常茶飯事となっていたのだ。

もはや悲鳴ともいうべき異常なほどの歓声で、自分達のMCも演奏もマトモに聴こえない。
客席を見ればファン同士が暴動寸前の小競り合いをしていたこともあった。
酷い時には興奮したファンがステージに乱入。
さらに酷い時には、将棋倒しでゲガ人が出る始末――。
こんな状況で、良い音楽など演奏できるわけはない。

唯「ライヴに来るのは私たちの姿が見たいだけの人たちばかり。
  私たちの音楽を聴きたい人たちはCDを聴けばいいと思うよ~」

辟易した唯からこんな皮肉じみたセリフが飛び出すほど、状況は深刻だった。
彼女は特に長く続くホテル暮らしで、妹の憂とも会えず、
その愛情の籠った手料理を食べる機会も少なくなった生活に、一番嫌気がさしていたメンバーであった。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:28:47.19 ID:C9j0Q2iH0

澪「確かに、毎日ホテルからホテルへ。常にマスコミとSPに囲まれ、眠れるのは移動中だけ。
  こんな家もないみたいな今の状況にはみんなちょっと疲れてきていたんだ」

梓「ちょっと休息が必要って皆で話していたところなんです」

紬「ライヴ活動は休止しても、勿論レコーディングはするしシングルもアルバムも出すつもりですからね♪」

当初、彼女たちは可愛らしいルックスで売れ始めたアイドルバンド。
それが急にファンへの露出が減るとなれば……危惧する声がないでもなかったが、

さわ子「確かに……。貴方たちはもはやルックスと話題性だけじゃなくて、
    音だけで勝負するに十分なバンドになっているわね」

さわ子は5人の意思を尊重したのであった。こうして放課後ティータイムはライヴ活動を一時休止した。

幸いにも十分な気持ちと時間の余裕を持って
レコーディングにのみ専念した放課後ティータイムは名作を連発。
ヒットチャートにも相変わらず君臨し続けた。
特にこの時期発表した、架空のロックバンドがコスプレコンサートを行うという
コンセプトアルバム『サージェント・ネコミミ・ロリ・ケイオン・クラブ・バンド』や

2枚組の力作『うんたんアルバム』は、20○○年にして、既に21世紀に名を残す名盤としての高評価を得た。

だが、メンバーにとってあまりにも自由すぎるこの期間は、
同時にトラブルの種をも孕ませるキッカケとなったのであった。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:31:43.66 ID:C9j0Q2iH0

梓「電話……唯先輩だ」

リハーサルの休憩時間、鳴りだしたケータイのディスプレイに表示された名前には、
梓にとって複雑な思いを抱かざるを得なかった。

唯『やっほ~♪ あずにゃん、元気~?』

梓「元気ですよ。それにしても久しぶりですね」

唯『あれ~、そうだっけ?』

梓「放課後ティータイム解散の法的処理を話し合うために、弁護士を交えて5人で集まって以来……ですね」

唯『そっか~。それよりさ、あずにゃんギター弾いてくれない?』

梓「え、私がですか……」

唯『そうそう~。今作ってるソロアルバムでね~、どうしてもあずにゃんのギターが欲しい曲があるんだ~。
  “ザリガニ”っていう曲なんだけどね。
  「想像してごらん、ザリガニなんてこの世にいないと」っていう歌詞で……』

梓にとって、バンドが解散したとはいえ、唯は軽音部時代からの先輩として慕った存在だった。
そんな唯の頼みを断ることなど梓には出来ないはずだったが……。

梓「唯先輩、そのアルバムの制作には『あの人』も携わってるんですか?」

唯『あの人って誰のこと?』

梓「そんなの一人しかいないじゃないですか」

唯『あぁ~、私のダーリンのこと?
  勿論、カレには今回のアルバムのコンセプトから
  ジャケットデザインからサウンドディレクションまで全部……』

梓「それなら、その話はお受けできないです」

唯『え?』

梓「ごめんなさい。参加したい気持ちは山々ですけど……どうしても無理です」


梓はそう言い残して一方的に電話を切った。

梓「放課後ティータイムを壊したあの男と……どうして今更一緒に演れるっていうんですか、唯先輩……」



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:35:26.15 ID:C9j0Q2iH0

また時間は遡って、放課後ティータイムがライヴ活動を休止して1年ほどたった頃。
ある日、ニューアルバム用の楽曲セッションのため、
レコーディングスタジオに現れた唯が連れ添っていた人間を見て、律、紬、梓、澪は一様に驚愕した。

唯「こちら、最近知り合ってお付き合いすることになったオノさん。
  アートの世界じゃかなり有名な人でね、この前、街でナンパされちゃったんだ~♪」

男「どうも、オノ・ヨースケと言います。フリーのアーティストやってます(キリッ)」

澪「ちょ、ま……」

律「マジかよ!」

梓「お付き合いって……あの唯先輩が!?」

紬「そんな……どうして男性なんかと……。
  そうなのね、ごめんね唯ちゃん、私が可愛がってあげなかったばっかりに……ううっ」

唯が連れてきた自称アーティストの恋人に、一同は戸惑いを隠せなかった。

律「恋愛は本来個人の自由だけどさ……私たちは人気商売なんだから、オトコはまずくないか?」

唯「やだな~、りっちゃん。私たちはもう音楽だけで勝負できる大物バンドだよ?
  ダーリンがいるくらいでどうってことないって♪」

そこまで言うのなら仕方ないと納得した一同(紬以外)は、
渋々唯のお付き合いを黙認するつもりだったのだが……。



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:37:47.13 ID:C9j0Q2iH0

唯「みんな~、今、レコーディングしてる曲にウチのダーリンのボーカルを入れたいんだけど、いいよね?」

澪律紬梓「!!!!」

男「アートの世界でやってきた俺だけどさ、実は歌声にも自信があるんだZE!」

唯「さすが、ダーリンすご~い」

澪「いや、唯……これは私たち、放課後ティータイムの曲だから
  いきなりゲストボーカルでしかも男の人っていうのは……」

唯「そしたら早速レコーディングだね! さわちゃん、スタジオ押さえるの、お願いね!」

澪「お、おいっ! 唯……」

仕方なく歌わせてみたはいいものの、

男「ギョワワワーン♪」

律「うわ……めっちゃ下手だ」

梓「これならガラ声の唯先輩の歌の方がまだマシなレベルですね」

紬「聴いているだけで吐き気がします。まるで殺されかけの鶏の鳴き声みたい」

澪「というか最近あの唯の彼氏、私たちのレコーディングにずっと居座ってるよな……」



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:39:12.48 ID:C9j0Q2iH0

男「唯、今度のアルバムにさ、1曲全部唯のカスタネットソロの曲を入れるのはどう?」

唯「さっすがダーリン~。名案だね~!」

律「ちょ……私だってドラムソロすらやったことがないのに」


男「唯、今度はさ、1曲全部、俺と唯が愛を囁き合う会話を
  サウンドコラージュして9分くらい収録するのはどうかな?」

唯「さっすがダーリン~。名案だね~!」

梓「そ、そんなぶっ飛んだ曲をアルバムに収録するっていうんですか……!?」


男「唯、今度の曲のプロモーションビデオにさ、俺も出演していいかな?」

唯「さっすがダーリン~。名案だね~!」

紬「ライヴ活動を休止した私たちにとってPVは唯一のファンへの露出なのに……」

澪「………これはまずい」

状況は、徐々に悪化の一途を辿っていた。

澪「なぁ、皆正直なところを聞かせてくれないか。唯のあの彼氏、どう思う」

梓「ぶっちゃけウザいです」

律「確かに……。別に付き合うのはいいんだけどさぁ……
  あの男、やたら出しゃばって私たちのレコーディングにも介入してくるし……」

紬「付き合うだけでも殺す理由は十分なんですけどね。
  事実、あの男と付き合うようになってから唯ちゃん、変わった気が……」



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:42:43.79 ID:C9j0Q2iH0

律「そう言えばこの前、ソロ名義で変なアルバム出してたなぁ……」

澪「そうなのか? メンバーで一番最初にソロ活動を始めたのがまさか唯とは……」 

梓「ああ、あの全裸の唯先輩とあの男がジャケットの、
  ノイズコラージュで全面埋め尽くされたアルバムのことですか」

紬「前衛音楽と言えば聞こえはいいですけど、あれはただの雑音でしたね。
  あの作品の制作にも、あのオノとかいう男が全面的に協力していたそうです」

梓「それにこの前、とあるチャリティライヴイベントで
  唯先輩がソロで出るっていうんで、ゲストでギター弾いたんですよ」

律「おおっ! 1年ぶりのライヴ活動じゃないか」

梓「そうなんですけどね、唯先輩『ふわふわ時間』を演ろうって言って、
  演奏自体はすごく良かったんですけど……」

澪「なんとなく想像ついた……」

梓「そうなんですよ! あの男が唯先輩のボーカルにあのキモイ鶏声で絡んできて、
  『ギョエーッ!!』とかシャウトするんですよ!?
  終いにはステージを占領してわけのわからないポエムを……」

紬「それは梓ちゃん……お気の毒に……」

梓「せっかくいい気持ちで久しぶりの演奏を楽しんでたのに台無しですよ!
  ほんと、ギターであの男の頭カチ割ってやろうかと一瞬思いましたもん」

澪「事態は思ったよりも深刻だな……」

4人が額を集めて、ウザい唯の彼氏とそれを良しとする唯の所業に
頭を悩ませているうちはまだ愚痴を言いあうだけでよかった。

何だかんだで唯は澪と並び立つ放課後ティータイムのフロントマンであり、
近年ではギターの腕前もめきめきと上達し、
作曲でもバンドに貢献していたからこそ、目を瞑る余裕があった。

しかし、不幸なことに、5人の絆に入ったわずかのヒビは、あっというまに他の4人へも波及していく。



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:45:47.00 ID:C9j0Q2iH0

その傾向が顕著だったのは、唯とともにバンドの推進力となっていた澪であった。

澪「ちょっと、律! 今のテイク、サビのところでまたリズムが走っただろ!」

律「なんだよ~、私のドラミングの持ち味が
  ちょっと走り気味なぐらいの勢いだってこと、わかってるだろ? 何年一緒にやってるんだ?」

澪「何年も一緒にやってるのに一向に改善されないのはどういうことなんだ?」

律「な、なにおう!?」

澪「はぁ……これなら前に律がカゼでぶっ倒れた時に
  ライヴで急きょ叩いてもらったセッションドラマーの方が……」

律「(ぷっちーん)」

口論の末、いじけた律は3日間失踪。
梓や紬、マネージャーのさわ子の説得と澪の謝罪によって
グループには戻るものの、僅かなわだかまりが残った。

澪「梓、今のソロ、もう一回弾いてくれない?」

梓「あ、はい(ギョワワーンピロピロ!!)」

澪「うーん、なんか違うんだよなぁ……。もう一回……」

梓「は、はい(グワグゴーンピキピキ!!)」

澪「違うんだなぁ……。何ていうか、もうちょっとジェフ・ベックみたいに弾けないか?」

梓「(今までめったに私のプレイにダメ出しすることなんてなかったのに……)」

その時梓は口には出さず我慢したものの、澪がいなくなったところで
「そんなにベックのギターがいいなら、稼いだ印税で本物のベックを雇えばいいんですよ……」
と寂しそうに呟くところを、紬に目撃されている。



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:47:13.25 ID:C9j0Q2iH0

澪「なぁ、ムギ。この前デモ聴かせてくれた新曲のことなんだけど」

紬「あ、はい!(あれは私の久々の自信作……澪ちゃん気に入ってくれたのかしら……)」

澪「私が考えている次のアルバムのイメージとはちょっとかけ離れてる気がするんだ」

紬「え?」

澪「だから悪いんだけどあの曲はしばらくお蔵入りということで」

紬「え、ええ……(今まで曲に意見することはあっても頭ごなしに否定することはなかったのに……)」

メンバーの中で一番の気遣い上手だったムギが、
深夜の喫茶店でヤケ紅茶に浸る姿が、スタジオ帰りの梓と律に目撃されたという。
心なしか、沢庵もしなびていたらしい。



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:49:53.34 ID:C9j0Q2iH0

律「澪のヤツ、唯があんな風になったから『自分がしっかりしなきゃ』
  って自分にプレッシャーかけて、あんなに厳しいことを言うようになったんだろうなぁ。
  そう思えば、あれだけ私に厳しく言ったのも理解できるよ」

一通りの回想と食事を終え、2杯目のお茶に手を付けた律が遠い目をして言った。

紬「ええ……あの頃には唯ちゃん、スタジオにもあまり来なくなってましたしね」

当時の唯は、彼氏のオノヨースケにライフスタイルから思想から何からなにまで汚染され、
街中で突然ゲリラライヴを行っては警察のご厄介になったり、
『平和のコタツイン』とかわけのわからない思想をブチ上げて、
彼氏とともに24時間コタツに同衾する光景をマスコミに取材させ、全国ネットで中継させるなど、
その奇行ぶりに磨きがかかっていた。

紬「あの時の澪ちゃんの頑張りよう、もう少しだけ理解してあげられれば
  こんなことにはならなかったかもしれないわね」

律「過ぎたことを後悔しても仕方ないさ……。
  まぁ、後悔するに値するだけ、私たちにとってあのバンドはかけがえのないものだったけどな」




34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:51:54.77 ID:qRdotAwa0

コタツインってなんだよwww





35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:52:15.54 ID:C9j0Q2iH0

このままじゃいけない――。
バラバラになり、崩壊への道を辿る放課後ティータイムを
なんとか立て直そうとした澪は、ある日メンバーを集めて、こう切り出した。

澪「映画を作ろう」

律「はぁ? 私たちはいつから女優になったんだ?」

梓「演技には自信ないですけど……」

紬「ベッドシーンだけなら自信はありますけど……」

澪「そうじゃなくてだな。つまり――」

澪の提案はこうだ。
現在進めているニューアルバムのレコーディングにカメラを入れ、その現場を撮影してもらう。
それを放課後ティータイムのレコーディングを追ったドキュメンタリー映画として公開する――。

律「私たちもライヴ活動を休止して久しいし、確かにここらでバンドとしての露出が必要だよな」

そして、撮影と並行して制作したアルバムは、映画のサントラ盤として発表する。

梓「なるほど! 映画はアルバムの宣伝にもなるし、アルバムは映画の宣伝にもなる。一石二鳥ですね」

さらに、映画のラストでは、2年ぶりの放課後ティータイム単独ライヴを行い、
新曲とこれまでのヒット曲を演奏するシーンをクライマックスに!!

紬「とうとうライヴ活動再開ですか。確かに、いい頃合だと思います」



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:55:04.85 ID:C9j0Q2iH0

澪「最近色々あって大変だったけど、初心を取り戻して、私たちの絆は健在だって示してやるんだ。
  合言葉は『ゲット・バック・けいおん!(軽音部時代に戻ろうぜ)』だ!」

瞳を輝かせて理想を語る澪に、律、紬、梓は一様に同意した。

そして、

澪「どうだ。これならやってくれるか、唯?」

唯「うん、わかったよ、澪ちゃん。私もやる。『げっとばっく! けいおん!』 だね!」

澪律紬梓「『ゲット・バック・けいおん!(軽音部時代に戻ろうぜ!)』」

かくして、バンドとしての原点を取り戻すためのセッション。

『ゲット・バック・けいおん! セッション』は開始された。



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:56:58.93 ID:C9j0Q2iH0

またまた時は現代に戻って、都内の某高級ホテル――。
音楽雑誌の取材を終えた澪がホテル内の喫茶店で一息ついていると、
見覚えのある美女が澪の正面の席に座った。

さわ子「久しぶりね、澪ちゃん。ソロアルバム好評じゃない♪」

澪「先生……じゃなくてさわ子マネージャー」

さわ子「いいわよ、先生で。私、また教師に戻ったの」

澪「そうだったんですか?」

さわ子「だって、放課後ティータイムが解散してしまった今、
    私が心からマネジメントしたいバンドなんて、もうこの世にはいないもの」

澪「…………」

少しだけ悲しそうな顔をした澪を認めると、さわ子は言葉を続けた。

さわ子「勿論、バンドが解散したって貴方達が私のかわいい教え子だってことは変わらないけどね。
    何なら今から高校時代に戻って、また澪ちゃんにコスプレさせたいくらい♪」

澪「……ありがとうございます」

さわ子「でもね、今日は残念だけど仕事の話――というより、残務の話ね」

澪「残務ですか」

さわ子「放課後ティータイム最後のアルバム――あれ、どうする?」

さわ子の問いかけに、澪は一層苦い顔をして、目を伏せた。
そう、『ゲット・バック・けいおん!』を合言葉に制作した映画のサントラアルバムは、
放課後ティータイムが解散した今になっても、世に出ることなくお蔵入りの状態となっているのだ。
もっとも、それはお蔵入りになってしかるべき散漫な内容のアルバムであったからなのだが――。

さわ子「一応、使えそうな曲を片っ端から集めて出した編集盤が出回ってるけど、
    あれは澪ちゃんの本望ではないものよね?」

澪「はい……。残った音源をエンジニアが勝手に切り貼りして出しただけの
  ツギハギのゴミのようなものですから」

さわ子「厳しいわね。ま、私としてはあのアルバムをあるべき形で世に出すのが
    最後のマネージャーとしての仕事かと思ったんだけど……」

澪「……正直、あのアルバムのことは思い出したくありません」



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 00:59:40.47 ID:C9j0Q2iH0

結論から言ってしまえば、撮影班をスタジオに招きいれてのレコーディングは、上手くいかなかった。

まず、元来恥ずかしがり屋の性格だった澪が、カメラの前で普段通りのレコーディングに臨めるわけがない。
そうしてまた余計なプレッシャーを抱え込んだ澪は、
案の定律をはじめとするメンバーにつらくあたり始めてしまったのだ。
さらに、

唯「ダーリン~、私の新曲、『うい~、アイス~』の出来栄えどう思う?
  激しいギターリフに乗って私がひたすらに憂にアイスをねだり続けるっていう、
  斬新なアイデアの曲なんだけど」

男「ハハハ! 流石、唯は天才だなぁ! 最高だよ!
  早速レコーディングしよう。勿論、俺も協力するZE!」

相変わらず唯の彼氏がスタジオに入り浸り、レコーディングに介入し続けたのだ。
終いには、

唯「澪ちゃ~ん、私やっぱりライヴやりたくな~い」

澪「な……どうしてだよ?」

唯「だってライヴするとなると曲を覚えてリハーサルしなきゃいけないし、面倒くさいんだもん。
  澪ちゃん、私がいまだに五曲以上同時にコード進行と歌詞が覚えられないって知ってるくせに~」

これにはさすがの澪以外の3人もキレかけた。



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 01:02:39.34 ID:C9j0Q2iH0

唯「ライヴには私でたくないよ~。まだチケットも売ってないし、中止しようよ~。
  それでもやるっていうなら、この映画も中止だね~」

しかし4人は、この2年の間、彼氏とのラヴラヴにかまけ、音楽活動も殆ど好き勝手にやってきた唯に、
いきなり大観衆の前に立てというのも無理な話と渋々納得する。
何より、ここまでやってきた映画制作を中止することなど現実的に難しい。
頭を抱えた澪たちだったが、

紬「それじゃあ、こうするのはどうかしら?
  ドームとかアリーナとかの大規模なライヴはなし。
  そのかわり、私たちの母校の桜高でライヴをやるというのは?」

澪「そうか! その手があったか!」

律「確かに3年通ったあの高校の体育館のステージなら、いくら久しぶりの唯でも緊張することないだろ」

梓「図らずして『ゲット・バック・けいおん!』っていうコンセプトにもぴったりですしね」

唯「う~ん、まぁ、それならいいかな~」


澪「よし! 決まりだな。あと、せっかくやるならお決まりの体育館でやるより、
  インパクトがあるほうがいいんだけど……」

律「インパクトったって、体育館以外にあの学校で演奏できそうなところないだろ」

紬「音楽室はちょっと手狭ですしね」

梓「! それなら学校の屋上で演奏するのはどうですか? 画的にも凄くかっこいいはずです」

澪律紬「それだ!!!」

こうして、急きょ映画のラストシーンを撮影するための、桜高屋上ライヴ
――後に『ルーフ・トップ・ライヴ』と呼ばれる伝説的なライヴが行われることが決定した。

だがこの時は、5人のうちだれも、
この演奏が結果的に放課後ティータイム最後のライヴ演奏となることなど知る由もなかった。



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 01:06:05.60 ID:C9j0Q2iH0

律「本当にこんなところでやるのか! すごいな!」

母校の屋上、限られたそのスペースに所狭しと並べられた機材を眺めて律は感嘆した。

梓「天気も晴れてよかったですね。撮影にはもってこいです」

紬「でも本当に大丈夫なのかしら。今日は平日だし、校内では生徒の方も授業をされているのに……」

澪「ある意味アポなしのゲリラライヴみたいなものだからな。
  でも大丈夫、その辺はマネージャーが話をつけてくれているはずだし」

さわ子「昔の職場のよしみよ。校長の弱みは沢山握ってるし♪」

こうして始まった屋上ライヴ。
演奏曲はレコーディング中のアルバムから新曲を数曲、これは唯が昔の曲は忘れていたためだった。

しかし、そこは一時代を築いたバンド――。
とても内輪に火種を抱えているとは思えない熱い演奏で、
ただの高校の屋上をあっという間に熱気ほとばしるステージに変えて見せた。

生徒1「ねえ? 屋上の方からなんか歌声が聴こえてこない?」

生徒2「本当だ……って、これ、放課後ティータイムの秋山澪の声じゃない?」

生徒3「ええっ!? あの放課後ティータイム!? 確かこの高校のOGの人たちのバンドなんだよね?」

生徒4「間違いないよ! 澪だけじゃなくて平沢唯の声も聴こえる!」

母校の星――あの放課後ティータイムが2年ぶりのライヴをあろうことか校舎の屋上で行っている。
噂は即座に全校を駆け巡り、殆ど全ての生徒達、
そして教師達までもが授業を放り出して校庭に集まり、屋上を見上げた。



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 01:08:30.29 ID:C9j0Q2iH0

そしてライヴの方も終盤。ひとしきり新曲群を演奏し終えると、澪はマイクを通して、4人に呼びかけた。

澪「ねえ、最後は『ふわふわ時間』でシメないか?」

それは放課後ティータイムが初めてバンドとして演奏したオリジナル曲。
彼女たちの原点を示す、まさにバンドを代表する1曲だった。

律「よっしゃ! いっちょやるか!」

律のカウントに導かれると、今回のライヴに一番乗り気でなかったはずの唯もまたギターリフでそれに応えた。
さしもの唯も『ふわふわ時間』だけは覚えていたのだ。

澪『キミを見てるといつもハートドキドキ~♪ 揺れる想いはマシュマロみたいにふわふわ♪』

澪『いつも頑張る~♪』
唯『いつもがんばーる♪』
澪『キミの横顔~♪』
唯『きみのよこがおー♪』

律「(澪のヤツ、なんか……)」
紬「(唯ちゃんに向かって何かを訴えるように歌ってるみたい……)」
梓「(心なしか唯先輩もそれに応えてる……ように見えるけど)」

澪『ふわふわタァ~イム♪』
唯『ふわふわたーいむ♪』

いつの間にやら、校庭には彼女たちの演奏を少しでもハッキリと聴きとろうと、
そして彼女たちの姿を少しでも垣間見ようと、全校中の生徒たちが集まっていた。
そしてこの騒ぎを聞きつけた警察が、演奏を止めさせようと屋上に踏み込むという一幕もあったものの、
それすら映画のクライマックスを、放課後ティータイムの2年ぶりのライヴを
より盛り上げる作用にしかならなかった。



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 01:10:39.77 ID:C9j0Q2iH0

こうして桜高屋上ライヴは成功に終わり、映画の製作も順調に進み、
バンドの結束も元に戻る……と思われたのだが現実は甘くなかった。

唯「映画の撮影もレコーディングも終わったし、私、しばらく放課後ティータイムの活動には顔を出せないね」

澪「は? 何を言っているんだお前は」

唯「だって今ダーリンと制作してるソロアルバム、途中で放りっぱなしなんだもん。そっちの作業に戻らなきゃ」

律「またあの男かよ……」

梓「そ、そんな……! あの屋上ライヴをきっかけに
  これからまたライヴ活動に復帰しようっていう話もあったのに」

唯「一回きりでいいよ~。面倒くさいもん」

紬「それならせめて映画とアルバムの宣伝にテレビに出演するくらいなら……」

唯「だめだよ~、向こう1年はもうソロ活動でスケジュールおさえちゃってるって、ダーリンが言ってたし」

律「おい、唯、お前なぁ……いい加減に」

澪「いい加減にしろっ!!」

そしてとうとう来るべき時がやってきた。

澪「口を開けばダーリンダーリンってあの男のことばかり……。
  レコーディングには勝手に連れてきて参加させるし、
  そうかと思えばソロアルバムがどうとかいってスタジオには姿を見せない、ライヴもやる気がない……」

澪「唯は放課後ティータイムとあの男とのソロ活動、一体どっちが大事なんだ?」

律紬梓「!!!」

今までだれもが遠慮して口に出せなかったその問いかけを、我慢の限界に来た澪は口に出してしまった。



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 01:13:19.98 ID:C9j0Q2iH0

唯「わかったよ――」

すると唯は急に真剣な口調になり、

唯「うすうす気づいてたんだ。みんなが私とダーリンの関係を良く思っていないのは――」

澪「だったら……っ!」

唯「でも私はやりたい音楽をやりたい
  ――そしてそれは放課後ティータイムじゃ出来ないと、みんなはそう言うんだね」

律「お、おい……まさか」

唯「……私、帰るね」

紬「唯ちゃん!」

梓「唯先輩!」

その晩、4人の携帯には唯からのそっけない文面のメールが届いた。

唯『私たちのドリームタイムはもう終わり。ばいばい』

平沢唯が放課後ティータイム脱退を表明した瞬間であった。

そして、唯の代理人を名乗る弁護士が残された4人の前に現れ、
脱退後の楽曲の権利や所有権等について、事務的な話を延々とし始めたのはそのすぐ後のことであった。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 01:15:28.21 ID:C9j0Q2iH0

さわ子の判断により、唯の脱退は公には伏せられた。
勿論、それも世間にバレてしまうのは時間の問題だろうが。

そしてかのドキュメンタリー映画『ゲット・バック! けいおん!』は予定通り封切られたものの、
クライマックスの屋上ライヴシーンを除いては、
作中の8割を険悪な雰囲気漂うスタジオでのシーンが占めてしまうという皮肉な内容となってしまった。

これを目にしたファン達は、ネットの噂レベルで流れていた
放課後ティータイムのメンバー間不和説、解散説が信憑性のあるものだと感じざるを得なかった。

そしてレコーディングした音源も聴き返してみれば、
どれもそんな雰囲気が反映された締まらないダラダラとした内容のものばかり。
腕利きのエンジニアがストリングスなどの余計なオーヴァーダビングを繰り返し、
切って貼っての編集を行うことでやっと体裁を成す始末。

こうして出されたサントラアルバムは、
『軽音部時代に戻り、5人の演奏だけで活き活きとした作品を作ろう!』
という当初のコンセプトからはかけ離れた内容となってしまった。

後年、このアルバムと映画を振り返ったメンバーの発言として、

澪「ただのクズ」

律「映画を見て、そのあとアルバムを聴いていると悲しくなる」

紬「しなびた沢庵」

梓「ティータイムだけにまさに茶番」

唯「映画はあの内容なら私がカスタネットを叩いている映像を流し続けた方がましな出来」

と、それぞれこきおろしている。




54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 01:18:04.84 ID:ZDRhuTw9O

>>52
しなびた沢庵wwwwwwwwwwww



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 01:18:26.04 ID:PZdVUeO9O

梓クソ吹いたwwww





56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 01:19:25.65 ID:C9j0Q2iH0

そして、唯の脱退を機に他の4人も自らの今後の身の振り方を考え始めた。

澪「(放課後ティータイムは……もう駄目かもしれない。
   そう言えば次のアルバムのためと思って用意していた曲が結構あるな……)」

澪は自宅に籠り、宅録でソロアルバムのデモテープを作り始める。

律「(放課後ティータイムがこの状態だと私はやることがないな……。
   他のアーティストのレコーディングにでも顔を出してみるか)」

律は持ち前の明るさで様々なアーティストやバンドとの交流を深め、
セッションドラマーとして少しずつ色々な作品に参加し始める。

紬「(放課後ティータイムじゃ澪ちゃんに却下された曲が結構残ってる。
   自分ではそこまで悪い出来だとは思っていないし……)
   斉藤、琴吹家の別荘にレコーディングが出来るスタジオ付きのものがありましたね?
   あれ、今すぐ使えるように手配できるかしら?」

ミュージシャンとしての自我に目覚め始めていた紬もまた、ソロアルバムの制作に取り掛かった。

梓「(私はやっぱりバンドがやりたい……。ライヴがやりたい……。人前でギターを弾きたい……。
   でも今の放課後ティータイムじゃそれは無理……。だったら……)」

梓は腕利きのミュージシャンを集め、新たなバンド結成へ水面下で動き出した。

唯「想像してごらん~♪ ザリガニなんてこの世にないと~♪
  想像してごらん~♪ 追試なんてこの世にないと~♪」

男「いやぁ、唯は天才だぜ!! こりゃソロアルバム『ザリガニ』大ヒット間違いなしだ!」

唯は相変わらずバカップル状態で好き勝手に活動。放課後ティータイムのホの字も忘れていた。



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/20(月) 01:21:23.16 ID:C9j0Q2iH0

この時点で、少なくとも唯と澪以外の3人は、
放課後ティータイムがいつかまた活動を再開することを心のどこかで期待していた。

しかし、冒頭にあった通り、唯の脱退すら公になっていない状態で、
バンドのドロドロとした内情と抜け駆け的に自らの脱退を発表した澪の行動の波紋は大きく、
もはや事態に取り返しがつくことはなかった。

こうして21世紀最大にして最高のロックバンドであった放課後ティータイムは、
悲惨な最期を遂げることとなったのであった。

第一部 解散編 完



関連記事

ランダム記事(試用版)




澪「放課後ティータイムは解散します」#第一部
[ 2011/06/16 22:33 ] 音楽 | | CM(0)

コメント(アンカー機能)
●>>1と半角で書き込むと>>1と記事へのアンカーが生成される。
●*1と半角で書き込むと1とコメントへのアンカーが生成される。
上記の2つのアンカーが有効なのは該当記事のみ。

コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する

サイト関連
メール ツイッター 最新記事一覧(30件)
ユーザータグ 検索

U:
P:
色々変更
好みのカラーコードをどうぞ

記事の背景色変更


本体の背景色変更


名前の色変更
IE8:重
火狐4.01:軽
chrome:軽


広告4
広告5
広告6