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律「なんてったって私は部長だからな!」#前編 【非日常系】


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律「なんてったって私は部長だからな!」#前編
律「なんてったって私は部長だからな!」#後編




1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:36:01.91 ID:fj7Tsuek0

私は田井中律、桜ヶ丘高等学校の2年生で軽音楽部の部長だ。
今日その軽音楽部が結成したバンド
「放課後ティータイム」で学祭ライブを行い、会場を大いに盛り上げ成功した。

律「今年の学祭ライブも楽しかったな!」

唯「うん!りっちゃんが風邪引いたり、治ったと思ったら私が風邪引いたりして大変だったけどね」

梓「初めての学祭ライブ、感動しました!」

私たちは、学祭ライブが終わって音楽準備室に戻ってからも、まだ興奮が収まらない状態だった。





2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:37:45.83 ID:fj7Tsuek0

澪「5人が集まって、こんな楽しいことができるなんて奇跡だよな…」

紬「そうね。この5人が集まってなかったら、と思うとすごく不安になるわ」

唯「私も不安になってきちゃった…
  ねぇりっちゃん、もし私たちがいなくなってもまた集めてくれるよね?」

律「ははは、何へんなこと言ってるんだよ。安心しろ。そんなことがあっても必ず全員集めてやるよ。」

唯「本当に?」

律「本当だよ。なんてったって私は部長だからな!」



3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:38:18.09 ID:fj7Tsuek0


そんなことを話しているうちに、私以外の4人は
ライブで頑張りすぎたのかウトウトし始め、寝てしまった。
私まで寝てしまうと、さっき唯が話したみたいに
みんながバラバラになってしまうんじゃないかと不安になった。
眠りたくないのに眠気がのしかかってくる。怖い。


律「大丈夫だよな。私はみんなをまた集められるよな…」

自分にそう言い聞かせる。
大丈夫。大丈夫だ…



…………………
…………
……



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:42:12.69 ID:fj7Tsuek0

ピピピ、ピピピ、ピピピ
バン
律「はぁ、朝か…」

今日もまたつまらない高校生活が始まる。
何の部活動にも所属していないからか、
毎日毎日つまらないと思いながら生活していたら、
いつの間にか2年生になっていた。

その間に私が学校でしてきたことと言えば、
軽音楽部の部員集めに4月中いっぱい走り回ったあげくに
1人も集められなかったことを除けば、登校、授業、下校の繰り返しだった。
不毛な1年だった。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:43:28.56 ID:fj7Tsuek0

友達も…いない。
1カ月間たった1人で走り回って部員集めをするうちに、
人に話しかけることを辛いと感じるようになった。
勧誘の度に嫌な顔をされて、最初は陽気に振る舞ったものの、
次第に寂しさや虚しさを隠せなくなっていった。
明るいりっちゃんは消えて、いつも死んだ目をしている暗い田井中律が生まれた。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:44:12.55 ID:fj7Tsuek0

「カチューシャをつけた子が勧誘うるさくて困るわ」
「知ってる知ってる。いちいち相手するのがめんどくさいから、
 カチューシャ見かけたら隠れる癖が付いちゃった」

そんな会話を4月の終わり頃に聞いてから、いつも付けていたカチューシャを外した。
中学生のころまでは友達がたくさん居て、明るい、カチューシャがトレードマークの女の子だったのに…
何もかもが変わってしまった。



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:45:36.74 ID:fj7Tsuek0

律(私が登校しなくても誰も気にかけないだろうな…)
そんなことを1人考えながら、トボトボと登校する。

高校に着くと、新入生を勧誘するためのポスターが、そこかしこに貼られていた。


律(去年の今頃、私も下手な絵でポスター作って貼ったなぁ。結局誰も見てくれなかったけど…)

掲示板には部活動の一覧が貼ってあった。当然ながら、軽音楽部の名はそこには無かった。
私が廃部させてしまったのだから…
面倒くさがりの私が必死に勧誘したのは、使命感からだった。
部員1名のちっぽけな部ではあったが、
部長として軽音楽部のメンバーを集めなければ、と自然と責任感を持っていたのだ。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:46:46.59 ID:fj7Tsuek0


律「でも、あんだけ勧誘したんだから義務は果たしたよね…」

自分に言い聞かせるように言う。少し涙声だ。
一度廃部してしまうと、新たに部を立ち上げるには10人が必要になる。
1人も集められなかった自分にはもはや夢の話だ。


??「ちょっとどいてもらっていいかしら」
律「…ぁ …すいません…」

声の主は、生徒会の真鍋さんだった。1年の時に彼女にも勧誘をした覚えがある。

彼女は、部活動一覧に何かを書き加えていた。
軽音楽部 部長…田井中律



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:49:03.86 ID:fj7Tsuek0

え?

律「あ、あの…これって…」

真鍋「ん?どうかした?」

律「軽音楽部って廃部したんじゃないんですか?」

真鍋「そうよ、去年廃部したわ。
   でもね、軽音楽部が廃部したことによってジャズ研の勢力が強くなりすぎてしまったの。」

長いこと軽音楽部とジャズ研でバンドに興味がある層を上手く住み分けさせていたのが、
ジャズ研だけになって大所帯になりすぎてしまったそうだ。



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:50:24.02 ID:fj7Tsuek0

真鍋「部長会議では偉そうにするわ、内部でケンカが起こるわで大変よ。
   それに、今年もまた新入生が入ってくるから、もっとややこしくなるわ」
  「だから、政治的な意味で軽音楽部を復活させることにしたの。
   部長だった田井中さんは、どこの部にも所属していないそうだがら、
   自動的にまた部長になってもらったわけ。」
  「当の田井中さんが見当たらないのだけど、あなた知らない?」


律「…」

私は無言で掲示板の前から走り去ってしまった。混乱していた。
律(また、馬鹿みたいに勧誘しろっていうの? もう…無理だよ…)



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:54:12.88 ID:fj7Tsuek0

その日の放課後、軽音楽部を限定的に復活させ、
生徒会もポスター作成やビラ配り程度なら
協力するということが書かれたプリントを担任の教師から渡された。
担任は軽音楽部を復活させることに関しては否定的な雰囲気だった。
今回の生徒会の動きは、教師サイドからはよく思われていないようだった。

プリントを受け取ると、そのまま帰宅した。
また新たに勧誘する気は無かったし、今の自分にはそんなことできないと思った。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:55:33.21 ID:fj7Tsuek0

律(今日はなんか疲れたな…寝よう…)

私は制服も脱がずにベッドに転がった
。去年の4月に1人で勧誘をし続けたころのことを思い出す。
今よりも、あのころの方が孤独感を強く感じていた。誰も味方してくれない孤独感。


律「もう…イヤだよ…」

身を守るように布団にくるまり、1人震えているうちに眠りに落ちていった。



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:56:49.11 ID:fj7Tsuek0

…夢を見た。
その夢の中では、軽音楽部でバンドを結成して元気に演奏していた。
その中では私は最高に輝いていた。楽しそうだった。
バンドのメンバーには昔の親友の澪も居た…


起きると真っ暗な部屋に蛍光色の時計がボンヤリと浮かんでいた。
時計の針は1時をさしていた。鏡は見えなかったが涙で顔がぐしゃぐしゃなのは分かった。



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:57:46.23 ID:fj7Tsuek0

洗面所で顔を洗っていると、弟の聡が2階から降りてきた。


律「あんまり夜更かしするなよ?」

聡「姉ちゃんだって…」

律「私は今起きたんだよ…」

聡「姉ちゃん寝ながら泣いてたの?」

律「…」

聡「高校生になってから姉ちゃん暗くなったよね。部活動もやってないんでしょ?」
 「俺、姉ちゃんが高校行ったら澪さんとバンドやるのかと…」

律「澪は澪だろ。澪は文芸部で頑張ってるんだ。邪魔しちゃダメだ。」

聡「なんで澪さんと仲悪くなったんだよ。弟が姉の心配するのは変かもしれないけど、
  俺、また姉ちゃんと澪さんに仲良くなってもらいたいんだ」

律「…もう寝ろ。」

聡「…」
 「おやすみ…」



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 00:59:44.66 ID:fj7Tsuek0

私と澪の仲が悪くなった原因は私に有った。最初、私は澪を軽音楽部に誘うつもりだった。
澪のことだから私にくっ付いて軽音楽部に入ってくるものだと勝手に思っていた。

澪「いや、私は文芸部に入るから」

意外だった。澪が差し出した入部届を破りたかった。
…でも、破らなかった。
澪は今まで私にベッタリで私以外友達が居なかったし、このままじゃ澪に良くない。
澪がひとりだちするなら、応援するのが本当の親友だと思った。
まだまだ4月の初めだったし、本入部する5月までに私が軽音楽部のメンバーを集めて、
澪が文芸部に馴染めなかったら温かく澪を軽音楽部に迎えれば良いか、と考えることにした。



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:01:43.46 ID:fj7Tsuek0

しかし、そう簡単にはいかなかった。
4月も折り返し地点に入り、いよいよ焦ってくると
私は楽しそうに文芸部のことを話す澪にイライラしだした。


律「なぁ、文芸部がそんなに楽しいなら文芸部のやつらと一緒に登下校しろよ。」

澪「な、何を言うんだ。馬鹿律!」

律「下の名前で呼ぶのもやめようぜ。軽音楽部に入ってくれなかった裏切り者のくせに馴れ馴れしいぜ。」

自分でも最高にアホなことを言っていると思ったが、ストレスを一方的にぶつけてしまった。
その後も、話しかけてこようとする澪を無視し、自分から話しかけるときも秋山と呼んだ。馬鹿だった。
5月に入り、死んだ目をして、カチューシャを外した陰鬱な私から澪は遠ざかったっていった。当然だった。



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:04:27.83 ID:fj7Tsuek0

なのに、夢の中では澪と一緒にバンドをしていた。
夢の中の私は澪と一緒に演奏することを喜んでいた。
私は澪のことが好きだったのかもしれない。
なんであんな夢を見たんだろう。考えるうちに辛くなってきて、立っていられなかった。
洗面所にうずくまると、私は家族に聞かれないように、声を押し殺してしばらく泣いた。



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:09:42.68 ID:fj7Tsuek0

朝、登校しながら私は考えていた。
あんな夢を見たのは、まだ自分に心残りがあるからだ、と。


律(多分最後のチャンスだ。あとちょっとだけ頑張ろうよ。りっちゃん隊員)

放課後、生徒会長が会いに来た。曽我部と名乗った。
このプリントにあるように協力するから、勧誘をよろしくと話す生徒会長に、私は黙って頷いた。
明日から、また勧誘活動をするのだ。不安はあるが、ここで頑張らねば。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:11:13.94 ID:fj7Tsuek0

翌日、早朝からビラ配りをするために、いつもより早く起きた。
洗面台の鏡に映る自分は少しだけ、1年前のまだ元気のあったころのように見えた。
笑顔の練習もしてみた。ぎこちない笑顔だけど、元のりっちゃんに戻れた気がした。


聡「姉ちゃん、何やってんの」

いつの間にか弟が後ろに立っていた。


律「ちょっ、不意打ちかー!」

顔が赤くなったが、自然に笑えた。久しぶりに。


聡「なんだか、元気そうだね。ちょっと安心したよ」

律「うん。お姉ちゃんはちょっと頑張ることにしたんだ。」

聡「応援するよ!」

律「ありがとうな」



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:12:07.84 ID:fj7Tsuek0

久しぶりにカチューシャをかけてみようか、
生徒会長も今の自分の髪型は新入生が恐がるからやめた方が良いと言っていたし。
そう考えてから、思い出した。


律(家にあるカチューシャは全部壊したんだっけ…)

まぁ、髪型なんかこの際どうでもいいだろう。

いつも猫背でトボトボ歩いていた道も、ちょっと胸を張って歩けた。気がした。
なんだか、うまくいきそうな気がしていた。
でも、ビラ配りをする時点になってそんな希望は崩れ去った。



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:12:46.05 ID:fj7Tsuek0

律「う…あう…」

1年間まともに喋らなかったんだ。新入生に声をかけることができなかった。


生徒会役員1「田井中さん、頑張って声かけてよ。私たちも頑張るから」

律(そうだ。ここで頑張らないと、せっかくのチャンスが…)
 (よし!あの子に声をかけてみよう!)

律「あ、あの軽音楽部に…」

新入生「あ…すいません… 他の部にもう決めてて…」

あぁ、あの顔だ。迷惑そうな申し訳なさそうなあの顔だ。1年前に何回も見た顔。
ダメだ。気持ち悪くなってきた…


律「う…」グラッ

生徒会役員1「ちょっと大丈夫!?」

生徒会役員2「もうあなたはビラ配りはしなくていいから。放課後部室で新入生を待ってて」



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:18:45.18 ID:fj7Tsuek0


不甲斐なかった。いつの間にこんな人間になっていたのか。
頑張れなかった。弟の応援も無駄になった。ごめん、聡。
また涙が出てきた、最近泣いてばっかりだ。


放課後、1年ぶりに音楽準備室に入った。


律(懐かしいな。焦っててもイライラしても、ここに来たら不思議に落ち着けたな)

運びこんだまま放置していたドラムには埃が被っていた。
椅子にすわってボーっとしていると、遠くの方で楽しくおしゃべりしている声が微かに聞こえる。
きっと軽音楽部を廃部させずにできたら、私も楽しく仲間と喋っていたのかな。



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:19:33.08 ID:fj7Tsuek0

律「…」

ガチャ

律「!」ビクッ

新入生「あ、すいません…軽音楽部ってここですか?」

律「………」

言葉が出ない。どうしようどうしようと焦ってしまって、
新入生を睨みつける形になってしまった。


律「」ギロリ

新入生「し、失礼しました!」バタン!

あぁ…生徒会がせっかく呼んだ子も逃がしちゃったか… 本当にダメ人間だ私って


律「はは、あははは」

枯れた笑い声が音楽準備室に響く。



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:20:55.97 ID:fj7Tsuek0

もうどうでも良くなった。久しぶりにドラムを叩きたくなった。
そして叩き始めると、元気だったころの自分を思い出して夢中になった。

それから、新入生が何人か来たがドラムに夢中で完全に無視してしまった。
もはや軽音楽部のことはどうでも良かった。
その日はずっとドラムを叩いていた。
次の日も、その次の日も
軽音楽部には変人がいると噂になった。
せっかく軽音楽部に興味を持った子たちも消去法的にジャズ研に行ってしまった。
律(生徒会は怒っているだろうな…)



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:23:04.69 ID:fj7Tsuek0

それでも、ドラムを叩くのを止められなかった。
ドラムの音以外にキーボードやギター、ベースの音が聞こえてくる気がして、
あの夢の中のような演奏がここにある気がして。


律(あー、ついに頭おかしくなっちゃったかな…その方が幸せかもな…本当に馬鹿律になっちゃったよ)

律「澪…」



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:27:46.71 ID:fj7Tsuek0

軽音楽部には変人がいる…
軽音楽部に入ろうとしていた中野梓は、そんな噂を聞いて消去法的にジャズ研に体験入部した。
しかし、入ってみるとジャズ研は派閥のようなものができている上に、
先輩達が出す音は技術的には高くても、全く感動が無かった。
早々にここは向かないと悟った中野は、外バンを組もうとしたが、そちらもどうもしっくり来なかった。



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:29:55.37 ID:fj7Tsuek0

中野は落ち込んでいた。


中野(もしかして音楽に飽きたのかな…)

悩んだ中野は、最後の望みをかけて軽音楽部の変人に会うことにした。
クラスメートには本気で止めるよう言われたが、それを振り切って中野は教室を出た。
変人は音楽準備室にいるらしい。
音楽準備室への階段の前に立つと、確かにドラムを叩く音が聞こえた。
誰かが叫んでいる声も聞こえる。相当怒っている声だ。


中野(こ、怖くないもん…)



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:31:28.46 ID:fj7Tsuek0

ガチャ!
突然ドアが開く音がして。中からは生徒会長が飛び出してきて、


生徒会長「勝手にしなさい!もう生徒会の援助は打ち切るわ!」

と捨てぜりふのように吐いて、走り去っていった。

突然のことに中野はびびってしまった。


中野(き、今日はやめておこうかな…)

そう思って背を向けたとき、中野は微かにドラム以外にキーボードやらギターやらベースやらの音を聞いた。



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:32:36.13 ID:fj7Tsuek0

その音に中野は一瞬で惚れてしまった。


中野(なんか、他のバンドと違うかも!)

勇気を出して中野は階段を上り、音楽準備室の扉を開けた。

中野は落胆した。さっきドラム以外の音が聞こえた気がしたが、それは勘違いだったらしい。
目の前にいるのは、一心不乱にドラムを叩く2年生1人だけだ。
前髪が長い、華奢だけどちょっとカッコイい感じの人だ。
ただ、よく見ると目が死んでる。



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:33:34.40 ID:fj7Tsuek0

しかし、ドラムの音自体はなんだか良い感じがした。どこか懐かしい気がした。


中野は再度勇気を振り絞って、目の前にいる変人に呼びかけた。

中野「すいませーん!軽音楽部の体験入部に来ました!」

変人は全く反応しない。ドラムを叩き続けている。


中野「あのー!」
 「すいませーん!」
 「ちょ、ちょっとドラム止めてください!」



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:34:53.77 ID:fj7Tsuek0

全く反応してくれない。


中野(もしかして誘ってる?ギター持ってきてるし、アンプも置いてある…)
  「や、やってやるです!」

中野は変人の叩くドラムに合わせて、ギターをかき鳴らした。その瞬間2人は不思議な感覚に陥った。


中野(あれ、なんだか前から一緒にやってた感じがする…)

律(なんだこの子のギター。懐かしい感覚がする)

しばらく演奏した後2人とも音を出すのをやめて、見つめ合った。



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:35:35.83 ID:fj7Tsuek0


律「なんだか…なんだか君とはずっと前から一緒に演奏していた気がするよ」

律(なんだろう、この子とは自然に話せる…)

中野「わ、私もです。中野梓と言います。軽音楽部に体験入部に来ました。」

律「中野…か。私は田井中律だ。軽音楽部に来てくれてありがとう。」
 「と、言ってももう新入生の間では私の噂が広がってる上に、さっき生徒会からの援助も切られてしまってなぁ」
 「残念だけど、多分中野が最初で最後の新入部員になりそうだよ…」

中野「大丈夫です。なんとかなると思います。そんな気がします。」

中野はデタラメじゃなく本気でそんな気がしてたのだ。なんとかなる。メンバーは集まる。部長が居れば。



53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:42:28.00 ID:fj7Tsuek0


「あーあ、私ニートになるかも和ちゃーん」

平沢唯はそう言うと、机にグデーっと突っ伏した。

和「朝から何?」

唯「ジャズ研が辛いよ…」

和「もう、せっかくジャズ研に入ってギターも買ったのに。
  1年で飽きちゃったの?最近、ジャズ研サボってるんでしょ?」

唯「ギターは飽きてないよ!でも、ジャズ研はなんだか合わないよぅ…放課後が来るのが怖いよぅ…」ガタガタ
 「き、今日も早退したい…」



54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:43:36.72 ID:fj7Tsuek0

和(確かに、生存競争が激しいジャズ研は唯には向かないかも…)
 (ギターを買うのに3ヶ月もバイトして、スタートが遅れちゃって未だに練習に着いていけてないみたいだし…)

和「本当にギターは飽きていないの?」

唯「本当だよ… でもジャズ研でヘタクソって怒られるの…いっつも… 
  辞めたいけど、憂に心配かけたくないし…苦しいよぅ」
 「し、死にたいかも…」

和「!」

和(唯が死にたいだなんて… かなりきちゃってるわね…)

和「唯…」



56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:44:08.92 ID:fj7Tsuek0

ブルブル
和(生徒会長からメールだ)
 (え!軽音楽部の援助は昨日の分までで打ち切り!? まぁ田井中さんがあの状態じゃあ…)
 (そうだ、どうせなら唯を軽音楽部に入れさせてみようかしら、
  どちらにせよ唯はもうジャズ研に居させられないわ)

和「ねぇ、軽音楽部は興味無いの?」



57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:44:54.84 ID:fj7Tsuek0

唯「うぅ…変人さんの居る部活だよね…気が進まないなぁ…」

和「変人じゃないわよ。田井中さんは良い子よ?ちょっと暗いけど…」

キーンコーンカーンコーン

唯「軽音楽部も怖そうだからやだ…」

和「そう…」



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 01:46:08.29 ID:fj7Tsuek0

中野と初めて一緒に演奏したのに、昔からの友達と演奏したような感覚がした。

そして、その感覚のせいなのか…その日、またあの夢を見た。
バンドで元気いっぱいに演奏する夢を。

夢の中で私は、楽しそうにベースを弾く澪を見つめていた。
澪は輝いて見えた。


律(やっぱり澪はバンドやってる姿が似合う気がするなぁ…)

演奏が終わるとみんながこちらを振り返る。


律(!)
2人いるギターのうち片方はあの中野さんだった。
そして、よく見るともう1人のギターと、キーボードも学校で見かけたような顔だった。


律(もしかして、この夢の中のバンドのメンバーは全員実在するのか?)
もっとよく顔を見ないと…!



82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 11:39:55.99 ID:fj7Tsuek0

ピピピ ピピピ

律「あぁ… 良いところで…」
 「あの見覚えのある2人を探してみるか…」

朝、私は桜高の生徒の顔をジロジロ見ながら登校した。
夢の中のメンバーを見つけたかった。
律(たしか、中野以外のメンバーはみんな2年生の色のリボンを付けていたな…)
結局、その朝は桜高の生徒に気味悪がられる以外には収穫無く終わった。



83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 11:40:41.88 ID:fj7Tsuek0

昼、いつもは昼飯は家から適当に持ってきたパンとか
コンビニで買ったカロリーメイトとかですましていたが、
今日は売店に行ってみることにした。

売店には、思ったほど人は居なかった。
桜高の生徒は弁当派が多いのだろうか。


律(…)ジロジロ

律「そんな簡単に見つからないか…」
 「あ、…あんパン1つください」





84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 11:41:45.91 ID:fj7Tsuek0

放課後、すぐに音楽準備室に行きたかったが、用事ができたとかいう
あまり話したことが無いクラスメートに掃除の当番を押し付けられてしまった。
私だって、最近忙しいのに…

掃除が終わり、音楽準備室に向かっている途中、急に仲間達が音楽準備室で私を待ってくれている錯覚に陥った。
気付くと走っていた。
段飛ばしに階段を駆け上って、勢いよく音楽準備室の扉を開けると、
そこには昨日入部した中野が1人ちょこんと椅子に座っていただけだった。


律(仲間達ってだれだよ… 最近本当におかしくなっちゃったな)
 (でも、中野が入ってくれたのは少し頼もしいな。子供っぽいが真面目な子だ。)



86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 12:01:46.01 ID:fj7Tsuek0

律「今日も来てくれたんだな!」

中野「ど、どうも…」
 「あの、部員集めどうします?私、明日からビラ配りしましょうか?」

律「いや、そのことなんだが、私は狙い撃ち方式でやった方が良いと思うんだ」
 「少し心当たりがあるんだ。」

中野「その心当たりがある人って誰なんですか?」

律「えーっと… 名前は知らないんだが、顔を見れば分かるんだ。
  今日1日探したんだが、どうも見あたらなくてなぁ」

中野「写真とか無いんですか?」



87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 12:02:26.45 ID:fj7Tsuek0

そうか!写真か!
律「クラスごとの集合写真なら職員室の前に貼ってあったな」
 「ちょっと見てこよう」


職員室まで中野と一緒に歩いていると、生徒会の真鍋さんが前から歩いて来るのが見えた。
生徒会の好意を裏切ってしまったことには、少し罪悪感を感じていた。
謝りたかった。



89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 12:09:03.34 ID:fj7Tsuek0

律「あ、あの真鍋さん…」

真鍋「あら、その子はどうしたの?」

律「あ、この子は中野梓っていって今体験入部でうちに来てるんだ。」

真鍋「良かったじゃない!生徒会ではもう田井中さんはやる気ないって思われてたけど、そんなこと無かったのね!」
  「明日から、またビラ配りするわ!」

律「い、いやビラ配りはいいよ。私が自分で部員を集めるから…」

真鍋「そう。あと2人で軽音楽部も正式に部活動になれるから、頑張ってね」
  「それじゃあ、私生徒会に行くね」

そうか…軽音楽部の存続に関して何にも考えていなかったけど、あと2人集めてしまえば軽音楽部は廃部しなくてすむのだ。



90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 12:09:59.23 ID:fj7Tsuek0

正直澪を今さらバンドに誘うことはできそうにない。
でも、他の2人なら強引にでも引き込める気がした。

律「2人とも、私が必ず見つけ出すからな…」


集合写真を1枚1枚じっくり見ていったが、2人とも見つけられなかった。
やっぱり存在しない人物なのだろうか…
いや、まだ諦めたくない。しつこく探そう。

律「うーん、この写真じゃちょっと分からないな。とりあえず私が1人で探すよ。」

中野「何か協力できることがあったら、遠慮なく言ってください!」

律「あぁ、そうするよ。ありがとうな」
 「とりあえず今日はもう遅いし帰るか」



91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 12:17:42.98 ID:fj7Tsuek0

誰かと話しながら帰るなんて久しぶりだった。
嬉しさが溢れそうで、恥ずかしかった。そんな気持ちを少しでも隠そうと両手をポケットに突っ込んだ。
中野は音楽について詳しいようで、話が弾んだ。
軽音楽部に入部してくれたお礼にたい焼きを買ってあげると、とても幸せそうな顔で食べた。


律(こいつ可愛いな…少し澪に似ているし…)

片手をポケットから出し、中野の頭を撫でる。
中野は赤面しながら何か言うが、たい焼きが口に入っていて何を言ってるのかわからない。
本当に可愛い。


律(この子のためにも、軽音楽部を復活させないとな)



92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 12:22:20.15 ID:fj7Tsuek0

翌日、私は朝練にくる生徒よりも早く登校すると、すぐに屋上に上がり双眼鏡で登校してくる生徒達を観察した。
始業時間間近になっても、夢の中に表れたメンバーのギターとキーボードは現れない。


律(遅刻ギリギリに来るかもしれない…)

この際自分が遅刻することは、気にしない。

そして、私の予想は的中した。ギターケースを背負った2年生の生徒が走って登校してきた。


律(あいつは夢の中で見たことがあるぞ!)

妹だろうか、よく似た1年生も一緒に走っていた。
キーボードの生徒は最後まで登校しなかった。
しかし、片方発見できただけでも充分な成果だった。



93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 12:28:31.99 ID:fj7Tsuek0

律(昼休みになったら、各クラスを巡ってギターの生徒を探すか)


そんなことを考えながら授業を受けていた。
ふと、外を見るとギターケースを背負った生徒がトボトボ校門へ歩いていくのが見えた。
朝発見したギターの生徒だった。


律(あいつ!早退するつもりか!)
 (逃がさーん!)

ガタッ
勢いよく席を立つと私はダッシュで教室を出た。


教師「ちょ! 田井中さん!?」

止めようとする教師に向かって
「トイレ!」とだけ叫ぶと、私は階段を駆け下りていった。



96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 12:37:15.18 ID:fj7Tsuek0

自分でも驚くような速さで走り、校門を出る直前だったギターの生徒の肩をがっしと掴む。


律「捕獲!」
ギターの生徒は
「ひぃっ!」
とだけ声を上げると硬直した。
私は興奮状態で叫ぶように自己紹介をした。


律「私は軽音楽部の田井中律!あなたは?」
その生徒は平沢唯と言った。


律「平沢さん!突然だけど軽音楽部入らない!?」

平沢「あうぅ…怖いよ…う、憂~」ガタガタ



97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 12:40:36.83 ID:fj7Tsuek0

しまった、怖がらせてしまった… どうしようどうしよう…

…ケーキ。ダメ元だ!
律「ケーキ!ケーキあげるから!」

平沢「ケーキ?」パァァ…

食い付いた!

律「そう!今軽音楽部に入るとケーキをプレゼントするキャンペーンをしているんだ!
  だから放課後、音楽準備室に来てくれ!」

平沢「で、でも放課後になったらジャズ研が…」



98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 12:43:04.05 ID:fj7Tsuek0


く!こいつジャズ研に入ってるのかよ!


律「け、ケーキとジャズ研どっちが大事なんだよ!」

平沢「ケーキに決まってるよ!」

自分で言っといてずっこけそうになったが、とにかく放課後に軽音楽部に来てくれることになった。



101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 13:02:51.08 ID:fj7Tsuek0

放課後、平沢は本当に音楽準備室に来た。
中野にダッシュで買いに行かせたケーキを平沢は美味しそうに食べる。
中野は部室の隅っこでぜぇぜぇ言っている。

律「どぉ?ケーキ美味しい?」

平沢「うん!とっても美味しいよ!ありがとう、田井中さん!」

律「いやいや、良いんだよ。だって平沢さんが軽音楽部に入ってくれるんだから。」

平沢「え…」ポロッ
  「私、軽音楽部に入るとは言ってな…」

やっぱり、覚えてなかったか。
ちょっと脅すかな…



102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 13:11:21.24 ID:fj7Tsuek0

律「あ?約束が違うなぁ?」ギロ

カチューシャを外した私の人相が悪いのはよく自覚していた。
起き上がってきた、中野にもアイコンタクトを取る。


平沢「ひぃ…か、代わりのケーキを買ってきますから…」

中野「だめです!さっきのケーキは世界にあれひとつなんです!代わりは無いです!」

平沢「ごめんなさいごめんなさい!許して!!」

そう言って平沢は逃げようとする。


律「待てぃ!」

平沢の首に腕をからめて捕まえる。



105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 13:18:43.78 ID:fj7Tsuek0

律「なぁお願いだよ。ずっとじゃなくても良いから!学祭ライブまでとか!」

平沢「うぎぎ…」

律(やば、締めすぎた…)

腕の力を緩めると、平沢はどたっと倒れこんだ。


平沢「はぁはぁ…う、憂~」
なんだか、今すごい殺気を感じる… 
ふと、顔を上げるとそこには平沢によく似た1年生が立っていた。



107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 13:22:39.23 ID:fj7Tsuek0

頭の中で平沢2号と名付けた。


2号「お姉ちゃんを虐めるな!!!!!」

私も中野も凍りついた。野生の勘でわかる。
こいつには勝てない…
凍りついた私たちを尻目に平沢姉妹は帰っていった。



109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 13:28:11.88 ID:fj7Tsuek0

律「あ~やっちゃったな…いいところまではいったのに…」
 「中野のダッシュも無駄になっちゃったな。すまん。」

中野「いえいえ、私にできることなら…あ、ケーキ代のレシートです」
  「まさか自腹じゃないですよね?」

律「お、おう…」
 (しっかりしてんな…)

中野にケーキ代を渡そうと財布を開けると、小銭が5円一枚…
しゃーない、千円札を崩すか。


律「あー中野、シュース奢るよ。自販機行こうぜ」

中野「はい!」

後輩にジュースを奢るのがささやかな夢だった。
ん? なんかこういうの口癖だったやついたような…。



110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 13:46:51.94 ID:fj7Tsuek0

中野は自販機でマックスコーヒーを買った。


律「マッ缶かよ。中野は甘いもの好きなんだな。」

中野「良いじゃないですかマックスコーヒー。おいしいですよ?」

律「それじゃあ私も同じの買うかね」ピッ

律(うぇ…やっぱり甘すぎ…)
ちびちびと甘すぎるコーヒーを飲みながら、缶を持つ中野の手を見る




111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 13:52:13.27 ID:fj7Tsuek0

律(中野の手って小さいなぁ。澪と似てるなって思ってたけど、あいつの方が手がでかいな。)

私の視線に気づいたのか、コーヒーに集中していた中野が顔を上げる。


中野「わ、私の手がどうかしました?」

律「いや、中野って手ぇ小さいな~って思ってさ。よくギター弾けるな」サワサワ

そう言いながら缶コーヒーを持つ中野の手を上から包むように触る。
中野にはこういうスキンシップもなぜか気軽にできた。


中野「ちょ、ちょっと田井中先輩!恥ずかしいですよぅ…やめてください…」

律「いいじゃんいいじゃん、減るもんじゃなし」
 (なんかセクハラオヤジみたいだな。そろそろやめとくか)



112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 13:53:22.49 ID:fj7Tsuek0

…ハッ 熱い視線を感じる。
サッと視線を感じる方に目をやると、慌てて隠れる人影が見えた。


律(あそこは合唱部か…)

じーっと合唱部の部室の方を見る。


律(軽音楽部に入る可能性のあるやつは、他の音楽系の部活動に入っているのかもしれないな…)




113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 14:00:54.65 ID:6TU3NEl30

ムギちゃんktkr!



114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 14:05:43.22 ID:QRvhe35i0

さすがむぎちゃんw





115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 14:05:46.80 ID:fj7Tsuek0

中野「あの、田井中先輩!」

中野の呼びかけに、意識がこちらに戻る。


律「ん?どうした?」

中野「また合わせてみませんか?ギターとドラムだけですけど…」

律「そうだな~。あんまり部員集めばっかだと軽音楽部っぽくないしな!」

そう言って私と中野は音楽準備室へ戻ることにした。



117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 14:16:54.75 ID:fj7Tsuek0

「は~久々にいいものが見れましたわ」
琴吹紬は満足そうな顔で一人呟いた。


琴吹(あの子たちって何部なのかしら。というかどういう関係?)キニナルワー

ドキドキと想像を膨らませる。やっぱり女の子どうしって良い。そう琴吹は思った。
それに比べて…

「ねぇねぇこれ彼氏とのプリ!カッコいいでしょ?www」
「あたし昨日合コンしてさ~ww」
「あー、最近毎日ヤッテるから腰が痛いwwww」

琴吹「…」
  (うぜぇ…芝生やしてんじゃねぇよ…)



120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 14:28:45.02 ID:fj7Tsuek0


正直合唱部なんか興味無かった。
ただ、去年の4月に合唱部の3年生二人の濃厚なキスシーンを目撃して勢いで入ってしまったのだ。


琴吹(合唱部って女の子どうしが好きになったりする部活だと思ったのに…)

実際はその3年生二人以外はそういう雰囲気が無く、むしろ男に飢えている者ばかりだった。
3年生も卒業してしまい、もう合唱部には何も魅力が無かった。
そもそも女の子同士の恋愛を求めて入った女子高だったのに、なんだか裏切られた気分だった。
そんな気持ちがあるからか、どうも周りの馴染めなくて友達らしい友達がいない。
今日も本当は学校を休みたかったが、執事がうるさいので渋々2時限目から登校した。



121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 14:32:49.93 ID:fj7Tsuek0


「ねぇ琴吹さぁーん。合コン行かない?」

琴吹「うっせぇ話しかけんな」

「は?」

琴吹「もう良い。合唱部やめる…」

そう言って琴吹紬は早足で部室から出て行った。



123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 14:44:54.50 ID:fj7Tsuek0

日が傾き下校時間も近づいてきたころ、音楽準備室に向かう姉妹がいた。
姉は何か箱を持っている。

憂「ねぇお姉ちゃん…ケーキなら私が持って行くよ」

唯「だめだめ、私が食べちゃったんだから、ちゃんと返しに行かないと」
 「ちょっと怖いけど…約束破りはダメだよ…」

憂「お姉ちゃん…」
 (あの不良っぽい2年生。次お姉ちゃんに暴力を振るったら…)
 (やってやる…)



126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 14:51:02.48 ID:fj7Tsuek0

不安そうな姉と目の奥に殺意が見える妹は音楽準備室への階段を登っていく。
音楽準備室からはギターとドラムの音が聞こえる。先程の二人が演奏しているのだろうか。
そして微かにギターとドラム以外の音も聞こえる。

唯「!」
 (なんだろう、懐かしい感じがする…)

憂(ちっ二人じゃないのか?3人以上が相手となると武器が必要だな…)



128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 14:53:50.00 ID:fj7Tsuek0

唯は音に引き寄せられるように早足で階段を登っていった。
音楽準備室に扉を開ける動作に迷いは無かった。


唯「あれ?」

演奏しているのはギターとドラムだけだった。
他にも演奏している音が聞こえた気がしたが、勘違いだったのか…
演奏している二人は音を出すことに集中しているのか、こちらには無反応だ。



130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 15:02:56.87 ID:fj7Tsuek0

唯(なんだか、この二人の演奏いいなぁ。なんでだろう)
 (すっごく仲が良さそう。それに…)

なんだか、この二人に混じって演奏できそうだった。


唯「憂!ちょっとケーキ持ってて!」

憂「え?お姉ちゃんどこ行くの!?」

唯「アンプとギター!部室から持ってくる!!」



132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 15:06:53.11 ID:fj7Tsuek0

全力で走って音楽準備室に戻ってきた唯は、飛び込むように二人の演奏に加わった。

…気づくと辺りは真っ暗で時計の針は8時をさしていた。
3人とも音を出すのをやめた。静まり返った音楽準備室。
一人の少女が口を開く。唯だ、表情は最高に明るい。


唯「私…私、軽音楽部入ります!!」



136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 15:42:33.59 ID:fj7Tsuek0

律「♪」

今、最高に気分が良い。いつもはしかめっ面でかき込む夕飯も、鼻歌まじりだ。


聡「姉ちゃん最近機嫌がいいね!」

律「はっはっはー、だろだろ?」

聡「うん!学校でなんかあったの?」

律「実はお姉ちゃんは、今軽音楽部の部員を集めているのです!」
 「そして、もう二人も集まっちゃったのです!」

聡「すごいな!やっぱ姉ちゃんはやればできる人だ!」

律「褒めろ褒めろー!」



137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 15:46:27.61 ID:fj7Tsuek0

私は部屋に戻るとベッドに横になった。
目を閉じると今日3人でやった演奏を思い出す。


律「楽しかったな…」

ドラムやっててよかった。久々にそう感じる。


律「そうだ、あのDVD見よう。」

ベッドから降りて、棚に近づく。目当てのDVDはすぐに見つかった。
私がドラムをやるきっかけになった、バンドのDVDを見る。


律「あーこれ見てたとき澪が隣にいて、一緒にバンドやろうとか言ってたっけな」
 「澪…」



139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 15:47:41.30 ID:fj7Tsuek0

机の上で充電器にささっている携帯をもぎ取ると、カチカチとメールを打つ。
宛先は澪。内容は今まで何度も考えた謝罪の言葉、そして最後に軽音楽部に入って欲しい、と加えた。
今ならなんでも成功する気がする。


律「これで、澪と仲直りするんだ…!」

送信ボタンに指を乗せる。



140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 15:50:03.69 ID:fj7Tsuek0

律(なーんてな…)

…送信ボタンは押さなかった。


律(最近ちょっとうまくいってるからって調子乗りすぎだろ。私。)

あんだけ自分が酷いことしといて、メール一本で仲直りできると一瞬でも思った自分が嫌になった。
それに、もう澪はアドレスを変えてしまっているかもしれない…。
そっと携帯を充電器に戻すと、テレビを消し、ベッドにうつ伏せになった。
携帯のカメラレンズが私を見つめる。


律(しょうがないだろ?私はこういう人間なんだ…)

ちょっと心が痛かった。



150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 18:26:19.91 ID:fj7Tsuek0

冷えたものが熱くなり、また冷え込む。
送信メールを押さなかったあと、私はネガティブな気分になっていた。
そして、そんな気持ちの乱高下が私の心の安定を崩す。

朝になっても、気持ちが沈んでいた。
部員が集まっても一緒に登校することは無かった。
しかし、暗い気分のときは一人の方が気楽だ。



151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 18:32:07.93 ID:fj7Tsuek0

そんなことを考えていると、突然肩に手をかけられた。


律「!」

振り向くと真鍋さんがいた。


律「…びっくりしたー…」

こちらがびっくりした表情をしても真顔な真鍋さんが怖い。


真鍋「あなたすごいわね。」

律「?」

真鍋「唯を入部させたんでしょ?」

律「あぁ…なんていうか、ケーキが…」

真鍋「なるほど!お菓子で釣ったのね!あなたなかなか唯のことを心得ているわね」
  「唯はまかせたわ!それじゃあ私生徒会に行くね!」

そう言って、真鍋さんは走っていった。あの人はいつも生徒会生徒会言ってるな。
生徒会長にでもなるつもりなのだろうか。



153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 18:37:47.44 ID:fj7Tsuek0

律(唯はまかせた…か)

暗い気分なままじゃダメだ。もう澪のことを考えるのはやめて、キーボードのやつを探そう。
あと一人で部は成立するんだ。集まってくれた二人のためにも、もうひと踏ん張りだ。

放課後、音楽準備室に行くとすでに中野が居た。ギターを抱えている。


中野「田井中先輩!今日も合わせましょうよ!」

楽しそうな顔だ。


律「いやいや、私は部員集めをしないと。あと一人集まらないと廃部だぞ?」

もう4月も2週間を切っている。最後の一人がすぐに見つかるとは限らない。



154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 18:42:26.79 ID:fj7Tsuek0

中野「う…そうでしたね…」
  「そのもう一人も、もう決めてるんですか?」

律「あぁ、一応な。でも、未だに校内で見かけないんだ…」

中野「面識が無いのにどうしてその人に決めてるんですか?」

律「そ、それは…」
 (夢で見たから、とかメルヘンなことは言えないな…)
 「まぁ、勘だよ勘。とりあえず私を信じろ。」

中野「はぁ、分かりました」

ガチャ

平沢「失礼します…」

律「おぉ平沢。遅かったな。」



155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 18:44:04.34 ID:fj7Tsuek0

平沢「うん…ジャズ研に退部届だしてきたんだけど、ダメって言われちゃった」

律「え?じゃあ軽音楽部は!?」

平沢「そ、それは安心して!学祭ライブまでは掛け持ちさせてってお願いしてあるから!」

中野「じゃあ、そのあとはどうするんですか?」

平沢「そ、それは分からない…」

律「まぁまぁ、先のことは気にしないでおこう。」
 「それじゃ、私は部員集めしてくるから、二人はここで練習しててくれ」

律「とは言っても、全然見つからないなぁ」

夢で見た顔だけを頼りに捜索をする行為には限界がある。


律「とりあえす、下校時間までウロウロするか…」



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律「なんてったって私は部長だからな!」#前編
[ 2011/06/21 12:03 ] 非日常系 | | CM(0)

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