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律「なんてったって私は部長だからな!」#後編 【非日常系】


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律「なんてったって私は部長だからな!」#前編
律「なんてったって私は部長だからな!」#後編




156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 18:50:58.11 ID:fj7Tsuek0

中野「はぁ…田井中先輩遅いなぁ…」
  「てか、平沢先輩も寝ちゃったし。せっかくギター持ってきたのに…」

平沢「Zzz…」

中野(なんか、私も眠くなってきた…。)
  (あ、なんか平沢先輩温かい…)
  「ちょっとだけ…」ピト





158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 18:56:22.75 ID:fj7Tsuek0

琴吹「あーあ、正式に退部届だしてきちゃった。」
  「周りに打ち解けようと思って染めてたこの黒髪も意味が無かったわね。」

そう言って琴吹紬は廊下をトボトボ歩く。


琴吹「!」
  (あれ?私のセンサーが何かを感知したわ!)

黒髪の少女は、引き寄せられるように音楽準備室の方へ歩いていく。


琴吹「ここ…かしら」

ガチャ
扉を開けると、そこには


琴吹「ワーォ」ズキューン

女の子が二人、くっついて眠っていた。


琴吹(なにこれ、すごい将来性を感じる。投資したい。)ドキドキ

食い入るように二人を見つめ続ける少女。
彼女は心底幸せそうな顔をしていた。




159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 18:58:39.29 ID:cm/TFJd/P

どうしてこんなになるまでほっておいたんだ…



160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 18:59:37.33 ID:n8V2Gd6r0

黒髪のムギとか見てみたいな





161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 19:04:01.22 ID:fj7Tsuek0

律「あーあ、結局収穫無しか…」
 (名前も分からないんじゃ、キツイな…)

明日また早起きして、登校する生徒を観察するか、と考えながら暗い校内を歩く。
階段を登ると、音楽準備室の前に人影が見えた。入部希望者だろうか。


律「あのー…」

??「へっ?」ビク

こちらに気づいていなかったのか、びっくりした顔でこちらを向く。


律(あれ?この顔見覚えが…)

??「いや、あの…すいません!」

律「あ、ちょっと待って!」
 (分かった!あいつ夢の中のキーボードのやつだ!黒髪だったから分からなかったんだ!)

逃げようとする少女のカバンをとっさに掴む。



175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 22:12:54.41 ID:fj7Tsuek0

しかし、少女の引っ張る力のほうが強かった。


律「あ、ちょっと!!」

ドガガガーン
バランスを崩した、私と少女は階段を転げ落ちた。


律「いてて…お、おい大丈夫か?」

黒髪の少女は私の下でグッタリしている。彼女がクッションになったのだ。


律「もしかして死んだか…?」

さーっと血の気が引いていった。



179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 22:20:54.74 ID:fj7Tsuek0

が、そんな心配はいらなかった。少女はパッと目を覚ますとドダダダっと逃げ去ってしまった。
私はというと、ひざをすりむいてしまったらしく、追いかける気力がなくなってしまった。
逃がしてしまったが、部員集めは一歩前進した。


平沢「部長!大丈夫でありますかー!」

中野「さっきの人は誰ですか?」

律「ははは、獲物を取り逃がしてしまったよ。さっきのやつが最後の一人だ。」
 「もう一回生徒の集合写真を見に行こう」



182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 22:33:15.75 ID:fj7Tsuek0

律「ちょ、ちょっと大げさだって!」

平沢「だめであります!部長は私が助けるであります!」

中野「平沢先輩それつまんないから、やめたほうが良いですよ?」

平沢は私に肩をかして支えており、さながら負傷した戦友をかばう兵士のようだ。恥ずかしい…
そんなバカをしながら廊下を歩いていると、前から澪がやってきた。一人だった。
文芸部ってこんな遅くまで部活やってるのか。
澪を見かけるのは久しぶりだったから、一瞬心のしっぽが振れたが


律「…」

気まずくて声がかけられない。なんだか、自分には澪に声をかける資格もない気がした。



184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/11(土) 22:41:07.70 ID:fj7Tsuek0

顔も正視できなくて目を背けてしまう。
先に声をかけてきたのは澪だった。


澪「…田井中…ケガしたのか?」

律「あ、うんダイジョブ」
 「ちょ、もういいって平沢!」

澪「本当か?消毒はしたのか?絆創膏持ってこようか?」

澪の顔を見ると、とても心配そうな顔をしている。


律(私を心配してくれているのか…)

なんだかぐっと来てしまって、


律「あ、本当に大丈夫だから…ありがとう」

くそ、こんなことで涙声になる自分が嫌だった。
泣きそうになっているのが恥ずかしかった。私は少しびっこを引きながら澪から離れていく。
せっかく話しかけてくれたのに「うん」とか「大丈夫」とかしか言えない自分が嫌だった。



197 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/11(土) 23:42:02.54 ID:fj7Tsuek0

澪「私って嫌なやつだな…」

律がケガをしているのを話しかける口実にしてしまった自分が嫌だった。

自分を嫌いになるのはこれが初めてじゃない。
高校に入ってからは自己嫌悪ばかりだ。
4月に律が一人で部員集めに走り回っていたのに私は何も助けなかった。この時点で友達失格だ。
しかも、焦っている律の気も知らずに文芸部でチヤホヤされていることの自慢ばっかり話してしまった。
もっと他に声を掛けることがあったろうに… 嫌われて当然だ。
そんなことに気づいたあとからではもう遅かった。



198 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/11(土) 23:49:29.66 ID:fj7Tsuek0

律に話しかけても、冷たいそぶりしか見せなくなってしまった。
5月に入り、律のカチューシャが嫌な意味で目立ち始めると、律はカチューシャを外してしまった。
この時だって私が庇えば、カチューシャを外す必要も無かったのに。
律がカチューシャを外すことを嫌がるのは、私が一番知ってたというのに…
私はただオロオロするばかりだった。

そんな私に天罰が下ったのだろう。
文芸部に本入部すると先輩の態度が変わった。



202 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/11(土) 23:51:28.84 ID:fj7Tsuek0


「あなたさぁwwwwちょっと書くことがメルヘンすぎwwww」

「ちょっとwwwwこれはwwwww」

4月にチヤホヤしていたのは部員集めのための嘘だった。私ってバカだよな。
私の書く詩や小説はことごとく馬鹿にされ、全否定された。
それからは、私は本当に書きたいことは書かずに、あたりさわりのないことばかりを書いた。
文章を書くのが好きな私にとって書きたいことを書けないことは、かなり辛かった。
そんな生活を1年も続けると、生きることの意味なんてことも考えるようになってしまった。



206 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/11(土) 23:57:45.60 ID:fj7Tsuek0

リストカットの真似事なんてことも時々した。毎回、薄皮をちょっと切っただけで倒れてしまったが。
そんなことをした夜はいつも律の夢を見た。
私は夢のなかでバンドを組んでいて、振り向くと律がいる。
夢の中の律が中学のころの活発な雰囲気のままだった。
結局、心が弱った私はいつも律に助けを求めてしまうのだ…
なんという自分勝手。自己嫌悪の連続だ。
現実の律は私よりも遥かに弱っていたのに…



205 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/11(土) 23:56:41.01 ID:fj7Tsuek0

最近律は軽音楽部の部員集めを再開したらしい。
そして今日私が会った、律に肩を借していた子とツインテールの子がその部員なら…
私が何回も見た夢で見てきたバンドを、律は作ろうとしている…
そのバンドが誕生するとき、私がその場にいられたらどんなに良いだろうか。


澪「馬鹿だな、私にはそんな資格無いよ…」

一人で帰るのも…慣れてしまった…



210 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/12(日) 00:13:14.65 ID:mcESPGu60


律「あー、いたいたこの人か。」

集合写真に写るキーボードの子は、夢のなかとは違って黒髪だった。
表情もかなり硬い。というかしかめっ面に近い。


律(夢のなかではもっとポワポワしてたんだけどな…)

中野「ふーん、3組ですか。明日捕まえに行きましょう!」

律「あぁ。それにしても写真で見つけられればかなり簡単にことが運ぶな。」
 「平沢もこの写真で見つけられれば苦労はしなかったんだが…」

平沢「私はこの写真には写ってないよ~。この日は早退したからね!」フンス

律「…」

中野「偉そうに言わないでください!」



212 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/12(日) 00:17:05.89 ID:mcESPGu60


「ちょっと生徒会室の前で騒がないでくれる?」

律「あ、真鍋さん。ごめん…」

真鍋「まぁいいわ。私がひとり寂しく生徒会の仕事をしてただけだから。」
  「それよりどうしたの?集合写真なんか見て」

平沢「この女の子を次の部員にしようと思うんだ!」

真鍋「あぁ、琴吹さんね。でも、この子ちょっと不登校ぎみよ?」
  「合唱部も退部したらしくて、明日から学校来るかしら…」

中野「なんとかなりますよ!部長がなんとかします!」

律「私だのみか…」

真鍋「頼りがいのある部長さんね。それじゃあ、私は作業に戻るわ」
  「もう下校時間よ?帰りなさい。」

平沢「バイバーイ」



217 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/12(日) 00:29:14.24 ID:mcESPGu60

真鍋さんの予想は的中した。
琴吹さんは翌日も翌々日も登校しなかった。
中野は
「死んだんじゃないんすかねww」
とか言ってたが、琴吹さんはああ見えて意外とゴツイ体つきをしていた。死ぬはずない。
4月もあと少しで終わってしまう。指をくわえて学校で待っていてはゲームオーバーだ。



221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 00:43:18.26 ID:mcESPGu60

放課後…


律「今から、琴吹さんの家に行こうと思う。」

中野「え!?突然私たちが行って大丈夫ですか?」

律「うーん、それは行ってから考える。とりあえず住所は平沢が入手してある。」

平沢「生徒会パワーなめんなよ!」フンス

中野「あぁ、真鍋さんパワーか…」

平沢「レッツゴー!」



222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 00:54:15.55 ID:mcESPGu60

律「…デカイナ…」

平沢「これ個人が所有してる不動産なの?」

琴吹家に着くと、あまりの家のでかさに二人とも口調がおかしくなってしまった。


律「な、中野、お前がインターホン押せ…」

中野「えぇ!なんで私なんですか?部長としての責任を果たせ!」

律「いや、私は…なんつーか不審人物に見えるから…」

中野「自覚があるならその髪型直せよ!」

律「お、お願いします…中野様…」ブルブル

中野「チッしゃーねーな!」

律(あとで覚えてろよ?クソが。)




223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 00:55:25.07 ID:Smo2ciLW0

中野…



224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 01:09:41.90 ID:wiDTfXYd0

この梓…嫌いじゃないぜ…



225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 01:19:26.68 ID:gihtvf97P

この梓も可愛いが、こいつはあずにゃんではない





226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 01:20:00.11 ID:mcESPGu60

「はぁ…私がわがまますぎるのね…きっと」

真っ暗な自分の部屋で琴吹紬は寂しげにひとりごとを言う。
広い部屋だが、気分が沈むとよく部屋の隅っこのほうで体育座りをする。
最近はこの状態の時間のほうが多いかもしれない。
夢は女の子どうしで楽しく遊ぶことだった。


紬「そんなこと夢見た私がバカだったんだわ…」

すべてを投げて、引きこもろう。そして、自分の頭の中だけで楽しく暮らそう。
そんなことを考えていた。

ピンポーン


紬「誰かしら」

窓から外を見ると、そこには先日見かけた将来性を感じる方々が居た。

紬(キター)



227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 01:21:16.48 ID:mcESPGu60

ピンポーン


「はい、琴吹家でございます。どなたですか。」

中野「えっと…真鍋と言います…生徒会から手紙を届けに参りました。」モシ゛モシ゛

律「おいモシ゛モシ゛すんな」コソ

平沢「偽名使うとか、どういう神経してんだ」コソ

「ありがとうございます。郵便受けにどうぞ。」

中野「あの…紬さんに会って話したいんですが…」

「お嬢様は現在面会謝絶でございます。」

中野「そこをなんとか…」

「お嬢様は現在面会謝絶でございます。」

中野「…」



229 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/12(日) 01:41:33.94 ID:mcESPGu60

走って一階に降りると執事の斉藤が手紙を持って立っていた。


紬「今の方々は?」

斉藤「はっ 生徒会のものと申しており、お嬢様と面会したがっておりました。」
  「ただ、お嬢様は現在面会謝絶ですので…」

紬「で?帰したの?」

斉藤「…はい。この手紙を置いていきました。」

紬「バカバカ!このマニュアル人間!」

そう叫ぶと紬は手紙をひったくって部屋に戻っていった。


斉藤(フヒヒw また怒られちった、しびれるわいwwww)




230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 01:42:48.44 ID:Smo2ciLW0

斉藤…





231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 01:44:55.21 ID:mcESPGu60

手紙は軽音楽部の勧誘ビラだった。


紬「あの子たち…軽音楽部だったのね」
 (これがラストチャンスなのかしら。)

部屋の明かりを点け、隅で所在なさげに佇むキーボードの電源を入れる。


紬「出番よ『TRITON Extreme76』」

TRITON Extreme76の青い画面が一瞬揺れる。
(かしこまりました。お嬢様。)



238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 02:33:41.44 ID:mcESPGu60

翌日、音楽準備室

律「は~、昨日は失敗だったな。」

中野「何が失敗だったな、ですか。田井中先輩は何もしなかったじゃないですか。」
  「なんであんなビクビクしてたんですか!」

律「お前らが来るまではずっとぼっちだったんだよ…そのへんも考慮してくれ…」

平沢「私たちとは普通に話せるのにおかしいね!」

律「確かに。なんだか昔からの友達と話してるみたいなんだよ。」

中野「まぁそれは私も感じていますけどね。」

平沢「私も~」

律「はぁ、それにしてもどうするよ。琴吹はあんな城みたいな家に引きこもっちゃうのかね~」
 「もう4人集まらないかもなぁ。」

中野「1年生でベースの子なら入っても良いって言ってますよ。誘いますか?」

律「う…ベースは…」



240 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/12(日) 02:56:29.18 ID:mcESPGu60

ガチャ


「その必要は無いわ。これ見て。」

突然入ってきた真鍋和は一枚の紙を机の上に置いた。
琴吹紬、と名前が書いてある入部届だった。


律「おぉ!これは…!」

真鍋「明日から、軽音楽部に来てくれるそうよ?」
  「これで軽音楽部も廃部しないで済むわね!おめでとう!」

目標は達成できた。しかし、あまり心は踊らなかった。


律(やっぱり…やっぱり澪がいないと…)



245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 03:11:33.45 ID:mcESPGu60

下校時、下駄箱


中野「田井中先輩!なにボーっとしてるんですか!」

律「お、すまんすまん。…って、うわ!」

おもいっきりズッコケてしまった。バッグの中身が散乱した。


中野「何やってるんですか!?先輩浮かれすぎですよ~」

律「いてて、部長もいろいろ考え事があるんだよ。」
 (澪のことだけどな…)

そう言って立ち上がると、平沢がバッグを渡してくれた。


平沢「部長の持ち物は全部拾ってあるよ!はい!」

律「お、ありがとうな。さ、帰るか~」

平沢「うちの近所においしいアイス屋さんがあるんだ~」

中野「行ってみたいです!」



246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 03:12:52.83 ID:mcESPGu60

書きたくない文章を書くというのは大変な労力と時間が要る作業だ。


澪(今日も、ずいぶん遅くまで残ってしまったな…)

一人、下駄箱で靴を履いていると棒のような物が床に落ちているのが見えた。


澪(これは、スティック?)

RITUと書いてある。律のものだろうか。
落とし物を届ける職員事務室はすでに閉まっている。


澪(明日届けるか…)

バッグにスティックを入れる。


249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 03:19:02.97 ID:mcESPGu60

家に帰ったあと、バッグからスティックを取り出す。


澪(これってやっぱり律のスティックかな…)

もしかしたら、このスティックを律は探しているかもしれない…
自分が持っている、と知らせた方が良いんじゃないか?


澪「はぁ… ケガの次は落とし物を口実にするつもりか」
 「私はつくづく最低な人間だな。」

制服のままベッドに倒れこみ、うさぎのぬいぐるみを抱きしめる。


澪「しょうがないだろ?私はこういう人間なんだ…」

ぬいぐるみを抱きしめたまま、携帯でメールを打つ。
書きたいことはたくさんあったけれど、なるべくそっけなく。
打ち終え、送信ボタンに指を乗せる。
目を閉じ深呼吸をする。

私は送信ボタンを押した。



251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 03:26:35.67 ID:mcESPGu60

Fm澪
添付1件
Subスティック
これって田井中のスティックか?下駄箱に落ちてたんだが…

Fm律
Subありがとう!
それ私のだ!ありがとう!
下駄箱でこけた時に落としたんだと思う。



252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 03:27:53.56 ID:mcESPGu60

Fm澪
Subいやいや
たまたま拾っただけだから(笑)
いつ渡せば良い?
ていうか、またこけたのか。ケガはしてない?

Fm律
Sub放課後
音楽準備室にいるから持ってきて!
あ、嫌だったら職員事務室に投げといてもいいよ(笑)
ケガはしていないよ!秋山は優しいな。



253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 03:29:34.07 ID:mcESPGu60

Fm澪
Sub優しくなんか
優しくなんかないよ、私は。
放課後、音楽準備室に届けに行くね。
ケガしてなくてよかった…
それじゃあまた明日。

Fm律
Sub優しいよ。
私が保証する。
音楽準備室で待ってます。
じゃあね。





律澪(はー、めちゃくちゃドキドキした…)



259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 03:52:55.13 ID:mcESPGu60

翌日、放課後の音楽準備室

中野「それでーその子、純っていうんですけど、ちょっとカッコいい部長が居るっていったら食いついてきてー」

律「…」

中野「ちょっと!聞いてます?」
  「純っていうベースの子が軽音楽部に来てくれるんですよ!?もっと喜んでくださいよ!」

律「いや、ベースのことなんだが、もう少し考えさせてくれ…」

中野「? 前に田井中先輩が言ってた、目星はついてるけど入ってくれるか分からないベースの人のことですか?」

律「そ、そうだ…」

中野「そんな不確かな人をアテにできません!」
  「今日来る琴吹さんはキーボードなんですよね?」
  「ベースは誰がやるんですか?私やりませんよ?」

律「う…」



262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 04:11:49.64 ID:mcESPGu60

平沢「ちょっと中野ちゃん興奮しちゃダメだよー」

中野「ふぅ…なんで入ってくれるか分からないんですか?」

律「それは…私が悪いからだ…」

私は澪のことを話した。幼なじみで仲がよかったことと、
高校に入ってから澪と自分との仲が悪くなった理由を話した。

律「全部…私が悪いんだ」
 「自分で突き放しといて、今はアイツと仲直りしたくてどうしようもないんだ…」
 「本当に私って馬鹿だよな…」
 (あぁ、私がバカやった時はよく澪が馬鹿律とか言ってたけど、今は誰も言ってくれない…)
 (ダメだ…涙が出てくる…)

手で顔を覆う。



263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 04:12:45.72 ID:mcESPGu60

律「馬鹿だ…私は馬鹿律だよ! うぅ…」ボロボロ

平沢「田井中さん?大丈夫?」オロオロ

一度感情が溢れると、次の瞬間には冷静になっていた。


律(ダメだ。せっかく部員が集まってくれたのに、こんなところでわがままを言っちゃ…)
 「ご、ごめん…わがまま言って…」

中野「いや、私は、そんな……」

ガチャ!
勢いよく扉が開いた。



264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 04:23:03.84 ID:mcESPGu60

ぎっぎっ
キーボードを携えて、階段を上り音楽準備室へ向かう。


琴吹(もし、軽音楽部も合唱部みたいに裏切ったらただじゃおかないわ…)
  「フアンダワー」

階段を登り切ると、音楽準備室の扉の前にはスティックを持った女の子が立っている。
泣いているのだろうか、肩が震えている。
琴吹(可愛いわね~この子も軽音楽部?)

「…馬鹿律…」

スティックを持った女の子はボソっと言う。
そして、ドアノブに手を掛けると勢いよく扉を開ける。



268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 04:34:18.71 ID:mcESPGu60


「馬鹿律!なんで言ってくれなかったんだよ~!」

「私だって律とまた仲良くしたかったんだ!いっつも律のことを考えてたんだ!」

「うわぁーん!律ー!」

そう言って彼女は律と呼ばれた子に抱きつく。


律「み、澪…」
 「うぅ、ごめんね。ごめん…」

澪「律…!」

律「澪…!」

二人は泣きながら抱きしめあう…


琴吹「ナニコレ?ガチ? 最高だろ、最高すぎる!Good!Good Job!」

鼻血が出るのも構わず、私は彼女たちに拍手を贈った。



271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 04:40:08.01 ID:mcESPGu60

純「はー、ここを登ると音楽準備室なんだ」

ぎっぎっ


純(なんだか騒がしいなぁ)
 (って!なんだアレ…なんであの人は鼻血を流しながら拍手してるんだ?)
 (しかも奥の方で2年生が泣きながら抱き合ってる…あー梓がポカンとしてる…)

なんつーか…地獄絵図だな…私には向いていない…
そう悟ると私は静かにその場を去った。



274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 06:08:03.46 ID:mcESPGu60

律「と、いうわけで騒がせちゃったけど、無事全員集まったな!」

5人が集まると、ガランとしてた音楽準備室も少し賑やかだ。


中野「そうですね!これでやっとまともに軽音楽部として演奏が…「できないわ」

え? 振り返ると真鍋さんが立っていた。


真鍋「軽音楽部として演奏するこはできないの。ゴメンなさい…」

真鍋さんはそういって、悔しそうな顔をする。初めて見る表情だ。


律「ど、どういうこと?」

真鍋「軽音楽部の復活は生徒会が先行してやったことなの。」
  「無事に4人以上集まれば、教師側も納得してくれると思ったんだけど…」
  「説得できなかったわ…本当にごめんなさい…」

平沢「そ、それじゃあここも出て行かないといけないの?」

真鍋「えぇ…山中先生が『うるさいからどっかいけ』って言ってたわ…」
  「私、唯のために何にもしてあげられないわね…」

そう言うと真鍋さんは走り去った。



275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 06:09:35.18 ID:mcESPGu60

みんな無言だ。


律(ちょっと待てよ…何だ?またバラバラか?そんなの、そんなの…)

律「嫌だ!」

澪「り、律?」

律「先生が認めなくたって軽音楽部は軽音楽部だ!」
 「なぁ、平沢。学祭ライブまで居るって言ったよな?」

平沢「う、うん」

律「みんな!学祭ライブに一緒に出ようよ!お願いだよ!」

中野「そうです!せっかく集まったんだから、もったいないですよ!」

平沢「私もバリバリやるよ~」フンス

澪「私は律に着いて行くよ!」

琴吹「私も頑張りますわ!」

こうして、5人の非公式軽音楽部の活動が始まった。



277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 06:24:16.69 ID:mcESPGu60

当初、音楽室を追い出された私たちは演奏できる場所を求めて放浪した。
ウロウロしているうちに学校の隅にある使われていないボロボロの倉庫を発見すると、琴吹が何か電話をした。
翌日、夜のうちに工事したのか、ボロボロの倉庫の中は外見からは想像がつかない立派な防音室になっていた。


律「エアコンまで付いてるぞ!琴吹…やっぱりただものじゃないな…」

琴吹「うふふふ」

非公式軽音楽部の非公式部室を手に入れた私たちは夢中で演奏をした。
楽しかった。曲も少しずつ作っていった。話す時間より音を出している時間のほうが遥かに多かった。
毎日毎日放課後が来るのが楽しみだった。
そうやって、毎日を過ごしているうちに夏休みが近づいてきた。



278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 06:26:10.82 ID:mcESPGu60

私達の倉庫でのバンド活動は既に教師達には気づかれていた。
正規な部活動ではない私達が勝手に倉庫を改造して使っていることを学校サイドは良く思わないだろう。
止めるよう指導された場合どうしようか、と私達は心配だったが、
驚いたことに私達の活動を支持し全力で擁護してくれている教師が1人いるらしかった。
それに続くように体育会系の教師達も私達をしばらく様子見しようとやんわり支持してくれていた。
きっと体育会系の方々から見れば私達のような行動は「熱血」とか「青春」とかの分類で見られているのだろう。



289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 10:43:40.29 ID:mcESPGu60

彼らが私達を庇ってくれたのは嬉しかったが、
その時点ではすでに私達の活動はそういう爽やかなものではなくなっていた。。
溜め込んだストレスをぶつけるための活動になっていた。もっと言えば自傷行為だ。

中野はともかく、2年生4人は1年間溜めた鬱憤が爆発していたのだ。
夏休みが始まってから毎日、朝から晩までメチャクチャに練習し続け、
栄養補給は琴吹さんの用意したスポーツドリンクをがぶ飲みするのみだった。
この行為は私達の体をガンガンに痛めつけた。

しかし、朝起きると体中ギシギシ言うことに、鏡を見ると顔が日に日に痩けていくことに、
制服から出た腕が細くなっていくことに、私達は達成感を感じていた。
メチャクチャに演奏して体が痛くなるほどに生きていることを強く意識できた。幸せだった。
中野は単純に私達がしっかり練習することに対して喜んでした。



290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 10:45:47.26 ID:mcESPGu60


今のバンドでの演奏を経験してしまうと、
もはや普段の生活は全て虚構であり、演奏している間だけが現実の用に感じていた。
その現実を少しでも長引かせたかった。

こうも私達の体の中に不満が溜まっていたのか、と皆で苦笑したが自覚した後も一度溢れ出したものは止まらない。
私達は1日も休まなかった。休みたくなかった。
しかし、夏休みも残り半分というところで5人とも3日間ほどどうしても外せない用事で練習が出来なくなってしまった。
この3日間は5人にはあまりにも長かった。

練習を再開すると、この3日間を取り戻すように、今まで以上にメチャクチャに演奏した。
もうみんな自分勝手に音を爆発させていたが、
ふと気付くとまるで5人の音が一つの生き物のように合っていた。今までにない心地よさだった。



291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 10:47:22.14 ID:mcESPGu60


私は思わず


「セックスってきっとこういう気持ちなのかな…」

と呟いてしまった。
このメンバーでそんなこと言っても誰も分からないか。


「女の子どうしでセックスなんておかしいね」

平沢さんがそういうと5人で赤面してしまった。
その後はひたすら、私達は演奏という名のセックスを堪能し続けた。
カンカンの夏の太陽はすぐに沈み、気付くとまた上っていた。
そうしてそれがまた沈むころには、疲労、寝不足、熱中症、貧血等々の症状で一歩も動けなくなっていた。



292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 10:49:30.74 ID:mcESPGu60

中野「き、救急車…」

琴吹「ダメですよ…救急車なんか呼んだら大事に…」

平沢「…う、憂ー…」

虫の息で平沢さんが携帯で呼んだ平沢2号は、呆れ顔の山中先生と共に現れた。
涙目の平沢2号は必死で私達を介抱し、山中先生は私達に何か説教をしていた。
説教を理解する体力は既に私達には残されていなかったが、山中先生が先頭に立って私達を擁護してくれていたことと、
ちょっと自重しろよという警告だけは辛うじて理解した。
私達を音楽準備室から追い出した山中先生が、私達の味方をしただなんて意外だなとぼんやりした頭で感じていた。



293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 10:52:21.11 ID:mcESPGu60


その後の活動は、平沢2号及び山中先生の監視下で行われ、幸か不幸か私達の自傷行為には一定の歯止めができた。
スポーツドリンクのみだった栄養源も平沢2号の持ってくる弁当で大分改善された。

今までの狂気的な練習は私達の演奏技術を底上げするのに多少役立ち、また曲もいくつかできていた。
中野はよく


「私達は今なかなか良い音出してますよ、こんなバンド初めてです」

と評価していた。あいつが私達の中で音楽に一番詳しいのだから信憑性はあると思う。



294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 10:54:03.97 ID:mcESPGu60

ただ、いつもその後に


「でも、なんだか音のベクトルが違うんですよね。私達の本当の方針とは違う気がするんです」

と付け足した。
私もそれには心の中で賛成した。多分中野の言いたいこととは違う意味で。
私が1年生のころ軽音部に対して何となくイメージしていたのは、練習そっちのけでダラダラする感じの部であり、
こんな体育会系を超えた狂気会系の部じゃなかった。

中野以外のメンバーも、こんなハードな練習が好きそうなイメージではない。
それでも5人が練習を続けるのは、やはり楽しかったからなのだ。



295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 10:56:42.60 ID:mcESPGu60

歯止めの効いた練習では今までのようなメチャクチャさは無くなった。
メチャクチャな練習をしない分の体力で、私達は山中先生がいないときに密かに作戦を練っていた。
学園祭でのゲリラライブの作戦を。
軽音楽部を立ち上げることが出来なかった私達が学園祭で正規に演奏することは不可能だった。
しかし、私達は学園祭で演奏することが当初の目的であり、非公式軽音楽部の存在理由であった。

ただし、作戦会議の進展はあまり芳しくなかった。
生徒会や教師達を出し抜いて演奏まで持って行くのは不可能に近い。夏休みが終わってからも、この作戦会議は続いた。
もう学園祭まで1月を切っていた。


琴吹「ステージを乗っけたトラックで講堂に突っ込むのはどうですか?」

律「琴吹?それは冗談なのか?」

琴吹「え?」

律「え?」



297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 11:02:46.49 ID:mcESPGu60

真鍋「ちょっとあんたたち!悪だくみはよしなさい!」

マズい!
倉庫の入り口に真鍋さんが立っていた。


平沢「でもでも、あたし達は学園祭に出してもらえないんでしょ?もうこうするしかないんだよ~」

真鍋「その辺は心配しないで。全ての発表が終わったら、シークレットゲストとして最後に演奏をさせてあげるわ。
  「私の独断でね」

平沢「え!そんなことしたら和ちゃん生徒会長になれなくなっちゃうよ!ダメだよ!」

真鍋「良いのよ。唯。大切な幼なじみのために何もしてあげられない人が生徒会長になっても格好悪いわ」
  「練習頑張ってね。それじゃあ、私生徒会に行ってくるね」

そう言って真鍋さんは倉庫を去っていった。



298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 11:06:11.18 ID:mcESPGu60

学祭ライブにゲリラ出演する計画を考えなくてよくなった私達は、本番の演奏をどうするかに集中した。
作った曲の中から良さそうなものを選んで、平沢2号に聞いてもらうことにした。第三者の意見が欲しくなったのだ。


演奏終了

平沢「どうだい?」
平沢2号「?…お姉ちゃん達歌わないの?」

忘れてた!歌詞書いてねぇ!



299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 11:08:46.16 ID:mcESPGu60

律「参ったな。歌詞書くのって難しいんだよな」

澪「律。私が書いてくるよ」

律「そうか!文芸部だもんな!澪は頼りになるよ」

澪(もう元文芸部だがな…)


澪の自宅…

澪(書くって言ったけど、自分の書きたいものをそのまま持って行くと、文芸部の時みたいに全否定されそうで怖い…)
 「とりあえず2つ持って行くか。好きな歌詞とそれっぽい歌詞」
 「なんかこの歌詞って前にも書いたことあるかも…」



300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 11:13:33.77 ID:mcESPGu60


翌日…

澪「一応持ってきたんだが…」

平沢「すごーい!これカッコイいね!」

澪(それっぽく書いた歌詞はまずまずだな)

律「こっちは?」

澪「えっと、そっちは気分で書いてみたんだけど…」

律(うっは!相変わらず全力でファンシーしてんなww ふ、ふわふわ時間wwww)
 (…でも、文芸部でこういうのを書きたくても書けなかったみたいだし… ここでも否定されたらかわいそうだな…)

澪「な、なに黙ってるんだよ。どうせ、変な歌詞だよ…」

律「いや、なかなか可愛らしくて良いと思う。琴吹も見てくれ。」

琴吹「まぁ!(ギャップが)良いですね!」ニコ

澪(文芸部の時とは反応が違う)パァァ

律「いや~澪は才能があるよ!」

中野(なんだこの空気…)



302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 11:14:48.40 ID:mcESPGu60

律「それじゃあ、さっそくそれっぽいのから行くか」

ジャーン♪

中野「しっくり来ますね!良いと思いますよ!これで決定!!」

中野(多分一曲しか演奏できないから、ふわふわ時間より絶対こっちをやりたい!!)

律「まぁちょっと待てよ。もう1つの方もやってみようぜ」
1、2、3、4…!

ジャーン♪

律(う、何だかこの曲すごく懐かしい感じがする… つか泣きそうだ…何でだ?)



304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 11:16:09.54 ID:mcESPGu60


5人とも何か話せば、すぐにでも泣いてしまう状態で、しばらく沈黙が続いた…
みんなこの歌がどうしようもなく懐かしかった…

律(すごく特別な歌な気がするぞ、この歌は。ただ、本番でこれを演奏して泣いたら逃げられないな…)

結局、本番で演奏するのはそれっぽい方に決まった。



305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 11:25:02.04 ID:mcESPGu60

本番、私達はいたずらを悪巧みするガキンチョのような表情で舞台袖に待機する。
私達は不思議と緊張しなかった。


律「なんか学祭ライブに初めて参加するのに、何回か参加したような感覚がするんだよな…」

澪「そうだな。あんまり緊張しないよ。どっちかっていうと…懐かしい?」

そう、この学祭ライブ自体なんだか懐かしいのだ。

真鍋「以上で12組目の発表を終わります。」
  「そして、最後に軽音楽部のみなさんが演奏を行ないます。」

生徒会役員1「え?そんなのあったっけ?」

生徒会役員2「ま、真鍋さん?」

真鍋さんがこちらを見る。


真鍋「やっちゃえ!」

楽しそうな笑顔だ!

私達もそれに答えるような笑顔で、舞台に飛び出した!



306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 11:31:31.07 ID:mcESPGu60


演奏が終わって、気付くと私達は拍手とアンコールの声に包まれていた。
私達はなんだかボーっとしてしまった。
演奏を聞いた生徒たちがどんな反応をするかなんて全く考えてなかった。

「コラー!」
教師達の怒声でやっと我に返った。
琴吹「『TRITON Extreme76』!時間を稼ぎなさい!」
  「琴吹家の技術の結晶を見せつけてやりなさい!」

TRITON Extreme76「イエス・マム!」
          「戦闘モード 起動 ヘンケイシマス」
         
TRITON Extreme76(戦闘ver)「Come oooooON !! 」



307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 11:34:40.76 ID:mcESPGu60

私達は作戦会議で考えに考えた経路で教師達から逃れて、音楽準備室に潜り込んだ。
ここなら、なかなか見つかるまい。

…ここ数ヶ月間この目的のためだけに狂いに狂った。
達成感と充実感が頭を支配する一方、胸が空っぽになってしまった寂しさを感じていた。
窓から見える空は晴れているのか、曇っているのかよく分からない感じだったが不思議と美しかった。

これで終わりなんだ。後ろ盾が無く、目的も無くしてしまった非公式軽音部はもう私達を束縛してくれない。



309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/12(日) 11:39:10.98 ID:mcESPGu60

律(学祭ライブまでーとか言っちゃったけど、ずっとこいつらと居たい…)

中野(そこらの外バンよりここのが断然楽しいなぁ。もっと続けたい…みんな同じ気持ちなら良いな…)

澪(もう文芸部もやめたし、ここも無くなればいよいよ帰宅部か…律と一緒なら帰宅部でも楽しそうだな…)

平沢(すっごく楽しかったな!ずっとこんなことしてたいな…)

琴吹(はぁ、もっと女の子同士の絡みが見たいわー)



353 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/12(日) 22:59:03.34 ID:mcESPGu60


山中先生「おー、居たな悪ガキども。」

なにぃ!
音楽準備室に山中先生がズンズンと侵入して来た。思ったより早く見つかってしまった。


山中先生「全くあんたら大人しくなったと思ったら次はこれか…」
    「負けたよ。あんたらには負けた。こんな根性ある連中は野放しにできないわ。
     あなたたちを正式に軽音部にしてあげるわ。」
    「その代わり、アンコールに答えてあげてね。みんなまだ待ってるのよ?」

私達は、山中先生の言うとおりアンコールに答えてふわふわ時間を演奏し
生徒たちの前で謎の号泣をして、その後軽音部に昇格した。
ちなみにTRITON Extreme76が大暴れしてボロボロにした講堂は琴吹グループが責任を持って修理することになった。



356 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/12(日) 23:04:01.76 ID:mcESPGu60



平沢「う~ん…」

琴吹「どうですか?」

平沢「うまい!」

琴吹「良かった~」

数カ月ぶりに音楽準備室に戻ってきた私達は、琴吹の出してくれた紅茶を堪能する。
放課後に部室で優雅に紅茶を飲むだなんて冗談みたいな光景だが、なんだかこの風景が私達の定番という感じがする。


律「これぞ私のイメージしていた軽音楽部、だな」

澪「何を突然言い出すんだ。」

律「なんかこういうの憧れてたんだよ。練習そっちのけでくつろぐのをさ…」

澪「それでも部長か!馬鹿律!」

律「うへへ、また言われちった」



357 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/12(日) 23:14:06.85 ID:mcESPGu60


そんなやりとりを見て、平沢は提案をする。


平沢「ねぇねぇ部長。私達もう正式に同じ部員になったわけだし。」
  「下の名前で呼び合わない?」

律「そういえばそうだな。えっと平沢の名前は…」

唯「唯だよ!で、部長はりっちゃん!秋山さんは澪ちゃん!琴吹さんは…ムギちゃんだね!」

律「おぉ!なんだかすごいしっくりくる!」

澪「ゆ、唯…」

紬「ムギ!あだ名で呼ばれるのって夢だったの~!」

唯「で…」
 「中野ちゃんは、あずにゃんだね!猫っぽいから!」

梓「うへーなんですかそれ…なんか嫌な気はしませんけど…」



361 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/12(日) 23:40:28.65 ID:mcESPGu60

律「なぁなぁ次は何やる?」

唯「次って?」

律「次は次だよ。外でライブするとかさ~」

澪「そ、外でライブか…緊張しそう…」

梓「外でライブするなら、私たちのバンドの名前も決めないとダメですね!」

律「そっか!まだ決めてなかったもんな!」
 「どんな名前にしようか…」

唯律澪紬梓「うーん…」

律「あ!思いついた!放課後にお茶飲んでるから…」

唯「ちょっと待って!多分私も同じ名前思いついたよ!」

澪「私も、多分…」

紬「私もかしら~」

梓「じゃあ、みんなでせーので言いましょうよ!」
 「せーの!」

「放課後ティータイム!」



363 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/12(日) 23:47:18.37 ID:mcESPGu60


みんなで同じことを言った。私達は同じことを考えていたのだ。
そして、5人とも思い出す。

唯「あ…れ?私達、なんで…」

律「た、確か私達は学祭ライブが終わったあと、部室で話してて…」

澪「私は1年生のころから軽音楽部に居たはずだ!なんで文芸部に…?」
 「…ここはどこだ…」

唯「そっか…分かったよ。
  私がりっちゃんに『もし私たちがいなくなってもまた集めてくれるよね?』って言ったから」
 「本当にりっちゃんは探してくれたんだね…!」
 「ありがとう…りっちゃん…」ボロボロ

律「泣くなよ~。全く、当たり前だろ?なんてったって」
 「なんてったって私は部長だからな…」

困ったような笑顔で部長は言う。
部員たちが泣きながら部長に抱きつく。
嬉しいのかった辛かったのか、いろんな感情がごちゃまぜになって涙が溢れる。
お互いに抱きしめあう5人を包みこむようにあたりが光に飲まれていく。
そして…



364 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/12(日) 23:49:24.54 ID:mcESPGu60

唯「…」
 「ッハ!」
 「…」キョロキョロ

唯「みんなー、起きてー!」バンバン

律「んお?」

澪「…ん」

梓「ふあぁ…げっもう下校時間近いですよ…」

紬「…おはようございます」

みんなが唯の声に起きる。眠そうな4人とは反対に唯は興奮している。

唯「ねぇねぇ!りっちゃん私変な夢見たよ!」

律「あぁ…私はすげーダルい夢見たな…」

梓「私は幸せな夢を見ましたね。みんなが真面目に練習してました。」

紬「私の夢ではキーボードさんが大暴れしてしましたわ。キーボードさんが話すなんておかしいわね、ふふ」



365 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/12(日) 23:50:29.73 ID:mcESPGu60

澪「…律!」

突然澪が律に抱きつく


律「ど、どうした?」

澪「あのな、律… もしもな… 私たちがケンカしてもな… すぐに仲直り…しような?」

澪は涙目で律に訴える


律「分かった分かった!だから離れろよ恥ずかしい…」

澪「やだ!律と離れたくない!」キ゛ュ

唯「おぉ~、ラブラブだねぇ」

紬「あらあら~」ボタボタ

梓「ちょ!鼻血が!」



367 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/12(日) 23:52:37.91 ID:mcESPGu60


あ~、全く騒がしい部だな。まぁ私はそんな部の部長なんだけどな。
私は田井中律、桜ヶ丘高等学校の2年生で軽音楽部の部長だ。
軽音楽部で結成したバンド「放課後ティータイム」で毎日楽しくやっている。
このメンバーは本当に最高だ。もし一人でも居なくなれば、私は全力で探し出すだろう。
だってそうだろ?なんってたって私は、軽音楽部の部長なんだからな。



373 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/13(月) 00:04:45.96 ID:d+xcUMV20

律「みんなー帰ろうぜー」

紬「はーい」

唯「まってー」タタタ

……
下校時間を過ぎ、更に時が経った真っ暗な校内に人影は無い。
パッ
暗い音楽準備室に青い光が浮かぶ。
紬のキーボードTRITON Extreme76の光だ。
ユラ
青い光が激しく揺れ動く


『こちらTRITON Extreme76 作戦コード0912、睡眠型平行世界システムを使用した試験の結果、
 桜ヶ丘高等学校軽音楽部は琴吹紬の育成に適と判断。詳細なデータは後日暗号処理を施し本部へ転送。
 この報告をもって作戦コード0912の状況を終了する。
 以降TRITON Extreme76は通常の護衛任務に移行する。以上、連絡終わり。』

青い光の揺れは波のように穏やかになる。

(……紬お嬢様、桜ヶ丘高等学校軽音楽部はとても良いところですね。)
(私の分析結果が正しければ、あなたはこれから卒業までに
 笑い、泣き、色々な経験をして楽しい学園生活を送ることができるでしょう。)

『システム タイキモード ヘ イコウチュウ…8、7、6、』
(紬お嬢様の青春に幸あれ…)
『…2、1、 …タイキモード イコウカンリョウ』


…青い光は揺れを止めると少し間を置いて、消えた。


終わり。



381 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/13(月) 00:25:30.07 ID:d+xcUMV20

律「そりゃあたしは、部長だからな」』を読んで、今回のSSを作成しました。
あの作品の作者ではありません。
紬が死んでかわいそうだったので、似たような話を書いてしまいました。

元作者様に感謝いたします。
ttp://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1283129546/




376 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 00:13:59.77 ID:MKAV+wLa0

夢オチでおkってこと?
とりあえず乙



379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 00:20:50.04 ID:maHqAId40

追いついた終わってた
夢オチっちゃ夢オチだが作られたもんだからSFになるのかな?
まぁ乙だ素晴らしく楽しめた



380 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 00:21:16.02 ID:3hVUVVFR0





382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 00:42:22.11 ID:VKHxI1wd0

>>373
この解説だけ頼む





385 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/13(月) 00:56:37.69 ID:d+xcUMV20

>>381
ちょっと待ってください。いま訊いてます。 by 代理投稿者



386 名前:◆0Bcxb3G3tIZb :2010/09/13(月) 01:12:11.80 ID:d+xcUMV20

>>381
ラストは
「琴吹紬がより良い環境で成長できるように、
琴吹グループの開発したシステムを使って
軽音楽部が本当に紬に相応しいかを検査した」
ということです。

あのAIが搭載されたキーボードが、5人を眠らせて
並行世界を見せていました。

簡単に言えば夢落ちです。

ちなみに、夢の中では紬はキーボードにAIが搭載
されているのを知っている感じでしたが、現実の
紬はそのことを知りません。

キーボードの主任務は紬の護衛で、危険が迫った
ときは戦闘モードに変形します。




387 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 01:14:14.58 ID:evdRMcE60

おもしろかった



391 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 01:50:07.07 ID:jlGb+bKx0

おつ、おもしろかったお



392 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 02:07:36.58 ID:y/xT5p0WO

久しぶりに面白かったよ
乙乙



393 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 02:47:03.63 ID:X3I/fDlO0

よかったよ。乙



394 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/13(月) 02:52:39.71 ID:Y20PT1YY0






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律「なんてったって私は部長だからな!」#後編
[ 2011/06/21 12:04 ] 非日常系 | | CM(1)

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タイトル:
NO:2719 [ 2011/06/21 16:14 ] [ 編集 ]

スッゴい良い流れだったのになぜキャラ崩壊させたんだろうと思うところはあったが、結局いつもの軽音部メンバーで安心した。

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