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唯「ゾロアスター教徒になるよ!」#3 【宗教】


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唯「ゾロアスター教徒になるよ!」#1
唯「ゾロアスター教徒になるよ!」#2
唯「ゾロアスター教徒になるよ!」#3
唯「ゾロアスター教徒になるよ!」#4




605 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 20:25:17.01 ID:5/I6CW4fO

琴吹屋敷母屋 居間

管理人「よっこらしょっと。これで全部です。」

居間のテーブルに配膳が済む。管理人を手伝っていた憂と梓も席につく。

テーブルの上には大和煮のようなもの、山菜のお浸し、味噌汁、
鮎の焼き物、小魚の佃煮…その他数品、が並んでいる。

田舎の家庭でよく食べられている品々なのだが、
盛り付け方や色つやが目で見て非常に美しい。





606 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 20:39:33.23 ID:5/I6CW4fO

「「「いただきまーす!!」」」

唯達は料理に手をつけ始める。

唯「はぐっむぐっ…」

唯「おいしいぃぃぃ!!」

唯「もぐっ…がつがつ」


さわ子「うんうん…これは素晴らしいわね!」



607 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 20:44:45.46 ID:5/I6CW4fO

律「旨いっ!」

澪「お昼の蕎麦も絶品だったけどこれも…」

管理人「そう言ってもらると、作りがいがあるってもんです。」

紬「管理人さんは昔、うちの料亭で板前さんをしてらしたのよ。
  定年を迎えられた後に、お父さんが、このお屋敷の管理をお願いしたの。」

管理人「まあ、そういう次第でして…」

管理人は額を掻きながらそう言う。



608 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 20:52:04.28 ID:5/I6CW4fO

夕食はどんどん進む。

澪「律、魚はもっと綺麗に食べれるぞ!聡はもっと野菜を食べなさい!」

律「いや限界だってこれ以上食べるとこないから!」

聡「ちゃんと食べてるって!」

田井中姉弟の世話を焼く澪。

紬「ほんとにおいしいわ!こんなご馳走どれぐらい振りかしら!」

和(価値観が私たち庶民と真逆なのね…)



609 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 20:58:01.41 ID:5/I6CW4fO

さわ子「モグモグ…」

さわ子は口数が少なくなっていく。

梓(先生の静かだ…猛烈に嫌な予感がする…)

憂「おねえちゃん口のまわり…」

携帯のタオルで唯の口まわりを拭く憂。

唯「あひがとういぃ!あ、おひゃわりおねはいしますっ!」

管理人「はいはい…おっと、あれを忘れてた…!」

台所に向かう管理人



612 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 21:05:33.46 ID:5/I6CW4fO

台所から戻ってきた管理人は右手に小盆、左手に蕎麦焼酎の一升瓶をもっている。

さわ子「待ってましたぁぁ!!!」

突然立ち上がり、歓喜の声をあげるさわ子。

梓「やっぱり…はぁ…」

大きな溜め息をつく梓。



615 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 21:16:15.06 ID:5/I6CW4fO

管理人「はい、たんとお食べ♪」

唯「あひひゃとおひゃいまふ!!」

管理人は唯に茶碗を手渡す。
管理人「あと、この蕎麦焼酎、明日香村産ではないんですが、
    すごくおいしいんで、是非に。」

さわ子に色のついた切子硝子のコップを手渡す。



618 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 21:25:22.96 ID:5/I6CW4fO

さわ子「すいません…気を使わせてしまって…ニヤニヤ」

さわ子「…あら、管理人さんと斎藤さんのコップは?」

管理人「私はもう少ししたら、自警団の見回りに行かないといけないんで
    今日は遠慮します。
    最近はホントに仏像泥棒が多くて…」

唯は、昼間の管理人との会話を思いだす。

斎藤「山中先生のお気持ちは嬉しいのですが、私は全くの下戸でして、一滴も…」

斎藤も丁重に辞退する。



620 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 21:44:19.24 ID:5/I6CW4fO

管理人は一升瓶の栓を空ける。

その瞬間。
得も言われぬ香しい芳香が居間に広がる。

極上の蕎麦を口に含んでいるのかと錯覚するほどだ。

さらに、果物や、バニラのようなハーブとは全く違った、不思議な、
そして大変に惹きつけられる、甘い香りが重なる。

さわ子「なんて素晴らしい…」

唯「いいかほりー…」

澪「すごい…」

和「焼酎のイメージ、ガラリと変わったわ…」



622 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 21:53:10.07 ID:5/I6CW4fO

管理人「こりゃこりゃ…なんて…!」

管理人「一昨日、試しに空けたときはいつもの匂いだったんだが…
    2、3日で別の酒になるほど熟成するとは…」

管理人「人生の半分以上を料理とともに生きてきましたけど、
    こんなことははじめてですよ…」

さわ子「と、とにかく味わってみないことには…」

さわ子「さっそく…!!」


一方、紬は鼻を強く押さえ、顔を一升瓶から背けていた。



624 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 22:05:01.32 ID:5/I6CW4fO

あまりにもおぞましい臭いがする。
虫が湧き湿気でカビが群がった蕎麦から作れば、
このような臭いになるのでは、と感じるほどだ。

斎藤「お嬢様いかがされました?」

斎藤が気遣わしげに、紬に声をかける。

紬「だ、大丈夫よ、アルコールの臭いになれてなくて…」

紬はそう答える。
しかし、紬は不安だ。皆と違ってなぜ自分だけ…



626 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 22:22:46.53 ID:5/I6CW4fO

トクトクトク…

さわ子のグラスに蕎麦焼酎が注がれる。

管理人「さ、どうぞ!」

さわ子はもう一度、芳香を楽しんだあと、
グラスを口につけ、焼酎を口に含む。

さわ子「!!!!」

あの甘い香りと蕎麦の薫香が直接に口の中に広がり、
さらに淡いチョコレートの香味が加わる。
アルコールが適度に舌を刺激し、非常に心地良い。
のどごしは少しずつ端麗感が広がっていく。

さわ子も若いなりに様々な酒を飲んできたが、これほどのものは始めてだ。



628 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 22:31:54.56 ID:5/I6CW4fO

さわ子は非常にだらしない表情をしている。
軽音部の面々にコスプレをさせている時のような…

唯(おいしそぉ…)

梓(飲んでみたい…ハッ…未成年の飲酒は…ブツブツ)

管理人「ゴクッ…」

その場の全員は、さわ子の表情で、どのような味なのかを理解した。



629 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 22:36:17.83 ID:5/I6CW4fO

管理人「…」

管理人はかなりいける口だ。

このままここに居ては絶対に、口にしてしまうだろう。

管理人「すいません斎藤さん!あとよろしくお願いします!」

そう言うと、懐中電灯と○○地区自警団と刺繍された薄手のベストを手に取り、
玄関のほうへ出て行ってしまった。



632 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 22:44:34.37 ID:5/I6CW4fO

さわ子「ほわわぁぁぁ…///」

さわ子「極楽に片足つっこんでるようだわ…」

律「う、うまそう…」

聡「ねえちゃん…オレも飲みたい…」

澪「こらっ…聡まで…」

サウルウァの醸す薫香は、より強く居間に立ち込める。



636 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:04:22.04 ID:5/I6CW4fO

紬「うぐっ…」

紬は吐き気が強くなり堪え難くなっていく。

斎藤「お嬢様!」

斎藤もこの薫りに強く魅き寄せられるが、紬への忠誠心が勝る。

斎藤「山中先生、私はお嬢様を寝室にお連れしますので…」

さわ子「あっ!了解でーす!」

さわ子は斎藤にそう答える。



638 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:13:19.37 ID:5/I6CW4fO

紬と斎藤が消えたあとも、それを意に介さぬように、さわ子は酒を飲み続ける。

さわ子「これがあるなら当分彼氏いらないわ…」

唯「じゅるり…」

律「う~…」

和「一杯くらいなら…」

澪「そう…だな…」

梓「和せんぱいまで…ゴクッ…」

唯「さわちゃん!ちょっと頂戴!」

唯は傍らの湯飲み茶碗のお茶を一気に煽ると、
空になったそれをさわ子に突き出す。



642 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:23:24.21 ID:5/I6CW4fO

さわ子「ゆいちゃーん、未成年は…」

さわ子「まっいいか、今日ぐらい。」

そういうとさわ子は両手で一升瓶を持って、唯の湯飲み茶碗に蕎麦焼酎をついでやる。

唯の湯飲み茶碗のなかで焼酎が、なみなみと揺れている。

唯はそれを口に持っていき流し込む。


※未成年の飲酒は法令等で禁止されています。
未成年の飲酒は心身に重篤な悪影響をもたらす恐れがあるので
絶対に止めましょう。



646 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:29:00.61 ID:5/I6CW4fO

唯の口の中に得も言われぬ香味が広がる。

唯「おっおいすぃぃぃ!!!」

梓「もう我慢できない!先生わたしもっ!」

律「ちょうだいっ!」

憂「一杯ください…///」

さわ子はその場の全員についでやる。



647 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:34:43.44 ID:5/I6CW4fO

律「かぁーっ…ウマい!」

澪「すごくおいしい…」

梓「お父さんこういうの毎日飲んでるんだ…ずるい…」

聡「うまっ!」

和「先生ももう一献どうぞ♪」

さわ子「サンキュー!」



648 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:38:36.70 ID:5/I6CW4fO

居間の面々はどんどん酒を飲んでいく。
けれどその割には、一升瓶の減りが遅い。

律「あっカラオケあるぜ!やろうやろう!」

さわ子「いいわねぇ♪歌本見せてー!」

憂「ひっく。」

梓「きもちい~!」

唯「おいしい…」



650 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:39:54.04 ID:5/I6CW4fO

唯は思う。

アヴェスターにある、神に捧げる霊酒『ハオマ』とは
まさにこのようなものだったのではないかと。

神々を羨ましく思う。


そこで唯の意識は途絶えた。



652 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/22(水) 23:50:12.89 ID:5/I6CW4fO

唯は夢を見ている。
これは唯本人にも分かっている。


唯は何も身に着けず全裸のまま、朽ちつつある竜、
アーリマンの頭に乗っている。
いや、正しくは額に。

あまり腐臭も気にならない。

アーリマンは霧立ち込める水面から、体(たい)の半分を出している。

ダエーワの主の周りには六柱の君。



655 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 00:01:19.28 ID:H87NzQx1O

『嘘を司る君』ドゥルジは、アーリマンの右側すぐの空中にある。
醜悪な笑みを浮かべながら、ギョロギョロと忙しなくその一つ目を動かす。

ドゥルジの周囲には無数の、昆虫のようなモノが浮遊している。

よく見れば昆虫と人間、それも女性、のパーツを組み合わせたようなかたち。
蠅女、蜂女、蟷螂女…それ以外にも無数の種類がある。
大きさは昆虫のそれだ。



658 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 00:07:48.88 ID:H87NzQx1O

『悪思を司る君』アカ・マナフは
アーリマンの頭の上に浮かんでいる。

アカ・マナフの周囲には時折、旋風のようなモノが湧き上がり
竜の呻きのような音を発している。



660 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 00:13:32.66 ID:H87NzQx1O

『渇きを司る君』ザリチュと『熱を司る君』タルウィは、
互いに身体を絡ませあって、
アーリマンの左前足の付根そば、水面に浮かんでいる。

二柱のまわりの水面からは、微かに水蒸気が立ち上がっている。



662 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 00:20:31.63 ID:H87NzQx1O

『酩酊を司る君』サウルウァは、アーリマンの右後方を浮遊している。
かたちは球形のまま。


『臆見を司る君』タローマティはアーリマンの左後方を飛行している。

よく見れば、ギー太に住まう『眼』と左右対象、
つまり目頭と目尻が逆位置になっている。



663 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 00:29:18.41 ID:H87NzQx1O

唯はアーリマンの額に座していることに気付く。

『覚えたか?』

アーリマンは唯に問う。

唯『うん。』

唯は答える。

唯『心地良い。』

『そうであろう?』

『愛しいお前への贈り物だ。』



665 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 00:30:46.63 ID:H87NzQx1O

唯はアーリマンに問う。

唯『あのお酒?』

『いかにも。』

アーリマンは答える。

『〈酩酊〉に命じ、ハオマを贈った。』

唯『酩酊の君、ありがとう。』

唯は後方を向き、サウルウァにそう言う。

サウルウァ『礼にはおよばぬ…』

サウルウァは答える。



667 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 00:38:25.06 ID:H87NzQx1O

『我らのハオマは酔楽のハオマ。』

『ヤザダどもが水の如きハオマとは違う。』

アーリマンは答える。

『ムギちゃんは楽しんでなかった…』

唯は言う。

アカ・マナフが口を広く。

アカ・マナフ『げに…あの娘は…』

『捨て置け。』

アカ・マナフ『…』

アカ・マナフは口を噤む。



670 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 00:45:16.26 ID:H87NzQx1O

『ユイ、お前は香しい。』

アーリマンは目を細める。

『愛しいお前に、面白いものを見せてやろう。』

アーリマンは続ける。

ダエーワの主はゆっくりと、水面を前に進みはじめる。

六柱の君もアーリマンに倣う。



675 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 01:00:05.99 ID:H87NzQx1O

しばらく水面を進むと、唯の視界に橋のようなものが見えてくる。

唯『あれは?』

唯が問う。

アカ・マナフ『あれこそ〈チンワトの橋〉。』

アカ・マナフが答える。

よくよく目を凝らせば、はるか左手のはるか先には、うっすらと陸地が見える。

その陸地に、チンワトの橋の一方がかかっている。



676 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 01:04:46.39 ID:H87NzQx1O

橋は陸地から延々と伸びている。先は見えない。

『あの橋のずっと先には何があるの?』

唯は問う。

『マズダーの園がある。』

アーリマンは答える。

唯『天国?』

唯は問う。

『いかにも。』

アーリマンは答える。



678 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 01:09:53.73 ID:H87NzQx1O

唯『あの岸の先には何があるの?』

唯は陸地のほうを指す。

『混合の地、生者の地だ。』
アーリマンは答える。

唯『この世?』

唯は問う。

『いかにも。』

アーリマンは答える。

唯『じゃあこの下は…』

唯ははじめて、水面の底を覗く。



679 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 01:17:55.74 ID:H87NzQx1O

水面の底には異形のモノがびっしりと澱めいている。

骸骨、腐りかけ、動物と人間が融合した何か、
異種同士が融合した何か。
一様に苦悶の表情を浮かべている。(表情が読めるモノに関してだが。)

唯『この下には何があるの?』

唯は問う。

『私が統べる場所』

アーリマンは答える。

唯『底までどれくらいあるの?』

唯は問う。

『底などありはしない。』

アーリマンは答える。

唯は頭を垂れ、哀しい顔をした。



681 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 01:23:13.67 ID:H87NzQx1O

『愛しきユイよ、顔をあげてくれ。』

アーリマンは言う。

『こやつらは報いを受けているのだ。』

アーリマンは続ける。

『…』

唯は何も言わなかった。

『あれを見よ、愛しきものよ。』

アーリマンは言う。

アーリマンが鼻先を伸ばした、その先、
橋がはじまるところには、光り輝く宮殿が建っている。



684 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 01:30:47.63 ID:H87NzQx1O

唯『あれは?』

顔を上げ、唯は問う。

アカ・マナフ『あれこそ〈ミフル〉の宮。』

アカ・マナフが答える。

唯『ミフル?〈ミスラ〉じゃなくて?』

唯は問う。

『ミフルは小さき〈ミスラ〉。アムシャスプンタが一つ、アールマティが僕。』

アーリマンは答える。



686 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 01:33:44.84 ID:H87NzQx1O

『ミスラは、わたしやマズダーとも違(たが)うもの。』

アーリマンは続ける。

唯『どういうこと?』

唯は問う。

『じきに分かろう。』

アーリマンは答える。

唯『ミフルは何をしているの?』

唯は問う。



687 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 01:38:48.83 ID:H87NzQx1O

『ほか二つのヤザダとともに、あの宮にて、死者の審判を行う。』

アーリマンは答える。

唯『審判?』

唯は問う。

『悪しきものと善きものを分けるのだ。』

アーリマンは答える。

『今、悪しきとされたものがチンワトの橋を通る。』

アーリマンは続ける。



688 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 01:46:54.64 ID:H87NzQx1O

宮殿の出口から男が出てくる。年齢や容貌は判断できない。

男はチンワトの橋を進んでいく。進むほどに橋の両側が狭くなっていく。

そしてあるところで渡りきれずに、水面に転落する。

アーリマンは続ける。

『見よ、善きとされたものがチンワトの橋を渡る。』

宮殿の出口から別の男が出てくる。

先ほどの男と同じく、年齢や容貌は判断できない。

男はチンワトの橋を進んでいく。進むほどに橋の両側が広くなっていく。

そしてやがて、男の姿はマズダーの園の方向に消えていった。



689 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 01:56:13.71 ID:H87NzQx1O

唯『わたしも死んだら、あの橋を渡るのかな。』

唯は呟く。

アーリマン『愛しいお前にはミフルの宮すら潜らせぬ。
そのときには、ユイ、お前のフラワシ(魂)を我が色に染め、
ただひとり麗しいダエーワとしよう。』

アーリマンは目を細める。

唯『憂も一緒がいいな。』

唯は呟く。

アーリマン『ならば合わせて、我が麗しき娘としよう。』
唯は、それから一言も発せず、チンワトの橋を渡る死者の姿を見つめていた。

『香しい。』

アーリマンは呟く。


ここでタローマティは気付く。
後方にいるはずのサウルウァの姿が
いつの間にか消えていることに。



694 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 02:13:13.85 ID:H87NzQx1O

琴拭屋敷居間 23時過ぎ

気が付くと蕎麦焼酎のあの素晴らしい薫香は、いつの間にか消え去っていた。

しかし、いまだ琴吹屋敷の居間では、酒盛りが終わっていない。


一方で、唯は一番先に寝てしまい、憂が眠る唯を梓と一緒に、
平沢姉妹と梓にあてがわれた寝室に運び、そのまま二人とも就寝した。

残った女性四人で様々な話に華を咲かせている。

聡は横で聞き耳を立てていたのだが、いつの間にか、
テーブルに突っ伏してウトウトし始めた。



722 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 11:42:22.06 ID:H87NzQx1O

再開します。

…の前に一点説明。

それは、いわゆるゾロアスター教つまりアヴェスターの神々と、
インドのヴェーダの神々との関係です。

インド人の一派とペルシア人はどちらも、いわゆるアーリヤ系の民族、
インド・ヨーロッパ語族です。

もともとは同一の民族であったものが紀元前二千年期(BC2000~BC1001) に分かれて、
一方はイラン高原へ、もう一方はインド北西部に移動したと考えられています。



727 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 11:56:40.84 ID:H87NzQx1O

今までアフラ、ダエーワ(デーウァ)という言葉が出てきました。

アフラというのは、インドのアスラと同じ起源、
ダエーワは、デーヴァと同じ起源です。

ただし、意味する神々は全くの逆です。
簡単に言えば、善神と悪神が逆になっています。
ヴェーダ以降のインドでは、デーヴァが善神、アスラが悪神です。

なぜこの逆転が起ったのかは、あるインド・ヨーロッパ系の一集団が、
デーヴァを奉ずる集団と
アスラを奉ずる集団とに、分裂した結果であるとされています。

例えば、アエーシュマは、インドのインドラ、後の帝釈天と、
近い起源を有する神だと考えられています。

サウルウァは、マルトー神群(インドラの部下ないし同輩神)と同起源です。


…ということを、頭の隅にでも置いていただければ…




739 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 12:37:55.53 ID:IRH+FPjGO

アスラは農耕民族が信仰していて、実りの意味
デーヴァは狩猟民族が信仰していて、力の意味

そしてどちらも元々は太陽とか輝きを意味する善神群だった。

しかし、民族移動や流入の関係でどちらかがどちらかを征服したときに、それが神話にも反映されたんだろう。
ってな独自研究。あんまり鵜呑みにしないように。



740 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 12:46:56.98 ID:IRH+FPjGO

あと、一応参考までに、


最初期のリグ・ヴェーダ(神様への賛辞集みたいなもの)なんかでは
アスラ(=アフラ)とデーヴァは兄弟とかとして仲良く描かれている。
でも、時代が下るとアスラは悪鬼羅刹、阿修羅、バラモン教を見くびる存在として描かれるようになる。

密教の曼荼羅(大日如来の全ての徳をそれぞれの神様を並べることで示したもの)にも
何故か悪神であるはずの阿修羅や羅刹が描かれていることは、
バラモン教が現地の神性や神話を吸収した時にアスラもデーヴァも両方を神聖視した名残であるとかないとか。
で、これを仏教が更に吸収して、更に更にそれをヒンドゥー教が吸収するわけだからなんだかややこしい話になるわけだ。

スレ汚しスマソ。





736 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 12:15:59.16 ID:H87NzQx1O

聡「…」ウツラ…ウツラ…

律「ん?聡の奴、半分寝てやがる…」

和「しょうがないわよ、まだまだ幼いんだし。」

律「中学生でもか?」

和「ええ、十分よ。」

澪「じゃあ、私が布団敷いてある部屋まで、聡を連れてくよ。」

律「いいの?わりーなー。」
澪「ムギの具合も見てみたいし。」

紬が、焼酎の臭いに強く反応していたことを思い出す。

澪「聡、起きろ、移動するぞ。」

聡「…う…うん…」

澪は数回、聡の体を揺すって立ち上がらせたあと、
肩を支えるようにして、聡を連れていく。



738 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 12:32:44.09 ID:H87NzQx1O

琴吹屋敷の長い廊下を進む。紬専用の寝室と、
聡に割り当てられた寝室は、どちらも二階にある。

聡「ふぁ…ねむ…」

澪「成人式向かえるまでは、もう絶対に飲酒するなよ、非行の元だからな。」

聡「…うん…わかったー…ファアア…」

聡に言って聞かせる澪。
澪は昔から、田井中姉弟には色々と世話を焼いてきた。
(実は同じぐらいに、律も澪に対して心をくだいてきたのだが。)

二人が階段横の、平沢姉妹と梓が寝ている部屋の前を横切ったとき。

部屋の障子の隙間から、影色の物体が姿を現す。
そしてそれは、聡の影に飛び込み、
体(たい)の半分を床から現し、半球のかたちをとる。
大きさは直径20cmくらい。

二人はそれに気が付かない。



741 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 12:51:09.42 ID:H87NzQx1O

階段を上がって二階へ。

二階は、琴吹一族が別荘に滞在するときに寝室とする部屋が数室ある。
聡は紬の父親の寝室を割り当ててもらったのだ。

障子をあけ、紬の父親の部屋に入る。
内装は下の客間とほとんど変わらない。凝った装飾など全く見られないのだ。

正座して使うための低い机があり、その脇に布団が敷いてある。
机の上には電灯とブックホルダーに挟まれた数冊の本。
その他には衣類箪笥が一つだけ。

金持ちというものを誤解しているのかもしれない、澪はそう思った。

澪「さ、聡、寝なさい。」

かけ布団を捲ってやる澪。


その時。
聡の影から球体が垂直に上昇し、聡の背中のすぐ後ろで静止する。

澪と聡は気付かない。



744 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 13:02:36.19 ID:H87NzQx1O

そして球体は、男性器と舌のような影色の物体を無数に生やし、
聡の背後に放射線状に取り付かせる。

まるでヤザダたちの光背のようにも見える。
光り輝かず、澱んだ黒であるが。

いかにも眠そうだった聡の表情が和らぎ、微かに血色をおびる。

聡はそのまま澪に倒れ込み、彼女を布団の上に押し倒す。



747 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 13:15:33.17 ID:H87NzQx1O

澪は頭の中が、プツンと真っ白になる。
聡が何をしたのか、そして、その意図が理解出来ない。

澪「さと…」

澪の言葉は最後まで続かなかった。聡が澪の口腔に侵入したからだ。

澪は反応することが出来ない。衝撃が強すぎて。

20秒ほどで、聡は澪の口腔を犯すことを止める。しかし二人の顔は接近したまま。

聡「みおねえ…」

聡の血色と表情は熱を帯びている。

そして聡はズボン越しに膨れ上がった男性器を、澪の女性器にあてがう。
澪の腹の奥に鈍い疼きがわきあがり、熱いものが女性器から溢れだす。
澪の目尻には涙の珠がたまりはじめ、目は大きく見開かれる。



749 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 13:28:07.72 ID:H87NzQx1O

サウルウァの欲望が糸を引いていた。アーリマンにはそこまで命じられていない。

聡は意識を乗っ取られているわけではない。
密かに抱いていた澪への慕情を、サウルウァが増大させたのだ。

サウルウァは『若きの暴走』をも司る。
そしてダエーワたちの中でも、もっとも欲望に関係している一柱なのだ。

サウルウァは唯に、『礼はいらぬ…』と言った。
つまり、返礼はいらぬ、その分は自ら頂戴する、という意味であった。
これから、澪の身体を存分に味わって。



753 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 13:42:01.42 ID:H87NzQx1O

サウルウァは、聡が十分に澪を蹂躙するのを待ち、
そのあとに自らが直接、澪を楽しむつもりであった。

『若きの暴走』を眺めることは、このダエーワの悦びとするところだからだ。

だからしばらくは、聡を暴走させるにとどめる。


聡は澪のTシャツに手をかける。澪の目から涙が溢れ出す。

そのとき。

「さとし君ごめんなさい!」
ドゴッ!!

聡「ヘブッ…」

鈍い音がした。
紬が置物のようなものを持って立っている。

澪の上に倒れ込み意識を手放す聡。
サウルウァは、舌と男性器を引っ込め、部屋の外に逃げ出す。



760 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 13:59:15.22 ID:H87NzQx1O

紬「だ、大丈夫かしら…」

紬の持っていたのは木製の置き時計であった。


紬は先ほど、身体中を虫が這うような、それも今までと桁違い違いで、
体内に侵入されるのでは、という感覚を覚えて、目を覚ました。
すぐ近くに、この原因がある、と感じた紬は廊下に出て…

そのあとは、今起きた次第である。


澪は、表情無く涙を流していた。

紬「澪ちゃん…」

紬は澪を助け起そうとする。しかし…

澪「嫌っ!!」

澪は聡を押し退け、紬の手を振り払い、部屋の外へ飛び出す。

紬「澪ちゃん!待って!」



764 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 14:28:02.25 ID:H87NzQx1O

紬は心配になる。聡の後ろにいた、あの黒くて丸い『何か』が原因だ。

すぐに澪を追いたかったが、自分が殴ってしまった聡のことも気になる。
ひとまず斎藤を呼んで、彼に聡を任せることにした。


部屋から飛び出した澪は階段を下り玄関から外に出る。

自分でも分からない方向に突っ走る。

澪の身体が描く残像に沿って、涙が虚空の中に消えていった。

そして澪が辿りついたのは、屋敷の左裏手、弥勒菩薩を治めてある、あのお堂。



783 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 16:50:31.81 ID:H87NzQx1O

澪はお堂の階段に腰かけると、頭を垂れ、嗚咽を洩らしはじめる。

親友の弟、自分も弟のように可愛がってきた聡が、あのような…。

聡の男性器の感覚は、まだ澪の下腹部にあった。膣内からの分泌による湿りは、
澪の心を一層強く打ちのめす。

何も考えたくはなかった。



789 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 17:21:19.95 ID:H87NzQx1O

どのくらい経ったか、澪は背後のお堂の中から、微かな光が洩れてくるのに気が付く。

立ち上がってお堂の中を、両開きの扉の格子越しに覗く。
金属性の仏像が何かの光を反射して輝いている。
澪が後ろの空を見上げると、中天近くに月が顔を出していた。

仏像は片足をもう片足の上にのせ、右手で印を結んで顎の近くに置き、左手は腿の上。
後頭部には頭光(ずこう)。


澪は、どこかで見たことがあると思った。



794 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 17:42:32.24 ID:H87NzQx1O

澪は扉に手をかける。すっと、扉は開く。鍵はかけられていなかった。

澪はお堂の中に入る。
きちっ、きちっ、と床板が軋む。

仏像は観音開きの、仏壇のような台座のようなものに安置されていた。
大きさは80cmぐらいだろうか。

仏像は、口と目を閉じて思索しているようにも、
視線―頭はほんの少し斜めに傾斜している―の先を、
穏やかに見つめているようにも見える。

澪「半跏思惟像(はんかしゆいぞう)…弥勒菩薩…」



798 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 17:55:55.81 ID:H87NzQx1O

澪はさらに仏像に近付く。
おそらく金銅製だ。所々に錆が浮いている。

作られて数十年経っているのか、数百年経っているのか、澪には判別できない。

澪はこの間インターネットで調べたことを思いだす。

澪「広き牧野の主(しゅ)…」
ミスラに捧げられた御名を思いだす。

澪「全地の主…」

それがアヴェスターに記されていたものか、ヴェーダに記されていたものか、
ヒッタイトの碑文由来のものなのか、
ミトラ教のものなのか、
澪には分からなかった。

澪「ミスラ。」

その瞬間、澪は奇妙な感覚に襲われた。



799 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 18:08:07.36 ID:H87NzQx1O

体内の内蔵がひっくり返りでもするような感覚。
低重力と高重力を交互に負荷されるような。

澪の周辺の景色が高速で真下に流れはじめる。
さらには流れは速くなり、周囲の景色を視認することは全くできない。

そして周囲がいきなり開ける。闇深い青だ。
そして、その中に広がるようにして、きらめく輝き。

頭上から、さらに柔らかく照り付けるものがある。月が輝いていた。

そのとき声が響き渡った。



801 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 18:21:38.72 ID:H87NzQx1O


『私は双子のためにある者。』

『ミオよ。』

『かつてお前とわたしは、この場所で同じように…』

『このような形で語りあったのだ。』

『幾度も幾度も。』

『もう何度目かは覚えていない。』

『何度双子が生まれたことだろう。何度わたしが…』

声がする方に身体を向ける澪。

そこには、鎧と兜を身にまとい、棒のようなものを手に持つ、
金色に輝く存在があった。



810 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 19:05:08.59 ID:ZDnWCkZe0

澪『ミスラ…さま…』

『敬称はいらぬ。』

ミスラの顔は若い青年のようにも見える。
黄金色の輝きが強く、表情をうかがうことはできない。
しかし、深い灰青の色をした瞳を持つ、
二つの目が澪を見つめている。

『再びお前に聞こう。ミオよ、なぜ涙を流しているのだ?』

ミスラの瞳には、湖面に風が立てる、波紋のような輝きがある。

『…』

澪は下を向き、答えなかった。



815 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 19:16:38.14 ID:ZDnWCkZe0

『マルトー(若者)は若き雄牛に似る。』

『深慮を働かさず、情動に流され、己の思いのみを走らせるのだ。』

そういうと、ミスラは自分のまわりを見回す。
周辺の星々のきらめきがミスラのそばに集まり、
様々な色に輝く戦士たちの姿をとる。
鎧も兜も武器も種族さえも違う、多くの戦士たち。

『この方たちは…?』

『ウルスラグナ。わたしの眷属たちだ。』



817 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 19:31:41.86 ID:ZDnWCkZe0

『すべてお前が決すればいい。他の者を尊ぶも自身も尊ぶも。
 そうやって幾無限回、お前は自身で決めて来たではないか。』

澪『どういうことなんですか…?』

澪はミスラの言っていることが、よく理解できなかった。

澪『前世の話ですか?』

『人には前世などない。魂のみでは在りえない。身体のみでも。
 魂と身体はわかれることはできぬのだ。』

『双子の争いと同じだ。アフラマズダーは己のフラショ・クルティを確信し、
 アーリマンもまた己のフラショ・クルティに執着する。』

澪『フラショ・クルティ?たしか…』

『移り行くことだ。』

『アーリマンは消滅へ、アフラマズダーは完成へ。』

『しかし、在るものは消滅することもなく、完成することもない。』

『双子はそれを理解しない。』



818 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 19:43:20.05 ID:ZDnWCkZe0

『足下を見てみよ。』

澪は視線を下げた。山々と所々の明かり。
澪は空中に浮いていることに気づく。
空気は清涼であるが薄くなく、ほぼ無風である。

周辺に視界をのばすと、明かりが集まって、
やや大きな群れを作っているところがある。
天理市や桜井市だろうか。

『上昇するぞ。』

ミスラはそう言った。すると、
足元の山々や明かりが、どんどん小さくなっていく。



823 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 20:16:33.15 ID:ZDnWCkZe0

『日本が小さく…』

世界中とまではいかないが、東アジアの明かりが目視できる高さまで上昇する。
日本列島は、特にまばゆい。

『あの明かりは人が作り出したもの。』

ミスラは棒状の武器を左手にも持ち替え、
胸元の前で、右手を使い印を結びながら、なにやら呟く。
すると一瞬にして、地上の明かりが消え去る。

澪『暗い…』

やみ色の大陸と、北極周辺のうっすらとした輝き、
海が鈍く青暗い光沢を放っている。
そして、かすかに見える黒灰色の、
所々ゆっくりと動くもの、おそらく雲だ。

そしてまたミスラは、なにやら呟きながら、胸元で印を結ぶ。
すると再び明かりは、地上に溢れる。



827 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 20:27:53.31 ID:ZDnWCkZe0

『お前の百代前の祖先が、地上を歩いていたころには、
 さきほどのごとく夜は闇のみが支配し、
 人は小さなかがり火のみしか持たなかった。』

『百代後の末であるお前は今、あの明かりの恩恵を受けている。
 だが、先ほどのように、あの輝きが、
 二度と地上に灯らないとしたら、どうだろうか?』

澪『…』

私たちは恵まれているのかも、と澪は思った。

『下降しよう。』

再び、めまぐるしく景色が変わる。



829 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 20:48:00.06 ID:ZDnWCkZe0

再び、山々と明かりが眼下に望める位置にまで下降する。

『次のものを見せよう。
 今日、お前がヤマトにいるゆえに、ヤマトでのそれを…』

澪たちの眼下の景色が水平に動いていく。
空中を移動しているのだ。しかし、風の流れはまったく感じない。
方向を、明日香村から北北西に進路をとる。
澪は、どのくらいの距離を進んだのかわからなかった。
そして静止する。

『足下の土地はイカルガという。』

澪『イカルガ…法隆寺のある斑鳩…』

『あれなるが法隆寺だ。』

ミスラたちは法隆寺の近空まで下降する。



831 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 21:08:20.93 ID:ZDnWCkZe0

『あれを見よ。』

ミスラが指す寺院の一角の建物を見る澪。
突然、澪の視界の前面に、その建物の中の映像がとびこんでくる。
身体は法隆寺の上空数十メートルのはずなのに。

澪は大きく開いた口を、両手で隠すように覆い、目を見開く。
声が出せない。涙が目じりにたまり始める。

法隆寺の一角の建物の中には、20人から30人くらいの人がいた。
天井の木組みや梁から吊るされた紐のようなもので、全員が首を吊っている。
格好から飛鳥時代の貴人とその家族のように思われる。
幼い子供も何人かいる。全員目を見開き白目に近く、舌を力なく垂らしている。

ミスラは年かさの中年男性の死体を指差してこう言った。

『あれなるは、ウマヤドという名を持つ皇子の息子だ。』

『ヤマシロノオオエという。』



834 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 21:33:25.11 ID:ZDnWCkZe0

『大王の地位を望んだが、結局は争いにやぶれ、一族で命を絶った。』

『はるか昔の話だ。』

『そして、ヤマシロノオオエを自死にやったものは…』

再び眼下の景色が水平に動く。

石床と芝で覆われた何らかの遺構の上空で静止する。
そこには、古代の衣装をまとった人々が多く集まっていた。

澪『ま…ぼろし…』

『そのとおり。お前のために見せているものだ。』

眼下では、金属製の冠をかぶった女性、おそらく古代の王であろう、
の目前で、槍を持った貴人が立ち、
そばには抜き身の刀剣を持った二人の男と、
そのすぐ横で王に向かって這い蹲(つくば)っている男の姿が見える。

王の姿が消えると、刀剣を持った二人の男は、這ったままの男に数度切りつける。

澪『!!!!』

這った男は地面に臥し、石床に血流を流してそのまま動かなくなった。

『あれなるが、そのものの末路。』

死体となった男を指差してミスラが言う。



836 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/23(木) 21:47:36.93 ID:ZDnWCkZe0

それからミスラは、現代に至るまで大和地方で延々と繰り返された
人々の争いとその結末を、澪に対して見せたのだった。

澪『…』

澪は、無表情のまま一言も発しなくなった。

『お前は、斯様なものを芝居か絵、文でしか知らぬだろう?』

『それは、これからもずっとそうなのであろうか?』

澪『…』

澪は答えない。

『私が統べるのは、調和だ。つまり、緊張と弛緩の連続。』

『モノは形を永続させ、またすぐに崩れ去る。』

『斯様なものを見せたのは、お前が斯様なものを知らぬからこそ。』

『しかし、お前もまた違った形で違った様相の、
 緊張と弛緩の波へ参与しているのだ。』



857 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 00:42:45.80 ID:FLBkLIGF0

澪は、サタンがキリストをあちこちに連れまわして誘惑し、
彼を試した、という新約聖書の逸話を思い出す

『澪よ、お前の同輩を愛せよ。』

『ダエーワの頭、アーリマンを魅了した娘がある。
 神の種を持ち、その娘はダエーワの頭を哀れむからだ。』

『ヤザダの頭の子、アナーヒターの守護を受ける娘が在る。
 神の種を持ち、大王の祠堂を受け継ぐ者だからだ。』

澪『ダエーワとアナーヒター…いったい…?』

『ダエーワもヤザダも人とともに在るもの。心と精神から生まれ、
 そこに住まうものなのだ。』

『アナーヒターは、アフラマズダーの娘、高位のヤザダ。
 清き水を司る女神である。』

澪『神の種…大王の祠堂…?』

『神の種は、誰にでも蒔かれているものだ。珍しいものではない。』

『大王の祠堂とは、はるか昔の王がアフラマズダーに祈祷した場所。
 その王たちは、アナーヒターの加護を特に篤く受けた。』



865 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 01:00:25.25 ID:FLBkLIGF0

澪『なんで、私はあなたに呼ばれたのですか?』

澪は期待していたのかもしれない、自分が特別な存在かもと。

『神との邂逅など、珍しいことではない。
 神との邂逅は、人の心のなかで起こること。
 神との邂逅は、人であれば、多くあるものなのだ。
 神との邂逅を、すぐに忘れ去る者もあり、口外する者もあり、
 ドゥルジに惑わされる者もある。』

澪『ドゥルジってなんです…?』

『人を騙し惑わすダエーワだ。』

『澪よ、おまえは人の心を見ることができるのか?』

澪『…』

澪は答えなかった。

『ならば、他の者の、神との邂逅などを覗くことはできないではないか?
 そして、お前は無限回、私とこうして相対したのだ。
 それは他の皆人にもあてはまること。』



868 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 01:19:01.53 ID:FLBkLIGF0

澪『じゃあ私はどうすればいいんです!?どう…』

『ミオよ、決するのはすべてお前なのだ。』

『潜在するものを顕在させるのも、潜在するままにするのも。』

『お前たち人間は一人一人が、すべてのものを望むこともできる。
 何も望まないこともできる。』

『すべては、決するお前と、決する時だ。』

『たとえばだ、あのマルトーとこれから、お前はどう接していくのか?』

『あのマルトーは、ダエーワの助力こそ得ていたが、お前に対する思いは、
 お前に自らの子を生させたいという強い思いだ。』

『あのマルトーを拒絶することも、常のごとく接するのも、
 その子をお前の胎(はら)に孕むのも。』

『すべてお前が決することだ。もちろん、決することから逃げるのも
 また、決することだ。』



873 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 01:41:34.90 ID:FLBkLIGF0

澪『…』

澪はそれから、口をつぐんだ。

『まあよい。お前とはこれからも無限回、
 こうして相対することになろうからな。』

『ネルガル、参れ。』

するとウルスラグナたちのうちから、皮鎧を身に着けた神が現れる。
髭面で、頭には皮製のヘルメットのようなものを被り、
ヘルメットの後ろに、帽垂のようなものが棚引いている。
手には、獅子の意匠を施した棍棒を持つ。

『これをともに遣わそう。』

ミスラはネルガルを見ながらそう言った。

『さあ、お前は地上に戻れ。』

そして、また景色が急激に動き、気が付くと
あのお堂のなかの、弥勒菩薩の前に立っていた。



875 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 01:45:13.08 ID:FLBkLIGF0

すいません寝ます。
残ってたら書きます。

それとネルガルは、バビロニアの太陽に関係した神で
ウルスラグナと同根であると考えられています。



903 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 10:44:24.97 ID:MqgcxjgvO


澪は、月光を緩やかに反射する弥勒菩薩の仏像を見やる。

その時、ミスラの声だけが聞こえる。

『ミオ、アーリマンの愛を増大させるな。
 大王の祠堂を開錠させるな。
 さすれば、メーノーグとゲーテーグの境、タマーヴァンド山に至ることになる。
 竜と英雄は再び争うことになるだろう。
 心せよ、決するのはお前なのだ。』

そして、ミスラの声は聞こえ無くなった。

澪は弥勒菩薩に手を合わせて拝したあと、お堂の階段を降りて外に出る。

紬「澪ちゃん!」

ちょうどそのとき、紬が駆け寄ってくる。



909 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 12:31:47.42 ID:MqgcxjgvO

紬「澪ちゃん、良かった…」
紬は安堵の表情を浮かべる。

澪「ごめん、ムギ、心配かけて…」

澪は、聡のことを思い出す。

澪「…」

紬「澪ちゃん?」

澪「聡はどうした、あれから…」

澪は、ためらいがちに切り出す。

紬「さっき澪ちゃんが飛び出したあと、すぐ斉藤にお願いしたんだけど…」

申し訳なさそうな表情を浮かべる紬。

澪「さっき…?」

澪は訝しく思う。ミスラとはたっぷり数時間、対していたはずだ。



912 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 13:40:17.08 ID:MqgcxjgvO

澪「さっきって…私が飛び出してから三時間以上は経ってるはずじゃないか?」

澪は一層怪訝な表情になる。ミスラとのあれは全て幻だったのだろうか?

紬「澪ちゃんが飛び出してから、五分ぐらいしか経っていないわよ?」

紬は、ショックで澪が混乱しているのだろう、と考えた。


まだ中学生とはいえ、聡は澪に馬乗りになり、澪は上着がはだけ下着を露出し、
そして気絶した聡の膨れた…
そこまで考えて紬の顔は一気に赤くなる。
とにかく、澪を母屋に連れて帰り、休ませないてあげないと。紬はそう判断した。
あの黒い物体のことも、とりあえずは後回しにして。



919 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 16:03:20.00 ID:MqgcxjgvO

紬は澪と一緒に母屋へ帰った。澪は聡の様子をうかがおうと、
彼が就寝している部屋へ向かったが、中から啜り泣く声を聞き、
また、明日に延ばそうという逃げもあったので、話をするのは止めにした。


一方、結局その日には、管理人が帰ってくることはなかった。
斎藤の話によると、電話でその旨を伝えてきたとのこと。

そして次の日。



920 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 16:20:53.60 ID:MqgcxjgvO

次の日の朝になっても管理人は帰ってこなかった。
午前中を使って練習に励む。

そして、その日の正午過ぎ、管理人はくたくたに疲れた表情をして帰ってきた。
訳を聞けば、昨日だけでかなりの仏像や文化財が被害にあったとのこと。

唯たちは管理人を労いつつ、その話を聞く。



922 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 16:49:06.41 ID:MqgcxjgvO

管理人「ほんとにもう、どこの罰当たりな連中が…」

管理人が疲れきった様子で話す。

管理人「ここ一、二週間、仏像の窃盗が増えてた、という話はしたと思いますが…」

管理人「今日分かっただけで、最近盗まれた仏像の半分の数も、
    昨日だけでやられちゃって…」

律「仏像って…そんなにいいお金になるんですか?」

不謹慎や表情をしつつ、律が質問する。

管理人「重文(重要文化財)もいくつかあったからなあ~
    値段なんかつけられないもんばっかりだよ…
    しかも仏様だよ!罰当たりな…」

管理人は繰り返し犯人への憤りを洩らす。



923 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 17:12:25.00 ID:MqgcxjgvO

和「でも、重要文化財であるなら、見る人が見れば
  盗品だって気付くんじゃないですか?」

和が率直な疑問を向ける。

管理人「どうもおまわりさんや学芸員さんの話だと、
    盗品を流通させる組織があるらしくて、
    しかもひどいことに、専門家が一枚噛んでる場合もね…」

管理人「それに…」

管理人は続ける。



926 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 17:40:10.78 ID:MqgcxjgvO

管理人「盗られた仏様は、都が明日香村にあった頃作られたやつから、
    最近作られた真新しいのまで、
    手当たり次第なんでもかんでもですよ…」

管理人「それに、猿石や奇石も何個無くなってまして…」

管理人「最低でも4、50キロもあるやつをですよ!」

管理人「なのに不審者の目撃例は一度もない…」

管理人「ほんと、先週の22日に3体もやられてから…
    いったい何の因果か…来月はお盆だってのに…」



934 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 19:24:23.24 ID:FLBkLIGF0

澪「今月の22日っていうとたしか…」

管理人「日食でちょっと騒ぎになってた日だよ。曇ってたけどね…
    とにかく、またしばらくは見回りを強くしないと…」

澪「日食…」

唯(そういえば『あべすた』もらって何日かして…)

唯(あの夢を初めてみた日だ…)

管理人「お嬢様たちも十分注意してください。
    犯罪者なんてみんな一緒。
    人にいつ危害を加えるかもしれません。」

そのあとすぐ、昼食をとった後、一行は橿原市へ向かう。
大和三山、つまり、畝傍山、耳成山そして天の香具山に登るために。



939 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 19:55:08.25 ID:FLBkLIGF0

畝傍山には福原神宮駅に車を止めて、徒歩で登山する。
標高約200mの山だ。
大和三山や少し離れて葛城山や三輪山など、大和地方の山々は、
古来より、歌に詠まれたり、信仰の対象となったり、神話の舞台であったりと、
人々の想像を掻き立ててきた。

山頂は木々がややまばらな林になっており、三角点が設置してある。
ここから、周辺の見晴らしを楽しむ一行。



941 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 20:11:58.00 ID:FLBkLIGF0

北北東に耳成山、東北東に天の香具山が見える。
大和山々間の距離は約3kmである。
南東方向に目を見ければ、飛鳥の盆地が広がる。

律「疲れた…40分も登山するとは…はあはあ…」

律「さとし!!じゅーすをこれにっ!」

聡「…」

律「さとし!?」

聡「…」

うな垂れて、暗い表情の聡。一言も発しない。



944 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 20:25:01.06 ID:FLBkLIGF0

唯「澪ちゃん!あれが耳成山と天の香具山なのぉ?」

澪「…」

少し思いつめた表情の澪。

唯「澪ちゃん?」

澪「あ、ああ、あれがそうだぞ…」

唯(なんか…こころここにあらず…?)

斉藤「平沢嬢、あちら南西に見える高い山が葛城山、
   大和三山の向こうに見えるのが三輪山でございます。
   
斉藤「葛城山山頂から大和三山を経て、三輪山までは、
   南西から北東に沿って、直線状にならんでおるのです。」

唯「へぇ~」

斉藤が唯に周辺の山々の説明を行う。

さわ子「耳成山と天香具山…100m級の小ぶりの山が近くに二つ…
    憂ちゃんくらいね!キリッ」

憂「…/////」

梓「先生セクハラです!!そしてバチあたりですよっ!!」



949 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 20:38:52.83 ID:FLBkLIGF0

紬「じゃあ、シートを敷いてお茶にでもしましょう。」

斉藤「ではさっそく…」

和「あ、手伝います。」

澪「…」

澪は何かを決心した様子で聡に近づく。

澪「さとし、あの大きな木の影、ちょっと来てくれ…」

聡「みお…ねえ…?」

聡を、そこまで誘導する。



952 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 20:45:42.22 ID:FLBkLIGF0

澪「…」

聡「…」

聡は、黙って頷いたまま。
澪にミスラの言葉が思い出される。
一度、深く深呼吸をする澪。

そして。

澪「えいっ!!」

聡「っ!?」

澪は聡を思いっきり抱きしめた。
聡の顔が、澪の豊かな双丘にめり込む。



957 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 20:52:32.64 ID:FLBkLIGF0

少しの後、澪は再び聡の体を離し、両手を聡の肩に置く。

澪「このまま、お前と気まずい関係になるのは嫌だから…」

聡「澪ねえ…」

聡は顔を上げる。

澪「おまえは、律の弟で、それで…私の弟みたいなものでもあるから…」

澪「ずっと、私の弟でいてくれ!」

聡「澪ねえっ!」

澪「だから、お前を異性としてみることは、
  無理だ、お前が大きくなったとしても…」

聡「え…」

澪「弟みたいな存在とそういう関係になるなんて、
  近親なんとかって言うだろ?」

澪「はっきりいって、生理的に無理だ。」

澪「いつまでも、可愛い私の弟でいてくれ!」

聡「ガクッ…」

地面に突っ伏す聡。



964 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 21:07:24.69 ID:FLBkLIGF0

澪は聡の頭をぽんぽん撫でながら、皆のところに戻ってくる。
しょんぼりと、うな垂れている聡。

唯「あれ、みおちゃん?どこ行ってたの」

澪「たいしたことじゃないさ。な、聡?」

聡「…」

唯は澪の顔を見る。さきほどと違い、
晴れ晴れとした表情をしていた。

そして、実は一部始終を察していたさわ子は思った。
聡君、オカズには当分困らないわねっ!、と。


さて、山頂でのティータイムを楽しんだ一行であったが、
時間を取りすぎてしまったため、
他の二山に登ることを諦め、帰路につくことにする。




967 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 21:13:53.96 ID:JM/6Trme0

低学歴でなおかつ日本史選択者だった俺には難しくてわけ分からん



968 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 21:18:09.28 ID:EwTprVWO0

>>967
これを機に勉強すればいいじゃないか!



969 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/24(金) 21:22:26.14 ID:jQ8vbq1w0

>>967
厨二病の心とロマンを追い求める魂があれば、フィーリングでなんら問題無い。





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