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唯「CCA!」#第五話 陽動! 【ガンダム】


ニュー速VIP避難所(クリエイター) より

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1288440551/

唯「CCA!」#index




121 名前::2010/11/03(水) 19:54:04.86 ID:BWUGZBUo

第五話 陽動!

ブリーフィングルームでは、律が艦長に文句を垂れていた。
和の前でいじめると、艦長はなんとも言えない情けない表情になる。
それが面白くて、律はこうして艦長に絡むのが日課になっていたのである。
慇懃に敬語を使い、艦長をいつもの通り追い詰める。

律「サイド2からレーザー攻撃で
  フィフス・ルナを破壊するという計画はどうなったのですか? 艦長殿?」

艦長「ネオ・ジオン派の工作員に阻止されたらしい…」フニャ

律「アテにならない計画でしたねぇ…で、敵はどこへ向かっているのですか? 艦長殿?」

艦長「スウィート・ウォーターに帰投中だと思うが、
   月に行くようにも、サイド1に行くようにも見える…」フニュ

律「つまり分からないと…?」

艦長「…それがわかれば苦労はしないさ…」ヘニャ

律「あ~あ、また後手後手かよ!」

艦長「…」シュン

耐え切れなくなった和が、律を制する。

和「律! 言い過ぎよ! サイド2のレーザーのことも、
  敵の進路がいまいち掴めないことも、別に艦長が悪いわけじゃないでしょ!」





122 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 19:54:54.98 ID:BWUGZBUo

その言葉を聞いて、艦長が和に縋りつくような視線を向ける。

艦長「真鍋少尉…助けてくれるのか?」パアァ

和「勘違いしないでください!!
  ミーティングの進行上無駄な意見だと思ったから制したまでです!!」

律「和も艦長に冷たすぎるなあ…意識してるのか?」ニヤニヤ

純「そうかも知れませんね! きらいきらいもスキのうち!」

和「あなた達…いい加減にしなさい!!」

紬「ハァ…またこれだ…」イライラ

澪「とにかく、敵がどう動くかわからないのだから、監視を続ける必要がありますよね。」

艦長「…そうだ。 シャアは隕石を落として地球を寒冷化させるのが目的らしい。
   どれくらい本気なのかわからんが、今回のフィフス・ルナ落としではまだそれは完全じゃない。」

艦長「というわけで、奴らから目が離せんのだ!」



123 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 19:55:50.05 ID:BWUGZBUo

唯「隕石落としなんて…どうしてそんな事をするんだろう?」

和「地球に人が住み続けるのが気に入らないそうよ。
  地球から、宇宙を見上げるだけの人々は粛清して、
  地球を自然に返したいって言うのがこの数ヶ月で分かった彼の意見ね。」

唯「隕石落として核で汚染したら自然も無くなっちゃうよ。
  そしたら地球は、敵が落とした隕石とあまり変わらない星になっちゃうんだよ。」

和「地球から宇宙を見上げている人々を批判しておいて、
  私には彼らは宇宙から地球を見下ろしているだけに思えるわ。」

純(また難しい話だ…暇だなあ。)

和「彼らにとっては、地球はあくまでシンボルだから、
  何も住めない星になってしまっても、その青い姿を宇宙から確認できれば満足なんでしょうね。」

唯「そんなの良くないよ…絶対止めなきゃ!!」

梓「ですね!!」

艦長「まあ、私の言いたいことは、これからはいきなり状況が動くこともありうるから、
   いつでも動けるようにしてくれ、ということだ。」



124 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 19:56:33.22 ID:BWUGZBUo

ミーティングが終わると、訓練だ。
ジェガンは経験した戦闘から、すぐにシミュレーターを作り出せる。
澪は恵が死んでから、暇さえあればこのシミュレーターで訓練していた。
それに、他のメンバーも付き合っているのだ。

澪「よし、今日もやるぞ!」

和「前回の戦闘で分かったと思うけど、個人の腕よりもチームワークを優先して訓練してね。」

澪「分かっている、律、準備はいいか?」

律「いつでもOKだぜ!」

唯「私達も行くよ、あずにゃん!!」

梓「はいです!!」

四人がそれぞれのコックピットハッチを閉め、シミュレーターを起動する。



125 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 19:57:08.18 ID:BWUGZBUo

紬「私たちはいいの?」

和「昨日みっちりやったし、今日は休みましょう。 休息も仕事のうちよ。」

純「やったあ! 休みだ!!」ヤッホーイ

和「あなたは訓練してなさい!!」

純「は~い…」ションボリ

和「私は対ファンネル戦術を論文にまとめる作業をすすめるわ。
  これを全部隊に徹底すれば、サイコミュ兵器全般が驚異でなくなると思うし。」

紬「忙しいのね、手伝う?」

和「ありがたいわ。 お願い。」

純がジェガンのコックピットに入り込むのを確認してから、和と紬はMSデッキをあとにした。

ちゃんと見ていないと、純はサボるかも知れないのだ。



126 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 19:58:10.74 ID:BWUGZBUo

和の部屋に二人が向かう途中に艦長が待ち伏せていた。
紬は、それを見て露骨に嫌な顔をした。

艦長「真鍋少尉、ちょっといいかな?」

紬「…行きましょ、和ちゃん。」ムスッ

和「え…ええ…」

艦長「待ってくれ…大事な話なんだ…」

紬「和ちゃんは忙しいんです!!」ギロ

艦長「あうあう…ごめんなさい。」アタフタ

和「後で艦長室へ伺います。」

紬「その必要はないわよ。 どうせろくな事じゃないわ。」

艦長(琴吹少尉はなんだか非協力的だなあ…なんでだろう?)

艦長は、二人を見送ることしか出来なかった。
この弱腰が、彼のいけないところであった。



127 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 19:58:51.36 ID:BWUGZBUo

和と紬は論文をまとめる作業に入った。
増加装甲と散弾によるサイコミュ兵器対処の概念は、
後のRGM-89S スタークジェガンの運用にも影響を与えることになる。
紬は作業の合間の休憩時間に、和に露骨に宣言した。

紬「和ちゃん、艦長にはあまり関わらない方がいいわ。」

和は、ちょっとムキになって聞き返す。

和「どうして?」

紬「和ちゃんのためを思って言ってるのよ。」

和「確かに艦長は私のことをのけ者にしてパイロットを辞めさせようとしているけど、
  積極的に働きかけないとこの状況は変わらないわよ。」

何故自分が艦長のことでムキになってしまうのか和はまだ分からない。



128 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 19:59:21.37 ID:BWUGZBUo

紬「違うのよ、艦長、和ちゃんのこと、いやらしい目で見ているのよ。」

和「え…そうなの?」

紬「そうよ、いつもジロジロとエッチな目で和ちゃんを見ているわ。」

和「…」

紬「ともかく、艦長はケダモノだから、もう和ちゃんから話しかけたりしちゃダメよ!」

和は、驚きを隠しきれない。
紬は、これで嫌なものを見なくて済むようになる、と考えていた。
しかし紬の誤算は、ここで和が艦長を避けるようになってくれると思ってしまったことだった。

和(まあ、あの腰抜けはどうせ何もできないから特別避けたりしなくてもいいわよね…)

真鍋 和は一筋縄で行くような人間では、なかった。



129 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:00:19.76 ID:BWUGZBUo

艦長室で、一人の女性が部屋の主の帰りを待っていた。
ドアが開く。
今まさに、その主が帰ってきたところだ。

艦長「スマンな、真鍋少尉が捕まらなかった。」

憂「そうですか…」

艦長「しかし医務官も人手不足だから、
   君のパイロットへの転向は認められそうにないぞ。 うちはパイロット多いし。」

憂「お願いします! パイロット適性はあったはずです! お姉ちゃんと一緒に戦いたいんです!!」

艦長「でも、パイロットになったからってすぐ実戦にでられるわけでもなくてな…始めは予備パイロットから…」

憂「とにかくお願いします!!」

艦長「ううむ…艦隊勤務やってきて、こんな事は初めてだ。」

憂は、姉の唯が着任してきてから、しきりにパイロットへの職域変換を希望してきたのである。

それを艦長は、和に相談しようと思っていたのだ。

艦長「取りあえず、また真鍋少尉に取り合ってみるから、今日のところは医務室の勤務に戻りなさい。」

憂「あの…私から和さんに相談するわけには…」

艦長「駄目だ!! 話がややこしくなってしまう!!」

本当は、和に会う口実が欲しいだけの艦長であった。



130 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:02:29.97 ID:BWUGZBUo

姫子は、ブリーフィングルームを訪れていた。
信代もいる。

戦術士官「今回の任務は陽動だから、この艦からは一個小隊も出せばいい。損害は出さないようにしろ。」

信代「どんな作戦なんです?」

戦術士官「総帥のランチが連邦政府との交渉のため、ロンデニオンへ向かう。
     それをロンド・ベルの目から逸らすだけの作戦だ。」

信代「強化人間にうってつけの作戦じゃないか。」

姫子「そんないい方ってないでしょ!? それに彼女はまだ本調子じゃないの!」

嘘だった。
姫子は単純にいちごをなるべく戦闘に参加させたくないのだ。

サイコミュを使えばまた苦しむことになるからである。
大丈夫、とは言うものの、いちごの苦しみ方は尋常でなないと姫子は感じていたのだ。



131 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:03:46.72 ID:BWUGZBUo

信代「じゃあ貸しにしとこうか? 私と潮が出るからさ。」

姫子「太田さんの代わりに私が出るわ。 それで貸し借りなしでしょ。」

姫子は直感的に、信代に貸しは作れないような気がした。
いちごをいじめているような相手である。当然の判断だと思った。

信代「強化人間はアレだけど、あんたなら信頼できる。 後ろは任せたよ!」

姫子「決まりね。 戦術士官殿、うちからはあたし達2機で行きます。」

姫子は、このさっぱりした性格の持ち主が、何故いちごをいじめるのか理解できなかった。



132 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:04:38.42 ID:BWUGZBUo

いちごの部屋に行くと、最初に彼女から発せられた言葉に姫子は度肝を抜かれた。

いちご「作戦があるの?」

姫子「そ…そうよ、今回は私だけでいいの。 あなたは休んでて。」

とっさのことだったので、嘘は言えなかった。
すかさずいちごが姫子の予想通りの反応をする。

いちご「私も行く。」

姫子「ダメよ、あなたは少し働き過ぎだわ!」

いちご「問題ない。 それに、ちゃんと戦わないと役に立たないと思われて廃棄処分される。
    あなたの役に立ちたい。 連れて行って。」

姫子「あなたは疲れているわ。
   それに今度ヤクト・ドーガとか言うのを使わせてもらえるみたいだから、
   上もあなたのこと、ちゃんと認めているのよ。 処分なんてされないわ。」

いちご「…」

姫子「今日は、しっかりと休息を取ること。 分かった?」

いちご「…分かった。」



133 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:05:14.10 ID:BWUGZBUo

姫子は物分りのよすぎるいちごに何の疑いも持たなかった。
作戦の話題は避けて、話を別に持っていく。

姫子「この作戦が終わったら、スウィート・ウォーターへ一度帰れるでしょ?
   そしたら上陸して、色々なとこに行こうね。」

いちご「色々な、ところ?」

姫子「そう! きっと楽しいよ!」

そう言うと、姫子がいちごに背中を向けて

姫子「そろそろ時間かな…じゃあ行って来るね!」

と、言いながら、部屋を出て行った。
部屋に残されたいちごは

いちご「色々な、ところ…」

独り、そう呟いていた。

それから少しして、艦内放送のスイッチが入る音が、ぷつりと響いた。
総帥の訓示である。

「フィフス・ルナ落としの作戦は、ネオ・ジオン軍として初めての艦隊作戦であった。
 この作戦で諸君らの働きを見せてもらい、感動している…」

いちご「色々なところ…楽しみ…。」

いちごには、その放送が全く聞こえなかった。



134 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:06:10.55 ID:BWUGZBUo

ムサカ3番艦のカタパルトから、信代、姫子の2機のギラ・ドーガが射出された。
シャクルズというSFSに2機が取り付き、そのまま加速する。

信代「陽動で死んだらつまんないからね、適当にやって引くよ。」

姫子「了解。」

2機を乗せたシャクルズが、敵に察知されるかされないかの距離まで来たとき、
いちごはハンガーに固定されている自機のコックピットに滑り込んでいた。

MSを起動させると、ブリッジから通信が入る。

戦術士官「サイコミュ試験型の出撃命令は出ていないぞ!!」

いちご「立花さんの側に…行かせて。」

3番艦艦長「射出しろ! シャクルズの使用を許可する!」

いちご「感謝する。」

いちごのサイコミュ試験型が1機だけ遅れて射出される。
それを見送ると、戦術士官が恐る恐る口を開いた。

戦術士官「…いいのですか?」

3番艦艦長「まあ、いいんじゃないか? 数が多いほうが陽動と気付かれにくいしな。」

要は、失敗作の強化人間のことなど、どうでも良かったのである。



135 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:06:37.36 ID:BWUGZBUo

敵をキャッチした、ラー・チャター艦内にけたたましいサイレンの音が響き渡った。

通信手「敵MS確認!! MS部隊は迎撃翌用意!!」

唯達は、普段では考えられないような俊敏な動きでMSのコックピットに滑り込み、ジェガンを起動させた。

唯「あずにゃん!!」

梓「行くです!!」

和「月とサイド1の中間で…どういう作戦なのかしら…二人共、準備はいい?」

純「いつでもどうぞ!!」

紬「いいわよ!!」

律「澪、怖くないか!!」

澪「大丈夫だ!!」



136 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:07:07.12 ID:BWUGZBUo

その時、ノーマルスーツ格納庫では、憂がパイロット用スーツを着込んでいた。
もちろん命令されたわけではない。独断行動である。

憂「これでよし…何食わぬ顔していればバレないよね…」

通路に出る。
不安だったが、誰も怪しむものはいなかった。

憂「私が待ってばかりいても、敵は待ってくれない…そしていつお姉ちゃんがやられるか分からない…」

憂「なら、無理してでも自分から動くしかないよね…」

憂は、損傷したMSばかりになった格納庫に漂い、
まだ新しい予備機のジェガンに吸い込まれるように乗り込んだ。



137 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:08:12.20 ID:BWUGZBUo

出撃すると、すぐに戦端が開かれた。

和「唯達は右、律達は左!! 私たちは中央で、攻撃があればサイコミュ対処!!」

シャクルズから散開したギラ・ドーガにビームライフルを撃ちまくる。
和は、手応えの無さに顔をしかめた。

和「接近してこないわ…攻める気がないのかしら…?」

しかし、戦場を見ると、激しい攻撃が行われている場所もある。

唯「あ! ラー・カイラムが攻撃された!」

深くまで突っ込み、ラー・カイラムに取り付く数機の編隊と、
つかず離れずで戦いを避けているようにも見える編隊。
和は意味が分からなくなった。

和「敵の動きが変! 何かの罠かもしれないわ! 気をつけて!!」

和は、警戒しながら防御の態勢をとった。
優秀ではあっても経験の浅い和には、こういうハッキリしない状況は判別のしようがなかった。
だから、防御を固めて様子をみるしか無かったのである。



138 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:10:55.37 ID:BWUGZBUo

敵に接近しすぎないように、攻撃に使うのは
信代のランゲ・ブルーノ砲だけである。主に艦に向かって撃つのだ。
姫子はそれを掩護するだけだ。
任務はあくまで陽動である。これで充分なのだ。

信代「ちょろいもんだね。」

戦場を見回すと、敵に深く突っ込むギラ・ドーガの編隊が見える。

姫子「真面目にやってるMS隊もいる。 どこの機体かな?」

信代「レズンの編隊じゃないか? 目立つ色に機体を塗っちゃったりしてさ、ありゃいつか死ぬよ。」

信代「あ~あ、奴に引っ張られて他の連中も随分頑張っちゃっているね…ただの無駄死にだ!」

姫子「そういう酷いこと言っちゃ駄目じゃない!」

2機は、レズンの編隊に流されずにそのままの調子で陽動を続けた。
信代の言う通り、ただの時間稼ぎで損害を出したらつまらないのだ。



139 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:11:22.89 ID:BWUGZBUo

和が異変を感じ取ったのと同時に、
艦では予備機のジェガンがエレベーターでカタパルトまでせりあがってきた。
艦長は、それを見て軽いめまいを覚えた。

艦長「おい! そのジェガン! 誰が乗っているんだ!!」

憂「私、お姉ちゃんのところに行きます!!」

艦長「平沢妹か!! やめろ!!」

艦長「カタパルトを使わせるな!!」

カタパルトが駄目と分かるやいなや、
憂のジェガンはカタパルトのロックを外して宇宙空間に浮かび上がり、
そのまま戦闘宙域に消えていった。

艦長「あいつ、帰ってきたら独房入りだぞ!!」

あくまで帰ってくることができたらだ、と艦長は思った。



140 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:12:01.83 ID:BWUGZBUo

憂は、初めて乗るMSの挙動に驚愕していた。

憂「動きが…軽い!!」

一度だけ、唯にシミュレーターをやらせてもらったことがある。
しかし、Gを体に感じる実機は、コンピューターのシミュレーションとは全く違うものだった。

憂「ええっと…敵は?…お姉ちゃんは…?」

唯達は艦の付近で防御の隊形を取っていたのだが、
よく周りも見ずに逃げるように艦から離れた憂には見つけることが出来ない。

姉の事を考えると、無線に呼びかけることも出来なかった。
戦闘中に気を散らせたらマズイという配慮である。

憂は、広い宇宙空間で、戦場の光を頼りに一人で姉達を探すことにした。
そしてそれは、最も間違った選択であった。



141 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:12:39.00 ID:BWUGZBUo

いちごは、戦場を俯瞰していた。
出てきたはいいものの、姫子が危ないという感じはない。
そうでないなら、彼女に姿を見せない方がいいのだ。
姫子に心配を掛けることが、今のいちごにとって一番辛いことだった。

いちご「敵は…混乱しているの?」

自分たちを苦しめた敵は、陽動をそれと読み切れずに、浮わついた動きをしている。

いちご「ロンド・ベルとはいえ、所詮は素人…。」

その時いちごは、ふらふらと迷うように戦場を移動するジェガンを見つけた。

いちご「素人だから、あんなのも出てくる…あれなら…」

シャクルズを、さ迷うジェガンの方に前進させる。

いちご「ファンネルなしでも、やれる!!」

ファンネルを使って自分が苦しむと、姫子が泣く。
そう思っていちごは、シャクルズから離脱し、腹部のメガ粒子砲をジェガンに向けて発射した。



142 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:13:54.41 ID:BWUGZBUo

憂「うわっ!!」

憂は、刺すような殺気を感じて、反射的にジェガンを操作していた。
紙一重でメガ粒子ビームが抜けていく。

憂「ライフルを…」

撃つ。
敵がビームをかわす航跡がスラスター光で確認できる。
殺気。
避けた。と同時にビームが飛んできた。

憂「シミュレーター通りだ…やれる!!」

ビームを避けると、自信が湧いてきた。
姉が自分を自慢する声が脳裏に響く。

唯『憂はよくできた妹です!』

憂「そうだよ、お姉ちゃん! 私、出来るよ!」

来る、と思って避けると、やはりビームが抜けていった。
こうなれば、確信を持って回避行動に移ることが出来る。

憂の手が、滑らかにアーム・レイカーを操作し、
その足がフットペダルを適正な量だけ踏みつける。
そして、ジェガンは与えられた性能をフルに発揮して滑らかに宇宙空間を泳ぐのだ。



143 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:15:03.20 ID:BWUGZBUo

唯『すごいね憂! 操縦、私より上手いよ!!』

憂「私、お姉ちゃんの、自慢の妹だから!!」

敵が、近い。
憂がアーム・レイカーのフィンガーホール内にある
武装の切り替えスイッチを押すと、ジェガンの装備はライフルからサーベルに持ち変えられた。

そのまま、アーム・レイカーをさらに手前に引き込み、
フットペダルをほぼ全開にして敵に急接近する。

その際、機動が直線的にならないように、
アーム・レイカーを細かく左右に捻り込み、
フットペダルを踏む力に微かな強弱をつけることを忘れていない。

憂の腕と足の動きに連動して、ジェガンが上下左右に機体を揺らす。
回避機動をとりながら急接近しているのである。

目標との距離が接近すればするほど、少しの動きで目標がセンターから外れるようになる。
そのため、接近戦時は真っ直ぐ、
単調に敵を追いかける機動を取りがちになり、それが大きな隙になるのだ。

だから、腕のいいパイロットはこうして細かく動きに変化をつけながら敵に接近する。
しかしこれは、ラー・チャターMS隊の誰もが、理論はわかるが実践は出来ない高等技術であった。

憂は、初めての操縦でそれをやっているのである。



144 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:15:38.73 ID:BWUGZBUo

憂「お姉ちゃん! こいつを倒して、すぐに行くからね!!」

敵はすぐそこだ、必ず勝って、お姉ちゃんの所に戻る。

みんなにパイロットとして認めてもらい、側でお姉ちゃんを守ってあげる。

脳裏に焼き付けている唯の顔が、笑顔になった。

もう一度それを見るまで、私は死ねない。



146 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:17:42.23 ID:BWUGZBUo

素人みたいな敵に、ことごとくビームを避けられた。
いちごは、驚きを隠しきれない。
しかも攻撃をかわすたびに、敵の動きはシャープになってくる。
最早素人の動きではない。

いちご「ニュータイプとでも、言うの?」

ファンネルを、と思ったが、やめた。
姫子の言いつけを破って出てきてしまったのだ。
それを謝るだけにしたい。

何食わぬ顔で帰ってきて、元気なところを彼女に見せるのだ。
心に刻み込んだ、姫子の笑顔が心を揺らす。

いちご「私に、あいつほどの才能があれば、きっとファンネルも上手く扱える…」

具合が悪くならない戦い方が出来れば、次から安心して作戦に連れて行ってもらえる。

今みたいに、嘘を付いてこっそり後から行くのではなく、
堂々と、彼女が危ない時に側で助けてあげられる。
心配を、かけることなく。



147 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:18:21.86 ID:BWUGZBUo

いちご「そうすれば、立花さんも悲しまない…。」

自分を抱き締めて泣いた姫子の顔が、脳裏に浮かぶ。
そしてそうさせてしまった自分の情け無さを、噛み締める。

いちごは、気が付くとコックピット内で叫びだしていた。
それは、彼女にとって初めての体験である。

いちご「…その才能、憎い…憎い、憎い、憎い!!」

目の前の敵を見据える。
コイツには分かるまい。大切な人を泣かせてしまう辛さなど。

私の、苦しみなど。



148 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:19:10.55 ID:BWUGZBUo

いちご「…殺す。」

サーベルを発振する。

ファンネルを使わなかったのは、ちょっとマズかったかな、と思ったが、もう遅い。

でも、必ず生き残って、スウィート・ウォーターに帰って立花さんと一緒に色々なところに行く

楽しみにしている未来の予定があるのだ。

こんな所で、私は死ねない。



149 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:19:37.81 ID:BWUGZBUo

サーベルとサーベルがぶつかり合い、スパークがはじけた。
一度離れた後、お互いがサーベルを構えて、突進する。


次の瞬間に、あっさりと勝負は付いていた。



150 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:20:29.90 ID:BWUGZBUo

戦場の信代に、艦から通信が入る。
民間機がいる、というのである。
敵と戦っている連中もそれに気づいたのか、後退の発光信号も見える。

信代「民間機が居るのか? それじゃあ戦闘は続けられないねえ。」

2機は、素早く撤退する。

姫子「あたし達の損害は、無しね!」

信代「こんな戦闘で死んじまう奴は、アホだからね。」

姫子「どうしてそう口が悪いの?」

信代「軍隊なんてやってると、自然とこうなってしまうだろう?」

姫子「そんな理由で、いじめもやるの?」

信代「それとこれは別。 あいつは気に食わないんだよ。」

姫子「彼女は必死に頑張っているのに!」

信代「お説教は聞かないよ!」

姫子「ま…いっか。 もうあたしがいじめなんかさせないから!」

ムサカ3番艦が、見えてくる。
姫子は、そこで待っているいちごに会えるのが、うれしくてたまらなくなった。



151 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:21:02.46 ID:BWUGZBUo

戦闘が終わり、唯たちも帰投中だった。

澪「民間機はどうしたんだ?」

和「ラー・カイラムが収容したそうよ。」

律「しっかし、民間のシャトルがなんでこんな所にいたんだよ!! 邪魔だなあ!!」

和「損傷して流されてきたみたいよ。」

その時艦から、通信が入った。

艦長「平沢少尉は居るか?」

唯「はい…健在です。」

艦長「話がある。 艦に帰ったらすぐ艦長室に来い。」

それだけ言って、艦長は通信を切った。

律「唯、なんか問題起こしたのか? 艦長、なんか怖かったぞ。」

唯「ほえ? 私、何もしてないよ。」

梓「唯先輩のその言葉は信用出来ません。」

純「梓は相変わらず唯先輩に突っかかるね~。」ニヤニヤ

紬「純ちゃんいいところに突っ込むわねえ!」ポワポワ



152 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:21:31.94 ID:BWUGZBUo

着艦してMSをハンガーに固定すると、澪が異変に気づいた。

澪「予備機のジェガンが足りなく無いか?」

律「消耗した艦に分けたのかな?」

澪「…そんな暇あったか…?」

唯「私、艦長室呼ばれてるから、行くね。」

そう言って、唯がコックピットハッチを出る。
そのままなれた動きで、MSデッキの出口に向かった。
その背中に、律の冗談が心地良い。

律「おう! 怒られてこい!! 帰ってきたら慰めてやっからよ!!」

澪「おい律! まだ怒られると決まったわけじゃないだろ!!」

紬「お茶の用意をして待ってるわね~」

唯「憂の分もお願い!
  いつも心配して待っていてくれてるから、一緒にお茶したいんだよ~!」

紬「分かったわ!」

四人が、お茶の用意をしに、急いで休憩室に向かった。
いつも通りの行動である。
いつもと変わっていることといえば、憂のお茶が用意されるということだけだった。



153 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:22:19.51 ID:BWUGZBUo

自機のMSハンガーの隣が空になっているのを見て、
姫子は血の気が一気に引いていくのを感じ、次の瞬間、取り乱していた。

姫子「ブリッジ、若王子少尉はどこですか!! 機体が見当たりません!!」

異変に、信代が気づく。

信代「あん? どうしたんだい?」

それと同時に、ブリッジからメンドくさそうな返事が帰ってくる。

通信手「強化人間なら貴官らが出撃したあとに勝手に出ていったぞ?」

姫子「…そんな…」

姫子は、目の前が真っ白になった。

姫子「どこに…彼女は健在なのでしょうか!! ブリッジ!!」

通信手「今まで戦闘中だったんだ。
    ミノフスキー粒子が濃くてな、生きてるのか死んでるのかも分からんよ。」

姫子「お願いします…彼女を探してください…あたしも出して捜索させてください…」

通信手「無理だな…本艦だけ艦隊を外れる訳に行かない。」

姫子「お願いします…お願いします…」



154 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:22:51.56 ID:BWUGZBUo

姫子が涙声になっているのが、信代の心に痛かった。

信代「捜索なら…あたしが行くよ…
   あんたが行ったらもしもの時、ロンド・ベルに突っ込みかねない。」

信代「ブリッジ!! 足の長いシャクルズで行くよ!!」

信代が、空いているシャクルズの方に流れていった。

信代「ブリッジ、いいね!! 出るよ!!」

通信手「…その必要はない。」

信代「何、その必要がないって!? どういうこった!!」

姫子はその言葉に絶望した。

捜索の必要がないとは、つまりそういう意味であることが多い。



155 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 20:23:43.03 ID:BWUGZBUo

姫子「若王子さん…」

その時、デッキに軽い振動が走り、赤い機体が滑りこんできた。
モノアイが移動し、姫子のギラ・ドーガを捉える。
レーザー回線が開かれ、姫子の正面のモニターにいちごの顔を写したサブウィンドウが開かれた。

いちご「…ただいま。」

いちごの赤い機体が姫子の隣に固定される。
いちごはサブウィンドウ内の姫子がうつむいたままなのが気になった。

いちご「…どうしたの?」

顔をあげると、サブウィンドウ内の姫子は涙でグチャグチャだった。

姫子「心配…したんだからね…」

いちご「…ごめんなさい」

いちごは、また姫子を泣かせてしまった、と思った。
そして、自分が一緒に泣けないことを少し寂しい、と感じた。


第五話 陽動! おわり

次回は第六話 機械の記憶!




157 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 21:36:53.79 ID:kW/oE.AO

憂いぃぃぃぃぃ!



158 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 22:16:48.09 ID:p4dnlMDO

ういィ?



159 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 22:19:24.88 ID:ZvEZdXMo

うい・・・・?



160 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 22:20:54.51 ID:u8mrWMAO

ヘルメットが宇宙に浮いてる描写がないから生きてても可笑しくないよね?



161 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/03(水) 23:55:27.29 ID:rAuPOwDO

何せ不可能を可能にする妹だからな



162 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/04(木) 04:22:27.39 ID:4IZWfbso

12人くらいウイシスターズがいてそこから補給されるんだよ



163 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/04(木) 13:32:22.78 ID:72oT9ugo

>>162
20001人の平沢妹ってわけかww



164 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/04(木) 16:37:02.94 ID:WVHZn2DO

憂選手「この世にオリジナルは一人しか要らん!!」





165 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/04(木) 20:06:18.54 ID:nQ0C.jMo

唯「さわちゃんが死んだ時と、憂が死んだ時のコメントの差がハンパないね。」

さわ子「これが…若さか…」ポロポロ

再開します。




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唯「CCA!」#第五話 陽動!
[ 2011/07/08 22:13 ] ガンダム | 逆襲のシャア | CM(0)

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