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唯「CCA!」#最終話 宇宙の虹! 【ガンダム】


ニュー速VIP避難所(クリエイター) より

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4gep/1288440551/

唯「CCA!」#index




379 名前::2010/11/11(木) 19:19:57.35 ID:plShQ.Uo

最終話 宇宙の虹!

戦場は、アクシズのごく近くに移動してきていた。
ラー・カイラムが、アクシズに接舷しようとしているため、
もう味方艦がすぐそこまで来ているのである。
しかし怒りに我を忘れた唯には、
母艦ラー・チャターが艦隊の中に加わっていないことなど知る由もなかった。

唯「憂を、返せ!!」

赤い敵機にビームライフルを浴びせかける。
敵は、来るのが分かっていたかのようにそれをかわしている。

梓「食らいやがれです!!」

梓が畳み掛けるように散弾を放つ。
パチパチと弾子がいくらかその赤い機体を捉えたが、致命的なダメージは与えていない。





380 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:20:23.76 ID:plShQ.Uo

ファンネルが1基、梓のバズーカを捉えて爆散させた。

律「小癪なんだよ!!」

律がシールドに装備されたミサイルを発射する。
そのミサイルは梓のジェガンのごく近くで破裂し、
散弾をまき散らし、残り1基のファンネルを破壊した。

律「もうファンネルはねえはずだ! こいつを仕留めちまおうぜ!! なぶり殺しだ!!」

唯「憂の苦しみ、味わわせてやるんだ!」

梓「そうです! やってやるです!!」

3つの凶暴な意志が、サイコミュ試験機を捉えようと絡みついた。
しかし、サイコミュ試験機のパイロットも、近付く敵の隙を窺うようにサーベルを発振した。



381 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:21:21.53 ID:plShQ.Uo

いちごは、3機が自分を仕留めようとしているつもりなのを感じて、さらに憎悪を募らせた。

いちご「そんな腕で、私を仕留められると思っているの!?」

目の前の敵とつばぜり合いが起こると、接触回線を越しに相手の声がかすかに聞こえた。

「…の仇…!」

その言葉に、いちごの心が突沸する。

いちご「何が仇だ!! お前は私の大切な人を殺したくせに!!」

つばぜり合いをしていると、横から別のジェガンがいちごに斬りかかって来る。

いちご「いちいちやることが汚い!!」

横から来たジェガンに蹴りを入れると、正面のジェガンを弾き飛ばし、距離を取る。
すぐに、もう1機がライフルを撃ちこんでくる。

いちご「見え見えだ!」

ライフルを撃ち返すと、先程の2機がまた連携して挟みこんでくる。

いちご「また同じ手を!」

戦いは、3対1で、見事なまでの膠着状態だった。



382 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:22:13.88 ID:plShQ.Uo

ラー・チャターを失った紬は、悲しむ暇も与えられずにラー・カイラムの掩護を行っていた。
味方艦の掩護も受けて、アクシズに取り付いたところである。
艦の下に、かすかに陸戦隊のプチモビが坑道に入っていくのが見えた。

紬「この爆破で落下を防げればいいんだけど…」

すぐに、敵のギラ・ドーガ隊がラー・カイラム目掛けて突っ込んでくる。

紬「ラー・カイラムはやらせないわ!!」

紬は散弾を発射し、敵を怯ませてサーベルで斬った。
もう、バズーカは弾切れだ。
バズーカを放り投げて、ライフルに持ち替え、敵機とドッグファイトに持ち込む。

紬「当たって!!」

ライフルが、敵機の右腕を落として、後退させた。

紬「まだ来る!!」

戦いがいつまで続くのか、みんなは無事なのか、考えることは山ほどあったが、
紬はそのうちの一つとして、頭に思い浮かべることは出来なかった。



383 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:22:44.44 ID:plShQ.Uo

律は、目の前の敵が無性に憎かった。

律「唯の、みんなの、あんな顔なんか、誰も見たくなかったんだ!
  てめえさえ、居なければよ…!」

憂を失った時の、唯の顔。
それを見ながら、何も出来なかった自分。
暗くなっていく、みんなの顔。
なにもできない、リーダー。

律「てめえだけは…私が…!」

目の前の、こいつを倒せば、そんな無力な自分とはオサラバ出来る。
たった一発でいい、敵機の真ん中にビームを当てることさえ出来れば、事は済むのだ。

だが、味方の掩護を得ても尚、それさえ出来ない、自分。

律「ちょこまか逃げ回りやがって! おとなしく当たれってんだよ!!」

放たれた律のビームは、宇宙空間を虚しく照らしただけだった。



384 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:23:13.90 ID:plShQ.Uo

澪は、敵と交戦しながら、ただ律たちに付いて回るだけだった。
こんな状態で、何故落とされないのか不思議なくらいだ。

澪「律…唯…梓…もうやめろよ! そんなに憎んで、どうするんだよ!!」

怨念をまき散らしながら絡み合う4機に、届かない声を浴びせ続ける。
澪は、はっきりとここで憎しみの連鎖を止めなければならない、と感じていた。

自分は、どんなに訓練を重ねても、結局怖がりだった。
いつも律の後ろに隠れて、掩護ばかりして、パイロットになりきれなかった。

でも、そんな自分だから、気がついたんだ。
こんなのは、おかしい。

澪「なんでそんなに人を憎めるんだよ!
  そんな気持ちになれるようなヤツらと、音楽やってたなんて、信じたくない!
  これは何かの間違いだろ!! 律!!」



385 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:23:42.47 ID:plShQ.Uo

レシーバーに、反応はない。
雑音混じりに呪いの言葉と、激しい息遣いが伝わってくるだけだ。

澪「クソッ…私には、何も出来ないのか…!?」

このまま、憎み合いながら戦い続けていたら、
広い宇宙全体が、この宙域のように憎悪で飽和してしまう。

憂が死んで、唯がおかしくなって、純も失って、とうとう梓もおかしくなって、
その雰囲気に当てられて、律までどうにかなってしまったように…
きっとそれは簡単に、人から人へ伝播するのだ。

そうはならないにしても、この激情を吸い込んだアクシズが地球に落ちたら、
核が無かったとしても、怨念が地球を飲み込んで取り返しの付かないことになってしまわないか。

澪は、そんな途方も無いことを考えて、絶望しそうになっていた。



386 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:24:13.16 ID:plShQ.Uo

澪「律! 止めろ!! 私たちの任務は、仇討ちじゃないだろ!!」

返事がない。
もう、言葉も届かないのか。
澪は、目の前の敵にすがるしか、無かった。
やられたって構わない、そう思い、ギラ・ドーガに掴みかかって、接触回線を開く。

澪「おい、お前の仲間を止めてくれ!
  これはもう戦争ですらない!! ただの殺し合いじゃないか!!」

その瞬間、アクシズの前面に閃光が走り、澪たちは爆圧に吹き飛ばされていた。

澪「うわああっ!! 律!」

澪は、閃光の中に、4機を見失った。



387 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:24:42.99 ID:plShQ.Uo

紬がアクシズ前面で起こった核爆発の閃光に見とれていると、ラー・カイラムから通信が入った。

「正面上、迎撃!!」

紬「え?」

それは、ラー・カイラムの副長の声だった。

紬が一瞬、動きを止めた隙に、味方機が宇宙空間に飛び出していく。
それが赤いMSにやられて、次々に五つの爆発の光に変わっていく。

紬にも、ビームが飛んできた。

紬「きゃっ!!」

アーム・レイカーを素早く倒しこんだ。
遅かった、と思ったが、ビームは紬の機体の横を通り過ぎていた。
ジェガンのコンピューターが、回避行動をサポートしてくれたのだった。

紬「憂ちゃんが…助けてくれたの…?」

見上げると、すでに赤い機体はいなくなっていた。

紬「艦を…守らないと…」

紬は恐怖を抑え込み、再び宇宙空間に浮かび出た。
辺りを見回すと、アクシズのノズルが止まっているのが目に入った。

紬「きっと…みんなも頑張っているのね!」

他のメンバーがどうなっているか分からない紬は、そうやって自分を励ますしか無かった。



388 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:25:13.37 ID:plShQ.Uo

爆圧に煽られて、追い詰めていた敵を取り逃がしたと感じた律達は、さらに苛立ちを募らせていた。

律「アクシズ前部に核爆発だと!? 邪魔しやがって!!」

唯「態勢を立てなおして当たる!
  憂の仇は、生きて返さないよ!! あずにゃん!! りっちゃん!!」

梓「はいです! フォーメーションDで当たりましょう!! こいつだけは…必ず!!」

律「おうよ!!」

この爆発は、低軌道で爆発させ、アクシズを減速させて大気圏で消滅させないようにすると共に、
地球を汚染させるためにルナ2から持ち込まれた核兵器の爆発だったのだ。

3人にとっては喜ぶべきことだったが、
彼女らは憎しみに当てられて、アクシズの落下を防ぐことが任務であることも忘れている。

唯「準備はいい!?」

梓「Eパック残量、標準斉射で3発分、カートリッジ、残り1個、まだまだやれます!!」

唯「あずにゃんのライフル斉射が止んだら、りっちゃんはあずにゃんのリロードカバーをお願い!!」

律「がってんだ!!」

唯「行くよ! アターック!!」



389 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:25:45.71 ID:plShQ.Uo

梓のライフル斉射が始まる。
回避機動を取っている敵に、唯が近づいていく。
リロードの終わった梓も、それに追随。
唯と敵の、格闘戦が始まった。

唯「憂を殺した、お前だけは…必ず倒すよ!!」

いちご「そんな知らない奴、どうだっていい!
    あなたは私の大切な立花さんを死なせた! 許すわけには…行かない!!」

接触回線を通して、罵り合いが行われる。
その間にも、いちごには挟みこむように接近する敵機が感じられている。

いちご「こんな小癪な手しか使えないあなた方に、私は負けない!!」

姫子を殺したこのやり口に、いちごは怒りをまき散らしながら対処する。

いちご「見え見えだ! 味方のビームにやられて死ね!!」

格闘戦中の唯の機体を、律の方に向けてやる。
背部の装甲を焦がして、律の放ったビームが散っていく。



390 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:26:13.51 ID:plShQ.Uo

ビームを受けて怯んだ唯の機体を突き放し、梓の機体に急ぐ。

いちご「ちっ、ビームコーティングさえ無ければ…」

今度は梓の機体と、接近戦に入る。

梓「私だって…やるです!!」

いちご「遅い!」

斬りかかろうとしたとき、殺気を感じて飛び退る。
態勢を立てなおした唯と律の機体だった。

いちご「…ちょこまかと…!!」

いちごは、岩を利用して戦うために、アクシズの方に逃れていった。
岩を盾にすれば、一度に相手をしなければならない敵機を減らすことができる。
しかしいちごは、そうせざるを得ない状況を分析し、驚きを隠しきれなかった。

いちご「…この私が…後退しているの…?」

防衛目標であるアクシズを盾にする、という選択をしたいちごもまた、
憎しみに我を忘れ、己の任務をないがしろにしていた。



391 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:26:43.99 ID:plShQ.Uo

潮は、驚いていた。
敵のジェガンから、接触回線で語りかけられたからだ。
しかもその通信内容は、潮が思っていたことと同じだった。

潮「私だって…こんなのおかしいと思うよ…あの娘がこんなに感情を剥き出しにして…」

潮は、いちごが心底恐ろしかった。
そして、止めなければいけないと思っていた。
もし姫子が、あんないちごを見たら、と思うと、気が気ではなかった。

潮「そうだよ…あんなのはただの殺し合いだ…止めなきゃ…」

潮は、怖かった。
相手は、ロンド・ベルの機体だ。今まで戦っていた相手なのだ。
話しかけるなんて、とんでもない事だった。

潮「…止めなきゃ…あたしの命に代えても…!」

恐る恐る、背中を向けたジェガンに近づいていった。

潮「…あたし…何やってんだろ…バカみたいだよな…ハハ…」

機体が、ジェガンに触れた。
もうどうにでもなれ、と潮は思った。



392 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:27:14.92 ID:plShQ.Uo

アクシズ前面で起きた核爆発によって、
律たちを見失っていた澪のレシーバーに、聞きなれない声が再生された。

潮「あたしだって…こんなのおかしいと思う!!」

振り返ると、さっきまで交戦していたギラ・ドーガだった。

澪「だったら…止めに行くしか無いだろ!! あんなの人間の姿じゃない!!」

潮「でもあの娘…大切な人を奴らに殺されたんだよ…だからああやって…」

澪「そんなの、あいつらだって同じだ!! 妹を、親友を…」

潮澪「…!!」

二人は、彼女たちが憎しみあう理由を、はっきりと確認した。
それは、なんとなく肌で感じていたことを、再認識しただけに過ぎなかった。

澪「とにかく、あいつらを止めないと・・・この広い宇宙が全部あんなふうになってしまうぞ!!」

潮「…分かった!」

二人は、戦闘の続くアクシズへ向かっていった。
この二人もまた、己の情動に突き動かされ、
アクシズ落としとその阻止という、本来の任務を忘れ去っていた。

アクシズの周りには敵味方の艦が入り乱れており、爆発がそこここに発生している。
まるで、地獄絵図だ。

二人には、それが4機の生み出す怨念がさせていることのように、見えたのである。



393 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:27:46.39 ID:plShQ.Uo

アクシズ表面を舐めるように飛びながら、
突き出た岩々を利用して戦い始めた敵に、唯達は苦戦を強いられていた。

唯「正面の岩に隠れた!! あずにゃん廻り込んで!!」

梓「はいです!!」

律「私は上空から行くぞ!!」

岩の裏に機影を見つけて、梓は即座にライフルを発射した。

梓「食らいやがれです!!」

ビームは、吸い込まれるようにその機影に命中した。
しかし、手応えがない。
爆発が小さいのだ。

梓「…ダミー!?」

いちご「遅い!」

梓が敵を捉えた、対応しても、もう遅い。
機体に衝撃が走った。
左腕が、斬り落とされていた。



394 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:28:16.57 ID:plShQ.Uo

梓「え…? 生きてる…?」

梓は、やられる、と思っていた。
何故左腕だけで済んだのか、分からなかったのである。
そんな混乱した梓に、敵が突っ込んでくる。

いちご「とどめだ!!」

律「梓!!」        唯「あずにゃん!!」

潮「若王子さん、もうやめて!!」

止めを刺そうとしたサイコミュ試験型を、
あろうことか味方のはずのギラ・ドーガが
前からしがみついて制したのを見た律達は、軽い混乱を覚え、一瞬その動きを止めた。

律「何だってんだ…!?」

澪「3人も、もうやめるんだ!! 頭を冷やせ!!」

律「澪か!? うるせえぞ!! 邪魔すんな!!」

澪も、とっさに律の機体に自機を絡みつかせた。

澪「律!! 止めるんだ!! 人を憎んだって、何も始まらないじゃないか!!」

律「恐いんなら、すっこんでろ!! 」

唯「憂の仇ぃぃぃぃいいいいい!!」



395 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:28:46.38 ID:plShQ.Uo

澪にしがみつかれた律、損傷して混乱している梓を尻目に、
唯の機体がギラ・ドーガに絡みつかれて動きがとれないサイコミュ試験型に突っ込んでいった。

あと一歩。
その時、アクシズがブルッと震え、そこから伸びた光の壁と、飛び散る岩が唯の行く手を阻んだ。

唯「うわあああっ!!」

澪「内部を爆破したんだ!! アクシズから離れろ!! 破片にやられるぞ!!」

律「ちっくしょう…あと一歩だったのに…!」

梓「はいです…唯先輩!!」

唯「…っ!!」



396 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:29:13.23 ID:plShQ.Uo

唯達が全力で後退をかけた時、爆発光の向こうでは、潮が必死にいちごを押しとどめていた。

潮「若王子さん!! 後退しないと!!」

いちご「どうして邪魔をしたの!?」

潮「あんたがそんなんだったら、立花さんが悲しむと思ったからじゃない!!
  憎しみに囚われたあんたなんか、立花さんは見たくないはずでしょ!?」

いちご「…立花さん!?」

潮「立花さんは、あなたが笑ったら、笑顔になった!
 でもあなたが辛そうなとき、いつも悲しそうだった! 今みたいなあなた見たら、どうなるのさ!!」


いちご「あいつらを倒したら、もとに…太田さん!!」

潮「…え?」

潮が振り返ると、MSより一回りほど大きなアクシズの破片が、彼女のギラ・ドーガにぶつかった。
そのまま、ギラ・ドーガは押しつぶされて爆発していった。

いちご「太田さん!!」

いちごは、それを見ながら、全速で後退をかけるしかない自己を激しく嫌悪した。

いちご「立花さんも…中島さんも…太田さんも…」

いちご「みんなみんな…いなくなってしまった…」

また、涙の雫がいちごの瞳から生み出されていた。



397 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:29:44.32 ID:plShQ.Uo

ラー・カイラムがアクシズから離れるための掩護をしていた紬は、
アクシズに入る光の亀裂に、目を奪われていた。

紬「…アクシズが…割れる…!」

最早、敵も味方も消耗しきって、戦闘も散発的なものになっていた。
その少なくなったMS群に仲間たちを見つけられず、紬は気が気ではなかった。

紬「みんなは…どこなの?」

アクシズを分断させた光の筋は、広がって帯になり、
二つになったアクシズが、別々に分かれていく。
その、分かれた後ろ部分の動きに、紬は少し違和感を覚えた。

紬「片方…地球に落ちていってない…?」



398 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:30:13.13 ID:plShQ.Uo

紬が、異変に気づいた頃、

澪「おい…アクシズの後部…」

律「…へ?」

梓「地球との相対位置、速度…計算してみるです!」

梓がそう言うやいなや、片腕のない梓のジェガンの頭部、
ゴーグルのようなグレイズ・シールドが明滅し、
その下にあるモノアイ・センサーが光を発して地球とアクシズを捕らえ、測距を始めた。

唯「…あれ見て!」

その時、唯はアクシズ後部に、一筋の光を見た。



399 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:30:43.66 ID:plShQ.Uo

ラー・カイラムに取り付いた紬は、地球に落ちる破片の後部から、
放射状に七色の光が発しているのを見て、それに見とれていた。

紬「あの光は…なんなの?」

そして、アクシズに絡みつく、何条もの航跡。

紬「…MS…? 何が起こっているの?」

レシーバーに、通信が入る。

「生き残ったMSは、損傷機の回収作業に当たれ。」

紬「り…了解!」

大気の摩擦熱で赤熱するアクシズから発する光は、その輝きを増し続けている。
そこにMSの航跡が次々にとりついて、スラスター光の輝きも、その光に加わっていく。
その時、紬はMS隊がアクシズを押し返そうとしていることに、気がついた。

紬「…私もあそこに…行かなきゃ!」

紬はもう、何も考えなかった。



400 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:31:13.87 ID:plShQ.Uo

測距と計算を終え、MSを通常管制に切り替えようとした時、
戦闘データの羅列が誤表示され、梓は、ようやく自分が何故死ななかったのか、気がついた。

梓「憂が…私を助けた…?」

そこには、「コンピューターの判断により、緊急回避」という赤文字がビッシリと並んでいた。
その個数は憂の記憶が梓の命を助けた回数だったが、梓はそれを数えることが出来なかった。
見ない様にして、表示を切り替えた。

梓「…さっきも…?」

さっきも、敵に斬られる、と思ったが、片腕だけで済んだ。
頭の中には、憂の声が響き続けている。

憂『梓ちゃん、危なかったね。』

憂『もう、そんなんだから、お姉ちゃんを任せられないんだよ。』

梓「…私、憂のデータが無かったら…」

梓「…憂。」

梓の声は、虚しくコックピット内を揺らしただけだった。



401 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:31:43.51 ID:plShQ.Uo

唯たちも、MS隊がアクシズに取り付くのを見て、なすべきことに気がついた。

唯「私たちも、行かなくちゃ!!」

律「梓! アクシズの進路はどうなんだ!?」

憂のことを考えていた梓は、律の言葉に思考を中断させ、慌てて返答した。

梓「あとちょっと軌道が外に向けば、地球には落ちないはずです!!」

澪「よし、決まりだな!! 私たちも行くぞ!!」

4機は、武器を捨て、アクシズから発している光のなかに飛び込んでいった。
しかしそれは、彼女たちが忘れていた任務を思い出したからでは無かった。

彼女たちの心が、人としての部分が、その衝動を引き起こしたのである。
その衝動に、さっきまで心の中を占めていた怒りや憎しみは、完全に覆い隠されてしまったようだった。



402 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:32:46.34 ID:plShQ.Uo

いちごは、ヘルメットのバイザーを上げ、涙を拭ってアクシズの破片を見やった。

いちご「光が…あれは何…?」

いちご「MSが、アクシズの落下を阻止しようと…させない!!」

いちごは、MS隊を阻止すべく、サイコミュ試験型の機体を加速させ、
エネルギーが残り少ないビームライフルを動けないMS達に向けた。

いちご「私を独りぼっちにして…貴様らみんな殺してやる!!」

「だめよ!」

いちご「…え?」

アーム・レイカーのトリガースイッチに力を込めようとした彼女の手を、
確かな力を伴って、聞きなれた声が制した。

いちご「…立花さん…なの?」



403 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:33:15.07 ID:plShQ.Uo

コックピット内に姫子の優しい香りが漂った。
数秒の静寂の後、いちごはビームライフルを捨て、その乗機をアクシズに向けて加速させていた。

いちご「立花さん! 私…分かった!!」

いちご「あれが落ちたら、たくさんの命が…取り返しの付かないことが、起こるんでしょ!」

いちご「立花さん、言ってた! 人は、間違いを犯すけど、それに気づくことができて、繰り返さない!」

いちご「なら・・・犯す前に間違いに気がついたら・・・何としても、それを止めるまで!!」

いちごの機体がアクシズに取り付くのと、唯達がそうしたのは、ほぼ同時だった。

唯「…!」

律「こいつも…!」

梓「嘘でしょ…!」

澪「こんな事が…起こるんだな…。」

唯たちの中にあった憎悪の念は、徐々にその輪郭を、小さくしていった。
そして澪も、それを感じているようだった。



404 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:33:43.76 ID:plShQ.Uo

紬「みんなが…ここにいるの…?」

損傷機回収の命令を無視し、飛んできた紬は、光のなかに入って唯たちの存在を知覚した。
それは、視覚的なものを伴わない感覚だったが、確かな実感となって、紬には受け止められた。

紬「みんなと一緒に、こいつを止める!!」

その紬のシャープな意志は、光を媒体として、唯たちにも瞬時に伝わった。

唯「え…ムギちゃん?」

梓「ムギ先輩?」

律「ムギなのか?」

澪「ムギ…?」

五人は、同時にジェガンのスロットルを全開にした。



405 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:34:12.36 ID:plShQ.Uo

鈍足な機体を、ほぼ常にフルスロットルで使用していたため、
アクシズにとりついてすぐに、
過熱気味だったサイコミュ試験機のエンジンがオーバーロードの悲鳴を上げ始めた。

いちご「まだまだ…!」

エンジンのリミッターを手動で解除し、さらに力を引き出す。
エンジンの熱は排出しきれず、ジリジリとコックピット内のいちごに襲いかかった。

いちご「!!」

その時、コックピット外周のサイコ・フレームが発光し始め、
その光の奥に、いちごは姫子のイメージを捉えた。

いちご「立花さん…そんなところにいたんだ!!」

スロットルを固定し、シートから乗り出して、姫子に手を伸ばす。
だが、その手は虚しく空を切るだけだった。



406 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:34:43.93 ID:plShQ.Uo

いちご「私…寂しかった! ずっと…逢いたかった!!」

いちご「私、頑張ったよ! 間違いを、正しもした!!」

手は、溺れているように空を切り続ける。
姫子のイメージは、遠かった。

いちご「あなたに触れたい! 温もりが、欲しい!!」

涙でぼやける視界に捉えた、光の中の姫子も、こちらに手を差し伸べてくれた。

いちご「独りは、もう嫌なの!!」



407 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:35:18.05 ID:plShQ.Uo

もう少しで、手が届く。

その時、背中に強力な、瞬間的な圧力を感じ、
いちごの体がリニアシートから放り出され、目の前に赤い飛沫が飛び散った。

いちご「あうっ!!」

焼けるような痛みがいちごを襲うが、目の前に姫子がいてくれるのだ。
彼女に抱き締めてもらえば、優しい言葉をかけてもらえば、
そんな痛みも、つらいことも、色々なモヤモヤも、すべてその温もりが溶かしてくれる。

暑さにも、痛みにも、動かなくなってくる体にも構わず、
いちごは姫子に手を伸ばし、今まで言えなかった、大事なことを話し始めた。

いちご「立花さん…あのね…私…ずっと言おうと思っていたの…」

いちご「いじめられているとき、助けてくれたこと…
    苦しい時、抱き締めてくれたこと…
    いつも側で、支えてくれたこと…色々、教えてくれたこと…」

いちご「…そして、こんな私を好きになってくれて…本当に…本当に…」

また、大きな衝撃を体が受け止めた。

それに押されたのか、今度はしっかりと姫子の手を握ることができた。



408 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:35:45.29 ID:plShQ.Uo

唯のジェガンの隣で、アクシズを押していたサイコミュ試験型のバックパックが
赤熱しながら見る見るうちに膨張し、爆発とともに破裂した。
それを見た唯は、昔からの仲間を失ったように思った。

さっきまで、憎しみ合っていた、敵なのに。

唯「…ああ…。」

一瞬後、その機体は光り輝く七色の光をばらまきながら四散していった。
それは、サイコミュ試験型のコックピット周りの構造材として使われていた
サイコ・フレームの輝きであったが、唯達にはそれが何なのか、分からない。
何故、MSがこんな光を出して爆発するのか、と思っただけである。
その光は装甲を突き抜け、唯の座っているコックピットまで流れて、
一つの言葉となって彼女の心に食い込んで、消えた。

唯「…ありがとう…?」

律「…お前も、聞こえたか?」

梓「私も聞こえました…ありがとう、って。」

澪「私も聞こえた…。」

紬「ありがとうって…私にも…」

自分達に向けられた言葉ではない。
それは知っていたが、その言葉の温かみは、そんな事すらどうでもいいと5人に思わせた。



409 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:36:13.82 ID:plShQ.Uo

五人が奇跡を確かめ合っているうちにも、
次々にオーバーロードと摩擦熱で耐え切れなくなったMSが爆発したり、
アクシズからはじき出されたりしていく。

「もういいんだ! みんなやめろ!!」

レシーバーが拾ったのは、中央で隕石を押し出しているMSからの通信だろう。
しかし、その通信を聞いても、爆発するMSを見ても、
彼女たちはスロットルを戻さない。戻す気も、無かった。

「離れろ、…ガンダムの力は…」

その声を聞いて、5人が離れるものか、と思った瞬間、
七色の波動がそのMSから伝わってきて、5機はアクシズから引き剥がされた。



410 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:36:45.20 ID:plShQ.Uo

唯「うわあっ!!」

梓「何が起こったですか!?」

律「わっ…この力は…?」

澪「な…光…?」

紬「これは…なんなの…?」

何度もアクシズに取り付こうとするが、光に阻まれて、近付くことすらままならない。
その上、機体は徐々にアクシズから離されていく。

5機はアクシズから離れていき、全方位モニターの映像を
CG合成映像から実視モードに切り替え、その光をじっと見つめることしか出来なかった。

光は、一瞬にしてアクシズの破片を包みこみ、
帯になってもう一方の破片に伸びて行き、包みこみ、二つの隕石をつないでその輝きを増して行く。



411 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:37:12.94 ID:plShQ.Uo

唯「ねえ…あれ…何…?」

紬「オー…ロラ…かしら…?」

澪「…オーロラ?」

梓「アクシズが…地球から離れていくです!!」

律「ホントだ…動いてる…どうなってんだよ…?」

そして、さらに光の帯から一筋の光が離れ、地球をぐるりと一周した。

当のアクシズは、光の帯が示した一本の道に従って、ゆっくりと地球を離れていく。
その先には、太陽があったが、メンバーにはそんな事は分からない。

ただ、その美しい光に見とれているだけである。



412 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:37:46.15 ID:plShQ.Uo

もう映像では物足りなくなり、5人は次々にハッチを開け、
宇宙空間に乗り出してその光を直に見つめていた。

唯「…きれいだね。」

梓「…はい。」

唯「ねえ、みんな…帰ったら、この光景を歌にしようよ!」

律「ああ…そうだな…」

梓「どんな歌詞か、メロディーか、想像も付きませんね。」

この三人の中に巣食っていた憎悪は、完全にこの光のなかに吸い込まれていったようだった。
それを感じた澪の瞳に涙が溢れる。

澪「私たち…また音楽がやれるんだな!
  穏やかな気持ちで、楽しく! みんなの気持ちを、一つにして!」

紬は、5人が無事に集まることができた奇跡を噛みしめて、涙した。

紬「ええ…そうよ! みんな、一緒にね! ずっと、一緒に!」

光の帯は、徐々に薄くなり、アクシズとともに消えていった。



413 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/11/11(木) 19:38:14.61 ID:plShQ.Uo

5機はそれを見届けてからジェガンに乗り込み、反転し、艦隊の方に飛んでいった。

唯「…ありがとう。」

梓「…ありがとうございます。」

律「…サンキュな。」

澪「…ありがとな。」

紬「…どうもありがとう。」

それは、誰に対して発せられた言葉でも無かったが、
その言葉は、確実に、その光のなかに届いたように思われた。

彼女たちの背後でゆっくりと自転する地球には、まだうっすらと光の輪が掛かっていた。


最終話 宇宙の虹! おわり




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唯「CCA!」#最終話 宇宙の虹!
[ 2011/07/08 23:46 ] ガンダム | 逆襲のシャア | CM(0)

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