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唯「へぇ、これが純ちゃんのなる木かぁ」 【ファンタジー】


http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1310623917/l50




1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:11:57.26 ID:G/m+c5uzO


 子供の頃のことでした。

 私は和ちゃんと憂と、すこし遠くの丘にピクニックに来ました。

 てっぺんに立派な木が立っている丘です。

 お弁当と水筒を持って、3人だけでやってきて、

 私たちは少し息を切らしながらてっぺんまで到着しました。

唯「これが純ちゃんのなる木なんだね」

 私はすべすべした幹を撫でて、木に寄り添いました。

 ひんやりした表面の向こうにぬくもりのある木は、ざわざわと葉を風に揺らしました。

憂「そうだね、スズキノキだって」

和「枝折ったりしちゃだめよ」

唯「わかってるよ。それよりお腹ぺこぺこ!」





4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:15:46.44 ID:G/m+c5uzO


 憂が作ってくれたサンドイッチの箱を開いて、木陰の下でみんなで食べます。

 水筒の中身は飲みほしてしまったから、お茶は和ちゃんに分けてもらいながら。

 ひとしきり食事をして、私は空を覆う純ちゃんの木の枝を見上げます。

唯「純ちゃん、なってないね」

和「純がなるのは6月ごろだからね。今みたいな春の時期は、まだ固いつぼみの時期だと思うわ」

唯「つぼみかぁ。それ摘んで持って帰ったら、純ちゃん育てられるかな?」

和「せいぜい花が咲くだけよ。それだけでいいなら摘んでもいいと思うけど」

唯「純ちゃんの花!」

 和ちゃんがいいと言ってくれたので、私は幹につかまると、

 しっかり靴底で挟んで純ちゃんのなる木を登り始めました。

憂「おねえちゃん、気をつけて!」

和「唯、木のぼり上手ねぇ……」



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:18:50.54 ID:G/m+c5uzO


 憂の心配をよそに難なく幹の分かれるところまで登ると、

 私は枝の先のほうに向かって渡り、純ちゃんの花のつぼみを探します。

 四つん這いでそーっと進んでいくと、不意にほっぺたに、

 ぺたりと何か冷たいものがぶつかりました。

唯「ん?」

 なんだろうと思って見ると、そこには人間の足のようなものがぶら下がっていて、

 さらに見上げると葉っぱの陰で白い脚が伸びていました。

 もしやと思って立ち上がると、やっぱりです。

 遠くに見える甘栗色のダブルポンポン。

 今いる枝よりいくらか上の方に、純ちゃんの実がなっていたのでした。

唯「わあ!」

 私はすっかり興奮してしまって、

 純ちゃんのなっている枝のところまでぴょんぴょん枝を跳んでいきました。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:22:02.82 ID:G/m+c5uzO


憂「お姉ちゃん、どうしたの?」

 憂の声がします。

 私は葉っぱの間から顔を出して、大きな声で言いました。

唯「純ちゃんがなってるの! えへへっ、あわてんぼさんの純ちゃん!」

憂「ほんとにー!」

 憂も嬉しそうにぴょんぴょん跳びました。

和「早生りの純なんて珍しいわね。雨が降らないと純はうまく実をつけないのに」

 和ちゃんは不思議そうな顔です。

 これは後で教わった話ですが、

 純ちゃんとは雨季の水分をたっぷり使ってみずみずしい実をつけるため、

 日本では梅雨のある地域でしか育たないんだそうです。

 だから梅雨の前に純ちゃんがなるなんてことはすごく珍しいことらしいです。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:25:06.90 ID:G/m+c5uzO


唯「すごくおっきいよ! 私たちぐらい大きい!」

 私は純ちゃんの頭を枝からちぎりとり、大きな純ちゃんの実を抱きかかえました。

 同時、純ちゃんがぱちっと目を開いて私を見つめました。

和「……ちょっと唯、まさか純をもいじゃったりしてないわよね?」

唯「へ? 今ちょうど採ったところだよ!」

和「ちょっ……あらら」

 和ちゃんは頭を抱えます。どうしたのでしょう。

 私は純ちゃんを背中につかまらせ、慎重に木を降りていきます。

 季節外れの純ちゃんだけどちゃんと元気で、私につかまる腕はしっかり力をこめていました。

 かろやかに地上に降り立ち、いったん純ちゃんを地面に置きました。

唯「和ちゃん、純ちゃん採っちゃだめだったの?」

和「だめってわけじゃないんだけど……」



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:28:35.45 ID:G/m+c5uzO


 和ちゃんが言葉をちょっと濁し、純ちゃんのほうをちらりと見ました。

 つられて私も見おろしてみると、
 
 純ちゃんは地面にぺたりと座ったまま、私をじっと見上げています。

憂「純ちゃん、お姉ちゃんになついちゃったんだね」

唯「そうみたいだね。ふふぅ、かわいかわい……」

 頭とあごを撫でてあげると、純ちゃんは嬉しそうに口元をゆるませました。

 そして、私のズボンを掴んだかと思うと、脚に抱き着いて頬ずりをするのです。

和「……かわいいかわいいはいいけど、唯、ちゃんと純を育てられるの?」

唯「そりゃあ……まかせてよ。こんなにかわいいものを私は見捨てません!」

 もしかして和ちゃんが気にしていたのはそんなことだったのでしょうか。

 だったらそのくらい、ぜんぜん問題じゃありません。

和「そう? ……とにかく、純ってもぎとった人に懐く性質があって、完全にその人に依存するから」

和「ぜったい、いい、絶対よ。絶対お世話をサボったりしちゃだめだからね」

唯「う、うん」



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:32:17.31 ID:G/m+c5uzO


 和ちゃんは迫力たっぷりに言いました。

 純ちゃんもちょっと怯えて、震えています。

純「……くしっ」

唯「あれ?」

 なんて思っていると、純ちゃんがくしゃみをして、私のズボンに鼻をこすりました。

憂「お姉ちゃん、純ちゃん裸だから寒いんだよ」

唯「そっかそっか……よし」

 私は上着を脱いで、純ちゃんの肩にかけてあげます。

 純ちゃんはきょとんとした顔で着せられた服を眺めます。

 私はもっと子供のころ憂にしてあげたように、純ちゃんの前のボタンをとめてあげて、

 頭をぽんぽんと撫でました。

 純ちゃんはまた鼻水をすすり、ちょっと照れ臭そうに笑いました。



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:35:21.14 ID:G/m+c5uzO


 私たちは純ちゃんを加えた4人でもとのように木陰に座りこんで、

 帰る時間になるまで純ちゃんをみんなで観察することにしました。

 あぐらをかいたところに純ちゃんはお尻をおさめて、私に寄りかかります。

 ちょっと重いですが、下ろそうとするとむぅむぅと鳴いて怒ります。

 しかたないので、そのままにしました。

唯「お腹は減ってる?」

 純ちゃんの頭を撫でながら尋ねます。

純「……?」

憂「さすがに言葉はわからないんじゃないかな?」

 憂がもっともなことを言います。

 純ちゃんは私たちと同じくらい大きいけれど、いわば生まれて間もない赤ちゃんです。

 言葉がわからなくても仕方ありません。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:38:31.19 ID:G/m+c5uzO


和「けど、純ってすごく賢い植物のはずよ。言葉くらい、毎日話してたらそのうち覚えちゃいそう」

 今度は和ちゃんが言います。

 純ちゃんと言葉で通じ合えたら楽しそうです。

唯「そうかな? 純ちゃん、お腹減った? おーなーか」

 私は純ちゃんのお腹をさすりながら、もう一度きいてみました。

純「おーあーか?」

憂「しゃべった」

 憂がみょうに小声で喜びます。

 私も無言で頷きます。

唯「ちがうよ、お・な・か」

純「お、おなか……?」

唯「そう、おなか! 純ちゃんはおなか減ってる?」



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:42:10.21 ID:G/m+c5uzO


 ナチュラルに植物と会話している私たちは

 傍から見たらちょっとおかしかったかもしれませんが、私たちは真剣でした。

純「へ、へ?」

和「唯、たぶんそれは難易度高いわよ……」

 和ちゃんがつっこんだとき、ぐーっと音がして、私の手に振動が伝わりました。

憂「今の、純ちゃんのお腹の音?」

唯「うん、純ちゃん、お腹減ってるんだね!」

純「むぅ……」

 純ちゃんはへそをまげながらも頷きました。

唯「憂、さっきのサンドイッチまだあったよね?」

憂「うん。純ちゃんに食べてもらおう!」

 バスケットを再び開いて、小さなサンドイッチを手に取りました。



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:45:06.40 ID:G/m+c5uzO


唯「はい純ちゃん、あーん。あー」

純「あー」

 大きく口を開いてみせると純ちゃんも真似をします。

 そっと三角サンドイッチを口に近づけ、舌に乗せさせてから口を閉じました。

唯「あむっ」

純「あむ……」

 純ちゃんが口を閉じたのを確認してからサンドイッチを引っ張ると、

 ほとんど元のままの三角形の角がするっと出てきました。

唯「あれ? 純ちゃん、歯を使うんだよ、歯。いーって」

純「いー」

 今度は歯を見せながら口を開けて、同じように。

 純ちゃんが歯でサンドイッチを噛みきるところがちゃんと見えて、安心しました。

 すかさず、よしよしと頭を撫でてあげます。



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:48:03.82 ID:G/m+c5uzO


純「む?」

 純ちゃんはしばらく不思議そうな顔をしていましたが、

 やがて口をもごもごと動かし始め、サンドイッチを自分で噛みつぶしていきました。

和「自分で気付いたわね……」

憂「純ちゃんすごい!」

唯「純ちゃん、ごっくんてして。ごくんっ」

 私が喉を鳴らして見せると、純ちゃんもサンドイッチを飲みこんで、

 ちょっとびっくりしたような顔をしました。

 けれどそれから純ちゃんはもう要領を得たのか、私がサンドイッチを差し出すと口を開けて、

 サンドイッチを口に入れてあげると自分で噛んで、飲みこんでいきました。



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:50:50.33 ID:G/m+c5uzO


 結局、残っていたサンドイッチを全部食べきって、純ちゃんは満足げな顔をしました。

唯「純ちゃん、おいしかった?」

純「うんっ」

 意味はわかってないでしょうが、純ちゃんは素直に頷きます。

 よしよしと言って頭を撫でてあげます。

純「んむぅ……」

 と、純ちゃんがとつぜん不満そうに鳴いて、私のほうに振り返ります。

唯「あれ、どうしたの?」

 純ちゃんは私にもたれかかるように抱きつくと、そのまま黙ってしまいました。

 そのうち、すぅすぅと規則正しい寝息が聞こえ始めます。

唯「……寝ちゃった」

 私は和ちゃんと憂を見ましたが、二人ともそうだねと頷いただけでした。



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:54:07.22 ID:G/m+c5uzO


 やがて日も落ちかけてきたので、私たちは帰ることにしました。

 純ちゃんを抱っこしたまま下る丘はとても足が疲れましたが、

 丘を降りてからは純ちゃんも目を覚まして、手を繋いで歩いてくれたので助かりました。

 お家でも純ちゃんを飼うに際して特にお小言を言われることもなく、

 純ちゃんは晴れて平沢家の一員となったのでした。

――――

純「……んが」

唯「んぐぅ……」

憂「お姉ちゃん! 純ちゃん! 朝だってば!」

唯「……はっ!」

純「……ん?」

 夢を見ていたようでした。

 憂の大きな声で目を覚まして、体を起こします。



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:57:05.13 ID:G/m+c5uzO


唯「じゅーんちゃん。朝だよ」

 横で寝ている純ちゃんをゆさぶり、ほっぺたをつねって起こします。

純「あうぁ……ひょ、ゆいひぇんぱい」

 純ちゃんがうらみがましい目で私を見ます。

 そんな目で見られても、朝が来たものはしょうがないのです。

唯「ほら、純ちゃん? 朝ご飯にするよ?」

純「……あ、はい。……あの、ちょっとその前にトイレ」

憂「純ちゃん、お下品だよ」

純「じゃあどう言ったらいいのさ! ……と、とにかく唯先輩たちは先に下おりててください」

唯「? うん、じゃあ行こっか憂」

憂「うん。純ちゃんも早くしてね」



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 15:59:47.50 ID:G/m+c5uzO


 純ちゃんとの暮らしも早いもので、もう7年になります。

 たまに純ちゃんと出会った日のことを夢に見るから、

 純ちゃんが被子植物だということは忘れていません。

 制服を着て、高校に通って、ベースをひいたりする

 普段の純ちゃんの姿を見ていると時々意識しなくなってしまいますが。

唯「……ねぇ、憂」

 だけど、今日は純ちゃんが木の実であるということが気になったのです。

 私は純ちゃんが来る前に、憂にちょっと声をひそめて言いました。

唯「最近、純ちゃんなんだか変じゃないかな?」

憂「……お姉ちゃんも思ってた?」

 やっぱり憂も気付いていたみたいです。

 最近の純ちゃんは、明らかにどこかおかしいです。



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:03:11.21 ID:G/m+c5uzO


唯「昨日も寝付き悪かったし、子供のときの甘えんぼに戻ったみたいに私に抱き着いて寝たり、」

唯「なんか不自然にトイレに行くし、……それにね。今、憂って生理じゃないよね」

憂「へ? う、うん」

唯「ナプキンが減ってるの。純ちゃんに生理はないはずなのに」

憂「……生理が来たのかな?」

唯「それが、もうナプキン使って2週間も経ってるの」

 憂も息をのみます。

憂「……どういうことなんだろう?」

唯「わかんないよ。純ちゃんに聞くしかない」

憂「それじゃあ……」

 お姉ちゃんが、と言いかけたところで憂は口をつぐみました。

純「ふー。すみませんでした、先輩。憂もごめんね」

 純ちゃんが部屋へ降りてきました。



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:06:19.88 ID:G/m+c5uzO


憂「ううん、いいよ。謝ることじゃないし」

純「そ、そうだよね。そじゃ、いただきまーす」

憂「純ちゃん、手洗ったの?」

純「洗ったよ! 失礼な!」

 そんなやりとりを聞きながら、私は思いました。

 純ちゃんはなにか、人に謝らなければならないようなことをしているのでしょうか。

 どちらにしろ、その詮索はあとにしておきます。

 今日は軽音部がちょうど休みです。

 私は学校へ行く道すがら、純ちゃんに部活を休んで帰るよう言いつけました。

 むちゃくちゃな物言いでしたが、

 純ちゃんは意外と素直に私の言いつけをのんで、そして実際に部活を休んで帰ってきました。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:09:14.15 ID:G/m+c5uzO


――――

 家について、純ちゃんを部屋に呼びます。

 座布団に座らせて向き合うと、純ちゃんは居心地の悪そうな顔をしました。

唯「純ちゃん、お話があるんだ」

純「……はい」

 純ちゃんも後ろめたいことがあるのでしょう。

 私が言うと、緊張の面持ちです。

唯「率直に言うと……最近、純ちゃんはヘンというか」

唯「なにか内緒にしてること……ないかな?」

純「えぇと。……大したことじゃないんで、唯先輩は心配しないでいいですよ」

 訊いてもいなされるだろうとは思っていましたが、案の定です。

 だけど私には純ちゃんから聞きだす義務があります。

 あまり好ましい手ではありませんが、仕方ないでしょう。



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:12:16.11 ID:G/m+c5uzO


唯「……そんなこと言ってもなぁ。困るよ、純ちゃん」

純「え?」

唯「純ちゃん、私たちのナプキン勝手に持ってってるでしょ。ここのとこ減りが凄いんだよね」

 純ちゃんがびくつきました。

 なるべくなら、こんな言いかたはしたくありませんでした。

純「その、ちょっと……」

 純ちゃんは言いよどみました。

 ナプキンを使っていたのはやっぱり純ちゃんみたいです。

純「ごめんなさい、なんだか」

唯「純ちゃんって、生理ないよね? 植物だし」

純「そのはずなんですけど……」

 そう尋ねると、純ちゃんも顎に手をやって不安そうに考えました。



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:15:20.83 ID:G/m+c5uzO


純「自分でもよくわからないんですけど、少し前から体がムズムズして……」

純「もしかしたらと思ってナプキンをつけたら、それが楽になったんです」

唯「純ちゃんにもわかんない、か……」

純「はい……」

 これは困りものです。

 純ちゃんはなにやら、体に自分でも分からないような変調をきたしているようです。

 私が心配した通りでした。

唯「んー。お医者さんいったほうがいいかな」

純「唯先輩? わたし木の実ですよ」

唯「あ、そっか」

 すっかり忘れていました。

唯「……じゃあ、どこかで原因を調べないといけないね」



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:18:00.80 ID:G/m+c5uzO


純「……黙っててすみませんでした」

唯「いーのいーの、純ちゃんも言いにくかっただろうし」

 私は和ちゃんに電話をしてみることにしました。

 和ちゃんは純ちゃんについて詳しいし、今回のことも知っているかもしれないと思いました。

 わざわざ調べずに済むのならそれに越したことはありません。

唯「もしもし、和ちゃん?」

和『私よ。どうしたの?』

 私は純ちゃんの症状について説明して、和ちゃんに解決法を訊いてみます。

唯「というわけで、純ちゃんが体がムズムズするんだって」

和『……うーん、もしかしたら、あれかしらね』

唯「お、何か知ってるの?」

和『えぇ。……おそらくは、純花粉の飛散時期だからだと思うわ』

唯「じゅんかふん?」



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:21:18.42 ID:G/m+c5uzO


純「やっぱり……」

 わたしがオウム返しに言ったのを聞いて、純ちゃんは呟きました。

唯「花粉が飛んでるの?」

和『ええ、今はその時期よ。それで純は花粉を受け入れる体勢になっているんじゃないかしら』

唯「ふーむ。……ともかく、どうしたら純ちゃんを治せるの?」

和『花粉を受粉して種を作ったら、症状はおさまるわよ』

唯「そのためにはどうすればいいの?」

和『まあ裸にして外に2時間はほっぽりだしておけば受粉するでしょうけど』

和『唯の純は人間の文化に触れすぎてるからね。抵抗すると思うわ』

唯「当たり前でしょ……」

和『それじゃあね、まぁとにかく受粉をすればいいわけだから……』

 和ちゃんは電話の向こうで少し考えました。



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:24:20.16 ID:G/m+c5uzO


純「あの、唯先輩……」

唯「純ちゃん、ちょっと待っててね」

 純ちゃんの頭にふたつ咲いた、甘栗色の花を優しく撫でます。

唯「和ちゃん、どうしたらいいかな」

 少し間をおいて、和ちゃんが答えました。

和『やっぱり、唯が花粉をつけてあげるのがいいと思うわ』

唯「私が?」

和『ええ。唯が育ててる以上、唯がやってあげないとね』

唯「……わかった」

 私は和ちゃんに、その花粉のつけかたを教わりました。

 それはちょっと恥ずかしいようなことだったけれど、

 私がてれくさっていては純ちゃんを助けられないから、頑張ると和ちゃんに約束しました。



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:27:24.45 ID:G/m+c5uzO


――――

 私は憂が帰ってきてから、やることを憂に見てもらうことにしました。

 ひとりでするには不安があったのです。

 憂をお部屋に呼びつけたとき、下半身がすっぱだかになっている純ちゃんに憂は驚きましたが、

 ちゃんと説明すると頬を赤らめながらも納得してくれました。

 まずは、用意しておいた綿棒を純ちゃんのポンポンに差して、花粉をとります。

純「ぅ、くすぐったいです」

唯「はいはい、我慢してね」

 そして私は、おまたにある純ちゃんのめしべに目を向けました。

 触るのは子供のころ、お医者さんごっこと称していじったとき以来です。

純「あの、やっぱり自分で」

唯「だーめ! 私がやんなきゃだめなの!」



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:30:07.71 ID:G/m+c5uzO


純「う、憂……」

憂「お姉ちゃん、純ちゃんだってもう大人なんだし」

唯「けど……」

 和ちゃんが、私がやらなければいけないと言ったのです。

 私のやることが、純ちゃんに対する責任だと思うのですが……

純「唯先輩、ほんとに大丈夫ですから」

 涙を浮かべている純ちゃんを見ていると、そうも言いきれないような気がしました。

 そして私はなんだかとても居たたまれない気分になって、綿棒を純ちゃんのお腹に置きました。

唯「……なにかあったら呼んでね」

 私は立ち上がって、憂を連れて部屋をあとにします。

 振り返らなかったので、純ちゃんがどんな顔をしたかはわかりません。

 私も純ちゃんも、それ以上なにも言わずに、閉まった扉で隔てられました。



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:33:07.38 ID:G/m+c5uzO


憂「ねえ、お姉ちゃん」

唯「ん、なに?」

 廊下で待っていると、憂がおずおずと尋ねてきました。

憂「お姉ちゃんは、今でも純ちゃんのこと、自分で育ててる植物だって思ってる?」

 なんだかおかしな質問でしたが、意味はわかりました。

 要するに憂は、純ちゃんをペットみたいに思うなと言いたいのでしょう。

唯「……そりゃ、だって。本当にそうだもん。そう思ってるよ」

憂「あのね」

 廊下の壁に背中をつけてしゃがみこんでいる私に、憂は顔を近づけました。

憂「そろそろ純ちゃんもあれだけ大きくなったんだから……人間として、見てあげようよ」

憂「特に今回のことで純ちゃんさ、自分が植物だってこと再認識させられちゃったわけだし」

唯「……」

 言いたいことはわかります。

 けれど、突然そんなことを言われても。



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:36:15.86 ID:G/m+c5uzO


唯「純ちゃんは、植物なんだよ」

 私は投げ棄てるように言いました。

唯「人間とは違うの。同じにしちゃいけないの」

唯「……そんな風にしたら、純ちゃんが、自分が植物だってこと忘れちゃうでしょ?」

憂「どういうこと?」

唯「だから。それを忘れちゃったら、純ちゃんが他の誰かに、たとえば恋した時……」

唯「純ちゃんはその人と子供が作れないことをまた知って、また傷つかなきゃいけないんだよ?」

唯「だったら、忘れないほうがいいでしょ……」

 私はうつむき、体育座りのようになって膝に顔を埋めました。

憂「……そうかな」

唯「そうだよ」

 憂は納得していないようでしたが、それ以上はなにも言ってきませんでした。



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:39:04.96 ID:G/m+c5uzO


 純ちゃんは言われた通り、柱頭をきっかり10度、綿棒でとんとんとしたそうです。

 これで純ちゃんの子房の中にある胚珠が種になって、新しい純ちゃんの木が生まれるのでしょう。

 けれど純ちゃんは、種が生まれたらそれは割っていいと言いました。

 庭に植えたりして純ちゃんが増えてしまったら、困りますから、と。

唯「……純ちゃん、体調は?」

純「そうですね……おさまりつつある感じですけど、まだ少し落ちつかないです」

純「せっかく部活も休んだことですし、ちょっと寝てていいですか?」

唯「うん……おやすみ、純ちゃん」

 先ほど憂に言われたことは別にしても、

 いい加減、純ちゃんには一人の寝床ぐらい与えるべきではないかと思いました。

 純ちゃんは、もうこれほどに大きくなったのですから。



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:42:07.34 ID:G/m+c5uzO


 普通であれば、純ちゃんがこれほどの大きさに育つ例は少ないです。

 木に生ったままでは、秋には枯れてしまいます。

 夏なんて虫が発生したり、鳥に食われたりしますし、枝から落ちれば当然腐ります。

 私の育てている純ちゃんが腐ったり枯れたりしないのは、

 よく体を洗い、おいしくて栄養のある(憂の)ご飯を食べさせているからです。

 だけれど、純ちゃんはやっぱり植物です。

 木から送られる養分でこそよく育つのであり、

 ふつうに木につながっている状態なら、純ちゃんがこの大きさに育つまで1年とかからないでしょう。

 それが、私と憂で育てた純ちゃんは7年でこの大きさ。

 純ちゃんはやっぱり、どうしたって植物なのです。

 いまさらになってこんなことを思うのは、

 純ちゃんが植物であることを忘れかけていたせいでしょう。

 忘れないようにしているのに、夢も見るのに、どうして忘れてしまうんでしょう。



49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:45:08.99 ID:G/m+c5uzO


――――

 それから、数日が経ちました。

 純ちゃんはいくらか暗い顔をする日が続いていましたが、

 ナプキンを使うことはなくなっていたので、体は治ったのでしょう。

 植物っぽく言えば、無事受粉できたということになります。

 私はその日も軽音部で練習し、ティータイムを過ごし、のんびりとして帰ってきました。

唯「ただいまー」

 帰ってきて玄関の沓脱ぎを見ると、純ちゃんの靴がありませんでした。

 まだ部活をやっているのでしょうか。

 ジャズ研は真面目な部活ですから、少し遅くまで練習をやっていてもおかしくはありません。

憂「おかえり、お姉ちゃん」

唯「うむ、出迎えごくろう。じゃあ着替えてくるね」



51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:48:13.95 ID:G/m+c5uzO


 部屋にあがってギー太を置き、あかりをつけました。

 机に白い紙が置かれているのに、そこでようやく気付きます。

唯「ん?」

 赤褐色の、目のような形をした、ころころと固い物体をおもしにして置かれた紙。

 それには数行の短い文章が書かれていました。

 紙を拾い上げ、その手紙を読んでみます。

『  唯先輩へ

  長い間、お世話になりました。

  いきなりでごめんなさい。

  私はやっぱり木の実らしく、お母さんのもとで還ることにしました。

  種が産まれたので、これは置いておきます。

  私の形見にとっておいてもらえると嬉しいです。

  今まで育てていただいた恩は絶対に忘れません。さようなら。』




52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:49:04.61 ID:8b28JKQV0

純ちゃん…





53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:51:14.29 ID:G/m+c5uzO


唯「……」

 私は机の上に転がっていた純ちゃんの種を拾い上げ、頬につけました。

 固い感触の向こうから、ぬくもりが返ってくる気がします。

唯「……純ちゃん?」

 純ちゃんは、どこへ行ったのでしょうか。

 この手紙はなんなのでしょうか。

 一瞬、頭の中をいろんなものがぐるぐると混乱し、すぐに醒めました。

 私は状況を理解すると、部屋を飛び出て階段を駆け下りました。

憂「お姉ちゃん!?」

唯「ごめん、行かなきゃ!」

 憂が呼びとめるのも無視して、私は靴を引っかけ、

 夜の街を、あの遠くの丘に向かって走り始めました。



54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:54:09.29 ID:G/m+c5uzO


 初めて会った純ちゃんと手を繋いで帰った道を、全速力で逆走します。

 ぶらぶらと揺れてほどけたタイが、どこかで落ちました。

 小さな小さな子供のときに、奇跡か運命みたいな出会い方をして、

 私たちは純ちゃんを大切に育て始めました。

 それから今まで毎日心配し続けて、毎日愛でていました。

 まるで、植木鉢のチューリップを育てるように。

 そうして、純ちゃんの気持ちなんて考えずに、私はずっと、じょうろで水をやるばかりでした。

 いいえ、純ちゃんの気持ちを知りながら、純ちゃんを植物だと見ようとし続けたのです。

 だって私は人間で、純ちゃんは植物だったのですから。

 それを忘れてしまえば、

 私は迷うこともなく、木の実を愛している異常な女の子になるのですから。

 月明かりしかない丘を駆け上がります。

 張り裂けそうな胸の鼓動は、走り続けるせいだけとは思えませんでした。



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 16:57:06.13 ID:G/m+c5uzO


唯「純ちゃん!」

 頂上のスズキノキにたどりつき、私は叫びました。

 あの手紙には、「お母さんのもとで還る」とありました。

 お母さんの木は、このスズキノキ。

 純ちゃんは、ここにいるはずです。

 けれど周囲を見ても、純ちゃんの姿は見当たりません。

 まさか、もう消えてしまったのでしょうか。

純「……唯先輩」

 そのとき、純ちゃんの声が空から聞こえてきました。

 見上げると、太い枝に純ちゃんが腰かけて、私を見ていました。

唯「純ちゃん。おりてきて」

 息を整えながら、静かに、告げるように言いました。



56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 17:00:29.43 ID:G/m+c5uzO


純「……ごめんなさい。服ですよね?」

 純ちゃんは、私が迎えに来たことを認めてくれませんでした。

 こんな私が迎えに来てくれるなんて、純ちゃんも思わないでしょう。

唯「違うよ。純ちゃんを連れ戻しに来たの」

 私は純ちゃんをじっと見つめます。

唯「私と暮らすのが嫌だったなら、無理にとは言えないけど……でも、そうじゃないでしょ」

純「……」

唯「純ちゃん、降りておいで。憂がご飯作って待ってるから」

純「……いやです」

 純ちゃんは首を振りました。

純「種が産まれて、思ったんです。私はやっぱり人間じゃないんだって」

純「少し、夢を見過ぎてました。いい加減、自然に帰るときなんです」



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 17:03:46.09 ID:G/m+c5uzO


唯「純ちゃん……」

 こんなに傷つけてしまっていたなんて。

 それでも、このまま純ちゃんを帰すつもりはありません。

 7年の間いっしょにいたのです。

 7年ぶんの愛情で大きくしたのです。

 それを、純ちゃんのお母さんだからといって、みすみす養分にさせてあげたりしません。

唯「……わかった、じゃあ私がそっちに行く」

純「えっ?」

 私はいつかのように滑らかな幹の肌を靴底にとらえ、純ちゃんのいる枝まで登っていきます。

純「ちょ、ちょっと唯先輩!?」

唯「蹴落としたりしないでね?」

純「それはしませんけど……」



59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 17:06:12.28 ID:G/m+c5uzO


 子供のころし慣れた木のぼりは、ちょっとだけ下手になっていましたが、

 どうにか純ちゃんのところまでたどりつきました。

純「……木登り上手ですよね」

唯「ふふ。純ちゃんに木登りを教えたのはほかでもない私ですよ」

純「そうでしたね……」

 私は純ちゃんの隣に腰掛けて、足をぶらりと投げだしました。

唯「懐かしいね。ここで純ちゃんに出会ったんだ……」

純「……あのときは、嬉しかったです」

純「私、ずっと一人ぼっちでしたから……うっかり、あんな早くに生っちゃって」

 照れ笑いをする純ちゃんは、私たちが子供のころに戻ったかのようです。

唯「そうだね。私も純ちゃんはまだつぼみの時期だって聞いてたから、びっくりしちゃった」

純「でも、私をとって、育ててくれました」

純「すごく、あたたかかったです。あのときの気持ちは……」



61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 17:09:05.42 ID:G/m+c5uzO


 純ちゃんは言いにくそうにして、くちびるをぺろりと舐めます。

純「とても、幸せな気持ちで……でも、言葉にできなかったんです」

唯「……純ちゃんは、言葉を知らなかったもんね」

純「はい……ですけど、唯先輩が教えてくれました」

唯「私だけじゃないよ。みんなが……」

純「いえ、唯先輩です」

唯「……純ちゃん?」

 純ちゃんがじっと私を見ていました。

純「あの……」

純「私、本当は分かっていたんです。自分の体になにが起こってたのか……」

唯「それって、このあいだの花粉の?」



62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 17:12:10.91 ID:G/m+c5uzO


純「はい。なにが原因で、なにが起こっているのか……わかっていたんですが」

純「言いたくなかったんです。木の実だって思われるの、嫌でしたから」

唯「……どうして、そんなに植物なのがいやなの?」

純「そりゃ……人間と植物では、愛し合えないからですかね」

唯「純ちゃんって意外と乙女だね」

純「……そうですね。物心ついてからずっと、恋していましたから」

唯「そうなんだ……」

 私はちょっとがっかりしました。

 純ちゃんにだって、好きな人くらいいますよね。

純「……おかしいですよね。木の実のくせに、人間に恋するなんて」

唯「そんなことないよ。誰に恋しようと自由だって」

 私は笑みかけます。

 自分で自分を否定することはできそうにありませんでした。



63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 17:15:18.84 ID:G/m+c5uzO


純「……本当ですか?」

唯「うん、本当だよ」

 純ちゃんは私の肩に手を置きます。

純「だったら、言いますね」

唯「何を?」

純「唯先輩に教えてもらった言葉を、です」

 枝葉の間の暗闇で、純ちゃんと見つめ合います。

 なんだか……ドキドキしてきました。

純「唯先輩にもいでもらったときから、感じていました……」

純「この気持ちをあらわす言葉は、唯先輩が教えてくれたんです」

唯「純ちゃん……?」

 ふーっ、と純ちゃんは細い溜め息を吐きました。

純「わたし、唯先輩が大好きです」



64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 17:18:04.21 ID:G/m+c5uzO


純「……だから、このまま消えさせてください。私と唯先輩は、愛し合えないんですから」

純「憂のところに、帰ってあげてください……」

 純ちゃんが悲しそうに微笑みました。

 でも、私はそれどころじゃないのです。

唯「じゅ、じゅんちゃん?」

純「……」

唯「ほんとに……ほんとに?」

純「こんな嘘、言いませんよ」

唯「じゃ、じゃあ、じゅ、じゅじ、じゅんちゃんは」

 落ちついて、私。

 この調子だと、純ちゃんごと枝から落っこちてしまいそうです。

 一度、ごくっと唾をのみました。

唯「純ちゃんは、私のこと、好きなの?」



66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 17:21:06.07 ID:G/m+c5uzO


純「……はい」

 純ちゃんは静かに答えます。

純「ごめんなさい、驚かせて……」

唯「驚いたっていうか、あのね、純ちゃんっ」

 私は純ちゃんの頬に手を伸ばしました。

 純ちゃんがちょっとびくつきます。

唯「私も純ちゃんが好きだよ! 人間だろうと、木の実だろうと!」

純「!」

唯「だから一緒に帰ろう! 純ちゃんの帰るところはここじゃなくて、私の部屋!」

純「……唯先輩!」

 純ちゃんが倒れ込むように私に抱き着いてきました。



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 17:24:20.69 ID:G/m+c5uzO


唯「わわ、あぶないって!」

純「もう死んだっていいですぅ!」

 純ちゃんは死にたがりみたいでした。

 これはどうやら、まだまだ私の手が必要そうです。

唯「ほい、背中につかまって」

純「あ……えっへへ。はい、先輩」

 純ちゃんを背中におぶさらせて、木の幹を降りていきます。

 そーっと、懸命に腕と足に力をこめて。

唯「よいしょ!」

 そしてようやく地面に降り立って、ようやく再び月を見ました。

唯「さぁ、帰ろう純ちゃん?」

純「はい! ……迷惑かけて、ごめんなさい」

 私の背中からも降りた純ちゃんに手を差し出し、ぎゅっと握ってもらいました。



69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 17:27:20.30 ID:G/m+c5uzO


 純ちゃんと手を繋いで、丘を降りました。

 街灯の下を、のんびりと歩いて帰っていきます。

 あの日と違うのは、私と純ちゃんの手の繋ぎ方と、

 私たちを見守っているのは、青白い月だけだということです。

 でも、何も怖くはありませんでした。

 純ちゃんの生まれたあの丘が見下ろすこの街で、私たちは生きていくのですから。


  おしまい




72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 17:43:21.32 ID:Ul47fS7N0

追いついたと思ったら終わってた





73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 17:45:09.35 ID:HHIeY24Q0


スレタイからは考えられないいい話だった



75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 18:00:08.43 ID:KV6SctCH0





76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 18:02:46.45 ID:8b28JKQV0

お疲れ様ー



77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 18:03:40.44 ID:e8kLP9LBO

受粉した



78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/07/14(木) 18:19:21.07 ID:lFkj+EAg0

感動した……






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唯「へぇ、これが純ちゃんのなる木かぁ」
[ 2011/07/14 18:52 ] ファンタジー | | CM(0)

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