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唯「やや!」#前編 【非日常系】


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唯「やや!」#前編
唯「やや!」#後編




1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 21:51:06.07 ID:hMOT/JcQ0

「お姉ちゃん朝だよ、起きて!」

唯「う~ん…あと少しだけ寝かせて…」

「ダメだよ!学校に遅刻しちゃうよ!」

唯「あと五分…」

「ダメだってお姉ちゃん!早く起き…」

ジリリリリリリリリリリ!

唯「……っは!?」

唯「…夢か」

懐かしい夢を見た。これは私がまだ高校生の頃の夢。
そういえば憂は元気かな?

ジリリリリリリリリリリ!

唯「はいはい起きてますよっと…」ピッ





5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 21:53:29.82 ID:hMOT/JcQ0

大学を卒業した私は、地元を離れて別の街で一人暮らしをしていた。
別に地元から離れたかった訳じゃないけど、都会に憧れてなかったと言えば嘘になる。
そこで適当な職を見つけて現在に至るという訳だ。

社員A「平沢さん、この資料まとめといて」

唯「はい、わかりました」

社員B「平沢さん、それが終わったらこっちも宜しく」

唯「はい、わかりました!」

社員C「平沢さーん!こっちもー!」

唯「はい!わかりました!」

適当に就いた仕事だが、どうやら私にはあっていたみたいで毎日が忙しい。
私はもっとこう…楽な生き方を目指してたのに…。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 21:56:47.91 ID:hMOT/JcQ0

がちゃっ

唯「ただいまー」

唯「……」

当然返事が返ってくる事はない。
それでも私はこれを一度も欠かしたことがなかった。

唯「…ご飯でも食べよう」

私は手にぶら下げていた袋からコンビニ弁当を取り出した。
私の大好きなハンバーグ弁当だ。最近はこればかり食べている。

唯「いただきまーす」

唯「もぐもぐ…」

唯「…美味しいなぁ」

プルルルルルル プルルルルルル

私がぼーっとご飯を食べていると電話が鳴りだした。
だれだろうこんな時間に?

唯「はいもしもし平沢です」

「あ、お姉ちゃん久しぶり!」



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:02:48.97 ID:hMOT/JcQ0

唯「憂!久しぶり~、元気だった?」

「元気だよ!お姉ちゃんは?」

唯「元気でやってるよ」

「そっか、ご飯はちゃんと食べてる?」

唯「食べてるよ、心配しないで」

「自分で作って?コンビニ弁当は体に悪いよ」

唯「大丈夫だって、ちゃんと自分で作ってる」

「…本当に?」

…憂は変なところで鋭い。
でも憂を心配させちゃ悪いと思った私は、嘘を貫き通すことにした。

唯「本当だよ、憂は心配性だなぁ」



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:07:14.18 ID:hMOT/JcQ0

「だって…お姉ちゃんのことが心配なんだもん」

憂の声に元気がなくなった。
それだけ私を心配してくれている証拠だろう。やっぱり憂は優しいなぁ。

唯「大丈夫だよ、何年一人暮らししてると思ってるの?」

「…そうだよね、ねえお姉ちゃん」

唯「ん?なぁに?」

「…寂しくない?」

唯「え?」



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:10:55.73 ID:hMOT/JcQ0

「なんだか今日のお姉ちゃん元気ないよ?」

唯「そ、そうかな?」

自分ではそんな気がしない。
確かに全く寂しくないと言ったら嘘になるけど…
それももう慣れた。

「そっちで何かあった?」

唯「いつも通りだよ、何もないよ」

「…それならいいんだけど」

唯「あはは…憂は相変らずだなぁ」



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:18:00.65 ID:hMOT/JcQ0

「そうだ、次はいつ帰ってくるの?またお正月?」

唯「そうだなぁ…仕事が忙しいからね」

「…そうなんだ、ねえお姉ちゃん、私はやっぱり寂しいよ」

唯「え?」

私は驚いた。
一人暮らしをしてから憂とは、何度も連絡を取り合っているけど
寂しいなんて言うのはこれが初めてだったから。

「お姉ちゃんはどう?やっぱり寂しくない?」

唯「私は…少しは寂しいけど…」



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:24:45.57 ID:hMOT/JcQ0

「本当に少しだけ?」

憂は私をやたらと疑う。
確かに少しは寂しいけど、もうこの環境にも慣れた筈だ。

唯「……」

…それなのに、どうして否定できないんだろう。

「…やっぱりお姉ちゃんも寂しいんだね」

唯「……」

「お姉ちゃん、少し無理してない?」



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:30:59.40 ID:hMOT/JcQ0

「仕事が大事なのも分かるけど、たまには帰っておいでよ」

唯「…うん」

「みんな待ってるよ、お姉ちゃんのこと」

唯「みんな…?」

「うん、みんなだよ」

唯「…わかった、ありがとう憂」

私はこの時の憂の言っている「みんな」が誰のことなのか分からなかった。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:34:55.10 ID:hMOT/JcQ0

その日の夜、私は夢を見た。どんな夢だったかは覚えていない。
ただ、とても懐かしい夢だった。

唯起きろ!遅刻だぞ!」

唯「うーん…もう少し…」

「あらあら…全く起きないわねぇ」

「先輩!帰りの電車に間に合わなくなってしまいますよ!」

唯「わかってるよぉ…でもあと少し…」

「はぁ…ダメだなこりゃ…」

「こいつは全く…唯!早く起きろ!ゆ…」

プルルルルルルルル プルルルルルルルル

唯「……っは!?」

唯「……夢か…ふあああ…」



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:37:17.91 ID:hMOT/JcQ0

私はいつもより大きなあくびをした。
眠い…昨日憂と遅くまで長電話してたせいかな?

プルルルルルルルル プルルルルルルルル

唯「はいはい起きてますよっと」ピッ

プルルルルルルルル プルルルルルルルル

唯「…あれ?なんで鳴りやまないの?」

私は依然として鳴り続けている目覚まし時計に目を向けた。

唯「……ん?10時…?」



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:40:54.55 ID:hMOT/JcQ0

プルルルルルルルル プルルルルルルルル

…今やっと理解した。この音は電話が鳴る音だ。

唯「……まずい」

私はあわてて受話器をとる。恐らくこの電話の相手は…

唯「…はい平沢です」

「…おはよう平沢さん」

唯「…おはようございます」

…上司だ。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:44:12.37 ID:hMOT/JcQ0

「平沢さんが寝坊なんて珍しいわね」

唯「すみません…」キッ

私は目覚まし時計を睨みつけた。
何故鳴らなかった私の相棒。この数年間お前は私を裏切らなかったじゃないか。

「~~で平沢さんはいつも~」

…あれ?その前に昨日セットしたっけ?

「~~だから今回は特別に」

…した覚えがない。なら悪いのは私か…ごめんね目覚ましー太。

「いい?平沢さん」

唯「ごめんね目覚ましー太…」

「…は?」

唯「…え?」



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:47:19.62 ID:hMOT/JcQ0

「話を聞いてなかったの?」

唯「す、すみません!」

考え事をしていて全く聞いていなかった…。
ここら辺は昔から何も変わってないや。

「だから…今日は休んでもいいわよ」

唯「…えっ?どうしてですか?」

「あなたはいつも頑張ってるもの。たまにはお休みしたっていいと思うわ」

まさかこんなことを言われるなんて。
周りが私をこんなに評価してくれていることに驚いた。

唯「…本当にいいんですか?」

「いいのよ、風邪を引いたってことにしておくから。そのかわり明日からしっかり頑張ってね」

唯「は、はい!ありがとうございます!」

「ふふっ 今日はしっかり休んで疲れをとりなさい」

その日、私は初めて会社をずる休み?した。



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:50:39.38 ID:hMOT/JcQ0

唯「ふぅ…休んだのはいいけど何をしようかな」

特にやることもなかった私は部屋一面を見渡した。
そこで気がついたことがある。

唯「…私の部屋ってこんなに汚かったっけ?」

床にはコンビニ弁当の容器やティッシュなどが散らばっていた。
そういやいつも捨てるのがめんどくさくてそこら辺に捨ててたんだっけ…
それで暇なときに片づけようって…。
なら今日がその暇なときじゃないか。

唯「……よし!やろう!」

今日を逃したら次はいつになるか分からない。
私はこの部屋がごみまみれになる前に片づけてしまうことにした。



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:52:10.92 ID:hMOT/JcQ0

――――――――――

唯「ふぅ…やっと片付いた」

私は最後のゴミをゴミ袋にいれ、部屋を見渡した。
なんだ私、やればできるじゃないか。
まるで新しいマンションに引っ越してきたみたい。

…いや、それは言い過ぎか。なぜならまだ掃除機をかけていない。
それをしてから、初めてこの部屋は綺麗になったと言えるんだ。

唯「…よし!もうひと踏ん張り!」

私は掃除機を探す為、普段開けることのないクローゼットの中を物色した。
それだけ掃除を怠っていた証拠だ。すごく埃っぽい…。
その中で私はとても懐かしいものを発見することになる。それは

唯「…ギー太」

埃まみれになったギー太だった。



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:54:35.11 ID:hMOT/JcQ0

高校を卒業した私は、大学で音楽のサークルに入ったものの、徐々にギターを弾かなくなった。
それはHTT時代があまりにも楽しすぎた為、サークルに物足りなさを感じたからだ。
勿論大学が楽しくなかった訳じゃないけど、それでもあの頃が一番楽しかった。

唯「懐かしいなぁ…」

私は埃まみれのギー太を優しく抱きしめた。
服に埃がつこうが関係ない、こんなにも大事な私の相棒をずっとほったらかしにしてたんだ。
これはその償い。

唯「なにか弾いてみようかな…」

でも、今の私に何か弾けるのだろうか。もう十年近くもギー太に触っていないのに。

ジャジャーン!

それでも指は覚えていた。思いつくままに弦を弾く。そう…この曲は、

唯「ふわふわタ~イム♪」

唯「…やった!できた!嬉しいなぁ♪」

…嬉しい?私はこの感情を久しぶりに感じた。
高校時代には良く感じていたのに、この感情はいつの間にどこに消えていたのだろう。



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 22:57:40.58 ID:hMOT/JcQ0

まだ何かないか。私はさらにクローゼットを漁る。
今感じたあの思いをもう一度感じたい、それだけの理由で。
…あれ?なにか目的が変わっている様な…?まぁいいか。

そこで私は一冊の古い本を見つける。これもギー太と一緒で実家から持ってきたものだ。
ぼろぼろになったその本は、それだけで高校時代のものだと分かる。
私は本の表紙を見た。そこには懐かしい友の字でこう書かれていた。

唯「桜高軽音部卒業アルバム…」

はらり…と表紙をめくる。そこには古き仲間達の眩しいばかりの笑顔が写りこんでいた。



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 23:00:35.19 ID:hMOT/JcQ0

唯「うわぁ…懐かしいなぁ…」

一枚目の写真を見る。みんながこちらを見てピースをしている写真だ。

金髪で眉に沢庵がついている女の子がムギちゃん。いつもおっとりぽわぽわした子。

黒髪のツリ目な女の子が澪ちゃん。本当は怖いものが苦手で少し繊細な子。

右下でおでこしか写っていない女の子がりっちゃん。いつも元気いっぱいな軽音部の部長。

そして、真中でぎこちなくピースしているのが私。

唯「はは…この頃はどうなるのか不安だったなぁ」

次の写真に目をやる。私がギー太を持ってその横に仲間達が並んでいる写真だ。
その中の私は笑っていた。これからのことに胸を膨らませている顔だ。

唯「……」

昔の私は今の私にはないものを持っていた。今の私にこんな顔ができるだろうか?



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 23:02:40.99 ID:hMOT/JcQ0

それから、ぱらぱらとページをめくる。
合宿の写真、初ライブ後の写真、クリスマス会の写真、後輩が入部した時の写真、
どれも懐かしいものばかりだ。

唯「あ…」

ぱらぱらとめくっていく中、私はあの三年間で一番輝いていた頃の写真を見つけた。
思わず声が漏れてしまう。それだけ美しかったあの頃の一枚。

そこには、部室でギターを弾く私とあずにゃんの姿が写っていた。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 23:05:17.12 ID:hMOT/JcQ0





澪「…もう少しで私達も卒業だな」

律「何言ってんだよ、あと4カ月近くもあるだろ」

澪「もう、だよ」

梓「今年は部員一人も入りませんでしたし、
  先輩達が卒業したらこの部はどうなるんでしょうか…?」

律「心配するなって!何とかなるよ」

梓「なんとかって…」

紬「まぁまぁ♪それよりお茶が入ったわよ」

律「おぉ!サンキュームギ!」

紬「はいどうぞ唯ちゃん」

唯「……」

紬「…唯ちゃん?」

唯「…え?あ、あぁ!どうもありがとう!」



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 23:07:59.71 ID:hMOT/JcQ0

律「どうした?なんか元気ないなぁ」

唯「そ、そんなことないよ?」

澪「何か悩みごとか?」

紬「まぁ…私達になんでも相談してね?」

唯「大丈夫だよ、悩みなんてないよ!」

…本当はすごく悩んでいた。みんなが心配してくれるのはとても嬉しい。
でも、この悩みは誰にも話せない。特にムギちゃんには…

紬「それならいいけど…何かあった時はすぐに言ってね?」ズイ

唯「うっ…うん(顔が近いよぉ…)」ドキドキ

…だって、私はムギちゃんが好きなんだもん。
こんなの気持ち悪いよね…誰にも話せないよ…。

梓「……」



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 23:11:12.00 ID:hMOT/JcQ0

帰り道、私はいつものように仲間たちと歩いていた。
この頃にはもうすっかり秋で、北風が残された時間が少ないのを私達に告げているようだった。

律「さびー!もうすっかり秋だなぁ」

澪「だから言ったろ?それだけ卒業する日が近いってことだ」

梓「そうですね…」

律「なんだ梓、寂しいのか?」

梓「…そうです、寂しいですよ」

澪「梓…そうだ!」

カシャッ!

梓「えっ?ちょ、ちょっと!撮らないで下さいよ!」

澪「いいからいいから、これも思い出だよ」

律「そうだぞ!澪、ナイス!」グッ!

澪「おう!」グッ!

二人はお互いに親指を立てあう。幼馴染の二人だけど、
この軽音部に入部してからの三年間という月日が、更に二人の絆を深めたんだろう。
少し羨ましい。

梓「まったくもう…」



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 23:18:30.47 ID:hMOT/JcQ0

律「それじゃ、私達はここで!」

唯「うん、ばいば~い!」

りっちゃんと澪ちゃんとムギちゃんの三人が別々の方向に歩いていく。
私はその中でもムギちゃんの背中だけを見つめていた。

唯「はぁ…」

私はため息をついた。どうしてこんなにもムギちゃんのことが好きなのだろう。
この恋は叶う筈がない、それは分かっているのに…。

唯「はぁ…」

もう一度ため息をついた。
それは秋の風に溶けて、まるで秋までもが私に諦めろと言っているようだった。

梓「…さっきからため息ばかりついてどうしたんですか?」

唯「…え?きゃああああ!?」

梓「うわっ!?びっくりした…」



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 23:25:54.31 ID:hMOT/JcQ0

唯「あ、あずにゃん?帰った筈じゃ…?」

梓「ちょっと憂に用事がありまして…一緒に行きましょう」

唯「…そうだね、いいよ!」

――――――

とことこ

唯「……」

梓「……」

私達は何の会話もすることなく、私の家へと歩いていた。
いつもなら何か喋るのに、今日はなぜか喋る気がしなかった。

唯「……」

梓「……」

何か喋った方がいいかな?
そう思っているとあずにゃんの方から口を開いた。

梓「…先輩、手つないでもいいですか?」



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 23:34:17.84 ID:hMOT/JcQ0

唯「え?どうしたの急に?」

梓「た、ただ手が冷たいからです!…だめですか?」

唯「確かに冷たいよね…よし、なら繋ごうかあずにゃん!」

梓「ほ、ほんとですか!?」ぱぁぁ

あずにゃんの顔がいっきに明るくなる。
そんなに手が冷たかったのかな?やっぱりあずにゃんは可愛いなぁ…。

唯「えへへ♪」

梓「? どうしたんですか急に」

唯「いや~あずにゃんは可愛いなぁと思ってね♪」

梓「なっ!?か、かわいい!?」ボン!

今度はあずにゃんの顔が真っ赤になる。熱いのかな?



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 23:49:32.71 ID:hMOT/JcQ0

唯「? どうしたの?」

梓「い、いやなんでもありません!それより手を出して下さい」

唯「はい」

私が手を差し出すと、あずにゃんは優しく私の手を握った。
そして互いに手を握ったまま、私達は並んで歩く。

梓「……」

唯「……」

その間、私達は一言も喋らなかった。でもこれはさっきまでの沈黙とは違う。
お互いに手を繋いでるから、そこに言葉など要らないと思ったから。
…まるで私達は恋人同士みたい。



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 23:54:41.26 ID:hMOT/JcQ0

唯「……」

梓「……」

しばらくしても私達は一言も喋らなかった。この時あずにゃんはどう思っていたのかな?
私は、この手がもしムギちゃんならって思っていたんだ。
それなら私達は恋人同士になれたのに…そう思っていたんだよ。

最低だよね。



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/04(金) 23:58:39.40 ID:hMOT/JcQ0

しばらく続いた沈黙も、あずにゃんの一言で終わりを告げた。

梓「…つきましたね」

唯「…うん、そうだね」

それでも互いに手を離さない二人。
それはお互いの思いがそうさせるから。この時に気づいてあげればよかった。

梓「…そろそろ手を離しましょうか」

唯「あ…そうだね」



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:04:55.14 ID:Br5cNE140

唯「ただいまー」

憂「お帰りお姉ちゃん…と、梓ちゃん?」

梓「お邪魔します」

唯「なんかあずにゃんが憂に用事があるんだって」

憂「そうなんだ、どうしたの梓ちゃん」

梓「え…?あ、なんだったっけなぁ?忘れちゃったよ」

憂「? 何か大事なこと?」

梓「い、いや~そんな大事なことでもなかったような…」

梓「明日までに思い出すね!それじゃお邪魔しました!」

憂「あっ、梓ちゃん!」

唯「あずにゃんどうしたんだろう?」

憂「さぁ…?」



51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:13:57.63 ID:Br5cNE140

その日の夜、私は部屋であずにゃんと手を繋いだことを思い出していた。

唯「はぁ…あずにゃんの手暖かかったなぁ」

いや、正確にはムギちゃんと手を繋いだことを思い出していた。

唯「また繋ぎたいなぁ…」

私は自分の手をぎゅっと握った。
そこにムギちゃんの温もりがまだ残っている様な気がして。
でも、この温もりはあずにゃんのだ。…それは分かっているんだけど…

唯「…なんだか切ない」

私は布団にもぐりこんだ。
秋は恋を切なくする、もう残された時間は少ない。この恋ははたして実るのだろうか?
そんなことを考えながら…



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:18:55.57 ID:Br5cNE140

―次の日


律「それじゃ、今日も練習するか!」

澪「それはいいけど…お前勉強の方は大丈夫なのか?」

律「大丈夫だよ!ちゃんと家でやってるからさ!」

澪「ならいいけどさ…私と同じ大学に行くんだよな?」

律「だからその為に勉強してんじゃん」

澪「…そうか、そうだよな!」

律「おう!」

紬「あらあら♪二人は仲良しね」

唯「……」

梓「……」



53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:24:49.65 ID:Br5cNE140

私はムギちゃんをずっと見ていた。
昨日の一件以来私はムギちゃんをさらに意識してしまう様になったから。
ムギちゃんは私のことどう思ってるのかな…?

紬「…あら?」

唯「…!」

ムギちゃんは私の視線に気がついたようで、こちらをちらりと見た。
どうしよう…!まともに目も合わせられないよ…!
私は目を反らしてしまった。

紬「あらあら…大丈夫よ」

何が大丈夫なんだろう。ムギちゃんはたまによくわからない。

紬「唯ちゃんも梓ちゃんも二人に負けないくらい仲良しだから♪」

唯「え…?」

梓「…!」



57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:30:33.15 ID:Br5cNE140

律「まぁ確かにな、二人は仲いいよなぁ」

澪「梓が入部した時からずっとだしな」

確かに私とあずにゃんは仲がいいよ。
でも私が本当に仲良くしたいのはムギちゃんなんだよ?

紬「えぇ♪本当に羨ましいくらい仲がいいわよね」

だからやめてよ…ムギちゃんまでそんなこと言わないで…

律「もしかして付き合ってたりしてな!」

澪「馬鹿かお前は…でもお似合いだよな」

紬「えぇ、本当にお似合いよ二人とも♪」

もう…止めてよ…



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:38:51.44 ID:Br5cNE140

唯「……」ポロポロ

律「…唯?」

澪「ご、ごめん唯!からかいすぎたよ!」

紬「ごめんなさい…馬鹿にしてるつもりじゃ…」

梓「…とりあえず今日の練習は無しにしましょう、皆さん帰ってください」

澪「え…?でも唯は?」

梓「私がどうにかします」

紬「でも…唯ちゃんを傷つけたのは私達だし…」

梓「いいですから、私を信じてください」

律「……わかった、唯!ホントごめんな!」

紬「それじゃ梓ちゃん、お願いね…」

梓「はい」



59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:44:40.82 ID:Br5cNE140

唯「……」

梓「…さて、みなさん帰りましたね」

唯「……」

梓「先輩、ギー太を持って下さい」

唯「…え?どうして?」

梓「弾くからに決まってるじゃないですか」

私にはあずにゃんの考えてることがわからなかった。
それに、こんな気分でギー太なんて弾きたくないよ…

梓「…はい、ちゃんと持って下さい」

あずにゃんが私にギー太を手渡してきた。
私はギー太を持つ手に力が入らず、思わず落としてしまいそうになる。
でも、そんなギー太をあずにゃんはしっかり受け止めてくれた。

梓「おっと…しっかりして下さいよ、大事な相棒に傷が付いたらどうするんですか?」



60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:49:28.53 ID:Br5cNE140

あずにゃんが私に優しく微笑みかけてくる。それを見て私は気がついた。
そうか…あずにゃんは私の落ちていく気持ちを受け止めようとしてくれているんだ。
なんの為にギターを弾くのかはわからないけど、私はこの優しさに答えなきゃ…

唯「…わかった、ギー太を弾くよ」

梓「やっとその気になってくれましたか」



61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 00:59:58.27 ID:Br5cNE140

唯「でも何の曲を弾くの?」

梓「それは勿論「ふわふわ時間」ですよ」

唯「わかった、それじゃ…」

ジャカジャカーン

唯「キミを見てると…」

部室に優しい弦の音と私とあずにゃんの歌声が響く。
この歌はまるで今の私を歌っているみたい…心の中でそう思った。
今の私はどんな顔をしているのだろう。あずにゃんの優しさに応えられているのかな?

梓「あ~あ~カミサマお願い…」

でも、この時のあずにゃんはとても悲しい顔をしていた。
私は、自分が優しさに応えられなかったせいだと思っていた。



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 01:07:10.94 ID:Br5cNE140

唯「ふわふわタ~イム♪」

梓「ふわふわタ~イム♪」

ジャーン!

唯「……」

梓「……」

曲が終わった後、部室が沈黙に包まれた。
私はこの沈黙が嫌で、あずにゃんと手を繋ぎたくて手をもじもじさせていた。
でもあずにゃんは、そんな私の手をちらっと見て口を開いた。


梓「…わかりましたよ、先輩には好きな人がいますね」

唯「え…?」



70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 01:15:23.42 ID:Br5cNE140

唯「どうしてそう思うの?」

梓「一緒にギターを弾けば分かります。楽器にはその人の気持ちが宿りますから」

唯「そ、そうなの…?」

私もギターを三年近くやってるけどそんなのわからないよ。
ならムギちゃんの気持ちも分かるのかな?

梓「…あと、その顔ですね」

唯「え?どんな顔してた?」

梓「とても分かりやすい顔です」

唯「そうなんだ…」

昔から顔に出るとはよく言われたけど…そんなに出やすいなら気をつけよう。

唯「…でも私にはあずにゃんの気持ちがわからなかったよ」

梓「…そうですか、ならもう一度弾いてみましょう」

この時、あずにゃんは演奏中と同じ悲しい顔を一瞬したのを私は見逃さなかった。



73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 01:24:03.08 ID:Br5cNE140

ジャカジャーン!

私達「ふわふわ時間」をもう一度演奏した。
今度はあずにゃんの気持ちがわかるようにと、
その音、その表情に注目していたが、注目すればするほどに…

唯「いーつもがんば~る♪」

梓「いーつもがんば~る♪」

…なんて悲しい表情をしているんだろう。
まるで今にも泣きだしてしまいそうな…そんな顔をしていた。
まるで私と同じだ…あずにゃんも誰か好きな人がいるのかもしれない、そう思えた。



74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 01:30:55.36 ID:Br5cNE140

ジャーン!

梓「…どうです?わかりましたか?」

唯「うん、 少しだけ…」

梓「そうですか。では私は何を想っていましたか?」

唯「それは…あずにゃんも私と同じで好きな人がいるんじゃない?」

梓「どうしてそう思いましたか?」

唯「だって…私と同じなんだもん」

梓「…合格ですよ唯先輩。そうです、私にも好きな人がいます」

梓「でもそれは…決して叶うことのない恋」



75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 01:36:48.35 ID:Br5cNE140

唯「そうなんだ…なら私と同じだね」

梓「そうですね、あと先輩の好きな人ってムギ先輩ですよね?」

唯「…え?えぇっ!?どうして分かったの!?」

まさかこれも楽器の力?だとしたらなんてギー太はお喋りなんだろう…

梓「…あははははは!!!先輩は分かりやすすぎです!」

唯「うぅ…どうして分かったの?」

梓「ギー太が教えてくれたからですよ」

…やっぱりギー太はお喋りだ。



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 01:43:48.37 ID:Br5cNE140

唯「ならあずにゃんの好きな人は?」

梓「それは教えられません、いつか私のギターに聞いてみてください」

唯「もう!意地悪!」

梓「あはははは!」

唯「えへへ♪」

気が付けば私は笑っていた。
どうやらあずにゃんに救われたみたい。私はこんな先輩思いの後輩をもって幸せ者だよ。

梓「先輩、私先輩のこと応援します」

唯「応援って…私は無理だよ、この恋は叶いっこない…」

梓「大丈夫ですって、私達が絶対何とかしますから」

唯「あずにゃん…ありがとう、気持ちだけでも嬉しいよ」

梓「…先輩、手を出して下さい」



79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 01:57:25.79 ID:Br5cNE140

唯「? はい」

私が手を差し出すと、あずにゃんは私の手を握った。
あの日とは違う、今度はとても力強く。

梓「私の知っている唯先輩は、一つのことに一生懸命で、
  やってもいないのに諦めたりするような人じゃないです……」

唯「……」

梓「だから頑張ってみましょうよ。必ず成功しますから…ね?」

あずにゃんのその表情は、さっきまでとは違うとても明るいものだった。
その表情のお陰で、私は救われたんだね。ありがとう、あずにゃん。

唯「…うん!私頑張るね!」

梓「そのいきです、頑張りましょう!」

唯「うん!」

私とあずにゃんはお互いに手を強く握りあう。
その手はムギちゃんのものじゃない、あずにゃんのものだった。



81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 02:06:07.78 ID:Br5cNE140

梓「…さて、私達も頑張りましょうね。律先輩、澪先輩」

ギクッ!

梓「気づいてないとでも思ってたんですか?」

がちゃっ

部室のドアが開く。
そこにはカメラをもったりっちゃんと澪ちゃんが立っていた。
…って、え?二人ともいつからそこにいたの?

唯「…もしかして、今の話聞いてた?」

律「い、いやっ!?私達はたまたま部室の前を…なぁ澪!?」

澪「…え?お、おぉそうだよ唯!立ち聞きなんてしてないよ!」

流石の鈍い私にもばればれだよ二人とも…

唯「…聞いてたんだ」

律澪「………ごめんなさい」



83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 02:15:36.25 ID:Br5cNE140




まさかあの時、隠し撮りされていたなんて…。
その時のがこの写真だ。

唯「あの時、みんなが私に協力してくれることになったんだよね。
  これもあずにゃんのお陰だね。ありがとう、あずにゃん」

私は写真の中のあずにゃんにお礼を言った。
思えばこの時のことで直接お礼を言ったことがないや。
いつかまた会う時、必ずお礼を言うからね。



85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 02:22:03.82 ID:Br5cNE140

思い出に浸り足りない私は、すぐに次のページをめくった。
これをめくる度に、私の大事な何かが甦る。そんな気がしたから。
そして次の写真に目をやった。

唯「……」

これはあまりいい思い出ではない。なぜなら、この写真は全ての結果を思い出させるから。

その写真には、泣いている私とムギちゃんが写っていた。



86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 02:31:26.10 ID:Br5cNE140




律「いいか?たまにはお前がムギにお茶を入れてやるんだ」

澪「ムギに唯の愛情がこもったお茶を飲ませてやりたいだろ?」

梓「いいですか?慎重に入れるんですよ…」

唯「…もう!わかったから!気が散っちゃうよ!」

その日、私はムギちゃんの為にお茶を入れる練習をしていた。
これはりっちゃんの提案で、女の子は尽くされると弱いらしい。
本当かどうかしらないけど、りっちゃんがそういうタイプだってのは分かったよ。

唯「すごく意外…」

律「あ?なんかいったか?」

唯「別に何も~」

紬「あら?みんな一ヶ所に集まって何をしてるの?」

唯「…!」



88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 02:36:19.85 ID:Br5cNE140

律「ム、ムギ!?いつからそこに!?」

紬「今来たばかりよ。あら?唯ちゃんお茶を入れてるの?」

唯「そ、そうだよ!」

紬「なら言ってくれれば入れたのに…」

澪「違うんだムギ!唯のやつはな…」

梓「まって下さい澪先輩!唯先輩、誰の為にお茶を入れてるんでしたっけ?」

唯「そ…それは…」モジモジ

梓「先輩…!」

唯「…ムギちゃんの、為だよ」

紬「え?私の為?」



89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 02:40:35.62 ID:Br5cNE140

唯「そうだよ。だから…ムギちゃんは座って待ってて!」

紬「わかったわ♪なら楽しみにしているわね」

唯「うん!きっと美味しいよ!」

梓「先輩…なかなかいい感じですよ、その調子です…」ゴニョゴニョ

唯「えへへ…そうかな…」ゴニョゴニョ



90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 02:47:46.14 ID:Br5cNE140

そして何とかお茶が入れ終わった。
ムギちゃんのと比べると、色もなんだか濃いし、明らかにしぶそうだ。
お茶を入れるのにもコツや腕が問われるんだなぁ…。
なんて考えてる場合じゃない!せっかくの入れたてを飲んでもらわくちゃ意味がないじゃん!
そう…あとは運ぶだけ…の筈なのに…

律「唯ー!もっと真っすぐ歩けー!」

唯「うわわわ…これってすごく難しいねぇ…」

澪「ならなんでトレーなんて使ったんだよ…」

唯「だって~、このほうが雰囲気出るじゃん」

梓「でも運べなきゃ意味がないじゃないですか…」

唯「うぅ…計算外だ…」

…私はムギちゃんにお茶を運べないでいた。



92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 02:57:25.04 ID:Br5cNE140

紬「大丈夫?私から取りに行くから…」

唯「ダメ!ムギちゃんは座ってて!」

紬「え…?でも…」

唯「いいから!ムギちゃんは座ってるだけでいいから!」

だって、これをムギちゃんの所に運んで初めて、私の努力は報われるんだもん!
なら全部自分の手でやらなくちゃ意味がない!

唯「…でも辿り着けないよぉ!」

律「あ、唯!足元!」

唯「…えっ?」

ツルッ

何か踏んだ、と思った瞬間私の体は宙に浮いた。
全てがスローモーションに見える。
トレーの上のお茶はゆっくりと中身をまき散らしながら空を飛んでいた。
ああ…私のお茶…!せっかく頑張って入れたのに…



94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 03:04:58.10 ID:Br5cNE140

ドン!

唯「痛っ!」

どうやら私の体は背中から床に叩き付けられたみたい…
背中が少し痛い…

唯「いたたたた…」

律「唯!お茶ー!」

梓「先輩危なーい!」

…そうだ!私のお茶!
私はお茶を探そうと目を開けた。
でも探す必要はなかった。なぜならお茶は目の前に…

ばしゃっ!

唯「……」

そうか…あずにゃんの言う危ないの意味がわかったよ。
確かにこれは危ない。

唯「…あっつ~~~~~い!!!」



95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 03:16:51.89 ID:Br5cNE140

結果、りっちゃんのお茶作戦は失敗に終わりました。
この作戦で失ったものはありません。ただ、得たものはいっぱいあります。
それは私にお茶運びなど出来る筈がないということ。
これは憂と純ちゃんが部室に見学に来た時に証明済みの筈なのに、私は同じ過ちを繰り返しました。

次に得たもの、それは火傷です。まだ全身がヒリヒリするのでお風呂は大変です。
そして最後に得たもの、それは、ものをちゃんと管理するという教訓です。
なぜなら、今回私が踏んで滑ったもの、それはギー太のストラップだからです。
そういえば床に置きっぱなしなのを忘れてました。
私は相変らずです。大人になってもゴミを床に捨てるようなまねをしている様な気がします。

唯「今回の作戦での失敗を次回の作戦に生かし、見事成功させたいと思います!
  以上!報告を終わります!」

律「うむ!御苦労、唯隊員!」

澪「…なにやってんだよ」



96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 03:25:16.43 ID:Br5cNE140

―それから数日後

次は澪ちゃんの作戦で詩を書くことになった。
なんでも、自分のことを歌われて悪い気がする人はいないらしい。
たしかにそうかもしれない、この作戦は澪ちゃんらしいや。

澪「どうだ唯、できたか?」

唯「だめだよぉ、全くできない…私って才能ないのかな?」

澪「途中まで見せてみろよ」

唯「あっ!まだタイトルしかできてないのに…」

澪「どれどれ…」

澪「…沢庵に…首ったけ…?」



98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 03:32:32.38 ID:Br5cNE140

澪「…唯、お前って本当にムギが好きなのか?」

唯「そ…それはその…大好きだよ」

澪「…そうか、ならこのタイトルはやめろ。これはムギに対する冒涜だ」

唯「えぇ!?そんなぁ…」

澪「いいか唯、詩っていうのはその人の好きなところを書いたりするんだ。
  私のふわふわ時間もそうだからな」

唯「えっ!?澪ちゃんの好きな人って誰!?」

澪「あっ…それは…言えない」

唯「え~?なんで~?」

澪「なんでもだっ!大体唯はムギのどこを好きになったんだよ?」



99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 03:38:56.15 ID:Br5cNE140

唯「ん~っと…ムギちゃんの好きなところはねぇ…」

唯「好きなところは…」

…あれ?どこだろう?
その前にどうして、いつから好きになったんだっけ?

唯「好きな…ところは…」

どうしてだろう、こんなにも好きなのに。
なのに好きな理由が見付からない。
…なら、この気持ちは嘘なの?

唯「……」

澪「唯?」

唯「…わからない」



100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 03:43:20.56 ID:Br5cNE140

唯「分からないよ…どうして私はムギちゃんが好きなんだろう?」

澪「唯…」

唯「どうしよう澪ちゃん…この気持ちが嘘になっちゃうよ…」

唯「こんなにも好きなのに…理由が見付からない…」

澪「大丈夫だよ。好きになるっていうのはそうことなんだ」

唯「え…?よくわかんないよ…」



102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 03:53:31.67 ID:Br5cNE140

澪「唯はムギが好きな気持ちに嘘はないんだろ?」

唯「…わからない」

澪「嘘じゃないよ。それだけ悩んでるんだからさ」

唯「でも…理由が…」

澪「理由なんていいじゃないか、気が付いたら好きになってたでさ」

唯「でも、それじゃ詩が書けないよ…」

澪「…詩を書くのってさ、簡単なことじゃないんだ」

澪「好きな人の好きな部分を探す、それはちゃんと自分の気持ちに向き合うってことなんだ」

唯「……」

澪「それでさ、書きあがる度に相手の好きな部分が見付かって、もっと好きになる」

澪「そこが、詩を書く醍醐味だと私は思ってるよ。だから唯もこれから探せばいいんだよ」

唯「澪ちゃん…ありがとう」



103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 04:00:07.81 ID:Br5cNE140

澪「いいんだよ、それで唯がムギのことをもっと好きになってくれればさ」

唯「うん!本当にありがとう澪ちゃん、なんだか心が軽くなったよ」

澪「そ、そうか…なんだか照れくさいな///」

澪ちゃんは顔を真っ赤にして私に微笑みかけてくれた。
私はこの高校で、この部に入部して本当によかった。
だって、こんな素敵な友達なかなかいないよ。

澪「? なに笑ってるんだ?」

唯「ん~?なんでもないよ。ただやる気が出てきたなぁって!」

澪「おっ、そうか!なら今いったことを生かしてなんか書いてみろよ」

唯「うん!」



104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 04:08:00.02 ID:Br5cNE140

私は澪ちゃんが言っていたことを軸に、新たに詩を書いた。
今回のことで分かったことがある。それはムギちゃんの好きなところ。
私はムギちゃんの優しいところも、おっとりしたところも、沢庵なところも全部大好きなんだ!
ありがとう澪ちゃん。私、自分の気持ちに向き合えた気がするよ。

唯「…できた!」

澪「おっどれどれ、見せてみろよ」

唯「へっへ~ん!今度は自信作だよ!」

澪「まずはタイトルからだな…」

澪「……」

澪「Dear…My…Takuan…?」



108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 04:14:11.36 ID:Br5cNE140

唯「ど、どうかな…?」

澪「…だめだ」

唯「えぇ!?まだ詩も見てないのに!?」

澪「いや…沢庵からまず離れろよ」

唯「だって、私はムギちゃんの沢庵も含めた全部が好きなんだもん!」

澪「…言っておくが、あれは眉毛だぞ」

唯「…え?」

澪「え?」



111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 04:20:33.01 ID:Br5cNE140

それから澪ちゃんの指摘もあって、何とか詩は完成した。
確かに新しい詩は沢庵からコンセプトは離れているけど、私は何か物足りないと思う。

澪『いいか!とにかく沢庵はダメだ!それじゃムギが不快な思いをしてしまうかもしれない』

唯『そうかな…?』

澪『そうなの!』

それでもムギちゃんに嫌われるよりはずっとましだ。
澪ちゃんは三年間も作詞してきたんだから、ここは澪ちゃんの言う通りにしよう。

そして数日後、この詩をムギちゃんに渡す日がついに来た。



112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 04:29:20.91 ID:Br5cNE140

紬「こんにちわー、あら?唯ちゃんだけ?」

唯「う、うんそうだよ!今日はみんなこれないってさ」

紬「そうなの…残念ね」

唯「あはは…そうだね」

紬「なら私達も帰りましょうか」

唯「ま…まって!これ、受け取ってください!」

紬「これは…手紙?あらあら♪もしかして私にラブレター?」

唯「…あ」

…確かにこれはラブレターだ。
なんていったって私のムギちゃんへの対する思いがその紙に凝縮されているんだから。
だからここでラブレターだって言ってしまえばいい。それが一番の近道なのに…

唯「ち…違うよ!とにかく読んでみて!」

私は遠回りの道を選んでしまった。



114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 04:37:38.84 ID:Br5cNE140

紬「そう…」

唯「え…?」

一瞬ムギちゃんが悲しそうな顔をした。
もしかして冗談じゃなく期待してたのかな?

紬「なら読むわね、どれどれ…」

唯「あ…うん…」

紬「Dear My Keys?これ…詩?」

唯「私が作ったんだ、読んでみてよ」

紬「え?えぇ」



117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 04:52:22.93 ID:Br5cNE140

この詩は私の好きな人を歌った詩。
ムギちゃんのキーボードはその優しい音で全てを包み込む。
あずにゃんのギターも、澪ちゃんのベースも、りっちゃんのドラムも、
もちろん私のギターも、この音に包まれるから演奏の輝きが増すんだ。
だから私達は今でも部活を続けている。みんながその音に魅了されているから。
そう、それはまるで、鍵盤の魔法。~Dear My Keys~

唯「…ていう意味の詩なんだけど…」

紬「……」

唯「…どう、かな?」

紬「……」

ムギちゃんは急に顔を伏せて黙ってしまった。
もしかして、今回の作戦も失敗に終わるのかな?
…せっかく一生懸命書いたのに。

唯「……」

紬「…素晴らしいわ、感動しちゃった」



119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 05:05:21.07 ID:Br5cNE140

唯「…え?本当!?」

ムギちゃんと一緒に俯いていた私が顔をあげると、
そこには本当に嬉しそうな顔をしたムギちゃんが、私を見て微笑んでいた。
…そうだ、この顔だ。私はこの笑顔に徐々に惹かれていったんだっけ。

紬「えぇ、本当よ。すごく嬉しい」

紬「こんなに友達として私を想っていてくれたなんて♪」

唯「え…?ち、ちが…」

違う。私は友達以上にムギちゃんのことが好きなんだよ。
でも、もしここで告白したらどうなっちゃうのかな?もし振られちゃったら?
肝心な時に私の頭はいい方向に働いてくれない。
そのせいで勇気が出せない。。

紬「私も唯ちゃんのこと大好きよ♪」

私はもっと好きなんだよ?この気持ちを伝えたい…こんなにも近くに近道があるのに…
もう遠回りは嫌だ。ここで勇気を出さなきゃ!全てを伝えるんだ!


唯「わ…私も、ムギちゃんが大好き!!!」



121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 05:15:45.76 ID:Br5cNE140

紬「え…?」

思わず叫んでしまった。ムギちゃんがびっくりしている。
でも、何か詰まっていたものが全部吐き出された様な、そんな気分だ。
後は私の素直な気持ちを相手に流し込むだけ。悩みや葛藤なんて全て吐き出してしまったから。

唯「私はね…ムギちゃんが大好きなんだよ」

紬「えぇ、分かっているわよ」

唯「違うよ!ムギちゃんの好きとは違う!私の好きは…」

ここまで来たんだ、ためらう必要はない。

唯「愛してるの方なの!!!」



124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 05:26:08.28 ID:Br5cNE140

唯「軽音部に入部した日、ムギちゃんは私に微笑んでくれた。軽音部へようこそって…」

紬「……」

唯「私さ、その笑顔を初めて見た時、なんかいいなぁって思ったんだ」

紬「……」

唯「それからその笑顔を見るたびに、
  いや、ムギちゃんと同じ時間を過ごすごとに、徐々に好きになっていった」

紬「……」

唯「…最初はさ、告白する気なんてなかったんだ。
  この関係を壊したくなかったから。一生このままでいいって思ってた」

紬「……」

唯「でもそれは無理だった。私はムギちゃんが好き!もっと一緒に二人でいたい!だから…!」

紬「…もういいわ」

唯「…え?」

紬「それ以上は言わないで…お願い」



128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 05:37:59.96 ID:Br5cNE140

紬「唯ちゃんの気持ちは分かったから…だから、もういい」

唯「で、でも…!」

紬「もういいの!!!」

唯「…!」

ムギちゃんの怒ったところ、初めて見た…
どうして…?なにがいけなかったんだろう…?
どうしてムギちゃんを怒らせちゃったのかな…?

紬「…怒鳴ってしまってごめんなさい」

唯「……」

謝るのはこっちの方なのに…それなのに、何も喋ることができない。
これ以上喋るとムギちゃんに嫌われるから?でも、もう嫌われてしまった…

唯「…ごめんなさい」ポロポロ

私の目から熱い雫が零れる。
一度出た涙は留まることを知らなくて…

唯「ごめんなさい!!!もっと謝るからぁ!だから嫌いにならないでぇ!」ポロポロ

気づけば私はひどく惨めに泣いていた。
ムギちゃんはこんな私をどう思うだろう。憐れんでいるのだろうか。



131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/05(土) 05:54:28.61 ID:Br5cNE140

紬「……」

ムギちゃんが私をじっと見つめている。やっぱりその顔は、今の私を憐れんでいるようで…
それでも私はムギちゃんに泣きながら謝るのを止めない。

唯「ごめんなさい…!ごめんなさい…!」ポロポロ

紬「…詩、ありがとう。大切にさせてもらうわ」

唯「ごめんなさい…!許してぇ…!」ポロポロ

紬「…それじゃ」

カツン…カツン…

ムギちゃんが一歩ずつ、ドアの方へ向って歩いていく。その背中に、私はまだ謝り続けていた。
こうすることしかできない自分が憎い。他にやるべきことだっていっぱいある筈なのに…なのに…

唯「まってぇ!行かないでよぉ!」ポロポロ

泣いてばかりで自分から動こうとしない…、まるでだだをこねる子供みたいだ。
…そしてムギちゃんはドアの前に立つと、一度こちらを振り返り、

紬「…さようなら」

がちゃっ ばたん

お別れを告げた。

私はこの日、振られてしまった。



234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:21:35.83 ID:WmLcP/ww0

どれだけ、私は泣いていたのだろう。
気が付けば辺りは何も見えないほどに暗くなっていた。

カツン…カツン…

誰かの足音が聞こえる。
その足音は徐々に大きくなって、そして…

がちゃっ

唯「…誰?」

「先輩…」

唯「あずにゃん?」

梓「はい、そうです」



236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:28:43.08 ID:WmLcP/ww0

唯「…あずにゃん、私ね、ムギちゃんに振られちゃった」

梓「……」

唯「いや、嫌われちゃったよ…」

梓[……」

唯「頑張って告白したんだけどな…
  やっぱり女の子が女の子を好きになるのって気持ち悪いよね…」

梓「……」

唯「あはは…最初からわかっていたことなのに…」

梓「……」

唯「こんなことになるなら…頑張らなければよかった…!」グスッ

梓「…本当にそう思うんですか?」

唯「え…?」



242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 00:44:46.77 ID:WmLcP/ww0

梓「私はそうは思いません」

唯「どうして…?」

梓「だって、その気持ちは確かにムギ先輩に届いてるはずですから」

唯「そんな訳ないよ…だって、ムギちゃんは…」

唯「ムギちゃんは…」ポロ

せっかく治まった涙がまた溢れだす。
さっきのことを思い出すだけで、もう止まらない。

唯「私のことが嫌いだってぇ…!」ポロポロ

梓「先輩…」

何かふわっとした暖かい感触、それが私の体を包み込んだ。

梓「……」

あずにゃんは私を優しく抱きしめてくれていた。
後輩の前でみっともない姿は見せられない。それなのに…

唯「うわああああん!あずにゃああん!」

私はまた、みっともなく泣いてしまった。



245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:02:16.56 ID:WmLcP/ww0

梓「よしよし…」

あずにゃんはまるで子供をあやす様に私の頭を撫でる。
私はあずにゃんの優しさが嬉しいのと、
まるで本当に子供の様な私があまりにも情けなくて、更に涙が溢れ出した。

唯「うわああああん!」ポロポロ

あずにゃんの制服を掴む手に、さらに力が入る。
そして肩は私の涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。

しばらくその状態が続いていた。
一体どれだけ時間がたったんだろう。私は大分落ち着いていて、涙も止まっていた。

梓「…落ち着きましたか?」

唯「…うん、ありがとうあずにゃん」

あずにゃんから体を離す。…少し落ち着いて気づいたが、
きっと今のあずにゃんの制服はしわしわのぐちゃぐちゃなんだろうな。
後でクリーニング代払わなくちゃ…。



249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:14:11.70 ID:WmLcP/ww0

唯「あずにゃんのお陰で少し楽になったよ。…それでもまだ思い出すと泣いちゃいそうだけどね」ニコッ

私は精一杯笑った。暗がりのせいでこの笑顔は見えないかもしれないけど、
それでもこれは、あずにゃんにこれ以上心配をかけないようにと思った私なりの気づかいだ。

梓「ムギ先輩のこと諦めてしまうんですか?」

唯「うん、振られちゃったしね…」

梓「確かにそうかもしれませんが、私はまだ諦めるのは早いと思います」

唯「え…?どうしてそう思うの…?」

梓「…だって、本当に唯先輩が嫌いなら、なぜムギ先輩は泣いていたんでしょうね?」



252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:24:25.54 ID:WmLcP/ww0

唯「ムギちゃんが…泣いてた…?」

梓「はい、実はさっき…」



『ぐすっ…唯ちゃん…ひっぐ…ごめんなさい…!』

梓『? ムギ先輩?』

紬『…え?あ、梓ちゃん!?』

梓『…泣いていたんですか?』

紬『な、泣いてなんか…!』ゴシゴシ

梓『バレバレですよ…もしかして、唯先輩のことで?』

紬『…!』



254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:30:21.37 ID:WmLcP/ww0

梓『…図星ですか。それで唯先輩はなんて?』

紬『…私のことが…好きだって』

梓『それで、ムギ先輩はなんて?』

紬『唯ちゃんに酷いこといっちゃった…最低よね私。もう前みたいに仲良くできないわ…』

紬『みんなと仲良しでいたいから…この関係を壊したくないから…』

紬『私はずっと自分の想いを抑えてきたのに…自分で壊しちゃった…』

梓『ムギ先輩の想い…?』

梓『…!そ、それってまさか!?』

紬『…梓ちゃんはなんでもお見通しね、そう…』

紬『私は…唯ちゃんのことが…』



256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:43:32.95 ID:WmLcP/ww0

唯「はぁ…はぁ…!」

気が付けば私は走っていた。
あずにゃんはついさっきまでムギちゃんと学校で話してたんだ。なら今なら…
今ならまだ間に合う!

唯「はぁ…はぁ…いた…!」

しばらく通学路を走っていると、遠くの方に金髪の女の子が歩いているのが見えた。

唯「ムギちゃーーん!!!」

私が叫んでも、その人はこちらを振り返らない。
もしかしたら人違いじゃ?そんな訳ない!こんなにも好きな人の姿を忘れたりなんかしないんだから!
私は更にスピードを上げ、その人のすぐ近くまで辿り着いた。
今度はちゃんと聞こえるように、私だってわかるように、大きな声でその人の名を呼んだ。

唯「ムギちゃん!!!」

「…!唯ちゃん…」



260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 01:56:45.47 ID:WmLcP/ww0

紬「…どうしたの?」

唯「…ねぇムギちゃん、もう一度言うね」

唯「私はムギちゃんが好き、愛してるよ」

紬「…!その件はもう終わった筈よ…」

唯「まだだよ、まだ終わってない…」

紬「どういう意味…?」



264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 02:08:13.82 ID:WmLcP/ww0

唯「あの時の告白、最後まで言わせてほしいんだ」

紬「…ダメよ」

唯「軽音部に入部した日、ムギちゃんは私に微笑んでくれた。軽音部へようこそって…」

紬「…やめて」

唯「私さ、その笑顔を初めて見た時、なんかいいなぁって思ったんだ」

紬「やめてって言ってるでしょ…」

唯「それからその笑顔を見るたびに、
  いや、ムギちゃんと同じ時間を過ごすごとに、徐々に好きになっていった」

紬「お願いだから…」ポロ

唯「…最初はさ、告白する気なんてなかったんだ。
  この関係を壊したくなかったから。一生このままでいいって思ってた」

紬「やめてよ…」 ポロポロ

唯「でもそれは無理だった。私はムギちゃんが好き!もっと一緒に二人でいたい!だから…!」

唯「私と付き合って下さい!!!」

紬「……ありがとう唯ちゃん…すごく嬉しい…」ポロポロ



268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 02:20:40.14 ID:WmLcP/ww0

紬「でも…ごめんなさい…」

唯「……」

紬「唯ちゃんのことは好きよ、愛してる…でもダメなの…」

唯「みんなとの関係が壊れちゃうから…?」

紬「…えぇ、そうよ。私はみんなともずっと仲良しでいたい…
  だって、初めて私にできた大切な仲間なんだもん…」

唯「大丈夫だよ、こんなことくらいで私達軽音部の絆は壊れないよ」

「そうだぞ!ムギ、お前はこの三年間私達の何を見てきたんだ!?」

「お、おい律!隠れてろって…!」

唯紬「…え?」



270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 02:34:56.00 ID:WmLcP/ww0

唯「りっちゃん…澪ちゃん…いつからそこに?」

紬「それに、どうしてここに…?」

澪「ほら、ばれたじゃないか!この馬鹿律!」ゴツン!

律「いたっ!だ、だってムギがあまりにも水臭いこと言うからさ…」

律「…なぁムギ、なんでそんな風に思うんだよ?本当に私達の絆が壊れると思うか?」

紬「それは…」

律「この三年間本当に何を見てきたんだ?」

紬「…ごめんなさい」

律「…はぁ、私達を良く見てみろよ。ほら、梓も出てこい」

「…!」

唯「あずにゃん…?もしかしてみんなを集めたのって…」

梓「…私です」



278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 02:54:26.23 ID:WmLcP/ww0

律「とにかく!いいから来いって!」

梓「ちょ、ちょっと…引っ張らないで下さい!」

律「…ほら、私達を良く見てみろよ」

紬「あ…」

りっちゃん達はとてもまっすぐな瞳でムギちゃんを見つめていた。
まるで私達を信じろよ!って言ってるみたい。いや、そう言ってるんだ。
…本当にいい仲間にあえて良かった。
そう思いながら私は、りっちゃん達と同じような瞳でムギちゃんを見つめた。

律「…もし、これでもわからないんならこの三年分を今、その眼に焼きつけろ」

紬「…わかったわ、みんなの気持ちが…」ポロポロ

りっちゃん達を見つめ返すムギちゃんのその眼からは涙が流れていた。



279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 03:05:46.04 ID:WmLcP/ww0

律「ムギと唯が付き合ったって私達はいつも通りだよ」

澪「だから自分の正直な気持ちに自信を持てよ」

梓「そうですよ、後ろめたさを感じる必要なんてありません」

紬「ありがとうみんな…本当にありがとう…!」ポロポロ

この日、本当の意味で私達の絆は確かなものになった。
私達は本当に仲間なんだ。えへへ、仲間っていいなぁ。

紬「…唯ちゃん、さっきの返事だけど、訂正するわね」

唯「え?」

紬「こんな私でよければ、よろしくお願いします♪」



281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 03:15:31.85 ID:WmLcP/ww0

梓「先輩!良かったですね!」

唯「……」

梓「先輩?」

…今のは聞き間違えじゃないよね?私は本当にムギちゃんと付き合えるの?
夢じゃないんだよね?試しに私は自分のほっぺをつねってみた。

唯「……」ギュー

唯「…痛い」

なら夢じゃないんだ…
良かった、本当に…良かった…

唯「…うわあああああん!!!」ポロポロ

律「お、おい!どうしてそこで泣くんだよ!?」

唯「うわああああん!良かったよおおおお!」ポロポロ

私は今日だけでどれだけの涙を流したんだろう。
でもこれはさっきまでの悲しい涙じゃない、嬉しい涙だからもっと流してもいいよね。



284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 03:28:35.29 ID:WmLcP/ww0

紬「ふふ なんだか私も嬉しくてまた…」ぐすっ

唯「ムギちゃあああん!二人で幸せになろうね!」ポロポロ

紬「えぇ♪必ずなりましょうね」

澪「…よかったな、唯の恋がうまくいって」

律「あぁ、本当に応援した甲斐があったよ」

梓「そうですね…二人を見てるとそう思えます」

律「…そうだ!澪、カメラ!」

澪「え…?あ、あぁそうだな!それじゃ…」

カシャッ!



291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 03:47:50.44 ID:WmLcP/ww0




唯「……」

…何故だろう?前にこの写真を見た時はいい思い出なんてなかったのに…
今、改めて見るととても素敵な写真に見える。それだけ私が年をとったからだろうか?

唯「…違う」

違う、私は忘れていたんだ。この写真にはあの時の努力が写りこんでいるじゃないか。
この恋の結果しか今まで私の眼には映っていなかった。
この恋の裏でどれだけの努力を仲間としてきたか、それを忘れていたんだ。
結果が全てじゃないのに…

この頃の私は、とびきり素敵な恋をしたと思う。

唯「…ムギちゃん、元気かな?」



294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 03:59:37.12 ID:WmLcP/ww0

そこからのアルバムの写真は、私とムギちゃんのラブラブな写真が大多数を占めていた。
さっきまでは結果に苦しんでいたのに、今では別の意味で胸が苦しい。

唯「…戻りたい」

あの頃に、もう一度だけでも…
でも、思い出の中の私は違う私で、今の私ではない。
もしこの頃に今の私が戻れたなら、昔の仲間や私はなんていうのかな?
こんなつまらない大人になった私を「仲間」だと思ってくれるのだろうか。

そう考えるだけで、私の胸は苦しかった。



295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 04:11:30.42 ID:WmLcP/ww0

更にぱらぱらとページをめくっていくと、とうとう最後の写真にたどり着いてしまった。

そこには、「卒業」と書かれた校門の前で、笑顔でピースをする部員と幼馴染と妹が写っていた。

唯「和ちゃん…懐かしいなぁ」

和ちゃんは赤い眼鏡をかけた子だ。
幼稚園の時からずっと幼馴染で、高校を卒業してとうとう離れ離れになってしまった。

唯「…みんな元気なのかな?」

この写真と変わらない笑顔で今もいるのだろうか。
変わってしまったのは私だけだと思いたい。
私には、もうこの写真のように笑うことなんてできないから。



296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 04:17:09.66 ID:WmLcP/ww0




律「とうとう今日で私達も卒業だな」

唯「そうだね…」

梓「寂しくなります…」

澪「そうだな…」

今日は私達の卒業式。
楽しかった高校生活の三年間も、今日で終わりを告げる。
私達が少し落ち込んでいると、ムギちゃんが口を開いた。

紬「ねぇ今日の夜、家で卒業パーティしない?」



299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 04:27:04.35 ID:WmLcP/ww0

律「お!いいねぇ!」

澪「楽しそうだな!」

唯「いいね!やろうやろう!」

梓「あのぅ…私も行っていいですか…?」

紬「もちろん♪あと和ちゃんと憂ちゃんも誘いましょう!」

唯「やったー!ムギちゃん大好き!」ぎゅぅ

紬「あらあら♪唯ちゃんは甘えんぼうね♪」ナデナデ

律澪梓「……」

さわ子「私も行くから」

律「…!さ、さわちゃんいつの間に…?」

さわ子「…最初からいたわよ」

澪「なんか…ごめんなさい」



302 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 04:32:22.40 ID:WmLcP/ww0

律「なぁみんな、最後に一曲だけ演奏しないか?」

唯「そうだね、これが高校生としての最後の演奏だもんね」

律「…そうだな」

唯「?」

私は少しだけりっちゃんが落ち込んでるように見えた。
こういう感情とは無縁のイメージなのに…
少し意外。

律「…よし!ワン、ツー、スリー、フォー!」



303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 04:39:11.26 ID:WmLcP/ww0

これが桜高軽音部としての最後の演奏。
心なしか、みんないつもよりも演奏に気合が入っているように思えた。
でも、私はいつも通りにギターを弾いていた。
だって、これが最後だなんて実感がなかったから、
またいつもの様にみんなで好きな時に、HTTとして演奏ができると思っていたから。
だから私はあまり寂しくなんかなかった。

でも、この演奏が私達、HTTにとって最後の演奏になる。



306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 04:45:58.25 ID:WmLcP/ww0

ジャーン!

澪「よし!最後も完ぺきだったな!」

紬「えぇ、いつもより演奏に気合が入っていたわね♪」

唯「私はいつも通りかなぁ」

梓「…でも、これで最後だと思うとなんだか寂しいですね」

澪「まぁ、な…でもそれは桜高軽音部としての最後だろ?」

唯「そうだよ、HTTは永久に不滅です!」

梓「…そうですよね!またいつか、絶対一緒に演奏しましょうね!」

唯「うん!」

律「……」

澪「どうした律、さっきから元気ないな」

律「…私、卒業しない」



308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 05:01:15.81 ID:WmLcP/ww0

澪「…は?お前何言って…」

律「だって!!卒業したら毎日みんなと会えなくなるんだぜ!?」

りっちゃんが急に大きな声を出した。
それに私達は少し驚き、言葉を失った。
いや、それだけのせいじゃないだろう。みんな寂しいのを考えないようにしてたんだ。
そう思ってしまえば最後の部活が寂しいまま終わってしまうから。

みんなが俯いて黙っていると、澪ちゃんが口を開いた。

澪「たしかにそうだろうな、私と律以外はみんなばらばらの大学に行くんだから」

律「だからだよ…私大学なんて行きたくない!みんなとずっと一緒にいたいよ!」

律「私はこのメンバーだからここまでこれたんだ!このメンバーだから毎日笑っていられたんだよ!」

律「だからさ…みんなと毎日会えなくなるなんて嫌だよ…もっとずっと一緒にいたいよぉ…!」ポロポロ



314 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 05:12:23.84 ID:WmLcP/ww0

私はりっちゃんが泣くところを初めて見た。
いつもは元気いっぱいで、涙とは無縁の人だと思っていたけど、それは私の間違いだった。
りっちゃんはこんなにも寂しがりやで、とても優しい人。
そんなりっちゃんが部長だったから、この軽音部はここまで続けてこれたんだと今更ながらに思った。

澪「…馬鹿だな律は、大馬鹿だよ」

律「うぅ…」ポロポロ

澪「みんな寂しいに決まってるだろ…こんなにも楽しくて…」グスッ

澪「素晴らしい仲間たちと離れなくちゃいけないんだから…!」ポロポロ

紬「私も本当は…寂しい…!」ポロポロ

梓「私だって…これから一人でどうすればいいか…!」ポロポロ

澪ちゃんにつられてみんなも泣きだす。
でも、私は涙を泣かすことはなかった。



318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 05:21:09.09 ID:WmLcP/ww0

唯「大丈夫だよみんな、寂しくなったらすぐにまた会えばいいんだよ」

澪「…そうだな、唯は前向きだな」

唯「えへへ…そうかな?」

澪「唯の言う通りだ律、寂しくなったらまた一緒に演奏しよう」

紬「そうです、またすぐに会えますから♪」

梓「そうですね、ここは唯先輩を見習わなきゃです」

律「…うん、そうだよな!みんなごめん!私としたことが少し悲観的になってたよ!」

唯「それでこそいつものりっちゃんだよ!」

澪「ほら、顔を拭けよ。そろそろ式に出るぞ」

律「おう!…みんな!本当にありがとう!私達はずっと仲間だ!」



319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 05:30:04.95 ID:WmLcP/ww0

そして私達は、最後の学校行事の卒業式にでた。
式の最中、周りの人達はみんな別れを惜しんで泣いていたけど、私には泣く理由がわからない。
どうして寂しくなったらすぐに会おうと思わないんだろう。

校長「平沢唯さん」

唯「はい」

名前を呼ばれて卒業証書を受け取る間も、
私は今晩のムギちゃんの家のパーティーについて考えていた。
きっとすごく美味しい料理が食べれるんだろうなぁ…今からすごく楽しみ…



323 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 05:40:59.14 ID:WmLcP/ww0

さわ子「あなた達が今日で卒業だなんて…なんだか信じられないわ」

律「さわちゃんにはこの三年間、本当にお世話になりました。どうもありがとうございました!」

一同「どうもありがとうございました!」

さわ子「いいのよ、色々あったけどなんだかんだで私も楽しかったわ。こちらこそ本当にありがとう」

唯「さわちゃん、寂しくなったらまた遊びに来ていい?」

さわ子「えぇ、いいわよ。いつでも歓迎するわ」

唯「えへへ…よかった♪」

さわ子「さぁあなた達、校門の前に並びなさい。最後の思い出の一枚を撮ってあげるわ」

紬「唯ちゃん、一緒に写りましょう」

梓「わ、私も…!」

唯「うん、いいよ!」

さわ子「…それじゃ撮るわよー!1+1はー?」

一同「にー!」(古いな…)

カシャッ!



325 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 05:55:00.14 ID:WmLcP/ww0





唯「……」

この時の私は、寂しければみんなにすぐにでも会えるって本当に思っていた。
でも、それはあの時の私が子供だったからそう思えただけで、実際には寂しい時に会えたりなんかしない。
それは、みんなにはみんなの時間があって、高校の頃みたいに同じ時間を共有出来ないから。

唯「寂しいよ…」

今の私にはいくら寂しくてもみんなに会えないのは分かっている。
でもあの頃の無垢で純粋な私なら、今でもそう信じ続けているんだろう。

昔の自分がすごく羨ましい。



329 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 06:17:38.43 ID:WmLcP/ww0

アルバムも全部見終えてしまった。
これを全部見終えた後に残ったのは、昔に戻りたいという思いと、今の自分に対する劣等感だけ。
こんなにも胸が苦しくなるのなら、最初から見なければよかった。

唯「はぁ…掃除の続きでもしよう…」

私がアルバムを閉じようとすると、最後のページの裏にもう一枚のページがあることに気が付いた。

唯「…?なんだろう…?」

よく見ると、その裏のページはアルバムの見返しの部分に軽くのりづけされているのがわかる。
私はなんとなく、その剥がれかかったページを開いてみた。

そこには

唯「…!!!」



330 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 06:27:15.45 ID:WmLcP/ww0




唯「うわぁ~、すごく大きい家だね」

和「初めて来たけど、これは…」

憂「本当に私まで来てよかったのかな…?」

卒業式が終わった後、私達は夜まで一旦解散となり、
それから私達三人は言われた通りの時間にムギちゃんの家の前まで来ていた。

斎藤「ようこそお越しくださいました。
   私は琴吹家で執事を務めさせていただいてる、斎藤というものです」

和「ど…どうも…今日は御呼ばれして非常に光栄です」

唯「羊?」

憂「お姉ちゃんは黙ってて…!」



331 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 06:37:14.44 ID:WmLcP/ww0

ばたん!

家のドアが勢い良く開かれた。
そこから現れたのは…

紬「斎藤!すぐに通しなさいって言ったでしょ!」

斎藤「申し訳御座いませんお嬢様」

紬「ごめんなさい三人とも…さぁ、どうぞ上がって♪」

唯「わぁ!お邪魔しまーす!」

憂「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!」

和「今日はどうもありがとう、私まで呼んでもらえるなんて」

紬「いいのよ♪人数は多い方が楽しいもの♪」



452 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 23:30:07.97 ID:WmLcP/ww0

唯「うわぁ…すごいや…!」

家の中に入った私は驚いた。
だって、大きなテーブルの上には見たこともないような料理、
天井にはテレビでしか見たこともないようなシャンデリア。
今までムギちゃんの別荘には何度か行ったけど、そのどれよりも豪華な家だったから。

憂「お姉ちゃん待っ…!」

憂「うわぁ…すごい…」

和「素晴らしいわ…予想以上ね…」

どうやら感動しているのは私だけじゃないみたい。
二人とも開いた口が塞がらないようだ。



455 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/06(日) 23:46:12.61 ID:WmLcP/ww0

「おい三人とも!遅いぞ!」

唯「ん?」

私が声のした方に振り向くと、そこにはりっちゃんと澪ちゃんが立っていた。

唯「あ、りっちゃん!澪ちゃん!」

和「あなた達随分と早いのね」

澪「だって…馬鹿律が早く行こうって…」

和「呆れた…律は集合時間も守れないの?」キッ

律「うっ…だ、だって…待ち切れなかったんだもん…///」

和ちゃんに軽く睨まれたりっちゃんが、顔を少し赤くさせてもじもじしていた。
なんだか今日のりっちゃんは可愛いなぁ。これがギャップ萌えって奴かな?



558 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/07(月) 17:08:43.02 ID:8cAFafUt0

紬「まぁまぁ♪みんな集まったことだしそろそろ…」

みんな?誰か一人足りないような…
私がそんなことを考えてると玄関から声が聞こえた。

「まてよ」

…あぁ、そうだ。大事な人を一人忘れていた。

「てめぇら…お世話になった恩師を忘れるとはどういうことだよ。あぁ?」

唯「さ、さわちゃん…」

律「べ、別に忘れてなんか…」

さわ子「嘘つけよ!今全員集まったから…とか言ってたろうが!」

紬「そ、それは…」

さわ子「どうせ私は…どうせ私は…!」グスッ

唯「さ、さわちゃん泣かないで…」



559 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/07(月) 17:21:58.11 ID:8cAFafUt0

紬「美味しい料理もありますし…ね?」

さわ子「そうね、早く食べましょう」

澪「……」

律「立ち直り早いなぁ…」

憂「あれ?梓ちゃんは?」

紬「あぁ、梓ちゃんなら少し遅れてくるみたい。ね、唯ちゃん」

唯「うん!」

憂「? ふーん」



562 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/07(月) 17:38:49.15 ID:8cAFafUt0

紬「それじゃそろそろ始めましょう♪」

澪「そうだな。律、部長のお前が始めろよ」

律「OK!それじゃみんな…」

律「卒業おめでとー!!!」

一同「おめでとー!!!」

チーン!

りっちゃんの掛け声と同時に、みんなが乾杯をした。
みんなはいつも通りの笑顔で、やっぱり私には寂しいなんて感情は湧かなかった。
だって、私達はいつまでもずっと仲間なんだから…

でも、この日を最後に私は、憂以外のこのメンバーと会うことはなかった。




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唯「やや!」#前編
[ 2011/07/23 21:19 ] 非日常系 | | CM(0)

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