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唯「私の妹がこんなに可愛いわけがない」#10 【非日常系】


唯「私の妹がこんなに可愛いわけがない」 より
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1287330010/




482 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 21:07:25.41 ID:DhI9ASk+0

我が家の三階。
一人の部屋で、ブツブツと何かを呟く声がする。

憂「ゴンザレス~ふふっ」

「……」

至福の気持ちをこれでもかと表して、跳ねるように喋るのは私の妹。
今、ベッドの上で亀のぬいぐるみを抱きしめて、信じられないくらいの笑顔を見せる。

憂「今日はねぇー、純ちゃんに玉子焼き食べてもらったんだよー」

「……」

気付かれないように、扉の隙間からこっそり覗くのは私。

憂「純ちゃんなんて言ってくれたと思うー?」

「……」

私の目の前には、依然として現実を疑う光景が広がる。

憂「『おいしい!』だって~ぇ、えへへー」

「……まさか」

私は呟くように声を出す。

まさか、まさかあの憂が。
ぬいぐるみに「ゴンザレス」と名づけ、それに向かって幸せそうに話しかけている。





484 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 21:20:18.77 ID:DhI9ASk+0

「うーい、ちゅー」

「うん」

憂は私のしてほしいことはなんでもしてくれます。

抱き締めたいと言えば、すぐに来てくれるし、キスをしたいと言えば目を閉じてくれるし、
きっと、私が体の関係を迫っても断ることはないのでしょう。

「お姉ちゃんからしてね」

「うん、わかってるよ」

ベッドに腰掛け、寄り添うように顔を合わせる私たち。
私の目に映るのは、たった一人、私が恋した女の子。

「ん……」

ゆっくりと唇を重ねると、温かい憂の感触が広がります。

もう何度目かわからない、未だに胸が脈打つ憂とのキス。

私は今感じる幸福だけに身を任せ、憂に倣って目を瞑ります。



485 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 21:31:08.95 ID:DhI9ASk+0

~~

いつの日だったか、初めて私が憂にキスをした時。
強引に唇を奪った私を払い除け、憂は次第に目を赤くしていきました。

「お姉ちゃんに…そんなことしてほしくなかった……」

そんな言葉を漏らしながら。

その時の私は、あまりの衝撃に吐き気を催し、立っていられないほどでした。。
ただ、憂のその台詞が激しく心を傷つけて、
信じられないほどの後悔が襲ったのが記憶に残っています。

憂は、それから涙を流すばかりで、その光景だけが鮮明に思い出されます。


私は、憂のことが好きでした。

その、ずっとずっと前から。

爆発しそうな気持ちに負けて、私は恣に憂に接吻したのです。


嗚咽を上げる憂の背中を撫でてあげようと近づいたら、
憂は今までに見せたことのない敵意を込めた目で私を睨みました。

「こないで……」

「う、うい……」

漸く己の愚かさに気づいた私は、謝罪の言葉も見つからずそこに立ち尽くすだけでした。



486 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 21:39:19.52 ID:DhI9ASk+0

~~

それから数日、憂は家にいるときは部屋に閉じこもったまま出てきませんでした。
もちろん私などとは声も交わさず、私は底のない罪悪感に苛まれていくばかり。


そんな時、唐突に部屋の扉が叩かれました。

「お姉ちゃん……」

「へっ?」

「お話、あるから……入るね」

「う、うん」

いきなりの出来事に体を鋼鉄のように固まらせた私は、扉を見たまま動けずにいました。

「……」

ゆっくりと入ってきたのは、目を真っ赤にして髪も纏まっていない憂。
掛ける言葉も見つからないで、ただ私は目を丸くしてしまいました。

「この間の、こと」

「え、えと……」

「…どうしてあんなことしたの?」

それはまるで、問う相手が見つからないような口調で、私は言葉につまってました。



488 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 21:48:47.36 ID:DhI9ASk+0

「あの時のお姉ちゃん、とっても怖かった」

「ご、ごめんなさい!」

やっと私の口から出たのは、どうにか謝罪の言葉でした。

「お姉ちゃんに……」

言いかけて、憂はゆっくり呼吸を置きます。

「お姉ちゃんにあんなことされて、とっても悲しかった」

辛そうに告げられる言葉は、私より憂の心を苦しめているのが分かりました。
それでも私は、自分が泣きたい気持ちを抑えられなくて依然として無口のまま。

「……私ね」

少しでも元気に振舞おうとする憂を見ていられませんでした。

「私、お姉ちゃんのこと好きだよ」

だから、そんな言葉もこの時は耳を通り抜けていきました。

「でも、今は分からない」

聞くことしか出来なかった私は、とうとう憂の顔も見れなくなって目線を落とします。

「ずっと部屋で考えてたけど、分かんなくなっちゃった」

憂に分からなくさせたのは、私。私に分かるのはそのことだけでした。



490 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 21:57:00.52 ID:DhI9ASk+0

「……ごめんなさい」

憂は返事をしないまま、私はぽつぽつと呟きます。

「私、憂のこと好きで…それで周りが見えなくなっちゃって…」

「……」

「憂のことも考えずに、あんなこと……」

整理もつかないうちに声に出す言葉は、私をどんどん不安にさせます。

「私っ…」

「お姉ちゃん」

あと一歩で崩れ落ちそうだった私を、憂が引き止めてくれました。

「お姉ちゃんは泣いちゃだめだよ」

しかし、紡がれるのは冷たい言葉。

「私も、我慢してるよ」

「…うん」

ゴシゴシと目を擦ると、憂はいつの間にかへたり込んでいました。

そんな憂が、どうしようもなく弱々しく、

それでも私の頭に浮かぶのは、ただただ焦りの気持ちだけ。



491 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 22:03:13.61 ID:DhI9ASk+0

「……おねえちゃん…」

ゆらゆらと揺れる憂の声。
私を余計に悲しくさせます。

「…なあに」

「お願い、聞いて」

「うん」

目元を袖で拭いながら憂の言葉は私に向けられます。

「……抱きしめて」

「…うん」

そして私は、憂を傷つけてしまわないように、優しく優しく抱きしめました。

「…ごめんね」

「もう…いいよ」

震える声を押し殺すように、憂は無理して答えます。

だから私は、言葉を変えて、また謝りました。

「…ありがと」

声を出さないまま、憂はゆっくりと頷きました。



494 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 22:13:16.27 ID:DhI9ASk+0

「…分からないから…」

憂は、まだ俯いたままでした。

「え?」

「もう一回、」

やっと顔を上げたときには、涙目で、私の顔を見て、答えを望む視線と一緒に。

「どういうこと?」

訳がわからない私は、憂に問い返しました。

「……もう一回で、確かめるから…」

「…へ?」

憂が言っているのは、きっとそういうことなのでしょう。

しかし、愚かで情けない私は、おろおろとするばかり。

「お姉ちゃん」

真剣な眼差しを向けられて、とうとう逃げられなくなりました。

「でも……」

「私なら…平気だから」



496 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 22:22:40.75 ID:DhI9ASk+0

それでも臆病な私は動けません。

「そんなことして、また嫌われたくない……」

ほとんどわがままのその台詞に、心配されているのは私のことだけでした。

言ってから気づいた私は、更に肩を小さくしてしまいます。

「そんなことないから」

私よりずっと辛いはずの憂は、それでも強く口を開きます。

「だから……お姉ちゃん」

「……うん」

憂の姿にあてられて、なんとか勇気を絞りました。

なけなしの根性は直ぐ様消え去ってしまいそうで、

それを無くさないように頭を空っぽにしてしまいました。

「じゃ、じゃあ…」

「うん」

憂が目を閉じたのを見て、私も目を瞑ります。
でも、すぐにそれではできないことに気がついて、焦るように目を開けます。

一呼吸、二呼吸。閉じこんだ部屋の空気で、どうにか胸を落ち着かせます。

そして、ゆっくり、ゆっくりと、私は唇を重ね合わせました。



499 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 22:32:18.41 ID:DhI9ASk+0

それから何針か時計が進んで、すぅ、と息が漏れました。

私にとって、二度目のキス。
憂にとっては、初めてのキス。

その感触は、記憶にあるものよりも遥かに神秘的なものに包まれていて、

私は思わず声を漏らしてしまいました。

「ん……」

目を開けると、そこには確かに憂がいました。

静かに、確かめるように唇を合わせる憂は、

どこか悲しそうにも見えて、少し胸が痛みます。

ふと、憂が私の背中に手を回して、抱きしめてくれました。

私にはそのことが堪らなく嬉しくて、憂に確認するように手を回します。

なにも言わない憂を見て、ゆっくり力を加えました。

一番大切な人に伝わるように。

そんなふうに、思いながら。



500 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 22:41:17.77 ID:DhI9ASk+0

それから暫くして、どちらからともなく唇を離しました。

見合わせる憂の顔をみて、私は何を言えばいいのか分からず目線を逸らしてしまいました。

「……えへ」

ずっと前に聞いたような気がする明るい憂の声を聞いて、私はそちらに顔を向けました。

「その……」

「お姉ちゃん、ありがとね」

「いや、えっと…」

「分かったよ」

その言葉に、体がぴくりと反応してしまいます。

聞いてみたいけど、聞くのが怖いその答えに。

「…どう、だった?」

でも、私のために頑張ってくれた憂に、しっかり聞きました。

耳を塞いでしまいたい衝動を、僅かな意地だけで抑えます。



502 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 22:48:23.14 ID:DhI9ASk+0

「やっぱりね、お姉ちゃんのこと嫌いになれないよ」

「…うん」

「ううん、それだけじゃない」

「…」

「…私も、お姉ちゃんのこと、好き」

「……うん」

「だめかな?」

「そんなこと、ないよ」

「よかった」

「…でも、それでも憂はいいの?」

「なにが?」

「私なんかを好きになっちゃ、きっと幸せにはなれないよ」

「そんなことないよ」

「どうしてわかるの?」

「だって……私のお姉ちゃんだから」



503 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 22:59:34.18 ID:DhI9ASk+0

――
――――

憂は、笑顔を見せてくれます。

「お姉ちゃんといるからだよ」

なんて、そんな事を言いながら。

キスだって、憂から求めてくれるようになりました。

私はその度に、大切な憂を壊してしまわないように口づけをします。

そして、大事なものを離さないように、強く、ゆっくり抱きしめるのです。

そうすると憂も抱きしめ返してくれて、そこで顔を見合わせて微笑みます。

私は、そんな憂を見ながら、揺蕩うようなその感覚に身を任せます。

目の前で笑う女の子。

とっても眩しく、私の鼓動を速くさせるその女の子。

私の妹がこんなに可愛いわけがありません。

その女の子、平沢憂は、私が世界で一番愛する、

恋人、なんですから。

                  おしまい。




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唯「私の妹がこんなに可愛いわけがない」#10
[ 2010/10/22 23:29 ] 非日常系 | 唯憂 | CM(0)

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