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唯「とれすぽ!」#前編 【非日常系】


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唯「とれすぽ!」#前編
唯「とれすぽ!」#後編




1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/22(火) 23:50:12.28 ID:5WMyd2Hm0

今日も今日とて、澪ちゃんと二人でスーパーマーケットで万引き。


唯「いつもながらこの店はセキュリティが甘くて、楽勝だよね♪」

澪「ちょ……唯、早くしないと警備員が来るよ?」

唯「そうだね。盗るものは盗ったし、さっさとずらかろう」

澪「あ、唯……待ってよ!」


今の私はもう万引きくらいじゃ罪悪感すら感じなくなっていた。
いわばこれもひとつの『らいふわーく』っていうのかな?
澪ちゃん? 彼女は昔からビビリだから、少しは抵抗を感じているのかもね。
でもだからって私の誘いを断ることなんて出来ない。なんたってビビリだから。


店主「待て! この万引きクソガキが!!」

澪「やばいよ……追っ手が来た!」

唯「わかってる。早く逃げるよ、澪ちゃん!」

澪「ま、待ってよぉ~……」


私は追っ手から逃げながら最近覚えたばかりのロックンロールを口ずさんだ。

Here comes Johnny Yer again♪
With the liquor and drugs♪
And a flesh machine♪
She's gonna do another strip tease♪








3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/22(火) 23:52:52.54 ID:5WMyd2Hm0

人生を選べ。仕事を選べ。キャリアを選べ。家族を選べ。BDプレイヤーを選べ。
カスタネットを選べ。紅茶を選べ。MP3プレーヤーを選べ。
ムギちゃんに貰ったお菓子を頬張りながら、
くだらない萌えアニメをカウチに座りながら見ることを選べ。
腐った体をさらすだけの、出来損ないのガキどもにも疎まれる惨めな老後を選べ。
未来を選べ。
人生を選べ。

だけどそんなもの私にはごめんだよ。

私に今あるのはヘロインだけ。

Well, I'm just a modern girl♪
Of course, I've had it in my ear before♪
'Cause I've a lust for life♪
'Cause I've a lust for life♪



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/22(火) 23:55:52.23 ID:5WMyd2Hm0

1 『きんやく!』 by 唯

紬「だから、ジェフ・ベックは70年代初期の第2期
  ジェフ・ベック・グループまでが最高。以降はクソだと思うわ」

梓「………」


繁華街の外れのフラットの一室。
昔と比べて、恐ろしく言葉遣いが荒っぽくなったムギちゃんが、
無言のあずにゃんの右腕をゴム管できつくくくっている。


澪「そうかなぁ、ベックは70年代以降もフュージョンやダンスミュージックに接近したり、
  常に革新的なギタリストだと思うけど……」

紬「澪ちゃんはわかっていないわ」


ムギちゃんはため息を吐きながら、注射器を手に取ると、
むき出しになったあずにゃんの静脈に一気にヘロインを流し込んだ。
あずにゃんは気持ちよさそうに、目を細めている。その様子は今でも可愛い子猫ちゃんみたいだ。


梓「どんなぶっといコック(=男性器)よりも素敵です……」


あずにゃんが感嘆の声をあげる。
いいなぁ、私も早く打ちたい……。


紬「次は唯ちゃん、打ってあげるわ」


ムギちゃんに手招きされるがまま、私もヘロインを決める。
これこれ!! この頭の天辺からつま先までが性感帯になったような感覚!!
 まさに私そのものが快感を漏らさない避雷針になったような感覚!!
コレがあるから、ヘロインは止められないんだよね~。
この状態でカスタネット乱打したらきっともっと気持ちいいんだろうなぁ~、えへへ。



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/22(火) 23:58:32.60 ID:5WMyd2Hm0

紬「やめておいた方がいいですね。唯ちゃん、
  この前本当にラリッたままカスタネット叩いて、転んで頭打ったんだから」

唯「あはは~そうだっけぇ~?」


私の人生には選ぶべき人生も仕事もキャリアも、未来もない。
ただあるのはヘロインだけ。

こうなったきっかけは、高校時代の3年間、あの軽音部での活動だ。
学園祭での演奏で喝采を浴び、
自分達が音楽の神に愛された選ばれた人間だと勘違いした私たちは、
卒業後進学はせず、本格的にバンド活動に乗り出した。
あずにゃんに至っては高校すら中退してしまったのだ。

勿論、高校の学園祭でウケる程度レベルの私たちのバンドが、
より広い層に必ずしも受け入れられるかといえばそうではないわけで、
当然のように私たちの活動は挫折した。
そうして残ったのは絶望と空しさと、
ただの高卒のフリーター5人(1人に至っては高卒ですらない)だった。

私やりっちゃんは頭がよいわけでもなかったし、
遅かれ早かれこうして社会の爪弾き者になることになったかもしれない。
しかし、澪ちゃんとムギちゃんは別。
二人は頭もよかったし、バンドをやってなければ間違いなく違う道があったように思う。
あずにゃんは言わずもがなだよね。

いずれにせよ、私たちがそれに気付いたときは後の祭り。
もう一度大学を目指すでもなく、定職に就くわけでもなく、
アルバイトすらするでもなく、だからといって部屋に引き篭もるでもなく、
いつのまにかこの住人がいなくなり、空き家となったフラットを不法占拠してたむろし、
クスリをやりまくる毎日だったいうわけ。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:01:11.14 ID:LAhfm++g0

紬「さ、キメるものもキメましたし、今夜はクラブにでも繰り出してナンパでもしましょうか」


私たちの中で一番こういう悪事と程遠いはずだったムギちゃんは、
お父さんが経営している会社が長引く不況のあおりを受けて倒産してしまい、
一気に庶民以下の生活に身を落とした。(もっとも本人はあまり気にしていないようだが)
そんなムギちゃんは今、この界隈では『シック・ガール』という仇名で呼ばれている。
別に病気(=Sick)にかかってるわけじゃない。
ムギちゃん自身の人間性がとことん病的なだけだ。


紬「唯ちゃんも一緒に今夜、どう?」

唯「ん~、私は~えんりょしとくぅ~」

紬「もう、ラリってるばかりじゃなくて、気持ちいいセックスを楽しまなくちゃ、人生損よ?」


ムギちゃんはセックス中毒ともっぱらの噂。
でも性質が悪いのは……


紬「あそこのクラブは女の子のレベルも高いんですよね♪」


ムギちゃんはバリバリのレズビアンだということだ。



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:03:45.28 ID:LAhfm++g0

澪「そんなことよりムギっ、早く私にも一服分けてくれ」


ムギちゃんの服の袖を掴んで、餌をねだる犬のように舌を出す澪ちゃんこそ、
本当はこの場に最も相応しくない人間なのかもしれない。

元来繊細で恥ずかしがりな性格だった澪ちゃん。
軽音部の活動で人前に出ることでそれを克服しつつあると思ったが、今は前よりももっと酷くなってしまった。
そのせいで、バンドを辞めた後も唯一就職活動をしてみるものの、悉く面接で不採用。
かくして失業手当と万引きした商品の転売で食いつなぐ今の生活に落ちてしまった。


澪「クスリって凄いなぁ!
  こんな私の恥ずかしがりやな性格も全部なくなっちゃったみたいに気が大きくなるよ!」


訂正。少なくとも本人は『落ちた』なんて自覚、これっぽっちもないみたい。


梓「あ……あずにゃん2号が泣いてる」


突然だけどあずにゃんはつい最近堕胎した。
このフラットには私たち以外にも街のジャンキー、チンピラ、ぽん引きの男の人が頻繁に訪れていて、
あずにゃんが身篭ったのはその内の誰かの子供だ。

たぶん、男たちもそうだが、あずにゃん自身も父親は誰かわかっていなかったと思う。
きっとあずにゃんもすがりつく対象が欲しかったのかもしれない。


梓「あずにゃん2号に、ごはんあげなきゃ……」


ふらふらした足取りで、ベッドルームに向かうあずにゃん。
堕胎をした後のあずにゃんは、フラットに迷い込んだ野良猫に名前をつけて、
まるで死んでしまった自分の子供の生まれ変わりのように溺愛している。

と、まぁこんな感じ。
一つだけいえるのは、高校を出た今もわたしたち5人は一緒になってつるんでいるってこと。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:05:22.74 ID:LAhfm++g0

紬「ところで唯ちゃん、また禁ヤクするって聞いたけど本当なの?」

唯「そうらよ~?」

澪「そんなこと言って……実現できたためしがないじゃないか」

唯「らからぁ~、これが禁ヤクのらめの景気づけの最後のいっぱつ~」


ムギちゃんと澪ちゃんが呆れたような顔で私を見ている。
もう失礼だな~二人とも。どうせ私に禁ヤクなんて無理だと思ってるんでしょ?
よ~し、こうなったら二人に私のいしのつよさってやつをみせて……
あぁ~、『ラッシュ』がきたぁ~……。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:09:09.94 ID:LAhfm++g0

2 幼馴染 by澪


律「唯が禁ヤクだって? そんなんムリムリ!
  あいつのことだから、どうせ3日もすればまたラリラリになってるって!」


律は荒っぽい手つきでジョッキを掴むと一気に黒ビール(生卵入り)をあおった。
まだ夕方だというのにパブは律のような飲んだくれのろくでなしで満ち溢れており、うるさくてかなわない。


律「なぁ、澪もそう思うだろう?」

澪「まぁそうだけど……。何度禁ヤクに挫折しても
  またチャレンジしようとするのは凄いと思うよ……私なんて絶対ムリだもん」

律「それはチャレンジ精神旺盛でなくてただの学ばないアホって言うんじゃないか?
  それに唯はアレだろ。定期的に身体からヤクを抜いて、
  それでまた明けの一発を気持ちよく頂きたいって魂胆なんだろう?」

澪「そうなのかな……?」

律「だいたいヘロインのどこがいいのかがわからないよ」


そう、律は仲間内で唯一ドラッグとは無縁の人間だった。
もっともバンド活動の挫折を期に、毎日のごとく酒に溺れ、
自堕落な生活を送っているということは私たちとなんら変わらなかったが。


律「しっかし今日は混んでるなぁ。くそっ、忌々しいぜ」


ただ、律にはヘロイン中毒よりタチの悪い悪癖があるんだ。
あ、ほら今酔っ払った男の肘が律の背中にぶつかって……。


律「おい、人の背中に肘鉄カマしとして挨拶もなしかよ」

男「あぁ? こんなに混んだパブに来て人とぶつかるのが嫌なら、
  家でテメエのザーメンでも飲んでろよ!!」


その瞬間、私には律の中で何かが切れる音が聞こえた。プツンと、それはもうプッツンと。



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:12:57.39 ID:LAhfm++g0

男「って、何だよ、女かよ。女がこんなパブで飲んだくれてるんじゃねえよ!!」


酔っ払いに男も女も関係ないだろうに――。
私はそんなことを思いながら、律の表情を伺うと……ああ、思いっきり笑ってるよ。
律のこの笑顔はメチャクチャ機嫌の悪い時の笑顔だ。


律「どうでもいいけどアンタさぁ」

男「あん? まだなんか文句でもあるのか?」

律「そうじゃなくてさ、私のツレがどうもさっきからアンタのことが気になってるみたいなんだよ。
  良かったら一晩、相手してやってくれない?」」

男「え?」


男の目が驚きと期待を込めた厭らしい目で私を見た。
こうやって私のことをダシにするのも律のいつもの手口。


律「バカが見るぅ~ってなッ!!」


すると注意の背けられた男の顔面に、律はあろうことか手に持っていた大ジョッキをそのまま叩き込んだ。
肉とガラスの潰しあう嫌な音に私は思わず耳をふさぐ。男はビールと血に塗れた顔面をおさえてうずくまる。


律「澪がお前みたいなキモブタに股開くわけないだろボケ」


すると一部始終を見ていた男の仲間と思われる数人が、仲間がやられて黙っていられるかと大挙して押し寄せる。
一気に店内は大パニックに。



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:16:17.09 ID:LAhfm++g0

律「かぁ~っ! 願ってもない展開だね!」

律は嬉しそうな顔をして、騒ぎの中心に飛び込んでいく。

そうなのだ。今の律は正真正銘のケンカ中毒、
目が合っただけで拳が飛んでくるような凶暴人間になってしまったのだ。


澪「ホント、これならラリってるだけで他人には無害なジャンキーの方がましだよ」


私は巻き添えを食わぬよう、店の隅に移動すると飲みかけのウーロン茶にまた口をつけた。
え? そんなケンカ中毒のバカは放っておいて逃げてしまえばいいのにって?
そうは言うけど……あれでも一応、律は私の小さい頃からの幼馴染で親友なんだ。
それに律がああなった原因の一端は、私にもあるわけだし……ね。連帯責任っていうのかな。


律「うおりゃ~!! 私のデコはダイヤより硬いぜ~!!」


律が屈強な男の顔面にヘッドバッドをかますのを遠めに眺めながら、
私はウーロン茶をひたすら啜り続けていた。

どちらにせよ、私も律も今となってはどうしようもないただの不良少女
(20歳を超えてるのに少女ってのもないかな。ま、いいけど)に過ぎない。
社会に適合することのできない怠け者なんだね。
高校時代とは大違……いや、それを思い出すのは止めよう。


澪「どっちにしろ、今の私にはもう
  『Please Don’t Say You’re “Lazy”♪』なんて、歌えないなぁ。
  むしろ、『Yes, I’m So Fucking Lazy♪』か」


そういや、唯の禁ヤク、今回はどうなるんだろうなぁ。



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:21:31.54 ID:LAhfm++g0

3 公園にて by 紬


紬「ルー・リードもイギー・ポップもクスリを止めてからはいい作品が作れてないわ。
  クスリがアーティストのインスピレーションの源になるっていうのはあながち間違いではないのかもね」

唯「でももう私たちはアーティストでもなんでもない。ただのニートだよ?」


結局、あれから1週間たっても唯ちゃんの禁ヤクは続いている。
今までは3日ももたないことが殆どだったので、今回はかなり頑張ってるみたい。
個人的には禁ヤクしている時の唯ちゃんは好き。
だって禁断症状に耐える表情とかグッとくるんですもの。

それに今回は唯ちゃんと一緒に私も禁ヤクにチャレンジしてみた。
別に本当にクリーンになりたいからというわけではなく、
ただ単にそうすれば唯ちゃんが私にシンパシーを感じて擦り寄ってきてくれるから。


唯「やっぱり、夜の公園ってなんかちょっと怖いね」


今日はちょっとコールド・ターキー(禁断症状)も落ち着いてるみたい。
だから私は唯ちゃんを久しぶりに公園に誘った。
茂みの中は決して心地よいとはいえないけど、
唯ちゃんの吐息がかかるくらいに密着できるのはなかなかナイスなシチュエーション。



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:23:56.41 ID:LAhfm++g0

紬「早速来たわね」


私の言葉に、唯ちゃんは双眼鏡を覗き込むことで反応した。
このあたりの公園は夜にもなれば
青姦目当てのアベックがたくさんやってきて、ベンチや芝生の上で絡み合う。
今、やってきたのもそんな今夜のラヴホテル代わりの場所を見つけにやってきたアベック。
芝生に寝転がるや否や男は女の衣服の中を弄り始めた。


紬「いけない。これはいけないわ」

唯「?」

紬「男とヤるなんて、あっていいはずがない」


私は持ってきたエアライフルで男のコックに狙いを定める。


唯「ムギちゃん、鉄砲なんて撃てたっけ?」

紬「昔は屋敷の庭でよくクレー射撃をしたものだわ」


引鉄を引くと、挿入寸前の男のコックが波を打ったように跳ね上がった。
そして、この世の終わりのような悲鳴をあげると、男はもんどりうって倒れた。


紬「命中ですか。意外と大きかったんですね、あの男♪」

唯「…………(唖然)」


男なんて汚らわしい生き物です。
下半身丸出しでのた打ち回る彼氏を呆然として見下ろすあの彼女にも、
いい女(ひと)が見つかることを願っていますわ。


紬「唯ちゃん、お互い禁ヤクがうまくいくといいわね♪」



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:28:46.51 ID:LAhfm++g0

4 『面接』 by 唯


律「唯、澪、いいか?
  面接ではそこそこにやる気を見せつつ、
  それでいて試験官が絶対に不採用にしたくなるような面を見せるんだ。
  ただの失業手当目当ての冷やかしだとわかったら、とたんにハロワにその旨通報されちまう」

唯「あいあいさー」

澪「わかった。なんとかやってみるよ……」


金に困ると、私たちは決まって就職の面接を受けた。
そこで上手いこと不採用になれば、またしばらくは失業手当で食いつなぐ生活ができるから。
ここで大切なのは面接では、それなりのやる気も見せておくこと。
ハナから働く意思のない失業手当詐欺だと面接官にばれると、
ハローワーク、そしてお役所に通報されて失業手当がストップしちゃうから。


梓「……そんな小細工を使うくらいなら潔く働くのもいいじゃないんですか?」

唯「え~、働くなんて絶対にごめんだよぉ~。
  だからやる気は見せつつも、かならず採用の一歩手前で踏みとどまらなきゃ」

澪「踏みとどまる……踏みとどまるんだ秋山澪……」

紬「そんなに緊張しないで。深く考えすぎるのは澪ちゃんの悪い癖よ?」


そう言うと、ムギちゃんは懐から白い粉の入ったパケ袋を取り出した。
これは……スピード(覚醒剤)だね!



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:31:59.28 ID:LAhfm++g0

紬「ほら、これでもキメて、リラックスして面接に臨めば失業手当間違いなしよ?」

澪「ムギ……ありがとう」


澪ちゃんはそのスピードを食べていたカレーに混ぜ、一気に食べつくした。
所謂カレーちょっぴり覚醒剤たっぷりってやつだ。
私? 一応禁ヤク中だけど、スピードならヘロインよりはましだし、ね?

面接官はフケの溜まった頭が雪山みたいな中年の小太り男と化粧のばっちり決まった中年女だった。

面接官男「平沢唯さん……ですか。○○大学商学部卒、
     専攻はマーケティング戦略と。なるほど、素晴らしい学歴ですね」

唯「はい!」


経歴詐称など朝飯前だよね。


面接官女「ただ、平沢さんも知っての通り、我が社の主な業務は、刺身の上にタンポポを乗せる作業になりますよ?
      変な話ですが、貴方のようにご立派な学歴を持たれた方がするような仕事ではないと思われるのですが」

唯「そんな、職業に貴賎はありません。
  私は刺身の上にタンポポを乗せる御社の仕事にこそ、自分の生きる道を見出したんです」


『貴賎』なんて難しい言葉、本当は意味すら知らない。
ムギちゃんとりっちゃんに吹き込まれた模範解答を機械のように読み上げるだけ。

面接官男「それはそれは……我が社の事業を評価していただき、ありがたい話です」

やる気は見せた。あとは、ここから上手いこと、面接官の心証を不採用に傾かせるだけ。



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:33:54.90 ID:LAhfm++g0

面接官女「ちなみに、これだけの学歴をお持ちでありながら
     なぜ今まで決まった職に就くことがなかったんですか?」


予想通り、履歴書の空白を突いてきた。
余りにもシナリオどおり過ぎて、嬉しくて思わずカスタネット叩きたくなっちゃう。


唯「ええ、実はですね、私は長年ヘロイン中毒に苦しんでいまして」


面接官の顔色が一気に変わった。


唯「止めよう止めようとは思っているのですが、
  気付くとまたキツイのを一発、静脈にブチ込んじゃうんです。
  そのせいで今までは就職できずにいました。
  あ、御社に就職した暁には勿論、一切ヘロインとは手を切って、仕事に邁進するつもりですよ?」

面接官男・女「…………」

どうやら上手くいったみたいだね!



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:36:32.23 ID:LAhfm++g0

4.5 『面接その2』 by 澪


ムギからもらったこのスピード、最高だ!
なんだか身体の底から勇気が湧いてくるような気持ちになるよ!
これは、面接が楽しみで仕方ないよ!

面接官男「履歴書を拝見させていただきました。
     桜ケ丘高校から……○○大学を卒業されているんですね。
     そう言えばさっきも○○大の卒業生の方が面接にいらしたんですよ。
     なんだか同窓会みたいですなぁ」


えへへ。それはそうだよ……だってその履歴書の経歴は真っ赤な偽物ちゃーん。


澪「あー、あの、本当のことを言わなきゃいけないですよね。
  実は私、大学なんて出てないんです。あ、桜高を出たのは本当ですけど……。
  と、言うのもですね、大卒って書いた方が楽に就職できるかなって。
  ほら、就職って学歴差別が激しいって言うでしょう?
  大体、一流企業に就職して、したり顔で歩いてるビジネスマンもキャリアウーマンも、
  みんな一流大学卒じゃないですか」

面接官男「いや……あの、ですね。 まぁ、最近は学歴差別も大分和らいでおりますし、
     何より今回の求人は刺身の上にタンポポを乗せる仕事ですし、高卒以上なら応募可だったんですが」

澪「あ、そうだったんですか。それは安心したなー。
  だって、高卒のフリーターで毎日フラフラして遊んでるなんて言ったら、
  どこの会社でも白い目で見られてきましたから。
  私、この仕事どうしてもやりたいんです。だから○○大卒って書いたんですよ。
  あ、そうだ。私の高校の同級生の真鍋和って子は本当にその○○大を出ていて、
  今じゃ立派なキャリアウーマンとして働いてるらしいですよ。同窓生として鼻が高いですよね!」



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:40:04.53 ID:LAhfm++g0

面接官女「いや、私たちが気にしているのは秋山さんの学歴でなく……人間性の方なんですよ?
     同僚と円滑にコミュニケートして仕事を進められる社交性があるか、
     一日中流れる刺身を眺めていても平気な忍耐力があるか……」

澪「待ってください。私の履歴書、長所の欄に
  『コミュニケーション力に優れ、何事にも物おじしない度胸がある』って書いてありますよね?
  それ、全部ウソですから」

面接官男「そ、そうなんですか? 別にウソなどつかなくとも、
  あなたはハローワークの紹介でここに来ているので、面接は受けられるのですよ?
  それならば、ウソをついてまでこの仕事を志望される理由は?」

澪「そんなの、お金が必要だからに決まってる」

面接官女「そ、それでは改めて聞きます。あなたの長所は?」

澪「そうですね~……あ、歌とベースの演奏ならそこそこ。ファンクラブが出来るくらいには」



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:41:42.04 ID:LAhfm++g0

面接官女「……逆に短所は?」

澪「履歴書に書いてあるのと逆ですよ。私は在日の上に肝っ玉の小さいメンヘラですから。
  ほら、だから今日の面接うまくいくかどうかずっと気になっちゃって。
  でも安心ですね、すごく上手くいってる感触が、お二人にも伝わっていることでしょう。ね? ね?」

面接官男「ありがとうございました、秋山さん。結果は後日連絡します」

澪「いやぁ、今日は人生最良の日です。ありがとうございました」

面接が終わると、私は一目散に皆の待つパブへと行き、唯に抱きついてやった。


唯「どうだった、澪ちゃん?」

澪「大成功! 過去最高の出来だよ!
  いやぁ、これじゃあもしかしたら本当に採用されちゃうかもしれないなぁ。
  それにしても、このスピード、よく効くね!」

唯「そっかぁ~、それじゃ澪ちゃんの成功を祝して、乾杯しよっか?」

律紬梓「異議なぁ~し」


いやぁ、本当に私はいい仲間を持ったと思うよ。



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:44:08.46 ID:LAhfm++g0

5 MANABE NODOKA'S SEX TAPE by 唯


面接の翌日、私はひさしぶりに和ちゃんを訪ねた。


和「久しぶりね、唯」


和ちゃんは大学を卒業後、一流企業のOLとして働いているらしい。
お金も地位も立派なマンションも綺麗な家具も美味しい食事も高価なブランド物のバックも……。
なんでも手に入る勝ち組の人生ってやつかな。


和「唯……あなた、まだ定職にもつかないでフラフラしてるの?
  今はまだ若いからそれでもいいかもしれないけど、あと数年したら悲惨なものよ?
  全く、高校の頃は打ち込むものを見つけて、頑張ってると思ってたのに……。 
  それにあの……ヘロインなんてまだやってるの?」


和ちゃんは会う度に私の生き方を説教する。
けれど別に気にならない。昔から和ちゃんは説教臭い性格だったから。


唯「そういえば和ちゃん、最近彼氏ができたって聞いたよ」

話題そらしがてらに投げかけたその一言で、
スキのないキャリアウーマンのだった和ちゃんの顔が、一気に綻んだ。


和「そ、そうなのよ……。相手は会社の同僚でタカシさんっていうんだけど……」


あらら。とうとう将来は出世確実の彼氏までゲットですが。
あまりの私との境遇の違いだね。
和ちゃん、今の私たち(特に澪ちゃんとか)の生活を見たら何て言うかなぁ。



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:47:52.98 ID:LAhfm++g0

そこから先は延々と彼氏とのノロケ話。
聞いているのもめんどうだったから、私は寝転んで和ちゃんの部屋の棚にあるDVDを物色していた。

うん? 大丈夫だって。いくら私でも友達のDVDパクって売りさばいたりしないからさ。
それにしてもいっぱいあるなぁ。殆どが映画、しかもラヴストーリーモノだ。
彼氏と一緒にこの部屋で見て、いい雰囲気になったりしてるのかな。

そして、何気なく開けた恋愛映画のDVDケースの中に入ったディスクを見て、私の動きは止まった。

台湾製のDVD-R、盤面に印刷されているタイトルは……

『和とタカシの愛の記録~クリスマス・イヴ 海の見えるホテルにて~』

それを見た私がそのディスクと、他の適当な映画のDVDを入れ替えるのには、
おそらくものの数秒程度しかかからなかっただろう。
長年の万引き生活で得た技だ。ショップ・リフター万歳だね!


和「そうして彼は私の手を握り締めてこう言ったの。
 『眼鏡を外した和ちゃんは、全盛期のアヴリル・ラヴィーンより美しい』
 ……って、ちょっと唯、私の話聞いてる?」

唯「うん。聞いてるよ。すごく仲がいいんだね! それよりさ、この映画のDVD、借りてもいい?」

和「別にいいけど……唯って恋愛映画なんて見たっけ?」

唯「最近興味が出てきたんだ~。ほんと、最 近 ね !」



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:49:44.91 ID:LAhfm++g0

男『オラオラ!! バックから突かれるのがいいのかい!?』 

和『アアン……もっと……激しく……激しくしてぇ……アアン!!』


和ちゃんのところからパクってきた自家製ポルノDVDをムギちゃんとあずにゃんと見ながらふと思った。

私の人生には何かが欠けていると。


梓「これはっ……いや、なんでもないです」


そのまま終始無言のあずにゃんと、


紬「男とするのなんて、なにがいいのかしら。真鍋さんも墜ちたものね」


相変わらずのムギちゃんであった。

やっぱり私の人生には何かが欠けているよね?



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:52:03.64 ID:LAhfm++g0

6.テンプテーション by 唯

先日の面接の結果は、澪ちゃんも私もめでたく不採用だった。
これでまたしばらく失業手当で食いつなげるよね!

そのお祝いと言ったらなんだけど、今日は皆でクラブに繰り出したんだ。
目的は決まってる。私も和ちゃんみたいな素敵な出会いを探すこと。
思うに、今までの私の人生に足りなかったのって、そういう要素なんじゃないかな?
ちょうどヘロインを絶って、そっちの意欲も出てきたことだしね♪
ほら、どこぞの団長様も言ってたし。『私にだって身体を持て余すことぐらいある』って。


紬「唯ちゃん、お先に♪」


ムギちゃんはさっそく目を付けた女の子をゲットしたようで、
私に目配せをすると、ポニーテールのよく似合う健康的な容姿の女の子と二人で、
女子トイレへと消えていった。
私が思うに、眉毛の太さと性欲って比例するのかな?


律「ケッ、大した男がいねえなぁ。
  どいつもこいつも去勢されたバックストリートボーイズみたいなオカマ野郎ばっか」


りっちゃんは悪態をつきながら、何杯目かわからないウオッカをあおる。
自分より30センチもデカイ男の脳天を椅子の角でカチ割るようなりっちゃんに、
釣り合う男の子なんてそもそもいないんじゃないかな?



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:56:16.42 ID:LAhfm++g0

澪「う~……こういうところはやっぱり苦手だな……。ねぇ、律、帰ろうよ?」


澪ちゃんは居心地悪そうにもじもじ。
澪ちゃんって一番男の人からしたら性的魅力があると思うのに。もったいないよね。


梓「あずにゃん2号……ちゃんとご飯食べてるかな……」


マリファナをしこたま吸ったと見えるあずにゃんは、
うつろな表情でフラットに置いてきた猫の心配をずっとしてる。
仕方ないよね、自分の子供なんだし。

DJがレコードを替えると、Underworldの『Rez』が大音量で流れ始めた。
フロアに一気に人が増える……よしっ! 私も頑張ろうっと!


?「ねぇねぇ、君、一人で来てるの?」


すると、いきなり一人の男の子から声をかけられた。私も捨てたものじゃないかも。
背はそんなに高くないけど、顔は可愛い系で
ちょっとキュンときちゃうタイプの男の子だった。うん、悪くはないかな。


唯「ううん。友達と一緒だよ?」

男「そうなんだ。じゃあさ、その友達も一緒に、俺たちとちょっとお喋りしない?」

唯「うーん……そうだなぁ~」

男「ちょっとだけ、さ。ね、いいでしょ?」

唯「……それより、今すぐに二人きりになりたい……かな?」


男の子の表情が一瞬で変わった。
ちょっと台詞を決めすぎたかな、とも思ったけど、どうやら効果があったみたい。
すぐに私はその男の子と一緒にクラブを出て、彼の部屋に向かうタクシーをつかまえた。



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 00:58:55.41 ID:LAhfm++g0

男「でもよかったの? 初対面の男の誘いにホイホイついてきちゃって……
  って、まぁ自分で言うのもなんだけどさ」

唯「いいんだよ。私の人生に欠けていたのは、こういうことなんだから」

男「そっか。そういえば君、名前はなんていうの?」

唯「平沢唯だよ……よろしくね」

男「唯ちゃんか……なんか初めて聞いた気がしないな。これって運命なのかもね」


そうして彼の部屋で私は大人への階段を上る……はずだったのだが。
どうやら私は、彼のベッドに飛び込むと、あろうことかコトに及ぶ前に寝てしまったらしい。
そう言えばクラブで飲みなれないお酒を一杯飲んだのがまずかったのかも。
あはは……ヘロインなら平気なのに……駄目だな私。

そして、驚いたのはぐっすり眠ってしまったその翌朝のことだ。
目を開けると、そこには学ランに身を包んだ、昨晩の男の子の姿が。


唯「え……なんで制服着てるの? もしかしてコスプレ?」

男「なんでって、これから学校に行くんだよ。
  クラブで夜遊びするような親不幸の悪ガキだけどその分、
  こういう擬態はしっかりやっておかないとね」

唯「……高校生だったの?」

男「そうさ。今年で高1」


なんてことだろう。
まさか相手が高校1年生なんて!! これって私、普通に「いんこうみすい」ってやつ?
それに……この子の顔、どこかで見たことがあるんだよねぇ……。



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 01:02:53.16 ID:LAhfm++g0

男「今日はウチ、親も誰もいないからさ。せっかくだからリビングで朝飯でも食べていきなよ」

リビングへ行くまでの道のりでさらに考える。っていうか、私……この家来たことがあるような?


唯「ちょっといいかな……?」

男「ん?」

唯「そう言えば昨日聞いてなかったよね。貴方の名前……」

男「ああ。俺の名前は聡、田井中聡だ」

唯「……な」

男「?」

唯「なんですとーーーーーーーーーーーッ!!!???」


どうりで、この子の顔にも見覚えがあったわけか。そう言えば昔りっちゃんに写メ見せてもらったし……。
どうりでこの家にも見覚えがあったわけか。昔遊びに来たことがあったし……。


聡「平沢唯ってどこかで聞いたことがあると思ったら……
  姉ちゃんの友達かよ……そういえば姉ちゃん、アンタの話、よくしてたよ……」

唯「そ、そうなんだ……」

聡「それよりさ、昨日のこと、絶対姉ちゃんには黙っておいてくれよな。
  未遂とはいえ、自分の友達に手を出されたなんて知ったら、姉ちゃんきっと俺のこと殺すよ……」

唯「う、うん……」

聡「でもさ……姉ちゃんには内緒で……また会えるよな?」


私は聡君のその問いに答えることはなかった。自分でもよくわからなかったんだと思う。



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 01:06:53.99 ID:LAhfm++g0

7 テンプテーション2 by 澪


まさか! そう、まさかだ!
あの引っ込み思案で、恥ずかしがりやだった私が!
今! イケメンの車に乗って部屋に連れ込まれようとしてるなんて!!

よーし! これでもうムギに「澪ちゃんは処女だからね♪」なんて言われて馬鹿にされることもなくなるぞ!!
うん! きっと今日もムギにもらったあのスピードのおかげだなきっと!
ほんと、面接の時といい、ドラッグは私に力をくれるよ!!
そして! 今日はスピードを律に薦められてウオッカと一緒にしこたま飲んでやったのが功を奏したみたいだ!!
今まで下戸だった私だけど、なーんだ、全然、イケる口じゃないか……。

そうら……ひょうこそ……わらしはいけめんのうでのなかにらかれて……
おとなのかいらんをいっぽのぼるんだなぁ……zzz……。

(翌朝)

私としたことが……まさかの寝オチなんて……。これじゃ、また律とムギに笑われるよ……。
うん……シーツには赤いシミ一つついてない。私の処女膜は無事なままだ……。
ああ……失敗したな……って、ん?
 なんか耳のあたりにピチャリと冷たい液体の感触が……しかもなんか臭い……すごく臭い……。

って、ああーーーーーッ!! 

これは……紛うことなき 寝 ゲ ロ じゃないか……!!



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 01:11:01.86 ID:LAhfm++g0

そうか……昨日あんなに酒を飲んだから……。
って、どうしよう……これ、あの男の人のベッドだよな……思い切りゲロで汚しちゃったんだけど……。
って、ゲロを見てたらなんかまた腹の奥から色々とこみあげてきて……。


澪「ゲロゲロゲロゲロゲロゲロ」

男「起きたかい?」


すると部屋の扉が開き、昨晩私をお持ち帰りしたイケメンが入ってきた。
まずい! このシーツの惨状を見られるわけにはいかない。


男「澪ちゃん、昨日はちょっと飲みすぎちゃったみたいで調子悪そうだったから休んでもらったけど……。
  うん、残念だったけど、俺たち、これっきりってわけじゃないからさ。
  また今度ゆっくり……ってどうしたの? そんなにシーツをぎゅっと握りしめて」

澪「いや……ちょっとシーツを寝汗で汚しちゃって……」

男「いいって。それくらい洗えば。ほら、よこしてみ?」

澪「ああっ……それは嘘で……実は昨日私生理で……できなかったのもそのせいで……」

男「ああ……別にいいって、ほら」

澪「ああっ」


無理やりシーツを引っ張る男。
そして、飛び散るゲロ。宙を舞う私の胃液。昨日食べたカレーの具。

男「…………え?」

見事にイケメンの顔面に着弾。

どうやら私が大人の階段を登れるのは、まだまだずっと先の話のようだ。



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 01:13:39.74 ID:LAhfm++g0

8 MANABE NODOKA’S OVERDOSE by 唯


結局、私はまたヘロインへと戻ってきてしまった。
禁ヤク期間、過去最高記録の2週間を更新。
意味があったのかどうかなんて、考えることすらめんどうくさくて。
とにかく今は注射針が静脈に刺さり、めり込むその感触だけでうんたん♪してしまいそうで。
結局、何も変わらなかったということだよね。

そんな時、珍しく私が間借りしてるアパート(普段は殆ど寝に帰るだけ)を和ちゃんが訪ねてきた。


和「唯……お願いだから私にもヘロインを一発、恵んでくれないかしら?」


私は驚いた。
和ちゃんには、この堕落のスパイラルに自ら足を踏み入れる理由なんて、
りっちゃんのバストサイズほどにもないはずだから。

聞けば、和ちゃんはあの彼氏と別れてしまったらしい。


和「今更恥も外聞もないから言うわ……
  実は私ね、彼との夜の営みをビデオにとって、保存する趣味があったの」

……知ってるよ?

和「彼もそれを見て喜んだりして……あくまで2人のうちの秘密の愉しみとして……だったんだけど」

……まさか、ね。



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 01:16:22.67 ID:LAhfm++g0

和「この前、その映像を収めたDVDが……無くなっちゃてね。
  もしかしたらレンタルしてきたDVDと間違えて入れ替えて返却してしまったのかも知れなくて……」

唯「……ビデオ屋さんには確認したの?」

和「……したわ。それこそ私が過去に借りたことのあるDVD全部中身を調べて。でも見つからなかった……」

唯「そ、そう……」

和「それを知った彼が……案の定激怒しちゃって……ね。
  私にとって……彼は全てだったのに……うう……タカシぃ……」


和ちゃんの目にはもはやジャンキーほどの生気すら感じられなかった。
彼と別れて人生を儚んだ和ちゃんは、勤めていた会社も辞め、自殺すら図りかけたらしい。

私は黙ってヘロインと注射器を和ちゃんに献上した。
寧ろ、『喜んで!』と言いそうな勢い。

こうして和ちゃんもめでたく私たちの仲間入りを果たしたのでした。

そう言えばあのDVD……どうしたんだっけ?
ああ、ムギちゃんが『男と女のセックスなんて認められません!!』なんてラリってキレて、割っちゃったんだっけ。
ほんと、レズビアンって性質が悪いね!



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 01:20:36.99 ID:LAhfm++g0

9 8時ちょうどのあずにゃん2号 by 唯


その日のフラットの朝は、絹を裂くような悲鳴で始まった。
悲鳴の主はあずにゃん。すさまじい声をあげて、私たちの寝ている部屋に飛び込んできた。


唯「あずにゃん、どうしたの……こんな朝早くから……」

梓「あずにゃん2号が……あずにゃん2号が……私の子供が……ああ……どうしよう……」


それしか聞き取れなかった。
あずにゃんはそのままソファーに倒れ込み、ひたすらに嗚咽を上げ続けていた。

悲鳴のあまりの五月蠅さに、ムギちゃんが、そして澪ちゃんが、
そして珍しくフラットに泊まっていったりっちゃん
(りっちゃんはクスリのヤリ部屋になっているこのフラットには普段あまり来ない)が目を覚ました。


紬「……梓ちゃん?」

澪「なんだなんだ、どうしたんだ?」

律「ったく、朝っぱらからうるせえなぁ」


ムギちゃんも澪ちゃんも私も、ヘロインで靄がかった頭でも何かとんでもないことが起きたのはわかった。

何かを察したムギちゃんがすぐに寝室に向かう。澪ちゃんとりっちゃんもそれに続いた。
私は行かなかった。なぜなら何が起こったか、なんとなくわかっていたから。
そう言えばここ最近はずーっとヘロインをやりっぱなしで、
誰もキャットフードのことになんて頭が回らなかったから。



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 01:26:17.86 ID:LAhfm++g0

一つだけ言えるのは、寝室には腐乱しきってハエのたかった、猫の死体があったということ。

あずにゃんはこうして2人目の子供も失ってしまった。

紬「…………」

ムギちゃんは起こったことが信じられないのか、ただひたすらに大きな眉をしかめて黙りこんでいた。

澪「ちくしょう!! ちくしょう!! なんてことだ!! 私たちは大馬鹿だ!!」

澪ちゃんは泣きながら膝を叩いて、悔しそうに唇を噛んだ。

律「だから言ったんだよ。ヘロインばっかやってると、ロクなことにならないって」

りっちゃんはそう吐き捨てて、そっぽを向いてしまった。

そして私は……。

唯「あずにゃん、待っててね。今ヤクを作るから」

出来ることなんて、それくらいしかない。



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 01:30:58.13 ID:LAhfm++g0

梓「ああ……私の……あずにゃん2号が……お腹を痛めて生んだ……私の子供……」

紬「どうして……どうしてこんなことになったの? 誰か教えて? こんな時にはどうすればいいの?」

澪「嘘だ……嘘だよな……あんなに可愛かったあずにゃん2号が……」

律「ケッ! サイアクだよ……」


誰もが一様に混乱している。
その一方で私はへんに落ち着いている。
こんな生活を続けていれば、いつかこういうことが起こるのと、うすうすわかっていたからかもしれない。


澪「クソッ!! もう耐えられない!! 私はずらかるからな!」

紬「ダメよ! 澪ちゃん、誰もこの部屋から出てはダメ!!」


ムギちゃんがものすごい形相で怒鳴った。


紬「考えてもみて! ここにはヘロインが山ほどあるのよ!?
   しかもここ最近、この辺りはポリ公だらけなの、澪ちゃんだって知ってるでしょ!?
   今ずらかったら、確実に全員ブタ箱行きよ!?」

澪「そうは言うけどさぁ……」

律「そんなことより、今は梓に誰かついていてやったほうがいいんじゃないのか?」


ここにきて今さらの仲間意識。悪くはないが、なにせ今さらだよね。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 01:33:46.28 ID:LAhfm++g0

すると、ヤクを作る私の腕をあずにゃんの小さな手が掴んだ。


梓「唯先輩……ヘロインを……私にヘロインを……キツイ一発をください……。
  とてもじゃないけど……シラフじゃいられそうにないから……」


私は何も言わず、あずにゃんの左腕の静脈に注射針をつき立てた。

ムギちゃんが改めての禁ヤクを宣言したのは、そのすぐ後のことだった。


紬「私はもう二度とヘロインには触らない」


と、今までの遊び半分の禁ヤクとは一線を画した、随分と気合の入った宣言であった。

あとで知ったことなんだけど、あずにゃんが最初に子供を身籠った時、
あずにゃんを行きずりの男とのセックスに導いたのは誰ならぬムギちゃんだったんだって。
異性と交わるのが一体どんなものなのか、後輩を使って実験したってことだね。
しかもあずにゃんが中絶した病院を手配したのもムギちゃんだったとか。
もしかしたら、ムギちゃんはあずにゃんに負い目を感じていたのかもしれない……ね。

それからムギちゃんは、本当にドラッグとは手を切り、万引きや強盗、処方箋詐欺に私たちを誘うようになった。

私と澪ちゃんがムギちゃんに唆されてやった万引きでへまをして捕まったのは、そのすぐ後だった。




53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 01:34:29.85 ID:DNnR9xIvO

原作も映画も見てない俺になんでヤクいっぱいあるアジトを捨ててバックレたらブタ箱行き確定なのか解説plz
ガサ入れあったら逆にヤバいじゃん





54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 01:39:46.78 ID:LAhfm++g0

>>53
外で歩きまわる→明らかに挙動不審→即効職質食らう→ヤク中バレる→アジトガサ入れ→全員芋づる式にあぼん

って、いうことにしておいてくださいw
ヤクって基本は現行犯って言うか、職質食らって尿検査させられてってプロセスじゃないと逮捕できないと思うんで、
だったらアジトに籠りっきりの方が安全ということですかね。



10 判決 by 唯


裁判長「被告平沢唯、貴方は楽器店に侵入し、転売目的で楽器を盗難した――この事実に間違いはありませんね?」

唯「はい」

裁判長「貴方が盗んだ物品は、社会の中の誰かが汗水をたらして生産したもので、
    消費者も同じく額に汗して働いて得たお金でそれを購入しているのです。
    それを盗むという行為がいかに反社会的なものであるか、ということの自覚もありますね?」

唯「はい」

裁判長「しかし、事件当時貴方は長年常用していた違法薬物であるヘロインを絶っており、
    その禁断症状で苦しめられ、まともな精神状態になく、善悪の判断がつかなかったと」

唯「はい」

裁判長「それらの事情を含めて判決を言い渡します。被告平沢唯には、禁固六ヶ月、執行猶予1年とします。
    なお、貴方にはヘロイン中毒から脱しようとする明確な意思が見られることから、
    国営の薬物依存症治療のためのメタドンプログラムを受けてもらうこととします」

唯「ありがとうございます、裁判長。きっと、更生してみせます」


傍聴席を見やると、執行猶予の判決に胸を撫で下ろしているお父さんとお母さんの顔が見えた。
そして、その横には両親以上にホッとした表情を見せ、人目もはばからず泣いている憂の姿が……。

でも、ごめんね、憂。お姉ちゃんはもう昔のお姉ちゃんじゃないんだ。



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 01:42:01.99 ID:LAhfm++g0

裁判長「そして……被告秋山澪、貴方は常習的に万引きを繰り返している上に、
    度重なるヘロインの乱用から、足を洗おうとする姿勢が全くもって見られません」

澪「は、はい……」

裁判長「よって、被告秋山澪を禁固六ヶ月の刑に処します」

澪「ありがとうございます……って、え? 執行猶予なし? しかもそんなに長い……」

裁判長「それではこれにて閉廷とします」


裁判所を出た後、私たちは行きつけのパブで判決確定祝いをやった。


律「いやぁ、しかしよかったな唯、執行猶予付きでさ!」

唯「でも澪ちゃんが……」

律「なぁに半年くらいどうってことないさ。
  それに刑務所の中でおとなしくしてりゃもっと早く出れることもある」


りっちゃんは澪ちゃんの一番の親友じゃなかったの?
どんな短い間でも、大の親友が手錠を嵌められ、
囚人服に身を包んで、臭い飯を食べてる光景なんて、想像するだけで吐き気を催すのに……。

そういえば今日の裁判にはあずにゃんとムギちゃんの姿がなかった。
あずにゃんはあの猫の死から今も立ち直れずにいる。
ムギちゃんはよく知らない。きっとどこぞのクラブでまた女の子をひっかけているんだろう。


唯「それにしてもメタドンプログラムかぁ。いやだなぁ」

律「なんでだよ? メタドンだって麻薬だろ? 身体の中に入れられるならなんでもいいんじゃないか?」

唯「そうじゃなくて、嫌なのは施設の医者とか看護師とか、あーいう人間のしたり顔でえらそうな態度なんだよ。
  『カウンセリング』なんて言っちゃってさ」

律「ふーん……まぁ頑張れよ」



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 01:45:26.22 ID:LAhfm++g0

11 パーフェクト・デイ by 唯

もうすぐ、憂鬱なメタドンプラグラムが始まる。
その前に私はどうしてももう一発だけ、ヘロインがやりたくなった。
だけど残念なことに、手持ちの弾はもう一発もない。

仕方ないので、いつも私たちにヘロインをあっ旋してくれるディーラーのもとに行くことにした。


さわ子「あーら、いらっしゃいお客さん♪」

唯「こんばんは、さわちゃん先生」


そう、高校時代の軽音部顧問、山中さわ子先生こそ、私たち御用達のドラッグディーラーなのだ。
さわちゃん先生は深刻化する不況の煽りを受け、教師をリストラされ、
今の仕事にありついたそうだ。そういえば桜高って、私立だったね。



59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 01:47:37.59 ID:LAhfm++g0

さわ子「それでお客様、本日のオーダーは?」

唯「遠慮なしにフルコースでお願いします♪」

さわ子「お支払の方は現金で?」

唯「ツケでお願いします」

さわ子「申し訳ございませんがお客様、既に限度額一杯です」

唯「ん……それじゃあ有り金全部で」

さわ子「かしこまりました~。オードブルはいかがしますか?」

唯「要らないです。さっさとキツイのを血管にブチこも~」

さわ子「了解♪」


さわちゃん先生から、夢と希望の詰まった注射器を受け取る。

うんたん♪ うんたん♪
カスタネットを叩くリズムでヘロインをポンピング♪
ほ~ら、またたく間に身体中に流れる血液にヘロインが混ざり合わさって昇るような快感に……。

ん?

あれ? おかしいな?

なんだか目の前がくらくらするよ?

どうしてこんなに天井が近いんだろう?

あれれ?

あれれれれ?




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唯「とれすぽ!」#前編

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