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唯「今夜星を見に行こう」―紬編― 【非日常系】


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唯「今夜星を見に行こう」―澪、律編―
唯「今夜星を見に行こう」―紬編―
唯「今夜星を見に行こう」―憂、唯編―




99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 01:40:25.63 ID:XeW1jTZKO

斎藤「お嬢様、冷えてまいりましたのでそろそろ中へ」

紬「うん、すぐに戻るわ。でももう少しだけここにいたいの」

斎藤「では何かお召し物を」

紬「私は大丈夫だから。もう遅いわ、先に休んでて」

斎藤「はっ、では失礼いたします」

あの頃見た星と今見ている星。
全然違って見えるのは何故だろう。
それは天文学的な問題だけではない。

私がそれほど大人になったということなのだ。






101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 01:43:19.87 ID:9ibxfKlcO

これはさっきの物語と繋がってるの?





103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 01:52:41.07 ID:XeW1jTZKO

続きって言うか、同じ世界観
一応、全体に伏線(笑)的なものを散りばめて最後に繋がるような感じかな
さっきのはばーさんになったけど、今回はまた高校生時代に戻る

説明入れずすまんかった



102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 01:48:40.81 ID:XeW1jTZKO

紬「そろそろ休もうかしら」

最近、夜になるととても冷える。
1時間も外にいたら風邪を引いてしまいそうだ。

斎藤が心配して私に声を掛けるのも無理はない。

私は先に休めと言ったけれど、
真面目を絵に描いたあの人のことだ。
きっと、廊下かどこかで私の身を案じてオロオロしているに違いない。



105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 02:00:02.96 ID:XeW1jTZKO

私はあまり、両親を好きにはなれない。

私が幼少の頃から仕事が忙しく、
私と両親が接する時間は一般家庭のそれより圧倒的に少なかったし、
物心ついた頃からやれパーティーだ、やれ付き合いだと言われてきたからである。

私の心の支えは執事である斎藤だけだった。

親の愛情を知らない私に、
まるで本当の親のように優しく接してくれたし、
時には厳しく叱ってくれたりもした。

私にとって斎藤は、父以上に父であり、
母以上に母だった。



106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 02:07:07.30 ID:XeW1jTZKO

文化祭ライブで大成功収めた興奮も覚めやらぬある日、
重要な話があると、父の書斎に呼びだされた。

父に会うのも久しぶりだったので、
出張先での思い出話などをするのだろうと思っていた。

紬「失礼します」

父「ん、入りなさい」

紬「お久しぶりですお父さん。お勤めご苦労様です」

父「うん、紬は少し見ないうちにどんどんキレイになっていくね」

紬「そんなことありません」



108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 02:13:30.24 ID:XeW1jTZKO

紬「同じ部活動に所属する秋山澪さんはファンクラブがあるほど素敵な方です。私なんてまだまだ…」

父「確か軽音部だったかな?」

紬「はい」

父「可愛い紬が言うほどだ。その秋山さんはさぞかしお綺麗な方なんだろうね」

紬「お父さんたら…」

お世辞にも私が綺麗だなんて言えるはずがない。
高校生にもなって眉毛の手入れもしない、化粧もしない、
自分でいうのも変だが、天然記念物である。



110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 02:24:24.85 ID:XeW1jTZKO

紬「それで、お話って?」

父「ああ、うん。紬の将来のことなんだけどね」

紬「私の将来?今のところあまり考えておりませんが」

父「ああ、いやそうじゃなくて。斎藤、喉が乾いた!お茶をくれないか」

斎藤「ただいま」

いつの間に部屋に入ったのだろう、斎藤が私の後ろに立っていた。



114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 02:49:15.06 ID:XeW1jTZKO

父「こういう話をするのは緊張するな…」

斎藤「心中お察しいたします」

父「君も心穏やかではないだろう」

斎藤「いえ、私はあくまで執事ですので」

父「相変わらずだな。君らしいね」

斎藤「おそれ多いことです」



115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 02:55:29.16 ID:XeW1jTZKO

紬「さきほどから何のお話をなさっているのですか?全く話が見えないのですけど」

父「ああ、そうだね。そう、紬の将来の話だよ」

紬「はい。ですから、あまり考えておりません」

父「紬はそうなんだけど、うーん…なんと言うか」

斎藤「私のでよろしければお嬢様にお伝え致しますが」

父「ああ…頼む…」



118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 03:07:55.12 ID:XeW1jTZKO

斎藤「お嬢様の正式な婚約者が決まりました」

紬「…は?」

父「うん…」

紬「急にそんなこと言われても困ります。それに私はまだ高校生だし…」

父「何もすぐにどうこうするというわけじゃないさ。
  近いうちに顔合わせをして25歳前後にでも結婚してくれれば」

紬「だからって、そんな見ず知らずの方と…しかも私の意思もなしに勝手に決めるなんて!」

父「だからこうして今伝えたじゃないか」



140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 13:08:36.95 ID:XeW1jTZKO

紬「斎藤は知っていたの?」

斎藤「私も先ほど伺いました」

紬「そう…」

父「相手は青年実業家でね。しかも親は政治家だ。今回の縁組みが決まれば琴吹家も安泰だ」

紬「そうですか。斎藤はどう思ってるの?」

斎藤「両家の安泰、大変喜ばしいことと存じております」

紬「…」

紬「今日はもう休みます。少し考えさせて下さい」

父「ああ、ゆっくり休みなさい」



141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 13:14:40.22 ID:XeW1jTZKO

私はベランダに出て、夜風に当たっていた。

久しぶりに父と会ったと思ったら、これだ。

唯ちゃんはよく、「ムギちゃんはお金持ちで羨ましいな~」
と言うけれど、実際名家に産まれると、
普通の家庭ではあまり味わうことのない寂しさを感じたりするし、
今回のように勝手に婚約者を決められたりするのだ。

紬「出来れば普通の家に生まれたかった…」

斎藤「そのような事を申してはいけません」

斎藤はいつの間にか私の後ろに立っていた。

斎藤「あの御方は家名の存続はもちろん、紬お嬢様のことも考えて婚約のお話を…」

紬「私のことを考えているのだったら、勝手に結婚相手を決めたりしないわ」



144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 13:23:44.33 ID:XeW1jTZKO

紬「斎藤にもし娘がいたら、娘の意思に関係なく婚約者を決めたりする?」

斎藤「わかりかねます」

紬「それじゃあ、もし私が斎藤の娘だったら?」

斎藤「…」

斎藤「おそれ多いことです」

紬「そう、もういいわ。私ももう少ししたら部屋に戻るから斎藤も休んで」

斎藤「はっ、では」

あなたはいつもそうやって本心を隠す。
約16年間、常にあなたの側にいた私があなたの本心を見破れないわけがないでしょう。



146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 13:41:38.83 ID:XeW1jTZKO

昨日のこともあり、昨晩はあまり眠れなかった。
寝起きは最悪。
部活のみんなが私のこんな寝惚け顔を見たら驚くだろう。

斎藤「紬お嬢様、本日は車での送迎はいかがなさいますか」

紬「いらないって、いつも言ってるでしょう」

斎藤「はい、失礼致しました」

毎日車で送迎しようとすること、
2度目の合宿など、斎藤は良かれと思ってやっているのだろうが、
私にとっては余計なお世話であることが多い。
正直、鬱陶しく思うことさえある。

普通の女の子も、自分の父親にこんな感情を抱くのだろうか。



147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 13:47:43.19 ID:XeW1jTZKO

唯「あ、ムギちゃんおはよ~」

紬「お早う唯ちゃん」

婚約者の件が頭から離れないけれど、
外では努めてポーカーフェイスを装う。
自分でも思うが、年不相応な性格である。

唯「どうしたのムギちゃん。今日はなんだか元気ないね」

紬「え…?どうして?そんなことないわ」

唯「ふーん、まぁいいや。そうそう昨日のアレ見た!?」

紬「昨日は色々あって見れなかったの」

唯「なーんだ、面白かったのに」

唯ちゃんのたまに見せる鋭さには目を見張るものがある。
みんなには知られないように気を付けないと。



150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 13:54:57.01 ID:XeW1jTZKO

放課後、音楽室。
今日も今日とて、澪ちゃんとりっちゃんがケンカをしている。
ここのところ毎日だ。

唯「またケンカ~?」

澪「だって律が…」

律「はいはい、全面的に私が悪ぅございましたぁ。すいませんねぇ」

澪「なんだよその態度!」

律「謝ってんだろ。まだ何か文句あるのかよ」

澪「だからお前のそういう態度が…!」

梓「夫婦喧嘩は犬も食わないって言うけど…」

紬「もう放っておくしかないわね…」

初めはケンカの仲裁役をしていた私も今は諦めぎみだ。

澪ちゃんとりっちゃんのことより、自分のことの方が気にかかる、
というのが本音であるが。



151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 14:06:20.52 ID:XeW1jTZKO

結局今日も練習はせず終いだった。
しかし後日、さわ子先生が懸賞で当てたという温泉旅行に行くことになった。

荒んだ心を癒すには丁度いいかもしれない。
私も今からとても楽しみ。



今日もベランダに出て、星を眺めながら婚約者のことについて考えてみる。
答えはまだ出ない。



152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 14:13:38.55 ID:XeW1jTZKO

数日後、出張先の父から電話があったらしい。
婚約の件はほぼ固まった。だそうだ。

それを使用人から伝えられたため、私が反論する余地はなかった。

結局、私の気持ちなどお構い無しに決められる、
出来レースの婚約だったのだ。

悲しかったけれど、涙は出なかった。
なんとなくこうなることはわかっていたし、
私も琴吹家の一員として、家の繁栄に貢献できると思えば、そう悪いことでもないと思っていた。



160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 16:30:59.39 ID:XeW1jTZKO

斎藤「紬お嬢様、おめでとうございます」

紬「何が?」

斎藤「婚約の件でございます」

紬「ああ…ありがとう」

斎藤「…」

紬「…」

斎藤「後悔はございませんか?」



161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 16:43:38.94 ID:XeW1jTZKO

紬「この家に生まれたのだもの。天命と思って受け入れるわ」

斎藤「紬お嬢様はいつも本心をお隠しになりますな」

紬「――――!」

紬「どういう意味?」

斎藤「そのままの意味でございます」

紬「そう、でもあなたに言われたくないわ」

斎藤「これはこれは。さすが紬お嬢様、全てお見通しですか」



190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 21:46:37.44 ID:XeW1jTZKO

紬「あなたの本心を聞かせて」

斎藤「畏れながら申し上げます。
   この16年間、私は紬お嬢様を男手一つで育ててきたと自負しております。
   どこの馬の骨ともわからぬ若造にお嬢様を嫁がせるなど、口惜しくてたまりません」

いつもの涼しい顔で、とんでもないことを言うものだ。

斎藤「ですが、お嬢様が望むのであれば、婚約を受け入れる覚悟も…」

紬「そう」

斎藤「望むのであれば、ですが」

紬「ふふ、あなたがそんなに感情を露にしたのを見るのは初めてかも」

斎藤「お恥ずかしいことにございます。よろしければ紬お嬢様の本心もお聞かせ下さい」



191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 21:56:15.51 ID:XeW1jTZKO

斎藤「無理をなさっていたのですね」

紬「…」

斎藤「お嬢様は周りに気を使いすぎる。
   まだ子供なのですから笑いたい時には笑えばいいし、泣きたい時には泣けばいいのです」

紬「…」

斎藤「それでお嬢様を嫌いになる人などおりません。むしろもっともっとお嬢様を好きになるはずです」

紬「…」

斎藤のタキシードをギュッと握る。
アイロンをかけるのが大変そうだ。

紬「うわあぁぁ…」

紬「あああああ!」

涙を溢すまいと両手で顔を覆うが、どうやら無意味らしい。
何年ぶりだろうか、私は斎藤の前で嗚咽を漏らしながら泣いた。

斎藤は何も言わず、私を抱き締めてくれた。



193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:05:41.72 ID:XeW1jTZKO

数分後、落ち着いた私と斎藤は私の部屋にいた。

斎藤「お嬢様が生まれた時に、御主人に仰せつかったことがあります」

紬「なに?」

斎藤「執事業よりも紬お嬢様を育てる乳母としての役割を優先しろ、と」

紬「そんなことを…」

斎藤「つまりそれは紬お嬢様の命令が第一ということ」

紬「?」

斎藤「ご命令下さい。私を家のしがらみなどないどこか遠くへ連れ去ってくれと。どうか」

紬「そんなことをしたらあなたはクビよ。私はそんなこと望んでない…」

斎藤「元より覚悟の上です。
   自分の娘が、したくもない婚約をさせられるところを見たい親などおりましょうや」

斎藤は確かに「自分の娘」と言った。
斎藤もまた、私を本当の娘だと思ってくれていたのだ。



194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:10:56.78 ID:XeW1jTZKO

今、私は斎藤が運転する車の助手席に乗っていた。
私達のことが知れるのは時間の問題だろう。
その後一体どうなってしまうのか、私にも斎藤にも想像がつかなかった。

軽音部のみんなに挨拶出来なかったのは寂しいけれど、仕方のないことだ。
みんなとの出会い、合宿、文化祭、新歓ライブ、二度目の文化祭、
それらを思い出にこれから頑張って行こうと思う。

軽音部のみんなで温泉旅行に行けなかったことだけが残念でならない。



195 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:21:52.07 ID:XeW1jTZKO

斎藤「お嬢様、空をご覧ください。星が綺麗ですよ」

紬「そうね」

琴吹の家名から解放されたからだろうか、
車から眺める星がやけに輝いて見える。
大人になったからといって変わらない、
昔見たのと同じ星空だ。

紬「はくちょう座…」

斎藤「紬お嬢様が最初に覚えた星座ですな。夏の大三角の一部です」

紬「車を止めて」



196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:29:22.08 ID:XeW1jTZKO

私達は車から降り、河原へと足を運ぶ。

偶然にも、ここは幼少の頃に、
よく斎藤に連れられて遊んだ河原である。

斎藤「昔を思い出しますな」

紬「あなたも覚えていたの?」

斎藤「娘と遊んだことを忘れる親などおりません」

紬「ふふ、そう」

紬「ね、またアレやって?」



197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:33:33.10 ID:XeW1jTZKO

幼少の私は少しでも星に近づきたくて、
毎日のように斎藤に肩車を頼んでいた。

幼女紬「さいとー」

斎藤「はい」

幼女紬「あれやって!あれ!」

斎藤「はい」

私は斎藤の肩に股がる。

幼少紬「おおお!」

幼少紬「ほしがちかくなったよ!」

斎藤「お嬢様、あれがはくちょう座でございます」

幼女紬「ふーん。よくわかんないや」

斎藤「これはこれは。帰ったらお勉強ですね」

幼女紬「えー。もうべんきょうやだー」



199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:40:21.49 ID:XeW1jTZKO

斎藤「ここで…でございますか」

紬「冗談よ。あなたの困った顔を見るのは何年ぶりかしら」

斎藤「一本取られました」

紬「ふふ」

紬「…」

紬「帰ろうっか」

斎藤「よろしいのですか?」

紬「ええ、もう満足だから」



203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/30(水) 22:52:42.92 ID:XeW1jTZKO

屋敷に帰ると、当然ながら私達の失踪で大騒ぎになっていた。

このことは父の耳にもすでに入っていて、斎藤に対して激怒しているらしい。

紬「斎藤…」

斎藤「心配なさいますな。紬お嬢様は先に休んでいて下さい」

紬「でも…」

斎藤「子は親の言い付けを守るものです」

紬「わかったわ…何かあったら呼んで」

斎藤「はい」

今日は色々ありすぎて、少し疲れてしまった。
斎藤の言葉に甘え、ベッドに入った私はすぐに深い眠りについた。



270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 16:39:08.30 ID:FtiTJy1EO

次の日、いつも起こしに来るはずの斎藤がこない。

昨日のこともあったし、疲れて寝坊でもしたのだろうか。

私の予想は外れだった。

私の枕元には一枚の紙が置いてあった。

丁寧で武骨な字が書かれたその紙は、
斎藤が私に宛てて書いた別れの手紙である。



271 名前:敬語めちゃくちゃなのはスルーで:2009/10/01(木) 16:44:47.69 ID:FtiTJy1EO

親愛なる紬お嬢様へ

まずは昨晩の蛮行をお許しください。
思い悩む紬お嬢様を見ると、胸が締め付けられる思いだったのです。

紬お嬢様がお休みになった後、御主人様と電話致しました。
御主人様は今回の件についてひどくご立腹でしたが、
これからも職務を全うするならばお咎めなしとのことです。

我が御主人様ながら本当に心の広い方です。

御主人様のような父を持てたことを誇りに思って下さい。
今はわかり合えずとも、よくよくお話すればきっとお二人の絆深まることでしょう。

しかし、今回の私の行動は決して許されるものではありません。
御主人様の御厚意を無下にするのは心苦しかったのですが、私自らお暇を頂くことを決心いたしました。

この先、紬お嬢様の成長を見届けられないと思うと大変残念ですが、致し方ありません。

琴吹家の益々のご発展と、紬お嬢様が健やかに育つことを心から願っております。

さて、私には琴吹家執事、お嬢様の教育係としての最後の仕事が残っております。
明朝、御主人様とともに婚約者様とそのご家族に、今回の婚約断る意を伝えにまいります。
この行動がお嬢様のためになるからわかりませんが、育ての親の最後のわ



273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 16:49:51.65 ID:FtiTJy1EO

紬「バカ」

紬「バカバカバカ!」

手紙を読み終えた私は、パジャマのまま屋敷から飛び出した。

どこ?
どこに行けば斎藤に会える?
空港、それとも駅?


私はどこに行けばいいのかわからないまま、ただただ走り出していた。
靴を履いていないことに気付くのはもう少し後のことである。



274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 16:55:01.81 ID:FtiTJy1EO

唯「あっ、ムギちゃんおは」

紬「おはよ!」

唯「よー。って、行っちゃった…慌てて走ってるムギちゃんも珍しいなー。漏れそうなのかな」

唯「ふふ、可愛い」

途中、通学中の唯ちゃんに声を掛けられたが一言だけ挨拶し、
止まることなく走った。

後で美味しいお菓子で埋め合わせしよう。
優しい唯ちゃんならきっと許してくれるはずだ。

そんなことを考えて走っていると、
幼少の頃、そして昨晩斎藤と一緒に星を眺めた思い出の河原にたどり着いた。



276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 16:59:55.18 ID:FtiTJy1EO

斎藤「スーッ…ゴフッ」

斎藤「紬お嬢様がお生まれになった日にタバコを止めたから…16年ぶりか。
   さすがに体が受け付けないな」

斎藤「…」

斎藤「お嬢様、どうかお幸せに…」

紬「斎藤!」

斎藤「紬お嬢様!?」

紬「ここにいたの…やっと見付けた…」

斎藤「何故ここに…いやそれよりも足がボロボロですが」

紬「靴を履き忘れたのね。ううん、今はそんなことどうでもいいの」

斎藤「お嬢様、一体…」

紬「斎藤!琴吹紬が命じます!」



279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 17:04:45.76 ID:FtiTJy1EO

そして次の日の朝。

斎藤「御主人様、おはようございます。本日の車での送迎は如何なさいますか」

紬「今日は車で送って」

斎藤「はっ、失礼致しました。ではお気をつけて電車に…は?」

紬「あなたもまだまだ未熟ね。私が毎日電車で通学すると思ってたら大間違いなんだから」

斎藤「これはこれは…」

紬「執事業は流れ作業じゃないの。御主人様の言葉はちゃんと聞かなくちゃね」

斎藤「一本取られましたな。さすが御主人です」



282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 17:11:10.70 ID:FtiTJy1EO

さらに話は前日に戻る。

斎藤は琴吹家の執事を自ら辞めた。
その決意は堅い。
今更戻れと言っても、真面目で頑固な彼のことだ、
絶対に首を縦に振らないだろう。
ならば…

紬「今日から私が斎藤の御主人様です!」カーッ

顔が熱くなった。
何かとんでもなく恥ずかしいことを言っている気がする。

斎藤「は…?」

紬「あなたは今から琴吹家執事ではなく、琴吹紬の執事です!お給料も私が払います!」

私が就職するまでは斎藤のお給料はお父さんに立て替えてもらおう。
そうだ、長い休みにはアルバイトをして少しずつ返していこう。
どこでアルバイトしようかな。



284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 17:15:00.31 ID:FtiTJy1EO

斎藤「それは屁理屈というものです」

紬「わ、私の命令は絶対なのー!」

斎藤は笑いたい時には笑い、泣きたい時には泣いていいと言った。
ならばわがままを言いたい時にはわがままを言っていいはずだ。

斎藤「しかし…」

紬「私が御主人様…命令なの…」ポロポロ

斎藤「…ふっ」

斎藤「アッハッハ、そうですね。執事として御主人様の命令は聞かねばなりますまい」

紬「斎藤…」

斎藤「これからよろしくお願い致します、御主人様」



285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 17:24:51.72 ID:FtiTJy1EO

その後、私は斎藤と父と一緒に先方に頭を下げに行った。

先方も私がまだ学生ということでひどく追求してくることはなかったが、
当の父は政界進出のチャンスを失って非常に残念がっていた。

泣きっ面に蜂、そういうことは他力本願ではなく、
自分の力で掴むものだと斎藤から説教を食らっていた。

ちょっぴりいい気味だと思ったのは内緒だ。



287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 17:33:35.02 ID:FtiTJy1EO

今日からまたいつもの毎日が始まる。

斎藤が私専属の執事になったと言っても、何かが変わるわけではない。

親子の距離はこれから徐々に縮めていけばよい。

今回のことで、私の中で斎藤がいかに大きな存在か気付かされた。
斎藤には斎藤が死ぬまで、あるいは私が死ぬまで執事を続けてもらうつもりだ。

斎藤、これからもよろしくね。



288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 17:40:03.56 ID:FtiTJy1EO

そして待ちに待った温泉旅行。
澪ちゃんとりっちゃんは相変わらずケンカ中だ。

唯「りっちゃんと澪ちゃんは幼馴染みだから、
  何も言わなくても澪ちゃんなら理解してくれると思ったんじゃないの~?」

紬「そうかもね。それだけ長く一緒にいたら何も言わなくてもお互い理解できたりするもの。私も…」

斎藤が何を考えているかわかるし、
斎藤も私が考えていることがわかるだろう。
私達の間に言葉などいらない。

澪「え?なに?」

紬「ううん、なんでもない」

唯「私も和ちゃんが何を考えているかわかる時あるよ~!」

梓「幼馴染み、親友ってそういうものですよね」

紬「澪ちゃんは今りっちゃんが何を考えているかわかる?」

澪「それは…」




289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 17:41:28.40 ID:u2DuedhWO

なるほど・・・





291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 18:00:46.72 ID:FtiTJy1EO


唯「ちゃんと話し合って、仲直りしないと部屋に入れてあげないからね」プンプン

温泉から上がり食事を済ませた後、
宿内をブラブラしていたら、玄関の方から唯ちゃんの声が聞こえた。
なんだか怒っているみたいだ。

どうやら、澪ちゃんとりっちゃんを仲直りさせるために、外に閉め出したらしい。
なんという荒治療。
でもあの二人ならきっと大丈夫だろう。

唯「それじゃあ私達は部屋に戻ってトランプでもしよっか!」

紬「そうね♪」

次の日、玄関前で凍死寸前の澪ちゃんとりっちゃんを発見したのは新聞配達員だった。

唯「今夜星を見に行こう」―紬編―






293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 18:03:34.69 ID:wRs+bWPi0


駄々をこねるムギちゃんかわいすぎる



294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 18:06:29.31 ID:YQoGmHa1O

これは・・・むぎゅかわいずきワロタ


>>1



295 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 18:06:34.81 ID:1RNfTBVzO

乙だな、読んでて気持ちが良い

さて、続きをよろしく



297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 18:12:27.34 ID:oeS80dwDO

むぎゅかわいすぎワロタ
続き期待



298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 18:16:45.82 ID:mkEUDyQ+0

斉藤格好良すぎだし紬もええなあ



299 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/01(木) 18:17:03.52 ID:OKi3LgjP0

紬かわいすぎる乙

続きも楽しみにしてる






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