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梓「律先輩とふたりぼっち」#8 【非日常系】


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385 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 09:23:23.32 ID:iHG4hbCcO

梓「こんにちは~」

律「おー」

冬休みを目前に控え、肌寒い空気で満たされた校舎。

その一角にある音楽準備室にいつものように顔を出す。

梓「あれ? 律先輩だけですか?」

律「あぁ、他のみんなは用事やら受験勉強やらで帰ったよ」





386 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 09:31:11.01 ID:iHG4hbCcO

梓「律先輩は何してたんですか?」

律「いやいや、見りゃ分かるっしょ」

机には先輩達の志望校の赤本とノートが広げられ、律先輩の手にはシャーペンが。

梓「それで律先輩は何してたんですか?」

律「うおぉい、中野おぉ! 勉強だよ、じゅ・け・ん・べ・ん・きょ・う!」

机をばんばん叩きながら激しいツッコミを入れる律先輩。本当に元気な人だ。



388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 09:43:41.11 ID:iHG4hbCcO

梓「律先輩は家で勉強しないんですか?」

律「あ~……家だと集中出来なくてさあ。ゲームとか漫画とかあるし」

なるほど。たしかに律先輩はちょっと息抜きにとかいって、

勉強そっちのけで他の事に熱中してしまうタイプだ。

律「そういう訳でこうして誰もいない部室で、一人涙ぐましい努力をしているのだよ、梓君」

ありもしない眼鏡のつるを押し上げながら、大仰に言い放つ律先輩。

梓「自分の集中力の無さをそんな誇らしげに言われても……」



389 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 09:55:43.90 ID:iHG4hbCcO

かりかりとシャーペンを走らせる音と、

弦を爪弾く音がアンサンブルを静かな部屋に響かせる。

かと思えば律先輩は頭を抱えながら唸ったり、

書いては消してを繰り返したりと様々な音を起てる。

まるでインプロビゼイションのように。

律「だあーッ! 分からーん!」

そろそろ頭から蒸気が出そうだなと思いながら見ていたら、

律先輩はシャーペンを投げ出して突っ伏してしまった。



390 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 10:02:07.79 ID:iHG4hbCcO

梓「分からない所があるなら、澪先輩に教えてもらえばいいじゃないですか」

よく澪先輩が

「律のやつに教えるので手一杯で、自分の勉強が進まない」

と溜め息を吐いていたのを思い出す。
そんな事を愚痴りながらも、澪先輩の顔はどこか満更でもなかったようなことも。



391 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 10:11:07.07 ID:iHG4hbCcO

律「んー、それが一番手っ取り早いんだろうけど」

突っ伏していた頭を傾け、上目遣いでこちらに言葉を投げる律先輩。
勉強で疲れていたのだろう。眠た気にとろんとした目は色っぽく、少しドキドキしてしまった。

律「何が分からないのか分からないまま教えてもらおうってんじゃ迷惑だろ。
  みんなで同じ大学行こうって頑張ってんのに、あいつの足を引っ張るわけにもいかんしなー」



393 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 10:22:48.91 ID:iHG4hbCcO

何でもないことのように言い放ったその言葉に少し感動する。
なんだかんだと周りを振り回す人だけれど、
そういう細やかな気遣いの出来る人なのだ、律先輩は。
もしかしたらそんな心遣いが彼女を軽音部の部長たらしめているのかもしれない。

律「はあ~、休憩休憩。お茶でも飲んで一息入れよう」

梓「あ、それなら私がやります」

律「いーから梓は座ってろって」

こちらの静止も聞かず、律先輩はお茶の準備を始める。



394 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 10:32:54.55 ID:iHG4hbCcO

律・梓「ふう~……」

律先輩が手ずからいれてくれたお茶を二人で啜る。

立ち上るヴェルガモットの香気が部室を優しく包んだ。

梓「………………」

先程の律先輩の言葉をきっかけに、いろいろ事が頭に思い浮かぶ。

梓「……あの、律先輩」

律「ん~?」



395 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 10:41:08.87 ID:iHG4hbCcO

梓「ちょっと相談にのってほしいことがあるんですけど……」

律「相談?」

梓「はい。人生相談というかなんといいますか……」
律「ふむ、言ってみ?」

こちらのただならぬ様子に律先輩は居住まいを正す。
この胸に蟠る不安を打ち明けるのなら、この人しかいない。
素直にそう思えた。



397 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 10:52:24.83 ID:iHG4hbCcO

梓「あの……部長の心構えって何かありますかね?」
律「部長の心構えぇ?」

梓「はい」

律「心構えねえ……なんでまたそんな事を?」

梓「ほら。来年、私一人になるじゃないですか、軽音部」

律「あ~……そうだな」

梓「あ、だ、だからその前にアドバイスのようなものをいただけないかと!」

律先輩が罰の悪そうな表情を浮かべたので、すかさずフォローを入れた。



398 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 11:05:14.60 ID:iHG4hbCcO

そう。それが今の私が抱える不安の一つ。

梓「多分私が部長をやることになるでしょうし」

律「まあ、そうなるよな。う~ん、心構え心構え……」

果たして私なんかに部長が勤まるのだろうか?

先輩達の卒業が近付くにつれ、その不安は日々増すばかりだ。

梓「律先輩ってなんだかんだありながらも、ちゃんと部長をこなしてたじゃないですか。
  ですから先達として何か秘訣のようなものを……」

腕組みしながら思い悩む律先輩を急かすように、この不安を押し隠すようにまくし立てる。



400 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 11:15:39.72 ID:iHG4hbCcO

律「ないな」

梓「へ?」

あっけらかんと言い放たれた律先輩の一言に目を丸くする。

律「考えてもみろ、梓。ちゃんと部長が勤まっていたように思うか、私が?」

梓「そう思ったからこうやって聞いているんですけど……」

律「書類の提出とか部長会議を忘れて、澪や和に怒られてたのに?」

梓「それでもちゃんと軽音部は活動出来てたじゃないですか」



402 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 11:39:03.29 ID:iHG4hbCcO

律「それはみんなが支えてくれてたからだろ。私一人の力じゃないよ」

梓「でも……」

律「じゃあ一つ聞くけどさ。梓は私が部長だから今まで私についてきてくれたのか?」

梓「それは……違います! 部長だからって理由じゃなくて、私は……!」

上手く言葉に出来ないことがもどかしくて黙り込んでしまう。
そんな私を宥めるように律先輩はゆっくりと言葉を続けた。

律「きっとみんなも同じだよ。一緒に音楽をやるのが楽しくて、
  この部屋でお茶を飲むのが楽しくて、居心地が良くて……
  だから支えあって頑張れた」



454 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 20:57:31.42 ID:iHG4hbCcO

律「だから大丈夫だよ。
  梓がこの軽音部を好きな限り、お前を支えてくれる人はきっといるよ」

梓「……っ!」

なんで――なんでこの人はこういう時に限って鋭いのだろう。
なんでこの人はこんな弱い私を優しく笑って受け止めてくれるのだろう。



458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/22(金) 21:14:57.04 ID:iHG4hbCcO

元々人付き合いのいい方ではない私に部長が勤まるとは思えない。
それどころか、上手く新入部員を勧誘出来るかも分からない。

だから不安だった。この気持ちをなんとかしたかった。
先輩達に心配掛けないように振る舞ってはいたが、
どうやら律先輩にはすっかり見抜かれていたようだ。

梓(かなわないなあ……)



541 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/23(土) 05:46:50.13 ID:XAYVRqjqO

目頭が熱くなったのを覚られたくなくて、思わず顔を伏せてしまう。

律「おいおい、泣くなよ、梓~」

梓「な、泣いてなんていません! これはあれです……
  そう! 人肌恋しい季節が寂しくさせたというかなんというか……」

律「へえ~」

要領を得ない私の言い訳を、律先輩が軽く受け流す。
顔を伏せているから分からないが、律先輩は今間違いなくにやにやとしているのだろう。
あぁもう今更ながらに恥ずかしくなってきた。明日からどんな顔して律先輩と会えば――

律「えい」

梓「にゃッ!?」



542 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/23(土) 05:57:48.89 ID:XAYVRqjqO

いつの間に後ろに回っていたのか、律先輩が小さく肩を震わせる私を抱きすくめた。

梓「り、律先輩!?」

律「大丈夫大丈夫」

律先輩は子供をあやすように抱きしめながら、私の頭を優しく撫でる。
唯先輩とはまた違った柔らかい温もりが頑なになっていた心を解かす。

梓「ぅ……っふ……」

堪え切れず小さな鳴咽が漏れてしまう。

梓「ぅあ……あぁ……!」
最後まで寂しさを押し隠そうとする私を、律先輩は何も言わずに抱きしめ続けてくれた。



544 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/23(土) 06:06:02.91 ID:XAYVRqjqO

梓「な、なんで、ひっく……急に抱き着くんですか」
律「これなら寒くも、寂しくもないだろ」

梓「あ……」

やられた。さっきの下手な言い訳を完全に逆手に取られた。

梓「うぅ~……」

律「ほらほら、観念して抱きしめられてなさい♪」



545 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/23(土) 07:02:59.06 ID:XAYVRqjqO

梓「ひ、秘密ですからね! 誰にも言っちゃいやですよ!」

律「りょーかい。……二人だけの秘密ってやつだな」
耳元で囁かれた律先輩の言葉に不覚にもまたドキドキしてしまった。
きっとこんなかんじで私はこの人にずっと頭が上がらないんだろうなあ。

紅茶の優しい香りと律先輩の温もりが少しだけ不安を和らげる。
律先輩の優しい思いやりに触れながら、私は彼女の温もりにしばし身を任せるのだった。



546 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/23(土) 07:05:08.57 ID:XAYVRqjqO

このあと律視点のいちゃいちゃを考えたのですが、きりのいいところで終りにしておきます。

保守ありがとうございました。

ノシ




548 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/23(土) 10:00:29.52 ID:nwpasDS4O







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梓「律先輩とふたりぼっち」#8
[ 2010/10/23 11:13 ] 非日常系 | 律梓 | CM(0)

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