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梓「ジョニーが凱旋するとき」#最終話「ジョニーが凱旋するとき!」 【戦争】


http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1281836115/

梓「ジョニーが凱旋するとき」#index




253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 19:11:54.46 ID:ma4sc4GF0


“ΝНΚアーカイブス 戦争特集アニメ「幻の放課後」

 (中略)

 今回は、最終話「ジョニーが凱旋するとき!」をお送りします”





255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 19:16:18.31 ID:ma4sc4GF0


──11月3日、明治節の午後。

被服原料や資材などが搬出され、本来の機能を取り戻した講堂の入口には、
『桜が丘支廠・女子高等学校共催 決起大会兼慰問大会々場』の看板。

ここに、数ヶ月ぶりに、全校生徒の“ほぼ”全員が集まった。

前半は、支廠中心で、通り一遍の支廠長訓辞、来賓挨拶など。
けだるさの漂い始めた頃、ようやく高校中心の式次第に移る。

校長が言葉を詰まらせながら、挨拶する。黙祷を行う。
出征兵の宣誓、帰還兵の謝辞。

そしてついに、軽音楽部の発表。

舞台上の緞帳の裏、それぞれの位置でスタンバイする。

 「やっぱり久々だし緊張するよ…」

 「見えないから大丈夫だよ澪ちゃん!」

 「見えなきゃパイナップル~ってやるわけにもいかないだろ!」

 「うん、澪ちゃん頑張って!私も頑張るから!」

 「みなさん、そろそろ幕が上がりますよ!」



256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 19:22:37.76 ID:ma4sc4GF0


“次は、軽音部による発表です”

アナウンスが終わると、緞帳が上がり始める。
舞台上から眼下に広がる講堂内には、全校生徒が集合している。

特に一年生の座る席のあたりから、若干のどよめきが起こる。
無理もない。面識のない人間が壇上にいる軽音部員たちの姿を見れば。

唯は、マイクを前にして、息を整え、声をだす。

 「テステス…えっと、みなさんこんにちは。お久しぶりです。

  今回は、桜が丘支廠と高校共催の決起大会兼慰問大会っていうことで、
  私たち放課後ティータイム改め納期後ティータイムが演奏することになりました。

  行事の趣旨的に軍歌ってことで"When Johnny Comes Marching Home"、
  邦題では“ジョニーが凱旋するとき”をやるので、
  みんなも一緒に歌ってください。
  途中、Hurrah! ってところは特に元気よくお願いします!」

律はいつか見たような懐かしい光景に安堵する。

 (相変わらず、唯のMCは、安心して聞いていられるな)



257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 19:26:27.11 ID:ma4sc4GF0


 「…で、さわちゃん先生は戦場ではすっごく怖かったんですよ~。
  先生って呼ぶと“隊長と呼べ!”って怒るし。まさに鬼軍曹で。
  あ、さわちゃん鬼軍曹先生がすごい睨んでる!また怒られないうちに始めよ~」

 (…そろそろかな?)

 「…あ、でも考えてみたらジョニーって男の子の愛称だよね。
  女の子なんだから本当はジェーンとかジェニーのほうがいいのかな?
  あ、でも勝手に替え歌にするのまずいよね?」

 (……)

 「ちなみに、歌詞の中で "gay" って単語が出てくるんですけど、
  これは別にアッチの意味の“ゲイ”じゃなくって、
  元々は“陽気な”って意味なんですよ~。
  なんか20世紀に入ってからってさわちゃんが……」

 「はよ始めんかい!コミックバンドか!」

律がなじると、唯はようやく仕切り直す。



258 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 19:28:09.15 ID:ma4sc4GF0


会場から微笑、苦笑が漏れてくるのが一段落すると、唯が言葉を結ぶ。

 「…じゃあホントに始めます!

  これから出征するジョニーたちの元気な凱旋を願って!

  また、傷つきながらも凱旋したジョニーたちの帰還を祝って!

  そして、無言の凱旋を果たしたジョニーたちの魂の安息を祈って!

  全てのジョニーたちへ、この曲を捧げます!

  "When Johnny Comes Marching Home"ッッ!」


─────────────────────
http://www.youtube.com/watch?v=_CPjkJwvVK0
(このような勢いで演奏中)Glittertind

Glittertind - When Johnny Comes Marching Home




259 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 19:36:13.65 ID:ma4sc4GF0


"When Johnny comes marching home again!"

"HURRAAAH! HURRAAAH!"

鯨波のごとき鬨の声が轟く講堂内。

こうしてまた、懐かしい学び舎の講堂の舞台に立てるとは、
舞台上で現に演奏している彼女たち自身も、それ以外の生徒、教師、家族も含め、
誰が想像しえただろうか。

電力不足の折りにもかかわらず、無理をして冷房を全力稼働させているが、
白熱した人いきれは、暦が霜月に入ったのが嘘であるかのように、
それを打ち消して余りある熱量を発している。

久しぶりの数分間の演奏が、長くも短くも感じられた。




260 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 19:41:09.10 ID:5mu1jBUDO


\\HURRAAAH! HURRAAAH!//




261 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 19:55:19.07 ID:SwGa6Nat0


\\HURRAAAH! HURRAAAH!//





262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 20:03:25.89 ID:ma4sc4GF0


"When Johnny Comes Marching Home"の演奏後、再び、唯がマイクを取る。

 “…では、次の曲行きます!
  あ、でもこれも同じ曲みたいなもので、今やった曲の原曲です。

  "Johnny I Hardly Knew Ye"っていう曲なんですけど、
  私たちみたいに戦地に赴いた兵士が、
  ボロボロになって帰ってくるっていう感じの歌詞で…”

 (おいおい、その曲紹介の仕方はちょっとマズくないか!?
  そこまで詳しく言う必要ないだろ!もっとサラッとシレッとやりゃいいんだよ!)

律はそう思い、唯を制止すべくスティックを投げようとしたが、
視線を感じて舞台袖にふと目を向ける。



263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 20:05:33.48 ID:ma4sc4GF0


すると、

 “そのまま続けて!
  これは「懲罰」だから!”

という大きな段ボールのカンペを掲げた和が満面の笑みを浮かべて立っている。
和としても支廠の狸親父どもへの最大限のアテツケなのだろう。

まさかこの雰囲気の中では、日本史でやった自由民権運動でもあるまいし、
「弁士中止!」ということもできないだろう。
支廠の幹部連どもは、今ごろこの講堂のどこかで、
苦虫を噛み潰したような顔をしているかと思えば、それはそれで痛快だ。

 (学事課長殿のご命令じゃ逆らえませんわな~。
  一度は捨てたこの命、こちらも最大限協力させてもらいますか!)

律はそう胆を決めて、和にウインクする。



264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 20:10:34.01 ID:ma4sc4GF0


マイクに向かって好き放題喋っていた唯が、一呼吸置いて、言葉を締める。

“…これから前線に行く二年生のみなさんも、どうか生きて帰ってきてください!

 さわちゃん先生の言葉を借りると、「死んだらぶっ殺す」っっ!!!

 っていうことでよろしく!

 じゃあ、"Johnny I Hardly Knew Ye"ッッ!”


─────────────────────
http://www.youtube.com/watch?v=QKIocZ3WbgE
(このような勢いで演奏中)Dropkick Murphys
Dropkick Murphys - Johnny, I Hardly Knew Ya




265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 20:14:17.35 ID:ma4sc4GF0


"Where are your eyes that were so mild!"

"HURROOOO! HURROOOO!"

地底から沸き立つような狂瀾怒濤。
爆風除けでテープの貼られた講堂の窓ガラスすら、
全校生徒の大音声で壁ごと割れんばかりである。
天蓋が落ちるという杞憂すら、現実となりそうなほどだ。

舞台上から改めて三年生の席のあたりに視線を向けると、
ある者は頭に包帯を巻き、ある者は眼帯をし、
ある者は松葉杖をつき、ある者は三角巾で腕を吊っている。

演奏している軽音部員たちと同じような姿になった、
そんな三年生たちも、下級生に勝るとも劣らぬ気勢を上げている。

そして、櫛の歯が欠けたようにちらほらと、
生還かなわず遺影を飾られた者の席があった。

いや、紛れもなく、いま彼女らも「無言の凱旋」を果たしたのだ。

願わくは、これが無言の凱旋を果たした者へのレクイエムたらんことを。

そう念ずれば、さらに演奏にも力が宿った。



266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 20:23:04.04 ID:ma4sc4GF0


──演奏後

なおも熱気が冷めやらぬ講堂の舞台上では、
力を出し切った軽音部員たちが、半ば放心状態となっている。

会場の一隅から起こったアンコールの声が、たちまち講堂を包み込む。

演奏できるのは嬉しいが、今の自分たちにとっては、さすがに体力的にきついものがある。
そもそもこの十数日でちゃんと練習できた曲はこの2曲しかない。

アンコールの声の大合唱が響く中、
どうしたものかと、律がまた舞台袖に目線を移すと、

 “さらにそのまま続けて!
  これは「懲罰」だからシッカリやって!”

と、相変わらずカンペを持った和が含み笑いをして立っている。

 (なんで「さらに」とかバンバン書き足してんだ!無理無理無理!)

律はそう主張するように、眉根を狭めて首を左右に素早く振りながら、和に目配せする。

だが、カンペの「懲罰」と書かれたところを二、三度、トントンと指さしながら、
和もまた破顔一笑し、ゆっくりと首を左右に振って、拒絶の意思表示をする。



267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 20:25:09.86 ID:ma4sc4GF0


 (和、ドSだな…こうなりゃとことん“懲罰”されたるわ!
  あとはどうなっても知らないからな!)

破れかぶれになった律は、他のメンバーに呼び掛ける。

 「んじゃ次行くぞ!」

 「ほえ?何やるの?この2曲しか弾けないよ?」

 「"Johnny I Hardly Knew Ye"をやった以上は軍歌でなくてもいいわよね。
  いっそのこと“ふわふわ時間”でもやっちゃおうかしら?」

 「正直、オリジナルは今回全く練習してないから少し不安だな…
  もう一度"When Johnny Comes Marching Home"をやるか?」

 「いや、もう1曲似たようなのがあるだろ。あれならなんとかいけるよな?全員で歌うぞ!」

 「律先輩、それって…」

─────────────────────
http://www.youtube.com/watch?v=E6zcTRAeNp0
(このような勢いで)The Clash - English Civil War

The Clash - English Civil War live




268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 20:28:19.89 ID:ma4sc4GF0


───全校決起大会・慰問大会後の後夜祭。

校庭の中央に焚かれた火を全校生徒が囲みながら、あちこちでグループを作り、談笑している。
もちろん、私たち軽音部もその中にいる。


 「いやー……ひどい発表だったなぁ……」

律先輩が、パイプ椅子に腰を掛けて、義手義足を外してくつろいだまま、
配られた紅白まんじゅうを頬張ってつぶやく。

 「そうですか?うまく合ってたと思いますよ?」

 「おや、いつも手厳しい中野大先生が褒めてくださるとは珍しいね。
  まあ、演奏そのものじゃなくってさ…」


すると、ほうじ茶を飲んでいた澪先輩が苦笑しながら割り込み、ムギ先輩が補う。

 「律が本当に言いたいのはそういうことじゃないだろ?」

 「会の趣旨として、選曲とか歌詞とかが平気だったのか、ってことでしょう?」

 「でも、盛り上がったから大丈夫だよ。結果オーライだよ!
  みんな号泣してたし、私の名MCのおかげだね!」

一見、相変わらず能天気に、唯先輩が両手首でまんじゅうを器用に挟んで、
両手が使えたとき同様に、皮をポロポロこぼしながら食べている。



269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 20:30:55.29 ID:ma4sc4GF0


澪先輩が不安そうに声のトーンを落として言う。

 「でも、"Johnny I Hardly Knew Ye"だけでもまずいだろうに、
  イングリッシュ・シヴィル・ウォーまでやるのはなあ…
  いっそオリジナル曲のほうがマシだったんじゃないか?
  とても決起大会とかに似合う内容じゃないよ…」

が、唯先輩が意地悪く突っこむと、
澪先輩はキャンプファイヤーに照らされた顔をさらに赤らめて赤面する。

 「でも澪ちゃんが一番ノリノリで歌ってたよね?
  "Johnny I Hardly Knew Ye"もメインだったし、ある意味主犯格だよぉ~」

 「だ、だって、“赤信号みんなで壊せば怖くない”って律が…」

私はその矛先を律先輩に向けた。

 「そうですよ!そもそもイングリッシュ・シヴィル・ウォーは
  律先輩がやろうって急に言い出したんじゃないですか!
  やってしまったことは仕方ないですけど、もはや軍歌と全然関係ないですし…」

 「はは、だって和がさあ、“「懲罰」なんだからちゃんとやれ”って
  カンペ出してたくらいなんだから、和が何とかしてくれるだろ。
  メチャクチャきつかったよな!あの鬼畜…」

 「誰が鬼畜眼鏡よ。ずいぶんな物言いね。すでに何とかしてあげたわよ。
  ところで、お茶のお代わり持ってきたんだけど」

律先輩が恨み言を言っていると、背後から、聞き覚えのありすぎる声が聞こえる。



270 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 20:32:53.98 ID:ma4sc4GF0


 「ブフォッ!」「ムグっ!」

全員が茶やまんじゅうをむせ込む。澪先輩が驚愕して、声の発せられた方向に振り向く。

 「和か!?聞いてたのか…」

 「ま、まだ鬼畜までしか言ってないぞ私は!眼鏡なんて言ってないからな!」

うろたえている律先輩を尻目に、和先輩が溜め息まじりに言う。

 「律、それ言い訳になってないから…。
  この発表、私のクビひとつで済むなら安いもんでしょ?
  あなたたちは“懲罰”をこなしただけなんだから、何の責任もないし、安心していいわ」

 「え?和ちゃん、クビって…」

と唯先輩が状況を確かめようとすると、“元学事課長”はこともなげに、

 「さっき、校長先生、じゃなくて教育局長に辞表出してきたの。
  不適切な発表内容は私の懲罰房に対する監督不行届きです、って。
  それにこの行事で、職権濫用しちゃった。
  未承認の予備費とか電力とか、簿外の物資とか、だいぶ使っちゃったし。
  講堂の季節はずれの冷房とか、キャンプファイヤーとか、このお茶とか、
  おまんじゅうの砂糖や小豆や小麦粉も全部そうなのよ?」

と、隙間の空いた前歯を見せ微笑しながら言う。
全員の、まんじゅうを咀嚼する顎の動きが止まる。



271 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 20:35:49.51 ID:ma4sc4GF0


律先輩は、思ったことをそのまま口にした。まんじゅうの皮の欠片がその口からこぼれる。

 「…それ、すごいな」

 「だって、“役に立つ人”って書いて“役人”よ。私はただみんなの役に立ちたかっただけ。
  それに、元々こうするつもりだったから、問題ないわ」

和先輩はさも当然のことをしたように言うが、ムギ先輩が心配そうに眉を寄せる。

 「でも、学事課長って、工廠の公職でしょう?
  それを外れてしまったら、私たちみたいに、前線行きじゃ…」


 「そうよ。でもこれで“徴兵逃れ”呼ばわりされなくて済むし、気は楽ね。
  後輩と一緒なら張り合いもあるもの」

 「ふふ。まあ、この上なく頼れる老兵であることは間違いないな」

澪先輩が、和先輩の言葉を聞いて仕方ないな、とでも言いたげに苦笑する。

 「フフ、失礼しちゃうわね。一学年しか違わないのに老兵って。
  じゃあ、私、他の人にもお茶のお代わり配ってくるから…」

達成感に満ちたすがすがしい笑みを浮かべ、和先輩は去っていった。




272 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 20:48:10.39 ID:2/k7MkPEO

のどかちゃあん……



273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 21:01:12.28 ID:8jON8fNOO

わちゃんかっこいい





274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 21:16:28.56 ID:ma4sc4GF0


再び、全員がキャンプファイヤーに目線を移す。

唯先輩が、改めて目を輝かせながら言う。
キャンプファイヤーの灯に照らされる瞳は、いっそう輝きを増す。

 「でも、“放課後ティータイム”が再結成できてホントによかったよね!」

 「はは、今はその名前じゃないだろ。誰かさんが変えちゃったからな!」

光を失ったその目に新たに熱を宿しつつ、澪先輩が失笑して言うと、
私はその勢いを借りて、律先輩にあてこする。

 「律先輩のせいで電話屋さんみたいな略称になっちゃいましたよ!どうするんですかこの名前!」

 「気付かなかったんだって!実際、放課後じゃないんだからいいだろ…」

唇をとがらせながら恨めしそうに言い返す律先輩。
それを受けて、ムギ先輩が全員の顔を見回して提案する。

 「フフ、じゃあ、戦争が終わって梓ちゃんが帰ってきたときに、名前を戻さない?
  そのときには、放課後も、ティータイムも、復活しているはずよ!」



275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 21:18:06.97 ID:ma4sc4GF0


律先輩が、その提案に賛同してまた笑う。

 「そうだな!そしてまた、それぞれの楽器を演奏しよーぜ!」

その言葉を聞いた澪先輩が、ムギ先輩の袖を引っ張って注意を促しながら言う。

 「…戦士の心を喜びで満たすために、な」

澪先輩の意図を察したムギ先輩は、

 「…そして私たちは、みんなきっと嬉しくなるわ」

と言って、唯先輩に耳打ちする。耳打ちを受けた唯先輩が私に向き直る。

 「…あずにゃんが凱旋するときに!」


 「………あっ!それ4番の後半の歌詞ですか?"When Johnny Comes Marching Home"の!」

そう言って微笑んで目を細めた私の目尻から、涙滴が一滴絞り出される。



276 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 21:21:45.55 ID:ma4sc4GF0


律先輩が、一瞬きょとんとして、その後決まりの悪そうな苦笑を浮かべる。

 「…実は全然意識してなかったんだけど、うまく拾ってつないでくれたなぁ。
  英語なんか全然わかんなくってさ」

 「フフ、律のことだから、そうだろうと思ったけどな。意味も分からず歌えないだろ。
  ふと気付いたんだ。意訳だけどなかなか粋だろ。耳はいいんだぞ?」

 「あら澪ちゃん、ちょっと前まですぐ見えない聞こえないとか言ってたのに」

 「ムギちゃん意外と毒舌になったよね。少し変わった?」

 「あらあらヒドいこと言わないで。唯ちゃんも変わったわよ。成長したわ!」

 「いやぁそれほどでも~」


以前とは少し変わった先輩方が、以前と同じようにダベっている。

 (こんな他愛のないふざけたやりとりも、当分見納めかぁ…)

そんな感傷を抱きながら、私は、まんじゅうを飲み込んだ。

甘い甘いあんこの味を、涙の塩気が、さらに甘く引き立てた。



277 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 21:32:08.10 ID:ma4sc4GF0


────その後、冬の訪れとともに、私たち二年生は兵役に就いた。


──熊本県熊本市北部

そして、今や小隊の戦友となった級友たちとともに、
合志市を経て南に向かう軍用トラックの荷台に揺られながら、私は憂、純と語らう。

一瞬、鼻に焦げ臭さを感じて、幌の隙間から外を覗くと、
休耕田に大破した装甲車が、そのタイヤから黒煙をくすぶらせながら転がっている。

運転席にほど近い荷台の上座で、私たちの様子を眺めながら、
鉄鉢を被った元生徒会長が微笑を浮かべている。

 「あー、こうして振動受けてるとお腹が減るよね」

 「純はいつでも腹ペコだよね…」

 「ふふ、『オツベルと象』みたいだね、純ちゃん」

 「野戦なら食料調達は任せてよ!」

 「純ちゃん、私たちは市内で市街戦みたいだよ。それに私たちは自然薯堀りが主任務じゃないよ…」

 「そうだね。春先はフキノトウとかも採る自信あるよ。意外と街中にもたくさん生えてるし」

 「純はたくましすぎるんだって!」

そう言って、私は苦笑した。



278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 21:43:22.57 ID:ma4sc4GF0


戦闘服の胸ポケットに、名刺大のカードが入っている。
先輩方から出征の際にもらったものだ。取り出して眺める。

   "When AZUSA comes marching home again, Hurrah! Hurrah!
    We'll give her a hearty welcome then, Hurrah! Hurrah!
    YUI will cheer and RITSU will shout
    MIO and TSUMUGI will all turn out
    And we'll all feel gay
    When AZUSA comes marching home! by HTT 改め NTT"

私は苦笑しながら、裏面も見る。

   “あずにゃんぶんがたりなくてこっちがしにそうです! ゆい”

   “やられる前にやってやるですの精神で敢闘せよ! by 律”

   “恥ずかしい略称を直せるのは梓だけだ。絶対帰ってこい! MIO(代筆律)”

   “■←ここをこするとバニラの香りがします。帰ったら本物を! 紬より”

何度見ても吹き出しそうになる寄せ書きを見て、カードをポケットに戻す。

 「フフ…この人たちには、かなわないなあ」




279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 21:50:25.81 ID:SwGa6Nat0

唯はもう漢字とか難しい字を書けないんだな





280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 21:56:25.53 ID:ma4sc4GF0


    先輩方は傷つきながらも、約束通り凱旋してくれた。

    次は、私が約束通り凱旋する番だ。

    そして、本格的に“放課後ティータイム”の活動を再開させるんだ。

      (Come back、私!)

    軍用トラックの荷台の上で、私は小さくガッツポーズをした。






          ───そして、

                “梓は戦場へ行った”


                                    ┼ヽ  -|r‐、. レ |
                                     d⌒) ./| _ノ  __ノ
                                   
                                    制作・著作 ΝΗΚ
─────────────────────
http://www.youtube.com/watch?v=bpqs2zIKpjA
ED曲 "When Johnny Comes Marching Home"






282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 21:58:45.36 ID:ma4sc4GF0

これにて終了。支援感謝。暗い話に長々お付き合い頂き深謝。
一夜明けてスレが残っているのは初めてですごく嬉しい。

ラストは一応投げっぱなしではなく、示唆というか後日談というか的な何か。
ピンときてわかった人もいるかもしれないが、わからない場合は“最後の一行”を少し変えてググると吉。
ヒントはスレタイなど。




281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 21:58:21.74 ID:MoN7mzDb0


梓が結局どうなるのか気になるな



283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 22:03:41.35 ID:33J7YVqoP


久しぶりにSSを読んだけど面白かった



284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 22:03:42.59 ID:SwGa6Nat0


すごい面白かった



285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 22:07:24.99 ID:9co4rDPTP

意識ある肉塊になって帰ってくるのか





286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 22:07:58.64 ID:AfJcZF940

ありがとう。
このSSこれまで書いた中で一番長かった。
最後の一行ぐぐった人、あるいはぐぐらなくても分かった人には、
「最後まで暗い話ですまん」と先に謝っておく。



287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 22:25:10.26 ID:AfJcZF940

>>285、もしかしてあなたは>>2
この話を書いたせいで3年2組の集合写真が出征前の記念写真か何かに見えてしまう




Johnny Got His Gun:邦題【ジョニーは戦場へ行った】
映画タイトルは第一次世界大戦時の志願兵募集の有名なキャッチコピー
『Johnny, get your gun』に対する皮肉。

江戸川乱歩が発表した短編小説「芋虫」にも映画と似通った設定がみられる。
また、両作品をモチーフにした『キャタピラー』という日本映画もある。

wikipedia:芋虫
wikipedia:ジョニーは戦場へ行った
wikipedia:キャタピラー (映画)






288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 22:27:19.03 ID:rpNizssn0

いい最終回だったのか・・・・ 乙



289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 22:35:58.53 ID:2/k7MkPEO

すげえよ!まじ乙!
さりげにマイホームが戦火に曝されてワロタ

ハッピーエンドにはならないか…
ググって後悔したのは淫乱テディベア以来…



290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 22:39:29.21 ID:8jON8fNOO

よかったよ、乙
梓は戦場へいったか



292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 23:17:43.45 ID:WGPqH9BmO

乙です!
凄く面白かったです。



293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 23:21:52.71 ID:5mu1jBUDO

ダイハードでしか聴いたことなかったこの曲が、こんな深いものだと知った今日この頃。


>>1乙。ありがと、面白かった。





291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 23:07:27.35 ID:AfJcZF940

すまん。ありがとう。
初めはブラックラグーンの影響で"When Johnny Comes Marching Home"を軽音部の面々に演奏させたいだけだったはずなのだが…
"Johnny I Hardly Knew Ye"の歌詞を本筋に取り込んだらこうなってしまった…
そういえば>>212の敵性歌謡の伏線回収し忘れたがまあ仕方ないか。本筋と関係ないし。



78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 15:18:30.43 ID:W/Ns2wUZ0

ブラックラグーンのEDで久々に聞いてふと考えた
両曲について下記にて詳述されているのでお好みでご一読
http://pointex.biz/initial/archives/2009/12/240844395011
http://d.hatena.ne.jp/muffdiving/20090617/1245170333




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タイトル:
NO:5703 [ 2012/02/27 22:37 ] [ 編集 ]

このSSに圧倒された
乙!

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