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唯「同じ窓から見てた海」#2 【非日常系】


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唯「同じ窓から見てた海」#index



29 名前:◆G8NSPDDm4.:2010/09/26(日) 01:59:00.02 ID:Yr3zT2U0

トンネルを抜けると、そこには……一面の海が広がっていた。

澪「うわあ……」

思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
雄大な自然。
普段は見ないものだからだろうか、私はそれを目の当たりにする度に大きな感動を覚えるのだ。

澪「はむっ」

事前に用意しておいたポッキーを一本、口の中へ。
カリカリと食べ進めるリズムが小気味よく、チョコレートの甘味がたまらない。

澪「……んっ」

渇いたのどを潤すため、これまた事前に用意しておいた紅茶を一口。
さすがにムギが用意してくれるものとは雲泥の差があるけれど、こういう場面ならこれで十分だ。
……うん、良い気分だ。
今日は良い詩が書けるかもしれない。





30 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:00:25.71 ID:Yr3zT2U0

澪「……」

ガタンゴトン、と電車が揺れる。
心地よい揺れだ。
この電車には、ほとんど人が乗っていない。
私がわざと人が少ない時間を選んだからだけど、一人の世界に――自分だけの世界に入り込める。

澪「……」

窓の外を眺める。
青天の秋空の下には広い、広い海だ。
一度頭の中を空っぽにして……しようとして……

和「ふわあ……あら、海ね。もうすぐ着くのかしら?」

目の前に座る闖入者によって、見事に現実に引き戻されるのだった。



31 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:02:15.78 ID:Yr3zT2U0

……

澪「はあ……」

和「大きなため息ね。幸せが逃げていくわよ?」

澪「いいよ別に……」

おかしい。
そもそも今日は、歌詞が浮かばないというスランプを打破するために
一人で海に行こうと決めていたはずだ。

軽音部のみんな――律にだってこのことは話していない。
明日の練習の時にばっちり完成したものを見せ、みんなを驚かせようと思っていたんだけど……

和「極細ポッキーって、数が多そうに見えることくらいしか利点はないわよね?」カリカリ

どうして和にはばれてしまったのだろうか。
ていうか勝手にポッキー食うなよ。



32 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:04:02.74 ID:Yr3zT2U0

澪「……」ジトー

和「あら……」

私がジト目で見つめていた効果があったのだろうか。
和はしまった、と何かに気づいたような顔をして……

和「はい、安物だけど遠慮なく食べていいわよ」

澪「それ私のだから!」

和「気にしなくていいのに……」

澪「私が気にするよ!」

和「もう、いくら人が少ないからってあんまり大声出しちゃダメよ?」

澪「和のせいなのに説教された!?」ガーン



33 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:05:35.53 ID:Yr3zT2U0

和「わあ、海が綺麗ね」

……本当に何なんだろうか、和は。

今朝、誰にも見つからないように
(以前律に見つかってしまい、泣く泣く予定変更をした苦い思い出が……)
駅に着いた私の前に、和は当然のごとく現れた。

第一声は……そう、

和『遅い!団長を待たせるなんて団員にあるまじき行為だわ。罰金よ罰金!』

…………。
誰だよお前。
一体どこの団長が来たのかとフリーズしてしまったけど、
電車の発車時刻が迫っていたので慌てて中へ。
一息吐いて、さっきのは幻覚だったのだと思い込もうとしたところで……

和『それで、どこに行くの?』

目の前に、和が座っていたのでした。まる。



34 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:07:40.89 ID:Yr3zT2U0

澪「はあ……」

和「またため息?何か悩みがあるなら聞くわよ?」

澪「いや、主に和のせいなんだけど……」

和「……?」

キョトンとした表情で、くいっと首を傾げられてしまった。
どうやら本当に私のため息の原因が分かっていないらしい。
……しかし、和のこういう表情はけっこうレアなのではないだろうか?
無意識なんだろうけど、あどけない表情で子供っぽいというか何というか……

和「萌えた?」

澪「わざとかよ!」

もうどうすればいいんだよ、この和。
和とは一年以上の付き合いになるけれど、キャラがイマイチ掴めていない。



35 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:09:37.14 ID:Yr3zT2U0

和「ふふ……ミステリアスキャラを目指しているからね」

澪「考えを読むなよ!」

和「え?さっきから文字になってるじゃない、ほら」

澪「そこは地の文といって、少なくとも和は見ちゃいけない部分だよ!」

まったく、油断も隙もない……
細かいことは気にすんな☆
頼むから地の文にまで入ってくるな!

澪「はあ、はあ……」

突っ込みが多すぎて疲れる。
唯や律で慣れているつもりだったけど、和の言動には突っ込みどころが多すぎる……



36 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:11:16.16 ID:Yr3zT2U0

和「それにしても……いいわね、こういうの」

澪「えっ?」

和「こうやって景色を楽しみながら、小旅行。何だか楽しくて……落ち着くわ」

澪「……」

そういって微笑む和はすごく大人びて見えて……そう、綺麗だ。
……何というか、ズルイよ和は。

和「ところで澪は何をしに海に行くの?」

澪「えっ?ああ、気分転換を兼ねて詩を書きに行くんだ。最近スランプでさ……」

和「そう、大変ね」

澪「そうでもないよ、私もこういうの結構好きだし。もちろんみんなといるのも凄く楽しいけどさ」

和「ふうん」



37 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:12:24.37 ID:Yr3zT2U0

澪「ま、たまには一人でゆっくり考えたい時もあるんだよ」

和「……あれ?」

澪「ん?」

和「ひょっとして、私ってお邪魔だったの?」

澪「今さらっ!?」ガーン

和「て、てっきり澪は私を求めているのだとばかり」

澪「どこでそうなったのさ!」

何を言い出すんだろうかこいつは。
さっきまで『笑顔が綺麗』だとか『大人びている』とか考えていた私が馬鹿みたいじゃないか……



38 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:13:44.47 ID:Yr3zT2U0

和「だってだって、澪がこの前寝言で『和ちゃ~ん、のどかちゅわ~ん、むちゅ~』って……」

澪「絶対言ってないよ!だいたい何で和が私の寝言を聞いているんだよ!?」

和「澪ったら……すっごく甘々な声で可愛かったわ……///」ウットリ

澪「だから言ってないって!……言って、ないよね?ねえ?」

和「……」ニコッ

澪「うわあああっ、その慈愛に満ちた笑顔でこっちを見ないでくれえっ!」

……あ、でも今のでいい歌詞が浮かんだ気がする。
夢の中でも大好きな人と、かあ。
普段は言えないような素直な言葉を、寝言であの人に聞かれちゃう……うん、いいかも。



39 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:15:17.89 ID:Yr3zT2U0

……

澪「……」

和「……」

二人でボーっと海を眺める。
目的地までは……もう少し時間がかかるかな。
和といる空間は何だか優しげで……居心地がいい。
いつも一緒にいる律は、周りを明るく楽しくしてくれるタイプだから……ちょっと新鮮。

澪「……なあ、和」

和「和様、でしょ?一体誰に断ってそんな失礼な口を聞いているの?」

澪「……」

ああ、これさえなければなあ……



40 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:17:16.74 ID:Yr3zT2U0

和「突っ込みがないのも寂しいわね……。それで何?」

澪「いや、和は何で私について来たんだ?」

ふと浮かんだ、素朴な疑問。
和も海に用があった……なんてことはないだろう。

和「……何だかその言い方だと、私が澪をストーキングしているみたいね」

澪「あ、ごめん。言い方が悪かった」

和「ふう、別にいいわよ。
  私はただ、早朝の街中をコソコソしていた挙動不審な澪を見かけたから、
  何をしているんだろうと思ってね」

澪「そ、そっか……」

そんなに怪しかったのか私……



41 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:20:15.53 ID:Yr3zT2U0

澪「でも何で和はそんなに朝早くから外にいたんだ?」

和「え?澪の家の電柱の側に隠れて、澪の私生活を覗いていたからだけど」

澪「えええっ!?」

和「ちなみに昨夜からいたわ」

澪「お前は紛れもなくストーカーだよ!それも悪質な!」

和「……///」

澪「褒めてないからな?」

和「照れないでダーリン」

澪「棒読み棒読み」



42 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:21:04.02 ID:Yr3zT2U0

和「照れないでよぅ……だぁりんっ♪」

澪「感情こめてくれっていうリクエストじゃないよ!?
  というか和、今のはゾクッとしたぞっ!?」

和「まあ、実際は散歩していただけよ。
  最近勉強ばかりで疲れていたから。
  澪について来たのも、いい気分転換になりそうだったから」

澪「ああ、そうか」

最近の和は確かに少し顔色が悪かった。
国立大学を狙う受験生である上、生徒会長という役職を持つ和はとくに忙しい。
さらに真面目で妥協しない性格のため、休む間もなく頑張っていたんだろう。

和「……」

窓を開け、車内に入ってくる風に当たって心地よさそうに目を細める和。
ん、何かまたいい歌詞が浮かびそうだ……



43 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:23:00.49 ID:Yr3zT2U0

……

澪「……」

和「……」

再び静かな時間が流れる。
窓の外は、一面の海。
二人で同じ景色を共有する……うん、これも歌詞に使えるかも。
……もうすぐ着くかな?

和「……そういえば」

澪「ん?」

和「どうして澪はわざわざ海に行こうと思ったの?
  一人になりたいだけなら、もっと近場でも色々あるじゃない」

澪「ああ……」

確かに。
一人でゆっくりと考えたい、というだけなら場所はいくらでもあるだろう。
でも私は昔から考え事がある時はこうして遠出をして来た。
そうしたほうがいい考えが浮かぶような気がするし、それに……



44 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:24:09.12 ID:Yr3zT2U0

澪「海が好きだから、かな」

和「へえ……」

大きくて、大きくて、とてもとても大きい海。
律や唯はすぐに入って遊びたがるけど、私は海を眺めるだけでも十分心が満たされる。
何だか優しい気持ちになれるんだ。

澪「和も……海、好き?」

和「ええ、もちろん」

澪「そっかそっか!」

どんな些細なことでも、やっぱり仲間がいるのは嬉しい。
私と和は笑い合って……

和「キスをした」

澪「しないよ!」

和「ちっ」

やっぱり和は和だった。



45 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:25:19.62 ID:Yr3zT2U0

……

澪「ん~~~、着いたっ」

和「いい天気ね……」

電車から降りて、歩くこと数分。
目的地に到着!
潮風が心地いいなあ……

和「よし、泳ぎましょう!」

澪「うん、何となく和なら言うと思ったけど。さすがにそれはない」

和「……あら?澪もレベルを上げたわね」

和のおかげでな。
正直に言ってあまり嬉しくはないけど。
……いや、律をあしらうのに意外と役に立つかも……?



46 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:27:08.33 ID:Yr3zT2U0

澪「それにしても、和は泳ぐのが好きなのか?」

和「ええ。さっき言ったと思うけど、海が好きだからね」

澪「ああ……でも、海がはしゃぐ和というのもイメージしにくいな」クスクス

和「失礼ね、私は昔からよく海に来ていたわ。唯や憂と一緒に」

澪「なるほど」

和「みんなが海で遊んでいる間……
  私はシャツとジーンズ、麦藁帽子で防御を固めて
  パラソルの下から一歩たりとも外に出なかったわ」

澪「それ絶対に海好きじゃないだろっ!?」

和「本を持ち込んで、潮風で傷んでしまったから浜辺からも離れたり……楽しかったわ」ウットリ

澪「そんな『海での楽しい思い出』みたいに語る内容じゃないよな!?」



47 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:28:05.30 ID:Yr3zT2U0

和「そんな私は山が苦手」

澪「そ、そうか……」

和「山に行くと、思わず鼻歌を歌ってしまうわ」

澪「思いっきり浮かれてるじゃん!」

和「はい、到着」

澪「え?」

和のボケにつき合っているうちに、結構遠くまで歩いて来たみたいだ。
後ろを振り返ると、二人分の足跡が長々と続いている。
……何かいいな、こういうの。
また歌詞のネタになりそうだ。



48 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:28:47.41 ID:Yr3zT2U0

和「何してるの?ほら澪、見て」

澪「何かあるのか……わあっ!」

地平線の彼方まで、というやつだろうか。
どこまでもどこまでも青い海が続いている、すごい光景だ。

澪「……」

言葉も出ない。
今まで何度も来たことがあるけど、これほど綺麗に、はっきりと見たことはなかったように思う。

和「今日はいい天気だし、波も穏やか。いい景色ね」

澪「うん、すごいよ……」



49 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:29:43.71 ID:Yr3zT2U0

和「どう?いい歌詞は浮かびそう?」

澪「え……あ」

そうだった、歌詞を考えないと。
いそいそとノートを取り出し、今の気持ちを率直に綴って行く。
今までの間に思いついた分と合わせて……うん、良い感じだ。

和「……」

隣をチラリと見ると、和は岩に腰を下ろして読書を始めていた。
私も歌詞作りに没頭しよう……

澪「……」カリカリ

和「……」ペラッ

しばらくの間、波の音に重なるようにペンを走らせる音とページを捲る音だけが響いていた。



50 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:31:31.86 ID:Yr3zT2U0

……

澪「ん~、いい歌詞が出来た!」

和「ふふ、良かったわね」

帰りの電車の中。
行きとは反対側に座り、また窓から見える海を眺めながら和と話す。

澪「今まで歌詞は一人っきりの世界で考えてたけど……誰かと一緒に、というのも新鮮でいいな」

和「そうなの?」

澪「うん、いつもより色々と浮かんできたよ。和だからかもしれないけど」

和「お役に立てたようなら嬉しいわ」

ふわりと笑う和。
不覚にもドキッとしてしまう。



51 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:33:00.69 ID:Yr3zT2U0

和「それなら今度は唯たちも誘ってみたら?新しい発見があるかもしれないわよ?」

澪「えっ?う、う~ん……律や唯が来ると、異様に騒がしくなるんだよな……」

和「いいじゃない、底抜けに明るくて、楽しい歌詞になるんじゃない?」クスクス

澪「むう……」

少し考える。
確かに誰かと一緒に海に来て考える、というやり方はなかなかに有効だと実証された。
でもお守りになるだけの可能性があるんだよなあ……

和「それにほら、見て」

澪「ん、何……わあ……っ!」

和に促され、窓の外を眺める。
そこには昼間見た青い世界ではなく……



52 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:35:16.22 ID:Yr3zT2U0

澪「綺麗……」

夕日で真っ赤に染まった世界が、広がっていた。

和「どう?この景色、二人占めにするにはもったいないと思わない?」

澪「……」

少し悪戯っぽく微笑む和。
……うん、そうだな。
歌詞なんて関係なく、この素晴らしい景色は
ぜひ律に、唯に、ムギに、梓に――みんなに、見せたい。

澪「……和」

和「どうしたの?」

澪「今度はみんなで見に来ような!」

和「……ええ♪」

でも今は……和と二人でこの景色を楽しもう。
同じ窓から見ている景色でも……一緒にいる人が違えば、違う色に変わるはずだから。


終わり!



53 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします:2010/09/26(日) 02:36:25.59 ID:Yr3zT2U0

お目汚し失礼。サクサク投下出来るのはいいねー
皆さん頑張ってください、おやすみ



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唯「同じ窓から見てた海」#2
[ 2010/09/26 11:52 ] 非日常系 | 澪和 | CM(0)

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