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律「卒業旅行!」 【非日常系】


http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1315322390/l50




1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 00:19:50.57 ID:Mppqivd80


律「最後にビッグなことしよーぜ」

唯「ほえ~」

梓「卒業旅行ですか……」

律「フッフッフ どこに行くのか知りたいか?皆の衆」

紬「知りたい知りたーい」

澪「こ、怖いのはなしだぞ…リビアとか」

律「求めるのは、日本じゃ体験できないロマン!雄大な景色!とてつもない達成感!
  ……それは……」

唯「それはー?」





7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 00:30:21.68 ID:Mppqivd80


田井中律、平沢唯、琴吹紬、秋山澪の合同葬儀は、

四人の死体が標高8000mから回収された後にしめやかに営まれた。

女子高生4人が遭難事故を引き起こしたこと、

また、四人の遺体を回収する際に2人の尊い命が失われたことに関して、世間の目は冷たかった。

事故は、彼女たちが高校卒業後の春休みに起きた。

付け焼刃の登山経験、十分でない体力、知識……登山は自己責任であるとは言え、

彼女たちに許可を出したガイド会社、××××政府は少なからず非難されるべきである。

この痛ましい自己の発起人は、彼女たちが所属していた高校の軽音楽部の部長、田井中律である。

事故報告書の冒頭には、若く散った4人に捧ぐとだけ、軽音楽部の部員5名で撮った写真の下に小さく記されていた。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 00:34:08.53 ID:Mppqivd80


彼女たちの亡骸は、7年の歳月をかけ回収され、

凍りついた骸は4人が同時に帰国できるよう、カトマンズで防腐処理をされた後に、成田に飛行機で空輸された。

琴吹財閥の令嬢が関与している事で、マスメディアは当時騒ぎ立てたが、

事故発生から7年の歳月がたった後では少し静かになっていた。

軽音部の最後の部員である中野梓は、高校を卒業して6年が経過し、大学最後の年を迎えて就職を控えていた。

当然、彼女も葬儀に参列した。

彼女らの家族は、涙も枯れたというふうに呆然と立ち尽くし、坊主の念仏だけが虚しく響いている。

梓は、憂に会わず、いたたまれなくなり、式場を後にした

―しかし、タクシーに乗ろうとした時、後ろから声をかけられた



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 00:36:58.84 ID:Mppqivd80


一冊の汚れたノート。

捜索隊が、遭難した彼女らがつくった雪洞の中で発見した、平沢唯のものと思われる記録―

遺族らの感情を考慮して、非公開とされる。

捜索隊を組織した、琴吹紬の父が読み、その後、非公開を決定した

当然残りの遺族は納得せず、特に平沢家はその件に関して訴訟を起こすが、

琴吹紬の父は、精神衰弱で入院後、まもなく自らの命をたつ

その後、ノートの行方は知れない



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 00:43:11.00 ID:Mppqivd80

遺書P1

遭難しました。みなさん、ごめんなさい。心配かけて、ごめんなさい。
何もすることがないので、記録をつけますね。
今、みんな雪洞の中でうつむいて、残された人たちに謝っています。
雪崩に巻き込まれたりっちゃんも意識を取り戻していますが、
脚の骨が見えるほど深い傷を負っています。
とても彼女を背負って私達はこの8000メートル峰を降りることなど出来ません。
外は予想された通り、低気圧に覆われ、天候は悪化の一途をたどっています。
これから私達がどうなるのかはわかりません
りっちゃんは、みんなに、はやく降りろと息も絶え絶えになりながらつぶやいています。
でも、誰もりっちゃんを見捨てて降りることなんてできないよ。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 00:48:34.65 ID:Mppqivd80

遺書P2

温かいココア。ムギちゃんが入れました。
一番力持ちな彼女が、りっちゃんを掘り出し、
私達4人がなんとか重なりあうようにして入れる雪洞をつくってくれました。
私も一緒に手伝いました。雪洞に入ってから気がついたのですが、
左指が全て凍傷で、ちぎれていました。手袋が外れていたなんて、無我夢中で気がつかなかったよ
もうギー太も弾けないね
無線や衛星電話は、りっちゃんのリュックに全て入っていました。
無限に広がる雪田の上で、それを見つけ出すすべは、私達にはありませんでした。
澪ちゃんが、すぐにりっちゃんに心肺蘇生法を施したんだよ。
その間、私達は、ひどく体温が低下したりっちゃんを温めるための雪洞を掘り出したんだよ
だって、高度7000メートル以上ではテントは吹き飛んじゃうから



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 00:51:09.15 ID:Mppqivd80

遺書P3

それから、1日、私達はりっちゃんの側に寄り添っていました。
りっちゃんは目を覚ましたとき、私達は大喜びしました。

でも、りっちゃんは自分を呪っていたのです。
呪いの言葉を延々と呟き、最後に、涙を流す私達に、「先に山からおりてくれ」と告げました。

だれも何も言い返す事はできませんでした。



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 00:57:53.02 ID:Mppqivd80


遺書P4

一番体力が残っていたのは、澪ちゃんでした。

りっちゃんはもう歩けないし、私も左手の指と、足の指が全部凍傷で落ちました。
ムギちゃんは、頑張りすぎたのか、目がかすれてほとんど見えないそうです。

りっちゃんは、強く澪ちゃんに降りるように告げました。

でも、澪ちゃんは、否定とも肯定ともつかないように
首を縦に横にふるだけで、りっちゃんの側から離れようとしません。

それからりっちゃんは「あそこで死ねばよかった」と言いました。ムギちゃんが泣きました。



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 01:02:02.38 ID:Mppqivd80

遺書P5

食料は、ムギちゃんが持っていた粉ココア2袋、スニッカーズ8本、ビタミン錠4粒、
私が持っていた、チョコレート粒12粒。
澪ちゃんが持っていた、スニッカーズ4本。りっちゃんのリュックは流されました。

これで何日もつかわかりません。
でも、身じろぎもせずに、寝袋にくるまって、待てば、3日は持つそうです。

ムギちゃんが気持ちを落ち着けるために、
固形燃料で温めたお湯にココアを溶かしてみんなに回しました。こんな美味しいティータイム

私は自分を呪いました。りっちゃんは、死んだように固まっていました。
幸いなことに、雑菌のない環境なので、肉が裂けた足の傷から腐敗することはありませんが……

外は、まるで空母の看板に立っているかのような暴風が吹き荒れていました。
これでは、到底ベースキャンプまで帰ることもかないませんね



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 01:09:35.92 ID:Mppqivd80




―あの時、りっちゃんを見つけなければよかったんだわ。
あきらめて、ベースキャンプまで引き返せばよかったんだわ。
そうすれば、悲しいことだけど、今頃、温かい部屋の中で、涙を流せたのに!

蠅もわかない氷点下50度、お湯も沸かない400hPa
ああ、ここは人間がきちゃいけない場所だったのね……
りっちゃんよ、りっちゃんが、卒業旅行に……ここは人間がきちゃいけない場所だったのね―



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 01:17:06.53 ID:Mppqivd80

知識1
ガイドの話

えー、君たちがこれから登る、カンチェンジュンガのピーク、
8500メートルの気圧はですね、地上の実に1/3。
つまりどんなトレーニングを積んだクライマーでも、実に48時間しか滞在できないんです

あ、8000メートル以上はね
本当なら、こんな女の子たちに登ることは、僕なら禁止するんですけどね、
ええ、もう十分な報酬はもらっちゃいましたから

とりあえず、頂上に行くための技術は2ヶ月で全て教えましたよ
あと、7500メートルに一度ベースキャンプを張って、そこから2日かけて頂上に一気にアタックして
8000メートルから上は、酸素を使っても、頭がぐわんぐわん揺れて、大変だろうけど、頑張ってね

あと、雪崩とクレバスには十分に気をつけてね
じゃあ、健闘を祈ってるよ



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 01:21:59.03 ID:Mppqivd80


知識2
世界第三位のジャイアンツ・カンチェンジュンガについて

カンチェンジュンガ、標高8586メートル、世界ではエベレスト、K2についで三番目に高い山である。
初登頂はイギリス隊によって1955年に達成。
人間の限界に近い高度もさる事ながら、的確なザイルワーク、登攀技術が必要なため、登頂は非常に困難。
とても女子高生4人で登れる山ではありません。
プロでも何人も死んでいます。



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 01:30:38.43 ID:Mppqivd80

遺書P6
ハッ、ハッ、ハッ

4人の息遣いが、暗くて冷たい雪洞の中に、それだけがやけにくっきりと聞こえます。

雪洞に入って、から1日と半分。リッちゃんが目を覚ましてからおよそ10時間が経過していました。

私達が標高8000メートル付近のビバーク地点に来てから2日が経過しています。
私は、頭蓋骨の内側で、数匹の芋虫がゆっくり脳を食い破るような鈍い痛みで
雪洞に入ってから全く寝ていません。
おそらくこれは高山病です。
私はまだいいほうで、ムギちゃんの状態が深刻です。先程から、うわ言をいっています。
それも、聞くに堪えない、憎しみの言葉が、あの天使のようなムギちゃんの口から

そしてリッちゃんの呼吸がだんだん小さくなってきているのです。
澪ちゃんのシャツを使って、ちぎれた足をきつく縛って止血しましたが、
やはり出血量が許容できないレベルになっているのでしょうか。

リッちゃんもうわ言を言っています。ずっと、繰り返すように「降りろ降りろ」と。誰に?誰に?

もう外は、激しいブリザードが吹き荒れ、下か上かもわからない牛乳瓶の底にいるんだよ、私たちは

踏み抜けば、2000メートル下まで真っ逆さまの雪庇。
落ちたら二度と這い上がれない、氷の底へつながるクレバスがいたるところにあるんだよ?

きっと、私たちは死ぬ。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 01:37:13.04 ID:Mppqivd80

遺書P7

澪ちゃんは、リッちゃんの側を片時も離れず、すすり泣きながら、リッちゃんの頭を抱えています。

雪洞に入ってから、48時間、標高8000メートルの死の域に突入してから60時間が経過しました。

私たちはもうダメです。8000メートル以上に、このように長時間滞在すると、
脳浮腫と肺水腫が致命的なレベルまで上昇するのです。

今はまだ、生きています。
でも、8000メートルをおりていくに従って、
脳は膨れ上がり、肺は水を貯めこみ、地獄のような痛みに責められ死ぬんです。

でも、ここにいても、時期に死にますよ。

リッちゃんのうわ言が聞こえなくなって、時折ムギちゃんが絶叫している時、澪ちゃんが告げました。


澪「律が死んだ」



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 01:43:39.25 ID:Mppqivd80

遺書P8

ありがとう、リッちゃん。ありがとう澪ちゃん。ありがとうムギちゃん。

ごめんね、あずにゃん。憂。みんな。お母さん。


ここには来ちゃダメだよ




平沢唯の遺書ともいうべきこのノートはここで途切れる



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 01:49:23.03 ID:Mppqivd80


紬「もう……下りましょう……こんな所から……早く助けて……」

澪が律の死を告げても、紬と唯の二人は疑うことなくその非情な死を受け入れた。

澪「……律が死んだ」

紬「わたしたちは?どうなるのよ?早く降りてれば助かった……

  天気が崩れないうちに、みんながいるベースキャンプまで降りれれば助かったのよ!

  ハァハァハァハァ……ゴホッ」

唯「ムギちゃん、落ち着いて、落ち着いて、ね?」

紬「血が……肺から血が……もう……私は……」

澪「律が死んだんだ」

唯「澪ちゃん!」



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 01:53:07.72 ID:Mppqivd80


律が死んだ時点で、彼女たちの食料は尽きていた。
体は末梢から徐々に冷え始め、視界は皆かすみ、
真っ暗闇の中で灯した最後の蝋燭がいくつも重なって見えた。

蝋燭は唯が灯した。律が死んだ時点で、彼女は、自分が生きることを断念した。

死を受け入れると、暗闇が更に一層濃くなって、
何もかもを飲み込む感覚に襲われ、涙がこぼれそうになったので、唯は最後の蝋燭を灯したのだ。


紬はまだ生に執着していた。澪は律の死を受け入れることを拒んでいた。



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 01:55:26.85 ID:Mppqivd80


紬「……まだ助かるわ、早く、この穴から出ましょう!

  今から降りれば、助かるかもしれない。ここに居たら、死んじゃう!」

澪「でも……律が……」

紬「リッちゃんは死んだのよ!私たちはまだ生きているの!」

澪「こんな律を、この誰も知らない場所に独りぼっちには出来ない……

 私達が降りたら、律は、永遠にここで独りぼっち。生存を許さない極限の地で独りぼっち。

 そうするくらいなら、ずっと律と寄り添って……10年でも……100年でも……1000年でも……
 
 人間がこの地球からいなくなっても……私たちは、虫けら一匹寄り付かないこの頂きの側で……」
 
唯「澪ちゃんはやっぱり女の子なんだね」

嗚咽に混じって、震えて小さくなった澪の声を、唯はしっかり聞いていた。



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 01:59:18.32 ID:Mppqivd80


紬「死ねば、終りよ、死ねば……私たちは生きている……生きていることが幸せなのよ

  リッちゃんも言ってたじゃない。私達に下りろって。
  山から降りて、日常に戻れって。戻りましょう、澪ちゃん。まだ間にあうわ。」
  
澪「嫌だ!嫌だ!もう遅いんだ……私は律とここにいるんだ!」

紬「唯ちゃん!」

唯「もう遅いよ、ムギちゃん。

  この吹雪の中、外に出ても、10歩歩いたら、どっちに向かっているのかさえわからなくなるよ。

  ゆっくり、待とう。吹雪が止んだら助けが来るかもしれない。
  
  それまで、生きていれば、助かるかもしれないよ。」



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:01:37.22 ID:Mppqivd80


紬「いやだ、いやだ、死にたくないわ。唯ちゃんもわかってるでしょ?

  私たちは、あと1時間も持つか分からないって。

  ずっと頭がいたい。胸が苦しい。吐きそう。

  でも、喉はからからに乾いている。暑い。寒いのに、暑い。

  太陽が見えるわ。太陽よ、ほら、晴れてきた!

  今なら間にあう、早く、早く、おりて、また、ティータイムを」


紬は絶叫しながら、雪洞の外に飛び出した。

太陽なんてそこにはなかった。引きこまれそうな暗いヒマラヤの奥の奥。

外は雪が吹き荒れ、延々と白い景色が広がっている。

唯も澪も、紬を止めようとしたが、体は動かなかった。

彼女が飛び出した後も、追いかける気力は二人に残っていなかった。

ただ、唯には確信があった。

ムギちゃんは死んだんだ。



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:04:52.35 ID:Mppqivd80


澪「なぁ、唯は降りなくていいのか。」

唯「うん」

澪「そうか。ごめんな。」

唯「ありがとう」

最後のロウソクの明かりが消えて、この世界には澪ちゃんと私の声だけしかないのです。

もう二度と、澪ちゃんの顔も、リッちゃんの顔も、ムギちゃんの顔も見れないのです。

会話が途切れた時、私達の最後がやって来る気がしました。

澪ちゃんもそれを理解しているのか、

あの恥ずかしがり屋の澪ちゃんが、必死に言葉を紡いで私に語りかけました。

初めての出会い。けいおん部での出来事。あずにゃんの入部の時の話。ずっと、ずっと、昔の話。

澪ちゃんがリッちゃんと出会った時の話。ムギちゃんが入部してきた時の話。

私の知らない、澪ちゃんの話をたくさん聞きました。



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:09:24.56 ID:Mppqivd80


澪「ムギのこと……」

唯「ムギちゃん?」

澪「地獄で謝っても、許してくれない……ムギ……」

唯「そんなことないよ、澪ちゃん。ムギちゃんは、ほんのちょっぴり怖がりだっただけ。

  ああ言ってたけど、澪ちゃんの事なんて恨んでないし、また笑ってお茶できるよ」

でも地獄になんかいけないよ、私たちは、永遠にここに閉じ込められる。

澪「ごめんな、みんな。ありがとう、唯。」

唯「澪ちゃん」

澪「ああ、そろそろ行くよ、太陽が見える。ムギの見た、太陽だ。

  でも、律。側にいるから安心しろよ。暖かいよ、唯。

  死がこんなに暖かいものだったなんて知らなかったよ。
 
  頭がいたいよ……ママ…」
 

音まで消えた暗闇の中で、私はそっと体を起こし、
澪ちゃんの顔のあたりに手を伸ばして、抱きしめようとしたけれども、もうそこに澪ちゃんはいませんでした。



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:12:43.41 ID:Mppqivd80


葬儀の後、タクシーに乗ろうとした梓を引き止めたのは、

平沢唯の親友であり、軽音部の善き理解者だった真鍋和だった。

彼女の高校卒業後依頼の再開に、一瞬梓は誰だかわからなくなった。

和は、肌がこんがり焼けて、メガネをしていない目は、

どこか遠くを見ているような透明なまなざしだった。

和「お久しぶりね、梓ちゃん。」

梓「……和さん、ですか」

和「明日から、暇かしら?」

梓「あ、はい。明日は……」



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:16:52.99 ID:Mppqivd80


梓は気がつくと、ネパールにいた。

数日後から、新社会人としての仕事が始まるのに、和に連れられて、ネパールにいた。

梓がそのことについて、文句をいうと、和は「人生には寄り道も必要よ」とさらっと言った。

来年も就活かぁ、と梓はため息を漏らしたが、

不思議と嫌な気分ではなく、この行事が何やら神聖なものにさえ思えてきた。

和は大学も行かず、世界を旅していたらしい。

そして、3年前からヒマラヤで、4人の死体の捜索体に加わっていた。

カトマンズから、バスで長距離を移動し、ヒマラヤの麓の町から、彼女たちのトレッキングが始まった。



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:19:45.52 ID:Mppqivd80


キャンプを9泊し、梓は高山病に苦しみながら息絶え絶えに辿り着いたのが、標高5000メートル、

遥か遠くにカンチェンジュンガを望める、今回のトレッキングの目的地だった。

ぶ厚い鉛の壁のような、ヒマラヤ山塊の奥に、ひょっこりと鋭い山頂が見えると、

和が梓に、あれがカンチェンジュンガだと教えた。

梓は、夕日に照らされる、その怪物じみた頂を見て、涙を流した。

先輩たちは、あそこで死んだ。



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:22:41.24 ID:Mppqivd80


和「所で、梓ちゃんは、唯が残した遺書、知ってたかしら」

梓「……憂が裁判を起こしているやつですよね……」

和「私、あれ読んだのよ。知りたい~?」

梓「し、知りたいです!」

和「でも教えない」

梓「ズコー」



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:27:10.51 ID:Mppqivd80


和「あれを憂に見せられない、というのはわかるわ。とっても寂しくて、怖くなる内容だから。
  あ。あずにゃんありがとう。って書いてあったわよ。
  私の名前には言及がなくてショックだったわ」
  
梓「唯先輩……」

和「そして、ノートの一番最後のページ。

  これは、きっと琴吹さんじゃなくて、梓ちゃんと憂に渡すべきものだと思ったから、

  私が回収したその場で、破って懐に隠したの。」

そう言って和は、懐から薄汚れた1枚の紙を取り出して、梓に渡した。



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:29:16.65 ID:Mppqivd80


最後のページ

澪ちゃんもこと切れた後、どれくらいの時間がたったでしょうか?

10分しか経っていないのかもしれないし、1日はたったのかもしれない、

3日くらいひょっとしたら経過しているのかもしれない。

私は、まだ自分に意識があることに驚き、そして体がとても軽いのです。

私は、寝袋から這いずりだし、春の陽光を求めるように、穴から這いずり出しました。

夜でした。ヒマラヤの空は、星でいっぱいでした。


生きててよかったよ、


さようなら。




終り




38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:33:02.10 ID:15JxIeAP0

日記が終わり って意味ですね
みんな勘違いするなよ





39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:35:14.24 ID:Mppqivd80

>>38
もう終劇です


アンデスの聖餐にしよーと思ってたけど、酔いが回ってムギちゃんが可愛く見えたから辞めた

ロンドンよりも、モスクワかキエフ、欲を言えばコルドバの方が街として好きだ

ムギちゃんは絶対アングロサクソンよりもスラブの方が似合う

ムギちゃんの映画での活躍に期待!

ご清聴ありがとうございました




40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:41:00.61 ID:15JxIeAP0



コンパクトで素晴らしい
てか和さん人生遊びすぎだろ



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:43:52.02 ID:nDLk4BKG0

おっつん



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:50:23.93 ID:N09x08gv0


面白かったんだが感想に困るなコレ



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 02:59:45.99 ID:5pKHaIB/0

和が日記の最後のページを破ったくだりがよく分からなかったが、どういうこと?



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/07(水) 03:02:38.44 ID:15JxIeAP0

多分没収されることは予想できたんで、唯が伝えたかったことだけ梓に渡した ってことだろ






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律「卒業旅行!」
[ 2011/09/07 18:41 ] 非日常系 | | CM(3)

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タイトル:
NO:3781 [ 2011/09/07 19:37 ] [ 編集 ]

うわぁ・・・
最初は急展開で笑っちまったが・・・
まさかこんな内容だったなんて・・・・・

タイトル:
NO:3782 [ 2011/09/07 21:55 ] [ 編集 ]

出オチでやられたかと思ったが…
悲惨な展開ながらも、最後に唯が残した言葉、和ちゃんの変わり様と
梓のやり取りで晴れやかな終わり方が素晴らしい。
ただ、敢えて梓と憂が関わらない様に読み取れますが、
その部分の描写がもう幾分か有った方がとも思う。

タイトル:
NO:3789 [ 2011/09/08 16:52 ] [ 編集 ]

今度の映画もこんなのだったらすごい楽しみなんだが。

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