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純「友達はレズビアン」 【非日常系】


http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1315501253/l50




1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:00:53.86 ID:Rh7YztNYO


純「ふあぁ……」

 おはようございます、鈴木純です。

 髪はテンパ、目はつり目、スタイルもさしてよくないけど強く生きてます。

 おかげで私も高校生として、今年から桜が丘高校というところに通いはじめられました。

 女子高だもんですから、別になった中学の友達からはレズ扱いを受けてるけど平気です。

純「ん……」

 だいたい女子高だからといって、レズばかりということはありません。

 クラスにせいぜい5人いれば多いほうかなと、これまでの経験上思っています。

 付き合ってる子なんて私は一人しか知らないし、
 
 たいていの人はちゃんと彼氏が欲しいって言っています。

 私もそんな一人。

 かっこいい彼氏とかもほしい、普通の女の子です。

純「……おい」

 なのですが。





3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:03:08.02 ID:Rh7YztNYO


梓「んー? あ、純おはよう」

 今朝もあれ。

 女の子が私の隣で寝ていました。

純「……なんでいるの」

梓「なんだか昨日は、純と寝たくなって」

純「それで来ちゃったんだ?」

梓「うん。だめだった?」

純「だめにきまってんでしょ! さっさとでてけ!」

梓「ちぇー、かわいくなーい」

 パジャマ姿ですごすごと退却してくれた彼女を紹介しよう。

 いや彼女って、そういう意味の彼女じゃなくて。

 シーです。あくまで。

 彼女は中野梓といって、私と同じ桜が丘高校の1年生。クラスも同じです。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:06:05.89 ID:Rh7YztNYO


 腰まであるような長くて黒い髪をツインテールにしていて、

 初めて話したときにそこをかわいいと褒めたのを覚えています。

 そしたら彼女は曰く、

梓「純……わたし、純みたいな子にそういうこと言われたら、好きになっちゃう」

 と。

 この件を要約しますと、つまり、

 女子高に入学1週間でレズにターゲッティングされた。

 と。

 怖いですね女子高。

 それでも私は元気です。

 今日もはりきって、ベースひっかついで学校に行きますよ。

 ゴーゴー! がんばれ純ちゃーん!

 ……はぁ。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:08:05.03 ID:Rh7YztNYO


 シャワーを浴びて、髪をしっかり整えます。

 朝はさすがに梓も時間がないみたいで、落ち着いてシャワーを浴びられます。

 ていうか時間ないならうちに来るなよ。

 朝シャンのあとは朝ごはん。

 お母さんのご飯はやっぱりおいしいですね。

 さあ腹ごしらえをして、制服に着替えて学校へ。

梓「おっはよ、純! 一緒に学校いこ!」

 玄関を開けるといつものがいました。

純「はいはい……」

 通学中は身体的なセクハラはあまり受けないので、断る理由はありません。

 こんなやつでも小学校からギターをやっていて、話は意外と合うのです。

梓「じゅんじゅん、手つなごうよ」

純「絶対にやだ」



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:10:05.24 ID:Rh7YztNYO


 手を繋いだら最後、クラスどころか学校中に噂は広がり、
 
 私までレズのそしりを受けることになります。

 梓がところかまわず愛を叫ぶせいで、私が狙われていることはけっこう有名なのです。

梓「じゃあ腕組んでいい?」

純「やだって言ってんでしょ」

梓「じゃあキスしよっか」

純「あんたもう先行けよ」

 今日は梓の調子がわりといいみたいです。

 私は梓の首を掴んで先を歩かせることにしました。

梓「……」

純「とたんになんも喋らなくなって」

梓「だ、だってさ……こうやって後ろを歩かれてると」

梓「いつ純が私のおしりを触ってくるかって……ドキドキする」

純「触らねえよ」



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:13:07.77 ID:Rh7YztNYO


 やっぱり後ろを歩かせたほうがいいのでしょうか。

 ってそれは何より危ない。

 落ち着け私。

梓「好きだよー純ー」

純「黙って」

梓「純。女の子を黙らせる方法はひとつだよ」

純「ふむ……殺す?」

梓「純にならいいかも」

純「そう言われると殺したくないな」

梓「やっぱり愛してるんだね」

純「私の話ちゃんと聞いてる?」

 そうこうしているうちに学校につきましたが、

 梓とはクラスも同じなので解放はまだ遠いです。

 というか解放なんてないです。



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:15:06.61 ID:Rh7YztNYO


 下駄箱にくると梓が振り返りました。

梓「純、くつ脱がしてあげる」

純「やめて、嗅ぐ気でしょ」

梓「そうだけど」

 私は梓を押し退けて靴を脱ぐと、早々に下駄箱を開けてうわばきに履き替えました。

梓「くっ」

 下駄箱に鍵をかけ、勝利のポーズ。

 鍵がかけられるタイプの下駄箱でほんとうによかったです。

純「先行ってるかんねー」

梓「あ、ま、待ってよ純! ハニー!」

純「誰が……」

 振り返って言いかけたところで、梓の後ろに衝撃のものを見た。



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:18:06.47 ID:Rh7YztNYO


憂「……ん。じゃあ、またね!」

唯「ばいばーい、憂!」

 紹介しよう。

 私の友達(レズ)その2、平沢憂。

 これはなんとすごいですよ。

 自分のお姉ちゃんと付き合ってます。

 しか、しかも、い、いまっ、

純「う、憂ー!?」

憂「あ、おはよう純ちゃん。梓ちゃんも」

梓「おー。おはよう」

純「おはようじゃなくて! 憂、いま、あんた学校でっ」

憂「え? ああ、そういえば今まで昇降口で会ったことなかったね」

憂「見られたって思うと、ちょっとだけ恥ずかしいね」



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:20:06.24 ID:Rh7YztNYO


純「ちょっとか……」

憂「うん。エヘヘ……」

梓「私は全校生徒の前で純とキスしても恥ずかしくないよ」

純「最初から梓に恥の精神なんか期待してないから」

梓「エヘヘ……」

 もはや何も言うまい。

 私たちは1年のレズ3人娘だと後ろ指さされながら教室に行きました。

 誤解じゃ何を言われても平気です。

純「あー、1限数学ってやだねー」

 時間割りを見てげんなりします。

 早くベースが弾きたいものです。

梓「私は純と一緒ならどんな授業でも最高だよ」

純「朝から落ちるなー」



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:23:05.97 ID:Rh7YztNYO


 今日は朝からレズに絡まれすぎてちょっと辛いです。

 1限は居眠りしようと思います。

憂「でね、お姉ちゃんがぎゅーってね」

梓「いいなあ。私も純に抱きしめられたい」

純「やーだーよ」

憂「ちょっとぐらいいいのに、ねぇ?」

梓「ううん。私は純がちゃんと私を愛してくれるまで待つよ」

憂「偉いなあ。私なんてふつーにお姉ちゃんに襲われたのに」

 ……それから、一応もう一人のレズについても説明しましょう。

 私は直接会ったことはまだないですが、2年の先輩、憂のお姉ちゃんである平沢唯です。

 軽音部に在籍していて、梓の先輩という形にもなってますね。

 この人がとにかくすごいらしいです。



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:25:10.56 ID:Rh7YztNYO


 まず先ほども言ったのでわかるでしょうが、自分の妹である憂と交際していること。

 しかもそれが10歳のときで、憂は無理矢理……されたらしいのです。

 無理矢理してきた姉と付き合うぐらいだから、憂も相当すごいんですけどね。

 そして何より恐ろしいのが、彼女の抱きつき癖だそうです。

 相手がかわいい女の子と見れば抱きついて胸を確かめられ、
 
 ほっぺにキスまでいく場合もあるそうです。

 くちびるにしないのは憂への操立てだと思います。

 そのあたりはしっかり(?)しているんですね。

 とにかく憂が近くにいないときの唯先輩はかなり危険らしいです。

 生徒会長ですら彼女の前ではデレデレで役に立たないとききます。

 自分がかわいい女の子とは思いませんが、梓みたいな前例もあるので、絶対に近づくまいと思います。

梓「じゅん。じゅーん」

純「……顔近い」

梓「ぼーっとしてるから。そろそろわたし、席戻るね」



51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:27:06.68 ID:Rh7YztNYO


純「わざわざ言わなくても、あんたの席私の隣でしょうに」

梓「だって好きなんだもん。一言でも多く、少しでも近くで喋りたいでしょ」

純「わあ何その恋する乙女。人の風呂覗いてなきゃかわいいのに」

梓「か、かわいいかなあ。ドキドキ」

純「私の言葉をきちんと聞いて。かわいくないって言ってるんです」

 ぱたぱたしてる梓を放っておいてホームルームを終えると、教科書だけ出して眠りにつきます。

 どうせ定期テスト前には梓と憂が一緒に勉強してくれます。

 かわりに梓にデートを迫られるけれど、普段の遊びとさして変わらないから大丈夫です。

 恋心の悪用とはまた違う……と思います。たぶん。

純「……すぅ」

梓「……」

梓「うひ」

 ……シャッター音がうるさい。



53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:30:05.28 ID:Rh7YztNYO


 梓はこんな私のどこが好きなんだろう、とたまに思うことがあります。

 梓のほうが嘘みたいに綺麗な髪をしてて、

 梓のほうがちっちゃくて可愛くて、

 梓のほうが成績もいいし、

 わたしなんてそんな梓を一回ほめただけで、

 梓を拒否ばっかりしてるのに、どうして。

 ちなみに梓が軽音部に行ったときもなかなか可愛がられたそうですが、

 そんなことはまるで引きずる様子もなく、

 その話の合間にも文節ごとに「じゅんすき」と言ってきました。

 一度憂に聞いてみたらわかるでしょうか。

 梓自身に尋ねるのは、ちょっといやです。

 なんだかまるで、梓のことが気になってるような質問ですから。



54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:32:05.66 ID:Rh7YztNYO


梓「純、じゅーん。起きなって」

純「む……はっ。数学終わってる」

 梓に揺り起こされて起きると、もう休み時間でした。

 顔を上げると、口から顎に冷たい糸が当たります。

梓「あっ、いただき!」

純「え?」

 梓が私の机に顔を突っ伏しました。

 何をやってんだこいつ。

 袖で口についたよだれを拭いつつ……よだれ?

純「うわあああっ、やめてやめてやめてよぉバカ梓っきたないっ!!」

梓「汚くないしバカじゃないしやめない!」

 問答無用。力は私のほうが強いんです。

 肩を引っ張ってなんとか梓を机から引き離しましたが、
 
 梓はすでに満足そうに瞳をとろとろさせていました。



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:34:06.50 ID:Rh7YztNYO


梓「エヘヘ……純ってこんな味がするんだ」

純「……ガチで引く」

梓「ごめんね。机はちゃんと拭くから」

 ハンカチでごしごし机を拭くと、梓は申し訳なさそうに笑いました。

純「ほんとにもー。最低だよね」

梓「ごめん……垂れたよだれくらいなら、いいと思って」

純「いやそんな深刻にならなくても。怒っちゃいるけどさ」

梓「どうしたら許してくれる?」

純「二度と私にセクハラをしない」

梓「……ごめん、それは無理」

純「えー……そこはしないって言ってみせてよ」



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:36:15.85 ID:Rh7YztNYO


憂「ふたりとも何いちゃいちゃしてるの?」

純「これがいちゃいちゃに見える憂って何なの」

梓「ちょっと、私が純のよだれを吸っちゃって」

 あらためて言葉にして言われるとぞっとします。

憂「よだれかあ。私もよくお姉ちゃんの舐めるよ」

純「……」

梓「やっぱりおいしいでしょ?」

憂「おいしいよー。大抵お姉ちゃんが起きちゃって、そのまま襲われるんだけどね」

純「この空間にいたくないよー」

 とまあ、私の日常はだいたいこんな感じです。

 梓にセクハラを受けて、憂が変態自慢をして、梓が羨ましがる。

 他に友達がいればと思いますが、普通の子は私たちに近付こうとしませんし、

 私から話しかければ梓が嫉妬します。



59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:38:04.18 ID:Rh7YztNYO


 憂だけはお姉ちゃんにぞっこんなのがわかっているのか、

 私が話しかけても梓が嫉妬することはありません。

 とにかく、私はこのレズたちとともに高校生活を送ることがもう運命づけられているのです。

 死にた……おっと危ない。私は強い子。

 さて、授業をぼーっと受けて、お昼休みになりました。

 憂は軽音部の部室に行って、お姉ちゃんとお弁当を食べるので一旦さよならです。

 私たちに話しかける一般人はいません。

 実質梓と二人きりの、なんともやりにくい時間が始まりました。

梓「はい純、お弁当だよ」

純「ありがとう……」

 私はもともとお弁当がなくて、購買でパンを買っていたのですが、

 梓に惚れられてからというものの、梓が毎日手作りのお弁当を持ってきて私に手渡します。

 お母さんは助かると言ってますし、私も気持ちは嬉しいのですが、

 正直梓の作るおかずはあまりおいしくありません。



63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:40:04.45 ID:Rh7YztNYO


 あれは最初に梓がお弁当を作ってくれた日でした。

 私は親以外にお弁当を作ってもらうなんて生まれて初めてで、

 緊張と不安で、不覚にもちょっとドキドキしていました。

 そうして梓にお弁当を手渡され、ちょっと焦げ付いた卵焼きをまず食べると、

 それはそれはなんとも言いがたい味がして。

 私はティッシュに吐き出して、梓に怒鳴りました。

純「あずさ、何これっ」

梓「え……」

 思えば梓がそこで小さく震えた時点で気付くべきでした。

 言い訳をするなら、その時の私はまだ、梓が料理が得意じゃないことをはじめ、

 梓についてぜんぜん詳しくなかったのです。

純「あんたこれ、絶対変なもの入れたでしょ!」

純「まっずいもん、私が気づかないと思ったの?」



65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:43:05.25 ID:Rh7YztNYO


梓「え、そ……そんなことしてないよ」

 出会ったばかりとはいえ、まともに考えれば梓がそんなことをするはずはありません。

 それなのに、私は梓を信じませんでした。

純「……お弁当作ってくれるって聞いたときは、嬉しかったのに」

梓「ちがう……違うの、純、
  私お料理あんまり上手じゃなくて……ごめんね、今日は私と購買に……」

純「いいよ、一人でいく」

 私はお弁当の蓋を閉め、席を立ちました。

 そのときでした。

梓「うっ……ううっ、ごめぇん、じゅんんん……」

梓「今度はおいしくするから、一生懸命やるから、嫌わないでぇっ」

 涙に震えた梓の声と顔で、ようやく私は冷静になれました。

 私だったら、友達や好きな人にそんなことをするでしょうか。

 ……梓だって同じです。



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:45:27.75 ID:Rh7YztNYO


純「ほ、ほんとに変なもの入れてない……よね」

梓「入れるわけないっ! 純においしく食べてほしいもん……」

 私はまたお弁当の蓋を開けて、卵焼きを急いで口に入れました。

梓「純……」

純「……うん、やっぱまずい」

梓「う……」

純「この機会に練習しよっか。できたものは私が食べてあげるからさ」

 梓に泣かれたのも、梓の頭を撫でたのも、今のところこれが最初で最後です。

梓「……うん、純。私がんばるね」

純「たのむよ。お昼ご飯かかってるからさ」

 そのあと、他のおかずも食べてみましたが、どれもビミョーな感じでした。

 ご飯もべちょっとしていて、それらのすべてを私は梓に伝えました。



72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:48:08.64 ID:Rh7YztNYO


 それから毎日休まず、梓はお弁当を作ってきています。

 日々の覗きや夜這いも欠かさず、部活にも所属して勉強にも余念がない梓は
 
 間違いなく体が3つあると思います。

梓「今日の卵焼きはね、よくできたと思うよ」

純「ほうほう」

 あれから2ヶ月。

 お弁当を開いたときの彩りも格段によくなっています。

 親子そぼろのご飯は食べごたえがありそう。

 タコさんウインナーの足はまさかの8本です。

 感動的ですね。

純「じゃあ、その自信ありという卵焼きから……」

 卵焼きには焼き目がついていますが、寿司職人じゃあるまいしそこまで強要しません。

 むしろこれぐらいがいいじゃないですか。



75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:50:19.35 ID:Rh7YztNYO


純「いただきます」

 箸で切り分けて口に入れ、少し咀嚼。

梓「ドキドキ」

純「……!?」

 な、なんじゃこりゃ!

純「やばい!」

梓「……やばい?」

純「めちゃおいしい!」

 今までも火の通りや味付けや、惜しいというときは何度もありましたが、

 これは文句なしの完璧です。

 お母さんのよりおいしいかもしれません。

梓「本当に!?」

純「うん、完璧!」



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:53:12.41 ID:Rh7YztNYO


 私は残りの卵焼きを全部とり、梓の口に向けました。

純「食べてみてよ!」

梓「ん、あー」

 梓が私の差し出した卵焼きにぱくつきます。

 こうして見るとちょっとかわいい。

梓「うん、おいしいよね」

純「でしょ? ちょうどこの味だよ! よく覚えて、梓」

梓「わかった。次も期待してね!」

純「オーケー! 次って月曜だけどね……」

梓「あ……そっか。明日は純に食べてもらえないんだ」

純「おい、なんかその言い方いやだよ」

梓「うひひ、ごめんごめん」

純「……」

 ちょっとかわいいと思ったのに……。



77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:55:06.84 ID:Rh7YztNYO


梓「それで、他のはどうだった?」

純「ブロッコリーがちょっと茹で足りなかったかも。あと……」

 食べ終わったあと感想をきかれ、気になったものについては伝えておきます。

 毎回すべてに文句をつけるつもりはないです。

 面と向かって言うには照れますが、それなりに感謝はしているのです。

憂「ただいまー」

梓「あっ憂。今日は早いね」

憂「次体育だから、着替えないといけないからね」

純「あっそっか。……」

 体育は少し憂鬱になります。

 体を動かすのは嫌いじゃないのですが……。

梓「さあ純、更衣室に行こうか」

 レズが本気を出すからいやです。



79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 02:58:05.62 ID:Rh7YztNYO


 魔境たる更衣室にやって来ると、梓が私の背後にぴったりとつけました。

 私が選んだロッカーの隣を奪取するためです。

 私たちが来たのはまだ早い時間なので、両隣が埋まっているロッカーはないようでした。

 まあ別に、裸なんてほぼ毎日見られているので今さら恥ずかしくもなくなってしまいましたが。

 梓は私が本気で嫌がれば触るのはやめてくれるので、

 噂に聞く唯先輩に比べればよほど人畜無害です。

梓「純じゅん~、おパンツも履き替えようよ」

 にやつきながら服を脱ぐ梓の横で着替えはじめると、すり寄りながら梓が言います。

純「替えなんて持ってないけど」

梓「私のと交換すればいいんだよ!」

純「バカか」

憂「わたし、一応替え持ってるよ」

純「別に履き替えたくないよ!?」



81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 03:00:50.29 ID:Rh7YztNYO


 ワイシャツを脱ぎ、ロッカー内のハンガーに掛けます。

梓「はあー、やっぱ純の身体ってきれい……」

 恍惚とした目をしてほぼ全裸で梓が言います。

純「そ、そう?」

 私をその気にさせようと言っている世辞だとはわかっていますが、

 内心気にしているところなだけに嬉しくなります。

梓「やばいよ。肌とか真っ白だし、舐めがいありそうなお腹とかさ」

純「お腹って舐めるものなんだ……」

梓「そうだよ。ね、おへそにキスしていい?」

純「なんかヤバそうだからヤダ」

梓「ああぁ……理性がこわれちゃう」

 身悶えするツインテロリレズの図。

 ていうか梓もいい加減私の裸を見慣れるものじゃないでしょうか。



83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 03:03:05.98 ID:Rh7YztNYO


純「つーかさ、梓」

梓「なに、ハニー……ハァッハァッ」

純「あんたしょっちゅう私の裸見てるよね? 人の風呂覗いて」

梓「うん、見てる」

純「なんで今さら下着姿くらいで興奮するのさ」

梓「好きな人の身体はいつだってドキドキするもんだよ……んっ」

憂「そうだよ純ちゃん。私だってお姉ちゃんの裸くらい見慣れてるけど、毎日すごいよ?」

純「ふーん、そんなものかぁ。……毎日?」

 私にはそういう経験がないのでわかりませんが、

 好きな人なら見飽きることはないらしいです。

憂「逆に、見てすぐ飽きるようなら、それは最初から体目的でしかないってことだよ」

憂「梓ちゃんは純愛だね!」

純「なるほど……」



85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 03:05:07.42 ID:Rh7YztNYO


 からだ目的じゃない。それはいいことだと思います。

 世の中の男性はほとんどが女性と体目的でつきあうと聞きます。

 そんな人は私だってはじめから好きにならないでしょうけど……

 梓はじめ女性は体目的ということは少ないのですね。

梓「そうそう純愛! 純だけにね!」

純「うっせぇ」

 私はさっさと着替えることにしました。

梓「体操着姿の純もいい……」

純「梓もはやく着替えて。置いてくよ」

梓「あっ待って! すぐ着替えるから!」

 梓は健気です。とても。

 変態的側面はありますが、異性だったら付き合ってますね。



86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 03:07:05.78 ID:Rh7YztNYO


 どうして梓はレズなんでしょう。

 きっと普通に男性が好きだったらモテモテです。

 かわいいし。

 今度デートに連れ出されたら、その辺のとこも聞いてみましょう。

 生まれたときからレズというわけではないと思います。

梓「よーし準備できた! 純、好きだよ!」

純「それじゃ行こっか。はー、グラウンドは暑くてやだなー」

 ……。

 あれ。

 なんか私、だんだん染まってきてるような。

 ……まあ、いいか。

 私はレズじゃない。

 ぜんぜん平気です。



88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 03:10:15.40 ID:Rh7YztNYO


 さて、梓にもまれて体育も終わり、あと1限。

 まあまだ部活が残っているのですが。

純「そういえばさ、梓って私のこと好きじゃん」

梓「うん、大好き」

純「なんで私と一緒にジャズ研入らなかったの?
  好きな人なら私はおんなじ部活に入ろうとするけどね」

梓「だって私、純がそばにいたら集中しないで先輩に迷惑かけちゃうから」

純「授業はちゃんと受けてるのに?」

梓「さっきの体育は怒られたじゃん」

純「……ああ」

 ようするに梓は、ある程度自由に動ける状況だと抑えがきかなくなるみたいです。

 手錠でもしましょうか。

 喜んで付けそうだから嫌です。



89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 03:12:12.07 ID:Rh7YztNYO


 授業も終わって放課後になり、汗を吸った体操着やタオルを守りながら部活に行きます。

 梓の変態度がどれほどのものか理解していなかった昔、体操着を持ち帰られたことがあるのです。

 その夜は梓も覗きに来ず平和だなと思っていましたが、翌朝洗濯した体操着を手渡され、青ざめました。

 それ以来、衣類の行方には気をつかっています。

 まあ疲れているときなど、適当に靴下でも渡して平穏な夜を演出したりすることもありますが。

 この場合洗濯済みのものでは途中で飽きて覗きに来るのでだめなんです。

 まあいわゆる脱ぎたてをあげているわけですが、少し恥ずかしいもののこれもだいぶ慣れてきました。

 かといって嗅がせたいわけではなく。

 なんとかうっとうしいのから体操着を守りきり、部室に到着しました。

  「やっほーレズ。今日ももてもてだね」

純「……大変でした」

 部内での私のあだ名は「レズ」です。

 それでも生きています。



90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 03:14:05.77 ID:Rh7YztNYO


  「レズさー、なんであの子と付き合わないの?」

純「レズじゃないですから!」

  「いや、でもあそこまでされて、普通に友達でいられるってのもね……」

  「あながち、悪い気もしてないんじゃないの?」

純「梓もいいところはあるんです。勝手なこと言わないでください」

  「いいところ……って、どんな?」

純「え、それはですね……」

 梓のいいところ。

 勢いで言っちゃったけど、なんだろうそれ。

純「ま、まずですね、小学生からギターやってて、親もジャズ奏者で話が合うんですよ」

  「へー」

純「あ、あとあれ、すごく純情な子なんですよ! 梓は私の体目的とかじゃぜんぜんないんですから!」

  「ぶふっ!」

 なんとなく興味なさそうだった先輩たちが同時に吹き出した。



91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 03:16:05.55 ID:Rh7YztNYO


純「な、なんですか!」

  「いや、レズちゃん。それって友達としていいところなの?」

純「へ? え……」

  「ていうか説得力ないけどね、セクハラされまくってるのに」

 やばい。

 やばいやばいやばい。

 私、完全に梓と憂にのまれてる。

 か、カムバック私!

純「いやいやいや、そうじゃなくてですね、い、いいところじゃないですかっ!」

  「そうだねー、恋人にはもってこいだよ」

純「うあああー聞かなかったことにしてえー!!」

 最悪だ。

 なんか明日からもう部外でもレズって呼ばれそう。



92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 03:18:05.62 ID:Rh7YztNYO


純「とにかく、梓はレズですけど友達ですから! 付き合いませんよ!」

  「レズも気があると思うんだけどなー」

純「ありません! っていうかレズって呼ぶのやめてくださいよ」

  「レズはレズでしょ」

  「レズちゃーん、ちゅーしてー」

純「しません!」

 あれ、なんかこの部もちょっとやばくない?

 私はもう早々に、練習を始めることにしました。

 愛用のベースの音色はやっぱり落ち着きます。

純「はあ……」

 私、どうして梓と友達をやってるんでしょう。

 好きって言われると嬉しいし、お弁当はどんどん上手になってて、

 私のためかなって思うと心が暖かくなる。

 梓が一緒にいると楽しいし、毎週遊びにいって、いろんなことを体験してる。



93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 03:20:06.61 ID:Rh7YztNYO


 私が今まで出会った人の中で、梓ほど奇妙な人はいません。

 レズで変態のくせに、やたら健気で純情で、こんなに私の心に残る人。

 梓は出会って半年にも満たない人なのに、私は今まで知り合った人たちの中で、

 梓についてが一番くわしいと思います。

 梓がいるときは梓のことばかり見てるし、

 梓がいないときは梓のことばかり考えてる。

 梓がとりついてまわるせいなのかもしれないけど、それでも、

 梓というレズの存在は、私の中でじゅうぶんに大きいと思います。

 梓を……好きになってしまったのでしょうか。

  「レズ」

純「! はいっ!?」

  「アイス買ってきたよ。お食べ」

純「あ、ありがとうございます。……」



102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 03:48:05.52 ID:Rh7YztNYO


 先輩は私の前に椅子を置いて、アイスの袋を開けました。

 私もベースを立て掛けて、袋を開きます。

 コンビニで買ってきたらしいファミリーボックスのアイスバーです。

純「……いただきます」

 ちょっと戸惑ってから、先を歯で崩しました。

  「レズはアイス姦って知ってる?」

純「アイスカン? 知らないです」

 ジャズ奏者でしょうか。

 しかし外国人名にしても耳慣れないので、ジャズの形態?

  「アイス姦ってのはね、アイスを女の子のアソコに入れるのよ。こういう棒アイスね」

純「もう黙ってください」

 やっぱりこの部危ないです。



105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 03:52:08.34 ID:Rh7YztNYO


  「いやいや、夏場なんかは冷たくて気持ちいいよ。梓ちゃんとやってみたら?」

純「そういう関係じゃないです! っていうか、普通に食べたほうが冷えると思います」

  「普通じゃつまらないわよ。女の子はトッピング次第でいろんな味が楽しめるんだから」

純「そういう食べるじゃありません」

  「食わず嫌いはだめよ」

純「人の話を聞きませんね」

  「まあとにかく、レズも一度ためしてみるといいわよ。アイス姦」

純「そんなことしたら梓がすっ飛んで来るかと」

  「私はむしろ盗撮するわね」

純「梓が言ってましたよ」

純「盗撮は、覗くために自分の手間と時間を犠牲にできない、愛の足りない卑怯者のすることだって」

  「でた、梓ちゃん語録。本当に梓ちゃんのこと好きね……」

純「そっ、そんなじゃありませんってば!」

  「顔赤いわよー? アイスで冷やしたほうがいいんじゃない?」

純「ああっ、もう、いただきますってば!」



106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 03:56:07.73 ID:Rh7YztNYO


 そんな感じで部活は終わりました。

 この土日は休みらしいので、存分に遊びたいところです。

 たまには私から梓を誘ってみましょうか。

 などと思っていると。

梓「じゅーんっ。練習おわり?」

 練習を終えたか待ち構えていたか、梓がくるりとおどりでました。

純「うん終わり。一緒に帰る?」

梓「うんっ。手……繋ごう?」

純「ひとりで帰っても私はぜんぜんいいんだけど」

梓「ああっ、冗談冗談! 10分の1くらいは!」

純「9割本気じゃん。いいから帰るよ」

梓「うん、行こっか」

 下駄箱へぴょこぴょこついてくる梓を、素直に可愛いなと思う夏の夜。



109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:00:10.44 ID:Rh7YztNYO


 上履きをとられないよう素早く履き替え、学校を出ます。

梓「純、土日あいてる?」

純「うん、今週はどっちも休みにするって」

梓「じゃあ」

純「デート行く?」

 わざと梓の言葉を遮ってみました。

 梓がぴたりと立ち止まります。

梓「おっ、ほ……」

 そしてぶるぶる震えたかと思うと、鼻からつーっと赤い筋を垂らします。

 デートに誘われて鼻血出した。

純「……ごめん、ハンカチ貸すよ」

梓「ぎゃくこうはだっでば」

純「……それもそうだね」



110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:04:07.71 ID:Rh7YztNYO


 梓は自分でティッシュを詰めると、ふらふら歩き始めます。

 なんか危なっかしいですね。

純「で、梓の予定は?」

梓「べっ。ああ、土曜は休みだから、デート行こうえ」

純「いいよ。ちょっと話したいこともあるし、遊園地とかはパスね」

梓「は、はなっ……むんっ! プランはまかせて!」

 変な期待をしているようです。

 ほんとにふらふらしてて危なっかしいです。

 ギターも背負っていることですし、いつ転ぶかわかりません。

純「……梓」

梓「むん?」

純「手つなご。見てて怖い」

梓「ほんおに!? やっは、んふふ」



112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:08:04.98 ID:Rh7YztNYO


 梓と手を合わせ、恋人つなぎをされる前にさっと握りました。

梓「……」

 それでも十分満足げです。

 言い出してみてよかったと思います。

梓「れぇ、純ってさ……」

 そのとき、ポケットにいれていた携帯がタイミング悪く震えました。

 取り出してみると、電話着信でした。

 画面には、「鈴本ときめき」とありました。

 中学の女友達ですね。

純「ごめん、電話」

 通話ボタンを押して電話に出ます。

純「もしもしきゅん?」

  『もしもし純ちゃん? ひさしぶりー』



114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:12:06.90 ID:Rh7YztNYO


 ああ、その。紹介しよう。

 彼女は私の中学のときの友達で、今は別の共学高校に通っています。

 名前は鈴本ときめき。ときめきと書いて「きゅん」と読むのです。

 同じクラスになったとき、名前が似てるねと話しかけられ、

 どこがじゃい! とつっこんだのが最初の会話だったと思います。

 名前と、女子高に進学した私をレズだと信じ込んでいる以外は至ってまともないい子です。

 あ、やっぱりあんまりマトモじゃありません。

純「そんな久しぶりでもないけどね。どうしたの急に」

トキメキ『んっと、明日遊べないかなって思ってね』

純「明日?」

梓「……」

 梓、痛い。



118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:16:13.50 ID:Rh7YztNYO


純「明日は無理だよ。先約があってさ」

トキメキ『……それって、高校の中野さん?』

純「うん、そうだよ。日曜ならいいけど」

トキメキ『じゃあ、日曜でも遊ぼうよ。なんか今、無性に純ちゃんに会いたくて』

純「なんじゃそりゃ……いーよ。そしたら日曜1時、いつものとこでいい?」

トキメキ『ううん、純ちゃん家に行く』

純「そっか。じゃ待っとるぜベイビー」

梓「……」

 いったいてば梓!

トキメキ『バイビー!』

 電話を切って携帯をしまうと、ため息をつきます。

純「梓。きゅんはね……」

梓「いいよ、べつに」



121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:21:02.81 ID:Rh7YztNYO


純「……なにすねてんの」

梓「だって……いつものとこだとか、ベイビー、だとか」

純「ベイビーって言ってほしい?」

梓「……ハニーと」

純「調子にのるな」

 構ってほしかっただけでしょうか。

 というか、ベイビーが嫉妬の対象とは思いませんでした。

梓「えへへ……冗談冗談。大丈夫だよ。今の純の一番は私だもん」

純「まあそうだけど……」

梓「えっ、否定しないの!?」

 詰めてたティッシュがぼとんと落ちました。

純「一番大事な友達って意味だよ」

梓「それでもいいよ。うわあ、うれしいなあ」



123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:24:26.10 ID:Rh7YztNYO


 家につき、梓がちゃんと帰るのを見届けてから玄関を開けます。

 シャワーを浴びて部屋着に着替えてから、ベッドに腰かけます。

 明日、梓に聞きたいことは2つです。

 どうしてレズになったのかということ。

 どうして私が好きなのかということ。

 このくらい聞く権利はあるでしょう。

 初めて梓とつないだ手のひらを、蛍光灯のあかりに透かして眺めます。

純「いちばん……だいじなともだち」

 虚っぽくつぶやきました。

 お母さんがご飯だと呼んでいます。

純「どうして……友達なんだろう」

 私はベッドを降りて、居間へ行きました。

 食事をするとすぐ部屋へ戻り、携帯を見つめます。



125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:28:11.65 ID:Rh7YztNYO


 そうして10分ほどぼーっとしていると、梓からメールがきます。

 明日のデートの待ち合わせについてです。

 今回は待ち合わせでなく、梓が私の家に来たいと言いました。

 きゅんに対抗しているのかと思います。

 断れば梓がうちに走って来そうですが、あいにく断る理由がないので了承しました。

 梓を同意の上で家にあげるのは久しぶりです。

 きっと部屋をかぎまわられることでしょうが、後ろめたいことなどないので平気です。

 早く梓に会いたいから、もう寝ましょう。

 私は適当にメールを切り上げると、枕に頭をのせて目を閉じました。

 夜中、窓が開いて梓が入ってきます。

 そして私の寝顔だけ確かめて、帰っていきました。

 純情きわまりないような、一周まわって変態くさいような。

 私には判断できません。



127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:32:06.24 ID:Rh7YztNYO


 翌朝、約束の時間より3時間早く添い寝しにきた梓に起こされ、私は朝のシャワーを浴びにいきます。

純「あのさ梓」

梓「なに?」

純「覗きの美学とかはないの? こう、決して見つかってはいけないみたいな」

梓「決してさわってはいけない、なら」

純「なるほど。部屋戻ってくれない?」

梓「まあバレた以上は仕方ないね。無防備さがいいんだ、無防備さが」

 だんだんと、本来梓と一緒にいる時間ではない時間まで侵略されつつあります。

 プライベートがほとんどないです。

 悪いこととはいわないけれど、疲れます。

 てきとうに3時間ほど潰して約束の時間になると、

 タンスを漁っていた梓の首を掴んで外に連れ出しました。

純「それで、今日はどこ連れてってくれるの?」



129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:36:15.80 ID:Rh7YztNYO


 そう訊くと、梓はゆっくりと振り向きました。

梓「今日は、私の家に呼ぼうと思って」

純「両親に紹介とか、やめてよね」

梓「そんなじゃないよ。今日はうち一人だし」

 その声が妙に真剣で、私は黙って梓を下ろしました。

梓「純が話したいことあるって言ってたから……私も、話さなきゃいけないことがあると思って」

純「話さなきゃいけない?」

梓「うん。純が話したいことっていうのも、もしかしたらそれのことかも」

純「私は……言っても、世間話みたいなものだよ」

梓「だとしても、私は私のことを話さなきゃ。うちにきてくれる、純?」

純「……」

 私は黙って頷きます。

 湧き上がる恐怖に近い感情は、必死でこらえました。



132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:40:14.54 ID:Rh7YztNYO


 梓の家に行くのは初めてです。

 今まで何度も私の家にあがりこまれてきましたが、そういえば梓の家は見たこともありません。

 どんな家なのか、聞いたこともありません。

 ただ一人っ子で、両親がジャズ奏者で、CDをいっぱい持っているということは知っていました。

梓「……」

 家路を歩く梓の顔はやけに深刻でした。

 私は梓の指に手を伸ばし、そっと絡めます。

純「あの……うまくいえないけど」

純「私は梓がどんな人でも絶対に、少なくとも、友達でいるから」

梓「ありがとう、純」

 怖い顔の梓は、まだ怖い顔のままで、私の手を握りました。

 今は、人の噂などどうでもよくて、梓のそばにいたいと感じます。



133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:44:05.41 ID:Rh7YztNYO


梓「ここだよ」

 梓の家は大きくて、

 とても梓と、梓を産むような小さな両親が三人で住んでいるとは思えませんでした。

 ほとんどがCD置き場なのでしょうか。

 梓は鍵をけると、玄関を開きました。

 両親が不在だと言っていたのを思い出します。

 まさか、と一瞬考え、思い直します。

 梓は私を押し倒すような卑怯なレズではありません。

 むしろそういう行いを何よりも嫌います。

 憂のお姉ちゃんのことは、なぜだか理解しているようですが。

 まああの姉妹の場合、押し倒した時にすでにお互いが好き合っていたようなものですから、

 梓の中では特例でもおかしくないでしょう。



137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:47:07.89 ID:Rh7YztNYO


梓「あがって、純」

純「うん……」

 こわばった表情で、私は家にあがりました。

 人の家宅が持つ独特な、木を嗅いでいるようなにおいがします。

 私はくつぬぎで立ち止まると、梓に先に上がらせました。

 それから靴を脱いで、並べてから梓の後ろに立ちます。

梓「こっちだよ」

 私の靴には目もくれず、梓は階段を上がっていきます。

 なんとなく焦っているような梓に急いでついていくと、

 梓は2階の一室の前で立ち止まってしました。

純「……そこが梓の部屋?」

梓「違うよ」

梓はすうっと息を吸い込みました。



139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:50:05.44 ID:Rh7YztNYO


梓「純、きいて」

純「……うん」

梓「私にはね、お姉ちゃんがいたんだ。憂の家みたいに、ひとつ違いのお姉ちゃんだった」

 私は、今すぐにでも梓を抱きしめたい衝動にかられた。

 それをなんとか我慢しながら、梓の目をじっと見る。

 私は傲慢にも、泣きそうでした。

梓「わたしね、お姉ちゃんがすごく大好きだったんだ」

梓「お姉ちゃんはお父さんに似て、髪がくるくるでね。お母さんの髪に似た私とは、全然ちがったの」

梓「毎朝うんと時間をかけて、鏡の前で自分の髪の毛を整えようとしててさ」

梓「私なんかはそれを見て真似して、髪にブラシを通すの」

梓「そしたらお姉ちゃんは、梓はそんなのしなくていいのって言いながら、私の髪を結わいてくれるの」

梓「今もずっと、同じ髪型」

 梓は自分で指を通して、ツインテールをさらりと揺らしました。



141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:53:33.75 ID:Rh7YztNYO


純「……その、お姉ちゃんは……」

梓「殺されたよ。3年前に」

 私は拳をぎゅっと固めます。

 泣いちゃいけない。

 私の浅い浅い心では、梓の悲しみは少しだってわかりやしないのですから。

 こんな心で、共有なんてできません。

 私はのどを噛むようにし、涙をこらえました。

梓「晩ごはんの前に、お姉ちゃんはおつかいを頼まれててさ」

梓「……その隙の、ほんの一瞬だった。なんでだろうね、お姉ちゃんは何も悪いことしてないのにさ」

梓「私にね、ごめん、ってメールを送ろうとしてたの。……」

 私は目を閉じてへたり込んでしまいました。

純「……、くっ」

梓「それからだね。男が嫌いになったのは」



143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:56:05.00 ID:Rh7YztNYO


梓「ばかだと思う? 全ての男の人が、お姉ちゃんを襲って殺したわけじゃないのにね」

梓「でも、私にとってそれほどお姉ちゃんは大好きな人だったんだ」

梓「……かたときも忘れたことがなかった。お姉ちゃんのこと、本気で好きだったのかもしれない」

梓「わかんないけどね。……純が泣くことないよ」

純「だって……だって!」

 私は恥もなく鼻水をすすった。

純「うう……うああああぁぁ!!」

 獣みたいに吼えて、床に突っ伏して哭く私は、梓が好いてくれるようなわたしだったでしょうか?

 いいえ、そんな私など、はじめから居りません。

 私は廊下の床の冷たさに、さらに気を狂わせて泣きわめきました。

 ふたえでもない私に、ふたえの悲しみが押し寄せました。

梓「純に話さなきゃいけないのは、これから先のこと」

梓「きいてよ、純」



144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 04:59:05.66 ID:Rh7YztNYO


純「やだ……やだっ」

梓「……女子高に入って、純を見たときは、ほんとに驚いたんだ」

梓「お姉ちゃんにそっくりだったんだもん。おもに、髪型がね」

梓「それだけならなんでもなかったのにな。純が私の髪を褒めたりするから……」

 私のせいなのでしょうか。

 そんなのってないよ。

 なにもかも、これじゃ私、ひとりよがりじゃないですか。

梓「……お姉ちゃんを、純に重ねちゃった」

梓「お姉ちゃんが戻ってきた気がしちゃった」

梓「ほんとにごめんね……好きだなんて言って」

 梓の訥々とした謝罪は冷酷で、私の心をえぐりだして、聞くに耐えない悲鳴をあげさせます。

 どうして私がこんなに辛い目にあわなければならないのでしょう。

 どうして梓に謝られなければならないのでしょう。



149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 05:03:05.49 ID:Rh7YztNYO


梓「……話したいことがあるって聞いてさ」

梓「このこと知られたか、それとも……もしかしたらかなって思った」

梓「わたし今まで、純に重ねたお姉ちゃんのこと、好き好き言ってた」

梓「もしそれで……純が、ちょっとでも、いいかなって気持ちを持っちゃったんだとしたら」

 聞きたくないです。

 私はそんな言葉に耐えられるほど強くありません。

梓「ごめん純……私は、純の気持ちにこたえちゃいけない」

梓「私には、純がお姉ちゃんにしか見えないんだもん」

 重い重い圧に耐えきれず、ねじ切るように心が潰される音がしました。

純「……」

純「ちょっとなんかじゃないよ……」

梓「純……」

純「すごくだよ……すっごくすっごく、梓のこと好きになってたよ!」



150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 05:06:04.50 ID:Rh7YztNYO


純「ずっと梓のことばっかり考えてた」

純「梓がいないと、早く会いに来てくれないかなって寂しくなってた」

純「最初はうっとうしかったよ」

純「人の風呂覗いて、タンス漁って、デリカシーもないし、何度もぶったことあるよね」

純「でもだんだん梓のことわかっていって、梓のこと気になっていって、そしたらどんどん好きになって」

純「自分がレズだって認めるのがすごい怖かった……だからいつまでも、梓にいいよって言えなかった」

純「……でも言わなくてよかった。言ってたら、梓こまっちゃうもんね」

梓「……ごめん」

 私はふらりと立ち上がりました。

純「あやまらないでよおっ……!」

純「謝られたって忘れられないんだから! こんなに好かれた気になって、好きになって!」

純「あ……梓にとってのね、お姉ちゃんぐらい……私は、梓が好きなんだよ」



153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 05:09:05.59 ID:Rh7YztNYO


 それは、絶対に私が言ってはいけない台詞でした。

 私には結局、梓が感じた気持ちなんて理解できはしません。

 それでも梓に言ってしまったのは、このやりきれない思いのあてつけでしょうか。

 それとも、この禁句さえ押さえきれないほど、梓のことが好きすぎるのでしょうか。

梓「……ごめん」

 梓はもう一度言いました。

梓「そう言ってくれてすごく嬉しいな……。お姉ちゃんの部屋、みていく?」

純「……嫌だよ」

梓「見ていって」

純「……」

 梓がドアを開けました。

 ほこり臭さが涙にしみついて、つまった鼻の奥に感じられました。



155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 05:12:04.96 ID:Rh7YztNYO


 カーテンを大きく開かれた中野家の長女の部屋は、

 薄くほこりを積もらせて、きらきら輝いていました。

梓「お姉ちゃん、ひさしぶり」

純「……」

 舞台上を闊歩するような足取りで梓はその部屋に入ると、天井にむかって嬉しそうに言いました。

梓「うん。純だよ。わたしの好きな人。あんまりお姉ちゃんには顔似てないけどね」

純「……梓」

梓「似てる? そうかな、髪型と目くらいだよ」

純「梓ってば」

梓「……」

純「梓は、私でお姉ちゃんが死んだことを忘れようとしたけどさ」

純「死んだお姉さんに対して、すごく失礼だから。それ……」

 私は押さえつけた声で言うと、階段のほうにむかって振り返りました。



160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 05:15:05.26 ID:Rh7YztNYO


純「……ごめんなさい、お姉さん」

 あなたの大事な妹の心をお借りしていました。

 いま、あなたにお返しします。

純「……ありがとう」

 夢を見させてくれてありがとうございました。

 梓に私を好きになる機会をくれてありがとうございました。

 あとは自分でがんばりますから、もうお休みください。

 私は、ふらふらと何時間も迷って、ようやく家へ帰りました。

 玄関で、やけに足が痛いと思えば履いていたのは梓の靴で、さすがに乾いた笑いが出ました。

 這いずるように部屋へ戻り、ベッドに沈みこみました。

 死にたいです。

 これから幸せなことなんて、ひとつだって訪れやしない気がしました。

 すごいなあ、と思います。

 恋して、ふられるって、こんな気持ちになるんですね。



161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 05:18:05.56 ID:Rh7YztNYO


純「……」

 泣き疲れて眠って、夜中に起きて、目が覚めないうちにまた眠って。

 何十時間も梓の夢を見ました。

 私が梓の髪を撫でて、梓が好きになっちゃうと言います。

 私は好きになっていいよ、私も梓が好きと答えます。

 そして梓と甘いキスをかわす夢でした。

 梓とキスをする夢は今までにも何度か見たことがありますが、

 それまででいちばん感触がはっきりしていて、とてもつらかったです。

 私は夢の世界に逃げ込み続けて、体が痛くなってもずっと眠っていました。

 硬直した体を揺らされて、目が覚めます。

  「起きてよー。起きてってば」

純「……あずさ?」

 私はあわてて顔を上げました。



163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 05:21:07.53 ID:Rh7YztNYO


トキメキ「……中野さんじゃないよ」

 そこにいたのは、にわかに不機嫌な顔になったときめきでした。

純「きゅん……」

 梓が来るはずありません。

 梓はもう、私を好いてなんかいないのですから。

トキメキ「わたしちょっと遅刻しちゃったのに、純ちゃんまだ起きてなくてびっくりしたよ」

トキメキ「ピンポン押しても反応なかったから、勝手に入っちゃったけど、いいよね?」

純「……いいよ。ごめん、昨日ちょっといろいろあって、疲れてた」

トキメキ「シャワー浴びないと。私、どこかで時間つぶしてようか?」

 それはありがたいのですが、どこかへ行かれたら迎えに行く気がなくなりそうです。

純「ううん、部屋にいていいよ……ありがと、シャワー浴びてくる」

 本当はシャワーも浴びたくありませんが、仕方ないです。

 下着と部屋着をつかんで、ふらふらと浴室に向かいました。



164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 05:24:05.53 ID:Rh7YztNYO


純「……」

 服を脱ぎながら、周囲の様子に気を配ってしまいます。

 今さら意味ないですが、これから生きていく上では有用なスキルかもしれないですね。

 ついでに護身術でも覚えておけばよかったでしょうか。

 でも護身術が身につくわけはありませんか。

 周りの察知だって、梓に帰ってほしいからじゃなくて、

 梓の顔が見たくてきょろきょろしてただけなのですから。

 梓をひっぱたくための護身術なんてほしくありません。

 さっさとシャワーを浴び、髪も結ばないまま服を着て、私の部屋に戻りました。

 ときめきは落ち着かない様子でベッドにかけていました。

トキメキ「ねぇ、純ちゃん……目すごいよ」

純「……うん」

トキメキ「なにがあったのか……聞いちゃダメ?」

純「……」



166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 05:27:06.31 ID:Rh7YztNYO


トキメキ「……昨日、中野さんに会ってたんだよね」

 少し唇をなめて、ときめきは言いました。

純「なんで……」

トキメキ「電話で言ったじゃん、土曜は中野さんとの約束だって」

純「……あぁ」

 適当に頷きました。

 ぜんぜん覚えてません。

トキメキ「中野さんって、純ちゃんのこと好きなんだよね。その……変なこととかされたの?」

 されてたらどんなによかったことか。

 私は小さく笑います。

純「ちがうよ。梓は関係ない……」

トキメキ「ほんとに?」

純「ほんとだよ……」



167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 05:30:08.35 ID:Rh7YztNYO


トキメキ「……」

 ときめきは私の目をじっと見つめました。

純「……っ」

 耐えきれなくて、目をそらしました。

トキメキ「嘘ついてる」

純「嘘じゃ……」

トキメキ「じーっと目をみたらね、純ちゃんはじーっと見つめ返すよ」

トキメキ「そうじゃなかったら、何か嘘ついてるってこと」

純「……」

 こういうところ、ときめきは鋭いです。

トキメキ「中野さんに、何かされたんだね」

トキメキ「それでこんなに……泣いてたんだよね」

 ときめきは、そっと私の目の下に触れました。



171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 05:50:05.49 ID:Rh7YztNYO


純「きゅん……お願い、なにも聞かないで」

トキメキ「……ごめん。純ちゃんをこんなに泣かされて、黙って忘れられるほど私お利口さんじゃないよ」

純「お願いだってば……」

トキメキ「中野さんになにされたの?」

 有無を言わさず、ときめきは同じ質問を繰り返します。

 もう、楽になってしまいましょうか。

 ときめきは、私が前からレズだと思っています。

 それでも付き合い続けてくれた女の子ですから、

 梓を好きになってしまったと話しても、引きはしないでしょう。

 私はためらいながら、口を開きました。

純「……梓には、ほんとのことを聞かされた」

トキメキ「ほんとうのこと?」

純「うん……レズになった理由と、私のまわりうろちょろしてた理由……」



172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 05:53:06.77 ID:Rh7YztNYO


 私は、梓に聞かされたことをみんなときめきに話しました。

 梓には私に似た姉がいたこと。

 その人は強姦殺人で3年前に死んでいること。

 梓はその姉が大好きだったことと、姉を私に重ねて愛していたということ。

 それが罪深いことと知っているから、もう私は愛せないということ。

 そして、私はそんな梓を、すでにくるおしいほど愛してしまっていたということ。

トキメキ「……」

トキメキ「中野さんは最低だよ」

 ときめきはそう切り捨てました。

純「そうかな……もし私が同じ立場だったら、同じことしちゃうよ」

 だから私は梓を恨みきれません。

 梓のお姉さんが生きていたなら、私は躊躇なく梓の頬を打てたのですが。



173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 06:01:07.34 ID:Rh7YztNYO


トキメキ「でも許せないよ。純ちゃんを好きにさせといて、そんなの……」

純「もういいんだって。きゅんが口出しすることでもないでしょ」

トキメキ「口出しすることだよ!」

 突然ときめきが大声を出して、私は傷ついていたのも忘れて飛び跳ねました。

純「な、なに!?」

トキメキ「私だってずっと純ちゃんが好きなのに! 心だけ奪ってハイサヨナラなんて卑怯すぎるよ!」

純「それは知って……え?」

 えっと。

 し、紹介しよう。

トキメキ「……でも、そういうことなら私にもチャンスだよね」

トキメキ「純ちゃん! 純ちゃんの傷ついた心、私が慰めてあげる」

 私の友達(レズ)その3、鈴本ときめき!

 ときめきと書いて、きゅんと読みます!



174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 06:04:09.21 ID:Rh7YztNYO


純「ちょっ……やだっ、待って、なんでそうなるの!?」

トキメキ「ずっと好きだったの! 中学のときからずっとだよ!」

 もしやこれはアレですか。

 一難去ってまた一難、とか。

 前門の虎、後門の狼、とか。

 純ちゃん難しい言葉知ってるね! 好き! みたいなー。

 まーたレズにつきまとわれて覗かれる日々が始まるぜ! とかさあ。

純「す、好きったって……」

トキメキ「ごめんね、ずっとレズ扱いしてて。本当は私がレズなの!」

 おもむろに服を脱ぎ始めるしとやかメガネレズの図。

純「いやいやいやいや、なんで私なの!?」

トキメキ「好きに理由なんていらないよ、私は。純ちゃんが本気で大好きって、それだけ」

純「うぐっ……」



175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 06:08:08.53 ID:Rh7YztNYO


 弱いところをつきますね。

純「き、きゅん、でもさ私やっぱり梓が好きで……」

トキメキ「だから、それを忘れさせてあげるよ」

 じりじり近付いて、ときめきはにこりと笑います。

純「いぃ……嫌嫌っ、だめだよそんなの!」

 考えてみればこの状況、けっこうやばいですね。

 インターフォンに誰も出なかったとときめきは言っていました。

 たぶん家には私一人なのでしょう。

 梓は……助けてくれませんよね。

 そもそも今日の梓は部活かなにか、用事があるはずです。

 私はこのまま中学の親友にレイプされるのですね。

 なんならアイス姦とかやってみたいです。

 みすみすやられるつもりはありませんが。



176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 06:12:31.56 ID:Rh7YztNYO


トキメキ「だめじゃないよ。私は純ちゃんを慰めるだけ」

トキメキ「優しくするから、安心して?」

純「むりむり、できないできないできない」

 お尻でずりずり、あとずさりします。

 やたら余裕をかましているときめきと至近距離を保ったまま、背中に壁がぶつかりました。

純「あ」

 じわっと汗をかきました。

 今日は暑いですね。

 友達もブラ一枚です。けっこうおしとやかな子なんですけどね。

トキメキ「つかまーえた」

 肩をぎゅっと押さえられます。

純「つ、つかまっちゃった……」

 ノってあげてる場合じゃありません。



178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 06:16:06.11 ID:Rh7YztNYO


トキメキ「えへへ。本当にレズになっちゃったんだし、もういいよね?」

純「私はレズじゃないよ、ただ梓が……」

 ときめきが丸い眼鏡を外します。

トキメキ「純ちゃんの顔が、眼鏡なくてもよく見える。……夢みたい」

 うっとりした表情でときめきは私を見ると、目を閉じました。

純「あ……あ、だめ、嫌ぁ……」

 キス、キスからくるのですか。

 なんか予想外です。

 梓だったらまず胸を触ってきそうですね。

梓「なにやってんの?」

純「……はっ?」

トキメキ「ほぇ?」

梓「触らないでくれるかな。純は私の女なんだよ」

 ……なに、これ?



180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 06:20:19.26 ID:Rh7YztNYO


純「……なんでいるの」

トキメキ「あなたが中野さん?」

 遮んなときめき。

梓「そうだよ。そこをどいて。私の特等席なんだから」

トキメキ「……いいよ」

 ときめきはあっさり私の上を降りると、服をかぶって梓に近付きます。

 そして張りつめるような高い音で、梓の頬を打ちました。

梓「っ……」

純「きゅん! 何すんの!」

トキメキ「純ちゃんは黙ってて! 純ちゃんにはどうせ何も言えないんだから!」

 何を言うのときめき。

 私だって梓に言いたいことは山ほどあるよ。



182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 06:24:27.21 ID:Rh7YztNYO


トキメキ「……どれだけ純ちゃんが傷ついたかわかる?」

梓「わかってるつもり」

トキメキ「だったらどうしてまた顔出しにきたの? 純ちゃんが中野さんの顔見たいって思った?」

 なんだこれ。

 レイプされかけたと思ったら、いつのまにか修羅場っぽくなってます。

梓「そうじゃないよ。嫌われてて当然」

梓「でも、襲われてる純なんて見過ごせないし……純にまだ言い足りないことがあったの」

トキメキ「……今さらそんなことが許されると思う?」

純「きゅん、いいの。梓、言ってないことって何?」

トキメキ「……」

 ときめきは不機嫌な顔をします。

 私のことが好きだと言っていました。

 私が梓の肩を持つのは不愉快きわまりないでしょうが、私には気遣えません。



183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 06:28:26.34 ID:Rh7YztNYO


梓「私は、純のこと、確かにお姉ちゃんに重ねてた」

梓「でもね。純のこと自身も、お姉ちゃんに重ね続けられるぐらい、ちゃんと好きになってたよ」

梓「純が好きじゃなかったら、お姉ちゃんの影に重ならないで、どこかで幻滅してたと思うから……」

純「……そっか」

 少しだけ嬉しいです。

 情けないですね、私。

トキメキ「……それで中野さんは、純ちゃんが自分のものだって言えるの?」

梓「私は、純が一緒じゃないと嫌」

トキメキ「それはあんたのお姉ちゃんに重ねてるだけじゃないの?」

梓「……自覚してるよ」

トキメキ「あんたのお姉ちゃんは、純ちゃんに重ねられて愛されることなんか望んでないよ?」

梓「わかってる。だから私は、純だけを好きになるよ」



184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 06:32:17.41 ID:Rh7YztNYO


 梓はときめきの目を見上げて言いました。

 本気で打たれた頬が赤く腫れて、ひりひりといっているのが私にも伝わるようでした。

 あれは、ときめきの感じている痛みでもあるのです。

トキメキ「……私は、今もう、純ちゃんだけを愛してるのにね」

 ときめきはため息をついて眼鏡をかけました。

トキメキ「ずるいね、惚れられてるって」

トキメキ「何やったって、相手がちょっと悲しむくらいで、絶対に幻滅なんてされないんだ」

純「……」

トキメキ「……ごめんね、純ちゃん。今日わたし、変なこと言ったけど……あれぜんぶウソ」

トキメキ「忘れて……友達でいてほしいな」

純「うん……友達で」

 私は少し切なくなる気持ちを抑えました。

 ときめきに同情してあげても、きっと虚しいと思います。



186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 06:36:09.20 ID:Rh7YztNYO


 ときめきは梓の横をすり抜けて、部屋のドアの前に立ちました。

トキメキ「……でも、今度すきを見せたら、もう食べちゃうからね?」

 くすりといたずらっぽく笑って、ときめきは部屋を出ました。

 あとには私と梓と、虚脱感が残りました。

梓「……純、ごめんね」

純「いいよ。……助けてくれたし」

 そう、私は助けられたのです。

 皮肉なことだと思いました。

純「……今度は、助けられたね」

梓「そうだね……う」

 梓は私に近寄ると、膝をついてうめきました。

純「梓、ほっぺたとか平気?」

梓「そ、それは平気なんだけど……」



190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 07:00:06.31 ID:Rh7YztNYO


 苦しげに答えると、梓は私のひざに倒れ込みました。

梓「ねむくなっちゃった……」

純「……覗きばっかして、ろくに寝ないからだよ」

 私のひざまくらに興奮する余裕もないようです。

 私は梓の頭を撫でてやりました。

梓「純に会うためだもん……」

純「……たまには、私から会いに行くよ」

梓「……ありがとう」

純「なにが?」

梓「こんな私でも……好きでいてくれて」

純「……」

 身をよじり、梓はすーすーと寝息を立て始めました。

 私は梓の体を抱き上げると、ベッドへと運びました。

 そっと枕に頭を置き、私はカーテンを閉めに窓際に向かいます。



191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 07:04:05.95 ID:Rh7YztNYO


 窓から外を見ると、太陽がちょうど目に入りました。

 私にはその光が、ふいに人の微笑みに見えたような気がしました。

 ――ごめんなさい。

 あなたの妹の心、やっぱり私にほどかせてください。

 私は、あなたの妹が愛しいのです。

 祈るように呟くと、私はカーテンを開けたままにして、梓の隣に寝転びました。

純「わたしだからね、梓」

 そう囁いて、梓をぎゅっと抱きしめました。

 この愛のきっかけを、ありがとう。

 これからも、あなたに見合う私でいます。

 私たちの部屋は、少し暑いくらいに、日の光であたたかくなっていました。


  おしまい




192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 07:05:13.14 ID:oPrJ+Ulb0


結局純ちゃんが一人であたふたしてただけってことですね



193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 07:05:50.52 ID:JwPEpj6l0





194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 07:08:44.04 ID:42FQGc/H0


久々にいいものを見た



196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 07:20:02.21 ID:4rrEta73O

乙。
れずにゃん



197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 07:32:18.67 ID:Ya/OzJaHO

良かった



198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 07:34:51.19 ID:7D3EzLMp0

おつ



199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 07:44:12.17 ID:U5Dw/MaC0

綺麗な物語だった

トキメキちゃんかわいそす



200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 07:46:49.39 ID:2DYIA5BXO

おつ



201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/09(金) 08:01:39.03 ID:KrwR618VO

予想外の良スレだった






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[ 2011/09/09 19:40 ] 非日常系 | | CM(0)

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