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唯「夢をあきらめない」 【音楽】


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:08:21.30 ID:/WMOK8jx0

唯「みんな~! こんな暑いのに
  私たち放課後ティータイムのために集まってくれて本当にありがとう!」

観客「ワーーーーーーーーッ!!」

唯「それじゃあ行きます! 最後の曲で……ふわふわタイム!!」



とある大物ロックバンドのギタリストは、そのバンドについて、手放しに賞賛し、こう語った。

大物「放課後ティータイムは最高だったな。俺が中学生の時、ライヴを見たんだ。
   まだHTTのメンバーがみんなデビュー前で高校生だった頃の学園祭さ。
   あの時はまだセカンドギターのアズサがいなくて4人だったかな。
   それまで聴いたことのないようなサウンドで、本当に最高のライヴだったね。
   ベースのミオのシマパンまで見れて、ラッキーだったよ(笑)」





2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:10:33.14 ID:/WMOK8jx0

人気ガールズバンド、ラブ・クライシスのマキは同じく、そのバンドについてこう語った。

マキ「HTTのドラマーとベーシストは私の中学の同級生だったの。
   そのよしみで、私たちのバンドが出ている
   ライヴハウスでのイベントに出演依頼をしたのが、HTTのライヴを見た最初だったわ。

   リハーサルでは緊張していたみたいでね。
   ギターボーカルの平沢さんがマイクに顔をぶつけて鼻血を垂らしたりで、
   酷い出来だったけど、本番の演奏は本当にすごかった。
   友人ながら、とんでもないバンドが出てきたものだと思ったものよ」

大物「俺がレスポールを手にしたのは、間違いなく平沢唯の影響さ。
   俺の周りにもHTTに影響されてバンドを始めたヤツが大勢いる」



3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:13:00.03 ID:/WMOK8jx0

20××年、突如日本の音楽シーンに巻き起った
ガールズバンドブームに乗り、とある一組のロックバンドがデビューした。

衝撃的な1stシングル『ふわふわ時間』とともにデビューを飾ったそのバンドは、
かねてから旧知であった他のガールズバンド数組とともに全国ツアーに乗り出し、
各地で多くのロックファンを熱狂の渦に巻き込んだ。

マキ「その後もHTTとは何回か対バンして……
   互いのバンドがメジャーデビューしてからも一緒に全国ツアーを回ったりしたわ。

   他にも何組かのガールズバンドと一緒にね。
   あの時の何組かのバンドで企画して、真夏の野外フェスをやったこともあるわ。
   観客にはダントツでHTTがウケていたわね」



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:14:54.62 ID:/WMOK8jx0

そして、そのツアーの最終地は、某プロ野球チームの本拠地であった球場における野外フェスティバル。

ラブ・クライシス、デスバンバンジー、ナマハ・ゲ、ブラックフリル等、
数々のバンドがデビュー直後の若く衝動的なサウンドで、真夏の野外を更にヒートアップさせた。

そして、この野外フェスに出演したバンドは皆、
その後も第一線で活躍。商業的な成功も手に入れ、現在でも音楽シーンを沸かせている。


ただし、とあるただ一組のバンドを除いて――であるが。


大物「HTTは最高のバンドさ。
   でも、そんな最高のバンドでもビッグになれなかったなんて、世の中つくづく難しいと思うよ」

マキ「HTT……今は何をしているのかしら……。解散したって噂は聞かないんだけれど……」



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:18:21.52 ID:/WMOK8jx0

所かわって……とある普通の街で。

律「今日はまだあと10件以上も配達があるんだ」

田井中律は学校給食の配達ドライバーである。

毎日早朝からトラックを駆り、数十か所の中学校や小学校を回っている。

律「車の免許を取ったのは、昔バンドでツアーをやってた頃だよ。
  機材もたくさんあるし、移動にはバンが欠かせなかったからね。
  澪はビビりで運転には向いてないし、梓もムギもまたしかり。
  唯に至っては論外だし、私しか適任がいなかったんだよね」

律はこの数年間、事故らしい事故も起こしたことがなく、
社内でも有数の優秀なドライバーだという。



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:21:21.77 ID:/WMOK8jx0

律「よっと」

何件目かの小学校に着くと、律は慣れた手つきでコンテナから荷物を下ろす。

律「え? 結構力があるんですね、だって?
  そりゃ私はドラマーだもん。腕っ節には自信があるさ。
  でも、こんなに力持ちの女なんて、
  きっと男は誰も振り向いてくれないんだろうなー……なんてね」

律には何歳か離れた弟がいる。

名門大学を出て、一流商社に入社、現在は妻と子供1人の幸せな家庭を築いているという。

律「弟のような人生をうらやましいと思ったことはないと言えばうそになる。
  でも私は別に後悔しちゃいない。
  確かに今はどん底だけど……言いかえれば、これ以上の底なんてないだろうし、
  よくなる可能性はあってもこれ以上悪くなる可能性はないってね。
  何事も前向きに、だよ」

全ての配達を終え、律が家に戻る頃は既に夜の10時を回っている。

律「今日は早く寝なきゃなー。
  明日は久々の休みだし、何といってもバンドのリハーサルだ!」



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:24:40.97 ID:/WMOK8jx0

梓「子供は好きですよ。何といっても純粋ですから」

中野梓は地元の音楽教室で子供にアコースティックギターの演奏を教え、生計を立てている。

優しく丁寧に教える梓のレッスンは、子供たちにも人気だ。

梓「子供たちによく言われるんです。
  『あずさ先生、そんなにギターが上手いならプロになればいいのに』って」

そう言って、梓は自嘲気味に笑った。



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:27:29.15 ID:/WMOK8jx0

梓「私が今も一応はプロのミュージシャンで……
  あのバンドのメンバーであることを覚えている人なんて、どれくらいいるんでしょうかね」

レッスン用のアコースティックギターを仕舞うと、
梓はおもむろにハードケースからエレクトリックギターを取り出した。

子供たちの知らない、ロックな『あずさ先生』だ。

梓「小さい頃ギターを始めた時から使っている
  フェンダー・ムスタング……明日久しぶりに弾くんですよ」

明日は梓が所属しているバンドのリハーサルだという。



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:29:47.76 ID:/WMOK8jx0

斉藤「紬お嬢様――本日は19時より○○株式会社の専務との会食の予定となっております」

紬「『お嬢様』はやめて頂戴――。
  過去の栄光に縋る没落寸前の企業の一人娘にそんな代名詞、いまさら恥ずかしいでしょう」

恭しい執事の言葉に、琴吹紬は憂鬱そうにそう答えた。

紬「世界的な不景気のあおりですよ。
  昔は琴吹グループもそれなりに名の知れた財閥でしたが、
  今ではグループ会社の社員をリストラし、
  屋敷を売り払い、勤めていた執事やメイドの殆どを解雇して……
  やっと回転しているような状況です」

ある時期まで、有力財閥として名の知れていた琴吹家はここ最近急激に下降線を辿り始めたという。

紬は経営者である父の片腕として、毎日グループを潰さぬために、東奔西走している。



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:31:30.13 ID:/WMOK8jx0

紬「斉藤、わかっていると思うけど……明日は……」

斉藤「それがですね、お嬢様……
   ○○銀行の営業部長がどうしてもお嬢様とお話をされたいとおっしゃっておられまして……」

紬「なんとか違う日にできないかしら。明日はとても大切な日なの」

斉藤「バンドのリハーサル……でございますか」

執事の目に、自分への疑念が籠っていることに気付かない紬ではなかった。

昔はバンドの合宿先に所有の別荘を使ったり、機材購入の援助をしたりと、
紬のネームバリューは様々なところで役に立った。

しかし、今は金銭的に家からのそのような援助は期待するべくもなく、
そもそもそんないつまで経っても独り立ちできない子供のような扱いを、紬が我慢できるわけもない。

紬「身勝手だと言われればそうだと返さざるを得ないですし、無自覚という批判ももっともでしょう。
  それでも私にとってはあのバンドが全てなんです」



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:32:42.76 ID:/WMOK8jx0

澪「あの……正社員の募集をしているって聞いて……。
  え、応募資格は25歳まで? そうですか……わかりました。はい……すいません……」

求人雑誌を片手に、暗い表情で受話器を置いた秋山澪は、現在のところ無職だ。

澪「やっぱり……若い頃はずっとバンド一筋でやってて……
  そのせいで大学もロクに行かず中退しちゃったし……」

職歴がないわけではないが、元来の性格から澪は仕事が長続きしなかった。

今は親からの仕送りと過去の僅かな貯蓄で、何とか生活を送っている。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:34:38.96 ID:/WMOK8jx0

澪「ええ、親からはよく言われます。『イイ人紹介してあげるから、身を固めなさい』って。
  今まで何度お見合いの誘いを断ったことか――」

幸いにも澪は容姿がよく、少々内気な気質にさえ目をつむれば、相手など引く手あまたであると思われた。

澪「でも……まだそんなことは考えられないです。やるべきことがまだあるから……。
  ええ、今はつらいですけれど、一種のセラピーみたいなものだと思えば……」

そう言うと澪はテーブルに向かい、一目散に大学ノートへペンを走らせ始めた。

明日のリハーサルに間に合わせるため、新曲の作詞をこれから行うという。

澪「詞を書きためた大学ノートもこれで48冊目になります。
  でもその内の46冊ほどは、世間的には陽の目を見ていないんですけどね……」



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:37:45.83 ID:/WMOK8jx0

主任「平沢さん、ちょっといいかな」

ある日、派遣先の工場の主任に呼ばれた平沢唯は、「はぁ」と返事をして事務室へと向かった。

主任「キミ、最近遅刻が多すぎじゃないかな」

唯「す、すいません……。夜までギターの練習してたら、朝起きられなくて……」

主任「ギターの練習って、キミは軽音楽部の高校生か?
   派遣とはいえ、社会人としての自覚が足りないんじゃないかな」

唯「ご、ごめんなさい……」

主任「大体キミは今いくつだい?
   周りの同い年の友達は、結婚して子供がいたっておかしくない年齢だろう。
   いつまでもバンドとか音楽とか、夢みたいなことを言って恥ずかしくないのかい?」

唯「…………」

主任「もしかして、刺身の上にタンポポ乗せる仕事だからって舐めているのかな」

唯「そ、そんなことは決して……」



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:40:59.12 ID:/WMOK8jx0

主任「とにかく、キミの代わりなんていくらでもいる。
   いい加減にしないと、派遣契約を途中で打ちきることもあると、肝に銘じておきなさい」

唯「はい……」

唯は工場の派遣作業員として生計を立てていた。

頼りになった妹の憂は既に結婚し、実家を出ている。

唯「ギー太……」

唯は狭い自室で、愛機のレスポールに静かに語りかけた。

唯「今日も仕事場で怒られちゃった。やっぱりわたしってダメだね……えへへ……」



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:42:16.80 ID:/WMOK8jx0

唯は思い出した。

高校生の頃の活き活きとした毎日を。
時にはお茶を囲みながら、時には悪ふざけをしながら、
友人達と絆を深めあい、楽しく演奏した毎日を。

さらに唯は思い出した。

あの華々しかった全国ツアーを。
千秋楽――あの野外フェスでの観客の熱狂を。

唯『こんにちは! 放課後ティータイムです!!』

観客『ウワーーーッ!!』

スタジアムを埋め尽くした、2万とも3万とも知れぬ人々。

そんな想像しないようなたくさんの人間が、
自分達の演奏に、歌に酔いしれ、手を叩き、頭を振り、拳を振り上げる。

唯「ギー太だって……もう一回でいいから……あんな大きな舞台で音を出してみたいよね」

愛機のレスポールを優しく撫でる。購入当初は新品だったこのギターとも、長い付き合いになる。
そのせいか、ボディの所々には傷も見える。

唯「……ロックスターになりたいなぁ。もう一度あんな大きな場所で演奏してみたいなぁ」

それがどん底にいる彼女たち『放課後ティータイム』の、ただ一つだけの願いだった。



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:45:19.40 ID:/WMOK8jx0

20××年、野外フェスの勢いをかってリリースされた
放課後ティータイム期待のファーストアルバムはそこそこに売れた。

オリコンチャートにもランクインしたし、テレビの音楽番組にも出演した。

何ヵ所かのライヴハウスで、ワンマンライブも開催できた。

しかし、その後が繋がらなかった。

冒頭、HTTへの熱き思いを語った大物ギタリストはこう語る。

大物「セカンドアルバムが全く売れなかったのさ。
   新曲の制作とレコーディングに凝り過ぎて、アルバムの制作に時間がかかったせいで、
   リリースされる頃には世間に彼女たちは飽きられていたんだ。
   それにしたって、そのアルバムもいい出来だったし、
   俺としてはあれを認めない世間の耳の方がファッキンイカレてると思ったけどな」

同じくラブ・クライシスのマキは語る。

マキ「私たちは運よく、ファーストもセカンドも売れてくれた。そのおかげで今の地位がある。
   でもHTTと私たち、なぜこうまで道が分かれたか、正確な理由が私にはわからないわ。
   本当に運としか言いようがない」




25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:47:34.70 ID:alRLmmI90

結論:曲はストックしとけ





26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:48:10.59 ID:/WMOK8jx0

日曜日――。

放課後ティータイムの5人が集まったリハーサルスタジオは狭い上に汚らしく、
アンプ等の機材もお世辞にもよいものとはいえない状態だった。

これなら、高校時代の音楽室の方が機材は揃っていたと言えるほどだ。

澪「それじゃあ『ふわふわ時間』から、通しでやってみようか」

律「そうだな。唯、コードは覚えてるか?」

唯「もう何年演奏してると思ってるの? バカにしないでよ、りっちゃん」

梓「そんなこと言って、一番最近やったライヴの時に見事に曲の構成を忘れたのは誰でしたっけね」

紬「ふふふ、梓ちゃんも言うようになったわね」



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:50:04.68 ID:/WMOK8jx0

律「そうしてたまのライヴを行えるのは、殆どが地元のライヴハウスさ」

澪「ライヴハウスって言っても、半分バーみたいなところが殆どだけどな」

梓「でも、地元には昔から私たちを応援してくれているファンがいるんです」

ファン1「HTTは最高だよ。彼女たちの高校生の頃から、ライヴに通ってる。
     もう150回は、彼女たちのライヴを見たよ」

ファン2「『ふわふわ時間』は最高の名曲さ。HTTは地元の誇りだよ」

紬「バンドを演奏している時、それはまさしく私たちにとって魔法のような最高の時間なんです」

唯「でも、夜が明ければ私たちは皆、日常のクソ生活に逆戻り。
  仕方ないことだと、わかってはいるけど……」

そんな時、唯のもとに懐かしき旧友からの1本の電話が入る。

和『久しぶりね、唯。私、真鍋和、覚えてる?』

唯「の、和ちゃん!? 覚えてるよ! 当然! 久しぶり!」

和『貴方達、まだHTTを続けてるんだってね?』

唯「うん……なかなか芽は出ないんだけど……」

和『そこで相談なんだけど、実は私、今度新しくマネージメントの仕事を始めようと思っているの。
  そこで、すぐに思い浮かんだのがHTTよ。
  HTTほど、ロックに情熱を傾けているバンドを、私は他に知らないわ。
  よかったら私と一緒に仕事しない?』



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:52:46.00 ID:/WMOK8jx0

和からの提案が5人にとって魅力的だったのは、高校時代の友人だったということだけが理由ではない。

なんと和は全国30個所のライヴツアーの仕事を、HTTのためにとってきたのである。

澪「凄い!! 今まででも最高のツアーになるぞ!!」

律「さっそく、仕事の休暇の申請をしなきゃな!」

梓「それに……全国でライヴをすれば必ずレコード会社の人が見てくれる……」

紬「新しいアルバムの発売も、夢じゃないわ」

唯「とうとう、私たちの活動が報われる時が来たんだね!」

全国ツアー初日は、野外でのロックフェスティバルであった。

澪「野外フェスなんて……出演するの何年振りだろう……」

さすがの大規模フェスだけあって、バックステージには有名ミュージシャンが数多く行きかっている。

律「おい! あそこにいるの、デスバンバンジーの人じゃないか!」

梓「懐かしいですね……高校生の頃、最初にライヴハウスに出た時に共演した……」

紬「一緒に野外球場でライヴもやったわよね」

唯「わたし、ちょっと声かけてくる!」



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 00:57:46.35 ID:/WMOK8jx0

唯「あのー……デスバンバンジーの○○さんですよね?」

○○「はい?」

唯「わたし、放課後ティータイムの平沢唯です!
  ほら、覚えています? 昔、ライヴハウスでマイクに顔をぶつけて鼻血を出した……」

○○「えーっと……(誰だっけ)」

律「あっちにいるのは……ラブ・クライシスのマキちゃんじゃないか……! おーい!」

マキ「……りっちゃん? りっちゃんじゃない!! 久しぶり! 元気にしてた?」

律「ああ! 私たちもこのフェスに出演してるんだ!」

マキ「そうなんだ……。放課後ティータイムまだ続いているのね。いいバンドだもんね」

律「ラブ・クライシスはいつが出番なんだ?」

マキ「私たちのバンドの出番は、最終日の最後、大トリよ」

律「えっ……」

マキ「HTTはいつ出るの?」

律「あ、あははは……(言えない……一番小さいステージの、それも昼間の一番目だなんて……)」



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:00:17.57 ID:/WMOK8jx0

業界における自分達の立ち位置を痛感せずにはいられない5人であったが、
それでもステージは精いっぱいこなし、集まった観客を大いに熱狂させた。

和「みんな! 今日のライブ、よかったわ。やっぱり私の目に狂いはなかったのね」

唯「この調子で残り29箇所、頑張ろう!」

澪律紬梓「おー!!!!」

しかし、ツアー日程が進むにつれ、様相は変わっていった。

――ツアー12日目。

律「おい! ギャラが支払われないってどういうことだ!!」

澪「何でも私たちが出演時間に遅れてやってきたからって、
  このライヴハウスのオーナーが言ってたらしい……」

梓「ひどいです! 私たちが遅れたのはどうしようもない渋滞のせいだったのに!」

紬「それに遅れてきてもちゃんとステージはこなしたのに……」

唯「わたし、ライヴハウスのオーナーに抗議してくる!!」

律「私も行くぞ!!」

和「ちょ、ちょっと二人とも……」



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:02:36.27 ID:/WMOK8jx0

オーナー「だから、君達に払うギャラはないと、何度言ったらわかる!?」

唯「そんな! 私たちはちゃんと仕事をこなしたんだよ!?」

オーナー「遅れてきただろうが!!」

梓「それは仕方ない事情があったからで……!」

オーナー「知ったことか!」

律「テメエ、まさか最初からギャラを払う気がなかったんじゃないだろうな!?」

オーナー「とにかく! ないものはないんだ!!
      それに見ただろ? 今日の観客はたったの42人だ!
      それだけの客しか呼べなかった自分達のことは棚に上げて、
      ふざけたことを言うもんじゃない!!」

唯「そ、そんな……」



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:06:08.50 ID:/WMOK8jx0

――ツアー20日目。

澪「どうなってるんだ? 次のライヴをやる街に行くには、このバスで良かったんじゃないのか?」

紬「さっきから延々と同じところを回っているような気がするわ」

和「ちょっと待って……。事前に交通ルートは確認したはずなんだけど……」

――ツアー22日目。

律「おい! 私たちが乗るはずの新幹線、行っちゃったぞ!」

和「誤算だったわ……。まさか駅までの道路があんなに渋滞しているだなんて……」

梓「次の列車の時間まで待っていたら、出番に間に合わないですよ?」

和「ちょっと待って……。
  今、向こうのプロモーターに連絡を取って、出演時間を何とか遅らせてもらうから……」

澪「そんなことをしたら、またギャラがもらえなくなるんじゃないか?」

和「わかってるわ……! でも他にどうしようもないでしょう!」

澪「……そうだな」



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:07:47.98 ID:/WMOK8jx0

――ツアー24日目。

梓「今日のライヴ……なんで町内会のお祭りの余興コーナーなんですか?」

澪「あのステージなんか……5人乗ったら壊れそうだぞ……」

唯「どうなってるの和ちゃん?」

和「おかしいわね……。地域最大のフェスティバルだ、っていう話だったのに……」

紬「フェスティバルというか……これはただの盆踊り大会……」

律「地域最大じゃなくて、町内会最大の間違いだろう……」

――ツアー25日目。

唯「こんにちは! 放課後ティータイムです!」

客「(シーン)」

澪「(うっ)」

紬「(これは……酷い)」

梓「(500人は入る会場だって聞いてきたのに……)」

律「(観客が……6人しかいない……)」



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:10:32.79 ID:/WMOK8jx0

ライヴ後、6人の観客のうちのただひとり、
HTTの熱狂的なファンがHTTの楽屋にやってきて、こうまくしたてた。

ファン「HTTはマネージャーを変えるべきだ!! 
    HTTのような素晴らしいバンドは、1000人以上の観客を前に演奏をするべきだし、
    こんなクソみたいな6人の観客を相手にするなんて、間違っている!!
    悪いのはブッキングが下手なマネージャーで、HTTの音楽ではない!!」

澪「(それは私たちもわかっているところなんだけど……)」

律「一体どうなってるんだ!?
  ギャラは殆ど支払われない!! バスは乗り間違える!!
  電車には乗り遅れて駅のベンチで寝る羽目になる!! 盆踊り会場で演奏させられる!!
  これがプロのバンドのツアーって言えるのか!!??」

紬「りっちゃん、落ち着いて……」

和「私が悪いのはわかっているわ……。
  でも、私だって、一生懸命やっているのよ……ううっ……」

唯「(の、和ちゃん……)」

梓「(泣いてる……)」



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:13:47.34 ID:/WMOK8jx0

結局、このツアーで放課後ティータイムの5人が得たギャラはほぼゼロであった。

当然、レコード会社からの声も、かかるわけがない。

律「と、こうしてクソな日常に逆戻り……か」

ツアーでは毎日にようにドラムを叩いていた律も、日常に戻ればしがない配達ドライバー。

今日も小学校へ給食を届ける車中で、その複雑な胸の内を語った。

律「ロクに金も稼げなかったし、
  名前も売れなかったけど、ツアーに出れただけで幸せだったと思うんだ」

あんなに酷いツアーだったのに?

律「ああ、そうさ。演奏できたしね。
  それに……こうして金を稼ぐ仕事があるだけでも私は幸せなんだ」

律「梓はギター講師の仕事だけじゃ食えなくって、夜はパートに出てるって聞いた。
  ムギの会社はもう倒産寸前だそうだよ。
  唯は派遣社員だし、澪に至っては無職だ」

いっそのこと、日々の仕事に専念するのはどうか?

律「いや……それでも私たちはまだ諦めていないんだ」



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:16:46.66 ID:/WMOK8jx0

その頃、次の動きを起こしたのは唯であった。

唯「こうして何もしないで待っているだけじゃ、
  いつまで経ってもチャンスはやってこない……。こっちから動かないと!」

唯は最近スタジオで録音したHTTの新曲がたっぷり詰まったデモテープを、とある人間のもとへと送った。

5人にとっての自信作となるであろう、新たなアルバムのデモテープだ。

唯「あの人なら……HTTの素晴らしさを理解してくれるはず」

その人とは、彼女たち5人が桜高軽音部に所属していた頃の恩師にして、
HTTの1stアルバムのプロデューサー、山中さわ子であった。

教師であったさわ子は、顧問であり音楽にも造詣があったという理由だけで行った
HTTの1stアルバムプロデュースをきっかけに、業界の売れっ子プロデューサーへと転身。

現在では数々の有名バンドのアルバムのプロデュースを手掛けるまでになっていた。



3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:21:22.65 ID:/WMOK8jx0

律「さわちゃんがプロデュースした1stアルバムは最高のサウンドだった。
  その後も何枚かアルバムを出したけど、ことごとく売れなかったのは、
  結局1stのあのサウンドを超えるものがどうしても作れなかったからだ」

澪「その点じゃ、唯の選択は賭けだったと思う」

唯「これでダメなら……いいや、それは考えちゃいけない……」

数瞬間後、唯のもとに一本の留守番電話が入る。

さわ子『唯ちゃん? 久しぶりね。HTTのデモテープ聴かせて貰ったわ。
    それで、一度みんなと会って話がしたいと思っているわ。場所は……』

HTTの未来に、一筋の光明が見えた瞬間だった。



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:22:17.75 ID:/WMOK8jx0

都内某所、5人全員(無職1名を除く)が仕事を休み、
大御所プロデューサー山中さわ子の事務所に、緊張した面持ちで集まった。

さわ子「デモテープ、聴かせて貰ったわ。よくここまで素晴らしい曲を書き溜めたわね。
    それもこれも全て貴方達がここまで諦めずに活動を継続してきたからこそね」

澪「そ、それじゃあ……」

紬「アルバムをプロデュースしてくれるんですか!?」

さわ子「ええ。これだけの曲があれば、必ず最高のアルバムが出来ると確信しているわ」

律「マ、マジかよ……」

梓「夢じゃないんですね……」

さわ子「でも、それには条件があるわ」

唯「条件……ですか?」

さわ子「アルバムの制作には、最低でも300万円の費用が必要なの――」

5人「!!!!!」



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:24:31.06 ID:/WMOK8jx0

律「正直言って困ったよ……。
  300万なんて大金、そう簡単に用意できるわけがない」

澪「昔ならムギ辺りがポンと出してくれる額なんだろうけど、
  明日の社員の給料も払えるか怪しいムギの家に、そんなことを頼むのは無理だってわかってる」

梓「こうなったら、パートの時間を増やすしかないですね」

唯「私も……頑張って働く!!」

紬「私もバイトを始めます!」

澪「私もとりあえずハロワ行ってみる!」

しかし、律の言うとおり、それだけの大金が容易に溜まるわけがないし、
そもそも自分達の生活で手いっぱいだった5人に、貯蓄も殆ど無かった。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:26:47.20 ID:/WMOK8jx0

5人が諦めかけたその時、手を差し伸べた人物がいた。

唯の実妹、平沢憂が、バンドに対し、アルバムレコーディング資金の出資を申し出たのだ。

憂「バンドで演奏している時のお姉ちゃんは、私にとってずっとあこがれの存在でした。
  ギターを弾いている時のお姉ちゃんが大好きだし、歌っている時のお姉ちゃんが大好きなんです。
  現実が厳しいことは理解しているけど、それでもお姉ちゃんが大好きな音楽を今後も続けていけるのだったら、
  私は助けてあげたいと思うんです。それが妹である私にできる、ただ一つのことです」

唯「憂、わたしは本当に最高の妹を持ったと思うよ……」

こうしてHTTの5人は、山中さわ子所有のスタジオで怒涛のレコーディングへと突入した。

書き溜めた自身の楽曲たち、最高のプロデューサーであるさわ子の手腕、そして気合いの入る5人のメンバー、
その化学反応は予想以上にすばらしく、レコーディングは順調に進んだ――かのように思われた。

しかし、事件は起こる。



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:28:32.48 ID:/WMOK8jx0

『このレコーディングが失敗すれば――バンドに未来はない』

そんなプレッシャーに最も苛まされたのは、軽音部時代からの部長であり、リーダーの律であった。

そして、律の溜まりに溜まるストレス――その爆発の被害を受けるのは決まってただ一人。

律「ふざけんなよ!! お前、どういうつもりだ!!」

夜のスタジオに、ドラマーの怒号が響く。

律が怒りの形相で掴みかかる相手は、澪だった。

律「唯がボーカルのレコーディングを一生懸命やっている最中だっていうのに、
  ボーっと座ってやがるのはどこのどいつだ!!」

澪「……やめろよ」

律「せっかく掴んだチャンスで、全員が一丸で頑張らなきゃいけない時に
  ジメジメと暗い負のオーラを出しやがって!!
  それはいったいどういうつもりなんだって聞いてるんだよッ!!」



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:31:20.90 ID:/WMOK8jx0

澪「なんでいつも私なんだ……」

律「お前がいけないからだろ!?
  一人だけ職にもつかず、バンドに金も落とさない!
  かと思えばレコーディングもやる気がない!!
  おまけに歌詞もベースプレイも中途半端!!
  そんなお前がいけないからだろ!?」

梓「(オロオロ……)」

紬「りっちゃん! 暴力はだめよ!」

唯「そうだよ! 二人とも落ち着いて!!」

さわ子「ムギちゃんと唯ちゃんの言うとおりよ。二人とも、とりあえず座りなさい」

さわ子に促され、何とかソファーに腰を下ろす二人だったが、律の怒りは収まらない。

ひたすらにやる気のないベーシストの態度を糾弾すると、今度は澪が反論する。

澪「いっつもそうだ……。律はストレスがたまるとすぐ私に八つ当たり……」

律「お前なら……付き合いの長いお前なら……
  私がいつ爆発するか、そのタイミングが手に取るようにわかるはずだろ!?」



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:35:58.77 ID:/WMOK8jx0

澪「わかるよ。わかるけど、どうしていつも私なんだ?
  律は一度でも私の話を聞いてくれたことがあったか?
  私のことばかり言うけど、自分のドラムプレイが中途半端だって思ったことはないのか?
  どうしてHTTがここまで成功することができなかったか、考えたことはあるのか?」

律「なんだとッ……!!」

澪「私はもう……疲れたよ……」

律「わかったよ!!
  澪、お前はクビだ!!
  明日からはスタジオに顔を見せるんじゃない!!」

澪「それは……本気で言っているのか?」

律「!!」

澪「私は……律が本気で私のことをHTTから必要ないと思うのであれば、
  自分がHTTを辞めてもいいと思ってる」

律「………クソッ!!」

梓「律先輩が……」

紬「泣いている……?」



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:38:05.47 ID:/WMOK8jx0

律「本気で言ったと思うか……?」

澪「…………」

律「なぁ澪、お前と私……一緒にバンドやり始めてからどれくらい経つ?」

澪「随分と長くなるな」

律「そうだよ……。私たちが一緒にHTTを始めたのは15歳の時からだ!
  それどころか、お前とは幼稚園の頃から一緒につるんできた……。
  そんなお前はもはや家族同然だ!! 姉妹みたいなもんだ!! わかるだろ!?」

澪「…………」

律「喧嘩なんて数えきれないくらいした!!
  それでも私はお前と一心同体だと思ってる!!
  それは私だけの思い違いか!? なぁ!」

澪「…………」



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:40:42.84 ID:/WMOK8jx0

律「確かに私は難しい人間だ!!
  リーダーとしての責任感にも、このレコーディングに対するプレッシャーにも、
  到底耐えきれそうにないし、今にも潰れそうだよっ!!
  だけど、こんな情けない愚痴を……クソったれな感情を……
  私は澪以外の誰に吐き出せばいいって言うんだよ……!!
  ガキの頃からずっと一緒にいる澪以外の誰に……こんなこと言えるっていうんだ!!」

澪「律……」

律「なぁ、澪……私、本当はお前と喧嘩なんてしたくないんだ……」

澪「それは私もだよ……」

律「澪……私が悪かった……どうか許してくれ」

そうして肩を抱き合った二人を、その場の誰もが固唾を飲んで見守っていた。



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:42:14.87 ID:/WMOK8jx0

波乱万丈を経て、完成した放課後ティータイムの最新アルバム。

5人の汗と努力と歴史の詰まった最高の自信作。

しかし、業界の反応はといえば――

律「また契約を断られたよ……」

紬「これで10社目……ですか」

梓「レコード会社が決まらなければ、アルバムは発売できない……」

澪「手詰まりだな……」

唯「…………」

よくも悪くも『変わらない』ことが売りだったHTTの音楽性が詰まった最新アルバムは、
『時代遅れ』のレッテルを貼られ、契約を結ぼうなどというレコード会社は現れなかった。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:43:10.10 ID:/WMOK8jx0

律「正直、そろそろ潮時かなと思う時もある。
  弟の聡には『ねーちゃん、いつまで夢見てるんだよ』
  なんて、手厳しい言葉をもらうこともあるよ」

澪「でももう今更戻れないし、戻る気もないんだ」

紬「琴吹グループも失墜した今、私にもう失うものはありません」

梓「HTTのアルバムを世に出すためなら、私はなんだってする」

唯「バカな夢だと言われるかもしれない。現実を見ていないと言われるかもしれない……」

唯「それでも私たちは諦めない!! HTTは絶対にビックになってやる!!」



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:47:41.65 ID:/WMOK8jx0

思い続ければいつかは叶う
――その言葉をまさしく地で行った5人に、その知らせが届いたのは突然であった。

唯「私たちのアルバムを発売したい……?」

とあるインディーズ・レーベルが、HTTのアルバムを自社から発売してもよいと手を挙げたのだ。

律「しかもライヴまで決定した……だと?」

それもとある大型ロックフェスティバルへの出演決定というオマケ付で――。



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:49:00.92 ID:/WMOK8jx0

律「ここが幕張○ッセか……」

フェス会場となる広いホールを見回し、律は溜息を吐いた。

紬「私たちの出番は……昼間の一番最初ですね」

梓「本当にお客さんが来てくれるんでしょうか……」

澪「大丈夫だ……信じよう」

唯「そうだよ。わたしたちはこんなに長く一緒にやってきた。
  その歴史は……ぜったいにうそをつかない!」

そして、ステージに出ると――

紬「うそ……」

梓「なんて……ことでしょう……」

律「こんなことって……」

澪「こんなことって……あるんだな……」

『ウワーーーーーーーーーーッ!!』

観客席を埋め尽くす人、人、人――。

放課後ティータイムは幾年ぶりかに大観衆に迎えられたのであった。



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:51:10.78 ID:/WMOK8jx0

そして、象徴的な出来事は次の瞬間に起きた。

夢にまで見た光景に、興奮を抑えられず、唯がマイクににじり寄り、

唯「それじゃあ1曲目行きます! ふわふわタイ……ぶへっ!」

興奮のあまり、マイクに顔面をぶつけて鼻血を出したのだ。

まるで、初めてライヴハウスで演奏したあの頃のように――。

大物「あのフェスには俺のバンドも出演する予定でさ、勿論トリでね。
   それで、会場に着いてみたらなんと出演者リストにHTTの名前があるじゃないか!! 
   驚いた俺はすぐさまステージ前最前列に陣取ってHTTのライヴを見たよ! 
   その日入っていた取材も何もかもすっぽかしてね(笑) 
   あの時ばかりは、初めてHTTを見てバンドに憧れた子供の気持ちに戻っていたよ!
   ああ、最高のライブだった!」

マキ「ラブ・クライシスもあのフェスには出演していた。
   私は舞台袖からHTTのステージを見たわ。
   持ち時間は少なかったけど、それが終わる頃には完全にHTTは観客の心を掴んでいた。
   平沢さんがまたマイクに顔面をぶつけたりして……そう、あの頃と同じようにね――。
   あのバンドは良い意味で何年たっても変わらないの」



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:54:12.58 ID:/WMOK8jx0

唯「どんな経験も、無駄になることはないって学んだ気がするよ」

律「そうだな……トラックの運転手みたいなキツイ仕事も」

梓「ギターの講師も」

紬「会社の倒産も」

澪「無職期間も」

唯「それでもやっぱり、私たちが帰るところはひとつ、音楽なんだね」

そう、放課後ティータイムの歴史はまだこれからなのだ――。

律「そうだな! 私たちはまだ夢半ばだ!」

梓「アルバムも出したばっかりですしね!」

紬「次はまたツアーができるように、いろんなプロモーターに売り込みましょう!」

澪「わたしも今度こそ職を見つけるよ!」

ロックスターになる、そんなばかげた夢を彼女たちはこれからも追い求めてゆくだろう。

唯「わたしたちは……絶対に夢をあきらめないよっ!」


おわり



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:58:59.56 ID:/WMOK8jx0

終わりです。

前スレであったように映画『Anvil』のパロディでした。

あれはいい映画ですよー。昨日DVD見て、不覚にも泣きました。

ご指摘の通り、何も内容のない急仕上げのクソSSでしたが、興味持った方いたら原作を見てみてください。

バンドを知らなくても楽しめる内容だと思いますし。




23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 01:58:45.84 ID:TH9J4SI60





26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 02:06:13.27 ID:IBu99uHQ0





27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 02:16:09.69 ID:rjtzvCGy0

うちのダチも初見は泣いたって言ってたわww
とりあえず乙



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/04(火) 03:38:33.39 ID:SdxMYFHK0

ええ話やないか乙






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唯「夢をあきらめない」
[ 2011/10/01 11:38 ] 音楽 | Anvil | CM(0)

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