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唯「ししょー!」平沢進「君に師匠と呼ばれる筋合いは無いからね」 【非日常系】


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 18:14:38.18 ID:nNJen9zD0

唯「しーしょー」

進「何」

唯「師匠は私のお父さんだよね?」

進「 私 は 作ってない」

唯「えー」

進「でも君は私から生まれたらしい」あまり私はその事について詳しくは無いのだが。

唯「??どういう事ー」

進「大人には敬語を使いなさいね。」

唯「どういう事ですかししょー」

進「知らん」





3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 18:15:21.52 ID:nNJen9zD0




進「電子の世界に入り込む、という事をついに実現した男がいるとしよう」

唯「んー」

進「だがそれは機械の中に入り込むんじゃない。

  奥にある「隔てられた世界」へ入ったとしたらどう思う?」

唯「うんー?」

進「画面に映るアニメの世界はこれに入る、私がいた世界を三次元と呼ぶならその場所は二次元。

  つまり今現在私が立っている場所は二次元という事だ。」



進「今すぐ誰か助けなさい!!!」



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 18:16:51.39 ID:nNJen9zD0

唯「えーじゃあ ずうっとここにいる私は二次元の人ってことかなあ」

進「そうなるんじゃないの?私は一応君の存在は知っていたぞ。

  まあ知らないフリしてたけど」

唯「ええ~そんなあ」

進「とりあえず出て行ってくれないかな」

唯「ししょう、ここは私の家!

  ししょうの家もここだけどね~」

進「ほ」

見渡すと確かにどこか馴染みのある風景だった。うん?
本当に馴染みのあるはずのつくば山頂の風景では無いのに何故かこんなにマイホーム感。

唯「さっきも言ったじゃないですか、ししょうは私のお父さんです」

進「それは結構結構」

進「しかし君は今までもずっと私が父親だったと言い張るのかね?」

唯「もちろんですっ」

進「あらあら」



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 18:20:38.09 ID:nNJen9zD0



唯「ぼけちゃったのししょうー、ここはちゃんと三次元なんだよー」

進「君たちにとってはそうかもしれないな、実際私が見ていた世界と相違無いし。」

アニメのように物体の境に線は引かれていない。物がそこにある。空間にも歪みは無い。空気もある。
そして目の前にいる(私から生まれた)登場人物も想像以上に目がでかくないから不思議なのです。

唯「だってここはアニメじゃなくて、」

進「ええいやかましいややこしくしないでお願い」

唯「変なの」

進「2D・・オアノット2D。」



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 18:23:35.78 ID:nNJen9zD0



進「あるいは本当に気がおかしくなってしまったのではないか」

高品位粗食ばっかり食していたせいか?
だとしたらあのインタビュアーは尋常じゃない先見の明か
鋭い勘を持っていて私の未来に悪寒を感じ私に対し警笛を鳴らしたのではないだろうか?
「平沢さんカスみたいなもんばっか食ってますね」という言葉を使って。
ありがとうございます。カスばっか食べてちゃいけませんね。


進「カス取りがカスに」

進「いや、私は至って正常だ。そう信じねばなるまい。ここは二次元だ」

憂「おとうさーん?」

進「うわおんなじ顔」



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 18:29:02.47 ID:nNJen9zD0



唯「ししょうー」

憂「おとうさーん」

進「うわあー」



進「双子だったのか・・」そこまで知らなかったぞ。

憂「お父さん本当にどうかしちゃったの?」

唯「何かねー、ここは二次元なんだって。」

進「そう」

憂「要約されてて全然理解できないよ」

だって実際私しか三次元の人はここにいないからね。
私しか・・・

進「あっ」

唯憂「?」

進「秋山、ことぶき、田井中、中野!」




10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 18:35:30.33 ID:nNJen9zD0




進「君の友人でP-MODEL・・・・いや、バンドメンバーでこんな名字の子達がいるだろう」

唯「うん、澪ちゃんーりっちゃんームギちゃんーあずにゃん!」

進「あずにゃ・・・中野が?」

唯「うんー私が名付け親?なんだよ」

本人はどんな思いか私の至る所では無いが、少し不憫に思うぞ。

進「テルにゃん」

唯「?」

進「親の顔が見てみたいといったところかな。少し外に出ようか。」

恐らく彼等もこの世界に飛ばされたのだろう。突然、彼女達の父親として。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 18:43:11.50 ID:nNJen9zD0




まず秋山の家に行く事にした。
さぞや放心状態なんだろうくっくっくと思い巡らせていたが何の事も無かった。
家の前でインターホンを鳴らすと「唯、どうした?」と秋山とは似ても似つかない女の子が現れる。
「ああ平沢さん!」と少し高揚気味に言うものだから「私を?」と聞くが
その時この家に昔からいましたみたいな顔をしてあー休日だとこんな服着てるんだろうなー
という風体の秋山がヒョコッと現れ「澪ー澪ー何か用かー」と言っとるわけだから私はバシーンと衝撃を受ける。

「うるさいなあもう」と目の前の娘に言われ
少し寂しそうな顔をする思春期の娘を抱えた普通の父親、秋山がそこにいた。
この状況なら誰でもすがりたくなるであろう、そうヒラサワにですら。
だが目の前の秋山は訝しげに「あんた誰」と言わんばかりの目をこちらに向けるものだから呆然とする。

進「人違いでした」

秋山「ええ?あなた何か用じゃ・・」

進「私が誰だか分かりますか?」

秋山「はあ・・?」

進「では失礼。」

元の世界に戻ったら絶対言おう。お前はアニメの世界で絵に見るような嫌われ親父だったと。
おっとこれは意外と上手いのではないか?ヒラサワ不覚。



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 18:50:28.29 ID:nNJen9zD0


唯「ししょう何だかすごい不思議な目でみられてたよ」

進「私の気持ちに比べたらあんな不思議さ屁でも無いだろう」

唯「うーん」

進「はは」

この不思議さが共有出来ないのが非常に残念だ。これで私は一人。

進「恐らく例外は無く全員秋山と同じだろう」

進「しかし私は平沢進、元ネタなんかではない。私が本物なのだ。」

唯「でも私達のお父さんだよ」

唯「それに、ししょう!」

進「ちょっといいかな」

進「私を師匠と呼ぶ輩は私が元いた世界で確かに存在したよ。私が望んだわけでは無いが。

  何故君は師匠と呼ぶのだろう?私はただの父親なはず。娘に師匠と呼ばれる所以は何だ?」

唯「へ?」



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 19:03:36.80 ID:nNJen9zD0




唯「やだなあ、私が軽音部に入るって言った時に
  すっごくうまいギター見せてくれたの忘れちゃったの?ししょう。」

唯「それから二度と弾いてくれた事は無いけれど、
  あれからお父さんは私の中でず~っと師匠だよ。」

進「うん?」私はその事を知っている。その出来事を知っている。

けいおんというアニメが世間で人気になり始めた時、
私は知り合いからそのアニメの存在を教えてもらった。

まさか自分と昔の仲間が名字で使われている、
しかも自分(の名字)が主人公のアニメがこんなに人気を博しているとは。

私だって客商売。そのくせ商業的成功を収めたもう一人の自分に少し腹が立った。
何故私じゃないのだと。

あんまり嫉妬しちゃったので夢に見た。その時の一場面だったはずだが。

進「はは~ん」

進「夢か、そうか・・」

進「昔の曲を洗い直す日々に疲れていたのか・・。見知らぬ婆さんに藁を勧められたし」

進「床に就く事にしよう、そして夢から覚めればカスが待っている」

唯「そうだね~せっかくの休日だしゆっくり休もう!」



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 19:15:44.40 ID:nNJen9zD0




憂「目が覚めた?」

進「悪い夢を見ていた」ああ、これで夢から覚めた。
  しかし寝覚めが悪くまだウトウトしている。

進「自分が急にアニメの世界に飛び込む夢を・・」

憂「そっかあ・・わたしもお姉ちゃんもここにちゃんといるよお父さん。」

進「ああ・・・お父さん!?」

憂「バックトゥザフューチャーの真似、かな?」

進「ああ信じられない悪夢だ。」

憂「悪夢は終わったから大丈夫だよお父さんほら起きて起きて。」



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 19:25:26.52 ID:nNJen9zD0



唯「うー」

憂「お姉ちゃんもほら、早くー」

進「信じられない・・・」

これで私の頭が完全にイカれてしまった事がめでたく証明された。やったー、やりました。
しかし、例えこれが幻覚だったとしてもこの現状は本当に今、起こっているのだ。
そこで頭がイカれた私は頭がイカれた私なりの結論を導いた。
何せ、娘など持った事は勿論一度として無い。

進「(いつもの所で夢は覚めず、息を殺して寝返る・・・か。)」

どうせそのうち崩れる世界。
少しの間ばかり「家族」というものを抱えてみるのも悪くは無い。
イカれたヒラサワはそう考えたのである。



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 19:27:30.69 ID:nNJen9zD0



進「で、私は何故ココに連れられたのだろうか」

律「おおーーー!!!唯のお父さんだーー!!!!!」

澪「あっ。(この前はどうしたんだろう)」

紬「あら、噂の!」

梓「天才ギタリストの・・!」


唯「私のししょうでーすっ!!」

進「ハードル上がってるよね」



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 19:30:54.56 ID:nNJen9zD0




唯「でも嬉しいなあ、ししょうがまたギター弾いてくれるだなんて!」

律「噂には聞いてますよー!超絶上手いギタープレイ!」

紬「是非一度拝聴させて頂きたいと思って。」

進「全く・・ん?このカップは良いカップだな、
  紅茶も香りが市販のものと全く違う。高校生の部室だろう、何故こんなものが?」

唯「ししょうそういうの分かるんだー!かっこいい~」

進「(やはり味もする。美味い。味覚が正常なら一体全体私は何を信じればいいのだろう?)」

紬「私の私物なんです。お父様は紅茶がよくお似合いですね。」

律「うんうん!オットナ~ってかんじですげーかっこいい!」

澪「うちのお父さんとは大違いで、なんか憧れちゃうな・・。」

進「(うーん、秋山・・。)」

梓「あの、ギターを・・」うずうず

高校生の生の演奏、というのに別段興味は沸かない。
しかし弾くのはもう一人の自分。
そしてメンバーは仮にも皆、一度はメンバーだった人間の分身なのだ。

進「君たちの演奏を一度見せてくれないか?」



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 19:47:48.21 ID:nNJen9zD0

で、彼女らは演奏するので私は失望。何だこれはまさにお遊戯。
まあいいんじゃないって感じで私は身の無い拍手をする。空拍手を一人でぱちぱちぱち。

唯「どうだった?!」

進「まあいいんじゃない」

唯「わーーー!!ほめられたあああ」

褒めてない。全然褒めてないぞ。

澪「次はお父さんの番だな!」

梓「うずうずうず」

進「むむ」

進「midiギターはご存知かな」

律「あぁ勿論。」

澪「でも私達は生楽器中心で演奏しているから
  あんまり馴染みが無いし、そこまで詳しくも無いな。」

今時の子たちはつまみをイジるものばかり見ている上
音楽的知識など皆無かと。
ギターmidiなんか知らないマジ芋~と言われるのではないかという杞憂も無くなり安心安心。
ってよく見ればかなりいい機材ばかりなのでは・・?
うーん先ほどの子がまた関わってるのだろう。深く突っ込まない。
そして一か八かで聞いてみる。

進「P-MODELってグループ、知ってる?」



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 19:57:35.76 ID:nNJen9zD0



律「んん?」

梓「初耳です」

まあそうだよね。しかしまだちょっと気になる。

進「・・・YMOは?」

梓「それは、もちろん!」

律「ああ!細野さん最高だな!」

澪「なっ、ユキヒロさんが影の立役者なんだぞ!
  凡才を自称しているけれどユキヒロさんはなあ、」

律「あーもーはいはい!」

ガビーン。YMOは普通にこの世界でも存在しているのか。少しショックを受けてしまう。
ヒカシューやプラスチックスも知っていたのでおおっと思う。
ふんふん御三家じゃなくツートップですかふん

こうなりゃヤケで手当たり次第違う畑も挙げてみると
彼女達はINUも村八分もスターリンも知っていたので成海璃子はこの学校に転校すると良い。

進「じゃあ電気グルーヴは?」

一同「・・・?」

おや?



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 20:01:03.06 ID:nNJen9zD0





進「世代・・か」

いやしかし、これだけ音楽に詳しそうな彼女らが
かなり有名になったこのグループを知らないというのも不思議だ

進「共通している点は」

あっ。いやそんなまさかだとは思うが。


進「the pillows は?」


唯「全部わからないよう~」

律「一応有名どころは網羅してるつもりだけどピロウズなんて聞いた事無い・・」

澪「唯のお父さんはコアな所まで知ってるんだなー」


進「出てるのか・・・電気グルーヴ。」

※瀧エリちゃん



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 20:13:57.35 ID:nNJen9zD0



さわ子「凄い」

唯「さわちゃん先生ーっ!!」

進「ああ先生、先ほどは案内して頂いてありがとうございました」

さわ子「今の演奏は平沢さんが?」

律「」

澪「お、おい律!」

唯「うん、うちのお父さんが演奏したんだよー。」

さわ子「こんなに子宮に来るエレキなんて久々に聞いたわ」

澪「子宮っておいおい」

律「カッコよすぎるだろ幾らなんでも」

進「・・黙りなさい。」

唯「(照れ隠しかなあ)」



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 20:17:46.30 ID:nNJen9zD0



律「しっ師匠ー!」

進「ん」

唯「わっ!師匠って呼んでいいのは私だけなんだよお」

律「感動しちゃったんだからしょうがないだろぉーっ!」

澪「・・・師匠。」

律唯「のおうっ!」

唯「師匠は私だけの師匠だもん」

律「なんだそれー独占は良くないぞ」

子供に好かれても浮かれはしないが悪い気もしない
ヒラサワは公園のブランコじゃないのだが。

梓「師匠・・・」

律唯「ぬおおお!」

進「普段パソコンの作業が多い分、指にくるものだな」



35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 20:22:24.11 ID:nNJen9zD0



さわ子「パソコン・・

さわ子「DTM。」

進「ええ。生業としています」

律「えーっ!じゃあプロなんじゃん!スゲーわけだよ。」

澪「わわわわ・・・」

律「何で唯教えてくれなかったんだよ!」

唯「だって、お父さんいつもあんまり家にいなくて」

進「はて?じゃあ君はこの世界のわた・・・いや、私の職業を今まで知らなかったと?」

唯「うん」

唯「だから前に突然演奏してくれた時、お父さんの知らなかった所が見れて・・!」


唯「本当に嬉しかったんだ。」

むむ。



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 20:32:11.85 ID:nNJen9zD0


職業に加えて気になることがもう一つある。

進「憂。」

憂「うん?」

進「この家は母親が・・・いや、お母さんはどこに行った」

憂「お母さん出張って言ってたよ、聞かされてなかったの?」

進「むむ」

Tシャツでジーパンという有象無象にはとても見せられない格好で
ソファに座っていた私は立ち上がり部屋に戻ってパソコンを開く。
メールの受信フォルダをひたすら見る。見る見る。
むー。一応音楽の仕事は請けているようだ。

しかし名前は一向に明かしていないスタイルを取っているらしく
一部では少し有名な様子も窺える。

何なんだこれは本当に私のやってきた事か?
私が今まで築き上げてきたものすべてはこの世界では通用しない。
平沢進など誰も知らないのだ。私は・・

進「何も持たないただの平沢進だ」

秋山もことぶきも田井中も中野も皆普通に生きている、普通に。
ただただ目立つ事無く我々が出会う事も無く。

今の私には受け入れるしか無いのだ、現状に流されていくのだ。
誰も知らない平沢進として世界の端を。



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 20:39:07.66 ID:nNJen9zD0


唯「」

進「む、その歌は?」

唯「ししょう知らないの?」

コチラの世界の常識など分かるはずもない

進「ああ」

唯「」

進「何だかずいぶん古臭いメロディーだ」

進「すごくアレンジしたい」

唯「おお~それもいいねえ」

進「で、曲名は?」

唯「それがよく分からないんだよね~」

唯「たぶんCMかなんかで覚えちゃったんだとおもうー」

しかし何度聞いてもこの子の歌が私とは全く違う「女の子」の歌い方だった事に驚く。
たかだかアニメソングだとなめていたがなかなか歌の芯はしっかりしている事にも驚いた。
アニメの中だけでは勿体無いと思う。



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 20:44:56.04 ID:nNJen9zD0




唯「放課後ティータイムのプロデューサーが決定しました!」

律「なんじゃっとー!!!!」

澪「って、けっこう予想できてるがなあ」

梓「先輩、ワクワクしてるじゃないですか。」

澪「!」

律「素直じゃないやつぅ」

律「私らの師匠って言ったらこの人しかいないよねー!」

進「断る」

一同「えっ」

進「唯、どういう事だ?」

唯「ごめんなさいししょう!!」

まさかこの年になって音自体には全く興味がもてない女子高生のお守りを?

進「私好みのニューハーフらが相手なら話は別だが一向に華が期待できないし」



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 20:48:25.13 ID:nNJen9zD0



澪「にゅ・・・」

進「おっとすまない何でもないからね」

唯「あっ 師匠、実は・・・さわちゃんはっおとこのひとなんだよっ」

進「信憑性に欠ける発言は」

律「これが昔の写真だじぇー」

進「アリだな」

梓「(変なひとだ・・)」

唯「ね?だから・・」

私は平沢進だ。何も持たないただの平沢進。

進「それでも私は君達を背負いきれない」

一同「」

進「嫌う嫌われるで話が済むならそれでいい。私の事を嫌い憎み恨み勝手にしなさい。」

進「私は現在の地位を築き上げるまで
  とても140文字以内じゃ語れない体験をしてきたその地位は今ではもう無いがね。

進「しかしここでも平沢として生きなければならないのだ。
  ハッキリ言うと私は自分のお世話で手一杯なので。」



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 20:58:30.38 ID:nNJen9zD0

空気が凍てつくのを肌で感じ取れた。
きっと彼女達にこんな事言っても何一つ分からないんだよな結局。

しかしそれでいい。拒否の材料に私の今までの人生を乗せるつもりも無い。深く語る必要も無い。
それでも生きるしかない、その取捨選択で私は正しい方を選んだつもりだ。彼女達の音楽は知らない
私は己のための音楽を選んだのだ、決して人を育てるためではなく自身の音楽を守るために。それともう一つ。

唯「どうして?」

進「人の音楽まで育ててる余裕が無いのだ。」

進「私がもっと名の知れた者だったら唯も私の職業を知れていただろう」

進「私は音楽だけではなく家族も大事にするべきと考えた」

進「今の私は抱えるものが多すぎてすべてを選べないんだよ」

進「だから唯が胸を張って平沢進の名前が出せる日まで、私のレクチャーは待っててくれるか。」

唯「どうして・・」

なんと建前ばかりの言葉だろう。まあいい。
子供が泣く姿なんて久しぶりに目の当たりにしたかもしれない。
見る機会があっても目を伏せていたからな。
しかし今は娘を泣かせた親という事で私は悪者になるのではないか



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 21:00:26.61 ID:nNJen9zD0



律「二人とも帰っちゃったな・・」

澪「唯が泣くなんて、よっぽど悲しかったんだろうな」

梓「悲しかったんでしょうか?」

律「どういう事だ」

紬「お父様は家族第一に考えた事を言ってたから、ね」

澪「感動して?そうかな」

梓「(私には断る材料で利用しているように見えました)」

律「んー唯もまだまだ分かんない所あるしなー。」

梓「単純な優しい言葉でも友達と親では重みが違うんですね」

紬「私達にはどうする事にもできない問題がそこにはあるから」


梓「にしても、唯のお父さん急にこうなったんですよね?憂も不思議だって言ってました。」

律「唯はずっと喜んでるけどなあ、お父さんがいる、って」



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 21:07:15.88 ID:nNJen9zD0




律「元から家にいるのは少ない夫婦だったんだろう?」

澪「デートの外出ばかりらしくておアツイっていうイメージだったが」

梓「いくらラブラブでも子供を放りっぱなしっていうのはちょっと問題があると思います」

澪「P-MODELなんて全然知らなかったしなあ謎の多い父親だと思うぞ」

紬「私は知ってたけれど」

律「えっ何で言わなかったんだよ」

紬「お父様ってアニメにも精通してらっしゃるのねーと思って」

紬「それアニメキャラのユニットですよねって言い辛いじゃない?次はYMOも出たし余計にね」

梓「アニメキャラのユニットなんですか?」

紬「そう、しかもアニメの登場人物が平沢・ことぶき・秋山・藤井なの。一つ惜しい!」

律「惜しくて悪かったな」




48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 21:09:43.32 ID:Wg1lCIqj0

逆転してるのか





49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 21:12:16.27 ID:nNJen9zD0


梓「the pillowsとかいうのもアニメのキャラなんですか?」

紬「もちろん、電気グルーヴっていうのも聞き覚えはあるような・・」

紬「しかも、主人公は本当にお父様そっくりなの。」

紬「本当にアニメの世界から出てきた人だと思ったわ。余程好きそうだしコスプレだと思うけど。」

律「確かに黒い服ばかり着てるなー。相当シックな色調が好きな人なんだーって」

紬「まあマニアックなアニメだし一般の人は知らないでしょう。ますます謎なお父様!」

梓「・・」



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 21:15:45.90 ID:nNJen9zD0



こうしていると自分が人並みの幸せを手に入れた錯覚に陥る。
ソファで寝転がっていると夕飯の匂いが漂い
「ご飯できたよー」と娘がソファに寝転がっている私のそばまでズンズンと歩いてくるから
はいはいと立ち上がり食卓によちよち歩いていく。私は平沢進だぞまったく。

でその途中に私が机の角に足の小指をぶつけた所を見ていた唯が笑う。
私は痛がる。二人とも笑う。まったく。

本当に私が結婚して娘がいたならこういう生活を送っていたのだろうか?不思議なものだ。
私はこの世界の平沢進を嫌だと思う。
名を知られていられず仕事に対し努力を欠いてるように見えるからである。

しかしその代償で彼が手に入れたものは妻だったのだろう。
欠いたすべての時間は恐らくそれに注がれていた。
彼はただ愛情を求めることに集中しすぎていたように見える。
与えることは一切しなかった。子供だと私は思う。

だからこそ唯も憂も愛されることなく半ば共依存して今まで生きてきたんだろう。
この子達は少しかわいそうだと思った。

進「コラやめなさい」

唯「おとうさーん」

進「仕事に集中できないし暑苦しいので離れなさい」

憂「おとうさんオフロ入ったよー」

進「分かった」

架空の存在だった私の分身とのやりとりが日々愛しい、少しだけだが。
同情心だけではない家族としての温かみも感じ始めていた。



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 21:41:01.18 ID:nNJen9zD0



進「それでも戻らねばならぬ日は来るのだ、恐らくは。」

進「しかしあの歌は・・」



56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 21:42:32.66 ID:nNJen9zD0











進「君は中野テルヲの・・」

梓「中野梓と言います。憂は?」

進「図書館に行くと言って出て行ったぞ。
  唯は修学旅行でいないし楽に動けるだろうから私が勧めた」

一人だと作業しやすい事が第一なので。

梓「少しお話ししたいのでお時間を頂いてもよろしいですか」

むむ私に?と指を自分に指すと目の前の小さな少女は小さく頷く。
またこれ中野とは似ても似つかないなあと改めて思う。
いやそれ言ったら私も大概だ、あの姉妹に私のDNAの欠片も感じていないのだが。

進「さて何やら?まあ上がりなさい」

梓「ありがとうございます、では失礼します。」



59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 21:51:13.58 ID:nNJen9zD0



進「・・・と、いうわけだ。」

進「違和感を感じてくれてありがとう。これでようやく理解者が出来た」

梓「いまいち信じられません」

梓「私達がアニメの世界の登場人物だなんて」

進「私のほうが信じられない」

梓「だって私の世界なら平沢さんこそがアニメの登場人物なんです、これでは鏡の世界です」

進「うん?」

梓「反転してるじゃないですか。この世界で平沢さんはアニメ、あっちでは人間」

梓「そして私達はこの世界で人間、あっちではアニメ」

進「むむ」

梓「・・でも信じるしかない物がここに」

進「これは一体、P-MODEL解凍の時のメンバー・・の絵?」

梓「好評のアニメなんです。メンバーがちょこちょこ変わったりして」

進「ははー、この世界のどこかに藤井ヤスチカも存在するのか」



60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 21:55:24.25 ID:nNJen9zD0



梓「有り得ないと思ったんです。ここまで一致するなんてそれこそアニメから飛び出したみたいに」

梓「それで聞いてみたら・・・まさか憂のお父さんが嘘を付くなんて無いと思いますし」

進「しかし完全に鏡の世界というわけでもなさそうだ」

梓「今の平沢さんのお話を聞く限りではそのようですね」

進「そう私はこのアニメのように凛々しいお顔をしていない」

梓「もっと大事な事です」

進「このような商業的成功を収めていない」

梓「もう」

梓「元の世界に娘なんていなかったんですよね」

梓「本当に鏡だったなら平沢さんの三次元世界にも唯先輩と憂たちは存在するはずです」

梓「でも実際は存在していない、そして平沢さんがこちら・・
  平沢さんにとっての二次元世界に来たら娘が出来ている」

進「ああ娘など作っていませんとも」



63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 22:05:33.62 ID:nNJen9zD0



梓「もしかしたら鏡を越えたのは平沢さんだけじゃないのかも」

進「こちらの世界のヒラサワがあちら側に、つまりそれぞれのヒラサワが交換されたと?」

梓「あるいは」

進「家族にかまけ仕事もまともに手に付かないような男に
  ヒラサワルーティーンを遂行出来るとは思えんがね」

進「連れ戻す手段・・そして私が戻る手段か」

梓「手立てはあるんですか?」

進「私がパソコンの前で作業をしていた時突然この部屋に転送された」

進「残念ながらこの世界を望んだ事など一度も無い」

梓「何か大きな原因があると相場が決まっています、漫画や小説や映画だと」

進「にしてもアニメの中、しかも作中作に自分が主人公のアニメが存在するなど中々聞かない話だ」

進「戻る術などどこに書いてあろうか」



64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 22:11:38.90 ID:nNJen9zD0




梓「例えば先日見かけた桑田K介がけいおんの世界に入るSS」

梓「あれはくわっちょがコチラの世界に入る理由、戻る理由が分かります」

梓「そのように何か変わるためにやってきたのでは無いのでしょうか?」

梓「ちなみにまとめブログで存在を知ってこの小説がモロかぶりしていたことに驚愕したそうです」

梓「あと感動した」

梓「だからおや・・?って思った人はちょっと見逃してね」






65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 22:14:23.61 ID:Wg1lCIqj0

桑田さんのとこれとはまた大分違うんじゃね?進さんはけいおんに縁というか関わりがあるわけだし





66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 22:23:04.04 ID:nNJen9zD0

>>65
あそうか。
ここだけの話ってわけでもないんですが・・けいおん部を影から支える役割でしたよね。
本当はこっちもそのパターンだったんですよ。
そこからの心情とか荒く描いてた構想とほぼ同じでびっくりしちゃって。
あっちスゲー良作だし怒られるかと思って方向性変えましたが。
なのでけいおん部プロデューサーのくだりも進の理由に言い訳させてんすよ。
だからこの作品のラストもさらに荒唐無稽さが際立ってるんで許してください・・と
長文乙みたいな?



67 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 22:24:05.07 ID:nNJen9zD0


梓「もしかして戻りたくないとか」

進「何でそうなるの」

梓「望まないほど見向きもしない世界が自分にとって優しい世界だったんじゃないですか」

進「だから元の三次元世界よりずっと良いと?片腹痛い」

進「君はアニメ世界の人間の分際で中々面白い事を言う」

梓「そうやって誰の言葉も受け入れないまま時間は過ぎていきますよ」

進「言うね」

梓「恐らく疑問なんて感じているのは私だけです」

進「そりゃそうだ皆からしたらこれは現実なんだから」

梓「こっちは元の世界で過ごすよりずっと重いものがあるんですって」

進「家族とでも言いたいのかね」

梓「分かってるなら自分が腰を下ろす場所を何でウロウロしていられるんですか」




70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 22:30:08.76 ID:Olgcn8gO0

>>67
三行目は意味としては
梓「これまで望むこともなく見向きもしなかった世界が自分にとって優しい世界だったんじゃないですか」
と判断していいのかな





71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 22:32:33.03 ID:nNJen9zD0

>>70
その言葉が言いたかった



68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 22:26:43.43 ID:nNJen9zD0



梓「戻りたいか戻りたくないかの話なんですって」

進「戻りたいよ」

梓「戻りたいんじゃないですか」

進「君がさっき戻りたくないんじゃないのかって言った時私は答えを出しただろう」

梓「何でそうなるっていう疑問系だからと言ってその言葉が否定とは限りませんし」

進「戻りたい」

梓「じゃあさっさと戻ってくださいよ」

進「戻れるならもうそうしている」

梓「何一つ試してないくせに」

進「試してないって君何が分かるんだ」

梓「ただ今の家族を失いたくないだけなんじゃないですか」



69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 22:28:26.51 ID:nNJen9zD0

梓「ずっと屁理屈ばっかりこねて唯先輩と憂の前でいい父親ぶってればいいと思います」

進「なあ、なぜ私は君にそこまで言われなくちゃならないんだ」

梓「あなたが今二人の親だからです」

進「だから君に言われる筋合いなど無いだろう」

梓「私しか言える人いないじゃないですか」

進「小娘にこの私が説教されるいわれは無い」

梓「だったらあの二人をちゃんと愛してあげてください」

梓「私はあの二人のことが本当に大好きです。あの人たちの笑顔が大好きです」

梓「それでも私じゃダメなんですただの友達じゃダメなんです。
  同じ血が流れてる人じゃないとダメなんです」

梓「それでも彼女たちの笑顔を守れるのはあなたしかいないんです、とても大きい責任」

梓「あなたは今この時間すべて二人の父親として存在していられるんです」



梓「この世の出来事は全部運命と意志の相互作用で生まれるんですって」



72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 22:34:28.58 ID:nNJen9zD0






進「おかえり」

憂「あーお父さん、今日純ちゃんと梓ちゃんが泊まりに来るからねー」

進「分かった、私の分の飯は遠慮しておく」

憂「えっ、一緒に食べないの?」

進「もう一人で済ませておいたから安心しなさい」

憂「お父さん?」



74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 22:38:24.02 ID:nNJen9zD0





進「ふむ」

運命と意思の相互作用とは一体どういう事だろう
彼女の真意が聞きだせずに帰らせてしまったが
憂ともう一人の友達がいる前でその事を切り出すわけにもいかない

いや真意はもう彼女の口から痛々しいほどの愛情(友情?)で語られたではないか
笑顔を守るとは彼女たちの傍にいるだけとは違うらしい。私には正解が分からない
運命とは平沢が転送された事か。だとしたら意思は?
平沢はココに来る意思など持っていないと言ったのに

んん?ちょっと待て。今平沢はこの事について正解を求めようとしていた
という事はやはり元の世界に戻りたいなんてわけでもなく
この世界に残り二人を親として正しく愛す手段を真剣に考えている事になるのではないか?
あの時一時だけだからと言って無闇に親としての感情を持つべきではなかった。本当に。
私は親になろうとしている自分に気づく

あの小娘の目利きは相当なものだな。
もう一つ自分の意外な優柔不断さにも辟易した、果たして本当にこれがヒラサワか。

しかしココにいつまでもいると本当に思考停止してしまうように感じる
幸せの過剰摂取は毒なのかもしれないなと考えバタンキューって感じで私は眠りに就いた


私は自分が守りたいものに気づいている。はずだ。



75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 22:43:14.84 ID:nNJen9zD0



時が経つ事は早く、それから3週間が過ぎる。
相変わらず軽音部のプロデューサーに勧誘されつつも私は毎日を生きている。
ここでこの世界に一つ変化を呼んだ。
私の音楽が「知る人ぞ知る」音楽ではなくなってきた。
大衆文化、ポップカルチャーに合わせたわけでもなく私は私が今まで貫いたスタイルをやり通しただけだ。
しかし名前の公開はまだ出来ない。何故ならこの世界ではアニメの中で生きる人なので。
「無名の天才」として名を馳せていた。いや、だから名前はまだ無いのだが。
こんなものヒラサワにかかればチョチョイのチョイである

たまにパソコンの画面に手を付けてみたりする
しかしそこからヌメッと入り込むなんていう夢物語は起こるはずも無く指紋のついた液晶画面を虚しく拭く。
それもそうかと頷く。その度に胸を撫で下ろす自分にもうんざりする。



76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 22:44:36.62 ID:nNJen9zD0



唯「」

進「鍵盤も出来るようになったのか」

唯「! ししょうが教えてくれたから。」

進「そうか」

唯「よくできてた?よくできてた?」

進「悪くない」

唯「やったーほめられたよおおういいい」


飲み込みが早い子だ。思えばこの姉妹は何に対しても覚えがいい。
夕方に景色が染まる瞬間、娘が放つ音色を私は静かに聴いていた
これが平均的な日常なのだ、だとしたら平凡とは幸せなのだな。



80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 22:51:05.31 ID:nNJen9zD0


久しぶりに軽音部を訪れると、
中野の娘だけが佇んでいた。何だ折角足を運んだというのに。
今日は部活動が無く彼女は忘れ物を取りに来ていたらしく
まあいいタイミングだしとついでにパパーッと話をする。

梓「そうですか」

進「ああ」

進「小娘にあのような説教をされるなどとは笑止千万の愚の骨頂」

梓「そこまで言いますかね」

進「あそこまで言われたんだからね」

進「私は私の意思に従う」

キャラクターや今までのやり方なんかにとらわれない、私のやりたい事。
平沢進だから何なのだ?平沢進だから?バカバカしい。
私の人生なのだ。馬の骨も有象無象も関係が無い。私の人生なのだ。

進「それと言われた仕返しに言っておきたい事がある」

梓「どうぞ。私は言いたい事をあの時言いきれたのでスッキリしています」



84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/16(日) 23:01:46.21 ID:nNJen9zD0

進「人には人の役割というものがある」

進「私達親にしか出来ない事がある」

進「だが、君のような友人からでしか掛けられない言葉が山ほどある」

進「唯と憂の笑顔を守る仕事は私だけじゃないぞ、君にも責任はあるのだから」

梓「普通な事を言いますね」

進「ああ結構。では失礼する」



後ろから小さく
「師匠、かあ」
と呟く声が聞こえた。

すぐに夕焼けが彼女を包むだろう
AnotherDayという昔作った曲を思い出しながらテクテク帰った。



123 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 18:57:23.56 ID:bekmEO+60






私には今一つの決意がある。


間違いなく中野の娘に言われた言葉のおかげだろう。
あんな小娘に考えさせられたなど。いと愚かなり。
だがしかし、その前に。

進「二次元世界の私はどうなってるのだろう」

やっぱり気になるものは気になる。便利な機械の箱を使って少し観る事にしようか。





進「古傷をえぐられた」

まさかあんなに初期からの映像、からチョッピリ笑えるカワユス♪映像を
まるまるアニメに写されたようだ。しかも些細な会話まで忠実に再現してあるものだから気味が悪い。
それがどこの馬の骨かも分からないような輩に見られ菓子などを食いながらニヤニヤニヤニヤ
観覧されてるいると思うと実に寒気がする。あーヤダヤダ。忘れよ。



125 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 19:00:18.92 ID:bekmEO+60



運命と意思の相互作用。この発想がそもそも有り得ない。
互いに引き合うという事はつまり意思が運命を引き寄せるのも可能という事。
考えられない。お話にならない。
この一連の出来事がその相互作用によって生じたものならば
まず私がこの世界を望んでいるという意思がその通りにする運命を引き寄せたというわけだ。
がしかしそんな事1ミリも思っていないというのはもう散々に言った。喉が嗄れる。
しかし、この世界には人間がたくさんいる。
ではその意思が私の意思でないとするならば。こちらの世界からのシグナルだったならば。
私じゃない誰かの強い強い強い意思によって私を欲する意思が強く強く強く運命と結びついたのだとしたら?


進「唯」

唯「なにぃーししょー」

進「話があるんだ」

進「ちょっと部屋に入りなさい」


私は思う。そろそろ意思に向き合う頃合だなと。さあ重い腰を上げなくては。



126 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 19:08:35.52 ID:bekmEO+60




進「唯の楽しい事って何だ?」

唯「ええ?それは・・今この瞬間が一番楽しいよ。」

唯「お母さんはいないけれどししょうとこんなに話す事なんて今まで無かったから」

唯「ししょうも優しいし憂はいいこだし最高の家族だよ!」

進「そうか。」

進「私がプロデューサーになったとして」

唯「けいおん部の!?」

進「なるとは言っていないぞ。ちゃんと話を聞きなさいね。」

唯「ふむう」

進「唯は一体どうしたいのだ?」

唯「どう。」

進「そう。」

進「私がプロデューサーになったところで放課後ティータイムがどうにかなるのだろうか?」



131 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 19:20:01.15 ID:bekmEO+60



唯「それは・・・ししょうがあれだけ凄いんだから有名になるに決まってるよ!」

進「そう人生上手くはいかない」

進「高校生のバンドというのは普通プロデューサーがついているものなのだろうか」

唯「あんまり聞かない、かも。」

進「では私は何故いるのだろう」

唯「ええっと」

進「唯は私にただ傍にいてほしいだけなのか?」

進「なら別にプロデュースでなくてもいいだろうに」

唯「それは」

唯「ししょうを皆に自慢したいから」

進「以前ギタープレイを見せただろう?あれで十分じゃないか」

唯「違うの!ししょうを自慢したいっていうか・・その。」



132 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 19:29:14.87 ID:bekmEO+60



唯「ねえなんでこんな事聞くの?みんなでししょうに音楽を教えて欲しいだけなの」

進「今言いかけた事あるだろう、全部言った方が唯のためになると思うが」

唯「・・」

唯「ししょうは皆を教えるでしょ」

唯「そしたら皆ししょうの事今よりずっとずっと憧れちゃうと思うんだ」

唯「私はその時に私がししょうの娘だよって言いたい」

唯「みんなが憧れてるお父さんは私だけのものだよって」

進「楽しいか?」

進「私の娘だなんて」

唯「楽しいってどういう事なの」

唯「何か怖いよ」

進「別物の父親と生活するのは楽しいのか、と」

唯「」



135 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 19:32:50.23 ID:bekmEO+60




唯「何が言いたいの」

唯「私ししょうが言いたい事うけとめられないよ」

進「意思は君だな」

進「運命と意思の相互作用、私をこの二次元世界へ連れてきたのは君だね?」

唯「二次元世界・・・」

唯「ししょうまだそんなこといってるの」

進「人の目を見て話しなさい」

進「今君の目の前で私は父親でいるつもりだ」

唯「いやだ」

進「唯」

唯「いやだ」

進「唯。」



138 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 19:43:44.82 ID:bekmEO+60


進「このままじゃ話が終わらんだろう」

唯「終わらなくていい」

進「お前はいつもそういう子供っぽい言葉ではぐらかすが今回ばかりはそうはいかない」

唯「言ってる意味がわかんないもん」

進「唯。私は本当に君の事を家族だと思いたい」

唯「思いたいじゃなくて思ってほしいの」

進「思ってる。正直に話すと思ってる。」

唯「じゃあずっとここにいて」

唯「ししょう」

進「本当に寂しかったんだろう」

唯「さびしくなんかない」

進「P-MODELのことを知っていたね?」

唯「しらない」

進「アニメに映る父親そっくりの私を見て」



140 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 19:45:49.97 ID:bekmEO+60


進「すがる思いで父親の愛情を求めたのだろう」

進「だが実際の父の愛は君達に注がれる事が無かった」

進「だからさらに君は画面の中の私に希望を求めた」

進「今まで与えられなかった愛情の分を全部。
  それがあまりにも強かったんだろう。そして運命と結びついた。」

進「私はこの世界の仕組みがよく分からない。
  いや、ひょっとしたらこれは宇宙にまで及ぶかもしれない」

進「ただ恐らく私と君は絶対的に強く結びついているはず。」

進「かたやアニメ主人公かたや人間で私達はそれぞれ存在するなんてよほどだからな」

進「それもお互いの存在を認識していながら」

進「しかし運命と結びつくなんてそのテの勉強に長けていない私でも分かる」

進「運命を動かす程の君の悲痛な叫びが」



142 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 19:54:17.74 ID:bekmEO+60

唯「本当に寂しくない寂しくないよ」

進「もう我慢しなくていい」

唯「お父さんはお父さんだよ」

唯「お父さんはずっと唯のものだよ」

進「それももう終わりにしなきゃならない」

唯「変な事言わないでよ家族は終わりになんてできないよ」

進「終わりなんだよもう。私は君たちと離れなくては」


進「唯」


進「唯」


唯「やだやだやだ」

進「落ち着きなさい!」

唯「うう」

進「聞きなさい」

唯「うううううう」



144 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 19:59:51.52 ID:bekmEO+60


涙を流す時これほどまでに顔面は崩壊するのか。女性のギャップとは時に恐ろしい。

進「ほらティッシュ」

唯「うううううう」

唯「ししょうししょうやだよやだよ」

唯「うううううう」

進「声が嗄れているじゃないか唯。無理して話そうとしなくて良い」

唯「うううううう」

進「唯、聞きなさい!」

進「私が一番大事なものはね、唯」

進「この世界に無い」

進「私は今のままこの世界にいたら唯たちを傷つけてしまうかもしれない」

らしくない言葉が私から流れ出す。唯に向けて。
らしくなくてもこれがヒラサワの言葉だ。この子の前まで仮面をつける必要など無い。
今私は彼女に伝えなければいけない事を伝えるだけ。



146 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 20:02:08.00 ID:bekmEO+60

唯「傷つけ合っても一緒にいるのが家族なんだよ!」

唯「傷つけ合えるって事は向き合ってるってことじゃん!」
唯がわんわん泣いている。顔をぐしゃぐしゃにして。

唯「向き合えてるだけでいいの傷付けあってもいいの!」

唯「家族なんだからそんなこと構わないの!」

唯「家族なんて傷つけあって当然なの!私はそんなの一回も無かった!」

唯「喧嘩するほどお父さんもお母さんも私たちのことちゃんと見てくれた事無かった!」

唯「ししょうは私の家族なんだ!絶対喧嘩するんだ!衝突するんだ!」

唯「それでも家族なんだからこれからも一緒にいる!絶対そうなの!」

唯「たまに部室に来てお茶を飲んだり憂とテレビ見てバカだなーって言ったり」

唯「そうじゃなきゃ私」


彼女は顔をグチャグチャにして私に言葉をぶつける。なら私は当然答えるべきだ。
例え私の今紡ぐ言葉が私らしくないとしても。私の言葉を。顔はグチャグチャにしないが。
あの時軽音部プロデューサーになるのを断った時とは違う、本当の言葉だ。
ありとあらゆる種類の言葉を知って何も言えなくなるなんてそんなばかな過ちはしないのだ。



148 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 20:13:53.08 ID:bekmEO+60

進「君達にとっての二次元の世界にいたヒラサワは泣いていたか?
  苦しそうだったか?辛そうだったか?」

唯「わっ、わ、たしっ、」

進「ああ、そうだ私は・・」

進「あの世界に生きていて楽しかった」

唯「わたしっ、わ、わたし、」

進「すべての出来事が良い事とはもちろん言えないし
  むしろ鼻持ちならない出来事のほうが多いかもしれない」

進「何より、君たちはいない」

進「けどなあ唯」

進「君たちと話す瞬間、お風呂に入る瞬間、パソコンを触る瞬間、いつも」

進「あちらの世界で過ごした時の風景を思い出す」

進「(首都高の明かり、海、高品位粗食)」

進「(けだるい夏に飲む一杯の水、ピアノの音色、遠くの子供の声・・)」



149 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 20:14:44.54 ID:bekmEO+60



「スポットライトを浴びた私を取り囲む多くの馬の骨たち」



153 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 20:18:58.16 ID:bekmEO+60


進「私が一番楽しい時を聞かれたら間違いなくこう答える。」

進「そんな有象無象に囲まれながらも自分の歌を届ける瞬間だと。」

唯「う・・」

進「ああ本当に不本意だ。こんな事誰かの前では絶対言えないだろうな。」

進「私にとってこの家族は一番大事なものを言える、だ」

進「家族がどれほどかけがえのないものか分かった。」

進「君達と一緒にこれから築き上げる生活だって夢見た」

進「しかしこのままここにいてもいつまでもあちらの世界を追い続けるだろう」

進「そんな傷つけ方を私はしたくないんだよ。」

進「君達が家族だからこそ私のワガママに付き合せてしまいたくないんだ。」

進「こんな傷つけ合いは、家族とちゃんと向き合ってるだなんて言わないだろう?」

進「だから今は向き合えて正直に言える。私は帰りたいのだと。」



156 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 20:30:52.82 ID:bekmEO+60





唯「・・・・」ずっ

唯「こんなに大事なのに」

唯「いやだよおいやだよお」

進「大事だからこそだ」

唯「ししょう!」

進「師匠と呼ばないでくれ」

進「師匠なんかじゃない、君に教えた事などなにひとつない」

唯「わたっしはっ」

唯「ししょおー!」

進「君に師匠と呼ばれる筋合いは無いからね」



158 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 20:34:49.20 ID:bekmEO+60




進「君は先ほど感情が高ぶった時お父さんと私のことを呼んだね」

進「唯が本当に私を呼びたい時に。」

進「もう全部、何も負い目なんて感じなくて良い。」

進「私はきみの師匠なんかじゃない、お父さんなんだと。」



161 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 20:39:07.99 ID:bekmEO+60



彼女が私を師匠と呼んでいる理由は恐らく、
今までの自分の行動に負い目を感じているのだ。
何も知らない私をこの世界へ引きずり込み、
自分は何も知らないフリをして接する事への。

私はもう覚悟はできていたのだ。
次元を超えるということは大きな問題が沢山生じるであろう。
しかし、この父娘関係だけは次元を超えてもただの父娘。
私達が家族というのはもう誰にも変えられない事なのだ。
例え私が三次元へ戻るとしても。

だからお父さんと呼ばせたかった。
私が彼女をとうに許している事を認識させるために。
私達は確かに繋がっていた事を確認させるために。

彼女の本当の父親がこちらへ帰ってきたとしても、いいじゃないか。
二人父親がいても。いいじゃないか。私の体は無いのだから。
心で通じ合っているのだから。

・・しかしこんなに単純に綺麗な言葉を並べると
反吐が出そうになる体へ変わってしまったのがヒラサワの悲しい所。
君たちはそのままでいなさいね。



163 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 20:48:46.75 ID:bekmEO+60



唯「ううううああああ」

彼女の我慢がすべて流れていく。すべて流れていくのだ。
これで彼女の苦痛は終幕を迎える。私に許される事で彼女はもう一人の父親を確かに手に入れた。
彼女の笑顔を約束するための、それは必要な一つの材料だったのかもしれない。

唯「おとおさああああ」

進「ぐ。」






憂「お姉ちゃんどうしたの?!」


憂「ええ・・っお父さん達が抱き合ってお姉ちゃんがわんわん泣いて・・」

憂「ええ、ええー?!何が起こったの?」



169 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 21:09:23.00 ID:bekmEO+60



進「憂、すまなかった」

憂「ううん、でもおねえちゃんも泣いた後疲れて寝ちゃうなんて」

憂「本当に可愛いな~」

進「なあ憂」

憂「うん?」

進「私が父じゃないと言ったら驚くか?」

憂「んん!?」

憂「・・・んー・・・」

憂「たとえお父さんの中身がエイリアンでもプレデターでも」

憂「ハンニバルコレクター、正確に言えば映画版ボーン・コレクターのデンゼルワシントンでも」

憂「私達をちゃんと娘として目を見て話してくれたなら、お父さんだよ」

憂「だからあなたはお父さんです、間違いありません」

進「ふ」

進「はは」



171 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 21:17:24.04 ID:bekmEO+60



進「じゃあそのハンニバルコレクターからの最後の言葉を聞いてくれるか?」くっくっく。

憂「ええ?」

進「私は明日、突然と消える。と言っても君達の元々の父親は帰ってくる。」

憂「えっ」

憂「消えちゃうの?」

進「消えちゃうの。」

憂「突然と?」

進「突然と。」



憂「ふしぎー・・・・」

進「実に不思議だ。」



173 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 21:20:59.99 ID:bekmEO+60


憂「うーん・・まだわけわかんなくてどの言葉が一番正しいのか分からないけど」

憂「大丈夫。」

進「うん?」

憂「全然大丈夫。みんな元気。」

進「ふは。何だ?」

憂「お父さんが本当のお父さんに戻っても大丈夫。」

憂「私達ももう大人になるんだ」

憂「共依存でもなんでもない。家族として助け合ってるだけ。」

進「ああ、知ってる」私達は家族なのだ。

憂「これからもみんな元気。あなたがいなくても、大丈夫。」

この子は私に言い聞かせているのだろう
来たるべき旅立ちを前にする私に向かって大丈夫大丈夫だと。
抽象的なのにこの子の顔を見ると大丈夫だと分かる。私も、この子達も。

何度も言おう。私達は家族なのだ。



174 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 21:29:23.26 ID:bekmEO+60

私はこの後自分が元にいた世界に帰れる。なんだか分からないが確信している。
さーてパッパと帰ったろーとドアノブを手に掛けた時
あーでもせめて秋山にはアニメキャラに煙たがられてる写真を見せたいなーとか
ことぶきはこっちでもカツゼツが悪いのかなーとかこの世界の田井中達の姿も見てみたかったなーとか
今更ながら思いつく土産話のための材料について部屋の前ではた、と止まる。
その時、寝ているはずの唯の部屋からギイイとドアが空くものだから私はドキッとした。

唯「お父さん。」

唯「えへへ。」

進「目が腫れすぎだろう・・。」

進「一瞬唯とわからなk」

唯「お父さん」

先ほどの確認するような強い抱擁じゃなくて、
ただ甘える思いを伝えるためだけに優しく唯が抱き付いてくる。
答えるように私は頭を軽く撫でる。
外野から見れば我ながらなかなか気持ち悪い光景だと思うぞ?

唯「行っちゃうの?」

進「ああ」



175 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 21:35:21.25 ID:bekmEO+60

唯「ねえ、わたし、ね」

唯「おとなになるよ。」

唯「お父さんが来たのだってモトは私のわがままからなんだ。」

唯「いつまでたっても付き合わせるわけにいかないよ。」

進「本音は?」

唯「おとうさんのかば」

進「ふは」

唯「りっちゃんがいってたんだ」

進「人は成長するために時には必要な別れを体験しなくちゃいけないんだって」

進「あの子もそんな考えできるのか。」良かったじゃないか田井中よ。娘は立派だ。


唯「憂と今まで助け合ってきたから、これからも大丈夫だと思う。」

進「大丈夫、か」

さすが姉妹、といったところかな。こんなに単純な言葉なのに安心するのは何故だろう?

唯「さびしくなんかないんだからね!べ~」



179 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 21:44:35.62 ID:bekmEO+60


進「なあ」

進「唯がずっと私の事を師匠と呼んでいた理由、アニメで覚えたからだろう?」

唯「えへへ、それでもやっぱり師匠なんだってば」

進「それに、お父さんと呼びづらかったのもあるな」

唯「うあーほーんとぜんぶおみとおしだー」

進「家族なんだから当然だろう」
 うむ。この子はバカだが優しい子だ。負い目を感じていて当然。

それに物分りも良いし本質的な頭のよさも・・・おおっと。ヒラサワよ。自制。

進「それとあの歌」

唯「ああ」

進「なんという曲か思い出したぞ」

唯「そっか」

唯「もうお父さんは元に戻っちゃうから分かるんだろうね」

進「ちょっと歌ってみなさい」

唯「?」



182 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 21:59:46.46 ID:bekmEO+60


唯「頂上に降る雪
  夜は密か
  身体を着て立ち
  キミよ行けよ」

ああ間違いない。人体夜行だ。

進「その先で気になる場所があるんだ」

唯「うん?」

進「歌い続けてくれないか」

唯「わ~ら~えよ・・♪」

これで娘の歌も聞けない。
うん、やはり芯はある。私の娘だ。
聞こえたとしてもそれは画面越しで、
今聞けるような声色では聞けない。二度と。

唯「めくるめく雨
  誰も濡れず
  声を出して立て
  謎は怖いと 」


YouTube:Susumu Hirasawa - Night Walking Wearing the Human Body(人体夜行)




183 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 22:00:58.31 ID:bekmEO+60


進「そこなんだが」

考えてみればこの世界で私は一度も歌を歌わなかった。これが最初で最後だ。

進「めくるめく雨
  誰も濡れず
  声を出して立て
  謎は終わりと 」


進「謎は怖くないんだ」

進「謎は、終わりなんだ」


進「謎はもう終わりなんだよ、唯。」

彼女の顔が綻んでいく。
もう怖くなくなったのだ。終わりなのだから。



186 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 22:06:28.47 ID:bekmEO+60




唯「ねえ」

進「うん?」

唯「お父さんが行っちゃった後でも私は家族でいいのかなあ」

進「ああもちろん私達は家族だろうな」

唯「確かに、元のお父さんは戻ってくる。でもあれはあなたじゃない」

唯「私にとってのお父さんは、ししょうだけだよ」

進「それも言われて悪い気はしないが」

進「唯は私を受け止めてくれた。今度は受け入れてくれないか?」



188 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 22:11:23.05 ID:bekmEO+60





律「ゆいー。もうお父さんココ来ないのかー?」

唯「ううううん!最近また忙しくなっちゃってさ~」

澪「そうなのか・・・あの人が弾く所もっかいみたいな・・」

律「およ?」

紬「あらら?」

澪「ちょ、ちょっとまった!違う!違うから!」

律「澪もまだまだ若いってことだね~」

澪「違うって言ってるだろ!」

梓「あの~唯先輩・・」

唯「なーにーあずにゃん」

梓「その、お父さん、何かあったんですか・・・?」

唯「ああそっか、あずにゃんは知ってるってお父さんが言ってたっけ。」



191 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 22:17:30.43 ID:bekmEO+60



梓「帰った・・・んですか。」



梓「私が言った試すって言葉は別の意味だったのに」

梓「まさか帰っちゃうだなんて・・・」

唯「ん~あずにゃん何の話?」

梓「・・その、私・・・」

中略

唯「あずにゃんとお父さんそんな話してたんだ!
  私のいないあいだにウワキしたのねあずにゃああん」

梓「も、もう!茶化さないでください!まじめな話です!」

梓「戻る事を試すって事じゃなくて唯先輩達との愛を試すってことなんです。」

梓「やっぱり私が感情に言葉を乗せたばっかりに、勘違いさせてしまったのでしょうか・・」

唯「ああ~だったらそっちで合ってるよ。お父さんは間違えなかった!」

梓「へ。でも帰っちゃったんですよね?」



192 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 22:21:51.64 ID:bekmEO+60




-------------------

進「受け入れて欲しいんだ、これから戻ってくるこの世界の父親の事も。」

進「全くの別人。だが、私なのだから」

進「私がここに呼ばれた理由は、ちょっとした軌道修正。」

進「私がここに来る事そのものは運命じゃなかったんだ。
  君達の愛されずひねくれた心の軌道修正が運命だったのだ」

進「そこで君の意思との相互作用が生まれた。だから私はここに来た。」

進「この世界にアニメの私が存在してなかったら、私は君とこうして話す事も無かっただろうな。

進「君達はもう大丈夫。」

進「大丈夫なんて言葉は必要ないな。きっと君達がこれから自分で自覚していく事だ。」



進「みんな元気、だ、な。」


--------------------



195 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 22:24:16.50 ID:bekmEO+60





唯「何があったかは、秘密なんだ。」

唯「でもまあ、お父さんの私達への愛!だよ!」

梓「む?む・・」

律「あそうだ、今日P-MODELが出てるアニメのDVD持ってきたぜ~」

澪「ああ私達の父親にそっくりとか言う・・」

律「いやほんとすごい偶然だよなー」カチッ

律「かなーり初期の頃らしいぞ」

「♪ミーーーーサーーーーーイーーーールの」


律「なんじゃこりゃ」

澪「このクネクネしてるの・・平沢さん?」




190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:14:36.94 ID:+z5d9crM0

平沢進わからないからあずまんが大王のお父さんがイメージ映像でいい?



193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:22:08.85 ID:cEEuh1XLQ

>>190
つ【http://www.youtube.com/watch?v=OPgc-yYEWrw】
YouTube:Susumu Hirasawa - TOWN-0 PHASE-5



196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:25:34.24 ID:+z5d9crM0

sisho1_aa.png



198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:26:28.86 ID:FcO7C39y0

sisho2_aa.png



199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:27:55.09 ID:cEEuh1XLQ

>>198
AAあんのかwwwww





200 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 22:30:04.46 ID:bekmEO+60


唯「ぶっ・・・」

唯「あっははっは!」

唯「お父さんの新しく知れる所、どんどん増えていくよ。」


唯「あはは、みんな元気!」


梓「(・・何があったかは私が逡巡しても分からない。)」

梓「(でも・・うん。)」

梓「(唯先輩は今日も笑っていますよ)」








202 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 22:33:26.49 ID:bekmEO+60


しかしまさかまさかの展開だった。結局あの部屋に入っても何も起きない。
おいおい頼むぞ相互作用さんよ、と思っていれば眠気が私を襲う。
最近の労働は老体に少しキツかったようだ。

スワーッと私は睡魔の手招きに答える。ちょっと待ってね今そこまで行くからー
突然眩しい閃光がビッシャーンと私に襲い掛かる。

進「ハッ!?」

進「何と」

だがそれは閃光ではなく、目を瞑った私に襲い掛かる「三次元世界の元いた部屋」の明かりであった。

進「転送される瞬間を目の当たりに出来なかった!」

進「いや果たして目を開け続けていたらここに戻れなかったのかもしれない」

誰に話しかけるわけでもなく言葉を紡ぐ。真夜中に一人明かりに照らされながら。
寂しさなど無い。

いつの間にか立ち上がっていた私は布団に戻り、
うーんこれはテクノな体験だったと言えるのではないかなーとか
いやこんな事体験できた私こそがテクノだとか色々ぐるぐる思う。
それと、唯。
2度目の睡魔に誘われるまでの間、少し涙を落としてしまった。ああ不覚。



204 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 22:40:08.34 ID:bekmEO+60



そして起床。というわけでヒラサワは無事現代にバックしました。ヤッホッホ。
変化と言えば私の足は今つくば山頂の土をしっかり踏んでいる事か。
うむ懐かしい。
そしてもう一つ、あの娘たちはいないのだと。


それから毎週けいおん!を録画するようになった。
以前秋葉原に必要なものを買いに行った時、唯たちの歌う音楽が流れついニヤニヤしてしまったところ
近くを通る若者にその姿を見られ、アノオッサンナニワラッテンダロキモクネー?
という心の声が聞こえた気がしたので私が一番のけいおんファンだというのは誰にも言わない秘密にしてある。
しかし修学旅行の回を見ても全くヒラサワが映っていないのはどういう事だろうな?
いくらなんでもあざといぞ。
そのように、これからも私は彼女達のこれからを、こっそりと見届けたいと思っている。



205 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 22:41:15.03 ID:bekmEO+60

ちなみにそこの馬の骨にわきまえて頂きたい事が。
あくまでもヒラサワは君を選んだわけじゃない。
多くの数ある馬の骨らすべてを選んだわけなので。個人の価値なんて計りにかけるまでもない。

"キャラクターや今までのやり方なんかにとらわれない、私のやりたい事。
平沢進だから何なのだ?平沢進だから?バカバカしい。
私の人生なのだ。馬の骨も有象無象も関係が無い。私の人生なのだ。"

と言ったはず。
いっそ言うとあんた以外の馬の骨が大事なのね。決して勘違いして調子に乗らないように。

しかし戻ってきてからもうるさいのが私の周りで飛ぶハエどもだ。
けいおんだの平沢が元ネタだの・・・。私が本物だ。彼女は彼女で別個の人間なのだ。
くだらない事をさえずらないで頂きたい。本当に。
私達は今でも親子として繋がっているつもりだ。
そこに土足でドカドカ立ち入られると非常に迷惑である。
twitterは私の呟きにいちいち反応してフォロアーが増えるし。
あーもう早く減らないかな。過剰に期待されると困るんだよね。


「私は平沢進だぞ。平沢唯じゃない。」


こう明記しておけば平気だろう。って呟いたらニュースになってフォロワー増えてるし。
全くどういう事か?私の意志と運命は相互作用しないらしい。あっそう。別いいよ。

おわり




206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:42:34.35 ID:teg7/pUw0





207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:43:19.59 ID:MYCAlEGVP


こういう書き方もいいね



208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:43:49.18 ID:rjsx/Sz80





210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:44:31.30 ID:mtNfJlRI0


平沢進も平沢唯も好きだぜ



211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:44:52.34 ID:brybn43H0

乙 面白かったぜ



215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:53:08.81 ID:TX01Zhw+P

(゚д゚ )乙 これは乙じゃなくてポニーテールなんたらかんたらでした。



216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:56:32.94 ID:kP59RXXq0

乙!

ところで二期で純とかいうキャラが出たそうだが、戸川純ちゃんが元ネタ・・・ではないよねえ・・・



217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:57:50.46 ID:FcO7C39y0

最後まで書いてくれてありがとう

平沢進とけいおん、書きたかったものなんだけど、ここまでうまい感じに平沢さんを書けないだろうなぁ
すごく良かった、何か満たされた気分だ

ありがとう

-=―=-



218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:58:35.77 ID:xHcEhq6P0

>>216
たしかピロウズのサポートベースがその名もずばり鈴木淳(すずきじゅん)って名前だったはず。



219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 22:59:52.42 ID:cEEuh1XLQ

乙。





220 名前:1 ◆0A95wpvvZ6 :2010/05/17(月) 23:03:54.97 ID:bekmEO+60

読んで下さってありがとうございました!!
徹頭徹尾荒唐無稽で申し訳ないです。
一応師匠が例の呟きをした時から考えてたのですが
桑田の人はやっぱり凄いと思います。無関係に関係を持たせる様を凄く面白く書けてるんですよね。
求める所はちゃんと答えてるし。いや~憧れますね。やはり難しいなー文章。
師匠と唯の組み合わせが大好きなので、頼むんで流行ってください。




222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 23:11:15.53 ID:hiTklNEQ0





223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 23:27:00.06 ID:blOMaieO0

おもしろかった!ありがとう!



224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/17(月) 23:46:00.20 ID:iACUkvE+0

大変よくできました



225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/18(火) 00:00:27.09 ID:235frZkx0

面白かった。なんかちょっと切なくなってまった。
とりあえず平沢進聴いてくる。



226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/18(火) 00:25:13.66 ID:FFSRSA1Q0

おもしろかった
乙!






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