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純「ジャズけん!」#軽音部の夏 【日常系】


806 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:43:46.93 ID:xMAfeJYo
# 軽音部の夏


梓「……」

 夏休み――炎天下のなか、私は学校へ向かっていた。
 今日は軽音部の練習がある。
 長期休暇中でもこうやって集まれることは、嬉しいことだ。
 
 これでまともに練習をしてくれれば言うことなしだが…

唯「あーずにゃんっ♪」

梓「にゃっ!?」

 いきなり後から抱きつかれた。
 驚いて思わず声を出してしまう。

唯「偶然だね~、こんなところで会うなんて。今から学校に行くんでしょ?」

梓「そうですけど…」

唯「じゃあ一緒に行こっか」

梓「そ、その前に離れてください。暑いです」

唯「え~? もうちょっとだけ」

梓「ダメです、離れてください」

唯「あぁ~ん、ケチー……あづぃ」

梓「もう…」




807 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:44:46.49 ID:xMAfeJYo
 今の時間はお昼を過ぎたころ、一番気温が高い時だ。
 しかし暑いと言いながら唯先輩は抱きついたままだった。
 夏の陽で熱した体は私から離れようとしない。
 
 こうなると死ぬほど暑くなる。
 
 ミーンミーンというセミの鳴き声が体感温度と苛立ちをさらに上昇させた。

梓「だーーーっ!!」

 私はしがみついた体を力いっぱい振り払った。

梓「いい加減にしてください!」

唯「いやぁ~、久しぶりにあずにゃんに抱きつけると思うと嬉しくて」

 ヘラヘラと笑う唯先輩。

唯「それにしても暑いねー。私、暑いの苦手なんだ~」

梓「だったら抱きついたりしないでくださいよ…」

唯「でもそこにあずにゃんがいるから」

梓「どんな理由ですか!」 

 いつものようにくだらないやり取りをしながら、私たちは横に並んで歩いた。
 セミは鬱陶しいくらいに鳴き続けている。


808 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:45:46.00 ID:xMAfeJYo
 学校に着くとグラウンドでは運動部が練習している。
 この暑いなか真剣に部活をしている姿を見ると、私たち軽音部も身を引き締めなければいけないと思える。

 だがそんな私の気持ちも知らず、唯先輩は行く道の途中で買ったアイスを幸せそうに食べていた。
 そんな姿を見るとため息をついてしまう。
 
 私たちはそのまま部室へと向かった。

 部室にはすでに澪先輩、律先輩、ムギ先輩の三人が先に来ていた。
 そしてあろうことか、部室でカキ氷を食べている。
 わざわざカキ氷機まで用意して。

 そんな光景を見て私は再び、今度は深くため息をついた。

唯「あ~! みんな美味しそうなの食べてるー!!」

紬「ちゃんと二人の分もあるわよ。唯ちゃんはなに味がいい?」

唯「えっとねえっとね~……うーんどれにしようかな」

梓「先輩たち…練習は?」

 少し不機嫌に質問をした。

律「これ食べてからな!」
 
 即答だ。
 信用できないが…ここで文句を言っても仕方がない。
 先輩たちは恐らく食べるのを止めないだろう。 

紬「梓ちゃんも一緒に食べましょ」

 ムギ先輩に促され、しぶしぶ席に座ることにした。


809 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:46:35.04 ID:xMAfeJYo
紬「梓ちゃんはなに味にする?」

梓「じゃあ…いちごで」

唯「はいはーい! 私もそれで!!」

紬「は~い♪」

 楽しそうにカキ氷を作るムギ先輩。

律「ムギ! おかわりー」

 こんな暑い日でも元気いっぱいな律先輩。

澪「律、食べ過ぎるとお腹こわすぞ」

 今日もかっこいい澪先輩。
 けど、もうちょっと強く注意して欲しいときもある。

唯「まだかなまだかな~」

 子どものようにはしゃぎながら、カキ氷ができるのを待つ唯先輩。

 いつもと変わらない風景。
 軽音部は今日も通常運行だ。

梓「……」

 本当にこれでいいのだろうか。
 他のは部活は頑張ってるというのに……


810 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:47:31.74 ID:xMAfeJYo
・・・・・


 カキ氷を食べ終え、一息つくと談笑が始まる。
 案の定、練習は開始しない。

唯「カキ氷って、食べるとなんで頭が痛くなるんだろうね?」

律「なんでだろうなー…冷たいからかな!」

澪「それだけじゃ理由にならないだろ」

紬「アイスクリーム頭痛っていうのよね、確か」

梓「あの…」

 しびれを切らした私は、口を開けた。

梓「そろそろ練習しましょう」

 はっきりと全員に伝わるように話す。
 これでダメなら怒鳴ってしまおうか。

唯「え~…もうちょっと…」

澪「そうだな、始めよう」

 澪先輩が唯先輩の言葉をさえぎる。


811 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:50:13.75 ID:xMAfeJYo
律「んー…ぼちぼちやるか」

 律先輩もそれに賛同する。
 やはり部長として、やるべきことは分かってるみたいだ。

唯「もうちょっと休みたいなー…」

澪「何言ってるんだ、もう十分だろ。せっかく夏休みに集まったんだし、少しは練習するぞ」

 澪先輩たちが味方してくれた。
 これなら唯先輩も押し切れそうだ。 

梓「そうです! 澪先輩の言うとおりです!」

紬「唯ちゃんファイト!」

唯「は~い…………よしっ!」

 急に顔を引き締めた唯先輩は、ギターを手に取りジャーンと鳴らした。

唯「やるからには全力でやるよ! フンス」

梓「唯先輩…!」

 そう、普段だらだらとしているがやるときにはやる人なのだ。
 一度スイッチさえ入れば…

唯「……」

梓「…唯先輩?」

唯「やっぱあづい…」

 そう言うと唯先輩は座り込んでしまう。

梓「はぁ…」


812 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:51:05.89 ID:xMAfeJYo
紬「じゃーん、冷えピタ~」

 ムギ先輩は鞄から冷却シートを取り出し、唯先輩に渡した。

紬「はい、どうぞ」

唯「おぉっ!? これは伝説の冷えピタ!」

梓「なんの伝説ですか」

唯「ぴたっ!」

 冷えピタを手にすると、唯先輩はすぐにおでこに貼った。
 ものすごく気持ちよさそうな顔をしている。

紬「みんなもどうぞ」

澪「悪いな、ムギ」

律「サンキュー!」

紬「梓ちゃんも」

梓「すいません…わざわざ」

紬「いいのよ、気にしないで。これでみんな涼しくなるんだし」


813 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:51:42.65 ID:xMAfeJYo
 ムギ先輩の気配りに感動しつつ、私もシートをおでこに貼った。
 ひんやりとして気持ちがいい。
 頭もすっきりする。

律「よっしゃ、んじゃ始めるか!」

唯「おー!」

 唯先輩も完全に復活したみたいだ。
 各々楽器をセッティングし、自分の立ち位置についた。

律「じゃあまずは…ふでペンからな」

澪「わかった」

唯「ラジャー!」

律「ワンツースリーフォー!」

 スティックを鳴らし、カウントをすると演奏が始まる。

 ・・・・・


814 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:52:36.95 ID:xMAfeJYo
 ・・・・・


律「ぷはぁっ!! もう無理!」

澪「休憩するか…」

 練習を始めて二時間が過ぎた。
 久しぶりに充実した練習ができた気がする。

唯「ム、ムギちゃん…冷えピタの補充をば…」

紬「はいは~い」

 冷却シートはすでにぬるくなっていた。
 汗ではがれかけている。
 ムギ先輩は再度私たちにシートを渡してくれた。

唯「あ゛ぁ~~…なんでこんなに暑いんだろ~」

律「ドラム死ぬんですけど…」

梓「大丈夫ですか?」

 少し心配になり、唯先輩に声をかけた。
 先輩にしては珍しく頑張っていたので、倒れてしまわないか不安だ。

唯「大丈夫じゃないみたいです…」

梓「唯先輩…」

唯「水着のまま南極の海に飛び込みたい…」

梓「死んじゃいますよそれは!!」


815 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:53:06.42 ID:xMAfeJYo
澪「それにしても、今日は本当に暑いな」

紬「ニュースでこの夏一番の暑さって言ってたような…」

律「うげぇ…マジかよ」

梓「熱中症で倒れる人も多くなってるって聞きましたから…気をつけないといけませんね」

唯「ぐはぁっ!!」

 突如唯先輩が奇声をあげた。

梓「唯先輩!?」

唯「ね、熱中症で頭が~!!」

紬「大丈夫!? しっかりして唯ちゃん!!」

律「唯!!」

唯「アイス! アイスが食べたいよ~!!」

澪「結局そっちか!!」

律「まずいな…唯がアイス欠乏症になってしまった」

梓「なんですかそれ」


816 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:53:43.07 ID:xMAfeJYo
唯「うぅ~…あいす~、あいす~」

澪「我慢しろ」

律「仕方ない…ムギ」

紬「はい! なんでしょう?」

律「余ってる冷えピタをくれ」

紬「ラジャー!」

 律先輩に指示されると、ムギ先輩はすぐにシートを渡した。
 まるで何かごっこ遊びを楽しんでいるようだ。

紬「どうぞ」

律「うむっ。では今から応急処置を始める」

 そう言うとシートにはってあるシールを剥がした。

律「覚悟しろよ…?」

唯「え?」

 ニヤリと笑う律先輩。

律「てりゃー!! ぴたっ」

 叫ぶと唯先輩の首筋に冷えピタを首筋にはっつけた。


817 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:54:57.21 ID:xMAfeJYo
唯「ひゃうんっ」

 すっとんきょな声をあげる唯先輩。
 いきなり首に冷たいものをはられたらそうなってしまうのも無理はない。

唯「はぅ~…えぇですの~」

 しかしすぐに冷えピタの快楽に堕ちてしまったようだ。

律「ふふふ…次は澪だー!!」

澪「!?」

 唯先輩に貼り終えると、標的を澪先輩に切り替えた。

律「待てー!」

澪「や、やめろー!!」

 逃げる澪先輩、それを追う律先輩。
 この暑いなか元気に駆け回っている。
 傍から見れば楽しそうだ。

紬「隙あり!」

律「ひゃいっ!?」

 いつの間にかムギ先輩がそれに参加し、律先輩の首元にシート貼り付けた。
 これには私も、「おぉ」と唸らせられた。


818 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:56:08.47 ID:xMAfeJYo
紬「やった~!」

唯「あはは、りっちゃん『ひゃいっ』っだって~」

 床で座りながらそれを見ていた唯先輩が笑う。
 律先輩の顔は真っ赤だ。

律「むぅ~…」

 膨れっ面で唯先輩のもとに近寄った。

律「こんにゃろう! これでもくらえ!」

 そしてシートを二枚、唯先輩の両頬にはる。

唯「あうっ!?」

律「はっはっはっ、どうだー!」

唯「顔が冷たくて力がでな~い」

 満更でもない表情だ。


819 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:57:07.09 ID:xMAfeJYo
澪「まったく、なにやって…」

紬「そ~れっ」

澪「ひゃっ!?」

 ムギ先輩が澪先輩をも襲った。。
 冷えピタはりの達人なのだろうか。

律「バカめ! 油断したな!!」

梓「!?」

 不意をつかれた。
 律先輩の魔の手は私にのびた。

律「ていっ!」

梓「にゃあうっ」

 我ながら情けない声をだしてしまった。
 恥ずかしくなってしまう。

律「さてと…」

澪「残るはムギだけだな」

唯「ムギちゃんを捕まえろー!」

紬「きゃー」

梓「ムギ先輩! 自分だけずるいです!!」

 いつの間にか私もこの遊びに参加していた。


820 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 04:58:04.74 ID:xMAfeJYo
とりあえずここでいったん区切るという形で。
純は後半で出ます、はい。


821 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/28(木) 09:18:46.52 ID:Qfn/sMko
楽しい空気が伝わってくるなw



822 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:08:10.62 ID:9DkJcbUo
 ・・・・・

 ――しばらくした後、騒ぎも静まり私たちは席に座り一息ついていた。
 いつもよりハードな練習直後にはしゃいだせいか、全員ぐったりしている。

唯「今日はこのままのんびりしよっか~」

澪「いや、まだ時間はあるんだから休んだらまた始めるぞ」

律「あぢぃな~…」

唯「あついね~…」

梓「あんな動き回るからですよ。自業自得です」

 などと言っておきながら、私も汗だくだ。
 こんな姿でなにを言っても説得力がないことは分かっている。
 口では小言を言っておきながら、楽しんでしまったことを少し後悔した。

唯「ムギちゃ~ん…カキ氷ある~?」

紬「ごめんね、もう氷なくなっちゃったの」

唯「あぅ~…」

 残念そうな声をあげながら、唯先輩は机にうつぶせた。

唯「あいすたべたい~…」


823 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:09:10.26 ID:9DkJcbUo
律「唯の言うとおり、なんか冷たいもの食べたいな」

紬「そうね~」

 それには私も賛成だった。
 こうも体が火照ってしまうと、冷たいものを欲してしまう。
 
 私はさっき食べたムギ先輩のカキ氷を思い出していた。
 きめ細かい氷が、口の中に入れた瞬間 にふわっと舌の上で溶けてゆく。
 シロップの甘さが広がり、何ともいえない……

 などと考えてる途中に、ふと我に返った。
 本来カキ氷を食べるなどという行為は、部室でするべきことじゃない。
 もちろんいつものお茶も。

 だが気づかないうちにそれを許容している自分がいる。
 さっきの冷えピタはり合戦もそうだ。
 つい楽しんでしまった。
 このまま軽音部のノリに流されたらマズイいのでは…

梓「あの、そろそろ練習を再開…」

 発言をしようとした、その時だった。

律「よし、買いに行くか!」

澪「何をだ?」

律「アイスをだ」


824 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:09:58.84 ID:9DkJcbUo
唯「本当!? やったー!」

梓「えぇっ!?」

律「と言ってもこのくそ暑いのに全員で行くのはあれだから……かわいそうだが、誰か人柱になってもらおう」

澪「人柱?」

律「じゃんけんで負けたやつがみんなの分を買いに行くのだー!」

紬「楽しそうね」

梓「楽しくないですよ全然!」

律「じゃあいくぞー」

梓「あっ、ちょっと待ってください!」

律「出さなきゃ負けよじゃんけんぽんっ!!」


825 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:10:42.31 ID:9DkJcbUo
 ・・・・・

 ――負けた。
 先輩たちからお金を渡され、結局私が買いに行くことになってしまった。

梓「はぁ…」

 トボトボとコンビニに向かう。
 太陽の光はまだ強い。
 また日焼けしてしまう前に早く用事をすませなければ。
 ペースを速めて歩き出す。

 数分歩き、コンビニに着いた。
 なんのアイスを買おうか…
 考えながら入り口付近まで行くと、窓ガラス越しから見覚えのある姿が見えた。

 あれは―――純だ。
 雑誌コーナーで立ち読みをしている。
 
 知り合いに会えて少し嬉しくなった。
 お店に入り、純のところまで歩を進める。


826 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:11:22.75 ID:9DkJcbUo
梓「純!」

純「あっ、梓じゃん」

 そっけない返事。
 肩透かしをくらったような気分になった。

梓「なにしてるの?」

純「ん? 立ち読みだよ」

梓「それは見ればわかるけど…制服着てるじゃん」

純「うん、部活の買出し中だから」

梓「…なのに立ち読みしてていいの?」

純「それがさぁ――…」

 純は店の奥の方へと視線を向けた。
 私もそれに合わせて同じ方向を見る。


827 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:12:14.74 ID:9DkJcbUo
 そこには桜ヶ丘の制服を着た女の人がいた。
 制服のリボンが青なので、唯先輩と同じ二年生なのだろう。
 赤みがかった髪に凛々しい顔つきをしている。
 一目で真面目そうな人だと判断できた。

 その人は今、アイスが売られているところで眉間にしわを寄せながら何か悩んでいる。

純「どのアイスを買うか迷ってるみたいで…さっきからずっとああなんだ」

梓「ふーん…」

純「だから決まるまでこうやって立ち読みして待ってるわけ」

 純は再び雑誌に目を戻した。

梓「なんの本?」

純「わかんない。なんかの情報誌かな」

梓「読んでるのに分かんないって…」

純「だって適当にパラパラめくってるだけなんだもん。あれ? そういえば梓は何しに来たの?」

梓「私も買出し」


828 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:13:13.07 ID:9DkJcbUo
純「一人で?」

梓「じゃんけんに負けちゃったから。…ちょっと涼んでいこうかな」

 コンビニはクーラーが効いているので心地がよい。
 少しここで避暑することに決めた。

梓「ジャズ研も練習あったんだ」

純「うん、朝からね」

梓「朝から!?」

純「そうだよー、大変だったんだから」

 純の言葉に驚愕した。
 いや、夏休み期間はどの部活もそれぐらいはする日があるのは当然だろう。
 それでも驚くのはやはり軽音部に毒された証拠なのか…

純「午前中はパート別練習に午後はセッションとか色々……まぁ一年は雑用とかもあるんだけどね」

 そう言うわりには先輩をほっといて立ち読みをしている純であった。

梓「へぇ~…」

 しかし純の話を聞いてると羨ましくも思える。
 さっき二時間だけ練習して満足した自分が恥ずかしい。


829 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:13:53.70 ID:9DkJcbUo
純「梓は?」

梓「へ?」

純「軽音部、なにやってたの?」

梓「えっと…」
 
 言葉が詰まる。
 まさかカキ氷を食べたあと二時間ぐらい練習して今に至るとは言えなかった。
 そんなことを言ったら笑われそうで…

純「おやつ食べてちょっとだけ練習したとか?」

梓「!!」

純「あれ…あたり?」

梓「……ほぼ正解」

 こういうときに限って鋭い友人だ。
 目をあわせられない。

純「いいな~、楽しそうで」

梓「私は純の方がうらやましいよ…」


830 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:15:11.01 ID:9DkJcbUo
純「あっ、ねぇこれ見て」

 純が雑誌のページを指さす。

純「冬に新しくショッピングモールが出来るんだって。近くだし行こうよ」

梓「冬に、でしょ。今は夏だよ」

純「だから冬に行こうよ。憂と三人で」

梓「だいぶ先の話…まだ半年ぐらいあるよ」

純「そういえばさ、休みの日に三人で出かけたことってないよね」

梓「え?」

 突然の問いかけに一瞬戸惑う。
 言われるとおり、三人で休日の日に出かけたことはない。

純「今度の日曜にどっか行く?」

梓「…ごめん、日曜は家の用事があって」


831 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:15:56.18 ID:9DkJcbUo
純「そっか、私もその日以外だと色々忙しいんだよね…たぶん」

 遊ぼうと思えば今まで遊べたのかもしれない。
 だが軽音部に入部して、生活の中心がそれに移っていた。
 同学年の子といるより唯先輩たちと一緒にいる時間の方が長い。
 私の居場所はすっかり軽音部に定着していた。

 そして今は純もジャズ研に居場所があり、憂にも…

梓「……」

 全員バラバラの所にいる。

純「ま、機会はあるだろうからその時にしよっか」

梓「うん…」

 雑誌を読みながら話しかけてくる純。
 こっちを向いてくれないことに、私は寂しさを覚えていた。

 と、次の瞬間。

純「ねぇ梓」

梓「あ…」

 いきなり私に顔を向けてきた。 


832 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:16:46.49 ID:9DkJcbUo
純「これあげる、手出して」

梓「これは…?」

 渡されたのは、透明な包装用紙につつまれた小さなお菓子。

純「キャラメル。疲れたときにでも食べて」

梓「あ、ありがとう」

先輩C「鈴木、もう戻るぞ」

 レジの方から声がした。
 どうやらジャズ研の先輩が買い物を終えたようだ。

純「あ、はーい。じゃあ梓、私はこれで」

梓「うん」

 雑誌を元のところに戻し、純は立ち去ろうとする。
 その時、純はこちらを振り向くと。

純「…梓」

梓「え?」

純「お互い、がんばろうね」

 そう言い残して、彼女は自分の居場所に戻っていった。


833 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:17:20.25 ID:9DkJcbUo
梓「お互いがんばろう…か」

 シンプルな言葉だが嬉しかった。
 頑張ってね、ではなく一緒に頑張ろう、と。
 所属する部活は違うが、なんだか志は同じようになった気分だ。

 もし軽音部に同学年の子がいたら、今みたいな感じになれたのだろうか。

梓「……そうだ、アイス」

 いや、変な考えはやめよう。
 ありもしないことを思うなんて、ただの妄想。
 虚しいだけだ。

 私は適当にアイスを取り会計を済ませ、コンビニを出た。
 夏の陽が再び私を照らす。


834 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:18:32.73 ID:9DkJcbUo
 帰り道、あれこれと思案していた。
 
 軽音部の四人の先輩。
 普段はだらしなかったりするけど、演奏するといい曲になる。
 その中に私が入っていいのだろうか。
 私が不協和音になるのでは…

梓「……」

 現状、軽音部には不満がある。
 他の部活のように、もう少し真面目に取り組んだほうが良いのではないか。
 比べてしまうと私たちの部は明らかにダメだ。

 だが、そんな状況を楽しんでいたりもした。
 自分たちには必要と言われ、お茶を飲んだりふざけあったり。
 楽しくおしゃべりしたり、笑いあったり…

梓「……?」

 楽しんでるということは、私もあの輪の中にすでに入っているという事なのか?


835 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:20:28.74 ID:9DkJcbUo
 不満不平を言いながらも、それを受け入れてる。
 けどそれを認めることができない自分もいる。
 そんな自分に嫌気もさして…

梓「……」

 ふと、純に言われたことを思い出した。
 
 一緒に頑張ろう。

梓「私も…がんばってみよう」

 すでに部室の前まで来ていた。

 扉を開ける。
 いつもの四人がいつもの席に座っていた。


836 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:21:11.91 ID:9DkJcbUo
律「おーっす、おかえり」

唯「あずにゃんお疲れ~」

梓「律先輩、これお釣りです」

律「ん? いいよいいよ、細かいのはあげる。わざわざ買いに行ってくれたんだし」

梓「そういうわけにはいきませんっ」

 少し口を尖らせて言った。

梓「お金のことは、ちゃんと部長が管理しないとダメじゃないですか」

律「お、おぉ」

唯「あずにゃん、それよりアイスアイス~!」

梓「あ、はい。どうぞ」

唯「やった!」

梓「その前に!」

唯「?」


837 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:21:59.15 ID:9DkJcbUo
梓「これを食べ終えたら、ちゃんと練習するんですよ?」

唯「も、もちろんだよ」

 目を逸らす唯先輩。
 私は少しイジワルな表情をして先輩に返した。

梓「…約束できない人にはアイスあげませんからね」

唯「えぇ~!?」

梓「ちゃんとできますか?」

唯「します! 必ずします!」

梓「ならいいですよ、どうぞ」

唯「あっ、これ私の好きなやつだ! ありがとうあずにゃん」

梓「そうなんですか? 唯先輩がさっき食べてたのと同じのを適当に選んだだけなんですが…」

唯「またまた~、照れちゃって」

 嬉しそうな顔をしながら、唯先輩は私に抱きついてくる。


838 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:22:32.87 ID:9DkJcbUo
梓「もう…暑いじゃないですか」

唯「いいのいいの」

梓「…こんな事してるうちに、アイス溶けちゃっても知りませんからね」
 
唯「そうだ! アイスイス」

 唯先輩は私から離れるとアイスを食べ始めた。
 幸せそうだ。

梓「まったく…」

澪「梓、私のもたのむ」

梓「あ、はい。みなさんどうぞ」

唯「えへへ、あ~ずにゃんっ」

梓「なんですか?」

唯「私の分、ちょっとあげる」

梓「え?」

唯「はい、あーん」

梓「…あーん」

 唯先輩からもらったアイスは甘く、ほんのりと優しい味がした。


839 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:24:00.72 ID:9DkJcbUo
 ・・・・・

 部活を終え、私たちはそれぞれ帰路についた。
 私と唯先輩は来た時と同じように、二人で並んで帰っている。
 太陽は少し沈み始めていた。
 セミが一匹、ミーンミーンと鳴く音がする。

唯「ふぃ~…今日は疲れたね~」

梓「いつもこんな感じだったらいいんですけどね」

唯「そ、それじゃあ死んじゃうよー!」

梓「頑張りましょうよ、死なない程度に」
 
 微笑みながらそう言った。
 
 そうだ、失望や自己嫌悪などせずにもう少し頑張ってみよう。
 私に出来る可能な限りで。
 
 他の部活は関係ない、私はこの中でできることをするだけ。
 この軽音部を――私の居場所にするために。

唯「あっ、私用事があったんだ」

梓「え?」

唯「じゃあねあずにゃん、ここでお別れ」

梓「あ…はい。お疲れ様でした」


840 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/29(金) 01:24:48.50 ID:9DkJcbUo
唯「バイバ~イ」

梓「……」

 唯先輩の背中を見送る。
 段々と遠くなっていった。
 するとちょうど、さっきまで鳴いていたセミの音が静まる。

 ミーンミー……

梓「……」

 寿命が尽きて死んだのだろうか。

梓「…私も行かなきゃ」
 
 セミは一週間で死ぬ。
 それはセミにとって短いのか、長いのか。
 楽しかったのか、辛かったのか。 

梓「……」

 そういえば、純にキャラメルを貰ったのを思い出した。
 それを食べながら帰ろう。


# 軽音部の夏

おわり

841 名前: VIPにかわりましてGEPPERがお送りします 投稿日: 2010/10/29(金) 01:37:02.16 ID:9DkJcbUo
ここまで
一年のときは梓は軽音部、純はジャズ研、憂は家庭(?)にそれぞれ居場所があったと思います。
このスレ後半でジャズ研絡みが多くなったのも、純がジャズ研に居場所を確立したのを表すためでした。
そのおかげで憂梓純の絡みが減って少し物足りない気がしましたが、二年になったらそこら辺の関係を徐々に変化させたいです。
ちなみに番外編はあと二本ぐらいです。

地の文ってめんどくさいですね。

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純「ジャズけん!」#軽音部の夏
[ 2010/10/29 02:07 ] 日常系 | | CM(0)

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