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梓「まだ、終わりじゃない……」#後編 【アクション】


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梓「まだ、終わりじゃない……」#前編
梓「まだ、終わりじゃない……」#後編




84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:26:51.06 ID:vyghJhPTO

お互いに相手に致命傷を与えられないまま、時間だけが過ぎていった。

ガキンッ!ガキンッ!ガキィン!!

梓(ぐっ……!!)

最初のうちは律先輩と互角に闘えていたが、時間が経つにつれ、

だんだん相手の攻撃をかわしきる事が出来なくなっていた。

少しずつ、私の体に傷が増えていく。

梓(律先輩に私の攻撃はまだ一太刀も浴びせていない……)

梓(……このままではまた、負けてしまう……!!)

やはりあれを使うしかない。

今の私に使えるだろうか?

でも、このままではジリ貧だ。



85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:27:15.61 ID:vyghJhPTO

梓(やってみるしかない……!!)

キィン!カキィン!!ガキィン!!

―――タッタッ

私は律先輩と、何度か斬りあったあと、後ろに下がり、律先輩から距離をとった。

―――グッ!!

刀の柄を力の限り、握る。

両足に力を込めて踏ん張り、刀に霊力を乗せる。

―――シュンッ!!

そして、私は刀で思いきり宙を切った。



86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:29:15.92 ID:vyghJhPTO

―――ブチブチッ!!

腕や脚の毛細血管が切れる音がした。

パァァン!!!!

律の体を衝撃が襲う。

律「ぶふっ……!!」

律(ぐっ……!なっ……!!なんだ…!?体の前で何かが弾けた……!?)ヨロッ

律がよろめく。

その隙を梓は見逃さない。

梓(今だっ!!!)



87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:29:53.24 ID:vyghJhPTO

―――ダンッ!!

一瞬で律との間合いを詰める。

ドガガガガッッッッ!!!

梓は律に何回も攻撃を叩きこんだ。

梓(決まれッッ…!!!)

ズバァァァァッッ!!!

そして梓は最後に渾身の一撃を喰らわせる。

律「ぐはっっ………!!!」

ダァァァァァン!!!

律の体が宙を舞い、壁に叩きつけられる。



88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:30:18.25 ID:vyghJhPTO

律「がはっ……!!」

律(なんだ、今の攻撃…!?梓が刀を振ったと思ったら、衝撃が……!!!)」

律は自分がどんな攻撃を受けたのか分からなかった。

自分と梓の距離は十分開いていた。

律(それなのに私は何故、攻撃を受けた……!?)

梓が高速で移動した…?

いや、違う。

私が梓に直接攻撃を食らったのはあの衝撃を受けた後だ。

確かそれは梓が刀を振った直後に私を襲った。

刀を高速で振り、大気を切る事によって発生する衝撃波…?



89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:30:58.97 ID:vyghJhPTO

多分……、そういうものだ……。

それが、あんなに強力だとは……!!!

梓(撃てた……!!)

霊力を刀に乗せ、大気を切る。

それによって、刀に乗った霊力は放たれ、衝撃波となって敵を襲う。

これが先程、梓が律にダメージを与えた攻撃の正体である。

梓は自身のこの技を『牙』と呼んでいた。

牙は普通の悪霊なら一撃喰らわせただけで消滅する。それほど強力なものだった。

いくら律ともいえど、ダメージを受けない訳がない。

牙を喰らった律はダメージを受け、隙が出来た。



90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:31:27.95 ID:vyghJhPTO

そこで梓が間合いを詰め、攻撃を叩きこんだ。

これらが先程の一連の流れである。

律「くっ……!!」ダッ

律は立ち上がり、すぐさま梓との距離を詰めた。

離れれば先程の攻撃をまた喰らってしまう。

律(そうならないためには近づいてして闘うしかない…!!)

ガキィィン!!!

二人の刀がまたぶつかりあう。

梓(効いていない……!?)

私は驚きを隠せなかった。



91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:33:21.39 ID:vyghJhPTO

牙によるダメージを受け、連続攻撃を叩きこんだはずの律先輩が、

すぐさま立ち上がり、私に向かってきたから。

牙を喰らわせたら、悪くてもしばらくは立ち上がれないほど

大ダメージを与えられると思っていた。

梓(そんな……!!)

牙が通用しない。それは私にとってあり得ない事だった。

しかし、それは私の杞憂だった。

ガキッ!!ガキッ!ガキィン!!

律先輩と私は何回か斬りあったが、律先輩に先程の力は無かった。

やはり、牙は律先輩に大きなダメージを与えていたのだ。

梓(これなら…!!)



92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:33:42.20 ID:vyghJhPTO

―――ガキィン!!

律の刀が上にはねあげられる。

律(やばっ……!!!)」

律の体がガラ空きになった。

――――タンッ

梓が素早く一歩下がる。

律(なっ……!?)

次の瞬間―――。

―――パァァン!!!

牙が律の体を直撃する。



93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:34:08.37 ID:vyghJhPTO

律「がっ……!!!」

律(これは、さっきの……!!この距離でも打てるのか……!?)ガクッ

ドガッ!!ドガッ!!ドガァ!!!

すかさず梓は攻撃を叩き込む。

律の体がのけぞる。

律「ぐはっ……!!!」

律(ヤ、ヤバい……!)

―――パァァン!!!

体勢の整っていない律をまた牙が襲う。

律「げふっ……!!!」



94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:34:45.01 ID:vyghJhPTO

ドガァァァァァ!!

ものすごい音を立てて、律は壁に吹っ飛ばされた。

律「ぐっ……!!げほっ……!!!」


―――ズルッ

律は体を壁に預けるようにして倒れた。

梓(もう……立たないで……!!!)

律の体は梓の攻撃でダメージを受けていたが、梓の体もすでに満身創痍だった。

牙はその強力さゆえに、打つたびに多大な負担が使用者の体にかかる。

本来ならば一回の戦闘で使えるのは一回が限度なのだ。

だが、梓はここまで三回、牙を打った。しかも、その内二回は連続での使用である。



95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:35:26.34 ID:vyghJhPTO

律(くそっ……!立てない……!足に力が……!!)

律(このままじゃやられる……!!)

律(梓に…消されてしまう……!!)

そうなったら澪の事を連れていけない。

また一人になる。

……嫌だ。

あんなところでずっと一人きりなんて絶対に嫌だ。

嫌だ。嫌だ。嫌だ。いやだいやだいやだいやだ―――。

――――ブチッ

その時、私の頭の中で何かが切れる音がした。



97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:37:42.14 ID:vyghJhPTO

―――ユラッ

律先輩が立ち上がった。

顔を伏せているのでその表情は分からない。

梓(くっ……!!でも、あと少しで倒せるはず……!!
  牙をあともう一発喰らわせれば…!!)


私は牙を撃つ構えに入る。

多分、あと一発が限度だろう。

―――ゾワゾワッ!!

梓(な……に……!?)

その時、私の体に悪寒が走った。

梓(これは……律先輩の殺気……!?)ガタガタガタ



98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:38:12.72 ID:vyghJhPTO

恐怖で膝が震える。

律「…………」

そして、律先輩がこちらにゆっくり近づいてくる。

梓「う……あ……」ガクガクガク

震えがまだ止まらない。

そのとき、ソファーの澪先輩が目に入った。

梓(………!!)

梓(しっかりしろ!!澪先輩を連れていかせはしない……!!)

ダンッダンッ!!

足を踏みならし、膝の震えをとる。



99 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:39:22.65 ID:vyghJhPTO

梓「あああぁぁぁぁ!!」

自分を鼓舞するため、大声を出した。

そして、牙を撃つ構えに入る。

梓(これで、終わりだ……!!)

ギシッ……ギシッ…

全身の筋肉が軋む音がする。

霊力を刀に込める。

大気を横一文字に切った。

―――パァァン!!!

霊力の刃が大気を切り裂く。



100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:40:04.43 ID:vyghJhPTO

梓の牙が律に向かって放たれた。

牙は律先輩に向かって放たれた……はずだった。

―――ヒュンッ

律先輩が刀を上下に振る。

パンッッ!!

乾いた音がした。

梓(なっ……!?)

梓(牙が……消えた……!?)

梓(私の牙が……!!!)

梓(なんで……!?)



101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:40:33.18 ID:vyghJhPTO

梓(牙が…斬られた…!?)

私は驚愕した。

梓(牙が斬られて消えるなんて……!)

―――ニタァ

律先輩が顔に笑みを浮かべる。

そして、律先輩が胸に手を当て何かを呟いた。

律先輩の体の傷が一瞬で無くなる。

また、回復の術式を使ったのだろう。

梓(そん…な……)



102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:43:11.22 ID:vyghJhPTO

私は絶望した。

いくらダメージを与えても倒せない。

しかも、頼みの綱の牙は通用しなくなった。

もう何も打つ手はない。

私は何故、律先輩のような霊と戦ってはいけないと言われているのかようやく理解した。

こんな相手に……勝てるはずがない。

こんな相手に戦いを挑むなんて、自殺志願者以外の何者でもない。

―――ゾワァッッ!!

梓(いやっ……!!)

そしてまた、律先輩の殺気が私を襲う。



103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:44:17.44 ID:vyghJhPTO

―――スタッ、スタッ

律先輩が一歩ずつ私に近づいてくる。

梓(逃げ……逃げなきゃ……!!)

私の本能が逃げろと言っている。

音楽室のドアから逃げようと振り向こうとした瞬間―――

ドシュッッ!!

梓(………!!)

私の胸に刀が突き刺さった。

梓(ッ……!!!)

――――バタンッ!!



104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:46:00.42 ID:vyghJhPTO

私は床に倒れた。

刺された胸から、血が……止まらない。

梓「っ……はっ……!!」

律先輩が私を見下ろしている。

律「なぁ……、梓。お前、あの技乱発しすぎなんだよ……」

律「3回も喰らったらさすがに技の正体くらい分かる。そして、その防ぎ方も。」

律先輩が私に向かって話しかける。

梓「げほっ……!!」ゴポッ

私の口からも血が溢れでる。

律「って聞こえてないか……」



105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:46:17.44 ID:vyghJhPTO

何も言う事が出来ない。

………目が霞む。

だんだん、律先輩の姿がボヤけてきた。

律「それじゃあ、今度こそ本当に終わりだな……」

そう言って律先輩は私の胸、心臓に刀を向けた。



106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:46:49.19 ID:vyghJhPTO

梓(駄……目……だ……体の……感覚……がな……い)

律「……じゃあな」

――――ズンッ

私の心臓を律先輩の刀が貫いた。

梓「げほっ……!!!」ゴポッ

血が溢れて止まらない。

だんだん意識が遠ざかっていった。

梓(な……ん…でよ……ま……だ……)

全身から血の気が引く。

ああ、これが、死というものなのか――――。



107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:50:09.84 ID:vyghJhPTO

律は梓の2回目の牙でその技の正体が分かった。

霊力を放った事による衝撃波ならば霊力をぶつけて相殺してやればいい。

単純な原理だが、高い霊力を持っている梓の牙は並大抵の霊力では相殺出来ない。

これは梓以上の霊力を持っている律のような者にしか出来ない事だった。

律は梓の4回目の牙の時、自分の刀を大量の霊力で覆い、牙にぶつけた。

そして2つは相殺したのだった。

律(……やっと終わった。)

梓も私の邪魔をしなかったら死ぬことは無かったのに。

律(忠告してやったのに、馬鹿だな……。)



108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:50:33.19 ID:vyghJhPTO

床に横たわっている梓の死体をみる。

ピクリとも動かない。

目は見開いたまま、完全に光を失っていた。

律(……梓の死体は昨日と同じように音楽室の前に置いておこう)

律(また、さわちゃんあたりが見つけてくれるはずだ)

さてと、それじゃあ澪を連れていこう。

律「これで全部終わりだ……」

?「まだ、終わってないですよ。」

誰かの声が背後からした。



109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:50:56.15 ID:vyghJhPTO

律「!?」

―――バッ

私は声のした方向を素早く振り向いた。

そこにいたのは……。

憂「まだ終わりじゃないと思いますよ」

そこにいたのは平沢憂だった。

律「憂ちゃん……?」

憂「お久しぶりです、律さん」

律「なんでここに……?」

憂「……あることを確かめに来ました」



110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:51:45.11 ID:vyghJhPTO

律(確かめに……?どういうことだ?)

律(まさか、憂ちゃんも私の邪魔をしにきたのか……?)

だったら……!!

私は刀の柄を右手で握る。

律(こいつも殺す……!!)

憂ちゃんはそんな私の考えを見透かしたように、慌てて胸の前で両手を振った。


憂「わ、私は律さんと戦いに来たわけじゃありませんよ……!!」

憂「だからそんなに身構えないで下さい……!!」

律「じゃあ、何しに来たんだ……?」

私は刀の柄を握ったまま問う。



111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:52:14.20 ID:vyghJhPTO

憂「少し……長くなりますけど説明してもいいですか?」

律「………いいよ」

憂「……3年前の話になります。私と梓ちゃんはある機関に所属していました」

憂「その機関は霊による災害や殺人を防ぐという目的のために存在しているんです」

憂「梓ちゃんは違いますけど、私は今もその機関の一員なんです」

律「……じゃあ私の邪魔をしにきたって事だよね」

憂「でっ、でも、私達は主に無差別殺害を行う霊だけを倒してるんです」

憂「だから律さんを倒しに来たわけじゃないんです……!!
  それに、私じゃ律さんには勝てないのはよくわかってますから……」

まぁ…、そうか。武器も持っていないし、

見たところ霊力も梓以下だ。この言葉は信用してもいいだろう。

憂「梓ちゃんは私達の中では霊力の高さはトップクラスでした……」



112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:55:08.12 ID:vyghJhPTO

憂「梓ちゃんの技……、霊力を刃に乗せて放つ『牙』は
  一撃でほとんどの悪霊を倒すことが出来ます」

憂「梓ちゃんはそれを使い、たくさんの悪霊を倒していったんです」

律(あの技は牙っていうのか。……大した事は無かったけど。)

律「ふ~ん、そうなんだ。私じゃなかったら一撃で倒せてたかもな」

憂「………!!」

どうやら憂ちゃんは私が牙を知っていることに驚いているようだ。

憂「律さん……、牙を知っているんですか?」

律「……ああ、四回も喰らったし。最後の一回は防ぐことが出来たけど」

憂「……!!牙を3回も…!!」

憂(普通、それだけ受けたら存在していることなんて出来ないはず……。
  しかも、牙を防げるなんて……!!)



113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:55:40.07 ID:vyghJhPTO

律「それで?」

憂「牙を撃つと体には大きな負担がかかります……」

憂「しかも、梓ちゃんの体は牙を撃つにはあまりにも小さい……。
  体が反動に耐えられる訳がないんです」

憂「でも霊を倒すために梓ちゃんは牙を撃つしかなかったんです。」

憂「もし倒し損なってしまえば、関係のない人間が殺されてしまう」

憂「梓ちゃんはそれが許せなかったんでしょう……」

憂ちゃんは続ける。

憂「牙の使用は少しずつ、でも確実に梓ちゃんの体を蝕んでいきました」

憂「そして3年前のあの日、とうとう梓ちゃんの体に限界が訪れたんです……」

憂「その日、梓ちゃんは二人で、出現した霊と戦っていました。」



114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:56:50.01 ID:vyghJhPTO

憂「私達は最小で二人、最大では五人以上で霊と戦うんです」

憂「梓ちゃんは私達の中でも霊力の高さは上位だったので、
  主に最小の二人一組で討伐を行っていました。」

憂「それでもほとんど梓ちゃんだけで敵を倒していたみたいですけど……」

憂「その時、梓ちゃんと戦っていた霊はかなり強かったんです」

憂「梓ちゃんはその悪霊に対して牙を放ちました」

憂「梓ちゃんも敵が強いのを重々承知していたのでしょう」

憂「………その時、梓ちゃんの体に今までの反動が返ってきました」

憂「牙は不発に終わり、梓ちゃんの脚と腕の筋肉が断裂したんです……」

憂「梓ちゃんは悪霊の攻撃によって致命傷を負い、気を失いました」

憂「そして一緒に組んでいた人間が殺されてしまったんです」



115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 11:59:15.37 ID:vyghJhPTO

憂「唯一、幸運だったのが死んだ私達の仲間が
  悪霊と相討ちになった……、ということでした」

憂「だからその悪霊による被害はそれ以上広がらなかった……」

憂「私達が駆けつけた時には梓ちゃんは気を失って倒れていて、
  もう一人の仲間はすでにこと切れていました……」

憂「梓ちゃんはすぐさま病院に運ばれました。
  そして三ヶ月以上、昏睡状態になったまま目を覚まさなかったんです」

憂「目を覚ました梓ちゃんは仲間が死んだことを知りひどくショックを受けてしまった」

憂「牙の多用によって体がボロボロになり、精神にも傷を負ってしまった梓ちゃんが、
  これ以上機関に所属して悪霊を倒していくのは無理だと判断されました」

憂「そして、梓ちゃんは霊力を封じられ、機関をやめることになった……」

憂「これが、私が聞いた3年前の事件の全てです」

律(そうか……昨日と今日で梓の強さが違ったのは封じられていた霊力を解放したからだったのか)

律「………それで?」



116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:02:19.36 ID:vyghJhPTO

憂「実は、ここまでの話でおかしな点がいくつかあるんです」

律「?」

憂「実は梓ちゃんと一緒にいた仲間は
  そんなに霊力が高いわけでも、戦闘に長けていたわけでも無かったんです」

憂「そんな人間が、梓ちゃんに致命傷を与えられるほどの霊を、相討ちといえど倒せるはずがない」

憂「それと、機関には霊力の発生を探知できる装置があって、
  私達はそれによって霊の出現を知ることが出来るんです」

憂「3年前のその日、梓ちゃんが向かった先には3つの霊力の反応がありました」

憂「梓ちゃん、梓ちゃんと一緒にいた私達の仲間、悪霊の3つです」

憂「その装置によると最初に梓ちゃんの霊力の反応が無くなり、
  次に梓ちゃんと一緒にいた私達の仲間の霊力の反応が無くなったそうです」

憂「その後、何故か梓ちゃんの霊力の反応が再び現れ、
  そして梓ちゃんと戦っていた悪霊の霊力の反応が無くなり、
  梓ちゃんの霊力の反応だけがその場に残ったんです」

憂「おかしいと思いませんか?梓ちゃんが致命傷を負って倒れ、
  その後私達の仲間と悪霊が相討ちになったのなら梓ちゃんの霊力の反応は消えず、
  私達の仲間と悪霊の霊力の反応が同時に消えなければならないはずなんです」



117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:05:30.66 ID:vyghJhPTO

律「…………」

憂「機関はこれらの矛盾を装置の誤作動ということで処理しました」

憂「でも、その装置が誤作動を起こしたのは後にも先にもその一回だけなんです」

憂「これらのことから、私は一つの仮説を立てました」

憂「最初に梓ちゃんが悪霊に殺された」

憂「そして、次に私達の仲間が悪霊に殺され、その後、梓ちゃんが甦って悪霊を殺した」



118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:06:01.01 ID:vyghJhPTO

憂「これだったら今までの矛盾にも全て説明がつきます」

律「…………!?」

憂「悪霊に殺された人間が甦って自分を殺した悪霊を殺し返した」

憂「こんな馬鹿げた事は本来ありえるはずがない」

憂「でも、私はこの仮説が正しいと思っています」



119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:07:58.31 ID:vyghJhPTO

律「…………」チラッ

律は梓が倒れているべき場所に目を移した。

――――いない。

梓がいない。


律「なん……だと……!?」

律は慌てて音楽室を見渡す。



120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:08:36.90 ID:vyghJhPTO

―――いた。

憂「つまり………」

梓は音楽室の奥に立っていた。

憂「梓ちゃんは一回殺したくらいじゃ死なないんですよ」

その顔に、不敵な笑みを浮かべて。



122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:32:21.94 ID:vyghJhPTO

―――――。

梓(ここは……どこ?)

私はどこもかしこも真っ白な空間にいた。

梓(ここ、前にも来たことあるような……)

…………駄目だ。どうしても思いだせない。

梓(私はどうなったんだっけ……?)

梓(そうだ……確か律先輩に胸を刺されて……)

梓(ということは、ここはあの世ってことか……)

梓(私、負けちゃったんだなぁ……)

澪先輩のことを助けられなかった。



123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:32:37.35 ID:vyghJhPTO

また、私のせいで人が死んでしまった。

………自分のふがいなさが嫌になる。

ここで待っていればもうすぐ律先輩と澪先輩が来てくれるはずだ。

梓(それで……いいや……)

梓(律先輩と澪先輩がいれば寂しくない……)

梓(少しすれば、唯先輩とムギ先輩も来てくれるしね)

梓「……………」

梓「……………」ポロポロ

目から涙が溢れた。



124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:32:53.34 ID:vyghJhPTO

梓「うっ……うぇ……うぅ……」

梓「ごめんなさい……ごめんなさい……澪先輩……」

私は、その場で泣き続けた。

?『また、泣いているんですか』

梓「………?」

その時、後ろから声がした。

―――クルッ

私は振り返く。

梓「な……!!」

そこには、私と全く同じ姿形をした人間がいた。



125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:33:22.96 ID:vyghJhPTO

梓『また、殺されちゃいましたねー』

梓『全く……あなたは私なんですから、あの程度の霊になんか負けないで欲しいものです』

どうやら、私の目の前にいる私にそっくりな人間は、

私が律先輩に殺されてしまったことを怒っているらしい。

梓「だって……だってしょうがないでしょ……!!」

梓「律先輩は強かったし、私の牙も通用しなかった……」

梓「勝てるわけがなかったんだ……」

梓『……あなたの牙には無駄が多すぎるんですよ』

梓『あの撃ち方だと体に余計な負担がかかるし、本来の威力の半分も出せていない』

梓『まぁでも、それを抜きにしても田井中律にはちょっと勝てなかったかもしれませんが』

梓「……あなたは誰なの?」



126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:33:50.36 ID:vyghJhPTO

梓『……今は説明している時間は無いです。それはまたの機会に』

梓『それより、秋山澪を助けたいんでしょう?
  田井中律を倒したいんでしょう?どうなんですか?』

私の目の前のそいつは、私に向かって問いかける。

梓「…………」

私は答える。

梓「助けたい……!!澪先輩を助けたい!!律先輩を倒したい!!」

梓『……そうですか』ニコリ

そいつは微笑みながら言った。

梓『だったら、また、あなたの体を貸りますね』

梓『私が、倒してきてあげますよ』



127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:35:40.31 ID:vyghJhPTO

―――――。

梓「…………」ニタァ

殺したはずの梓が立っている。

律(甦った、だと……!?)

律(だったら……)グッ

刀の柄を強く握る。

律(何度でも殺してやる……!!)

刀を鞘から抜き、梓に斬りかかった。

律「おらぁぁっ!!」

梓「おっと」ヒョイッ



128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:35:55.24 ID:vyghJhPTO

―――ブンッ!!

律の刀が空を斬る。

律「ふんっ!!」ブンッ

間髪入れずに攻撃を続ける。

キンキンキンキン!!

しかし、律の攻撃は全て梓に防がれてしまった。

律(なっ……!?)

梓「今度はこちらの番ですねっ!!」

攻守が変わる。



129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:36:11.23 ID:vyghJhPTO

ガキィッ!!ガキィッ!!

律(くっ……!!攻撃が重くなってる……!!)

律(だけど、この程度なら……!!)

律「痺ッ!!」

梓「!!」ビクッ

梓の動きが一瞬止まった。

律「うらぁっ!!」

ドゴッ!!!

梓「げふっ……!!」

律の蹴りが梓の腹部に入った。



130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:36:27.86 ID:vyghJhPTO

梓の体勢が崩れる。

律(………死ねっ!!)

ズバァァァァン!!

律の斬撃が梓を襲った。

梓「がっ……!!」

律「吹き飛べっ!!」

ドゴッッッッ!!

律が梓を蹴り飛ばす。

ダァァァァァン!!!

蹴り飛ばされた梓が宙を舞い、壁に叩きつけられた。



131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:37:22.71 ID:vyghJhPTO

律(……なんだ、弱いじゃないか)

律(これなら……次の一撃で殺せる……!!)

梓が立ち上がった。

梓「ふぅ……さすが、といったところですね」パンパン

制服の汚れを払いながら梓が言った。

律「な……!?」

律(今ので……ダメージを受けていない……!?)

梓「でももう……終わりです」

次の瞬間――――。



132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:38:41.13 ID:vyghJhPTO

バァァァァン!!!

かつてないほどの衝撃が律を襲った。

律「ぐはぁっ……!!!」

律(これは……牙……!?でも…威力が全然……違……!!)

律(しかも、モーション無しで……!!)

膝から下の力が抜ける。

律(やばいっ……!!)ドンッ!!

刀を杖のようにして倒れるのを防いだ。

律(踏ん張れっ……!!)



133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:38:58.39 ID:vyghJhPTO

―――ダンッッ!!

梓が私に向かって瞬時に移動してくる。

律(くっ……!!)

梓が下から斬り上げてきた。

律(防がなきゃ……!!)

力を振り絞って梓の攻撃をガードする。

ガキィィィィィ!!!

律の刀が手から抜け、宙に舞った。

律「しまっ……!!」

そして―――。



134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:39:19.59 ID:vyghJhPTO

―――ドシュッッ!!!

律の体を、梓の刀が貫いた。

律「あっ……あぁっ……」

自分の腹に刀が突き刺さっている。

―――ズブッ

―――バタンッ

梓が刀を引き抜いた瞬間、よろめきながら律はその場に倒れた。

律「う……あ……あぁ……」

律「い…た……い……い…た……い……よぉ……」

あまりの痛みに立ち上がることが出来ない。



135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:39:47.27 ID:vyghJhPTO

自分の刀も無くなってしまった。

梓に、消される……!!

その時、澪のことが頭の中をよぎった。

律「み……お……澪っ……!!」ズリッズリッ

澪の元に這って近づく。

梓「その様子じゃ、術式も使えませんね。あれはある程度の集中力が必要ですから」

梓が何か言っている。だけど私には澪しか見えなかった。

律「い……や…だ……み……お……」

澪と……離れ離れになりたくない……。もう……一人は嫌だ……よ……。



137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:40:09.06 ID:vyghJhPTO

―――ザシュッッ!!!

律「いぎっ……!!」

自分の右ふくらはぎに激痛が走った。

見ると梓が刀を突き刺している。

梓「往生際が悪いですね……」

それでも、澪の元に行こうとする。

律「うっ……いや……だっ……」ズルッズルッ

梓「やれやれ……」

梓に制服の襟を掴まれ、強い力で仰向けにされた。

律「あ……う……」



138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:41:23.32 ID:vyghJhPTO

―――スッ

梓が私の首に剣先を向けた。

梓「もう……消えろよ」

律「…………!!」

必死に声を絞り出す。

律「や…め……て……ま…だ……消え…たくない……」

律「ひ……と…りは……い……や…澪と……一緒……に……」

――――黙れ。

律「………?」

梓「黙れ、悪霊」



139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:41:54.84 ID:vyghJhPTO

律「………!!」

梓の、はっきりと私を拒絶する言葉。

―――ズンッ

そして、私の首を梓の刀が貫いた。



140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:43:54.53 ID:vyghJhPTO

憂(………!!)

私はただただ、驚いていた。

私達にしか使えないはずの術式を使った律さん。

さっき使った相手の動きを止める『痺』は上級の術式に区分されていて、

私の所属している機関の支部のメンバーに使える人間はいない。

日本全国を探しても使える人間は数えるくらいしかいないだろう。

そして、そんな律さんをあっという間に倒した梓ちゃん。

いや……あれは本当に梓ちゃんなのか……?

律さんが消え、梓ちゃんが私の存在に気付いた。

そして私に話しかける。

梓「確か、平沢さんですよね?」



141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:44:52.36 ID:vyghJhPTO

違う。この人は梓ちゃんじゃない。

憂「あなたは……誰……?」

梓「誰って……、中野梓ですよ。知っているでしょう?」

憂「嘘……!!あなたは梓ちゃんじゃない……!!」

梓「あぁ……うーん、えっーと……」

梓「簡単に言うとあなたが知っている中野梓は表の私。」

梓「それで今の私は裏の私。この説明で大丈夫ですか?」

憂「………!?」

表の梓ちゃんに裏の梓ちゃん……?

一つの体に二つの人格……?



142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:45:15.19 ID:vyghJhPTO

そんなことがあり得るのか?

梓「そんなことより……」

―――スッ

梓ちゃんが刀を私の心臓につきつけた。

梓「私の存在を知ってしまった奴は全員殺すことにしてるんですが」

―――ゾクゥッ!!

憂(な………!!)

その瞬間、私は死を覚悟した。

今まで感じた事のない恐怖。

私は蛇に睨まれた蛙のように固まってしまった。



143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:45:40.81 ID:vyghJhPTO

梓「…………」

梓ちゃんが何の感情も込もっていない目で私を見ている。

憂(殺……され…る……)ガクガク

梓「……なんて、冗談ですよ、冗談」

張りつめていた空気が緩む。

憂「え………?」

梓「私の存在を知ってしまった奴は全員殺すことにしているというのは本当ですが」

梓「表の私の友達を殺したりはしませんよ」

憂(……よかった)

ほっと胸を撫で下ろす。



144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:46:08.22 ID:vyghJhPTO

梓「それにあなたには感謝してますから」

憂「感謝……?」

梓「私の霊力を封じていた術式を解いてくれたのはあなたでしょう?」

梓「あのまま封じられていたら、私は出てこれませんでしたから」

憂「……何故?」

梓「表の私に霊力が生まれたのと同時に、今の私が生まれたんです」

梓「だからなんでしょうか、霊力を封じられていると私は出てこれなくなるんです」

梓「表の私が霊力を封じられたまま田井中律と戦った時は焦りました」

梓「もし、昨日私が殺されていたらそのまま死んでいましたからね」

梓「私は、表の私が死んだ時、正確には限りなく死に近づいた時に出てくることが出来るんです」



145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:47:41.28 ID:vyghJhPTO

憂(………そうだったんだ)

梓「あなたがさっき田井中律に話した仮説は大体合ってますよ」

憂「梓ちゃんは?私の知っている梓ちゃんは今どうなっているの?」

梓「あ、表の私はちゃんと生きていますから安心してください」

梓「3年前の時は回復に3ヶ月近くかかりましたが、今回は2日くらいで目覚めると思いますから」

梓「それじゃあこれからもよろしくお願いしますね」

梓「表の私は機関に復帰するらしいので」

憂「梓ちゃんは3年前、牙の撃ちすぎで体を壊した………それは大丈夫なの……?」

梓「その点は大丈夫です。腕も脚も以前の状態に戻りましたし、
  これからは牙を撃つときは私が中から力を貸しますから」

梓「これを3年前にもやっておけばよかったんですけどね。まぁ……私のミスでした」



146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:48:11.35 ID:vyghJhPTO

梓「まさかあれくらいで駄目になるとは思ってませんでしたから」

梓「じゃあ、私はそろそろ消えます。後のこと、任せますね」

そう言って、梓ちゃんはソファーに歩いていった。

梓「あ、私のことは内緒にしておいてくださいね」

梓「表の私は今の私のことを知りませんから」

梓「だから、田井中律を倒したのはあなたってことにしておいてもらえます?」

憂「……分かりました」

梓「……あなたとはまた会えるかもしれませんね」

そう言って梓ちゃんはソファーに座り目を閉じた。

私は、そのあとすぐに機関に連絡をし、梓ちゃんは機関直属の病院に運ばれていった。



147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:48:36.92 ID:vyghJhPTO

音楽室には私と澪さんだけがいた。

憂「澪さん、起きてください」ユサユサ

澪「ん……あれ?憂ちゃん?ここは……」

憂「音楽室ですよ。澪さんが入っていくのが見えたのでちょっと覗いてみたんです」

澪「なんで私、こんなところに……」

澪「ダメだ、思い出せない……」

憂「……もう下校時間です。帰りませんか?」

澪「ああ……」

憂が音楽室のドアノブに手をかけた。

澪「……なぁ憂ちゃん」



148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:49:02.32 ID:vyghJhPTO

憂「なんですか?」

澪「こんなこと、憂ちゃんに言うのもおかしいけど」

澪「私、夢を見てたんだ……律の夢」

憂「…………」

澪「律が私のことを呼びに来て、私は律と一緒に行こうとするんだけど
  梓が私の腕にしがみついて止めるんだ」

澪「行かないで、澪先輩、って」

澪「なんだったのかな……?」

憂「……気にすることはないですよ」

澪「え?」

憂「それは、ただの夢ですから」ニコッ



149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:49:24.32 ID:vyghJhPTO

―――パチッ

ここは、どこだ……?

辺りを見渡す。どうやら病室のようだ。

憂「梓ちゃん……!!よかった、目が覚めたんだね……!!」

梓「憂……?」

梓(私はなんでここに……?)

そして、全てを思い出す。

梓「澪先輩……!!澪先輩はどうなったの!?律先輩、律先輩は!?」

憂「梓ちゃん、落ち着いて。澪さんはちゃんと生きてるよ」

梓「……ホントに?」



150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:50:46.62 ID:vyghJhPTO

憂「うん。律さんは私が倒したからもう大丈夫だよ」

梓「私はなんで生きてるの……?確か、律先輩に殺されたはずじゃ……」

憂「梓ちゃん、律さんに胸を刺されたんだよね?それが運良く、急所を外れてたみたい」

梓「憂はどうやって律先輩を倒したの?」

憂「梓ちゃんが律さんに牙を何発を当てたでしょ?それで律さんはだいぶ体力を削られた」

憂「だから、私が倒すことが出来たんだよ」

梓「そうだったんだ……」

少し、律先輩と戦った時の記憶が曖昧だった。

でも憂が言うのであればその通りなのだろう。



151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:51:19.74 ID:vyghJhPTO

憂「今、先生よんでくるね」

憂「お姉ちゃん達、梓ちゃんのこととても心配してたから、お姉ちゃん達にも連絡してくる」

憂「お姉ちゃん達には梓ちゃんは精神的ストレスとか
  疲れが溜まって入院したってことで話してあるから」

梓「うん」

そう言って憂は病室を出ていった。

梓「そうか……澪先輩は無事なんだ……」

梓「よかった……本当によかった……」ポロポロ

そして、私は病室で泣いた。

病室には唯先輩、澪先輩、ムギ先輩がすぐに来てくれた。

唯先輩は私にいきなり抱きついて私の名前を呼びながら泣き出してしまった。



152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:51:53.51 ID:vyghJhPTO

澪先輩とムギ先輩もその光景を見て目に涙を浮かべながら笑っている。

そして、私もそんな澪先輩をみて……また、泣いてしまった。

―――その後のことを少し語ろう。

私が病院を退院してから数日後、澪先輩達が音楽室に来てくれた。

今まで待たせてごめん。私達、もう大丈夫だから。

音楽室にきて、澪先輩はそう言ってくれた。

そして、私達は学祭に向けて毎日遅くまで練習をしていた。

学祭を成功させて、天国にいる律に私達の歌を届けよう。それが私達が出来る唯一のことだ。

これも澪先輩が言ってくれた言葉だ。



153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:53:29.45 ID:vyghJhPTO

そして、私達は今、四人で駅のホームにいる。

律先輩のお墓参りに行った帰りだ。

カナカナカナ………

ひぐらしが鳴いている。

梓(夏も、もうそろそろ終りだな……)

その時、ふと私の携帯が鳴った。

梓(誰からだろう……?)

携帯の画面を見る。

梓(通知不可能?)

携帯電話の画面に写った通知不可能の五文字。



154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:53:49.85 ID:vyghJhPTO

私は先輩達から離れて、ホームの端に移動した。

そして電話に出る。

梓「もしもし……?」

?「もしも~し!!梓、私が誰だか分かる?」

この声は……!!

分からないはずがない。

忘れるはずがない。

だって、この声はついこの間まで毎日聞いていた声だ。



155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:54:39.99 ID:vyghJhPTO

梓「律……先輩……?」

律「そう、当ったり~~!!」

そんな……バカな……!!

もういなくなったはずじゃ……!!

梓「律先輩……なんで……」



156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:54:54.80 ID:vyghJhPTO

律「いや~いろいろあってまたこっちに戻って来ちゃった♪」

梓「なんで……戻ってきたんですか……?」

律「決まってるだろ?澪をこっちの世界に連れてくるためだよ」

梓「!!」

律先輩は続ける。

律「前は梓に邪魔されちゃったからな~」



157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:56:11.25 ID:vyghJhPTO

律「でも……」

途端に律先輩の声色が変わった。

律「でも、今度は負けない」

律「必ず、澪を連れていく」

梓「………!!」

私は声を張り上げた。

梓「律先輩……!!今、今どこにいるんですか!?」

梓「隠れてないで、姿を見せたらどうです!?」

律「……隠れる?何言ってんだ梓」

律「私はちゃーんと梓の目の前にいるよ」



158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:56:29.07 ID:vyghJhPTO

梓「!?」バッ

私は顔を上げて前をみる。

………いた。

線路を挟んで反対側。

向かいのホームに律先輩はいた。

あのカチューシャ、あの服装。

あれは間違いなく律先輩だ。



159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:59:27.90 ID:vyghJhPTO

梓「…………!!」

私はあまりの事に言葉を失った。

戻ってきた……。律先輩が黄泉返ってきた。

一度消された悪霊が黄泉返る。そんなこと、あり得るのか……?

アナウンス「間もなく、一番線を快速列車が通過します。
      危険ですので白線の内側にお下がり下さい。」

場内にアナウンスが流れた。

律「じゃあそういうことだから。またな~♪」

梓「待っ……!!」

ゴォォォーーー!!!!

私の目の前を列車が通り過ぎる。



160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 12:59:50.65 ID:vyghJhPTO

梓「…………」

向かいのホームに律先輩はもういなかった。

ツーッ、ツーッ、ツーッ……

私はすでに通話が切れた携帯電話を持ってその場に立ち尽くしていた。

そして、呟く。

梓「まだ、終わりじゃない……」





161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 13:02:08.20 ID:vyghJhPTO

これで終わりです。こんな稚拙な文章を読んでくれてありがとうございました。




162 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 13:02:57.12 ID:D9lqiTMC0

乙!面白かった。



163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 13:05:04.75 ID:9B2tWoC+0

面白かったぞー



164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 13:07:48.68 ID:Lgd6FcUv0

乙。一気に読めて面白かった



165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 13:18:26.12 ID:rvfh7iX70


これって喰霊?



166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 13:18:47.89 ID:jNzl20rII

おつ
ところでこんなに連投してさるくらわんの?





167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 13:52:30.32 ID:vyghJhPTO

コメントありがとうございます。

>>165 喰霊っぽくしようと思って書きました

>>166 お試し●を使ったので




172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 16:05:36.13 ID:J0NzglNTi

裏の私とかいうから裏不無かと思った





173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 16:33:50.47 ID:B678qHCV0

刀とか言い出したから心配してたけど結構面白かった



174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 16:41:00.31 ID:OHZr0li70

普通に面白かったw

喰霊とあとBLEACHがミックスした感じだな



175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 17:24:51.32 ID:mggAXZWgO

勝手に律殺すなよ…とか思ったけど読んでるうち夢中になってた
おつかれさん






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梓「まだ、終わりじゃない……」#後編
[ 2011/10/01 20:57 ] アクション | | CM(2)

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タイトル:
NO:4612 [ 2011/12/04 23:58 ] [ 編集 ]

容易に画が浮かぶ良いアクションやね

タイトル:
NO:5767 [ 2012/03/05 17:05 ] [ 編集 ]

すごい!続き気になるww

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