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澪「いつもありがとう」 【非日常系】


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1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 15:56:35.21 ID:2BF22lz10

2月14日の午前9時、小さな花屋の静かな店内に、

秋山澪という名の若くてとても美しい女性がいる。

澪「今日はバレンタインデー」

澪「お客さんいっぱい来てくれるかな」

澪「…」

彼女は花屋を持っているようなタイプの女性には見えない。

彼女の外見は、ファッションモデルやアイドルの外見との方が容易に結びつくだろう。





4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 16:01:31.20 ID:2BF22lz10

普段着を身につけている。

今日はバレンタインデーで、この日は伝統によって

男性が女性に花を贈らなければならないと決められている。

だから、ファッションモデルのような格好をしていたら不適切だろう。

澪「ふ~」

一年で最も忙しい日が始まる前のほんの少しの間、澪は考え事をしながら一人座っている。

この宇宙での自分の居場所について想いをめぐらしているのだ。

澪「わたしは何をしているんだろう」

澪「はぁ…」



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 16:06:50.68 ID:2BF22lz10

澪「あの時は…楽しかったなあ」

澪「みんなでお茶して…バンド組んでた」

澪「今は…」

彼女は、運命、あるいは何か全能な存在が自分に酷い仕打ちをしているだろうかと思う。

自分が人生で一番幸せだったと感じる時期を思い返して、

幸せを去らせるどんなことをしたのだろうかと考える。

澪「私は…」

澪「私は何もしてないんだ」

澪「してない。なにもしてないんだ」



8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 16:13:22.08 ID:2BF22lz10

澪「私はそんなに嫌な人間だったのか?」

澪「そんなはずは…」

澪「そんなはずは無いよな。今だって律たちとは続いてるし」

自分が他の人たちが嫌がるような女性だったか?

彼女はそうは思っていなかったが、

自分のことを判断する場合、必ずしも自分自身の意見は重要で無い。

それでも、かつて彼女と付き合った人たちが、

彼女の特徴のいくつかをとても魅力的だと思ったのは事実だった。

澪「よし!そろそろやるか!」



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 16:18:48.03 ID:2BF22lz10

忙しい一日が始まることが分かっていたので、
澪はこの自己評価はまた別の機会まで待たなければならないと判断した。

澪「あとはお店を開くだけだ」

澪「ふふ、可愛いお花もいっぱい用意できてる」

澪「今日は頑張らないとなー」

彼女は、これから始まる忙しい一日に向けて準備ができている。

バレンタインデーに仕事をするのはこれが初めてではない。
その日に求められる仕事は熟知している。

準備を整えるために、彼女はよく働いた。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 16:22:59.92 ID:2BF22lz10

澪「律来てくれるかなー」

澪「新しい男って…」

澪「私が見極めてやる、ふふ」

彼女の店はとても小さいが、律儀な常連客が何人かいる。

彼らの個人的な要望に全て応えるため、
完璧な花束を作るのに必要とされるあらゆるものについて、
最高のものを揃えた。

彼女にとって、彼らを喜ばせるのは容易いことだ。



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 16:29:49.42 ID:2BF22lz10

律は彼女の一番の友人だ。

明るく真っ直ぐな性格で、幼い頃から彼女を引っ張ってきた。

律「よっ!」

澪「律!!」

律「いやー、寒いね」

澪「あぁ…さぁ、入って入って」

律「お邪魔しまー…おぉ」

店内にも綺麗な花がたくさん用意してある。



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 16:35:24.88 ID:2BF22lz10

律「気合入ってんなー」

澪「ああ。ところで律、なんで今日は…?」

律「そうそう。今付き合ってる彼氏にさー」

律「渡そうと思って」

澪「普通は男から女なのに…ふふ、律らしいな」

律「だろー!びっくりしてくれるかなー」

澪「うん!きっと上手くいくよ」

澪は古くからの友人のために、特に心を込めて花束を用意した。

澪「どう?」

律「いい!!流石だな澪、センスあるよ」

澪「はは、でも代金はいただくからな?」

律「ひぇー」



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 16:47:56.61 ID:2BF22lz10

伝統とは破られるためにあるようなものだ。

彼女の店に来店した彼女の古くからの友人─律は、
初めてのボーイフレンドを驚かせたいと思っていた。

彼はいつも自分に優しくしてくれるから、自分も何かしてあげたい。

そんな気持ちで、彼に花束を贈るのだ。

律は信頼している一番の友人─澪に、人生で初めての機会を手伝ってもらおう。
なんとなく、律はそう思っていた。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 16:52:44.78 ID:2BF22lz10

一日は慌ただしく過ぎていく。

そろそろ閉店の時間だが、
まだもう一つ、応えなければならない注文がある。

澪(唯…本当に来るのか?)

澪(手紙は来てたけど…)

ガラッ

唯「澪ちゃん!!」

澪「お…待ってたよ」

唯「ごめん!!すっかり忘れてた!!」

澪「おいおい…しっかりしろよ」



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 16:59:50.57 ID:2BF22lz10

この唯と呼ばれた女性─彼女は、未だに姉妹で生活している。

澪「いい加減、唯も自立した方がいいんじゃないか?」

唯「うん…でも憂も一緒がいいって言うし」

澪(こんな姉だから心配なのは分かるけどな…)

唯「澪ちゃん?」

澪「ん、それでそれで?」

唯「憂がなんでもやってくれるしさあ…」

澪「はは…なんか羨ましいかも」

唯「そうだ!澪ちゃんもまた今度うちに来てよ!」

澪「…うん、ありがとう」



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 17:02:51.80 ID:2BF22lz10


唯「もうこんな時間だ~」

澪「すっかり暗くなったな」

唯「じゃ、澪ちゃんまた今度!」

澪「うん!…って待て!」

唯「ふぇ?」

澪「何のために来たんだよ」

唯「あ!!!そうだった」

澪「もう…」



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 17:13:34.17 ID:2BF22lz10


いつもだらしない姉の面倒を見ているだろう妹の苦労を想い、
澪はとても綺麗で美しい、自分でも心からそう思える花束を用意できた。

唯がいつも元気な笑顔でいれるのも、妹─憂の存在があってだろう。

しかし、今日花束を渡す唯も何だかんだいって考えているのだろう。

よく出来てる。

澪(でも、私の友人は変わってるのばっかり!)

花を選んでいる時の澪の顔は、とても嬉しそうだった。



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 17:16:26.82 ID:2BF22lz10

唯「澪ちゃん!いつもありがとう!!」

澪「うん。たまには憂ちゃん手伝ってあげなよ」

唯「うん!!じゃあね!」

澪「またね」

────

唯が店を出て、ドアのベルが最後に鳴ると、澪は店を閉めた。

ようやくバレンタインデーが終わった。

彼女はよく働き、皆を喜ばせた。



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 17:23:53.19 ID:2BF22lz10

澪「今日はよくできたなー」

澪「律、唯にも会えて良かった…」


もし彼女が、それを数学者のように考えたのならば、

実際にはその日にあった人の2倍の数の人を喜ばせたことになる。

というのも、彼女のお客さんはそれぞれ、彼女が生き生きとさせた花束を、

自分の愛する人に贈るのだから。

しかし、彼女は数学者ではなく花屋だったので、

今日自分の仕事をとても上手くこなしたということで、嬉しく思った。


澪「よし、片付けよう」



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 17:28:07.56 ID:2BF22lz10

澪「あ…」

店の片付けをしている時、澪は唯の花束で店に残っていた
切りたての花を全部使い切ってしまったことに気づいた。

1本のバラをのぞいては。

それは赤いバラだった。

澪「バラかぁ…」



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 17:34:02.69 ID:2BF22lz10

その日に作られた花束のいずれにも違いを生じさせるほどには、
赤みが十分でなく、茎の長さが十分でなく、香りが十分では無かった。

それでも、バラはバラだった。

澪「…」

澪「私は…」

彼女はそれを手に取り、目を向け、においをかぎ、そして気づいた。

澪「さびし…」

自分の才能を使って、あんなに多くの人たちに喜びをもたらしたのに、
自分はまたもや一人でアパートへと帰って行くのだということに。

突然、その日の早くに始めていた自己評価が前に中断されたところから再開された。



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 17:40:25.78 ID:2BF22lz10

澪「私はなんで…」

彼女は、彼女を見た人ならば誰でもそう思うように、

どうして自分は友人であれ、恋人であれ、異性を、

引きつけることができないのだろうかと思った。


澪「律がいる。軽音部のみんなもいる。でも今は…」


自分は美しすぎるのだろうか?

自分は頭が良すぎるのだろうか?

自分は創造的すぎるのだろうか?

自分の成功は相手を怖気づかせるのだろうか?


澪(違う、違う…)



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 17:45:18.54 ID:2BF22lz10

彼女の考えはとめどなくめぐった。

澪「私は…」

澪「私は、なにもおかしくないよね…」

澪「なにをしてたんだろう…」

澪「私は私なんだ」

彼女は、自分にはおかしなところは一切無いことに気づいた。

彼女はもし自分におかしなところがあったとしても、

それは自分が変えるようなことでは決してないとわかっていた。



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 17:51:01.38 ID:2BF22lz10

毎日鏡を見る度に、自分の目に映る姿を完璧にでは無いにしろ気に入っていた。

人生を振り返るとき、後悔はあったが、何一つ変えたいとは思わなかった。

過去を変えるということは、今の自分を変えることであり、
それは彼女が払うのをいとわないような犠牲では無かったのだ。

再び彼女は、いささか足りないところのあるバラに目をやり微笑んだ。


澪「私も、同じだ」



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 17:54:52.39 ID:2BF22lz10



店の片付けを終えた後に、彼女は最後のバラを手に取り、

最後のバレンタインデー用の花束を作った。


ようやく店を後にする時、彼女は自分の作ったものを手に取り、

店のドアの一部である窓ガラスに映った自分の姿に目をやり、

目に映った姿を気に入って、微笑み、そしてささやきかけた。


「バレンタインデーおめでとう」


「いつもありがとう、私」







33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 17:59:06.15 ID:2BF22lz10

adapted from Brian L. Artis, The Last Rose


最後まで読んで頂いた方、ありがとうございました




38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 18:18:35.17 ID:4aX1bbjmP

すごくよかったよ、乙

以下勝手な解釈だけど
前半から含みのある文で読んでてわくわく
バラに澪自身をダブらせてたり
ところどころあるちょっと変わったナルシズムの描写
まじでよかった

しゃしゃってスマヌ





39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 18:33:41.60 ID:2BF22lz10

ありがとう

33で書いた通り、これは私の和訳です
最後も実はありがとうじゃなくて「i love you」で終わります
日本語で「愛してる」は違和感バリバリなので変えたものやっぱだめですね

キザもかっこ良く思える英語凄い!

おわり




40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/08(日) 18:36:48.37 ID:4aX1bbjmP

またなにか頼むよ、くどいだろうけど再び乙!






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澪「いつもありがとう」
[ 2011/10/01 21:06 ] 非日常系 | TheLastRose | CM(0)

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