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梓『律先輩みたいなお姉ちゃんもアリかな…と』#前編 【非日常系】


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梓『律先輩みたいなお姉ちゃんもアリかな…と』#前編
梓『律先輩みたいなお姉ちゃんもアリかな…と』#中編
梓『律先輩みたいなお姉ちゃんもアリかな…と』#後編




4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 00:22:00.06 ID:POxT3QJqP

梓「律先輩がジュリエット……ぷっ」

律「中野ぉ!!」

こんな事、澪先輩やムギ先輩には言えないだろう。
こんな風にからかえる先輩は彼女だけ。
なんとなく親しみやすさを感じる。
なんでだろう…


律「こんにゃろう!お仕置きだー!」グリグリ

梓「いやー!やめてー!」


お互い軽口を言える関係。
こうなるとは正直思いもしなかった。





8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 00:31:27.67 ID:POxT3QJqP

家では一人っ子の私。
休みの日になるとやることがない。
姉妹でもいれば遊び相手になるけど…
こういう時、お姉ちゃんがいる憂をうらやましいと感じる。


梓「……」


暇だ。
せっかくの休みなのに予定がない。
憂は唯先輩の相手、純は…よく分からない。
とにかく私はやることが何もなかった。



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 00:39:33.38 ID:POxT3QJqP

梓「……」


ギターの練習をしよう、時間は無駄にできない。
私はケースからギターを取り出しさっそく練習を始める。

ジャーン…


梓「あれ…音が変」


弦が古くなっていた。
そろそろ代えなければ。
しかし張替え用の弦を探しても見つからなかった。


梓「しかたない、買いに行こう…」


これで暇が潰せると思えば面倒とは感じない。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 00:49:36.70 ID:POxT3QJqP

楽器屋についた。
弦を探すついでに辺りをうろつく。

梓「うーん…なんかよさげなエフェクターが…」

「あれ?梓じゃん」

梓「!」


聞き覚えのある声。
少し心臓がドキッとする。
会いたくはなかった。
実はあまり慕っている人ではないからだ。


律「よっ」



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 00:56:22.76 ID:POxT3QJqP

梓(うわぁ…)

律「なんであからさまに嫌そうな顔するんだよ」

梓「…してませんよ」

梓「はぁ…」

律「なんでため息してんだよ!?」

梓「律先輩は何でここに来てるんですか?」

律「うん?ちょっと暇だからブラブラしてただけだけど」

梓「…受験生なのにいいんですか?」

律「ちゃ、ちゃんと勉強もしてるわい!」



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 01:05:11.62 ID:POxT3QJqP

律「そういう梓は何やってるんだよ」

梓「弦を買い換えようと…」

律「ふーん…」

梓「ていうか、私のことはどうでもいいじゃないですか」

律「いや、気になってさ」

律「暇なら一緒に遊ぼっかな~って」

梓「…私とですか」

律「うん」

梓「……」



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 01:12:23.68 ID:POxT3QJqP

律先輩は軽音部ではムードメーカー的な存在だ。
社交的で誰とでも仲良くすることができ、場の雰囲気を明るくしてくれる。
正直、そういう所は尊敬していた。

けど普段の彼女は大雑把で、適当で…
あんまり好きじゃない。


梓(どうせ遊びに誘ってくれるのなら澪先輩がよかったのに…)

梓「……律先輩一人ですか?」

律「そうだよ」

梓「うーん……」

律「なんだよぉ、嫌なのかよ?」

梓「いや、そういうわけじゃ…」


本音は言えないのでとりあえず誤魔化した。



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 01:19:11.12 ID:POxT3QJqP

律「遊びに行こうよ~、あずにゃ~ん」

梓「律先輩がそれ言うの、やめてください」

律「ひどっ!?」

梓「……」

よくよく考えてみれば、私は彼女のことをあまり知らない。
部活での付き合いはあるけど、それ以上のことは他の先輩に比べてないし。
そんな状態で嫌いって思うのはさすがに失礼なのでは?

梓「う~ん……」

律「梓?」

梓「…分かりました、私も暇だし付き合います」

律「それでこそ梓!」

とりあえず今日一日、田井中律という人間を観察しよう。
そしてどういう人なのか確かめないと。
好き嫌いになるのはその後だ。



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 01:54:11.80 ID:POxT3QJqP

律「よーし、じゃあゲーセンにでも行くか!」

梓「どうぞ、任せます」

律「音ゲーやろうぜ」

梓「音ゲー?」

律「知らないのか?リズムに合わせてボタン押したりするやつ」

梓「太鼓の達人みたいなものですか?」

律「そうそう、それそれ」



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 02:05:53.61 ID:POxT3QJqP

ゲームセンターへ着いた。
色々なゲームがある。
すごい雑音。
普段こういう所にはあまり来ないので新鮮な光景だ。

梓「律先輩はここによく来たりするんですか?」

律「ん?まぁな」

梓「ふーん……何か毎日通ってそうですもんね」

律「どういう意味だ?」

梓「いえ…別に」

不良っぽいから。
なんてことは言えなかった。
行ったらどういう反応するのかは興味あったが。

怒るのか?それとも笑って流してくれるのか?
私はまだ彼女のことをよく知らないから分からない。



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 02:16:39.81 ID:POxT3QJqP

律「まずは私からだな」

目的のゲームにたどり着くと、
律先輩がさっそくお金を入れてやり始めた。

律「梓はこういうのよく分からないだろ?ちゃんと見てろよ」

梓「参考にさせてもらいます」

ドラムを模したゲーム…私はこれがどういうものか知らない。
そんな私に、どうやら気を使ってくれたみたいだ。
少し感心した。

律「よっ、ほっ…」

リズムよくスティックを叩く先輩。
ちょっと凄いと思ったが…

律「あっ!わわっ!!ちょっと!?」

梓「何やってるんですか…」

律先輩のリズムはしだいにズレて、
最終的にはあまり高くないであろう得点になった。



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 02:25:36.17 ID:POxT3QJqP

梓(かっこわる…)

律「いやー、ははは…いつもこんなんじゃないんだけどな」

照れくさそうに笑う先輩。
けど私にはその言葉が言い訳っぽく聞こえて、好印象ではなかった。

律「ほら、梓もやってみなよ」

梓「……」

そう言われるとスティックを渡された。
自分でも少し自信はあった。
律先輩がやってるところを見てると、簡単そうに思えたからだ。

ドラムはやった事はないけど、しょせんはゲーム。
大したことはないだろう。
これで先輩より高得点を取ったらどんな顔をするのか…
想像しただけで、ちょっと不敵な笑みをこぼした。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 02:33:45.63 ID:POxT3QJqP

梓「あ、あれ…?」

私が抱いていた自身はあっという間に崩れた。
やってみると意外に難しい。

梓「あっ…あぁっ!?」

律「ほらほら、しっかりしろよ」

梓「分かってます!」

ずれたリズムをなんとか修正しようとする。
だんだんコツもつかめてきた。
かと思うとゲームが終わる。

梓「あぁっ…」

律「おっ、初めてにしては中々良い点数じゃん」

梓「……もう一回やってもいいですか?」

律「え?いいけど」

せっかく慣れてきたのに、このまま引き下がりたくはない。
私は再びゲームにお金を入れた。



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 02:38:41.04 ID:POxT3QJqP

30分後。

梓「よっ、とっ…」

律「あぁ、そこもうちょっと早く」

梓「分かってます!」

1時間後。

律「だいぶ慣れてきたじゃん」

梓「当然です、次はもっと難しいやつにチャレンジします」

律「えっ、まだやんの?」

2時間後。

梓「えいっ、よっ」

律「おーい、梓ー…」

梓「話しかけないでください!集中が切れます!」

律「はい……すいませんでした」

梓「はっ、そりゃ!」

律(いつまでやるんだよ…)



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 02:50:34.92 ID:POxT3QJqP

梓「やった!クリアできました!」

あれから何回プレイしたのだろう。
気づいたら腕がかなり上達していた。

梓「先輩より高得点ですよ」

誇らしげに先輩に自慢してみた。
律先輩のちょっと悔しがる顔が見てみたかったのだが…

律「おめでとさん、よく頑張ったじゃん」

梓「あっ…」

悔しがるどころか褒めてくれた。
しかも頭をナデナデして。
これじゃあ肩透かしをくらったどころか、むしろ私が悔しい。
本当だったら律先輩の残念そうな顔を見れたのに…

けどナデナデされること自体は嫌ではなかった。
悔しいような、嬉しいような…複雑な気持ちだ。

律「それより梓…お前財布の中身は大丈夫か?」

梓「えっ……あっ」

どうやら所持金のほとんどがゲームに吸われてしまったようだ。



37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 03:02:41.64 ID:POxT3QJqP

梓「すいません…おごって貰っちゃって」

律「気にすんなよ」

ゲームセンターの帰りに、私たちはハンバーガーショップに寄った。
私はお金がないので遠慮したが、先輩がどうしてもと言って連れてきた。

梓「明日ちゃんとお返しします」

律「だからいいって、先輩なんだからおごらせろよ」

梓「はぁ…」

律「おっ、期間限定メニューだってさ。これ食おうぜ」



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 03:13:48.69 ID:POxT3QJqP

セットメニューを受け取ると、私たちは席についた。
ポテトをおぼんの上にばら撒いて食べやすいようにする。

律「それにしても、ずいぶんと夢中でやってたな」

梓「ま、まぁそこそこ楽しかったですから」

律「かなり楽しかった、だろ?じゃなかったらお金が尽きるほどやらないもんな」

梓「うっ…」

律「今度本物のドラムやってみろよ、そっちも楽しいぞ」

梓「……考えておきます」



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 03:40:26.30 ID:POxT3QJqP

律「…そういえばさ」

ハンバーガーを口に含みながら、律先輩がしゃべり始めた。
行儀が悪いですよ、と言おうとしたがどうせ聞く耳を持たないだろう。
そのまま流すことにした。
一応これは減点対象だが。

梓「なんですか?」

律「こうやって二人っきりになるのって珍しいよな」

梓「そうですね…」

律「本当はもっと行きたい場所があったんだけど、梓が音ゲーで満足しちゃったからさ」

梓「…すいませんでした」

律「いや、まぁ満足してくれればそれでいいんだけど」

梓「そうですね、もともと誘ってきたのは先輩ですし」

律「切り替え早いな…」



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 03:45:29.59 ID:POxT3QJqP

梓「……」

律「……」

しばらく沈黙が流れる。
いざこういう時間を共にすると、何を話していいか分からなくなってしまった。
とりあえず二人とも目の前にあるハンバーガーを黙々と食べている。

律「…あっ、そうだ」

梓「はい?」

律「もうすぐ文化祭だな」

梓「そういえば…そんな時期ですね」

律「梓のクラスは何やるか決まったのか?」

梓「いえ…先輩たちは?」

律「私たちもまだ」



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 03:49:19.35 ID:POxT3QJqP

梓「まぁクラスの出し物も大事ですけど…軽音部だってライブやるんですからね?」

律「分かってるって」

梓「明日からちゃんと練習するんですよ」

律「うーん………」

梓「……」

律「はい!」

梓「何ですかその間は…」



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 04:00:47.43 ID:POxT3QJqP

ハンバーガーも全部食べ終わり
そろそろ時間なので私たちは家に帰ることにした。
横断歩道につき、お互いここで分かれることにする。

律「送ってやろうか?」

梓「大丈夫です」

律「遠慮するなよ子猫ちゃん、夜道に一人は危険だぜ?」

梓「誰が子猫ちゃんですか、それにまだ夜じゃないです」

律「いやー、私としては梓のことが心配でさ…」

梓「気遣いはありがたいですけど、私なら大丈夫ですよ」

律「本当か?」

梓「はい…それより先輩こそしっかりしてくださいね。明日からちゃんと練習すること」

律「はーい」



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 04:12:34.26 ID:POxT3QJqP

梓「じゃあ私はこれで…」

律「あ、あぁ…車に気をつけるんだぞ」

梓「分かってます、さようなら」

律「…お疲れ」

そのまま私たちは反対方向へと進んだ。
家に帰ったらどうしようか、そんな事を考えながら歩を進める。

そういえば中途半端な時間に食事を取ってしまった…
母親に夕飯はいらないとメールしておかないと。
そしてバッグから携帯を取り出そうとした、その時
大切なことを思い出した。

梓(あっ…律先輩にまだ今日のお礼言ってない)



51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 04:16:06.73 ID:POxT3QJqP

しまった、と思った。
一応今日付き合ってもらったんだからお礼ぐらいはしないと。

振り向き、律先輩を探す。
…いない。
もう姿が見えないところまで行ってしまったか。

梓「……」

まぁいい、メールですませよう。
携帯を取り出し、律先輩へメールを送ろうとするが…

梓「あっ……電池切れてた」



53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 04:24:54.14 ID:POxT3QJqP

家に到着し、自分の部屋に入る。
疲れた…
私はすぐにベッドへと倒れこんだ。

梓(携帯充電しておかないと…)

梓「……」

そういえば何か大切なことを忘れているような…

梓「あっ!ギターの弦買い忘れた!!」

大失態だ…明日練習があるのに。

梓「もー…律先輩と遊んでたからぁ…」

それでも自分に非があることぐらいは分かっていた。
けどイライラしてしまい、つい誰かのせいにしてしまう。

結局、その日は律先輩にメールを送ることはなかった。
送る気分になれなかった。

梓(明日直接言えばいいや……ていうか明日の練習どうしよう)



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 04:32:34.29 ID:POxT3QJqP

律「うん、それで今日梓と遊んでさ…」

夜、私は部屋で澪と電話で話していた。
なんとなく寂しくて話し相手が欲しかったから、私が電話したのだ。

律「色々連れて行きたかったんだけど、上手くいかなくて」

澪『ふぅん…律にしては珍しいな』

律「なんかさぁ…私って梓にあまり好かれてないじゃん?」

澪『そうかな?』

律「そうだよ……お前に比べれば全然」

澪『私と比べられても…』

律「だから今日仲良くなろうと頑張ったんだけどさ……なんか力入っちゃって逆にダメダメで」



58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 04:38:41.56 ID:POxT3QJqP

律「ドラムのゲームでもミスってかっこ悪いところ見せちゃった」

澪『律っぽくないな』

律「本当だよ…どうしたんだろう」

澪『…でも、言っておくけど梓はお前のこと嫌いではないと思うぞ?』

律「そうかなぁ…」

澪『そうだって、自信持っても大丈夫だよ』

律「…ま、澪がそういうならそうなんだろうな」

澪『もちろん』

律「しかし澪に励まされるとは…一生の不覚」

澪『おい!なんだそれ!?』

律「あはは、冗談だって」

澪『まったく……もう遅くなるから切るぞ?』

律「うん、じゃあなー」



60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 04:45:52.96 ID:POxT3QJqP

携帯を切り、ベッドに放り投げた。
私もベッドに飛び込む。
そしてその投げた携帯をジーッと見つめている。
梓からの電話なりメールを待っていた。

律(お礼ぐらい言ってもらえると思ってたんだけど…ダメだったかな)

今日一日のこと思い出した。
何がまずかったのだろう。
何か気に障ることでもしたのだろうか。
いくら考えても分からなかった。

律(あー…失敗したのかなこりゃ)

律「……」

律(それにしても、梓のことだと色々悩んじゃうな…)

律(なんでだろう…)

律「……」

そのまま瞳を閉じて、眠りについた。



81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 13:24:08.92 ID:POxT3QJqP

朝、目が覚めベッドから出る。
頭はまだボーっとしている。

「……」

昨日のことを思い出した。
彼女と遊んでいた時間。
楽しかったのかつまらなかったのか分からない。
けど、新鮮な感覚だった。

「……」

そろそろ学校の時間。
今日はどんな顔をして彼女に会えばいいのだろうか。



85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 13:37:55.09 ID:POxT3QJqP

純「律先輩と遊んだ?いいな~楽しそうで」

梓「でもさ、そのおかげでギターの弦買い忘れちゃって」

朝の休み時間、授業が始まるまでいつもの友達とおしゃべりをする。
この時間は気楽に過ごせて好きだ。

純「あぁ、弦ならジャズ研で余ったやつあるよ」

梓「本当?」

純「うん、なんだったらあげてもいいけど」

梓「ありがとう!純!」



86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 13:50:36.20 ID:POxT3QJqP

放課後、授業が終わると急いで音楽室に向かった。
弦も張り替えたし準備は万端だ。

梓「こんにちは」

唯「おっ、あずにゃんいいところに来たね~。一人で暇だったんだよぉ」

部室の扉を開けると、ソファの上でゴロゴロしている先輩が迎えてくれた。
相変わらずだらしないが、この人らしいともいえる。

梓「唯先輩一人なんですか?」

唯「うん、みんな掃除や色々用事があってね」

梓「そうですか…」

唯「それよりあずにゃん」

梓「なんですか?」

唯「あずにゃんもゴロゴロしようよ~」

梓「結構です」



87 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 13:59:12.39 ID:POxT3QJqP

唯「えぇっ!?なんで~」

梓「ダラダラしてないで練習してください」

唯「うーん…もうちょとダラダラしてから」

梓「はぁ…」

まったく、これだから唯先輩は。
呆れながらも、唯先輩だからしょうがないと思い少し笑ってしまった。

唯「ほら、あずにゃんもこっちにおいで」

梓「えっ…」

唯先輩は私の腕をひっぱる。
そのまま先輩の上に覆いかぶさってしまった。



92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 14:06:15.01 ID:POxT3QJqP

梓「えっ…唯先輩?」

唯「えへへ~」

先輩が私のことを強く抱きしめる。
すこしドキドキした。

ただ唯先輩にとってこれはコミュニケーションの一つであり
特別なことではない。
私もそこは理解していた。

梓「唯先輩、もう話してください」

唯「もうちょっと」

梓「もう…」

その時、ガチャッと音楽室の扉が開く音がした。



93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 14:11:09.74 ID:POxT3QJqP

律「おーっす…」

梓「!」

律「あっ…」

唯「りっちゃんいらっしゃ~い」

律「あ、あぁ…」

梓「……」

律「…お前らは相変わらず仲良いな~」

唯「えへへ」

梓「……」

なぜか急に恥ずかしくなった。
こんな事、軽音部じゃ当たり前の光景なのに。
律先輩と顔を合わすことができない。
なんでだろう…



95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 14:22:13.92 ID:POxT3QJqP

唯「澪ちゃんとムギちゃんは?」

律「ムギはまだ掃除、澪は進路調査とかでもうちょっと遅くなるって」

唯「そっかぁ」

律「はぁ~疲れた、あつぃもちょっと休もうかな」

梓「そ、そんなことより早く練習を!」

律「あっ、うん……」

唯「え~?もうちょっとこうやってようよぉ」

唯先輩が力強く私を抱きしめた。

梓「もう、いい加減離してください!」

唯「ええではないか~ええではないか~」

律「……」



98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 14:34:48.20 ID:POxT3QJqP

梓「り、律先輩からもなんか言ってくださいよ」

律「…別にいいんじゃない?」

梓「えっ…」

律「せっかくなんだからもっと楽しんじゃいなさいよ、お二人さん♪」

唯「では遠慮なく♪」

梓「ちょ、ちょっと律先輩!?」

律「さ~て、澪たちが来るまで漫画でも読んでようかな~」

梓「……」


昨日真面目に練習するって言ったのに…
なんだか裏切られた気分だ。



101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 14:55:19.28 ID:POxT3QJqP

結局その後、澪先輩とムギ先輩が来て。
いつも通りミーティングをしていつも通り少し練習をしてその日は終わった。
満足いく練習ができなくて、私は少し不機嫌になる。

梓「むぅ…」

律「どうしたんだ?梓」

梓「先輩、昨日ちゃんと練習するって言ったじゃないですか」

律「あぁ…あれね。まぁ明日からはちゃんとやるよ」

梓「今日やらない人が明日やるとは思えません」

律「…おっしゃるとおりで」

梓「しっかりしてくださいよ、部長なんですから」

律「あはは、申し訳ありません」

梓「はぁ…」

こういう適当な所があるから好きになれないんだ。
律先輩らしいって言っても、私は納得できない。
その性格をなんとかしてほしい…



102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 15:03:30.82 ID:POxT3QJqP

律「……」

澪と分かれた帰り道、私は一人で歩いていた。
少し落ち込んでいる。

律(本当は梓の言うとおりにやりたかったんだけどな…)

律(その方が梓も喜ぶと思ってたし…)

律(けど……)

律「……」

唯と梓が抱き合ってるところを思い出した。
あれは唯のスキンシップだって分かっていたけど…なんか悔しい。

私は私なりに頑張って梓と仲良くなろうとしてるのに、唯はあんなにも簡単にくっつけるなんて。
悔しくて、モヤモヤして…そのせいで練習する気も起きなくて。
つい意地悪なこと言ったりして……本当はそんなつもりじゃないのに…

律(また嫌われちゃったかな……)



104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 15:14:27.62 ID:POxT3QJqP

梓「……」

家に帰り、自分の部屋でくつろぐ。
ご飯も食べたしお風呂も入った。
明日の予習も、ギターの練習も終わった。

やることがない…

憂に適当なメールを送ってみたが返信はまだ来ていない。
唯先輩の相手でもしているのだろう。

梓(一人っ子はこういう時つまんないからいやだ…)

梓「……」

暇だからベッドでゴロゴロしながら携帯をいじっている。
その時、あることに気づいた。

梓(あっ…律先輩に昨日のお礼まだ言ってない…)



105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 15:19:11.28 ID:POxT3QJqP

梓(…今からメールしようかな)

梓(でも今さらって感じがするし…)

梓「……」

少し考える。
…そういえば律先輩の方は昨日した約束を破ったじゃないか。
真面目に練習するって言ったのに…

梓(なんか…もうどうでもいいや)

私は携帯を閉じた。
そして律先輩への不満を頭の中で爆発させる。



107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 15:31:48.94 ID:POxT3QJqP

どうして部長なのにもっとしっかりしてくれないのだろう。
どうしてちゃんと練習しようとしないのだろう。
どうして私の思い通りにしてくれないのだろう。

梓「……」

最後の不満は不満なのか?
ちょっと違う気もするが…

梓「……」

でも悪い人ではない、それは分かっている。
彼女なりに気を使ってくれるし、優しくしてくれるし。
昨日も私のために色々としてくれた。

今まで彼女とは絡みたいとは思っていなかった。
無意識のうちに避けていたのかもしれない。
嫌いではないのに…

梓「……」

そう、嫌いではない…律先輩のことは嫌いではないんだ。
嫌いではないが…なぜだか彼女に対しては不満ばかりが募る。
どうしてだろう…

梓「……」



110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 15:42:44.81 ID:POxT3QJqP

梓(なんか昨日からずっと…律先輩ことばかり考えてる…)

梓(変なの…)

自分でも分からなくなってきた。
先輩と仲良くなりたいのか、どうなのか。
好きなのか嫌いなのか…

梓「もっとしっかりやってくださいよ、先輩…」

部屋で一人呟く。
不安定な気持ち。
律先輩がこのまま不真面目だと、彼女に対して本当に失望しそうで怖くなった。

梓「私だって嫌いになりたくないんですから……理想的な先輩になってくださいよ」

理想的な先輩……なぜ律先輩にこんなことを求めているのだろう。
だんだん自分の気持ちが混乱してくる。
何がなんだか分からない。
もう寝よう。



117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 17:49:21.80 ID:POxT3QJqP

律「なんだかさー、最近人間関係がうまくいってない気がするんだよなぁ…」

紬『りっちゃんが?』

今日はムギと電話している。
梓との関係でモヤモヤしていたので思い切って相談することにした。
相手が梓ということは秘密にしているけど。

律「なんとか仲良くなるように頑張ってるんだけど、上手くいかなくてさ…」

紬『珍しいわね、りっちゃんなのに』



118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 17:58:01.21 ID:POxT3QJqP

律「なんかその言葉、澪にも言われた気がする…」

紬『だって私が見る限りに、りっちゃんて意識して誰かと仲良くしようとしないでしょ?』

律「は?」

紬『みんな気づいてたら、りっちゃんと友達になってたじゃない』

律「……そう?」

紬『えぇ…だからいつも通りのりっちゃんのままで、その人と向き合えばいいんじゃないかしら?』

律「うーん……でもいつも通りの私を向こうが嫌ってるような…」

紬『…誰かに嫌われないように生きるのって、辛くない?』

律「……」

紬『もしりっちゃんが私に嫌われないように振舞ってたら、私は嫌いになっちゃうかな~』



121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 18:11:05.06 ID:POxT3QJqP

律「えっ…なんで」

紬『だって、それじゃあ私に心を開いてくれる事にはならないじゃない?』

紬『そんな人とは友達になりたくないわ』

紬『もしそれで友達になっても、お互い気を使って疲れるだけだと思うし』

律「……」

紬『りっちゃんはどうしたいの?その人と仲良くなりたいんでしょ?』

律「うん…」

紬『だったら、ありのままの自分でぶつかる方がいいんじゃないかしら』

紬『本当の自分を見せなきゃ、その人だって心を開いてくれないわよ?』



122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 18:15:08.79 ID:POxT3QJqP

律「……」

紬『大丈夫、素のりっちゃんを嫌う人なんていないから』

律「……本当?」

紬『えぇ、もちろん』

律「…ありがとうムギ、なんか楽になったよ」

紬『ふふっ、どういたしまして』

律「そうだよな…私らしくないよな…」

紬『ところでりっちゃん』

律「ん?」

紬『その人って…男の人?』

律「は、はぁ!?なんでそうなるんだよ!」



123 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 18:20:08.78 ID:POxT3QJqP

紬『だって…好きな人の前で本当の自分をさらけ出せないなんて…』

紬『まるで恋する乙女みたい///』

律「違う違う違う!!全然ちがう!!」

紬『でもその人のことで最近は頭がいっぱいなんでしょ?』

律「うっ…いやそうだけどさ…」

紬『それに嫌われないように頑張るだなんて……恋してるとしか…』

律「ち、違うって!!」

紬『もう…りっちゃんたら///』

律「あぁもう!電話切るぞ!!」

紬『あっ、りっ…』

電話を切った。



126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 18:27:13.09 ID:POxT3QJqP

律「はぁ…相談する人選ミスったか」

律「私が梓に恋なんて…」

確かに梓はかわいい。
ちっちゃいし、ネコ耳が似合うし。
ちょっと生意気なところもいい。

律「だからって、相手は女で後輩で恋なんて飛躍した話…」


唯《え~?もうちょっとこうやってようよぉ》
梓《もう、いい加減離してください!》
唯《ええではないか~ええではないか~》


律「……」


ふと部室であった出来事を思い出した。
なぜか心がチクチクする。



128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 18:33:03.89 ID:POxT3QJqP

律「…いや、ないない」

律「ありえないって…ははっ」

律「……」

とりあえず、明日からはいつも通りの自分で梓に会おう。
あくまで私は部活の先輩として仲良くなりたいだけだ。
決して特別な感情で動いてるわけない。
そんなことはありえない。

律「ありえねぇーーー!!」



聡「姉ちゃんうるさい」



131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 18:58:05.05 ID:POxT3QJqP

夜が過ぎ、朝を迎えた。
今日も学校に行き授業を受ける。
そして放課後は部活だ。

梓「はぁ…今日こそちゃんと練習をしたい」

音楽室の扉を開けた。

梓「こんにちは…」

律「よっ、梓」

梓「あっ…」



132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 19:06:44.91 ID:POxT3QJqP

まさか律先輩いるとは思わなかった。
ちょっとドキッとする。

梓「律先輩一人ですか…?」

律「そだよー」

梓「なんか困ることでもあるのか?」

梓「いえ…」

困ることは…ある。
昨晩悩んで以来、律先輩とどう接すればいいか分からない。
なぜか変に意識してしまう。



136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 19:29:14.06 ID:POxT3QJqP

梓「……」

律「……」

梓「……」

律「おい!」

梓「な、なんですか?」

律「ちょっとは不思議がれよ!勉強してる私をさ!」

梓「えっ…」

よく見れば律先輩は机に教科書を広げていた。
確かに珍しい光景かもしれない。



138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 19:33:32.71 ID:POxT3QJqP

律先輩でも勉強するんだ。
やっぱり三年生だなと感心した。

梓「そろそろ受験ですもんね」

律「いや、今日の授業寝てて聞いてなかったからその復習だけど?」

梓「……」

前言撤回。
やはり適当な人だ。

梓「はぁ…」

律「なんだそのため息は!」

梓「呆れて何も言えないため息です…」



139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 19:38:24.45 ID:POxT3QJqP

律「ひどいわ中野さん!私こんなに頑張ってるのに!」

梓「はいはい…」

律「こう見えても私、東大を目指してるのよ?」

梓「はい、そうですか」

律「適当に流すなー!」

梓「律先輩は全国の東大を目指してる人たちに対して失礼ですよ」

律「まともな反論!?」



141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 19:48:08.35 ID:POxT3QJqP

律「くそぅ、澪なら愛ある突込みで返してくれるのにさ」

梓「……」

澪先輩と比べられても困る。
あの人は私の憧れ。
美人で、優しくてかっこよくて…
律先輩の扱いも上手い。

……あれ?
最後のは尊敬するべきところなのか?

律「もっと、突っ込みをするのならビシッっと」

梓「澪先輩に頼んでください。私じゃ無理です」



143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 19:57:38.40 ID:POxT3QJqP

律「突っ込みもできないで軽音部を生き残れると思ってるのか!」

梓「そんな大げさな…」

律「お前だって澪に憧れてるんだろ!?」

梓「な、なんでそれを!?」

律「澪以外みんな気づいてるよ?」

梓「うぅ…」

律「なら、ちゃんとした突っ込みもできないとな」

梓「それとこれとは話が違うと思います…
  ていうか澪先輩の突っ込みには別に憧れてはないし」



144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 20:02:23.43 ID:POxT3QJqP

澪「お待たせー」

梓「!」

音楽室に澪先輩が入ってきた。

律「いいか梓、ちゃんと澪の突っ込みをお手本にしろよ?」

梓「はぁ…」

律先輩はヒソヒソと私に話しかけた。
だけどそんな事を言われてもどうしろと…

律「よう、澪」

澪「なんだ?」



145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 20:07:40.78 ID:POxT3QJqP

律「今日出された宿題みせて」

澪「まだやってるわけないだろ…」

律「じゃあ私の分も家でやってきて」

澪「誰がやるか!!」

律「いだっ!?」

ボカッ、と鈍い音がした。
律先輩が澪先輩に殴られたのだ。

律「ど、どうだ……これが澪の突っ込みだ…」

梓「たんこぶ出来ちゃってるじゃないですか」

律「お前もこれぐらい出来るよう頑張れよ」

梓「律先輩ってドM?」

律「違うわい!」



147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 20:26:12.96 ID:POxT3QJqP

澪「まったく、もうすぐ受験なんだぞ?」

律「はい、しゅみましぇん…」

梓「……」

今日も変わらず律先輩はうっとおしい。
相手をするのは疲れて面倒だ。

梓「…ふふっ」

でも、なぜか今日は笑ってしまった。
なんでだろう…いつも通りの先輩のはずなのに。
この前みたいな不快な感じはしない。

彼女のことは嫌いではない。
かと言って好きかと言われても困る。
微妙な関係。

澪「ところで律、今日部長会があるって和から聞いたんだけど出なくて良いのか?」

律「あっ!」

梓「……」

こんな所があるからがっかりしてしまう。




160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 22:31:35.76 ID:POxT3QJqP

律「あー、今日も練習疲れたなー」

澪「言うほどやっていないけどな」

部活が終わり、澪と一緒に下校中。
今日はなんだか気分がいい。

澪「そういえば、梓のことだけど」

律「うん?」

澪「言ってたほど仲悪くなかったじゃないか」

律「……そう見えた?」

澪「あぁ」

律「…そっか」

自分でも今日は梓と上手くやってた気がする。
だから気分がいいのかな。



165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 22:42:17.02 ID:POxT3QJqP

律「…いつも通りにさ」

澪「ん?」

律「いつもの私みたいに接してみた」

澪「そっちの方がいいよ」

律「だよな。まぁ梓はどう思ったか分からないけど…」

澪「梓だって悪くないと思ったんじゃないか?」

律「そうかな?」

澪「そうだよ」

律「じゃあ、もし違ってたら私の宿題代わりにやってくれない?」

澪「なんでそうなるんだ」

澪が軽く私の頭を叩く。
こうやって軽口を言い合ってるときが、私は一番楽しい。
いつか梓ともこういう関係になりたいな。



167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 22:49:38.35 ID:POxT3QJqP

ぐぅ~

律「……ん?」

澪「……」

どこからか音がした。
これは腹が減ったときに出る音。

律「……澪さん?」

澪「うぅ///」

律「ふっ…お前も人間だもんな」

澪「笑うなぁ!!」

律「そうだ、ハンバーガー食いに行こうぜ!今期間限定メニューやってるんだ」

澪「今から?」

律「めっちゃ美味しいんだって!」

澪「う~ん…そうだな。行くか」



168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 22:58:06.71 ID:POxT3QJqP

梓「……」

部活からの帰り道、私は大通りを歩いていた。
夕日がオレンジ色に周りを染めている。

梓「…きれい」

ふと、今日の律先輩を思い出した。
なんか今日はいつも以上にうっとおしかったが、一緒にいて楽しかった気もする。

なんでだろう、最近は律先輩が頭の中に毎日いる。
思えばあの日、二人で初めて遊びに行ってから気にかけるようになったのかも。

梓「……」

あんなに律先輩と二人っきりだったのは初めてだった。
先輩の良い所や悪いところも確認できた。
それからずっと、律先輩がどういう人かもっと知りたがっている。

……知りたがっている?



169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 23:07:33.96 ID:POxT3QJqP

何を思っているんだ、私は。
別に律先輩のことなんかどうでも…

梓「……」

またわけが分からなくなってきた。
律先輩のことが興味があるような、ないような。

初めはただうっとおしかっただけの先輩が、私をここまで悩ますなんて。
なんだか段々と腹が立ってくる。

梓「あぁもう!なんなの……」

普段あんなへらへらしている人のどこがいいんだ。
能天気で適当でおちゃらけてて・・・
まったく尊敬できない先輩。

梓「次会ったときは…澪先輩みたいにゲンコツしてやりたい……」


純「あっ、おーい!梓ー!」



171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 23:15:14.21 ID:POxT3QJqP

梓「!」

後から聞き覚えのある声がした。
純だ。

純「部活の帰り?」

梓「うん」

純「そっか、私も」

梓「お疲れ様」

純「そうだ!今ヒマ?」

梓「えっ…なんで?」

純「実はさ、ハンバーガー食べたくて。期間限定メニューがあるらしいんだよね」

梓「あぁ…あれね」



174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 23:19:25.22 ID:POxT3QJqP

純「知ってるの?」

梓「うん、この前食べた」

律先輩と遊んだときに。

梓「あんまり美味しくないよ」

純「えぇ~?」

梓「私はそんな好きじゃなかった」

純「う~ん…でもヒマなら行こうよ!私は食べてみたいし」

梓「もう…しょうがないなぁ」



175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 23:27:12.07 ID:POxT3QJqP

お店につくと純は限定メニューを
私はあまりお腹がすいてなかったのでジュースを注文して席に着いた。

純「ん~…そこそこ美味しいじゃん」

梓「そう?」

純「うん」

梓「まぁ…純や律先輩は好きそうだよね」

純「え?律先輩?」

梓「…なんでもない」



176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 23:37:19.28 ID:POxT3QJqP

うっかり律先輩の名前が出てしまった。
そんなつもりはなかったのに…

純「そういえば律先輩ってかっこいいよね」

梓「…そうかな?」

純「そうだよ、さっぱりしていて男らしいし」

梓「……」

梓(律先輩が聞いたらどう思うんだろう…)

梓「…でもあの人、あれで結構いい加減なところもあるから」

梓「部長のくせに部活の事ちゃんと管理しないし、練習も率先してやらないし…」

梓「おまけに今日なんて受験生なのに授業中寝てたりしてたんだよ?ありえない」



177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 23:47:48.89 ID:POxT3QJqP

梓「ドラムはいっつも走り気味だし、私のことからかってくるし…」

純「へ、へぇ~…」

梓「……でもまぁ、あれで一応優しいところとかもあるんだけどね」

梓「がさつに見えて細かいところまで気を配ってくれて、場の雰囲気も和ませてくれるし…」

梓「意外と料理や家事が上手かったりするんだよ?驚きだよね」

純「……」

梓「純?」

純「ふ~ん…」

梓「…何ニヤニヤしてるの?」

純「梓さぁ、律先輩のこと今すっごく楽しそうに話してたよね」

梓「……え?」



181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/10(火) 23:54:44.73 ID:POxT3QJqP

純「文句言ってるあたりから楽しそうだったよ」

梓「な、ななな何言ってるの!?楽しいわけないじゃん!!」

純「そうかそうか~」

梓「あっ!今変な風に思ってるでしょ!?」

純「べっつにー」

梓「違うからね!そういうのじゃないもん!」

純「そういうのってどういうの?」

梓「うっ…それは…」

純「うん?」

梓「…と、とにかく違うの!!今のはただの愚痴なんだから!!」



182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 00:02:48.56 ID:POxT3QJqP

純「…ねぇ梓、知ってる?」

梓「な、何が…」

純「愚痴は愛情の裏返しなんだって」

梓「えっ…」

純「愚痴ってのは全て思い通りにならない愛情からくるただのぼやき…」

純「こんなに大好きなのにどうしてこの人は思い通りにならないの?っていうノロケ話なんだってさ」

梓「!」

純「まぁ、さっき読んでた漫画に書いてあったことだけどね」



184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 00:09:37.65 ID:5ZYximWXP

梓「……」

純「梓は素直じゃないから、そういうこと認めないと思うけどね」

梓「……」

愛情の裏返し?

嘘だ。
だってついこの前まで律先輩のことなんてどうとも思ってなかったし。
むしろ嫌い…

梓「……」

嫌いだと思っていたかった?
自分が律先輩のことを好きだと認めたくなかったから
それを隠すために嫌いなフリをして……

自分自身に…嘘をついていた?

梓「……」



187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 00:16:40.70 ID:5ZYximWXP

純「認めちゃいなよー、律先輩のこと本当は好きなんでしょ?」

梓「……」

…違う。
そんなの嘘だ。

律先輩は…キライで
キライでキライでキライすぎて

気になって…気になって…

気づいたら一日中ずっと律先輩のこと考えてて

いつの間にか頭の中に住み着いていて…

梓「……」

純「梓?」



191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 00:21:54.66 ID:5ZYximWXP

梓「…わっ、私は……」

純「あっ……」

梓「私は…律先輩のことなんて大嫌いなんだから!!」

梓「あんな先輩、好きになるところなんてこれっぽちもないよ!!」

言った。
言ってしまった。

これでいい。
これでいいんだ。

私が律先輩を好きだなんてありえない。
あんな先輩…



192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 00:24:04.68 ID:5ZYximWXP

純「……」

梓「…純?」

なんか言ってよ。
こんなこと本当は言いたくなかったんだから…

純「あの…梓…」

梓「え?」

純「うしろ…」

うしろ?
うしろに何があるの?

私は純が指差す方向へと振り向いた。

律「……」

梓「!?」



194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 00:27:50.74 ID:5ZYximWXP

梓「り、律先輩…?」

律「……」

頭の中が真っ白になる。
心臓が止まるかと思った。

なぜ律先輩がここに?

いや、それよりまさか…今わたしが言ったこと……

澪「…そ、外から見えたから…その…」

純「ごめん…私も気づいてたんだけど言おうとしたら…」

梓「……」

律「……」



196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 00:32:15.37 ID:5ZYximWXP

思考が停止する。
冷や汗が出てきた。
息苦しい。

梓「……」

律「……」

律先輩の顔もよく見えない。
私の目から涙が出てきた。

梓「……くっ」

純「あっ!ちょっと梓!?」

そのまま逃げ出してしまった。



197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 00:36:40.14 ID:5ZYximWXP

澪「梓!」

律「いいよ澪…」

澪「で、でも!!」

律「いいんだよ…」

澪「……」

律「…それよりさ、さっさと食べようぜ!」

澪「律…」

律「あっ佐々木さん、この席使っていい?」

純「いいですけど……あと鈴木です」

律「あはっ☆そうだったそうだった」

澪「……」

律「いやー、美味しそうだなー」



200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 00:45:32.78 ID:5ZYximWXP

梓「はぁ…はぁ…」

すぐに家へ戻り、自分の部屋に入った。
そしてベッドの中にもぐりこむ。

梓「うっ…うぅ…」

梓「ふうぅっ…グズッ…」

なんとか泣くのを堪えようとする。
けど、無理だった。

梓「うっ…うああぁぁぁぁああん!!」

恐ろしいほどの後悔の念が、私を襲う。
なんであんな事を言ってしまったのだろう。
あの時、自分の気持ちに素直になっていたら…

しかし、もうどうしようもない。

梓「うあああぁぁぁぁぁぁあああん!!」

嫌われた。
これで私は律先輩に完全に嫌われた。



222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 02:45:46.49 ID:5ZYximWXP

澪「……」

律「……」

澪「な、なぁ律…」

律「あっ、もうここでお別れだな」

澪「……」

律「じゃあな、澪。また明日学校で」

澪「あ、あぁ…バイバイ」

律「……」

澪「……」



224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 02:52:58.20 ID:5ZYximWXP

律「ただいまー」

聡「あっ、姉ちゃんお帰りー」

律「聡、今日夕飯いらないって言っておいて」

聡「なんで?ダイエット?」

律「馬鹿もん!こんな素晴らしいプロポーションを持っているのに
  ダイエットなんてする必要あるか!」

聡「はいはい」

律「…さっき食べてきちゃったからさ、もうお腹いっぱいなんだよ」

聡「ふーん」

律「じゃ、ちゃんと伝えておいてくれよ」

聡「はいよー」



226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 03:02:54.85 ID:5ZYximWXP

律「はぁ……」

律「……」

自分の部屋に入り、ベッドの上に横たわる。
チクタクと時計の針が進む音が聞こえる。
一人でいると静かなものだ。

律「……」

携帯を見た。
澪からメールが来ている。

律「……」

なんとなく、開ける気が起きなかった。



227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 03:09:18.50 ID:5ZYximWXP

律「……」

静かな空間。
嫌でも自分と向き合わなければいけない。

律「……」

思い出したくない。
忘れ去りたい出来事。

それでも、どうしても頭から離すことはできなかった。


梓《私は…律先輩のことなんて大嫌いなんだから!!》


律(大嫌い、か……)



228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 03:18:46.44 ID:5ZYximWXP

律(まぁ…最初から好かれてるとは思ってなかったからいいけどさ)

律「……」

律(逆に清々しいな、あそこまでハッキリと言われると…)

律「…ははっ、マジうける……」

律「ろくな先輩じゃないな、私は…」

律「梓の気持ちも知らないで仲良くなりたいだなんて…」

律「今日も私と絡んでて、イヤだったんだろうな~……」

律「……」

律「寝よう…」

寝て全部忘れられたら、いいな…



233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 03:29:55.85 ID:5ZYximWXP

梓「……」

あれからどれ程経ったのだろうか。
私は泣きつかれてベッドの上でぐったりとしている。

梓「……」

喉が痛い。
鼻はまだ詰まっている。
頭はボーっとしている。

梓「……」

涙はとっくに枯れ果てた。
もう泣く気にもなれない。
何も考えることができない。



235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 03:41:14.35 ID:5ZYximWXP

梓「……」

律先輩のこと想うとチクチクする。

イライラする。

ムカムカする。

ザワザワする。

ズキズキする。

息苦しい。

梓「……」



238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 03:54:34.76 ID:5ZYximWXP

こんなに辛い思いになるのも全て律先輩のせいだ。
だから私は律先輩を嫌いになった。
こうすれば少しでも気が楽になると無意識に思って。

自分自身を騙していた。

自分が傷つきたくないから、彼女を避け。
心の中で馬鹿にし、見下すことで彼女を遠ざけようとしていた。
頭で思っていなくても、心がそうした。

梓「……」

けど純に言われて気づいた。
自分の気持ち。
頭で理解することができた。

単刀直入に言えば私は律先輩のことが……好きだ。



240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 04:11:53.72 ID:5ZYximWXP

なんで好きになってしまったのかは分からない。
けど好きだという事実は認めるしかない。

その上で、自分がどれほど大変なことをしたか改めて思い知らされる。

大好きな人を傷つけてしまったのだ。

自分はなんて馬鹿なんだ。
なんて愚かなんだ。
なんて浅はかなんだ。

梓「……」

最低だ。
最低な人間だ。

自己嫌悪が膨れ上がりどうにかなってしまいそうだ。

梓「……!」

耳をすますと足音がした。
誰かが私の部屋に近づいてくる。



241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 04:20:59.01 ID:5ZYximWXP

誰?
お母さん?
それともまさか…

コンコンとノックの音がする。

純「梓?いるー?」

梓「純…?」

予想外の人物だった。
どうして純が?

純「入ってもいい?」

梓「あっ…うん」



242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 04:31:53.87 ID:5ZYximWXP

純「おじゃましまーす」

部屋の扉が開くと純が現れた。

純「おー、ここが梓の部屋かー」

梓「純…どうして…」

純「これ、梓のバッグ。さっき置き忘れてたよ」

梓「……ありがとう」

純「どういたしまして」

突然のことで中に入れてしまったが、今は人と話せる状態ではない。
せっかく来てもらった純には悪いが、早く一人にしてほしかった。

梓「あの…純……」

純「分かってる、用事はこれだけだからもう帰るよ」



244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 04:38:30.99 ID:5ZYximWXP

梓「……ごめん」

純「いいっていいって」

梓「……」

純「…明日学校来れる?」

梓「……分からない」

純「そっか、了解」

梓「……」

純「…じゃあね」

梓「うん…」

純は部屋から出て行った。

また一人。
嫌悪感と向き合う。

梓「……」

その日は一日眠れなかった。



280 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 16:47:45.97 ID:5ZYximWXP

唯「おはよー、澪ちゃん!」

澪「あぁ、おはよう唯」

唯「今日もあっついね~」

澪「ほんとだな…」

唯「あれ?りっちゃんは?」

澪「え?」

唯「いつも一緒に学校に来てるのに、今日は違うの?」

澪「律は……たぶん休みだ」

唯「え…風邪?」

澪「……」

唯「?」



282 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 16:56:22.03 ID:5ZYximWXP

純「……」

憂「おはよう、純ちゃん」

純「あっ…おはよう憂」

憂「今日も暑いねー」

純「うん…」

憂「…純ちゃん?」

純「…せっかく夏も終わったのに、イヤだよね。早く涼しくなって欲しいよ」

憂「そうだねぇ…梓ちゃんはまだ来てないんだ」

純「あははっ、暑さでダウンしちゃったんじゃない?」



284 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 17:06:46.46 ID:5ZYximWXP

朝。
窓から太陽の日差しが差し込んでいる。

梓「……」

梓母「じゃあ学校には連絡入れておくから、何かあったら呼んでね?」

梓「うん…」

母親に体調不良と言っておいて、学校を休むことにした。

行ったって居場所はない。
純や澪先輩にまであんな酷い醜態を晒してしまったのだ。
会わせる顔がない。

梓「……」

人生で初めて死にたいと思った。



286 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 17:16:24.59 ID:5ZYximWXP

唯「部活だよー!」

シーン…

澪「…あ、あぁそうだな」

唯「もう澪ちゃん!そこは『全員集合ー!』って言って欲しかったのに!」

澪「ドリフか…」

唯「澪ちゃんのいけずぅ」

澪「はいはい、ごめんな」

紬「お茶とお菓子持ってきたわよ~」



287 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 17:25:26.84 ID:5ZYximWXP

澪「ありがとう、ムギ。……ん?」

紬「どうしたの?」

澪「…律の分はいらないんじゃ」

紬「あっ、ごめんなさい。ついうっかり…」

唯「あずにゃんも休みなんだって。憂から聞いた」

紬「梓ちゃんまで?二人とも大丈夫かしら…」

澪「……ケーキ、帰りに律の家に届けてくるよ」

紬「そうね…お願い澪ちゃん」

唯「二人がいないとなんか寂しいな~…」



289 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 17:37:50.79 ID:5ZYximWXP

律「はーっ……」

一日中ベッドの上で寝転がっている。
昨日寝ようよしたが結局眠れなかった。
ご飯も食べていない。

ただひたすらボーっとしているだけ。

律「……」

律(失恋ってこんな感じなのかな)

律「……」

律(いや、恋じゃないか…恋じゃないよな)

コンコン、と扉がノックされる音がした。

澪「律、いるか?」

律「あ…澪?」

澪「入るぞ」



291 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 17:52:17.02 ID:5ZYximWXP

澪が部屋に入ってきた。
手には何か持っている。

澪「体調はどうだ?」

律「…普通」

澪「なんだそれ…。これ、ムギから」

律「え?」

澪「ケーキだよ、しかも律の好きなやつだぞ」

律「ありがと…」



292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 17:58:51.92 ID:5ZYximWXP

ケーキがテーブルの上に置かれる。
確かに私の好きなやつだ。
ただ今は、そのケーキにあまり魅力を感じない。

律「……」

澪「食べないのか?」

律「…なんか、食欲がない」

澪「…律なのに?」

律「どういう意味だ」

澪「せっかく持ってきたんだから食べろよ」

律「いらないって」



293 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 18:10:24.81 ID:5ZYximWXP

澪「なんだよ…じゃあ私が食べちゃうぞ?」

律「別にいいけど」

澪「…お前、今日ご飯食べたのか?」

律「食べてない…」

澪「食べないとダメだろ!何考えてんだ!?」

律「うっせえな!お前は私のお母さんか!!」

澪「お前のママじゃないけど、心配なんだよ!!」

律「…っ」

澪「律…私だけじゃない、みんな心配してるんだ」

律「……」

澪「ちゃんと自分の体を大切にしてくれよ」

律「…ごめん」

澪「分かればいいけど」

律「……ママって言ってたな」

澪「…ついうっかり」



296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 18:24:05.20 ID:5ZYximWXP

律「……」

澪「梓のこと、まだ気にしてるのか?」

律「うん…」

澪「だよな…」

律「……」

澪「じゅ、純から聞いたんだけどさ…あれはただ場のノリで言っただけって」

律「そっか…」

澪「だから深い意味はないってさ、気にするなよ!」

律「うん…」

澪「……」



298 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 18:36:20.64 ID:5ZYximWXP

律「……」

澪「ケーキ食べろよ、何かお腹に入れたほうがいいって」

律「後でな」

澪「…じゃあ私、もうそろそろ時間だから」

律「あぁ、お見舞いありがと」

澪「うん、ゆっくり休めよ」

律「分かってる、じゃあな」

澪「……律」

律「なんだ?」

澪「私は律のこと…好きだから」



301 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 18:41:37.67 ID:5ZYximWXP

律「え?」

澪「そ、そういう好きじゃないからな!ただ友達として…」

律「う、うん…」

澪「うぅ///」

律「…澪さん?」

澪「ご、ご飯食べて早く寝ろ!じゃあな!」

バタンと扉を閉め澪は出て行った。

律「……」

私は部屋で一人、さっき澪に言われた言葉を考えながら
ケーキをジーッと見つめている。



304 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 18:54:18.00 ID:5ZYximWXP

律(澪のやつ…あんな顔真っ赤にしてたらバレバレだろ…)

律「はぁ…本当ならもっと驚くはずなんだけどな」

けど澪の告白はあまりピンと来なかった。
嬉しくないわけじゃない。
ただ、私が求めていたものと何か違う。

私が求めているのは…

律「梓…」

例えどんなに避けられても。
どんなに嫌われても。
今でも梓のことを想っている。

私は梓のことが好きだ。

律「好き…?」

そうか…今気づいた…
私は梓のことが好きだったんだ。
後輩や友達ではなく、一人の女の子として。



306 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 19:10:31.72 ID:5ZYximWXP

律「ははっ…まいったなこりゃ…」

まさか梓に恋愛感情を持つなんて、思ってもないことだ。
今までただの後輩だったのに…

律(そういえば最近、梓のことばっかり考えてたもんな…)

初めは仲良くなりたかっただけだった。
澪たちに比べて私と梓の接点は少ない。
それが妙に寂しかった。

だから梓に近づきたくて
梓のことをもっと知りたくて

気づいたら梓に夢中だった。

梓のことで頭がいっぱいだった。



307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 19:24:09.92 ID:5ZYximWXP

嫌われないよう自分なりの努力もした。
ベタベタしてる唯に嫉妬したりもした。

でもそれは、梓のことが好きだから。

梓と話がしたかった。
梓に自分のことを見て欲しかった。
梓を抱きしめたかった。

梓に…私のことを好きになってもらいたかった。

律「……」

けど梓は私のことを嫌っている。
もう私に希望は…ない。

律「…グズッ…ううぅぅ…」

今になって涙が溢れてくる。
自分の気持ちにはっきり気づいたせいで、悲しみが膨れ上がる。

律「やだよぉ…グズッ…嫌いにならないでよぉ…ヒック」

律「あずさぁ…」

ケーキはその後、聡にあげた。



311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 19:49:08.29 ID:5ZYximWXP

梓「……」

梓(律先輩に嫌われた…嫌われちゃった…)

私は部屋の片隅でうつむいていた。
もう夕方になっている。
あっという間だ。

梓「……」

~♪

携帯の着メロが鳴く。
純からのメールだ。



316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 20:04:22.04 ID:5ZYximWXP

梓「純…」

メールには『元気?』『梓がいなくて寂しかったよ~』などと書かれていた。
あんなことがあったから私に気を遣ってくれたのだろう。

とりあえず『ありがとう』とだけ返信した。

梓「……」

~♪
すぐに純から返信が来た。

『律先輩も気にしてないって言ってたよv(^^)明日は学校来れるかな?』

梓「……」

本当だろうか。
あれだけ大声をあげて嫌いだと言ってしまったのに。

梓「……」



317 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 20:16:32.78 ID:5ZYximWXP

携帯を閉じ、再びうつむく。

純のメールの通りなら、どれほど幸せなことか。

もし本当なら、会ってすぐ謝りたい。
そして自分の正直な気持ちを伝えたい。
そうなったら、彼女はどんな反応をするのだろう?

拒否される?
その可能性は大きい。
今まで冷たくしてたのに好きだと言っても…

それに私は女だ。
同姓に好意を持つなんてひかれるに決まっている。

それでも誤解を解きたい。
律先輩に、私の本当の気持ちを知ってもらいたい…

梓「……」

今までひどいことしてたのに…勝手な人間だ。



318 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 20:24:40.21 ID:5ZYximWXP

梓「律先輩…」

もし私が澪先輩みたいにかっこよかったら、律先輩も受け入れてくれるだろうか。

もしも異性だったら、先輩だったら
好きになってくれただろうか…

梓「……」

なに馬鹿なことを考えてるんだろう。
私は律先輩に嫌われたんだ、そうに違いない。

それなのに私は…ありもしない希望を…

梓「最低だ…」

一応明日は学校に行こう。
みんなも心配してる。
けど部活は…恐らく出ない。



331 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 22:39:42.91 ID:5ZYximWXP

澪(律のやつ遅い…今日も来ないのかな)

澪「……」

朝、いつもの場所で律を待つ。
ここで毎日待ち合わせをして、一緒に登校する。
それが私たちの日常だった。

今思えば幸せなことだ。
親友と共におしゃべりをしながら歩く。
律がちょっとおどけると私が突っ込みを入れたり…楽しかった。

色々あったけど、あの頃に戻れるといい。
戻りたい。

けど、私の願いは叶うことがなかった。

電話が鳴り、律の母親から連絡を受けた。
律が交通事故にあったらしい。



332 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 22:44:19.49 ID:5ZYximWXP

急いで病院に向かった。
病室につくとそこには、律が眠っている。

律の家族が泣いていた。

私はゆっくりと律に歩み寄る。

律、おい律!

返事をしない。

ふざけているのか?
なぁ、ふざけているんだろ?

私の問いかけに、律は答えない。

なんでだよ…
なんで……律…




律の母親から聞いた。
即死だったそうだ。



337 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 22:47:12.33 ID:5ZYximWXP

それを耳にした瞬間、私のヒザが崩れ落ちる。
体に力が入らない。
頭が動かない。


律…?


律は目を閉じたままだ。


律…そんな…
律……


嘘だ、これは夢だ。
律がこんな簡単に死ぬわけ…

律…律…

律「りつううぅぅぅぅぅううう!!」

澪「……人の後ろで何してるんだ?」

律「ナレーションごっこ」



350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 22:54:34.12 ID:5ZYximWXP

澪「意図が分からない」

律「いやさ、昨日お前が私のこと励ましてくれただろ?だからそのお返しに」

澪「お返しになってないだろ!」

律「違うんだって、この後にお涙頂戴のストーリーがあるんだよ!それで澪に感動してもらおうと…」

澪「感動できるか!!」

律「いたっ!?」

澪が私の頭を殴る。
うん、いつものことだ。



355 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 23:02:11.82 ID:5ZYximWXP

律「ちぇっ、せっかく昨日考えたのに」

澪「下らないことを考えるな…」

律「ちなみに最後は、愛しの人のキスで生き返るんだぜ」

澪「へぇ…」

律「な?澪こういうの好きだろ?」

澪「べ、別に好きじゃない!」

律「またまた~、こういうご都合展開がいいくせに」

澪「あのな…死ぬなんて不謹慎な話やめろよ。本当に死んだりしたらどうするんだ?」

律「知らないのか?私は簡単には死なないんだぜ?」

澪「はぁ…」



356 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 23:06:55.27 ID:5ZYximWXP

律「さ、早く学校に…」

澪「…なぁ、律」

律「ん?」

澪「そ、その…昨日のことなんだけど…」

律「…あぁ」

澪「昨日はちゃんと言えなかったけど、もし律がよかったら私と…付き合って……」

律「ごめん」

澪「っ!」

律「私…やっぱり梓のことが好きだ」



357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 23:10:17.96 ID:5ZYximWXP

澪「……」

律「昨日気づいたんだ、梓しかいないって」

澪「……」

律「だから…」

澪「私の方が…」

律「え?」

澪「私の方が付き合い長いのに?」

律「そ、それは…」

澪「私のほうが、律のことを理解している」



359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 23:15:41.16 ID:5ZYximWXP

律「えっと…」

澪「お前が何が好きで、どんなことが嫌いで……」

澪「それに、お前の馬鹿な話に突っ込みを入れられるのは私だけじゃないか!」

律「……」

澪「もしイヤだったら殴るのはやめる!だから…それでも…」

律「…ごめん」

澪「……」

律「どうしても、梓じゃなきゃダメなんだ」



362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 23:20:40.14 ID:5ZYximWXP

皮肉なことに、澪からの告白で気づいた気持ち。
私も今日このことを言うのに負い目を感じていた。

それでも、きちんと返事をしないと失礼だ。

自分の気持ちに正直に。

澪「……」

澪は傷つくだろう。
たぶん泣くはずだ。
それでも私は梓のことが…

ごめんな澪。
こんな私を許してくれ…

澪「…ふふっ」

律「え?」

澪「そっか…それなら仕方ないよな」



368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 23:28:34.23 ID:5ZYximWXP

律「み、澪さん…?」

澪「言っただろ?律のことは理解してるって」

澪「お前がどんな気持ちかぐらい分かってたよ。どれだけの付き合いがあると思ってるんだ?」

律「……」

澪「ただ、確かめたかっただけなんだ…どれだけ梓のことが好きなのか」

律「……」

澪「お前の気持ちが確認できてよかったよ。お前が本気で梓のことが好きなら、私は応援するぞ」

澪「だって親友だからな!」



373 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 23:37:21.00 ID:5ZYximWXP

律「澪…」

澪「今日、学校来ても平気なのか?」

律「…うん」

澪「梓と会える?」

律「分かんないけど…気持ちは伝えたいと思ってる。私が梓のことを好きだって気持ちは…」

律「それで嫌われるのなら…後悔はない」

澪「そっか…頑張れよ!」

律「おうよ!」

澪「ふふっ」

律(でもフラれてその後部活にひびくような事があったらどうしよう…)



375 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/11(水) 23:43:58.72 ID:5ZYximWXP

澪(これでいいんだよな…律がしあわせならこれで…)

澪「律、そろそろ行かないと遅刻するぞ」

律「あぁ、待ってろ今…!?」

澪「律?どうした?」

律「…いや、ちょっと緊張しちゃってな」

澪「しっかりしろよ。梓に見捨てられちゃうぞ?」

律「ははっ…」

なんか今…頭がグラっとしたような…

律「……」

緊張してるだけだよな、きっと。




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梓『律先輩みたいなお姉ちゃんもアリかな…と』#前編
[ 2011/10/01 21:46 ] 非日常系 | 律梓 | CM(0)

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