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唯「そこのお兄さんっ!唯とお・ま・ん・こ♪していきませんかっ?」#中編 【非日常系】


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唯「そこのお兄さんっ!唯とお・ま・ん・こ♪していきませんかっ?」#前編
唯「そこのお兄さんっ!唯とお・ま・ん・こ♪していきませんかっ?」#中編
唯「そこのお兄さんっ!唯とお・ま・ん・こ♪していきませんかっ?」#後編




266 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 02:56:55.94 ID:3x3g8P0G0

翌日11時。私たちは商店街の一角にあるファーストフード店の奥の席にいた

早めの食事と簡単な打ち合わせのためである

むぎの用意してくれた防犯グッズを確認し、私たちはお店を出た

純ちゃんの先導。梓は純ちゃんの腕に抱きつくように歩いている

向かうべき場所へは、そこから5分もたたぬうちに到着した

商店街の裏路地、空きテナントの丁度裏に位置するところ

忌まわしい場所。全てのはじまり

「梓」

私は梓に声をかけた

「はい…何ですか?」

「あの時のこと、詳しく説明してくれないか。頼む」

梓は小さく悲鳴を上げて、純ちゃんの腕を強く抱き締めた。純ちゃんが頭をなでている

しばらくして、梓は顔を上げた

「……わかりました」



268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 03:09:12.03 ID:3x3g8P0G0

「あの日…私は唯先輩と純と別れて、憂を探してました…
 20分ぐらいして…かな?路地裏の方にも行ってみようかなって思ったんです
 適当に見回ってるうちに、悲鳴が…聞こえた気がしました。
 それから、男の人が怒鳴るような声も微かに聞こえて…
 私、嫌な予感がして、走りました。そしたら…」

「憂ちゃんが…いたんだな」

梓はこくっとうなずいた

「男の人が一人、憂に覆い被さっていました。もう一人が、憂の両腕を押さえてて
 それから一人、地べたに座ってニヤニヤ笑ってました…」

「男は4人いたんだよな?あと一人は…」

「それは…その…ビ…」

ビ…?……まさか!?

「ビデオを回していました」



269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 03:22:39.10 ID:3x3g8P0G0

「…何だよ、それ…!」

律が壁を叩いた。むぎも純ちゃんも絶句している

「ニヤニヤ笑って、ビデオ回して…私、わけがわからなくなって、大きな声で叫んだんです
 そうしたら、その男たち何だか凄いあわてて、逃げていきました
 私怖くて、怖くて…唯先輩に電話して…」

梓は語り終えると、また涙を流した。私は梓を泣かせてばかりいるような気になった

「よく言ってくれたよ梓、ありがとう」

私は梓をねぎらった

むぎが梓に問い掛ける

「その男たちの特徴は…覚えていない?服装とか、髪型とか…」

梓は涙を拭きながら答える

「特徴…ですか…。すみません、顔はあんまり覚えてないです、
 よく見えなかったし。でも、全員若い感じでした
 それから…白いシャツ。長袖と半袖を着た人がそれぞれ一人ずついました
 どっちも似たような感じで…あの、ワイシャツみたいな感じのです」

「似たような感じの白いワイシャツ…?」

「…学生服」



273 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 03:35:14.66 ID:3x3g8P0G0

純ちゃんの言葉に全員がハッとした

「若くて、似たような白いワイシャツを着ている。それって学生ってことじゃないでしょうか
 衣替えが終わっても長袖着てる人はいるし…
 ねえ、梓。その二人、ズボンも似たような感じじゃなかった?思い出してみて」

「うん……。ごめん、両方は思い出せない。でも、憂に…覆い被さっていた半袖の男は…
 緑、そうだ、濃い緑色のスラックスを履いてた」

緑のスラックスか…

律が腕を組んだまま言った

「もし学生だとしたら、学ランじゃなくてブレザーの学校ってことになるな」

私も喋った

「それに、緑のスラックスなんてそう多いわけじゃない。ある程度絞り込めるかもしれないぞ」

「お手柄だ、梓!!」

律が梓の肩を叩いた

「喜んでいいんですかね…」



274 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 03:58:07.14 ID:3x3g8P0G0

「とにかく、少しずつだが希望が見えてきたような気はするな…」

「そうだな、よぉし、他に何か手がかりがないか、探してみようぜ!」

律の提案を容れて、私たちはあたりを探してみることにした

もし人が来た時に不信感を抱かれぬよう、むぎと純ちゃんをそれぞれ見張り役にし、

私と律と梓で目を皿にする。何か、何か手がかりになるものはないか…!

「おいっ!みんな!ちょっと来てくれ!」

探し始めてから5分もたたぬうちに、律が声を張り上げた

まさか…そんなに早く手がかりが見つかるのか!?

律は側溝の縁に生えている小さな雑草を指差していた

「何だ?ただの雑草じゃないか?」

「違う!この影に…」

律が葉をめくった。そこには

中心に糸くずの残った、白いちいさなボタンが転がっていた



275 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 04:04:39.33 ID:3x3g8P0G0

「これ…ボタン…ですね」

梓が息をのむ

「ああ…それにこんな感じのボタン…よくワイシャツに着いてるよな…?」

律がボタンに手を伸ばす。その瞬間、むぎが叫んだ

「ちょっと待って!」

律がビクリとする

むぎは小走りで駆け寄ると、ポケットからハンカチとピンセットを取り出し、

丁寧にボタンを拾い上げ、ハンカチに包んだ

律が驚いて言った

「ピンセットなんか持って来てたのか…」

むぎは

「大切な証拠品だから…取り扱いは慎重にしないと…」

と微笑んだ



307 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 18:45:14.20 ID:3x3g8P0G0

「でもこれ…本当に事件に関係あるものなんですかね…」

梓がぽつりと呟く。まあ、妥当な意見だろうな

「たしかに今のところ確証はない。だけどあくまで今のところは、だ
 犯人たちのものなのか、それとも単なる落し物なのか。調べてみなくちゃわからないよ」

私は言った。梓は小さくうなずいた

「…そうですよね。まずは調べること、ですね」

「ねえ見て、このボタン」

むぎがみんなにハンカチの上のボタンを示す

「ほら、穴のところに糸がたくさん残っているでしょう?」

確かに、ボタンの穴には糸がたっぷり巻きついている

「それに…」

むぎはピンセットでボタンを裏返す

「この糸、引きちぎられたように私には見えるの。つまりね…」

純ちゃんが口を開く

「自然に糸がほつれて取れたんじゃなくて、強い力でむしり取られた…ってことですか?」



308 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 18:48:08.90 ID:3x3g8P0G0

むぎがうなずく

「ええ。もっとしっかり調べないと、確かなことは言えないかもだけど…」

その時私は、必死に抵抗する憂ちゃんが思わずボタンを引きちぎる姿を思い浮かべていた

嫌な、気持ちに…なった

「しっかしなあ…」

律が呆れたようにため息をついた

「ん?どうした?」

「いやさ、これがもし、事件の日に取れたものだとしたら、
 もうこのボタンは3週間以上もここに落ちてたわけだろ?
 唯が探偵を頼んで…まあ2週間くらいはたってるとしても…
 私がちょろっと探しただけで見つかるようなものを探偵が見つけていないってのはなあ…」

「確かにそうだな…」



309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 18:49:14.53 ID:3x3g8P0G0

純ちゃんが言う

「…二つ、考えられますね。
 まず一つ、このボタンは事件とは関係なくて、つい最近誰かが落としたものだってパターン
 もう一つは…その探偵が、よっぽど使えないヘボ探偵だというパターン」

「もし後者だったとしたら…唯はそんなやつらにお金を払うために…」

私はその時、言葉では言い表せない、もやもやした、複雑な気持ちでいた

それから30分ほど、私たちは他に何かないか、探し回った

しかし結局、あのボタンの他には手がかりらしいものを見つけることは出来なかった

私たちは商店街に戻ると、さっきのお店とは別のファーストフードに入り、これからのことを話し合った

この商店街が活動圏内にあると思われる、共学校・男子校を調べ、

さらにそのうちで、制服のスラックスが緑系統の学校を絞り込むこと

ボタンを調べて、手がかりを探すこと



310 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 18:50:22.20 ID:3x3g8P0G0

制服に関しては私と律が、ボタンはむぎが調べることにした

梓と純ちゃんには、他に手がかりがないか、記憶を反芻するよう言った

お店を出たのは1時過ぎ。次は明後日また集まるということにして、解散した

帰り道、私と律は、得体の知れない満足感に、少なからず酔っていた

コンビニに立ち寄って買い物をし、店を出た

と…その時、ほとんど二人同時に、携帯電話の着信音が鳴り出した

「唯…」

私の着信は、唯からのメールだった

「…さわちゃんだ…!」

律には、さわ子先生からの電話のようだ。不安そうな顔で私を見つめる律

「律、うまくやれよ」

私の励ましに、律は顔をいっそう引きつらせた。不安だ…



312 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 19:06:04.45 ID:3x3g8P0G0

律は深呼吸をすると、震える手で通話ボタンを押した

「もしもし、あ、ハイ。まあ…そこそこには。それで、あの……えっ!?唯と連絡がついたんですか!?
 ええ、私はまだ…。はい、はい…はあ!?あっ、すいません、驚いちゃって…いえ…はい…
 はい、わかりました。あの、うちのメンバーには私から連絡しておきますから。…いえ、大丈夫です
 あの…先生、あんまり無理しないで下さいね…いえ、はい、わかりました。はい、また…

 ふーっ…」

律の額には汗が玉のように浮かんでいる。私はそれをハンカチで拭いながら

「お疲れ。さわ子先生…何だって?」

と聞いた

「唯から電話があったってさ。ま、昨日の約束を唯はちゃんと守ったわけだな
 唯のやつ、好きな男の人ができて、そこに入り浸ってるってことにしたみたいだ
 で、また連絡するから心配しないで、って言って一方的に切っちゃったんだとさ」

「そっか…まあ、それが一番妥当な理由かもな」

「さわちゃん…かなり疲れてるみたいだった。本気で唯のこと心配してるんだ」

私は終業式で見た、さわ子先生のやつれた顔を思い出した



315 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 19:58:13.84 ID:3x3g8P0G0

「……あぁ、そうだ澪、唯からのメールは何だって?」

「ちょっと待って。今確認する」

私は唯からのメールを開封した

『両親とさわちゃんに電話しました。
 さわちゃんは、ずいぶん心配してたみたい。
 探偵事務所のほうは、まだ探してる途中です。
 約束はちゃんと守るから、みんなもよろしくね。
 それじゃまたね。』

要点だけを伝える、簡素なメール。件名もなく、絵文字も使っていない

私は律に、メールを読んで聞かせた

「……頑張らなきゃな、私たちも」

「……ああ」

さっきまでの満足感は、とっくに消え去っていた



319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 20:13:05.87 ID:3x3g8P0G0

それから私と律は手分けして、インターネットで緑のスラックスのことを調べていった

地図で、商店街のある程度近くにある、共学と男子校、それから中学校を調べる。

それらをひとつひとつ検索し、条件に該当するものをピックアップしていく

サイトのある学校はかなり多く、調べるのもそう難しくなかった。

「便利な時代になったもんだ…」

どうしてもわからないところは、本屋に行って受験関係の資料に当たった

翌日のお昼過ぎには調べ終えることができた。予想よりずっと早い

「みんなは…大丈夫かな…」

進展があるといいのだけれど



320 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 20:18:03.70 ID:3x3g8P0G0

翌日。場所は私の部屋にした。パソコンが使えると便利だろうという理由からだ

「じゃあ、まずは私と澪が調べたことから行くか」

律に促され、私は発表を始めた

「ああ、そうだな。えっと、パソコンを使って、
 あの商店街を利用しそうな範囲にある学校を調べてみたわけだけど…」

「もっと要点だけババーンと行けよ、ババーンと!」

だったらお前が発表しろよ…という言葉をぐっと飲み込み、私は要点を述べていくことにした

机の上に置いておいたファイルを手に取る

「ええと、グリーン系のスラックスが制服になってるところは、調べた限りでは4つだな
 高校が3つと中学が1つ。ホームページをプリントアウトしてあるから、見てみて」

ファイルを開いて、テーブルの上に置く



323 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 20:27:13.49 ID:3x3g8P0G0

「4つか…すごい、結構絞れましたね」

「ああ、でも正直言えばもっと少ないかとも思ったけど。
 緑のスラックスなんて見たことなかったから」

「なあ、梓。この4つの制服のなかに見覚えのあるものは?」

律が聞く。梓がファイルを引き寄せじっくりと見ていく

「……ううん…すみません、これだ!という感じはしないかもです…」

まあ、そうだろう。どのスラックスも色味以外には特徴らしい特徴はあまりない

「大丈夫だ、気にするな、梓」

私は梓の肩を軽く叩いた



324 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 20:30:32.05 ID:3x3g8P0G0

「あの、ちょっといい?」

むぎがファイルを引き寄せ、左手の手帳を見ながらぺらぺらとページを繰っていく。

心なしかいつもより落ち着きがないような…

その時、むぎが目を大きく見開いた

「やっぱり…!」

そして、ある学校のページを指差して

「多分、ここ!」

叫んだ



326 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 20:58:39.68 ID:3x3g8P0G0

ここ…って…まさか…!?

「むぎ!ここか!?ここがそのそれのそこなのか!?」

「り、律、おお落着け!落着けって」

あぁ、私も落着けって

梓がむぎに詰め寄る

「どういうことなんですか、むぎ先輩!?」

「説明するから、説明するからみんな落着いて!」

ああ、そうだよな、落着かないと…

私はみんなをなだめることにした

「とりあえずみんな座って、な、むぎの話を聞こう、な!」

「お、おう…」

「はい…そうですね、すみません」

律も梓も自分の席に戻った。純ちゃんは…この子はこんなに落ち着きのある子だったろうか



329 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 21:22:58.20 ID:3x3g8P0G0

とりあえずみんな落着いたようだ。私はむぎに話すよう促す

「あの、絶対にそうだ、とは言い切れないんだけど…」

そう前置きして、むぎは話し始めた

「家に帰って、あのボタンを調べてみたの。
 そしたら、あのボタンにね、ちょっと変わった特徴があったの」

「特徴?」

「うん。ぱっと見た限りでは普通のボタンだったでしょ?
 でも、よく見るとボタンの裏面にアルファベットが刻まれていたの」

「アルファ…ベット…?」



331 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 21:47:28.05 ID:3x3g8P0G0

「そう。ローマ字で『FUJITAYA』って刻まれていたわ。それでピンと来たの。
 学生服ってオーダーしたり、特定のお店が学校に卸したりするでしょ?
 だから、その『FUJITAYA』っていうのはお店の名前で、
 そこが作ってる学生服なんじゃないか、って」

「なるほど…確かにそう考えることもできますね…」

梓の声はどこかかすれていた

「それで、この辺りで『FUJITAYA』っていう名前の、
 学生服を扱ってる服屋さんを探してみたら、1件だけ見つかってね、
 そこに行って、ご主人にあのボタンを見てもらったの
 そうしたら、間違いなくうちのボタンだって。

 藤田屋さんはとても歴史のある服屋さんで、
 自分のお店で売る学生用のワイシャツなんかには、
 オリジナルの店名入りボタンを工場でつけさせるのが昔からの決まりらしいわ」

何だか無性にのどが渇いた。手の平の汗が止まらない



334 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 22:01:48.84 ID:3x3g8P0G0

むぎの言葉はさらに続く

「それでね、藤田屋さんが主に学生服を卸している学校の名前を聞いて、
 この手帳にメモをとっておいたの
 それで…今、このファイルにある学校とメモを照らし合わせてみたら…」

むぎが唾を飲み込む音がはっきり聞こえた

「1校だけ…あったわ。このファイルとメモに共通する学校が…!」

私は、むぎの前で開かれているページに視線を落とした

『私立梅ヶ峰高等学校』



335 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 22:19:45.81 ID:3x3g8P0G0

律が苦々しげに呟く

「ここか…!」

梓の顔にも、純ちゃんもの顔にも、ありありと怒りが浮かんでいた

多分、きっと、私の顔にも

むぎが慌てた口調で言う

「ま、待って待って!まだ決まったわけじゃないのよ?確実な証拠もないし、
 もしかしたらあのボタンは事件と何の関係もないのかもしれないわ!」

律が反論する

「何言ってんだよむぎ!お前が見つけた証拠じゃんか!
 この状況で、これだけの偶然が普通重なるか?
 間違いない、憂ちゃんをやったのは…ここのやつらだ!」

純ちゃんも律に同調する

「そうですよ…きっとここに、私たちの敵がいるんです…!」

むぎと梓はますますオロオロするばかりだ

私は、少し様子を見ることにした。ただ何となく



336 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 22:26:27.73 ID:3x3g8P0G0

その時

ヴヴヴヴヴン、ヴヴヴヴヴン、ヴヴヴヴヴン

奇妙な音が部屋に響いた

私の携帯電話が、テーブルの上で震えている

ディスプレイには『唯』の文字

「唯からのメールだ…」

みんなの動きが止まった

私は携帯電話を手に取り、メールを開いた

『新しい探偵事務所を見つけました。
 料金も前よりずっと安くて、ちゃんとしてるみたいです。
 これならきっと、すぐに見つけてもらえると思います。
 でも大丈夫、見つけたらちゃんとしらせます。
 それじゃみんなによろしくね。』

私はメールを読み上げると、

「ごちゃごちゃやってる場合か?」

と尋ねた。誰も何も答えなかった



337 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 22:44:54.24 ID:3x3g8P0G0

「今のメールの中身、聞いたろ?あの詐欺みたいな探偵事務所はやめたみたいだけど、
 また別のところに依頼はしてるんだ。つまりまだまだお金はかかるんだよ
 唯がどうやって、どんな気持ちでお金を稼いでるのか、忘れたのか?
 折角みんなで頑張って、むぎがいいところに気付いてくれたおかげで、
 大きなヒントが手に入ったんだろ?
 ここで馬鹿になって仲間割れしてどうするんだよ、律!純!」

律と純ちゃんはうつむいて黙り込んでしまった

「すみませんでした…私、憂の仇が見つかったと思ったら…夢中になっちゃって…」

純ちゃんが泣きながら謝る

律はそっぽを向いたまま

「悪かったよ。あたしもさ、興奮しすぎた。ごめんな、むぎ…澪も」

むぎが微笑む

「ううん、私はいいの。わかってもらえれば何も気にしないわ」

梓もホッとしたようだ。とりあえず一安心…か…?



339 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 22:58:03.60 ID:3x3g8P0G0

とりあえず、仕切り直しだ

「まあ何にせよ、この発見は私たちにとっては大きな一歩だと思う。
 調べてみる価値は十分すぎるほどにあるはずだ
 …ちなみに、この梅ヶ峰高について…何か知ってる人はいないか?
 どういう学校かとか、友達が通ってる、とか…」

みんなお互いに顔を見合わせるばかり

「現状としては情報ゼロ、か…」

梓がファイルを見ながら言う

「ここ、生徒数が600人以上いますね…男女半々と考えても約300人…」

律が投げやりに言う

「多いんだか少ないんだかよくわかんないなー」

言い方はともかくとして、私もそう思う

300人の中から4人を絞り込むというのは実際のところどうなのだろう

「でも…やるしかないわ。手がかりがそれしかないのなら…やるしかないもの!」

むぎが決然と言い放った

そうだ。やるしかない。ごちゃごちゃ言っている暇はないのだ

唯のために…



344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 23:22:37.07 ID:3x3g8P0G0

「さてと、どうやって4人を絞るかだが…」

私がアイデアを募ろうとしたところで、律がそれを遮った

「待った待った」

「何だよ律。せっかく喋ろうと思ったのに…」

「いやゴメンゴメン。でもさ、まだ後輩組の発表聞いてないぞ?」

あ。そう言われればそうだ。私としたことがすっかり忘れていた。

結局何だかんだ言ったところで私も舞い上がってたということか

「ごめん、梓、純ちゃん!べ、別に他意はないんだ」

私が両手を合わせると、二人ともくすくす笑った

「別に大丈夫ですよ、気にしてないです。ね、純?」

「そうですよ。それに私は…
 結局何もヒントになるようなことは思い出せませんでしたし…すみません」

純ちゃんがしょげてしまった。私はそれを慌てて慰める

「いや、それはでも、しょうがないよ。
 というか当たり前なんだ、純ちゃんは犯人を見てないんだから」

「そうよ。それに、純ちゃんはその分、色々私たちのためにいい意見を言ってくれているもの」

むぎも優しくねぎらう

「先輩方…すみません、ありがとうございます」



346 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 23:44:08.15 ID:3x3g8P0G0

「おさんにんさーん」

素っ頓狂な律の声

「な、何だよいきなり…」

「まあそっちのしてることもそれはそれでいいんだけどさあ
 ここに一人ぐんぐんハードル上げられてる美少女がいるんだよなぁ~」

律の目線の先には…涙目になっている梓…

「私…純の分までカバーできるほど…たいしたこと…思い出せてないかもです…」

あああまずい、これはまずい

「大丈夫だ!大丈夫だから泣くな梓!」

「そ、そうよ梓ちゃん!ほんの小さな一歩が大きな一歩に繋がることはたくさんあるわ!」

「そ、そうそう!何も言うことがない私よりずっとマシだって!」

ああもう、どうしたものか。律、お前も何かフォローを…

「若いってのはいいもんですなぁ~」

私はこのとき、律に軽い殺意を覚えた



356 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 00:42:41.64 ID:5qh9ZY2e0

とりあえず、一旦ここで休憩ということにした

お茶を淹れ直し、私たちはむぎの持ってきてきれたお菓子を楽しんだ

またいつか、唯と一緒にお菓子を食べられたらいいな、なんてことを考えながら

それから、あらためて梓の発表に入った

「あの、あんまり役に立つことは思い出せてないかもしれません
 あと、思い出したりみなさんの話を聞いたりしているうちに考えたこともあるので、
 それも一緒に聞いていただけますか?」

「もちろんだ。遠慮なくどんどん言ってくれ」

「はい。それじゃあ…」

そう言って梓は数枚のルーズリーフを取り出した

「ええと…まず犯人の特徴をあらためて思い返してみました。まず…髪の毛が黒い人はいませんでした」

「全員、茶髪ってことか?」

「はい。色の濃さとかそういう細かいところまでははっきりしませんが、黒髪はいなかったです
 それから…憂の腕を押さえていた男は白いタンクトップを着ていました
 もう一人の、ビデオを回していた男も、制服って感じはしなくて。私服っぽかったです」



364 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 01:01:09.32 ID:5qh9ZY2e0

律が腕を組んで考える

「私服が二人…何だろうな、何か変だ」

梓が続ける

「はい、私もどこか違和感を感じて、考えたんです。で、思ったんですけど
 全員が全員高校生とは限らないんじゃないかって
 高校生がいたから、それは高校生だけの集団だ、と決まるわけじゃないですよね
 高校生は学生服を着た二人だけで、残りの二人は中学生かもしれない、大学生かもしれないです
 もちろん、ただ単に私服に着替えてたってだけで、
 全員が同じ高校の生徒って可能性もやっぱりあると思います」

純ちゃんが

「多角的に考えろ、ってことだね…」

と呟いた

梓がうなずいて続ける

「そう。色んな可能性を考えて事に当たらないと、大きな失敗にも繋がっちゃう
 私たちがしてることは、ただの人探しじゃないんだから」



369 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 01:16:40.37 ID:5qh9ZY2e0

「あー、何かいろいろややこしいなーもー!」

「それから、体型は全体的に…中肉中背というか。すごく太ってたりすごく背の高い人はいませんでした
 あと、これも確証はないんですけど、タンクトップの男が逃げるときに、胸元が一瞬光った気がしたんです
 こう、ピカっと。あれは多分、ペンダントか何かが反射したんじゃないかと思います」

「茶髪で、タンクトップで、ペンダント…」

「何だかいかにもって感じだなー」

律は呆れ顔だ

梓はルーズリーフを半分にたたんで言った

「とりあえず、今のところは…これくらいです。すみません、大したことのない情報ばかりで…」

「そんなことないよ。十分役に立つ情報だったじゃないか」

私は心底そう思った。これで、探すべき目標もある程度絞られる

着実に、目標に近付いている。そんな確信があった



422 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 21:34:21.92 ID:5qh9ZY2e0

「ここまででわかったことをまとめるぞ
 憂ちゃんを襲った犯人は4人組で、『私立梅ヶ峰高等学校』の生徒である可能性が高い
 ただし4人全員がそこの生徒だとは限らない
 
 また、最悪『梅ヶ峰高』と犯人とはまったく関係ないというケースもありうる。
 ここは覚悟しておいてくれ

 次に、犯人の特徴。中肉中背で、全員が茶髪。これは重要な手がかりだ
 …とりあえず今のところはこれくらいだな。あと…何かある人はいるか?」

お互いに顔を見合わせる。特にないようだ

私はお茶で唇を湿らせて、次の段階にうつることにした

「それでは、『梅ヶ峰高』を当面のターゲットとして調べていくことにする
 それで、調べる方法だけど…」

「やっぱ地道に聞き込みかー?」

「まあ、それが妥当な線だと思う。知り合いでも入れば内部の細かいことも聞けたんだろうけどな…」

私はそこで、聞き込みの方法を話し合おうと思った。しかし

「あの、もっといい方法がありますよ」

純ちゃんが言った



425 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 21:44:02.99 ID:5qh9ZY2e0

「いい方法?」

私は純ちゃんの顔を見る。どこか不敵な笑顔だ

「はい。澪先輩、ちょっとパソコンお借りしてもいいですか?」

「ああ、もちろん、それは構わないよ。ちょっと待ってて」

私はパソコンの前に陣取って電源を入れた

「何だ何だ?ハッキングか?」

律が面白がって聞く。ところでこいつはハッキングの意味をわかっているのだろうか

「いえ、そんな大それたことはしませんよ。というか全然できないし」

パソコンが立ち上がった。私はイスを純ちゃんに譲る

「どうするんだ?」

私の問に純ちゃんは

「自己顕示欲を利用してやります」

と言ってにやりと笑った



429 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 22:00:14.92 ID:5qh9ZY2e0

「自己顕示欲…?」

「はい。…みなさん、ちょっとこれ見てください」

検索エンジンを回して、純ちゃんはあるウェブサイトを開いていた

ディスプレイを覗き込む

『nyxi~ニクシィ~』というサイトのようだ

「このサイト、ご存知ですか?」

純ちゃんが尋ねる。私は知らないが…どうやらみんな知らないようだ

純ちゃんは一瞬呆れ顔をした

「このサイト、国内で一番利用者数が多いSNSなんです」

「えすえぬえす?」

「純、もう少しわかりやすく説明してよ」

純ちゃんが、また呆れ顔になった。さっきより長時間だ



430 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 22:12:27.43 ID:5qh9ZY2e0

「SNSっていうのは、ソーシャル・ネットワーキング・システムの略で…」

「日本語でお願いします!」

「あうぅ…ま、まあ要するに、ネットの中で友達を作っていくシステムですね」

むぎが首をかしげる

「ネットの中でお友達を作るの?」

純ちゃんが詳しく説明を始める

「はい。たとえばこのニクシィには、登録するとそれぞれ自分のページを持つことが出来るんです」

カタカタと入力をしてマウスをクリック。ページが切り替わる

「これは私のページなんですけど、簡単な自己紹介とか、自分の好きなものとかを書き込めます
 それから、ブログみたいに日記をつけることもできますよ……ブログはわかりますよね?」

さすがに私もブログくらいはわかる。律が言った

「知ってるぞー、芸能人がなんかやってるやつだろ?」

わかってないかもしれない



433 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 22:30:26.70 ID:5qh9ZY2e0

説明が続く

「まあ日記じゃなくてもいいんですけどね。
 とりあえず何か書いてアップすると、それが公開されます
 登録してるならどこの誰のページも自由に見れるんですよ」

日記を書いて、誰でも見られるように公開…。何だそれすごく怖いじゃないか

「何だか面白そうね~」

むぎの目がキラキラしている気がする

「それで、色々検索したりして、いろんな人のページを見ていくわけです
 それで気が合いそうだな、とか友達になりたいな、
 って人がいたら友達になってもらったり、コミュに誘ったりします」

「コミュってのは?」

「共通する趣味とか興味なんかがある人が集まって作る、サークルみたいなものですね
 甘いものが好きな人が集まって美味しい店のこと話し合ったり、
 映画好きのコミュでは映画について語り合ったり…」

「へえ…すごいんだな…知らなかった」

私は素直に感心した

「…女子高生なら常識レベルなんですけどね」

純ちゃんがぽつりと言った



435 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 22:50:26.85 ID:5qh9ZY2e0

「でもさ、それはわかったけど…だからどうなんだ?」

律が問い掛ける

「まあ見ていてください…たとえば…」

純ちゃんが何か入力している…桜が丘高校…?

ページが切り替わる

「見てください、これ」

長方形の枠の中に、文字と小さな画像、それが縦にいくつも並んでいる

『桜が丘高卒業生』、『桜が丘高バスケ部あつまれ』、『新潟県立桜が高等学校』…

これって…

「これ全部、コミュです。桜が丘高校って入力するだけでかなりありますね
 まあ私たちの学校以外にも桜が丘高校ってあるみたいだけど、そのへんは見分けるのも簡単だし
 多分詳しく探せば先輩の知り合いの方なんかも見つかるかもしれませんよ
 もちろん、その学校の生徒全員がニクシィに登録してるとは思えないし、
 登録しててもコミュにまで入ってるかはわからないけど…」

くるりとイスを回転させ、純ちゃんが私たちのほうを向き、言った

「これ、使えると思いませんか?」



437 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 23:03:47.04 ID:5qh9ZY2e0

「梅ヶ峰校のコミュを探して、その中から犯人の手がかりを探すってこと…?」

「そう。コミュだけじゃなくてもいいんだ。日記のタイトルとか、もっと細かい検索も出来る
 日記だから日付もはっきりわかるし、画像も貼り付けられるから
 そこから何か見つけることも出来るかもしれないよ」

純ちゃんの言葉に、みんなの顔がほころんだ

「…いける!これならいけるかもしれないぞ!」

「はいです!少なくとも聞き込みよりずっと早く情報が集められます!」

「本当だな。純ちゃん、お手柄だ!」

「ありがとうございます。
 それに…もしかしたら、犯人の顔や名前も意外とあっさり特定できるかもしれませんよ」

むぎが驚きの声を上げる

「へえっ!?本当に!?」

純ちゃんが答える

「もしかしたら、ですけど。犯人の男どもがチャラい馬鹿男だったとしたら、です」



442 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 23:37:22.74 ID:5qh9ZY2e0

「このサイトって、実は個人情報がかなり漏洩しやすいんです
 サイトの運営側のせいじゃなくて、ユーザーのミスのせいでですけど
 たとえば…ちょっと見てください。これは私のページなんですけど」

画面は先ほどの、純ちゃんの日記に戻っている

梓が画面上を指差す。熊のぬいぐるみの写真だ

「これ、純の部屋にあるぬいぐるみだ」

「そう。トップページには自由に画像が貼れるんだ
 まあ自分の部屋だとかお気に入りのものだとか、ペットだとかの写真を貼るのが普通だね
 自分の顔写真貼るにしても、普通は一部隠したり、加工したりして、はっきりとわからなくする」

「まあ、それはそうだよな」

私なら絶対に顔なんか載せない

「でも中にはその辺気にしてなくて、はっきり顔がわかる画像を貼り付ける人もいるわけです」

「本当か?」

「ええ、いろいろ見ていけば見つけられるはずです
 それから、ここ、見てください」

純ちゃんは画像の下あたりを指差す。『Jum』と書いてある

「ジャム?」

「私のニックネームです。このニクシィの中では、私は『Jum』なんです」 



447 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 23:49:28.32 ID:5qh9ZY2e0

律が感心したような反応をする

「はー、別に本名じゃなくてもいいわけだ」

純ちゃんが答える

「ええ。というか本名で登録してる人のほうがずっと少ないと思います
 顔出ししてる人よりは多いでしょうけど」

梓が感想を漏らす

「でも、やっぱり普通はそこら辺は隠すよね」

「そう。普通の人は隠すんだ。個人情報だだ漏れにすることが危険だってわかってる人はね
 つまり、顔をはっきり出して本名で登録してるなんてのは相当の馬鹿だと思う」



448 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/14(土) 23:59:48.69 ID:5qh9ZY2e0

純ちゃんは続ける

「このサイト、どっぷり楽しもうとすると、
 自分の個人情報をどんどん晒していくことになりやすいんです、
 顔も名前もしっかり隠してても本当にコミュの数が多くて、
 しかもけっこう細かいところを攻めてたりするから
 『出身校』のコミュに入れば住んでる地域が絞られちゃうし、

 『髪の毛が長い人』のコミュで熱弁ふるえば髪は長いってわかる
 『マックのバイト店員』のコミュに入れば、さらにマックでバイトしてるってこともわかっちゃう」

「調子に乗って仲間増やしてると、自分のことがどんどん覚られちゃうのか…」

背筋に寒気が走った。面白そうだと思ったが、撤回する、ひたすら怖いぞこれは…

「だから、まあ何度も言いますけど普通の人は歯止め聞かせて程ほどにするんです
 でも、馬鹿だったらその辺あんまり考えないだろうから、私たちには都合がいい
 つまり…」

「つまり?」

「犯人どもが馬鹿だったらラッキーですね」

何だそのまとめは



452 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 00:12:13.60 ID:geaQFVsP0

「ま、まあとにかく、これはという人がいたら色々コミュをたどったり
 その人のお友達をさぐってみたりするといいんじゃないかと
 大丈夫そうですか?」

怖いけど…やるしかないな

「わかった。純ちゃんの策に乗ろう。みんなもそれでいいか?」

3人がうなずいた

私たちはそれから、純ちゃんにアカウントを作ってもらい、正式にニクシィの会員になった

「これであとは、パスワードさえ入れればどこのパソコンからでもアクセスできますよ
 後でサイト説明も一応読んでおいた方がいいかもしれませんね 
 まあ、わからないことがあったら、まず私に電話かメールして聞いてください。
 出会い系の誘いとかもあったりするし」

出会い系まで…最近の女子高生にはこんなに怖いサイトが常識だったのか…

しかし、とにかくこれで当面のなすべきことは決まった

私はこのときあらためて、仲間と協力することの大切さを実感した



572 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 12:04:12.30 ID:egDVSgjt0

『ニクシィの日記やコミュに徹底的に当たり、犯人の手がかりを掴むこと』

これが、今の私たちが私たちの力だけでできる、最も重要な仕事だ

私たちは、これを進める上での注意点などについて話し合った

 不用意に質問やコメントなどをしないこと

 自分の個人情報をもらすようなことはしないこと

 何度も同じ人のページに何度も何度もアクセスしないこと
 (誰がいつアクセスしたかということが、記録され公開されるシステムがあるかららしい。
  『足跡』というらしいがよくわからない)

などなど、純ちゃんを中核に据えて、色々と取り決めをした

それから、集合などについては特に日時を決めず、

報告すべきことが見つかったらその都度召集をかける、ということにした

やっと解散ということになった

時間にしてみればほんの数時間だが、驚くべきスピードで進展したと思う

だが、すべてはこれからだ。油断も安心もできない、いや、してはいけないのだ



573 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 12:04:46.87 ID:egDVSgjt0

律を残して、あとの3人は私の家を出た。去り際にむぎが

「夏休みが終わるまでに、一度くらいはみんなでどこかに遊びに行ければいいのにね」

と言って微笑んだ

そうだ、一度くらいはみんなで思い切り遊びたい

そしてそこには、笑顔の唯が、いなくてはならないんだ


それからしばらくの間はパソコンに向かい続ける日々が続いた

初めのうちは不安感と恐怖心もいっぱいではかどらなかったが、日を重ねるごとに慣れていった

『梅ヶ峰高校』関係のコミュは実にあっさりと見つかった



575 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 12:06:15.55 ID:egDVSgjt0

あっさり見つかったはいいが、その数は思いのほか多かった

『梅ヶ峰高校野球部』『梅ヶ峰男子』『梅ヶ峰高2年生』
『梅ヶ峰高校の卒業生』『梅ヶ峰の七不思議研究』etcetc…

また、コミュの名前に『梅ヶ峰』が入っていなくても、

その中身は『梅ヶ峰』に関することだったりもして、ややこしい

だが、この程度のことでへこたれているわけにはいかないのだ。頑張らねば

まずは順当に『梅ヶ峰高校の生徒』というコミュに目を通し、そこから個人のページに飛ぶ

個人のページにはどのコミュ入っているかも表示されるから、

その人の趣味嗜好、人となりなどが一目でわかる

お堅い感じの日記をつける人は参加コミュも比較的まじめで、

チャラチャラした日記をつける人は、そういういかにもなコミュに多く参加していた

また、同じ高校生でも文章力にはそれぞれ驚くべき差があるということもわかった。

チャラチャラした感じの人の日記は、何と言うか支離滅裂なものが多く、

もしかしたら暗号か何かを使って機密を守っているのではないか、と勘繰りたくもなった。

こういった文章に慣れるのは実に大変だった

傾向としては、コミュに積極的に加入しているのは女の子で、

男はそんなに多くのコミュには参加していないようである

いろいろな発見と気付きがあった。

こういう世界が、私のあずかり知らぬところで広がっていたということにあらためて感心する

感心している場合じゃなかった



577 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 12:07:05.66 ID:egDVSgjt0

こうして、数多くの日記を読み、

ほんのささいなヒントでもないかと目を凝らしていく日々の結果、

何人か気になる人物をピックアップすることができた

気になるページをプリントアウトして、ファイルにとじていく

気付いたこと、気になったことなどがあればメモしたり付箋紙を貼ったりしておく。

この前の話し合いで、あらかじめそういう風にしておくこと、と決めておいたのだ

私たちが再び集まったのは、前回の集まりから一週間ほどたってからだった

場所は前回同様私の部屋だ

「おいおい~みんなまぶたが腫れぼったいぞ~?」

集まったみんなの顔を見て、律が思わず吹き出した

そんな律のまぶたも赤く腫れあがっていた



578 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 12:07:35.20 ID:egDVSgjt0

私の部屋に入り、それぞれ前回と同じ場所に座を占める

今回は、それぞれが作成したファイルをまずは回し見する。

それから、他の人のファイルを見て疑問に思うことなどがあれば聞く。

そして最終的に、特に気になった点を発表するという形で行うことにした

しばらくの間、部屋の中にはファイルをめくる音と、質問・返答する小さな声ばかりしていた

私は、ささいなことでも何となく気になったらファイルするという方法をとっていた

『今日は女の子を強姦した』なんてそのまんまな日記があるはずもないのである。

そこにそこに繋がるかもしれない小さなヒントを見つけることが大切なのだ

地道に地道に、ページをめくっては目を通すことを続ける



580 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 12:08:42.43 ID:egDVSgjt0

そうして数時間後…みんなが特に怪しいと感じた人物をピックアップし、

ニックネーム及び日記・自己紹介やコミュなどから推測した情報を簡単にノートにまとめた

・しん 梅ヶ峰高3年、当日に商店街に行っている
・鉄 梅ヶ峰高3年、6月までは童貞であることをコンプレックスにしている内容の日記を多く書いていた
・タカちゃん 梅ヶ峰高3年、男尊女卑
・キムラ 梅ヶ峰高2年、暴力的な内容の日記を書く
・かず  梅ヶ峰高2年、当日に商店街に行って食事をしている
・Toshi 梅ヶ峰高2年、桜高のある女子に惚れている、当日に商店街に行っている
・ユーキ 梅ヶ峰高2年、日記に頻繁に『レイプ』という単語を使っている
・ぐっさん 梅ヶ峰高2年、当日に商店街に行っており、『良いこと』があったらしい(良いことについての言及 
 はない)
・内田 梅ヶ峰高2年、7月からの日記にしきりに『童貞を卒業した』と書いている
・タキ 梅ヶ峰高2年、暴力的な内容の日記を書く
・天狗 梅ヶ峰高1年、日記の中でレイプ願望があると告白している
・タナカさん 梅ヶ峰高1年、当日に商店街に行っている、7月からの日記でしきりにぼやいている
                      ・
                      ・
                      ・

こうしてまとめていくうち、最終的に30人を越える容疑者が挙がった



581 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 12:09:33.94 ID:egDVSgjt0

私はノートをみんなに示した

「とりあえずこんな感じで挙げてみたけど…」

梓がうんざりしたように漏らす

「男って下品ですね…」

「この中に犯人がいるのか…?」

律が疑問を投げる

「わからない…でも、とにかくここに挙がった男をあらためて調べてみよう」

私は一覧をコピーしてみんなに配った。

それから一人につき数名ずつ分担してさらに詳しく調べ、明後日また集まることにした

ところが



585 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 12:37:26.15 ID:egDVSgjt0

その夜、9時を少しまわったころ。律から電話があった

「ちょっと気付いたことがあるんだ!今から行く!」

気付いたこと…?一体何だろうか

しばらくして律がやってきた。よほど急いだのか、汗びっしょりである

「パソコン!使わせてもらうぞ!?」

律はそう言って、私を追い越していった。

これは…期待、できるのかもしれない…!

私が部屋に入ると、律はもうパソコンの前に座ってニクシィのページを開いていた

「おい律!一体何なんだよ、そんなに慌てて…」

律は私の問い掛けにパソコンから目を離さずに答える

「家に帰ってからな、『かず』って奴のことを調べてたんだよ。
 そしたらコイツ、このコミュにも入っててさ」

パソコンには『喜多上中学校卒業生』のコミュが表示されていた



586 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 12:46:01.97 ID:egDVSgjt0

「きた…がみ、か?卒業中学のコミュか」

「ああ。で、澪がコピーしてくれた一覧に名前が書いてあるやつで、
 このコミュに入ってるのが他にもいるんだ」

「『かず』って奴以外にもか?」

「ああ。『タキ』と『ぐっさん』だ」

律は画面をスクロールさせる。たしかに、『かず』『タキ』『ぐっさん』の名前が確認できた

「確かに同じコミュに入ってるな…」

律が畳み掛けるように言う

「しかも全員同じ学年だ。おまけにこの3人はお互いを友人登録している。
 つまり、同じ中学出身で、かなり仲の良い3人組ってことだな」



589 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 13:03:12.94 ID:egDVSgjt0

「かなり仲が良いってのはどうしてわかるんだ?」

「お互いの日記に、頻繁にコメントを付け合ってる。
 文面から見ても仲が良いのは間違いない。

 それから…さっきの一覧表見るとわかるけどな、
 『かず』と『ぐっさん』はあの日の放課後、商店街に行ってるんだ」

「ってことは…」

「おそらく、一緒に商店街に行ってると思う。
 しかもそのとき『ぐっさん』は良いことがあった、と日記に書いてるんだ…」

律の言わんとすることはわかる。が、私にはまだピンと来ない

「律の言いたいことはわかるよ。でもそれは、こいつらが一緒に商店街に行ったってだけのことじゃないのか?
 それに、『タキ』ってやつは商店街には行ってないないみたいだし、何より憂ちゃんを襲ったのは4人組だ」

律が反論する

「『タキ』は事件当日にそもそも日記を書いてないんだ。その次の日もだけどな。
 それに、4人目はニクシィに加入していないのかもしれない
 それか、ニクシィには加入してるけど、梅ヶ峰高の生徒じゃないかもしれない。
 ほら、梓が言ってたろ?犯人の中にはタンクトップのやつがいたって」

「確かに、それはそうだけど…」

「それにな」

律はパソコンに向き直り、あるページを開いた



593 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 13:19:42.83 ID:egDVSgjt0

「これは『タキ』のページだ。結構多趣味らしくてな、
 色んな写真をアップロードしてるんだけど…澪、見てくれ」

私は画面を覗き込む。ウルトラマンの人形の写真だ。
 人形を手で持って、それをデジカメか携帯電話で撮影したのだろう。
 しかし…これが何だというの?

「ウルトラマンじゃないか」

「セブンだけどな。まあそれはいいとして…気付かないか?」

「?」

さっぱりわからない

「この画像、アップされたのがつい先週なんだ。暑い盛りだ。…ここ、見てみ」

律が画面を指差す。人形を持っている手の、手首の辺りに…長袖の襟。長袖?



602 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 13:41:25.86 ID:egDVSgjt0

私は若干声を上ずらせながら言った

「おい律!長袖って、確か…」

「ああ、憂ちゃんを襲った男のうち一人は
 もう7月だってのに長袖を着ていた。梓がそう言ってたよ

 ちなみにこの写真の奥のほうにな…ほらこれ、見えるか?
 この白いの。多分これは扇風機の枠だ
 ということは、部屋にクーラーが効きすぎてて
 少し寒いから長袖を着た、というわけでもないんだよな

 さらに、もっと遡ると……
 ほらこれ、去年の夏にアップされた写真だけど、やっぱり長袖だ
 多分こいつは、年がら年中長袖を着るってのがポリシーなんじゃないか…?」

私はただただ驚いていた。うまく言葉が見つけられない

でも…

「律!すごいじゃないか!これはもしかすると、もしかするかもしれないぞ…!」

私は素直に言葉を走らせた



606 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 14:12:38.24 ID:egDVSgjt0

律は頭をかきながら笑って答えた

「ははは、まあ、いつまでも役立たずじゃいられないしな…
 でも正直、まだまだ証拠って言えるレベルじゃないと思うんだ。
 こうやってもっともらしく言ってるから、もっともらしく聞こえるけど」

何だろう、今夜の律は違う…!

「同じ中学出身の仲良し3人組がいて、そのうち二人は事件当日に商店街に行ってる
 残る一人は商店街に行っているかはわからないが、犯人グループの一人と特徴が似ている
 …これだけじゃ駄目だ。もっと確かな証拠が要るよ
 それに、もしこの3人が犯人グループのメンバーだとしたら、残る一人を見つけないと…」

「確かにそうだな…でも、これでまた一つ可能性が広がったよ。ありがとう、律」

律は頬を赤らめて、しきりに頭をかいていた



607 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 14:24:35.61 ID:egDVSgjt0

私は律の話を聞いた後、むぎと梓、純ちゃんに、予定を早めて明日集合するよう連絡した

律の発見により、調べるべき範囲が大きく広がった

・犯人グループの全員が梅ヶ峰高の生徒ではないかもしれない、ということ

・また、あの3人が犯人だとするならば、
 残る一人もおそらく『喜多上中学校』の卒業生であろうということ

私は集まったみんなの前で、昨日の律の話をまとめた

むぎも、梓も純ちゃんも、少なからず興奮しているようだった

私はここで後輩二人に一つの役目を与えた

「この容疑者3人は、二人と同じ2年生だ。
 だからもしかすると桜高の2年生の中に、この『喜多上中学校』の卒業生がいるかもしれない
 少し探ってみてくれないか。卒業アルバムなんかが借りられればなお良いんだが」

純ちゃんが即答する

「わかりました。友達に当たってみます」

梓も続いて

「頑張ります!」

と威勢良く言った



611 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 14:32:50.46 ID:egDVSgjt0

梓と純ちゃんが帰った後、、私と律とむぎは唯に接触を試みるために話し合った

唯の依頼している探偵に情報をリークするためには、

その探偵事務所がどこの何という事務所なのかを知らなければならない。それを探るのだ

もちろんそれが理由だが…本当の理由は…他でもない、唯に会いたかったのだ

ただ、これが意外と神経をつかう

唯には、私たちは普通に夏休みを過ごしていると思われていなければならない

裏で行動していることを気取られてはいけない。違和感・不信感を与えてはまずいのだ

慎重な話し合いの結果、前もってアポをとらずに会いにいったほうが自然だろう、ということになった

会いに行った日に、必ず会えねばならない

しかし、今までの経験から考えると、それは容易でない気がする

私たちはそこで…むぎに力を借りることを決めた



612 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 14:41:35.60 ID:egDVSgjt0

むぎの家の子飼いの人間に、唯のことを探らせるのである

これまでにも、むぎの家に頼ることを、考えないではなかった

しかし、そうすることは躊躇われて、実行に移せなかった

私たちがしていることは、犯罪にも繋がるようなことなのだ。

もし下手をうってむぎの家に迷惑をかけるわけにはいかない

それになにより、自分たちの力だけで何とかしたい、

という気持ちもあったからだ。唯がそうしているように…

だが、もう形振り構ってはいられない

このことを話すと、むぎはにっこり微笑んで

「大丈夫よ。ただ唯ちゃんを探すだけだもの、おかしなことにはならないわ
 それに信頼できる組織に頼むから、安心して」

と言った。信頼できる組織とは一体…



613 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 14:58:06.42 ID:egDVSgjt0

梓と純ちゃんが『喜多上中学校』の卒業生に当たり、

むぎの頼んだ組織が唯を探している間、残る私たちは

パソコンで今までどおりに作業をするということに決めた

例の容疑者3人がまったくの無関係だったときのことを考えて、

ほかの犯人の目星をつけておく必要もあるかもしれない。ゆっくりしてはいられないのだ

ところが

むぎに調査を頼んだ次の日の夕方、むぎから電話があった

「唯ちゃんを見つけたって!例の歓楽街のあたりよ!」

私はこのとき、むぎの力にもっと早くから頼るべきだったかもしれない、と思った

それからすぐ、私たち3人は私の部屋に集まった

唯に会いにいく。今夜だ。

むぎの頼んだ組織は唯をぴったりマークしているから、見失うことはないだろう

あくまで偶然を装って。

唯のことが心配だからとりあえず会いに来たら、本当に会えた、ということにして…

私たちは夜8時ごろ、家を出た



615 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 15:13:30.38 ID:egDVSgjt0

8時半、私たちは例の繁華街に立っていた。

むぎの携帯電話が鳴り、今、唯がどの辺りにいるかの情報が入った

「『xyz』っていうバーの辺りにいるらしいわ」

そこならば、以前唯を探していた頃に何度か前を通っているからよくわかった

律が深呼吸をして

「準備はいいか?」

と確認した。私とむぎがうなずく

唯に会える…期待と不安で心臓が張り裂けそうだ

10分ほど歩き、そろそろ『xyz』が見えてくる頃…

「え~?い~じゃん遊んでよ~!サービスするよ~?ケチー!」

唯が、いた



618 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 15:25:32.13 ID:egDVSgjt0

「唯!」「唯ちゃん!」「唯ぃ!」

3人とも全力で駆け出していた

「!?みんな!?…うえあぁっ!?」

私たちは唯に抱きついた。3人ともわんわん泣いた。涙の理由はわからなかった

「みんなぁ~、重い、重いよぉ~」

唯は困ったような笑顔を浮かべていた


それから私たちは、以前入った喫茶店に行った

席に着き、律が頭をかきながら話す

「いや、な。3人でちょっと出掛けたんだけど…唯は大丈夫かな、って急に心配になってな
 ダメもとで来てみたんだけど…ダメじゃなかった」



620 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 15:46:33.45 ID:egDVSgjt0

唯が笑って答える。この間とはまた別の制服だ。衣装として何着も持っているのだろうか

「そっか~私すごくびっくりしたよ~だってみんなが泣きながら突っ込んで来るんだもん」

それからしばらく話をした

唯はまだ援助交際を続けているらしく、

「もうすっかり慣れちゃったよ。この仕事、私に向いてるのかもしれないよ~」

と悲しいことをあっけらかんと言い放った。こんなの仕事じゃないだろうに…

また、探偵事務所は新しくしたが、やはり進展はないようだ

「『虎田探偵所』っていうんだよ。おもしろい名前でしょ。ネットカフェで探して見つけたんだ」

あっさり探偵事務所の名前がわかってしまった。これで情報を流すことができる

とりあえずの目的は達した。でもそんなことは、正直どうでもよかった

今は、とにかく唯といっしょにいたい。話していたい。笑いあっていたい…



623 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/16(月) 15:59:01.69 ID:egDVSgjt0

でも、そうもいかなかった。9時半を回った頃、唯が言った

「ごめんね、今日はちょっとお得意さんと約束があるから…もう行かないと」

お得意さんまでいるのか…やっぱりショックだ

私は立ち上がった唯に、こう聞いた

「なあ…まだ、あの時と気持ちは変わらないのか?」

私の問い掛けに、唯は表情を曇らせて、

「うん…ごめんね。
 私はやっぱり、あいつらを許せないし、自分の力だけで仇をうちたいと思ってるよ
 これは…こればっかりは、ずっと変わらない気持ちだと思う」

…そうか。やっぱりな…

私たちは唯と一緒に店を出た

唯はやつれた笑顔で

「じゃーね!また会おうねー!」

と手を大きく振り、駆けていった

唯の背中が見えなくなった頃、私は、私たちがまた泣いていることに気付いた




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