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律「バンドミーティング」#中編 【音楽】


http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1281621444/

律「バンドミーティング」#前編
律「バンドミーティング」#中編
律「バンドミーティング」#後編

梓「あごらえせうてんぽ」
澪「Living On The Edge」
紬「ね、私を連れ出して?それで一緒に踊るの」




130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 05:22:11.12 ID:VWt2VP5+0

良い音楽ほど売れない。

こう言う決まり事は時に覆される。

売れたのだ。

「YUI」程では無いが、ちょっとした話題になるような売れ方をした。



マキシシングル。

一枚につき、ワンアイデアツーアイデアスリー…、無数のバージョン違い。

こう言うやり方も一役買った。



131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 05:23:55.77 ID:VWt2VP5+0

何枚プレスしますか?

唯「2万枚で!」

それは素晴らしすぎるアイデアだ。

凡人の頭からは出て来ない。

よし、やってみよう。

唯が自信があるのなら、私は反対しない。

それがHTTレコードのやり方だからだ。



139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 11:41:23.64 ID:VWt2VP5+0

レーベル立ち上げ、レコーディング、プレス、プロモーションその他諸々。

唯がメジャーで稼いだ金は全て注ぎ込まれた。

私の稼ぎも注ぎ込まれた。

家族に頭を下げて借金した。

そして、その結実として目の前に積まれた2万枚のCDケース。

唯「冒険し過ぎだったかも知れないねー」

今更?!

馬鹿ヤロー!!



140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 11:45:24.98 ID:VWt2VP5+0

・・・


私と唯のオフィス兼自宅

(唯は事務所からあてがわれたマンションを追い出されたし、私も金が無かったんだ。
 ルームシェアってのもオフィス兼てのもごくごく真っ当なアイデアじゃないか?)

であるところの築三十年の一軒家に2万枚が運び込まれる様子を見た時には、

自分達の決定のアホ臭さに失神しそうになる。

その二万枚分の重さは床を歪ませ続け、ついには三十年物の床はその重さに耐え切れず抜けてしまう。

そんな様をその一瞬に想像してしまい、私も唯もその場で嘔吐しそうになる。



141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 11:46:42.40 ID:VWt2VP5+0

しかし、そんな崩落の心配は杞憂に終わった。

目に見えて箱は掃けていったからだ。



142 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 11:47:29.29 ID:VWt2VP5+0

雑誌媒体に無視される?

そんなら、動画サイトに上げてやる。

リエディットしたロングバージョン、ダブバージョン、リミックスをレコード屋で配れ。

「これ『YUI』じゃないか?」

「売名乙」

「あれより全然格好良いじゃん!」

「何で名前変えてんの?」

以前の悲しすぎる経験とは大違い。

あれやこれやでカルトヒットと言う奴だ。



143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 11:50:28.73 ID:VWt2VP5+0

全てが上手く行き過ぎた。

こうなると家内制手工業的なやり方を脱皮しなければいけなくなる。

少なくともそう言うプレッシャーは掛かる。



144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 11:51:24.36 ID:VWt2VP5+0

オフィスは住宅街から、駅の近くのビルの一フロアに。

唯の部屋はマンションに。

営業車兼機材車は役割分担出来るように、

私の自家用車兼営業車のアッパーミドルセダンと小型バスに。

社長の私とローディとマネージャーも役割分担。



145 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 11:53:03.51 ID:VWt2VP5+0

私も唯もただやりたかったからやって来ただけだが、
新しく増えた船員たちはそれでは満足しない。



146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 11:54:50.96 ID:VWt2VP5+0

こんな事があった。
マネージャー「メジャーから傘下に入らないかって話が来てるんですけど。

つまり、A&R部門として有る程度の独立性を保ちつつみたいな…」

拒否だ。

こいつは私達のやり方をもう少し学んだ方が良い。



147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 11:55:57.96 ID:VWt2VP5+0

時にはこんな事もあった。

M「メジャーの流通経路を使わせて貰うと言う話はどうっスかね?
  勿論、幾許かのお金は入れないといけないと思いますけど、
  完全独立の関係なんで前の話とは違いますよ。
  検討する価値あると思いますよ?うちに取っても悪い話じゃないと思うんですけど」

なるほど、こいつは有能な奴だ。

普通なら良いニュースだと飛び付くところだろう。



148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 11:56:55.73 ID:VWt2VP5+0

律「そうだなー」
次に続く言葉は驚く事に「拒否」だ。
理由?
感覚的なものだ。

納得しろ。

それが私と唯のやり方だ。

つまり、私達の活動はある種狂信的な信念に支えられていると言う訳だ。



149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 12:00:33.51 ID:VWt2VP5+0

そして最終的にはこう言うこんな感じだ。

M「プロモーションの専門家をいれましょう。
  そうしないと、例え今度のアルバムが売れても次は頭打ちですよ。
  それぐらいの金をけちるのはどうかと思いますよ。
  昔から言われてる損して得取れってやつですよ。」

律「そうして金儲けしてどうするんだよ。
  いや、私はお金を儲けるのが嫌だって言ってるんじゃないよ?
  お金があれば、質の良い…だって吸い放題だからね。
  でもさぁ、まず売るためにってのは違うんじゃないか?」

M「でも、律さん、分かってますか?それじゃ成功はあり得ないんですよ?」

律「それだよ。成功ってなら『YUI』だって成功してた。
  でも、それじゃ嫌だから私達はここを始めたんだよ。
  もし、もっと成功したいって言うなら…」

お前がここじゃ無い場所で頑張るしかないよな?

律「取り合えず、次のは半年後発売を目指してるって状況で良かったよ。
  体制を立て直す余裕があるってことだからな。唯には伝えておくから」



150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 12:03:06.26 ID:VWt2VP5+0

マネージャーの呆然とした表情ったら無かったな。

でも、彼は私達のやり方の学び方が少し甘かったんだから仕方が無い。



151 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 12:07:57.46 ID:VWt2VP5+0

取り合えず、速やかにしなければならない事は新たなマネージャーを見つける事だ。

良いマネージャーの条件に、アーティストと同じ方向を見ていると言うのがある。

アーティストと同じオーラを纏う事が出来れば完璧だ。

そう言う人材を探さなければならなくなった。



152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 12:09:50.37 ID:VWt2VP5+0

バイト「律さん、デモテープ今日の分です」

律「置いといて」

バイト「はい」

唯の成功を見て多くのインディーズミュージシャンがデモテープを送りつけてくる。

最初は真面目に。

一週間後には?

音は聞かずに売り込み文だけを見る。

そして見込みがありそうなものだけ。

収穫ゼロ。



153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 12:11:15.83 ID:VWt2VP5+0

二、三ヵ月後には?

机の上に届けられたデモテープの山を見もせずにバーンと。

ん?だからこう言う事だ。

まとめて机の脇のシュレッダーに放り込む。

機密保持の強い味方。

CD-Rも問題なくバリバリにする。

ああ、こんな風に私たちのデモも「バリバリ」されていたのか。

人間立場が変われば昔のことは忘れると言う事だ。



156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 12:23:35.50 ID:VWt2VP5+0

出社してまず最初にやるデモテープ「チェック」。

その日、私は机の上無造作に広げられた山の頂上に懐かしい名前を発見する。

一つ、閃く。

律「よし」

一芝居打つ事に決めた。



157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 12:25:03.66 ID:VWt2VP5+0

後輩のよしみだ。

一応、音も聞いておいてやろう。



158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 12:26:26.28 ID:VWt2VP5+0

一人編成。

ドラムマシンが揺らぎの無い四つ打ちのリズムを刻む。

最初は爪弾くように、それから流れるように。

悪くない。

ギターの感じとか…、あーなんだっけか、
確かなんちゃら言うフュージョンギタリストっぽいな
(あとで、思い出したけどパット・メセニーのことだ)。

四つ打ちなんだけど手触りがって言うか…。

うん、何度か聞けばより好きになる感じもある。

取り合えず、今すぐ会うんだ。



159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 12:29:36.06 ID:VWt2VP5+0

大柄なフレームのサングラス。

ヴィンテージスタッズ使いの一点ものカスタムレザージャケットにサテンのトップス。

デザイナーズブランドのスキニーデニムをフリンジブーツにイン。

勿論、カチューシャは付けない。

最初に驚かす事が肝心だ。

身長が足りないのは悔しいが、心意気だけは本場セレブにも負けない女社長のお出ましだ。



160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 12:30:51.01 ID:VWt2VP5+0

律「初めまして。私がHTTレーベルオーナー田中です」

偽名です。

日系三世リッチー田中ってのが私だ。

それっぽくない?

革張りソファーに緊張気味の我が後輩。

梓「あ、はい、中野梓です。初めまして…」

律「ああ、座ったままで良いよ。私は音楽を売る、君は音楽を作る。うちでは対等の関係だから」

梓「そうなんですか…」

律「うん。だからもっとリラックスしてよ」



163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 13:02:34.37 ID:VWt2VP5+0

梓「は、はい」

視線があっちいったりこっちいったり。

前髪で隠れ気味の私の表情を覗こうとしたり。

ぷぷぷ。

なんだよ、あの緊張した表情。

梓「あ、あのコーヒー飲んでも良いでしょうか」

律「良いよ良いよ。飲んで?それとも紅茶の方が良かったかな?
  あ、冷めちゃってるでしょ?入れ直させようか?」

梓「い、いえ大丈夫です。そんなお気遣いは…」

そう言うと、今まで手をつけずにいた冷めたコーヒーを一気に流し込む。



164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 13:04:35.62 ID:VWt2VP5+0

少し落ち着いた?

ふふ、梓は相変わらず『あずにゃん』だな。

梓「あ、あの…」

律「ん?何?」

梓「リッチーさんって、女の方だったんですね」

律「意外?」

梓「い、いえ…」

律「まあねー。いきなりレーベル立ち上げてってのは、日本だとあんま無いかも知れないよね」

梓「リッチーさん、凄いですね」

律「それだけ、唯に惚れ込んでたって事だよ」



165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 13:06:36.02 ID:VWt2VP5+0

あ、ちょっと傷ついた表情。

『私たちより仲良さそうにしないでー』って嫉妬してんのかな。

梓可愛い。超可愛い。

律「そうそう、デモテープ聞かせて貰ったよ。中々良いと思った」

梓「ありがとうございます!」

律「でもさ、何でうちに送って来たの?
  私はこう言うのもそこそこ聞くからより疑問に思うんだけど、
  うちみたいなとこよりもっと良いとこあるでしょ?
  このクオリティならこう言う音を専門にしてる老舗でもって思っちゃうんだ」

私も大概意地悪いねー。

でも、梓と話すのも久々だし、種明かしはもうちょっとだけ先延ばし。



167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 13:08:18.99 ID:VWt2VP5+0

梓「そ、それは…」

律「あ、ごめんね。中野さんを責めてるとかでは無くて、正直な話少し疑問に思っちゃってさ」

梓「あの、二枚目に出した奴の三曲目ってリズムを四つ打ちに完全に差し替えてたじゃないですか。
  で、キックにもリバーーブかけてたり。

  それで、そう言う自由さが許されてるなら、今回私が送ったみたいのも許されるかなって…」

律「なるほど…」

梓「その…、あとは新しいレーベルってのが良いなって。
  メジャー傘下の形だけインディーズじゃなくて完全にインディーズと言うのも良いなって」



169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 13:09:36.23 ID:VWt2VP5+0

まだまだ、本心隠すね。

良いよ?
もう少しこう言うのを続けよう。

律「それと…、送ってくれた曲ってギターは生演奏じゃない?
  あれだけ弾けるのにバンドとかやってなかったの?」

梓「あー…」

律「言いにくい?出来れば言いたく無い?」

ちょっと、表情が硬い。

意地悪が過ぎたかな。

梓「いえ、構わないです」

律「気を悪くしたら、ごめんね?
  でも、うちでこう言う風にデモ送ってくれた人と話すの中野さんが初めてだから。
  うん。突っ込んだ話がしてみたいってのもあるんだ?」



172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 13:12:50.21 ID:VWt2VP5+0

梓「構わないです。それにそんな大した事でも無いんです。どこにでもある話って言うか」
律「うん」

梓「少し前にちょっとバンドで揉めちゃって、
  あの、そのバンドは本当にオーセンティックなジャズをやろうって感じだったんだけど、
  私はそれがつまらないからって、もっと色々な事やって見れば良いのにって思ってて、それで…」

律「ぶつかっちゃったって訳だ?」

梓「結局、ザッパが言った通りだと思うんですよ」

律「ああ、死んじゃいないけど、ただ変な臭いがするって奴?」

梓「それです。他のメンバーはそれが分からなかったんですよ」

律「それで自由にやってみたって訳だ。でもさ?」

梓「何です?」

律「そんなバンドをやるぐらいだし、元々ジャズっぽいのが好きなんじゃ無かったの?」

さあ、こっからが本題。



173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 13:16:23.62 ID:VWt2VP5+0

梓「ええ、親がそう言う感じだったんで…。気が付いたらって感じですよね。
  でも、音楽的に衝撃を受けたのは高校の時でした」

律「ちょっと興味ある」

梓「私、高校時代にも部活でバンド組んでたんですよ」

律「へー、それもジャズ系?」

梓「いえ、それが違うんですよ。全然普通のガールズポップバンド」

律「良く分からないな」

梓「実際、最初はジャズ研に入ろうと思ってたんです。
  でもそれまでの好みとか、ポップスって言うネガティブさとか、
  そんなの吹っ飛んじゃうような、それ以上の衝撃があったって言うか。
  テクニックとか全然大した事無かったんですけど、その先輩が弾くと凄いんですよ。
  一言で言うとノれたんですよね」

私はまだその時には気付かなかったんだよな。



174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 13:17:37.93 ID:VWt2VP5+0

私はまだその時には気付かなかったんだよな。

気付けなくてごめんな?

それで、きっと澪の事も傷付けてたんだよな。

律「その先輩に衝撃を受けたんだ?」

梓「ええ。凄くその先輩に影響受けてると思います、音楽をやる上で。
  だから、大学入ってからバンド組んだんですけど、
  その時みたいなワクワク感が感じられなくて…、
  だから、ちょっと揉めちゃったって言うか…」

律「その先輩は今どうしてるの?」

梓「それは…」

クスッ、どう答えるかな。

律「その先輩と一緒に音楽をした方が良いんじゃないの?」



175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 13:20:21.50 ID:VWt2VP5+0

梓の性格なら、ファンだったり、増えすぎた親戚みたいな扱いをされる事を嫌うはず。

さあ、どう答える。

梓「…」

律「…」

梓は一つ息を吸い込む。

準備OK?

梓「あ、あの、こう言う言い方は傲慢かも知れないですけど、
  CD一枚も出してないような、自分の力で何も出来ないような状況じゃ、
  あの人と一緒にやる資格無いと思うんです。
  だから、そう言う事もあって、あの頃の自分とは違う音を作って送ったつもりです」

律「そっか」

梓「はい…」

さあ、面接が終わって自分がどう評価されたかが気になってるね。

まあ、私の答えは決まってるんだけどさ。



176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/13(金) 13:21:51.80 ID:VWt2VP5+0

律「うん。取り合えず検討するよ」

梓「あ、はい。お願いします」

律「まったく、評価して無かったらここに来て貰って無い。
  でも一応、唯と相談してね。あいつは一応共同オーナーみたいなもんだからさ」

また、嫉妬の表情。

可愛い超可愛い。

律「今回はこんな感じだけど、何か聞いておく事ある?」

梓「あ、えっと…」

律「ん、何?」

梓「HTTレコードってのは誰の命名で、どんな意味があるんですか?」



224 名前:1:2010/08/13(金) 23:48:06.14 ID:SWxm/X3kP

絡め手で来たねえ。

さて、最後にちょっとだけからかわせて貰おうかしらん?

律「Hang Tumb Tumbって分かる?」

期待してた答と違うでしょ?

唯がいてHTTならって、期待してたでしょ?



225 名前:1:2010/08/13(金) 23:54:09.32 ID:SWxm/X3kP

梓「…」

律「イタリア未来派の詩人マリネッテイの詩のタイトルで、機関銃の発射音を表して…」

梓「嘘ですよね?」

あれ?

何か睨んでる…。

梓「それZung Tumb TumbでZTTレコードの由来じゃないですか」

あはは…、良く知ってたなー…。

梓「それに…」

梓、その目つきちょっと怖いぜ…。

あ、サングラス取られた!

梓「律先輩!!」

ばれた…。



231 名前:1:2010/08/13(金) 23:56:15.30 ID:SWxm/X3kP

律「あはは…」

梓「途中から、何かおかしいと思ったんですよね」

律「でも、最初のあの緊張の仕方と来たら…」

梓「あ、あれは!?」

律「『唯に惚れこんで~』の下りでのあの表情と言ったら!
  『唯先輩を取られちゃう~』って表情だったよなぁ?」

梓「律先輩!!」

律「『ザッパが~』」

梓「勘弁して下さい…」

もうちょい、引っ張ろうかと思ったけど、いじれたからまあ良いか。



232 名前:1:2010/08/13(金) 23:58:55.78 ID:SWxm/X3kP

律「じゃ、行こうぜ?」

梓「え、どこに…?あ!」

律「そ、唯の家に。久々の再開パーティ、いやティータイムか?それをしようって話」

梓「で、でも、あ、えっと、良いのかな…。大丈夫ですか?」

律「Fuck off!」

梓「えっと…、良くない…ですかね、やっぱり」

律「ばっか、このときのFuck offはOf course you fuckin’ canって事でさ。
ロックンローラーの定番的言い回しだろ?」



234 名前:1:2010/08/14(土) 00:01:05.66 ID:rDWAvMTKP

律「どうした?早く乗れよ」

梓「律先輩…、凄い車乗ってますね?」

律「へへ、格好良い?最新のキャデラックだぜ?
  内装は特注でりっちゃんのイメージカラー黄色にしてみました。
  あとエンジンもルーツ式ブロワー付けてノーマルに100hp上乗せで400hp以上出してんだぜ?
  ホイールは22インチ。24でも良かったんだけど、あんまハイトが低いと乗り心地悪くなんだろ?」

梓「はぁ~」

ため息つきやがった。

この野郎。

ビビらせてやる。



237 名前:1:2010/08/14(土) 00:07:11.82 ID:rDWAvMTKP

アクセル一踏みで、一気に加速。

梓「うぁ!?」

油断しててシートに後頭部をぶつける梓が面白すぎる。

梓「…」

梓、何こっち睨んでんだよ。

梓「こんなのにお金突っ込んで馬鹿じゃないですか?」

もう一発。

今度は急ブレーキ。

イタリア製モノブロック8ポッドの威力を見せてやろう。

シートベルトが伸びきって頭がガックン。

わはは、舌噛まなくて良かったな。



239 名前:1:2010/08/14(土) 00:12:29.55 ID:rDWAvMTKP

律「梓良い事を教えてやる。セレブたるもの乗り物にも気を使わなければならんのよ?」

梓「今のハリウッドセレブはハイブリッドに乗ってますが?」

律「いやいや、ロックンロールの文脈ではMy baby up in a brand new caddilac♪ってのが正解だろ?」

梓「クラッシュですか?随分な分かりやすさですね」

律「な!?違ぇし!ヴィンス・テイラーだし。大体、その言い方ジョーに失礼だろ」

梓「同じ曲じゃないですか。それに、そんな外交官の息子の事なんか知りませんよ」

律「な?!」



240 名前:1:2010/08/14(土) 00:16:48.31 ID:rDWAvMTKP

梓「…」

律「なんだよ…」

梓「あははは」

律「なんなんだよ!」

梓「律先輩変わらないですね」

律「へへ、梓も変わらないな。性格もだけど、ルックスもさ」

梓「む…。これでも身長少し伸びたんですよ?」

律「何ミリ?」

梓「もう、知りません!」

律「へへ、わりいわりい」

変わらないよ。

やっぱり、お前は可愛い後輩だ。



242 名前:1:2010/08/14(土) 00:22:41.49 ID:rDWAvMTKP

律「And now, the end is near

And so I face the final curtain

You cunt, I´m not a queer

I´ll state my case, of which I´m certain

I´ve lived a life that´s full

I've traveled each and every highway

And more, much more than this

I did it my way♪」

私は良い気分で鼻歌。



243 名前:1:2010/08/14(土) 00:28:42.55 ID:rDWAvMTKP

梓はさっきまでと打って変わって真剣な表情。

梓「ねえ、律先輩」

律「んー?」

梓「私の曲リリースするつもりですか?」

律「それはどう言う意味で?」

梓「いや、知り合いだからって言うか、コネでって言うのは、ちょっと…」

律「梓はどうしたいんだよ?」

梓「…」



244 名前:1:2010/08/14(土) 00:32:42.00 ID:rDWAvMTKP

ああ、そうか。

わざわざ、うちにデモを送って来たのは唯がいるからだもんな。

自分の存在を唯に知らせたかったからだもんな?

律「梓はさ、また音楽を唯とやりたいんだろ?」

梓「?!」

そんなびっくりした顔するなよ。

私だって、色々経験したからこうしてレーベル運営なんてしてるんだぜ?

経験は人を鋭くさせるものだろ?



245 名前:1:2010/08/14(土) 00:39:13.24 ID:rDWAvMTKP

梓「正直な希望を言えば…、でも…」

律「自分はそのレベルに無いんじゃないか、と」

梓「はい、いや、ちょっと違うかな…、いえ、それもあるかも知れないですけど…」

律「さっき言ったけど、梓の作ってきたやつあれは演技とかでは無く、
  正直な感覚として悪く無かったと思うけど?」

梓「最初唯先輩の曲聞いた時に、バンドの事もあったし、
  『私こんな事してる場合じゃない』って思って、すぐデモ作って…。

  で、律先輩から、と言うかその時はそうだと知りませんでしたけど、
  レーベルから連絡が来た時は本当に嬉しかったんですよ。
  唯先輩の出してるレーベルから評価されたんだ、私にも資格があるんだって。
  でも…、でもですよ…」

律「その評価を求めた相手が友達だと、その評価が本当か自信が持てない、と」

梓「ええ、そうです…。それにその作ろうと思った自分も信頼出来なくなっちゃって…」



253 名前:1:2010/08/14(土) 01:00:28.02 ID:rDWAvMTKP

律「どうして?」

梓「また唯先輩とやりたいとか、
  横に並びたいからとかそう言う事なのかも知れないって思っちゃって」

律「それの何が問題なんだ?」

梓「だって、それってロックスターになりたいからプロを目指すって言うのと同じじゃないですか。
  不純ですよ。そんなんじゃ資格無いですよ」

律「梓、お前複雑に考えすぎだよ。お前の中にあった何らかの衝動に火をつけたのは唯の曲。
  で、その凄い唯と何かやってみたい。
  そして、表現するための方法論やその内容は取り合えず梓の中にあった。それで良いじゃん」

梓「律先輩…」



254 名前:1:2010/08/14(土) 01:04:09.99 ID:rDWAvMTKP

律「何だよ?」

梓「律先輩の考え方ってちょっと普通じゃないですよね」

うわっ、ストレートに失礼っぽい言い方されたぞ?

律「どう言う意味だよ」

梓「凄いって事です。私、律先輩のこと舐めてました」

わはは、私は凄いんだぜ?

ん…?

どっちにしろ、あんまり評価してなかったって事じゃねーか。

この野郎。

梓「でも、そうですよね。律先輩はあの唯先輩の横にずっといたんですもんね…」

梓…。



255 名前:1:2010/08/14(土) 01:08:02.31 ID:rDWAvMTKP

私こそ、中野梓と言う人間を舐めてたな。

唯の名前を見て寄って来たんだから、

マネージャーをやらせておけば満足するだろうってのは随分と相手を馬鹿にした考え方だ。



256 名前:1:2010/08/14(土) 01:13:30.08 ID:rDWAvMTKP

梓「唯先輩の、あ『YUI』の方じゃなくてですよ?曲凄いですよね。
  メロディーがとか、テクニックがって言う言葉だと、薄っぺらい捉え方しか出来ない感じ…」

そりゃ、そのどっちもがアティチュードを伴わなければ薄っぺらいもんだからな。

梓「その、なんて言うか…、凄いって一言で済ますのが一番しっくり来ると思うんですよ」

律「ああ、唯は凄いやつだよな」

梓「律先輩?」

律「何?」

梓「何で最初の曲を録音する時にドラム叩かなかったんですか?
  その…、叩きたいって思わなかったですか?」

律「唯がメジャーでやった時、私は何をしてたと思う?」



261 名前:1:2010/08/14(土) 01:25:32.78 ID:rDWAvMTKP

梓「?」

律「唯のマネージャーをしてたんだよ」

梓「そ…、う…、なんですか…」

律「だからさ、もうそこら辺は随分前にな…。
  はは、大体私より唯の方が上手く叩けるんだぜ?」

そんな言いにくい事言わせたような表情するなよ…。

私はそこら辺に関しちゃもう吹っ切れてるんだぜ?

律「たださ、私はそう言う感覚よりも、唯が作る音楽を世に出したいってのが強かったからさ」



262 名前:1:2010/08/14(土) 01:30:10.80 ID:rDWAvMTKP

梓「そう…、ですよね…、でも…」

梓、泣いてるのか…。

ふふ、やっぱりこいつは可愛い後輩だ。

柄じゃないけど、頭撫でてやるぐらいのことはしてやるよ。

梓「律先輩…」

律「うん?」

梓「ちゃんと前見て運転して下さいね」

律「お前なぁ…」

梓「あ、ありがとうございます…」

でも、ぼそりと呟くのが聞こえたから許してやる。



263 名前:1:2010/08/14(土) 01:40:26.03 ID:rDWAvMTKP



梓「そう言えば、ムギ先輩や澪先輩とは連絡取り合ってるんですか?」

律「ムギからはちょい前にメールあったよ。イギリスの輸入盤屋で唯のCDを見つけたって。
  へへ、そんで『なんで、教えてくれないの?ヒドイわ』って怒られちったよ」

梓「へー、ムギ先輩らしい反応ですね」

律「だよな」

梓「ムギ先輩はまだイギリスなんですか?」

律「あ、いや、向こうの支社に勤務で、もう日本には『来る』って感覚なんだってさ」

梓「はー、凄いですね…」

律「なあ、でもさ?向こうに住んでるムギにも、唯の事が届いたってのは、凄いと思わない?」

梓「良く考えれば、そうですよね」

律「だろ?『YUI』をいくらやってたって、ムギには届かなかったと思うぜ?
  それ考えたら、私たちの感覚は間違ってなかったって思うだろ?」

梓は改めて、感心したような表情で私を見る。



265 名前:1:2010/08/14(土) 01:43:52.46 ID:rDWAvMTKP

よせよ、照れるぜ。

でも、もっと褒めてくれ。

I Wanna Be Adored.って感じ?



267 名前:1:2010/08/14(土) 01:52:41.48 ID:rDWAvMTKP

梓「あ、えっと…、澪先輩は…?澪先輩もレーベルスタッフだったり?」

律「いや…、えっと…、澪とはもうずっと連絡取って無いんだよ…」

梓「どうして…、あ、すいません…、その詮索する気は無いんですけど…」

その表情からは聞きたいって感情しか読み取れないなあ。

良いさ。

隠すつもりも無いんだ。

梓は他人じゃないしな。



269 名前:1:2010/08/14(土) 01:58:51.55 ID:rDWAvMTKP

律「梓が大学のために東京行ってから、ずっと3ピースでやってたんだよ。
  ライブもそこそこ埋められてたし、物販のCDもちょこちょことは売れるようになってたんだ。
  私はそれに満足してたし、唯は…、まあ何も考えて無かったと思うけど、
  澪もそれなりに満足してたんだと思ってた」

でも、そうじゃなかった。

律「そんな時、澪が辞めたいって言い出してさ。
  あとは、唯を頼りにデモ作ったら、それがメジャーのセレクトに引っ掛かって、
  デビューして、嫌になって今に至る、と」

満足して無い表情だな。



270 名前:1:2010/08/14(土) 02:01:39.76 ID:rDWAvMTKP

梓「そう言うもんですか?」

律「あー、分かったよ。私が思ってるだけだから、
  澪が実際どうだったかは分からないんだけどさ、恐らくこう言う事だと思う」



272 名前:1:2010/08/14(土) 02:03:27.07 ID:rDWAvMTKP

ある種の突出した存在は、他を抑圧し後退りさせる。

良くある、そう本当に良くあるバンドが悪くなる時の典型例でしか無いんだが、

まあそんな感じだったのだと思う。

お決まりの言葉で繋げてみる。

「つまり、こう言う事だ」



273 名前:1:2010/08/14(土) 02:05:45.29 ID:rDWAvMTKP

唯の存在は澪にずっとプレッシャーを掛け続けていて、

最後には消滅させてしまったと言う事だ。

本当はもう少し複雑で、唯の才能の片鱗をプレッシャーに感じながら、

またそれを表出させない唯に苛立ちも感じていた。

さらに言うと、そう言うアーティスト的な嫉妬心と、

それを大事な友人である唯に抱いていると言う事に対する罪の意識。

それに耐えられなかったのでは無いか、と言う事だ。



275 名前:1:2010/08/14(土) 02:08:31.82 ID:rDWAvMTKP

律「と言うのが、私達と澪に関して私に話せる全て。
  勿論、澪の話を聞ければまた違うのかも知れないけど…、恐らくはこう言うことだと思う」

梓「…」

律「そんな顔するなよ」

梓「それはそうですけど…」

律「そりゃあ、その時は怒り…、いや絶望の方が強かったかな。
  だって、そうだろ?一緒にやって行くもんだとばかり思ってて、
  それ以外の可能性なんてこれっぱかしも考えてなかったんだからさ。
  それを一人途中下車ってどう言う事なんだ、ってさ」

梓「すいません…」

律「いや、梓は謝る必要無いだろ」

梓「最初に抜けたのは…」



277 名前:1:2010/08/14(土) 02:13:21.54 ID:rDWAvMTKP

私はもうツインテールはやめている梓の毛先に手を伸ばしていじる。

梓「止めて下さいよ…」

へへへ…。

それと同じだよ。

何か、不愉快に近いけど、そうとも言い切れなくてくすぐったい。

律「もう、この話はやめようぜ。澪には澪の人生がある。
  ムギだって今こっちに戻って来て一緒に出来る訳じゃない」

梓「はい…」

律「さっき言った様に理由はいくらだってあるんだ。
  でも、それだけで説明が付く訳じゃない。だからこれでおしまい」



278 名前:1:2010/08/14(土) 02:15:49.16 ID:rDWAvMTKP

梓「合鍵なんか持ってるんですか?」

律「例えば、どうしても遅れてはならない時」

梓「はぁ」

律「モーニングコールを鳴らす」

梓「はぁ」

律「唯が電話だけで起きると思うか?」

梓「思わないです」

律「そう言う事だよ」



279 名前:1:2010/08/14(土) 02:21:37.33 ID:rDWAvMTKP

相変わらず、散らかしっぱなしの玄関だな。

見ろ、梓が呆れてるじゃないか。

大体、スニーカーばかりと言うのが良くない。

あ、勿論高校時代に好評だったマーチンのチェリレもある訳だが、あまり女らしいとは言いがたい。



私がプレゼントした、ジミー・チューは…。

ちっ、箱から出してもいねえ。

ま、まあ、良いさ。

ナスティーな風体ってのもロックスターの必要条件だ。



281 名前:1:2010/08/14(土) 02:26:34.21 ID:rDWAvMTKP

律「おーっす、唯~、いるかー?」

返事は返って来ない。

また、奥の部屋か…。

律「上がるぞー」

あー、くそ、脱ぎ辛いな。

誰だ、今日はブーツでって考えたのは?

私だー。

梓に見栄張るためにルブタンのフリンジを…。

律「あ、梓も上がって良いぞ」

梓「で、でも…」

律「気にすんな。唯も気にしやしないよ」

梓「そ、そうですか…」



284 名前:1:2010/08/14(土) 02:28:30.85 ID:rDWAvMTKP

まず、居間。

脱ぎ散らかされたTシャツやパンツ、下着を拾い集めながら進む。

律「梓、これ隅にまとめといて。帰る時にクリーニングに出してこう」

梓「は、はい…」

ソファの上には食べかけのスナックの袋。

好物のアイスの袋を床にポイ。



285 名前:1:2010/08/14(土) 02:32:14.32 ID:rDWAvMTKP

やっぱり、この部屋か…。

奥の部屋の扉を開ける。

部屋中に広げられたCDやレコード。

そして、ノートPC、ヴィンテージを含む数台のシンセや録音機器、

ターンテーブル、ミキサーetcそして高校時代からの相棒ギブソン・レスポール。

そして、他の物に比べれば申し訳程度の量かもしれないが、

それなりの量と言える酒瓶や破り捨てられた小包。

注射器が無ければ良いさ。



287 名前:1:2010/08/14(土) 02:36:31.53 ID:rDWAvMTKP

私は唯の言うように60年代の大流行したそれが一番だったが、唯は何でもありだった。

ここは、音楽と自身の身体に関する唯のラボラトリー(パレルモ研究所みたいなもんかな?)
で、勿論実験の材料となるのは唯自身の身体だ。

発明した音楽を自分の精神で試し、薬は自分の身体で試す。



289 名前:1:2010/08/14(土) 02:38:58.90 ID:rDWAvMTKP

アイマスクとヘッドフォンで完全に外界から遮断された唯が座ったまま身体を揺らしている。

梓は…。

梓「…」

まあ、当たり前か。

律「ほら、憧れの唯先輩だぞー」

梓「はぁ…」

しゃあねえ。

色々踏み潰さないようにつま先で抜き足差し足。

アイマスクもヘッドフォンも一気に…。

律「よぉ」



294 名前:1:2010/08/14(土) 03:00:50.59 ID:rDWAvMTKP

唯「あ、りっちゃん…」

律「こう言うのはよせって言ったろー。
  ヘッドフォンだけにするとか、ノイズキャンセリング機能のは無しにするとか。
  火が出たりしても気付けないだろうよ」

唯「大丈夫だよぉ…」

律「大丈夫じゃねーから」

唯「むー…、ところで、何か用?」

律「客連れて来た」

唯「お客さん?誰?」

私は部屋の入り口で固まっている梓を指差す。

梓は照れたような顔で、小さく手を振っている。

何だよ、抱きついてやりゃあ唯も喜ぶのによ…、って、

律「あれ?」



296 名前:1:2010/08/14(土) 03:04:43.30 ID:rDWAvMTKP

唯「わぁ!あずにゃんだぁ!!」

速っ!

しかも、何も踏み潰さずにあの距離を一気に!?



298 名前:1:2010/08/14(土) 03:09:26.11 ID:rDWAvMTKP

私は、梓に抱きつき頬を擦り付ける唯を見て、

一瞬高校時代に帰ったかのような錯覚に陥る。

しかし、部屋中に落ちている小包は

既に高校時代がはるか昔である事を示していて、

私を高校時代は連れ戻し切らない。



300 名前:1:2010/08/14(土) 03:16:47.82 ID:rDWAvMTKP

唯「あずにゃ~ん」

梓「ちょっと、唯先輩…。もういい歳なんですから…」

唯「あずにゃんはあずにゃんだよぉ~」

おっと、梓こっちを見ても私は助け舟なんか出さないぜ?

アーティストに気持ち良く仕事をさせるのも社長の仕事だ。

看板アーティストと後輩を天秤に掛けたら針はアーティストの方に振り切るのは避けられない。



301 名前:1:2010/08/14(土) 03:22:31.96 ID:rDWAvMTKP

・・・

梓「もう、律先輩も助けてくれれば…」

律「ばっか、せっかくのサプライズゲストなんだから、
  しっかり唯に楽しんで貰わないと、なぁ唯」

唯「そうそう、久々のあずにゃん分をしっかり補給させて頂きました」

唯は後部座席に座り梓の身体に手を回したまま上機嫌に答える。

梓「唯先輩…、そうやって舌でペロリと口の周り舐めながら言うの止めて下さいよ」

唯「え、何で?」

梓「何だか、汚された気分になるからです」

唯「ひ、ひどいよ、あずにゃん…」

律「へへ、良いじゃないの、本当に久々で唯だってそう言う気分だったんだよ」

梓「そ、そりゃあ、私だって懐かしかったですけど、ものには限度ってものが…」

唯「ひどいよ、あずにゃんはもう私のこと何とも思ってないわけぇ?」

梓「そんな事無いですけど…」



303 名前:1:2010/08/14(土) 03:27:22.79 ID:rDWAvMTKP

唯「じゃあ、こうしても良いんだ!」

梓「あっ?!」

律「おい、あんま暴れんなよ。大体、唯はシートベルト締めてないじゃんよ」

唯「大丈夫大丈夫」

律「駄目だろ」

唯「いやあ、コンソールボックスの中のもの見つかる方が駄目でしょ!」

律「うっせ」

唯「大丈夫だよねー、あずにゃん!!」

また、唯はギューと梓を抱きしめシートに押し倒す。

梓「ゆ、唯せんぱい?!あっ…」

律「お前ら、人の言う事を聞けよ…」



304 名前:1:2010/08/14(土) 03:32:54.31 ID:rDWAvMTKP

・・・

唯のこのテンションは飲み屋に行っても続いていた。

梓は何度唇を奪われたか分からないし、私もおでこにキスを浴びた。

精神(音楽)と身体(薬)の研究者としての唯では無く、高校時代と地続きの唯な感じで。

人はあらゆるものになれる。

人は完全に変わってしまう事は無く、ちょっと別の姿になる方法と言うのを見つけるのだ。



306 名前:1:2010/08/14(土) 03:36:43.02 ID:rDWAvMTKP

唯「ねえ、りっちゃん」

酒は随分回っているようだったが、意識ははっきりしていたし、

酒が回って意識がスローになっている分だけ落ち着いているように見えた。

唯も梓も。

そして、私も。

律「何だー?」

唯「私さー、一体、いつになったらあずにゃん、
  連れて来てくれるんだろうって、すっと思ってたんだよー?」





307 名前:1:2010/08/14(土) 03:42:15.13 ID:rDWAvMTKP

梓「どういう事です?」

唯「だからぁ、あずにゃんがテープ送って来てくれたでしょ?」



律「あー、えっと?何でデモテープの事、唯が知ってんだ?」

唯はしまった、と言う顔をする。

唯「えーっと…、えへへ、もう、いいよね…。言っちゃうね」

梓「え?え?」

梓のテンパりを見てて私は少し落ち着く。

唯「あのね、デモね、いつもりっちゃんのとこに持ってくよりも先に
  私のとこに持って来て貰ってたんだ」



310 名前:1:2010/08/14(土) 03:47:55.80 ID:rDWAvMTKP

律「あー…」

唯「ごめんね?だって、りっちゃん、最近ちゃんと聞いて無かったみたいだし」

律「いや、私は構わないけどさ…」

唯「だから、あずにゃんがデモもいち早く聞かせてもらっていたのでした」

律「梓がさ…」

梓は酔いがすっかり醒めた様子で悶えている。

唯「あずにゃん、可愛いー」

梓「唯先輩、悪趣味ですよ」

唯「何で~?だって、聞かせたかったから送って来たんでしょ?」

梓「それはそうですけど…」

唯「結構良かったよね、あの曲。身体動いちゃうもんね?」

梓「あ、ありがとうございます…」



311 名前:1:2010/08/14(土) 04:01:29.68 ID:rDWAvMTKP

唯「あ、でもね、フュージョンぽいギターを乗っけるアイデアは良かったと思うけど、
  普通のポップスみたいにAメロBメロサビって構成作っちゃってるでしょ?
  そうじゃなくて、ベースとドラムは一小節ループで作って、
  その上に乗っけるような感じでやった方がもっと良かったかな」

梓は酔いも醒めたような表情で言葉を失っている。

唯「展開の無さって言うか、何だろ…、
  ミニマルさの美学?を生かすようなフラットな形にした方が良いと思うんだ。
  勿論、転調とかも無し。上モノ自体には展開あるし十分でしょ。
  だって、あんまり展開が多いとリラックス出来ないからね…、
  って、あれ?どうしたの二人とも」

律「あ、いや、ちょっとな」

唯「ふーん、変なのぉ」



315 名前:1:2010/08/14(土) 04:07:06.21 ID:rDWAvMTKP

律「あ、そこのマンションの地下駐車場に入れてください」

私は、運転代行に指示を出す。

唯は後部座席で酔い潰れている。

梓も当然あまり良くない酔い方をして、ドアにもたれていた。



317 名前:1:2010/08/14(土) 04:15:36.28 ID:rDWAvMTKP

律「ほら、唯、着いたぞ…」

唯「あぅ…、足…、利かない…」

律「ばっか、お前ちゃんぽんに飲みすぎだよ…」

唯「だってぇ…」

律「梓、ちょっと肩貸して…」

梓「は、はい…」



319 名前:1:2010/08/14(土) 04:20:49.63 ID:rDWAvMTKP

私と梓はやっとの事で、唯を部屋まで連れ帰るとソファに横たえる。

律「あー、すっかり酔いが醒めちまったよ」

梓「私は…、う」

梓はトイレに駆け込む。



321 名前:1:2010/08/14(土) 04:27:15.24 ID:rDWAvMTKP

仲間なんだから、そんな重く受け止める必要なんて無い。

勿論、唯には悪意なんかある訳無いし、

梓の作ってきた曲だってあれが完成形だったと言う訳でも無い。

まあ、そこら辺は実際には梓にしか分からない訳だけどさ。



324 名前:1:2010/08/14(土) 04:33:17.35 ID:rDWAvMTKP

私はベランダに出ていつものようにジョイント(レバノン産の上物だ)に火を着ける。

律「もう朝か…、ん?」

梓か。

律「もう、ゲロは大丈夫なのかぁ?」

梓「はい、何とか…」

まだ、あんまり大丈夫そうには見えないけどな。。

律「あんまさ、重く受け止める必要ないと思うけど?」

梓「そうですかね」

律「そうだろ」

梓「私、傲慢ですよね。天才でも無いのに」



325 名前:1:2010/08/14(土) 04:40:26.39 ID:rDWAvMTKP

私は梓の頭をはたく。

人間慰めて欲しいし、形としてちょっと責めて欲しい時はある。

律「そう言う態度の方が傲慢だろ」

梓「そうですかね」

律「ああ」

梓「ねえ、律先輩」

律「んー」

梓「ここで私に何か出来ることありますか?」



326 名前:1:2010/08/14(土) 04:44:49.08 ID:rDWAvMTKP

さて、どうしたもんだろう。

今はA&Rなんて碌に行う気も無い。

レーベルの金融的義務なんてものを考えてもいない。

やっぱりマネージャーか?

でも、それも梓のあんな告白を聞いた後では有り得ない。



327 名前:1:2010/08/14(土) 04:49:16.52 ID:rDWAvMTKP

律「なあ、梓がさテープ送って来てくれたじゃん?」

梓「え、あ、はい…」

律「あの時さ、丁度唯のマネージャーやってた奴を止めさせた時だったんだ」

梓「えっと…」

律「いや、仕事も出来たし、色々考えてた奴だったんだけどさ、
  ちょっと私の考えるレーベルってのとは考え方が違ったって言うか…。
  だからさ、梓がテープ送って来た時に、『しめた!』って思ったんだよ」

こう言う時に隠し事をしたり、騙したりって言う手口は使いたくない。

律「随分梓のこと舐めてたって言うかさ…、
  特に梓のああ言う心情を聞いちゃった後だとな。
  だから、『私に出来る事』って言われても、私からは…」



329 名前:1:2010/08/14(土) 04:55:55.04 ID:rDWAvMTKP

梓「…」

律「だからさ…、ん?」

梓?

何で笑ってるんだ?

梓「律先輩、何で私がやれる事がマネージャーしかないって決め付けてるんですか?」

律「いや、だって、お前…」

梓「それに、スケジュールを管理したりって
  それこそ本当にマネージャーってだけなら、バイトみたいなのでも良い訳じゃないですか」

律「そりゃあ、まあ…な…」

梓「でも、その新顔のマネージャーがどう言う人間だったか知らないですけど、
  会社のやり方に大きく関わるようなアイデアを勝手に実行しようとするなんてのは、
  その人間が相当に傲慢か、それか律先輩が怠け病を患ってるって事を
  簡単に見抜けられ過ぎるって事ですよ」



330 名前:1:2010/08/14(土) 05:00:36.52 ID:rDWAvMTKP

澪は以前Don’t Say Lazyと歌った。

それで私はLazyitisってか?

律「ちょ、梓、お前なぁ…」

梓「私なら律先輩がどう言うつもりで
  このレーベルをやってるかって事も良く分かってるし、
  それにずっと前から仲間じゃないですか」

ああ、そうだな…。

梓が手を差し出す。

律「梓…」

梓「肩書きはクリエイティブマネージャーで良いですから」

私は笑って答える。

律「言ってろよ」

私は手を握ろうとして、でも引っ込めて

梓「律先輩?」

律「へへ、こう言う時は唯も含めて、だろ?」



332 名前:1:2010/08/14(土) 05:06:03.22 ID:rDWAvMTKP

梓に気付かされたのだけど、私がやりたかったのはレコード会社じゃない。

そう、ある種の理想主義的に支えられた共同体って奴だ。

だから、これは凄く良い流れだ。




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律「バンドミーティング」#中編
[ 2011/10/01 23:06 ] 音楽 | | CM(0)

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