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律「バンドミーティング」#後編 【音楽】


http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1281621444/

律「バンドミーティング」#前編
律「バンドミーティング」#中編
律「バンドミーティング」#後編

梓「あごらえせうてんぽ」
澪「Living On The Edge」
紬「ね、私を連れ出して?それで一緒に踊るの」



345 名前:1:2010/08/14(土) 06:47:15.04 ID:rDWAvMTKP

梓の加入は色々良い影響を与えた。

まず、親がセミプロで、自身もまたプロ志向が強かった梓は

私達とは違う方面で色々な人脈を持っていたし
(例えば地方のそれなりに力のあるライブハウスオーナーと知り合いだったり)、

他にも大学時代のサークルの仲間には売り出し中のDJがいたりした。

梓はそんな連中を唯に会わせては、ちょっとしたシンパみたいなものを増やしていった。

また、唯に取っても梓に連れられて外出する事はそれなりに刺激を得る経験のようだった。



346 名前:1:2010/08/14(土) 06:53:26.40 ID:rDWAvMTKP

梓「ねえ、そろそろライブをやって見ませんか。結構引き手あるんですよ」

唯「うんうん、やるよ!やりたい!」

律「そうだな、面白いかもなー」

梓「まずは主要都市で」

律「その内に全国48箇所で」

三人が三人ともキョトンとして、それから爆発。

梓「実際、そう言う日も遠く無いと思いますよ?」

律「キャパはどれぐらいで行く?」

唯「箱よりもPAの方が重要だよ。でっかくて地面からドンドン響くような奴じゃないと」



347 名前:1:2010/08/14(土) 06:57:19.46 ID:rDWAvMTKP

律「地面にスピーカーが埋め込んであってか?」

唯「そうそう、そんなのがあったら、うっとりしちゃう」

梓「じゃあ、どちらかと言うと低音が出せるような…、クラブとかの方が良いですかね」

律「そもそもロックンロールだって踊るための音楽だからな、身体が揺れないとな」

梓「じゃあ、そう言う感じのとこを押さえますよ」

律「編成はどうする?」

唯「一人で出来るようにもしとくけど…。
  あ、でもギター、ベース、シンセオペレーターとドラム、
  あとパーカッションを用意して欲しいかな」

律「オッケ。前やってくれた人達で唯が良い感じって言ってた人らにまず声掛けてみるよ」



348 名前:1:2010/08/14(土) 07:04:59.30 ID:rDWAvMTKP

自分に出来る事を補い合いながらする。

注文が来た分だけCDを追加プレスをするのなんて、誰にでも出来る事だ。

自分が一番既存の形に囚われていたとはお笑いだ。

唯が意見を求められれば感想も言うし、アイデアも出す。

昔みたいな感じで、ちょっとジャムってる中「お、今のリフ良くね?もう一度」なんて感じで。

まあ、私にも梓にも出せるものなんてそれほど無いのだけど。

特に梓はジャズを通して古典的な音楽理論も知っていたが、それもあまり関係が無い。

凡人は天才の作品をあるがままに世間に出す。

それ以外の方法があるかと言う話。



349 名前:1:2010/08/14(土) 07:12:07.11 ID:rDWAvMTKP

ああ、そうそうライブの話だったね。

凄かった。

前に私と唯がヘロヘロな音でやったライブなんかより数倍凄かった。

あれを私は「歴史に残る」と強がった。

あれは歴史に残らないかも知れないけど、今回のは歴史に残る。



351 名前:1:2010/08/14(土) 07:17:19.26 ID:rDWAvMTKP

唯は覚醒したままステージに上がり、ギターを弾いて、キーボードを弾いて、ドラムを叩いて、
そして身震いするように歌い踊った。

スイッチを入れると電気はパッと点く。

切るとパッと消える。

それを繰り返すみたいにパパパッと動く。

その都度、音も変化する。

観客は唯の生み出すバイブに飲まれていた。

いや、ずっと側で見てきた筈の私も梓もだ。

この凄さを分かりやすく伝えようとすると…。

そうだな、「凄ぇ!私達の前にイギー・ポップがいる」と言う感じ。



352 名前:1:2010/08/14(土) 07:22:16.64 ID:rDWAvMTKP

唯の入れ込み様も度が過ぎるぐらいで、
アンコールのラストの曲の時ちょっとだけ怖い思いをした。

曲自体は終わろうとしていて、でも唯が最後にPCを操作しないので、
打ち込みのリズムパートは延々リズムを刻んだままで、
唯はそれに合わせてハミングして踊り続けてしまっていた。

唯の踊りは獣みたいに段々動きを激しくしていって、遂にはステージ上で転倒してしまう。

私と梓はやっとそこで問題に気が付いて唯をステージ上から引きずり下ろす。

幸いにも、曲が丁度リエディットされたような形になっていたので、
客は踊ることに熱中していて気付かない。

私達は曲を徐々にフェイドアウトさせて、ステージの照明をバーンと消す。

客はそれがいかにもなアーティストらしい演出だと勘違いし、ちょっとした混乱を起しつつ退場していった。



354 名前:1:2010/08/14(土) 07:30:55.30 ID:rDWAvMTKP

律「おい、大丈夫か?!」

梓「唯先輩!」

唯は、むくりと上半身を起して

唯「えへへ、決まってる時に足上げて踊るとやっぱり駄目だね…。
  あんまり気持ち良かったから、そこんところ忘れちゃってた…」

律「ばーか…」

私と梓は胸を撫で下ろして苦笑する。

唯もニヤニヤと笑っていた。

皮肉な言い方になってしまうけど、
こんなちょっと良い話を実演してる時でも、私は見逃さない。

唯の口角に乾いた大量の泡が付いていた事を。



356 名前:1:2010/08/14(土) 07:35:45.07 ID:rDWAvMTKP

次の会場からは、唯もマナー
(何の?なんて無粋な事は聞かないでくれ)
を覚えたのか特にアクシデントも無く過ぎた。

ライブの出来はまた別の話で、「特」別に凄かった。

まず、同じ曲でも、同じ様には演奏しない。

それと、何時作ったのか私達も知らない曲を一つか二つ持ち込んでいて
(データをHDで持ち込んでそれをPCでリアルタイムに操作しながら
 シームレスで繋ぐんだから、分からないんだ。正確には3曲かも知れないし、4曲かも知れない)、

いくらセットを決めるのは、私や梓があまり手の出せない仕事とは言え、

ちょっとその時の驚きと言ったら無かった。

本当にエクスペリメンタルで、でも同時にパワフルでエモーショナルだった。



357 名前:1:2010/08/14(土) 07:43:39.44 ID:rDWAvMTKP

私達はレコード会社じゃないから、私も梓も一緒に一つのツアーバスで三都市を巡った。

まず最初に私達は友達だし、唯は天才ではあるけれど、
気難しい自惚れ屋って訳でも無かったから(勿論他の外の連中に対しては分からないけどさ)、

「私はロックスターだし、50席以上のプライベートジェットにしか乗らないから」と言う事も無いからね。

私達は既に貧乏バンドと言う訳でも無かったからのんびりしたもんで、色んな寄り道をしながら…。



359 名前:1:2010/08/14(土) 07:47:11.71 ID:rDWAvMTKP

ああ、そうだ。

性的なシーンと言うのは、挿入すべきでないよね。

特にそれが、そこら辺の男の子やファンの子を何人か札束で引っ叩いて買って、
バスに連れ込んでドラッグ塗れのセックスをしたなんて言う感じの話だったら。

でも、例えばこれが男のロックスターだったら、
そう言うサービスをしてる女の人(グルーピーの女の子でも良いんだけどさ)
を買ってバスでセックスしながら移動するなんてのは良く聞く話で、
じゃあ私達が女の子だったら、どうしてそれをしちゃいけないって言うんだい?



362 名前:1:2010/08/14(土) 07:51:05.62 ID:rDWAvMTKP

詳しくは書かないけど、この経験で一番びっくりしたのは、
男だってあまりにハッピーになると、
アナルに双頭バイブ突っ込んで二人一緒に絶頂に至るって事もあるって事だな。

別に、札束で頬引っ叩いて

「お前ら二人で気持ちよくなって見ろ!」

なんて酷いセリフを吐いた訳じゃないよ?

嘘じゃないよ?



363 名前:1:2010/08/14(土) 07:57:37.62 ID:rDWAvMTKP

でも、そもそもの話、ここで書いた事の全てが

私達のロックンロールライフを誇張するための嘘かも知れないしね。

虚構と現実とでそれを聞いた人々が面白いと思った方がいつか本当の事になっていく。

ロックンロールに纏わる逸話と言うのはそう言うものだよね。



375 名前:1:2010/08/14(土) 10:50:47.24 ID:rDWAvMTKP

私達のライブツアーに関しては、ある日の会話だけをここでは記しておくけど、
これだってロックンロールの世界に生きる人間ならド
ラッグぐらい任せておけって言う、姿勢を匂わせてるだけかも知れないしね。



376 名前:1:2010/08/14(土) 10:55:09.54 ID:rDWAvMTKP

唯「ねえ、あずにゃんはコカインはやらないの?」

梓「私はEだけで十分ですねー」

律「唯、コークは止めときな」

唯「何で?」

律「コカインはスーツ族御用達の薬で、才能を枯渇させるって言うし」

唯「あはは、それじゃあ私はやっても大丈夫だね」

律「ばっか、そんな事ねーだろ」

梓「そうですよ」

唯「あはは、攻撃的になってみました!みたいな感じが駄目とか?」

律「だから、周りからすれば止めろって話さ」

梓「まあ、過去のロックスターの凋落もコカインが原因て言い回しは、定着してますしね」

唯「攻撃的になって見ました!自信過剰になって見ました!」

律「だからぁ、ハードドラッグん中でもそうなるのが良く無いって話なんだろ?」

唯「あはは」



377 名前:1:2010/08/14(土) 11:02:39.93 ID:rDWAvMTKP

このライブツアー終了後、唯はちょっと有り得ないぐらいのペースで曲を作り始めた。


唯「ねえ、りっちゃん?」

律「んー?」

唯「何枚か変名で出したいんだけど」

律「良いんじゃね?」

即決。

これが、私達のやり方だからだ。



378 名前:1:2010/08/14(土) 11:07:43.66 ID:rDWAvMTKP

律「でも、どうして?」

唯「んー、ちょっと違うスタイルでやってみたいから?」

律「どんな感じで」

唯「一つは普通にちょっと変わった感じで。
  もう一個はあずにゃんにメインでやってもらって、私はエンジニアを主にやる感じで」

律「面白そうだな」

唯「ね?良いでしょ?それとさ?」




379 名前:1:2010/08/14(土) 11:14:32.62 ID:rDWAvMTKP

律「まだ何かあるのかぁ?」

唯「りっちゃん、一曲歌って?」

ブフゥッ!

コーヒー噴いた。

律「おいおい…」

唯「カラオケでボーカルトレーニング積んどいてね」

律「私はアーティストじゃないんだぞ」

唯「今回はそう言う感じでやりたいんだってば」

…。

そう言う感じってヘタウマ感とかそう言う感じか?

…まったく。



380 名前:1:2010/08/14(土) 11:20:06.17 ID:rDWAvMTKP

このプロジェクト。

自分名義。

変名。

同時三枚リリース。

シングルじゃなくて、アルバムをね。

そこから、何枚かシングルカット。

セルフリミックス。

梓によるリミックス。

梓が連れて来た知り合いによるリミックス。



382 名前:1:2010/08/14(土) 11:24:17.09 ID:rDWAvMTKP

この前のツアーとこのリリースラッシュで私達はさらに有名になった。

楽曲提供、リミックス。プロデュース、フューチャーリングの依頼がひっきりなしだ。

スポークスマンは私が勤めて、唯自身はインタビューなどには顔を見せ無かったので、
平沢唯は複数名によるプロジェクト説が飛び出したりしたのが面白い。

結果、私も『平沢唯』の一員と言う風に捉えられているらしい。

肯定も否定もしない。

神秘のベールは人をより大きく見せる。



384 名前:1:2010/08/14(土) 11:29:34.01 ID:rDWAvMTKP

インタビュアー「では『平沢唯』は個人名では無いと」

律「そこら辺は私の口からは何とも言えないなあ。
  大体、あなた方だってライブは見てる訳でしょ?」

イ「でも、これまで出したリリース全てに名前が出てますよね」

律「それが?」

イ「量的、ジャンル的に一個人の仕事とは考えづらくて」

律「ふふん」

イ「…」



385 名前:1:2010/08/14(土) 11:36:27.48 ID:rDWAvMTKP

少しだけ、私達の身の回りも騒がしくなる。

いわゆる、セレブ社会へのお誘いと言う奴だ。

唯と梓はあまり気乗りせず。

私は半分ぐらい足を突っ込む感じで。



386 名前:1:2010/08/14(土) 11:47:07.82 ID:rDWAvMTKP

梓「えー、私はいいですよ。遠慮しときます」

律「唯は?」

唯「私もあんまり気乗りしないかなあ」

律「あっそ…」

梓「大体、その手のパーティってプライベートだって言っても、半分パブリックじゃないですか。
  あとで友達面した人らとの集合写真が雑誌に出たりするの嫌なんですよ。
  私はこんなに交友関係が広いんですってアピールのためって感じだし」

唯「私も、別にあんま興味無いかなあ」

律「だぁー、分かったよ。私一人で行って来るよ」

梓「拗ねちゃった」

唯「ごめんね、りっちゃん?」

律「うるせ」



387 名前:1:2010/08/14(土) 11:52:53.53 ID:rDWAvMTKP

梓「ねえ、律先輩」

律「うん?」

梓「今度、水曜日にレギュラーでDJ頼まれたんですけど」

律「面白いじゃん」

梓「いや、唯先輩じゃなくて、私が…」

律「いやいや、別に問題ないだろ」

梓「そ、そうですか」

律「拍子抜け?」

梓「別に…」

律「拗ねた?」

梓「うるさいです!」



388 名前:1:2010/08/14(土) 11:56:46.60 ID:rDWAvMTKP

私達は順調だった。

少なくとも私達の中ではそうだった。

唯の出すものは、最初ほどでは無いがコンスタントに売れていたし、
梓も自分だけの活動を行うようになり、
それはまたHTTレーベルに新たな力を与えていた。



391 名前:1:2010/08/14(土) 12:01:12.72 ID:rDWAvMTKP

私はさらに何か出来ないかと考えていた。

唯は唯でもっと先を考えていた。

梓にも色々考えがあっただろう。

私は何だって出来る気分になっていた。

限界って何?と言う気分だ。



392 名前:1:2010/08/14(土) 12:06:01.84 ID:rDWAvMTKP

唯「ねえ、スタジオ作りたい。36トラックで良いから、ね?」

律「奇遇だ。私もビルを買おうと思ってた。そこの地下一階をスタジオにしよう」

唯「わーい!」

梓「は?!」

律「だからさ、でっかいビル買ってさ…」

梓「いやいや」

律「大丈夫、銀行からそのビル担保に金借りるから」

梓「…」



394 名前:1:2010/08/14(土) 12:10:57.37 ID:rDWAvMTKP

律「私が聞いた話では、借り入れてもビルの価値が上がれば、貸借対照表も上がってお金も儲かる」

梓「でも…」

律「私は何も不動産投機のためにビルを買う訳じゃない。
  ちゃんとオフィスだったり唯のスタジオって言う目的もある」

つまりね、建物は創造性を集中させる。

例としてはルネッサンス時代のフィレンツェだ。

そう、人の意識を変革させた時代。

唯「私達はここまでこれた。これからだってこの調子で行けるよ」

律「そう言う事。そして、このHTTビルもまたその起爆剤になる」

梓「…」

実際、その時点では何の兆候も無かった訳だし、私の決断を後だしで責められても困る。



395 名前:1:2010/08/14(土) 12:15:13.15 ID:rDWAvMTKP



・・・
律「向こうのバンドから、一緒にツアー回らないか?ってオファーが来ました」

唯「面白そう」

梓「良いじゃないですか」

律「こういう言い方ってありがちだけど、ちょっと感慨深いよな」

梓「ええ、そうですね」



398 名前:1:2010/08/14(土) 12:23:02.88 ID:rDWAvMTKP

最初は面白そうだと思ったんだ。

でも、失敗だった側面の方が大きいかも知れない。

つまりね、前のライブツアーなんてのは本当に規模が小さいから、

自分達で何でも出来たし、それで自信も持てたんだ。

でも、今回は数台のトレーラーと向こうのプロモーターが用意したクルー。

よそよそしく振舞ったつもりは無いけど、どうも向こうのバンドにもプロモーターにも、

私達が仲間以外と交わらない気難しがり屋だと思わせてしまった。



400 名前:1:2010/08/14(土) 12:27:46.71 ID:rDWAvMTKP

それにちょっと、その事
(私達がホテルでも閉じこもりがちになっていたって事だけど)
は私達自身をも侵食してしまったんだ。


私や梓のイメージだと海外のバンドってのは、

例えばグレイトフルデッドのイメージだけど、凄いドラッグをやると言うイメージがあった。

でも、実際は閉じこもりがちになってしまって、

その退屈や鬱屈をはらすためか、唯の方が全然大量に使用してた。



402 名前:1:2010/08/14(土) 12:31:57.89 ID:rDWAvMTKP

そう言うものに関しては、勿論日本にいた時だってそれなりに使っていた。

それらの事に関して、

唯は以前

「これって、もしも対処出来るなら素晴らしいものだと思うんだ。
 その事を理解して、自分自身を信じられるなら、ちゃんと対処出来るものでもあって…。
 だから、やっぱり素晴らしいものだよね」

なんて言う安っぽいニューエイジャー
(ティモシー・リアリーとかジョン・C・リリーみたいな?)みたいな事を言っていた。

だけど、やっぱり良くありがちな事だけど、

唯のそれは今や対処出来ないレベルに足を突っ込みつつあったんだ。



404 名前:1:2010/08/14(土) 12:35:29.65 ID:rDWAvMTKP

ツアーを終えて日本に帰ってきた私達は、

取り合えずその対策を練らないといけない状態になっていた。

私も梓も日本の更正施設に入れるのは反対だった。

まだ、それほど禁断症状が出てもいなかった事もあるけど、
それは私達の前進を止める事と同義だったし、兎に角唯が好奇の目に晒されるってのが嫌だった。

梓「取り合えず、海外レコーディングって事で連れ出しましょう。私が付き添います」

律「ああ、そうだな」

梓「実際に、レコーディングもさせるつもりですけどね」

律「一石二鳥だ」

梓「ええ。綺麗な身体の唯先輩と新作を持って帰ってきますよ」



406 名前:1:2010/08/14(土) 12:40:50.32 ID:rDWAvMTKP

これで、一安心だと思った。

唯がこれ以上ドラッグを使用しなくなる根拠なんてものはまったく無かったのに、
なぜ一安心出来ると思ったんだろう。



407 名前:1:2010/08/14(土) 12:43:30.06 ID:rDWAvMTKP

唯達が海外に脱出して一つが落ち着いたと思ったら、今度は別のトラブルが襲って来る。

この世の大体のものは双曲線的な図を描くのだ。



412 名前:1:2010/08/14(土) 13:01:16.69 ID:rDWAvMTKP

お金を借り入れる際、会計士は私達のビルの資産価値は~~円と言った。

唯達を空港で送り出した週の週末に、会計士から電話が掛かってきた。

ビルの資産価値が下がっています。

今現在だと、××円です。

素人の私には言ってる事が分からない。

つまり、私達は知らない間に借金を増やしていたらしい。

それも数千万とか、現物を実際には見たことの無い単位で。



432 名前:1:2010/08/14(土) 16:43:46.09 ID:rDWAvMTKP

いや、別にビルを処分特価で売る気は無いし、
そりゃあ数値上でも借金が増えるのは面白く無いが、
でもまあこんなものだと自分を落ち着ける事は出来る。

ただ、貸した方はそうでも無かった。

実際に借りたのは~~円で、貸した方の銀行はいつでも言う事が出来た。

すぐ返して下さいと。

銀行が不安を感じた時にはいつでもだ。



435 名前:1:2010/08/14(土) 17:26:58.65 ID:rDWAvMTKP

私はさっきこの世の大体のものは双曲線だと言った。

でも、トラブルに関してはそうでは無いらしい。

金融的トラブルでレーベルは下降線を辿っている。

それと同時に、私達の看板アーティストは薬物トラブルで下降線を辿っているそうだ。

私の知っている理論からは随分かけ離れた事態じゃないか?



437 名前:1:2010/08/14(土) 18:07:32.69 ID:rDWAvMTKP




律「んー、何…?」

梓「律先輩、今大丈夫ですか?」

この夜更けに…。

いや向こうでは時差の関係で昼なのか。

梓「駄目です。とにかくこっちにいても話になりません」

この二言だけでも、緊急性とそこから滲み出してくるような疲れが分かった。

律「ちょっと、話が見えないよ。最初から話してくれよ」



444 名前:1:2010/08/14(土) 19:05:29.61 ID:rDWAvMTKP

梓「とにかく、こっちのドラッグディーラーが性質が悪い上に、
  唯先輩も唯先輩でコントロールが利かない状況になっちゃってて…。
  お金が無いって言ったら、楽器とかも売ろうとしちゃって…。
  だって、ギターまで売ろうとしてたんですよ!あのギー太を!!」

律「梓、落ち着けよ」

梓「律先輩はここにいないから!」
律「梓!」

梓「…はい、すいません…」

律「お金は取り合えず送るようにする。
  ただ、ハードドラッグだけはもう使わせないように…。
  そうだ、メタドンプログラム!そう言うのを受けさせろ。かかるお金はすぐ用意するから」

梓「…。分かりました。出来るだけ早くお願いします。もう、私じゃ全然押さえられないんで…」

律「分かった…」



450 名前:1:2010/08/14(土) 19:40:06.74 ID:rDWAvMTKP

根拠はまったく無かった。

ただ、軽く考えていたと言うだけなんだろう。



452 名前:1:2010/08/14(土) 19:48:11.23 ID:rDWAvMTKP

唯は、プログラムとカウンセリングを受け出して半年、

取り合えず落ち着きを見せているらしい。

梓が言うには、もう少ししたら帰国も出来るような状況にもなると言うことだった。

唯の件は何とかなるかも知れない。

何とかなら無いのはお金の問題だ。

唯の治療に少なからぬお金を吐き出した。



453 名前:1:2010/08/14(土) 19:53:45.68 ID:rDWAvMTKP

当然の事ながら、新作は出ていない。

リミックス盤や梓が連れて来た人らのものを出したが、

それで入って来るお金ではレーベルを維持するのは難しくなっていた。

借金の返済、借金の返済&借金の返済。

首が回らないとはこの事だ。

ただ前だけを向いている理由が出来て良いのかも知れない。

でも、唯が帰ってくれば、取り合えず何とかなるはずだ。

何とかなるはずなのだ。



455 名前:1:2010/08/14(土) 20:01:38.89 ID:rDWAvMTKP

唯は明らかに他の客とは違うテンションを見せて、空港職員の注意を良くない方に引いていた。

唯「おー、りっちゃ~ん!綺麗な身体になって帰ってきたよー!!」

唯は私を見つけると、手を振って駆けだす。

梓はやれやれと言った様子で唯の後ろから付いて来る。

唯「いぇーい、カムバックトゥジャパーン!」

唯は片手に大きなショッパー、もう片方の手でトランクを押していて、肩には…。

良かった、ギー太は持って帰って来てるみたいだな。

律「二人ともお疲れ…」

唯は勢い良く飛び跳ねて、そして…






こけた。



457 名前:1:2010/08/14(土) 20:08:21.56 ID:rDWAvMTKP

ショッパーの中に入っていたのか、壜が砕け散る音がする。

私は壜の砕け散る音に一瞬目を背け、そしてまた視線を戻すと、そこには床に這って、
割れた壜の中に入っていたであろう粘性の液体を一滴だろうと無駄にしたくないと言う様子で、
床に口を近づけて吸おうとしている唯の姿があった。

唯「あ、あぁメタドンが、私のメタドンがぁ…、うわぁ!!」

梓は駆け寄って、他の搭乗客の好奇の目が向かないように、唯を必死で宥めようとしていた。

私は、足から力が抜けてしまってそこで立っているのが精一杯だった。

梓「唯先輩、大丈夫ですから、まだたくさんありますから」

唯「あずにゃーん!!だってだってぇ!!」

空港職員が多数駆け寄ってくる。

梓は医者の処方箋なのか、紙束をこれ見よがしに振り回していた。

梓「処方箋貰ってますから!処方箋はありますから!」

馬鹿!!国内じゃメタドンは未承認だよ!

私は立ち眩みで目の前が真っ暗になるのを耐えながら、心の中で梓に必死で突っ込んだ。



459 名前:1:2010/08/14(土) 20:14:58.57 ID:rDWAvMTKP

唯は逮捕された。

メタドンだけで無く、
梓にも隠して向こうで併用していた医療用ヘロインを持ち帰って来てたってのが致命的だったらしい。



460 名前:1:2010/08/14(土) 20:21:50.71 ID:rDWAvMTKP

それでも、初犯であること。

国外のものとは言え、処方箋を持っていた事。

また、治療をしようと言う意思があった事等が考慮されて、執行猶予が付いた。



462 名前:1:2010/08/14(土) 20:28:51.97 ID:rDWAvMTKP



とは言え、お金の問題はより悪い方向に傾いた。

保釈金400万円。

裁判費用…。

入って来るお金と出て行くお金が釣り合わない。

貸借対照表も釣り合わない。



474 名前:1:2010/08/14(土) 22:56:16.69 ID:rDWAvMTKP

・・・


律「くそ、取り合えずCDを出せば…」

梓「そのためのお金はどっから調達するんですか。大体、そんなすぐに出せるんですか」

律「ほらっ、スタジオ代はいらないだろ?エンジニアも唯自身で…」

梓「もう、止めましょうよ…」

律「何言ってんだよ!」

梓「律先輩知ってました?唯先輩あのヨーロッパツアー以降スタジオに入ってないんですよ?」

…。



478 名前:1:2010/08/14(土) 23:06:15.32 ID:rDWAvMTKP

梓「律先輩はあれ以降唯先輩とあんまり一緒に過ごして無いから知らないんですよ。
  唯先輩だって、海外レコーディングに行った時も最初からあんなラリパッパだった訳じゃなくて…。

  ホテルでも、ビーチでも『曲が出て来ない、出来ない』って言って、すっごい悩んでたんですよ?
  頭から血が出るぐらい鏡に額打ち付けたりして…、
  部屋の姿見を割っちゃったり、スタジオのガラス割っちゃったり…」

律「でも…」

梓「じゃあ、奇跡的にアイデアが浮かんで、曲がまた書けるようになって、
  ミキシングやって、マスタリングやってって、
  リリースに行くまでどれだけ掛かると思ってるんですか?
  そこまで時間は持つんですか?資金は?」



481 名前:1:2010/08/14(土) 23:19:49.31 ID:rDWAvMTKP

律「それは、前話が来てたメジャーの…」

メジャー?

私は何を言ってるんだろう…。

それを拒否するために、自分達でやって来たんじゃ無かったのか?

大体、今まで唯が作った曲は誰のものだ?

私はそれを勝手に売り飛ばそうとしてたのか?



483 名前:1:2010/08/14(土) 23:26:01.87 ID:rDWAvMTKP

梓「律先輩…?」

あ…?

梓が心配そうに覗き込んでいる。

梓「大丈夫ですか?突然喋るのを止めたかと思ったら…、
  そのままピクリとも動かなくなっちゃったから…」

律「あ、うん。大丈夫」

大丈夫だ。

もうお終いって事は理解した。



485 名前:1:2010/08/14(土) 23:31:59.93 ID:rDWAvMTKP

最後の日の前日、私と唯と梓はスタジオでジャムった。

私は久し振りに、本当に久し振りにドラムを叩いた。

梓はギターを弾き、唯は何故かベースを弾いた。

梓も合わせるようにギターを弾くのは久し振りだったらしい。

梓「こう言うのって、やっぱり楽しいですね」

唯「だよねー」

律「まあな」

梓「律先輩、久々の割りに以外とちゃんとしてましたね」

律「中野、お前うっさいよ。ところで、唯は何でベース弾いてるんだよ?」

唯「え?だって、3ピースだし」

律「そりゃそうだけどさ」



487 名前:1:2010/08/14(土) 23:37:48.65 ID:rDWAvMTKP

そうだな。

ベースが無いとバンドってのは、結局上手くいかない。

梓「あ…」

律「ん?」

梓「そろそろ日の出の時間ですね…」

私達は黙り込む。

本当に最後の日だ。



488 名前:1:2010/08/14(土) 23:42:01.83 ID:rDWAvMTKP

私達はいままでと同じようにジョイントを回し吸いする。

HTTレーベル的なアフェアーって奴?

私達はベランダに出て日が昇るのを見ていた。

そう言えば、自分達でやろうって決めた時もこんな風に朝日を眺めながらだった。

光がパァーって、ビルの間から差し込んでさ。

光が当たってる部分と影の部分のコントラストを見てたらさ?

な?



490 名前:1:2010/08/14(土) 23:46:19.80 ID:rDWAvMTKP

律「何か、あっけなかったな…」

梓「ええ、なんか全てが夢だった感じですよね」

唯「ねえ、りっちゃん」

律「ん?」

唯「こんなことになっちゃってごめんね?」

律「良いよ、気にしてない。私は大丈夫だよ、全然。」



492 名前:1:2010/08/14(土) 23:55:13.04 ID:rDWAvMTKP

梓がまぜっかえす。

梓「そうですよ、こうなったのだって
  律先輩の無駄遣いが原因なんですから、唯先輩が謝る事なんて無いですよ」

律「おぅい!」

梓「大体、あの会議室に飾ってある不気味なウサギの絵がいくらか知ってます?」

唯「えー、あれ可愛いじゃん」

梓「そう言う事じゃなくてー…」

唯「えへへ。えーと、3000円ぐらい?」

梓「あれ、確か20万ぐらいしたんですよ、ね?律先輩」

唯「えぇ!!たっかーい!!」

梓「馬鹿ですよね」

律「ばっか、あれはロウブロウアート界で有名な…」

梓「それがどうしたんですか?」

律「返す言葉も無い…」



506 名前:1:2010/08/15(日) 00:28:24.75 ID:RpwgnfkUP

もう少ししたら、弁護士が来て、全てがお終いになる。

私の最後の仕事は原盤権は唯の元にあるのであって

会社が所有してる訳では無いと言う事を管財人に理解させることだ。

そうすれば唯の元には曲の権利が残るし、あとはまだまだその才能がある。

もう一度再起する事も可能だろう。

その時、傍にいるのは私では無いかも知れないけど。

梓も名前に傷が付く訳では無いし、私の替わり(傲慢な言い方だね、これ)

唯の事を手伝ってやって欲しいと思う。



508 名前:1:2010/08/15(日) 00:35:12.91 ID:RpwgnfkUP

下を見下ろしていた梓が車の音を聞き付ける。

梓「来たみたいですよ?」

私は、最後のジョイントの煙を肺の奥まで吸い込む。

律「じゃあ、出迎えて来ますか」

唯「りっちゃん、大丈夫?」

律「唯ー、そんな目で見るなよ。取って食われやしないさ。梓もさ」

梓「わ、私は心配なんかしてませんから」

律「あ、そ。ま、最後のお勤めに行って来るよ」



515 名前:1:2010/08/15(日) 00:55:25.95 ID:RpwgnfkUP

律「Game is over 悲しいけれど~♪終わりにしよう きりがないから~♪」

ビル外壁に据え付けられた非常階段は何時だって風が強い。

私は足元が覚束なくて風に煽られて少しだけ怖い思いをする。

意図せざるポストモダンなサビ止め塗装しただけの灰色の手すりに肘をかけて一息つく。

私は、何となく段飛ばしをしたくなって、段数を数える。

一階まで、階段の残りは、1、2、3、…、十段か。

微妙だな…。

一気に行けるか?

迷った時は…?

飛んでみろ!

私は床を思い切り蹴って、踏み切る。

ラメ入りのロングカーディガンを靡かせてジャンプ。



517 名前:1:2010/08/15(日) 01:00:47.41 ID:RpwgnfkUP

あれ…?

律「管財人…、を引き受けてくれる弁護士の方ですよね?」

そんな訳無い。

どっからどう見ても違う雰囲気を漂わせている。

良く言えばインテリヤクザ。

悪く言えばヤクザ。



520 名前:1:2010/08/15(日) 01:05:17.19 ID:RpwgnfkUP

ヤ「そんな訳ねーだろ」

律「ですよね~」

ヤ「来い」

律「はい?」

ヤの人は私を、連れ出そうとする。

あれ?

まずい。

沈められる?

ソープ?

それとも東京湾?

律「あ、あのー、でも、自分人を待たないといけないので…」

睨まれた。

私はカエルの様。

ヤの人の後ろに付いてビルを出る。

そうするしか無い。



521 名前:1:2010/08/15(日) 01:09:29.71 ID:RpwgnfkUP

でかっ!

ムギの送り迎えの時に見たリムジンと同じぐらい長いオールドメルセデスのストレッチリムジン。

ヤの人は私に乗るように促す。

ヤバイ…。

本当に死ぬかも…。

私は、心を落ち着けてくるクスリが無いかとカーディガンの、ジーンズのポケットを探る。

無い。

マジ何も無い。

フリスクすら無い。

ヤ「早く乗ってくんねーかな、田井中さぁん!こっちも先が詰まってるんだよ」



523 名前:1:2010/08/15(日) 01:15:55.17 ID:RpwgnfkUP

私は半分押し込まれるようにリムジンに乗り込む。

私の向かいのシートにはロングヘアーのサテン襟のスーツスタイルの女。

サングラスなんか掛けてスカしやがって

秘書とか?

情婦?

ああ、それっぽい。

女「何笑ってるんだ?」

律「い、いや、笑ってる訳じゃ…」

女「そう。なら良いけど」

くそ、いけ好かない女だな。



528 名前:1:2010/08/15(日) 01:21:45.81 ID:RpwgnfkUP

女「ええっと、ちゃんと法人登記してるんだ?内実は滅茶苦茶なのにね」

律「それがどうしたんだよ」

女「代表者だ」

律「私は名前を出してるだけさ」

女「ふーん。原盤権は?」

律「それは会社のもんじゃない。唯のもんだよ」

女「高級車、ブランド品、遊興費、随分贅沢してたようだけど?」

律「売り上げは次の制作費用に少し内部留保。
  残りは梓も含めて三人で折半さ。それが私達のやり方だからね」

女「その言い草が専門家に通じると思ってるのか?」

律「どう言う意味だよ」

女「原盤権はHTTレコーズ、つまりお前が所有してるって事にされて当然換価財としてみなされ…」



529 名前:1:2010/08/15(日) 01:25:10.97 ID:RpwgnfkUP

律「は?」

女「借金も全てひっくるめて2000万で買ってやるよ」

律「ふっざけんな!」

私は立ち上がって女の胸倉を掴む。

こいつがインテリヤクザの秘書で、私は酷い目に合わされるかも知れないが知った事か。

痛ってぇ!

私は女に手首を捻られてふかふかのフロアマットに転がされる。



538 名前:1:2010/08/15(日) 01:39:09.19 ID:RpwgnfkUP

女「まあ、落ち着いて聞けよ、律」

律「あん?」

女「あれだけ大手レコード会社を敵に回すような独立の仕方をしたのに、
  暴力的な方法も含めてだけど、排除されなかったのはどうしてだと思う?
  まあ、これは売り上げ規模の問題もあるし、無視されたと言う可能性もありだ。

  じゃあ、これはどうだ?
  お前達の能天気なドラッグパーティが報道されなかったのはどうしてだと思う?」

律「どう言う事だよ…」

女「少しは想像力を働かせろよ、律」



541 名前:1:2010/08/15(日) 01:44:03.82 ID:RpwgnfkUP

私は相手の顔を良く見る。

は?

は?

はぁ?

律「み…、お…?」

澪はサングラスを取って、

澪「やっと気付いたか、馬鹿律!」

な、何で、ここに…?

澪「何で私がここにいるとかそんな説明してる暇は無い。
  良いから、書類の一切合財を持って来い。私を信じろ」

律「だ、だけど…」

澪「ここは私やムギの戻ってくる場所じゃないのか!」

律「あ、ああ…、分かった…」

私は、すぐビルに引き返し応接室のソファでぼんやりしていた唯と梓にも手伝わせ、書類をかき集める。



549 名前:1:2010/08/15(日) 01:49:17.10 ID:RpwgnfkUP

澪「良いか?これから私のやる事は表面的には整理屋と変わらない。
  信じてくれとしか言えない。確実に原盤権だけは守るつもりだけど…。
  いや最悪、債権は全部私とムギで買い取るようにするから」

私は、澪の言葉をどこか遠くに聞いていた。

澪がそんな私の様子に気付いて、肩に手を置いて

澪「大丈夫。任せておけって」

律「あ、ああ…」

そういって、澪は私達の隠れ家にと宛がってくれたホテルの部屋を出て行く。



554 名前:1:2010/08/15(日) 01:51:31.74 ID:RpwgnfkUP

梓は、まだ澪を信用し切れていないのか、
窓際のテーブルに腰掛けてスマートフォンで
「倒産に乗じて~」なんて言葉で検索して状況を確認している。

私は…。

ん、唯?

唯「澪ちゃんの親類が興行系のヤの人だってのは驚いたねー」

律「あー、そうだな…。私も今初めて知ったよ」

唯「雑誌とかにも手を回してくれてたんだね」

律「裏からサポートなんて回りくどいよな、どうせなら最初から…」

唯「ん?」

律「いや、いつも見ててくれたんなら連絡の一つぐらいよこしてくれれば良いのにな」



557 名前:1:2010/08/15(日) 01:56:22.50 ID:RpwgnfkUP

唯「澪ちゃんもさ、やっとだったんじゃないかな」

律「やっと?」

唯「だから、私達の前に顔を見せられるようになるのって」

律「あー、あいつは恥ずかしがり屋だからなー」

唯はクスリと笑って私の手をギュっと握る。

唯「心配?」

律「いや、そう言うんじゃなくて、現実感が、な…」

唯「大丈夫だよ」

律「おー、自信たっぷりだなー」

唯「あのさ、澪ちゃんがスタジオ出てっちゃった日さ?」

忘れもしない、全ての始まりの日だ。



560 名前:1:2010/08/15(日) 01:58:36.80 ID:RpwgnfkUP

唯「あの日、私がベースを澪ちゃんの家に届けに言ったじゃない?」

律「ああ」

唯「あの時ね、澪ちゃんがね

  『唯には才能があるよ。そして、律がきっとその才能を生かす道を作ってくれるからさ』

  って言ってくれたんだよ」

律「澪が…」

唯「うん」

なんだよ…、それ…。

今になってって、ちょっとズルイだろ。

唯「そんな澪ちゃんだもん。きっと良い様にしてくれるよ」

律「あ、ああ、そうだな…」



561 名前:1:2010/08/15(日) 01:59:44.40 ID:RpwgnfkUP

唯「あ、りっちゃん、泣いてる?。いい歳してぇー」

律「ちげーし、べ、別に泣いてねーし。
  大体、唯だって裁判の時
  
  『憂、憂ぃ~、ごべんなざ~い、もうじにゃいがら~、
   裁判官ざんぼゆるじでぐだじゃ~い』
   
  って大泣きしてたじゃねーか」

唯「べっつに~」

律「別に、なんだよ」

唯「あれは嘘泣きだもんねー」

嘘くせ!

律「じゃ、じゃあ、私だって…」

唯「いーや、私には分かるねー、りっちゃん、泣いてる。
  大好きな澪ちゃんとまた一緒にやれると思って泣いてるよぅ」

当たりだよ、大当たり。



563 名前:1:2010/08/15(日) 02:01:21.61 ID:RpwgnfkUP

紬「りっちゃん、唯ちゃん、梓ちゃん、お久し振り」

唯「おお、ムギちゃーん」

梓「ムギ先輩、お久し振りです」

私は長い海外暮らしで、

すっかりそのライフスタイルに馴染んでしまっているであろうムギに合わせてハグで挨拶。

律「ムギ、元気そうだな」

紬「ええ…」

律「いや、別にそんな深刻そうな顔しなくても、大丈夫だから」

紬「深刻そう?違うわ、りっちゃん達がいざって言う時に連絡くれなかったのが寂しかったからよ」

律「ごめん…」

紬「ふふ、冗談よ。でも、本当に大丈夫?」

律「大丈夫だよ」

そう、私は大丈夫だ。



567 名前:1:2010/08/15(日) 02:05:52.51 ID:RpwgnfkUP

何一つ無駄な事は無かった。

勿論、唯の作品群を世に送り出せた(勿論これからもだ)と言う事もあるし、
またこうして皆が一箇所に集まって何かをやれるんだからね。(そしてその場所を作ったのは私だ)

紬「あ、澪ちゃん」

澪が入って来る。

澪「ムギ、久し振り」

紬「澪ちゃんもお久し振り」

律「澪、それで上手く行きそうなのか?」

澪「おー、原因作った奴が偉そう」

律「うっせ」

梓「拗ねちゃいました?」

律「うるさいよ、中野」

唯「あはは」



568 名前:1:2010/08/15(日) 02:09:34.97 ID:RpwgnfkUP

一瞬、私達が隠れてる(実際問題、そんなやばい状況なのだな)

ホテルの一室がまるであの部室のように思える。

そうだ、全ては無駄じゃなかったって事だ…。

今私がこう考えてるのは別に、さっきまで吸ってたジョイントの力じゃないよ?

嘘じゃない。



571 名前:1:2010/08/15(日) 02:15:40.76 ID:RpwgnfkUP

つまりこう言う事だ。

全てが上手くいって最後はこう言う形になるに決まっているんだ。

HTTレコーズ

オーナー:秋山澪、琴吹紬

社長:田井中律

役員:中野梓、平沢唯

最高だろ?

Good Good Good Double good ,… and good ending?

・・・
保守、支援、御清覧ありがとうございました。
最初は早朝のくだりで終わりのつもりでしたけど、
けいおんなんで御都合主義でも皆が集まってと言う方が
「らしい」かと思いそうしました。



579 名前:1:2010/08/15(日) 02:21:13.20 ID:RpwgnfkUP

おまけ
参考にした映像とかイメージ曲とか

ワウを効かせたイントロの曲
http://www.youtube.com/watch?v=SWawEndwdM8
唯が律に提案しているリズム
http://www.youtube.com/watch?v=ysCKBXCrYAU&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=buKURFzYHDw
ベースでメロディーライン
http://www.youtube.com/watch?v=8ahU-x-4Gxw&feature=related
『A Dream Goes On Forever』
http://www.youtube.com/watch?v=0c-XuIxFFk8
信じてさえくれれば、ベローナベラドンナ
http://www.youtube.com/watch?v=hdnZsSl0szg&feature=related
なんちゃら言うフュージョンギタリスト
http://www.youtube.com/watch?v=15FqJRc8nh4&feature=related
http://www.youtube.com/watch?v=XyOLSy1RtpI
ロックンロールの文脈における車のセレクション
http://www.youtube.com/watch?v=j9cf3Hjx9BE



582 名前:1:2010/08/15(日) 02:23:27.96 ID:RpwgnfkUP

律が良い気分で鼻歌
http://www.youtube.com/watch?v=dEYvIFFmIBM
『I Wanna Be Adored』
http://www.youtube.com/watch?v=1g09GzbctlA
『Lazyitis』
http://www.youtube.com/watch?v=ybRe5oxosiM
唯のライブのイメージ
http://www.youtube.com/watch?v=5MZl7pHF1NQ
http://www.youtube.com/watch?v=FDpITVZKBAU
http://www.youtube.com/watch?v=kD5X5OGLySI
http://www.youtube.com/watch?v=btzIdZpln6k
http://www.youtube.com/watch?v=GzzaUUgWluk




572 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 02:17:37.85 ID:7fOKa0BTP

乙!
おもしろかった



573 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 02:17:43.11 ID:Is0LTkW8O

>>1お疲れ様
これで安眠できる



577 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 02:19:20.80 ID:c/Tt1cHIO


ローゼズもクラッシュもすきだから、嬉しかったぜ。
また書けよ



578 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 02:19:30.93 ID:AgzI6+t6P

乙!最高だね!



580 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 02:21:39.05 ID:oau/qsTjO

おつ!



581 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 02:21:55.20 ID:+Br7+9XPO

おつうううう



584 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 02:26:42.51 ID:HPCWo8yO0

おつ

久々にいいSSだったぜ



585 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 02:29:30.91 ID:nPgHg0faO

こーいう展開大好きだww



587 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 02:37:03.31 ID:T6cStATE0

いちおつ!!!

久々の良SS
やっぱ5人いないとね



588 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 02:38:52.55 ID:y+UdDlajO

面白かったー乙乙乙



589 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 02:43:53.89 ID:yKSog0ZtO

1乙ぅぅぅ!!
ハッピーエンドでよかったよぅ

心置きなく眠れる…!



590 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 02:58:46.01 ID:XJB95CgD0

面白かった

>>1



591 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 03:03:22.64 ID:vo8RXpEBO

乙!おもしろかった

でも澪なんなの
就職するとか言って結局ヤクザやってんのかよw



592 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 03:06:56.80 ID:Y5R8AWDrO

乙!



Punk is attitude, not style!!



593 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 03:12:47.47 ID:dyJReJq6O

いち乙



起きててよかった



594 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 03:46:11.40 ID:142UQ89UO

澪も一時期墜ちてたのだろうか





595 名前:1:2010/08/15(日) 04:16:18.82 ID:RpwgnfkUP

これは律視点なので分かりづらかったかも知れませんが、
あまり良い人ではありません。
上手く出来て無いかも知れませんが、
一応、後に律が自伝を書いた体で書きました。
だから、自分(律)に都合の悪い話は書いて無いと言う。


ただ、友達を裏切るとかはしないと言うだけで、
ブランド大好きの見栄っ張りだし、お金にはだらしないし、
大麻も止められない。


その辺りは(すぐでは無いけど)他のキャラ視点で書いた時に書いていくつもりなので、
また、見かけたらよろしくお願いします。




597 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 04:23:59.17 ID:ZdO8unnN0

乙!すげー面白かった!



599 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 05:07:34.64 ID:yTPfCiDpO

今一気読みした。マジで面白かった!
りっちゃん目線で描かれているところが、物語の暗さを中和してるな

>>1



601 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 05:29:26.31 ID:RtZvlww5O

最後のご都合主義はそういう事か。スゲー良かった



602 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 06:23:01.21 ID:8VRz5CoeO

おつ



604 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 07:42:22.96 ID:6m9Iy07j0

完走乙カレーション

よかったよ



605 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 07:51:43.88 ID:Wge0heuWO

おつ。面白かったけど、何故だがとても後味わるい…



606 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 09:06:01.43 ID:vo8RXpEBO

まぁご都合主義はともかくとして、唯は逮捕までされたのにクスリやめてない、
律はまだしも梓もそれを容認、友人とはいえヤクザに助けられる……
紬以外は全員クズすぎて後味いいわけない



607 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 09:16:52.50 ID:6IGJ0vg0O

途中で吐き気を催したのは二日酔いの性だけじゃなかったのか…
なのに続きが読みたくなるのは上手いからだろうな
おつおつ



608 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 09:26:50.36 ID:floGCQKY0

1乙
音楽はもとよりロックとか全くわからないけど薬やらないで成功した人とかいるの?



613 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 09:47:51.54 ID:RSzFGw1PO

>>608
フランク・ザッパ
ロッカーにクスリは必要ないと主張し続けたので煙たがられてた

ただ頭はそんじょそこらのジャンキーよりおかしかった。



609 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 09:30:18.39 ID:uzsPH4U+O

薬を正当化しすぎだな
まるで何も考えていない



610 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 09:39:29.22 ID:a7m7L0Ev0

おつおつ

このご時世、人としてまともな神経持ってたら一回は安定剤のご厄介になりそうな気はする
クスリとかまでは知らないけど



611 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 09:41:57.18 ID:9jKPwp1GO





612 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 09:43:23.16 ID:FkOVHnV20

いちおつ
読ませられました



617 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/15(日) 12:34:17.18 ID:5xlTwP3qO





澪「Living On The Edge」




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律「バンドミーティング」#後編
[ 2011/10/01 23:08 ] 音楽 | | CM(2)

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タイトル:
NO:4748 [ 2011/12/18 17:16 ] [ 編集 ]

蛸壺とかもそうだが、なんで薬入れたがるんだろう?

タイトル:
NO:5770 [ 2012/03/05 20:29 ] [ 編集 ]

薬はいいが男はやめろ、男だすならちゃんと最後まで書け

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