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唯「日常の崩壊」 【非日常系】


http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1317456072/l50




1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:11:40.86 ID:rjxng3zc0


このSSの主題をなす奇妙な事件は、20××年の桜ヶ丘で起きた。





3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:13:59.05 ID:rjxng3zc0


律「また死んでるよ」

高校の音楽室で律が見たのは、壁際のドラムセットの側に転がっているゴキブリの死体だった。

ゴキブリはその黄色くでっぷりと太った腹を出し、仰向けに転がっていた。

脚は硬直していたが、先程死んだのであろうかまだ精気が残っている。

紬「あらあら、最近多いわね」

律「掃除当番の奴ら、もっとしっかりやってくれよ」

澪「り、律、す、捨てておいてくれ」ブルブル

律「はいはい、澪ちゃんはこわがりでちゅねー」

律はゴキブリの死体をティッシュでくるみ、ゴミ箱に捨て、それから便所で手を洗った。



4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:16:05.33 ID:rjxng3zc0


律「はぁーつかれたわ」

律は便所から帰ってくると、そのまま椅子に座った。

澪「おい、練習!」

律「さっき、廊下にも3匹ゴキブリの死体が転がっててさー」

澪「れ・ん・しゅ・う!」

律「まあ少し休んでからでいいだろ、澪」

紬「お茶にする?」

澪「もう、ムギまで!」



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:18:25.77 ID:rjxng3zc0


そういいながら澪もしぶしぶ着席した。紬はお茶の準備を進めていた。

律「唯が休みだから、練習にならねーよ」

澪「唯大丈夫かな?」

律「一昨日行ったときは、まだよくなかったよなー」

唯の席だけぽっかりと空いていて、

いつもの音楽室の賑やかさが半分くらい失われたみたいだった。

律「まあ、明日から連休だし、月曜日からまた元気に学校来るだろ」

澪「昨日唯にメールしたんだけど、返信ない」

律「そりゃー熱でて休んでんだ、無理させるな」



6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:19:52.91 ID:rjxng3zc0


紬「はい、お茶よー」

玉露のように広がる、柑橘系の匂いにみな、この紅茶が只者ではない事を悟った。

澪「良い匂い。どこのお茶?」

紬「ベルギー王室から頂いた、アールグレイのお茶っ葉よ~」

律「おぉっ!出た、ベルギー王室!」

紬「うふふー」

紬がカバンからクッキーを出して、女子高生にしてはリッチなティータイムが始まった。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:21:35.41 ID:rjxng3zc0


律「いっただきまーす」

澪「はしたないぞ、律!こういう時は、ええっと、なんていうんだっけ、ムギ?」

紬「うーん、特に決まってないと思うけど……

  ホスト側が、"Enjoy your tea."それを受けて客人が"Thanks."じゃないかしら、イギリスなら。

  いただきますっていい表現よねー、だから私たちはいただきますでいいんじゃない?」

澪「それもそうだな。それじゃいただきます」

紬「いただきます」



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:25:28.54 ID:rjxng3zc0


律がまるでコーラを飲むアメリカ人のように紅茶を飲み、澪が日本人らしく紅茶をすする。

紬は言わなかったが、ティータイムには作法がある。

彼女がプライベートで参加するような場所では、

カップの持ち方から飲むタイミング、カップを置くタイミングまで、

全てが厳密で、格式高い作法で塗り固められていた。

イギリスは、階級社会であり、紅茶の飲み方でクラスがわかると言われるほどだ。

生まれによって身についている紬は、その飲み方が自然だったが、

律や澪や唯が作法破りで下品な飲み方をしても何も気にしない。

紬こそ真の貴族だった!他のまだ田舎臭のする貴族のように、

クラスの違う友人に、作法の失敗で陰口を叩いたり、心のどこかで差別したりはしない。

イギリス女王はテーブルマナーを知らないアフリカの王族が、

指を洗うための水を飲んでも、それを咎めたりその事を触れ回したりしない。

それどころか、彼にあわせてその水を飲む高貴さを持っている。

紬のそれも、イギリス女王と同質だといっても言い過ぎではないだろう。



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:28:14.65 ID:rjxng3zc0


律「うめーよ、この紅茶。」

澪「うん、美味しいな。」

紬「持ってきてよかったわ~…ん?」

紬が紅茶を一口飲むと、眉をほんの少しだけひそめた。

澪も律も、紅茶に夢中になって気が付かない。

紬「……変な味がする。」

澪「?」

律「いや、美味しいじゃん。おかわり!」

紬「え、ええ。気のせいかしら?」



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:29:49.40 ID:rjxng3zc0


紬が律からからのカップを受け取り、おかわりを注ぎにティーポットを取りに向かった。

澪「私達の卒業旅行、やっぱりイギリスがいいよなー」

律「えー、なんかもっと、こうドカーンとしてうわーってなるような場所のほうが楽しいだろ」

澪「小学生かっ!」ボコ

律「澪ちゃんが殴ったー」

澪「せっかくヨーロッパに詳しいムギもいるし。なぁ、ムギ」

紬「ええ、でも私は温泉の方が……え……」



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:31:50.87 ID:rjxng3zc0


紬はティーポットを開いて絶句した。

先ほど注いだティーポットの中に、ゴキブリが浮いていた。
そのゴキブリは、わずかに残る紅茶の残りに浮かび、
その嫌らしい脂ぎった腹を、上から望む紬に見せつけて……

紬は叫びながら、ティーポットを床に落とした。

白磁の割れたかけらの中で、ゴキブリが一匹死んでいて、それを見た澪は気絶した。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:34:30.59 ID:rjxng3zc0


律は泣き出した紬をなだめ、目を覚ました澪を介抱した。

紬「ごめんなさい……私のせいで……でもなんで……」

澪「……」

律「き、気にするな、ムギのせいじゃねーよ。運が悪かっただけさ、
  
  そうだ、ゴキブリがあまりにも美味しそーなムギの紅茶に惹かれて飲みに来たってことさ。

  なあ、澪!」
  
澪「うん……ムギのせいじゃない。」



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:36:31.19 ID:rjxng3zc0


紬「で、でも……」

楽しかったティータイムは、ゴキブリのせいで台無しにされた。

律「ほら、よくいうだろ、虫食いのない野菜は、

  人間が食べても美味しくないってさ、それとおんなじだ。

  それに、虫だって別に食べる文化もあるわけだし……」

紬「ありがとう……りっちゃん……」



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:39:15.30 ID:rjxng3zc0


紬が彼女たちを愛する点はここにあった。人間的な心の優しさ。

なぜ生まれの高貴さと、この無償の愛は相反するのだろうか?

もし、紬がイギリスのサロンで同じ失態をしでかしたら、
それは1日もたたずにロンドンを超え、マンチェスターにまで話が広がるだろう。

しかし紬は大いなる勘違いをしていた。無償の愛など、この世には存在しない。
そして、生まれの貧しい人間は、欲深く、高貴さに対する嫉妬と怨念を心のどこかに抱いているということを。

澪がそうだった。澪は、紬の光が照らさぬ心の奥深い闇のなかで、決して紬を受け入れられぬ感情を抱いていた。

一方で律は違った。彼女は貧しいくせに、他人の裕福さや貧しさを自分と比較することに関心がなかった。
律はあまりにも人間的だった……

3人は、音楽室を掃除して、そのまま帰った。けいおん部らしからぬ気まずさが、3人の間に残った。



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:40:53.48 ID:rjxng3zc0


律「おー、唯じゃん!」

土日の休みの後、月曜日、律と澪は通学路で唯と出会った。

唯「あー、りっちゃんに澪ちゃん。心配かけてごめんね。」

澪「もう大丈夫なのか?」

唯「うん。熱は引いたし」

律「そうか、今日から部活来れるの?」

唯「うん」



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:42:36.44 ID:rjxng3zc0


こうして3人が高校についた時、玄関に人だかりができていた。

唯「どうしたんだろうね?」

律「ああ。どうやら玄関の扉が先公に封鎖されてるみたいだけど……」

唯「休校になるのかな?」

律「嬉しそ~だな、唯。」

律「おっ。あれ?救急車のサイレン?誰か怪我したのか?」

澪「え?」



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:46:03.69 ID:rjxng3zc0


救急車が慌ただしく校門につけ、救急隊が駆けつけ、教師に事情を聞き、

すぐに人だかりをかき分け、校舎へ向かっていく。

そしてパトカーのサイレンがけたたましい鳴り響き、

警察が到着すると同時に、教師が生徒たちを体育館へ誘導する。

律「おいおい、なんか大事じゃねーか」

唯「誰か死んだのかも」

澪「え……そんな……」

律「あー、澪、怖がるなよ。それにしてもやけに、あ、そこの人、何か知ってる?」

モブ「ごめんなさい、私もさっき来たばかりだから……」

唯「うーん、あ、さわちゃん!」



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:47:39.82 ID:rjxng3zc0


さわ子「ほら、そこ!早く体育館へ移動しなさい!」

さわ子はいつもよりも、緊張していた。声を張り上げ、生徒を体育館へ誘導していく。

律「さわちゃん、何かあったの?」

さわ子「……へらず口叩かないで、さ、早く移動!」

澪は、このさわ子の態度に嫌な予感しかしなかった。

今まで自分たちの日常に関係のなかった、何か暗い事件が、目の前で起こっている。

それを感じた時、澪は血の気が引いていくのを感じ、気絶した。

さわ子「澪ちゃん!?澪ちゃん……保健室へ……りっちゃん、保健室へ連れて行ってあげて……」



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:50:24.58 ID:rjxng3zc0


現場の混乱は想像を絶するものがあった。
事件を目撃した生徒の対応と、遅れて登校した生徒への対応に、教師たちは追われていた。
それから、さらに遅れてきた生徒たちは、奇妙な光景を目撃した。

青いビニールシートに包まれた物を、救急隊が担架で救急車の中へ運んでいく。
玄関には黄色い非常線が引かれて、窓ガラスをビニールシートで覆っていた。

唯「あ、和ちゃん!」

和「唯。」

体育館では、様々な噂が飛び交っていた。その大半が、誰かの死に関わるものだった。
どうやら、自殺者が出たらしく、それの対応に追われているようだ。

唯「なんか、大変な事が起こっているんだね。」

和「そうね」

唯「何か知ってるの?和ちゃん。足が震えているよ?」



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:58:04.44 ID:rjxng3zc0


和「私……見ちゃったの……そ、その……ウチの生徒が首を吊ってて……」

唯も絶句した。和は、いつもの冷静さを失って取り乱していた。

唯「でも、なんでそんなに、震えているの?もしかして、知り合いが?」

和「唯!滅多な事、言うもんじゃないわ!」

唯「ごめんね、和ちゃん」



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 10:59:21.75 ID:rjxng3zc0


教師が講堂に現れて、二年生の学生が自殺したことを告げた。
そして本日の授業は休講となり、生徒たちに帰宅を促し、
ショックを受けた学生に対するカウンセリングの用意があることを発表した。

体育館の隅ではまたゴキブリが死んでいた。

紬は吐き気をこらえながら、一人で先生の話を聞いていた。誰とも会いたくはなかった。
彼女は自分の死を、そのゴキブリの死から連想してしまった。

ゴキブリの隣には誰もいなかった。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 11:00:48.14 ID:rjxng3zc0


翌日の授業は、滞りなく行われた。自殺者が出たのは憂のクラスだった。
そのクラスだけは、特別な授業が行われたほかは、3年生の授業は日常に戻っていた。

受験が近かった。各人にとって大切な時期なのに、
自分勝手に死んだ故人に対する非難を皆心のなかで抱いていた。

他人の死は明らかに迷惑なものだった。ただ多くの彼女たちは勘違いしていた。

しかしたいていの場合自殺という行為は、
行為者にとっては非常に厳粛なものであるにも関わらず、他人にとっては迷惑極まりないものだ。



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 11:03:27.59 ID:rjxng3zc0


けいおん部の放課後もまた、いつも通りに戻った。

自殺者の話は、クラスではタブーだった。澪は、死に触れる事を恐れていた。

律は興味がなかった。紬だけが、自分の死と関連付け、

彼女の自殺をまるで自分の事のように受け止めていた。

紬「なんで死んだんだろう?」

澪「ムギ!」

紬「ごめんね、澪ちゃん。でも、なんで……生きているだけで私は人は幸せになれると思っていた。」

唯は、どこかよそよそしく、紬の話を俯いて聞いていた。

律「でも、ムギ。そんなに人の死で深刻になりたきゃ、新聞でも読めばいい。ニュースでも見ればいい。
  人は死ぬのさ。そんなに落ち込む必要はないよ!
 
 私達だって死ぬんだ!あのゴキブリのように!」
 
律は、足元に転がるゴキブリの死体を蹴飛ばした。



34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 11:05:20.99 ID:rjxng3zc0


紬「りっちゃんがそんな冷たい人間だって思わなかったわ。」

律「さ!この話はおしまいにしよう。澪も怖がっているしな。」

それで日常に帰れるはずだ。澪はそう思って、涙ながらに頷いた。

唯「でも、死んだの中野さんらしいよ」

唯の一言で、音楽室はいっそう静まり返った。

ゴキブリがまたどこかで死んだ。その死には誰も気が付かなかった。


Fin




40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 11:24:38.59 ID:u02WGIAcO

お……おつ……



42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 11:28:01.59 ID:CbIelFZ+0

お、おう



45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/10/01(土) 11:36:37.13 ID:avMr/P78O

もっと読みたい読み足りない
でも面白かったよ
乙!






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唯「日常の崩壊」
[ 2011/10/02 12:06 ] 非日常系 | | CM(5)

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タイトル:
NO:3983 [ 2011/10/02 12:28 ] [ 編集 ]

この文章とゴキブリ関係……
唯「澪ちゃんを殺しちゃった」の人かな?
どっちにしろすごく好きなんで長編でも短編でももっと書いてほしい

タイトル:
NO:3984 [ 2011/10/02 13:09 ] [ 編集 ]

無理に背伸びをして、小難しい表現で自己陶酔している類な気もしますが、
使う言葉は飽くまで平易で、文体も統一されていて地に足が着いている印象も受けます故、面白いながらも何とも釈然としない。
ただ単に、ゴキにゃんウザイ、と言いたいだけとか?

タイトル:
NO:3988 [ 2011/10/02 17:04 ] [ 編集 ]

まとめはやっ!

タイトル:
NO:4018 [ 2011/10/05 06:24 ] [ 編集 ]

ゴキブリが死んでから誰かの自殺が発生って流れかな。
ティーポットの中のゴキブリの死骸がたぶん梓とイコールになってる。
梓が軽音部に入部しなかったIF物で、なんか儚んで自殺。

体育館の隅で死んでたゴキブリはムギの自殺を暗示してるかも。
隣に誰もいないのがムギの境遇と重なってるかもしれない。
律が蹴飛ばしたゴキブリは律自身か。ぶっきらぼうだし。

最後の誰も気が付かなかったゴキブリが気になる、唯か澪か憂か純か。
ムギ、律、といなくなったら、軽音部内では唯か澪なんだけど。
唯は元から誰にも無関心だし、憂か純かだったらお互い気づくだろうし。
消去法で澪かもしれない。

タイトル:
NO:4147 [ 2011/10/21 19:50 ] [ 編集 ]

イギリスのことをそれなりに書いてくれて舞い上がってたら思った以上に気持ち悪い話だったwww
でも面白い
またなんか書いてほしい

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