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紬「ね、私を連れ出して?それで一緒に踊るの」#前編 【非日常系】


SS速報VIP(SS・ノベル・やる夫等々)@VIPServiseより

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1308926080/

律「バンドミーティング」
梓「あごらえせうてんぽ」
澪「Living On The Edge」

紬「ね、私を連れ出して?それで一緒に踊るの」#前編
紬「ね、私を連れ出して?それで一緒に踊るの」#後編




1 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/24(金) 23:34:40.47 ID:U05CTEOP0

私はベンチに座り、空港ロビーを行き交う人々を眺めていた。

人と荷物の集まる場所である空港。

そして、ホリディシーズン真っ盛りの今。

ロビーを行き交う人の数も普段の何割か増しのように見える。

でもだからと言って、ただ全体の雰囲気が

せかせかした余裕の無いものになっているかと言うとそれも違っている。

例えば、今、私の目の前を通り過ぎて言った家族。

こどもが両親の手を引いて、一歩でも速く飛行機に乗りたいと言う感じで飛び跳ねている。

両親も子どもが他の利用客の迷惑にならないようにと言う

節度を感じさせるはしゃぎ方をしていたので、それを叱り付ける事もせず、逆に合わせる様にしていて。

こどもも、そして両親もこれからの楽しい休暇に心を躍らせているに違いない。

その幸福を絵に描いたような家族の様子を見て微笑まないでいられる人と言うのは、そうはいないと思う。

だから、私もそれを見て微笑むの。





2 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/24(金) 23:36:14.00 ID:U05CTEOP0

紬「ね、私の休日はどうなると思う?」

旧知の人に会うと言うイベントをこれから迎える私の心臓は

緊張のためか、いつもより少しばかり速い鼓動を刻んでいた。



3 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/24(金) 23:36:45.86 ID:U05CTEOP0

私が選択した異国の地で暮らすと言う人生は、当然旧知の人に会うと言う機会を少なくしているとこ
ろがあって、今回だって相手の方が来てくれると言う事でなければ、こう言う流れになっていない。

紬「もう、そろそろね…」

インフォメーションボードは、彼女の搭乗している飛行機の到着を知らせていた。

?「やっほー、ムギちゃーん」

来た!

私は思わずベンチから立ち上がって、声のした方を見る。

ああ、会うのは久々だけど、あの頃と全然変わっていないように見える。

あの頃学校で見ていた姿と違って、休日なのでやっぱり少しくだけた格好をしているけれど。



4 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/24(金) 23:37:56.31 ID:U05CTEOP0

・・・
・・・

紬「先生、お久し振りです」

さわ子「ムギちゃんも久し振り…」

先生は少し目を細める。

紬「ん、何です…?」

先生はいたずらっぽい笑みを浮かべて、私の疑問に答える。

さわ子「いや、あまりのオーラに圧倒されてました」

先生…。

さわ子「あの頃も綺麗な娘だと思ってたけど…、ちょっと今からガン見するわね?」

紬「先生…、止めて下さい…、ちょっと恥ずかしいですよ…」

さわ子「うふふ、良いじゃないのぉ、久し振りなんだし」

先生は、私を頭頂部からつま先まで、観察するように見る。

さわ子「ふーむ、ホント、感心する程隙が無いわね…。
    着てるものもそうだし、パーフェクトって感じで、ねー?」



5 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/24(金) 23:40:41.16 ID:U05CTEOP0

紬「せ、先生…、ひゃっ、ちょっと、そんなとこ…、触られたら…」

さわ子「あの頃はちょっと、ぽっちゃりしてたし、正直澪ちゃんほどでは無いと思ってたけど、ほら
    ここらへんもすっきりして…、うーむ、これほどの逸材とは思わなかったなー」

それがあの頃からの、先生得意の冗談だって言うのは分かったけど、私は一応の抗議を試みる。

紬「あ、あの…、先生…」

先生は、私の言葉を遮るように目の前にピッと指を立てる。

さわ子「私とムギちゃんはもう先生と生徒じゃないわ」

紬「じゃ、じゃあ、なんでしょう…」

さわ子「友達?」

友達…、それはとても魅惑的な響き。



6 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/24(金) 23:41:56.38 ID:U05CTEOP0

紬「え、ええ、そうです!もう、先生と私は友達です!ね!」

さわ子「だから、これからは、先生ではなく、
    あの頃のりっちゃんや唯ちゃんみたく、さわちゃんと呼ぶこと」

さわちゃん…。

さわ子先生をちゃん付け…。

素敵!

私はドキドキしながら、その言葉を初めて発音する。

紬「さわちゃん…」

さわ子「なぁに、ムギちゃん」

紬「さわちゃん」

さわ子「何?」

紬「さわちゃん!!」

ああ、なんと言うこの高揚感。



7 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/24(金) 23:42:50.85 ID:U05CTEOP0

だが、一言発する毎に上がっていく私とは逆に、

さわちゃんのテンションがどんどんと下がっている事に気付く。

紬「さわ…、ちゃん…?」

さわ子「ごめん、この年でさわちゃんはきつかったかも…。
    ムギちゃんももうあの頃の私と同じぐらいになってるんだし…、
    でも私なんか未だに一人身だし…」

えっと…。

あ、さわちゃんが…、萎んじゃう…、ちっちゃく…。

さわ子「さわちゃんは無し。さわ子でお願い」

紬「さわ子さん…」

さわ子「うん…、そうね、それが良いかな」

紬「さわ子さん」

さわ子「はい、ストップ」

あ、これ、さわ子さんの「突っ込み」よね。

紬「はい!」

さわ子さんは、少し怪訝な顔で私を見る。

ふふ、私「突っ込み」されるのが夢だったの~って?



8 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/24(金) 23:46:22.36 ID:U05CTEOP0


・・・

さわ子「凄い車!私なんかまだちっちゃいのに乗ってるのに!」

さわ子さんは駐車場に止められた私の車を見るなり、

さっきまでのロウなテンションはどこへと言う感じで、興奮を隠さない。

私の車は父が就職祝いにと、プレゼントしてくれたものだった。

紬「自分のお金で買ったものじゃないですし…」

さわ子「だって、アストンよ!ボンドカーじゃない!」

あまり大袈裟な驚き方をされて、私は反応に困ってしまう。

そんな私の様子を察してか、さわ子さんはクスリと笑うと、私の肩に手をおく。

えっと…、わたし、そんなに困ったような顔してたました?



9 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/24(金) 23:47:01.61 ID:U05CTEOP0

さわ子「少し羨んで見ただけだから」

紬「いや、それだと、やっぱり…」

さわ子「ふふ、冗談よ。じゃ、お願いね、ムギちゃん」

紬「わかりました」

さわ子「スピード出しても良いわよ」

紬「あら、私はいつでも安全運転主義ですよ?」

さわ子「でも、こんな車乗ってると?」

うふふ、さわ子さんはやっぱり一枚上手と言う感じ。



10 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/24(金) 23:51:02.35 ID:U05CTEOP0


・・・

さわ子「凄い加速」

紬「予測してたの違います?」

さわ子「う、うん」

さわ子さんがあまりに驚いたようだったので、私は少しアクセルを緩める。

さわ子「免停は?」

紬「幸いな事になった事が無いです」

さわ子「そう、それは良かったわ」

さわ子さんは少し疑うような様子を見せながらも、納得した様子を見せ、それから大きなあくびをする。

さわ子「少し、寝ていい?」

紬「ええ、このペースで飛ばしても二時間は掛かりますから」

さわ子「信じてるわ、ムギちゃん」

紬「はい、任されました」

さわ子さんはそう言うと、シートを倒して目を閉じたようだった。

私はさわ子さんが持ち込んだ昔の空気に、何となく微笑みを浮かべてしまう。



11 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/24(金) 23:57:46.62 ID:U05CTEOP0

・・・

前を走るトラックが近づく。
紬「前がクリアじゃないと、ちょっとね…」

私は車線変更し、そして一気にパスしようと、シフトダウンのためにパドルに手を掛ける。

だが、視界の隅にさわ子さんの寝顔を捉え、思いとどまる。

紬「起こしちゃう…、かな…」

隣に人を乗せている時ぐらいは、ちょっとばかりのんびり運転をしても良いかも知れないし…。

さわ子「ね、ムギちゃん?」

紬「起こしちゃいました?」

さわ子「ううん、きちんと寝れてた訳でもないから」

さわ子さんは、目を閉じたまま言葉を続ける。



12 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 00:07:14.54 ID:IDuT0c1r0

さわ子「ね、ムギちゃんはこっちに来て、どれぐらいになる?」

紬「そうですね…、もう…、五年ぐらいですか?」

さわ子「そう…」

さわ子さんはそれっきり、口をつぐむ。

私は気付く。

さわ子さんが、自分の疑問を私にぶつけるかどうかを迷っている事に。

私は、となりのさわ子さんのことが気になりつつも、一段シフトダウンしてギアを踏み込む。

その瞬間、Gが私達を覆い、そしてフロントガラスから見える視界は少し狭くなる。



13 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 00:22:18.84 ID:IDuT0c1r0

・・・

紬「着きましたよ、さわ子さん」

さわ子さんは長いフライトの影響かそれなりに深く眠っていたようで、

まだきちんと覚醒し切れてはいないようだった。

さわ子「あ、うん…」

さわ子さんは起き抜けの緩慢な動きで窓の外を見る。

さわ子「…、ねえ、ムギちゃん?」

紬「はい…?」

私は、さわ子さんが先ほどのしようとしていたであろう質問を今ここでするのか、と身構える。



14 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 00:52:55.53 ID:IDuT0c1r0

さわ子「意外と普通の家ねえ?」

紬「それは…、って、はい?」

さわ子「えー、だってだって、車はこんなんだし、
    実家はあんなんだし、別荘もあんなんだし、それに、こんな片田舎だもの。
    それで、ムギちゃんの家って聞いたら、もっと凄い、古城!みたいなの想像するもんじゃない?」

私は思わず噴出してしまう。

紬「ふ、ふはっ、ふふ…、うふふ」

さわ子さんは私の反応に少しだけ拗ねたような顔をする。

さわ子「え、え、普通の反応でしょ?!」



15 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 01:06:11.46 ID:IDuT0c1r0

・・・

さわ子さんはティータイムスタンドを見て、はしゃいだ様子を見せている。

さわ子「これよねー、本場って感じで、この二段のスタンドがねぇ…、
    あー、テンション上がっちゃうなぁ、スコーンも良い香りだし…、これ焼き立てよね?」

紬「はい。生地は作りおきのものですけど」

さわ子「じゃ、頂きまぁす」

さわ子さんはスコーンに手を伸ばし、二つに千切ると

ハンガリー直輸入のアカシア蜂蜜をたっぷり塗って、口に放り込む。

さわ子「美味しい~。もう、最高…」

紬「ふふ、ありがとうございます」

さわ子「くるみ入りなのが、また良いのよねぇ」

紬「ええ、プレーンだと少し食べでが無いですし、ドライフルーツや栗だと
  蜂蜜やシロップを塗ることを前提にするとお菓子っぽくなり過ぎちゃうかな、って」

さわ子さんは、感心したような視線を投げかけてくる。

さわ子「ムギちゃん」

紬「はい、何でしょう?」



16 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 01:10:37.60 ID:IDuT0c1r0

さわ子「私のところにお嫁に来ない?」

上手い返しが出て来なくて私は少し口ごもる。

紬「えっと、いや、その…」

さわ子さんは、そんな私の様子をおかしそうに見ていたかと思うと、クスリと笑う。

さわ子「冗談よ。ほんの冗談じゃない」

紬「そ、そうですよね」

そうだ、きっとほんの冗談。

そこには何の意味もあってはならない。



17 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 01:11:27.16 ID:IDuT0c1r0

さわ子さんは、私がそんな風に考えているのを知ってか知らずか、

スコーンを三つほど、ビックリするようなスピードで平らげる。

さわ子「あー、美味しかったわ。それに紅茶もね。
    久し振りに入れて貰ったムギちゃんの紅茶、やっぱり最高だったなぁ」

紬「お粗末さまでした」

さわ子「お風呂借りて良いかしら。
    安い南周りの飛行機使ったから、ほぼ二日お風呂に入れて無い感じなのよ」

紬「あ、はい、一階の突き当たりのとこです」

さわ子さんは、椅子に掛けていたシアサッカーのサマージャケットを抱えると、

鼻歌を歌いながら部屋を出て行こうとする。

さわ子さんのそんな様子を微笑ましく眺めながら、

テーブルの片付けをしようとした私に、さわ子さんは足を止めて声を掛けてくる。

さわ子「ねえ、ムギちゃん?」



18 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 01:13:51.14 ID:IDuT0c1r0

ムギ「はい…、何で…、しょう…?」

さわ子「ここには一人で?」

ムギ「ええ、今は」

さわ子「そっか…」

私は変な想像をされると嫌なので、必死で言い訳をしてしまう。

紬「ち、違いますよ?!ルームシェアをしてたんです」

さわ子さんは、ただニコッと笑う。

さわ子「え、私何も言って無いし、何も思ってないけど?」

それにしてはちょっとその表情が怖すぎますけど?



19 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 01:15:08.87 ID:IDuT0c1r0

そう、ルームシェアをしていただけですもの。

さわ子さんは、フッとと真顔に戻って言葉を続ける。

さわ子「ねえ、この部屋って…」

紬「はい」

さわ子「ちょうど、あの部室と同じぐらいの部屋の広さね。お茶会をするにも丁度良い広さ」

私が言葉に詰まっていると、さわ子さんはちょっと不思議な笑いを見せて部屋を出て行く。

だから私、さわ子さんの出て行った扉にベロを出してやるの、ベーって。



20 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 01:20:48.87 ID:IDuT0c1r0


・・・

私の同性愛者としての人生は、今から遡ること十年ほど前、

周囲のストレートな人間達が異性に興味を持つのと同じ頃にスタートしている。

性に目覚めたばかりの同性愛の少女に取って女子校の生活と言うのは、途轍もなく魅惑的な社会だった。

男性の目の無い空間における、女の子の振る舞いと言うのは非常に奔放なものになる。

そう言う振る舞いを洗練されていないと感じる人もいるのだろうが、

私にとっては今でもそのような瞬間こそが生命力を感じさせ、

その娘達が一番魅力的に感じさせるものだと思っている。

私は既に、自分のセクシャリティを自覚していて、

かつその欲求は強くはっきりとしたものだったので、

自分がその欲求を満たすためにはどうすれば良いかと言う事を他人から教えて貰う必要は無かった。



21 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 01:38:10.72 ID:IDuT0c1r0

確か、それは新緑の季節、五月の放課後の事だったと記憶している。

私は頭の中で何度も描いたファンタジーを現実のものをとすべく、行動を開始した。

紬「ねえ、○○さん」

同級生「琴吹さん?」

紬「ね、この後って何か用事あるかしら」

同「いえ、何も無いですけど」

紬「そう…」

同「えっと…」

紬「ねえ、聞きたい事があるの。聞いても良いかしら」

同「えっと、なんでしょう…、か…?」

紬「○○さんは、お付き合いしてる男性の方って…、いるの…かしら…?」



22 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 04:09:23.43 ID:IDuT0c1r0

同「い、い、いないですよ!?な、な…、急にそんなこと…」

紬「そう…。○○さんてクラスの周りの方より大人びて見えたから…、その、ごめんなさいね」

同「い、いえ、構わないです。あ、あの…」

紬「何かしら?」

同「琴吹さんもそんな事に興味持つんですね…?」

紬「あら、意外?」

同「ええ」

そうして、その娘はクスリと笑う。

どうやら、私はその娘の心の内側へ侵入することに成功したようだった。



23 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 04:16:37.97 ID:IDuT0c1r0

その娘は図書部に属していて、あまり恋愛などに積極的な娘には見えなかったけれども、

その娘が休み時間でさえ惜しいと言う様子で開いていたのは、

古典的で現在はその価値の何割かを失っているし、

表面的にはそう見えないかも知れないが、紛れも無く『恋愛小説』ばかりだった。

私のその一歩は、その娘がそう言う事に興味を持っていて、

尚且つそこにファンタジーを抱いている事を事前に知った上で慎重に選ばれたものだった。

そして、私はその娘と次第に打ち解けるようになり、

その最初のステップから二ヶ月程経った時、単刀直入にキスしないか、と誘いを掛けた。

彼女がどのような人間であるかをある程度リサーチしながら、

最初のキスまで二ヶ月を掛けるなどと言うのはその後の私から見れば、馬鹿げた試用期間であると言う他無い。



24 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 04:17:19.40 ID:IDuT0c1r0

でも、(もちろん、これも今の私から見ればだが)

当時の私は未だ幼く、そう言う場での「クィア」としての口説き方などと言うものを良く知らなかったのだ。

私が知っていたのは、自分自身がその時何を欲しているかと言う事だけであり、

それを同性相手にしたがっていると言う事だけであった。

だから、私は単刀直入に、直裁的に、直感に従ってありのままの言葉で尋ねた。

紬「ねえ、○○さん、変なこと言っても良いかしら」

同「何、琴吹さん?」

紬「私○○さんとキスしたくなってしまったの…」

同「?!」

彼女はその拙い誘いに乗って、私とキスをする。

それは私の人生の中で最も甘美な経験の一つだったと思う。



Wikipedia:クィア

クィア(クイアとも)とは、英語圏の言葉「Queer」のカタカナ表記である。元々は「不思議な」「風変わりな」「奇妙な」などを表す言葉であったが、現在では、セクシュアル・マイノリティ(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスセクシュアル・トランスジェンダーなど)の人々全てを包括する言葉として用いられることが多くなっている。





25 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 04:27:44.12 ID:IDuT0c1r0

・・・

私達のキスはおおよそ三分間にも及び、その間私達は抱き合い、制服越しにお互いの体温を感じ合った。

空調の効いた図書室とは言え、西日の差し込む窓際でのその行為は、私達を激しく汗ばませ、

そしてその仄かに立ち上る汗の匂いがまた私達をより高ぶらせ、私はすぐに二度目のキスをせがむ事となった。

今でもしばしば考えるのは、もし彼女がその場で違う対応、

例えば私を「変態」呼ばわりしたりとか、人を呼んだりとかしていたら、どうなっていたかと言う事だ。

おそらく、二度とそう言う行為を試そうとは思わないか、

もしくは、その後何年にも渡って、いや未だにそれを試す事も出来ず悶々とした人生を送ったかもしれない。

そして、今と言う地点から巻き戻して見れば、その方が良かったのかも知れないと思う部分もある。

だが実際には、そのキスとそしてそこから地続きのセックスは、マジカルで、

それはその魅力を持って、私を一瞬にして虜にしてしまったのだ。



26 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 09:23:04.09 ID:IDuT0c1r0

・・・

一般的な話をすれば、自分のセクシャリティを積極的に公表する人と言うのは、今この時代でも尚稀な事だと思う。

それが、セクシャルマイノリティに属するようなものであれば尚更の事で、表面的には無いものとして扱われている。

そして、世間的な風当たりと言う面から考えても、決して暖かなものではない。

だが、こうした私を取り巻く周囲の環境にも関わらず、

私は同性愛者としての生活をこれ以上無い程に満喫する事が出来ていた。

中学の時、私がパートナーとした女の子の人数と言うのは、ざっと数えるだけでも、両手の指の数を優に超える。

私はその頃、ストレートな娘がパートナーを手に入れるよりもずっと簡単にそのパートナーを手にしていたのだ。



27 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 09:32:22.99 ID:IDuT0c1r0

その理由の一つとして、私が当時通っていたのが、上流階級の子弟ばかりを集めた女子高と言う事にある。

それぐらいの年齢で、かつ同性のみによって構成される社会では、

同性相手に擬似的な恋愛感情を持つと言うのは決して珍しい話では無い。

その仕組みに関して説明するならこのような形になると思う。

同年代少女ばかりの狭い社会において、異性間の交流を規制すれば、

それはすなわちロールモデル、指導者の不在をも意味し、異性間の恋愛をより困難なものにする。

とは言っても、人の性愛を求める心性と言うのは留められるものでは無く、

故にそこでは、女の子同士は互いを共犯者として仕立て上げ、

自分たちの中に対象を作り上げ、擬似的な恋愛共同体を稼動させる。



28 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 09:33:16.31 ID:IDuT0c1r0


共犯者達は

『唯一の活路として、一つの禁断の世界を組織する事を受諾する。そこで生きる事を受諾する』

と言う訳だ。

そして、私はその秘密の世界を誰よりも上手に生き抜く術を知っていた。



つまり、学校は私のセクシャリティとそれに付随する欲望をカモフラージュするのにはもってこいの環境で、

私はそれを利用して相手を調達し、その性的な欲望を思う存分満足させることが出来たのだ。



29 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 10:48:10.89 ID:IDuT0c1r0

・・・

紬「おはようございます、さわ子さん」

さわ子「おはよぉ…」

さわ子さんは、眠そうな目を擦りながら起きて来る。

紬「朝食用意出来てますよ」

さわ子「ありがとぉ…」

私は、さわ子さんが席についたのを見て、ご飯を茶碗に盛り付ける。

さわ子「おお…、この日本から遥か離れた地でふっくらツヤツヤで立ってるお米に出会えようとは…」

紬「ああ、日本からまとめて送って貰ってるんですよ」

さわ子「それにしたってよ?」

さわ子さんがあまりに感動して見せるので、私は少し恥ずかしくなってしまう。

さわ子「嫁に来ない?」



30 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 10:54:28.40 ID:IDuT0c1r0

また、ジョークですか?

紬「あ、えっと…」

さわ子「冗談よ、冗談」

紬「ですよね~?」

さわ子「りっちゃんの真似?」

紬「似てます?」

さわ子「どうかしら?」

ええ、さわ子さんのさっきの問いも昨日と同じようにほんの冗談で、だから私はそれに冗談で返すの。



31 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 14:04:58.52 ID:IDuT0c1r0

・・・

さわ子「ムギちゃん、決まってるぅ!」

さわ子さんは、支度を終えた私の格好を見てまた、

本気か冗談か分からない大袈裟な賞賛を私に浴びせる。

私もお返しにさわ子さんの格好を褒める。

紬「さわ子さんのガムブーツも良い感じじゃないですか」

さわ子「ふふん、これ別注でスネーク型押しなのよ」

紬「トップスは、えっとヘンプ素材ですか?」

さわ子「そう、一応中綿はプリマロフトなのよ。
    ちょっと、大袈裟だったかしら。こっちの夜は寒いって聞いてたから」

紬「用意するに越したことないですけど、
  まあ、本当に寒ければ向こうでも露天の人たちが色々売ってますし、車の中に戻るって手もありますから」

さわ子「お、経験者は語るって感じね」

紬「うふふ、私も最初のフェスに別荘ルックで行ってた頃とは違いますから」



32 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 14:05:59.84 ID:IDuT0c1r0

さわ子さんは改めて、私の全身を繁々と眺める。

さわ子「足元はスニーカーかぁ。どっちか迷ったのよねぇ」

紬「そこは機能よりも合わせ重視で、やって見ました」

さわ子「そっか、ムギちゃんパンツはバギーだもんね」

私はちょっと、いたづら心を起こしてお返しする。

紬「さわ子さん、動き辛くないですか?」

さわ子さんは、ふふんと笑って私の反撃をすかして見せる。

さわ子「ムギちゃん綺麗になったけど、まだまだ子どもねぇ」

紬「そうですか?」

さわ子「女のファッションは心意気なのよ。一つのスタイルなのよ。
    例え少しばかり動き辛くても、お尻がきつくてもスキニーをブーツインして見せる」



33 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 14:09:38.84 ID:IDuT0c1r0

紬「なるほど」

さわ子「あんまり、真剣に聞かないで。単にケイト・モスを見て野外フェスはガム・ブーツだって思っただけだし」

私は、さわ子さんに少しだけやり返したくなってもう一回だけ、教えを請うような真剣な表情で言ってやった。

紬「なるほど、女の道の勉強になります…、っぷ」
…、そのつもりだったけど、どうも噴出してしまってその目標は達成出来なかった。

さわ子さんも私の目論見が失敗したのがおかしかったようで、一緒になって笑い出す。



34 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 14:13:27.48 ID:IDuT0c1r0


・・・

さわ子「あの車で行くの?下擦っちゃわない?汚れちゃわない?リセールバリューが下がっちゃわない?」

さわ子さんは心配してくれているようだ。

何か余計なところまで。

でも、それに関してはまったく心配がない。

紬「いえ、今回は…」

さわ子「まさか、別の車?!まさかの二台持ち?」

さわ子さんは大袈裟に驚いて見せる。

でも、ガレージを見たらその驚きは消し飛んでしまうに違いない。

私のあのこう言う時専用の「ロックモービル」を見たら。



35 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 17:42:16.54 ID:IDuT0c1r0

・・・

さわ子「…、なんて言うか…、随分と…、使い込まれた…」

紬「ええ、ルームメイトが出て行く時に置いて行った車ですから」

さわ子「途中で止まったりしない?」

紬「一応、機関は年二回きっちり見て貰ってますから」

さわ子「買い換える方が安くついたり…」

紬「何か愛着が湧いちゃって…」

さわ子さんは何か探るような目になる。

紬「あ、いや、ルームメイトのことも含めてさわ子さんの期待するような話は何も無いですよ?」

さわ子「ぶー。良いじゃないちょっとばかり勘繰ってみたって」

紬「さわ子さんは全てをそこに繋げようとし過ぎですよ」

さわ子「ムギちゃんも、あと数年したら分かるわよ」



36 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 18:03:46.00 ID:IDuT0c1r0

さわ子「今から考えてみたら、あの頃はまだ甘ちゃんよ。ほんのねんねだったのよ」

私は、さわ子さんの遠くを見るような目に負けて、言葉を中断させた。

紬「じゃ、じゃあ、行きましょうか」

さわ子「なによぉ、異国の地で少しぐらい黄昏てみたって良いじゃない」

紬「まあまあ、続きは車の中でお聞きしますから」

私は、さわ子さんを車の助手席に押し込む。

それから運転席側に回り、私がドアを開けようと手を掛けると…、



鍵は閉められていた。



37 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 22:15:28.14 ID:IDuT0c1r0

そして、さわ子さんは鼻の頭に皺を寄せてニヤリと笑う。

これが、丸頭の子がでか鼻の女の子に説いて見せた愛と言うものなのかしら?

愛?

さわ子さんが私に?

ほんの冗談。

お互いに冗談を仕掛け合うだけ。



38 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 22:16:15.59 ID:IDuT0c1r0

・・・

荒れた農道からのキックバックを押さえ込むために、パワステ無しの重いハンドルと格闘する私に、

さわ子さんは少しだけ、ほんの少しだけ心配そうな感じで声を掛けてくる。

さわ子「そう言えば、チケットは大丈夫なの?」

紬「さわ子さんともあろう人が、愚問ですよ?」

さわ子「あれ、私何か変な事言った?もしかして、私が用意するって話だった?」

紬「私、こっちに来てフェスに参加料なんか払ったことないんです」

さわ子さんは私の言葉に含まれた真意を探ろうと、私の横顔を見つめる。



39 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 22:16:53.60 ID:IDuT0c1r0

紬「別に父の会社が主催企業に名前を連ねているとかそう言う事じゃないですよ?」

さわ子さんは、少し悩むような表情を作る。

紬「こう言うのはですね…」

さわ子「こう言うのは?」

紬「塀を乗り越えて入っちゃえば良いんです」

さわ子さんは小鼻を一瞬膨らませて…、少し興奮したような声を上げる。

さわ子「ああ…」

紬「それがロックンロールの理想ってものじゃありません?」



40 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/25(土) 23:56:15.83 ID:IDuT0c1r0

・・・

私は最初の成功以後、私がキュートだと感じる生徒に片っ端から声を掛けて回った。

勿論、全員が全員私の誘いを受けてくれる訳では無かったが、

こう言うものは何と言うか理論より経験なので、

だから片っ端から声を掛けて回ると言う私の判断は結果的に正しくて、

つまり私は短期間のうちに上手に誘うコツのようなものを身に付けてしまっていた。

私が話しかけ、探りを入れる。そこで相手の反応から、

「誘い」に乗って来るかを瞬時に判別する、そんな能力をだ。

先ほど述べたように、彼女らもまた私と同様に「飢えて」いたので、

彼女らはかなりの高い確率で私のその「誘い」に喰い付いて来た。

私はその体験がいかに気持ち良かったかと言う事、

男の子とのそれのように次の日まで続くような「変な感じ」を残さない事、

そして「肉体的には何ら汚れる事が無い」と言う決め文句をオブラートに包みながらも事細かに語って見せた。



41 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/26(日) 00:01:21.15 ID:1/ONmlIG0

そして、そこに相手が拒否感を示さなければ、

続けて女の子がどうすれば気持ち良くなるかを知り抜いている相手にされる事がいかに最高かと言う事を説明した。

紬「ねえ、貴女はそんな経験ってした事あるかしら?」

後輩「無いです…」

後輩は私の表情を伺う。

私を見上げるその瞳は、私からの次の一手への期待に潤んでいる。

つまり、分かりやすく言うと私の目論見は成功したのだ。



42 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/26(日) 00:22:05.05 ID:1/ONmlIG0


こうして私は同性による不特定多数との性交と言う独自ブランドの開拓者として、その学校を開拓し続けた。

だが結局、このブランドが私に内部進学を断念させ、

桜が丘女子高等学校と言う偏差値レベルから言ったら、

私が通っていた学園の高等部からは少し劣る高校へ進学させる事となった。

これに関して説明するなら、勿論当時の年齢的なものを考慮に入れたとしても、

私の無思慮に過ぎる快楽主義は周囲の人間関係を解き様が無いほどに複雑に絡み合わせてしまったので、

そこからの逃亡を選択せざるを得なくなったのと言う事だろうか。



44 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/26(日) 04:10:22.59 ID:1/ONmlIG0

・・・

私とさわ子さんは車を田舎道の脇に止めると、

生垣を乗り越え、鳴り響く音を頼りに一直線に張られた金網の方へ向かう。

何百エーカーと言う会場の周囲を完全に覆う事の出来る塀や金網なんてものは存在しない。

どこかに、途切れる箇所が出来てしまうし、そうでなくても…。

さわ子「あ、あったわよ!ムギちゃーん!」

金網の周囲を探っていたさわ子さんが私の名を呼ぶ。

そう、別に態々金網が途切れる箇所を探さなくても、誰かが金網に穴を開ける。

それは、愛と音楽と自由への道。

そうやって、私達は突破して行く。



45 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/26(日) 04:12:48.71 ID:1/ONmlIG0

・・・

桜が丘高校に入学した私は、また同じ事を繰り返す訳にもいかず、

その上、以前の学校とは大きく違う環境であったため、どう振舞ったら良いかも分からず、

右往左往して結局何も出来ない日々を過ごす事となった。

父母にとっては私の桜が丘への進学は大いに不本意であったと思われるので、

私がそこで他の学生の色に染まらないように、

同級生達と距離を取る生活を送るのは、望ましいものであったのだと思う。

お目付け役の斉藤の方は、

以前のようにやたらとハイテンションでリムジンに乗り込む私を諌める必要が無い事を、

どうにも寂しがっているように見えた。

周囲に溶け込めない状況。

そこから来る憂鬱さを家に持ち帰るのも、

父母の意図通りになってしまっているように思えて何だか癪にさわったし、

斉藤の寂しそうな表情を見続けるのもあまり気分が良いものでは無かった。



46 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/26(日) 04:15:32.50 ID:1/ONmlIG0

紬「そう言えば、積極的だったのって、音楽系の部活の子が多かったのよね…」

斉藤「お嬢様?」

紬「何でも無い」

斉藤「そうでございますか」

紬「耳聡い」

斉藤「何かおっしゃりましたか」

紬「いーえ、何も」

斉藤「そうでございますか」

紬「そう言えば…」

斉藤「はい、なんでしょう」

紬「部活を始めようかと考えているんだけど…」

斉藤「…」

紬「何か問題あるかしら」

斉藤「いえ、良いアイデアかと思います」

紬「音楽系の部活が良いと思うんだけど、何が良いかしら」



47 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/26(日) 04:21:00.11 ID:1/ONmlIG0

斉藤「私には、何とも」

紬「つまらないの」

斉藤「申し訳ありません…」

紬「そうね…、!」

私は、その時ふいに閃いたのだった。

私の弾くピアノに合わせて女の子が歌う姿と言うのは、中々に官能的な事なのでは無いかと。

背をしゃんと伸ばして、お腹に力を入れて発声する女の子たち。

とても美しい光景。

紬「そうだ、合唱部が良いわ、そう思うの」

斉藤「ええ、良い考えだと思います」

紬「そうよ、そうよね」



48 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/26(日) 12:29:34.42 ID:1/ONmlIG0

・・・

結論から話せば、私は合唱部には入らなかった。

と言うのも、何故だか分からないけど、

間違って入ってしまった音楽室を占拠していた二人組から軽音部と言うものに誘われたてしまったからだ。

少し迷ったけども、それまでの私にまったく縁の無かった

ロックンロールと言うものに興味を惹かれて、私はその誘いを受け入れた。

勿論それだけでは無くて、そう、そこに何がしかの性愛が無かったなどとは間違っても言えない。

つまり、りっちゃんも澪ちゃんもすっごく素敵な女の子だった。

この娘たちと仲良くなりたい。

まず、それがあった。



51 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/26(日) 22:06:04.70 ID:1/ONmlIG0

でも、それはそれまでの感覚とはちょっと違っている。

ただ、その場で身体を重ねあわせるだけでなく、一生その関係性の中で生きていきたいとまで思ったのだ。

だから、私は二人の誘いを受けいれて軽音部に入部した。

思うに私は、その日恐らく生まれて初めて「友人」と言う人間関係を得たと言って良い。



52 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/26(日) 22:06:54.03 ID:1/ONmlIG0

・・・

たとえ同性愛者であっても、家族や友人を持ち何らかの共同体に属して生きると言う事は当然欲するところである。

中学時代の私は、小学生より持ち上がりで当たり前のようにあったその周囲の環境のためか、そう考えた事が無かった。

だが、高校生になり、誰も知り合いのいない環境に放り込まれたことで、

そこで初めて私はその重要性を実感する事となり、

そして共同体に属していないと言う孤独感が私の足をあの音楽室へ向けさせた。



53 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/26(日) 22:07:49.07 ID:1/ONmlIG0

中学時代の私ときたら、あのような環境が永続的に続くと思っていた。

あのような環境とは、ストレートの女の子をハンターである私が、

生物学的頂点として一方的に狩る狩猟場としての人間関係と言う事だ。

今にして思えば、それはその頃私が自覚していなかった孤独や疎外感の裏返しだったのだと思うが、

私は彼女らを獲物としてしか見ていなかった。

単なる性欲の捌け口でしかなかった。

友人では無い。恋人でも無い。

そんな同級生達に遠慮容赦は必要ない。



54 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/26(日) 22:08:25.63 ID:1/ONmlIG0



今にして見れば、私はりっちゃんと澪ちゃんと出会って

初めて自分の心の住処を見出す事が出来たのだと思う。



56 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/26(日) 23:57:39.66 ID:1/ONmlIG0

・・・

そして、軽音部が人数の不足から公式の部活として未だ認定されず、

日々何となくの勧誘などを続ける中、あの日がやって来た。

それまでの人生をひっくり返すような衝撃を私に与えたあの日。

これまでの人生でも、あれを超える衝撃を受けた事はない。



57 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/27(月) 00:10:21.74 ID:ohC8dyoI0



それはある放課後の事だった。

りっちゃんが一人の女の子の手を引いて音楽室に入って来る。

キッズモデル的な肢体、振舞い。

私が今まで知らなかった子。

私は魅了された。

一瞬で恋に落ちた。

初めての恋。

私は自分の恋のために、りっちゃんと澪ちゃんの二人は廃部を免れるために唯ちゃんを引き止めた。



58 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/27(月) 01:02:21.46 ID:ohC8dyoI0


そこからが私に取っての特別な日々。

ロックンロールと言う不気味な音楽は私を縛り付けていた上流階級的な抑圧から解放してくれた。

そして友人達は、私に暖かさをくれた。

つまり、それは音楽と自由(この二つは不可分で)、そして愛をあの音楽室が与えてくれたと言う事。

結局、高校三年間で唯ちゃんへの愛の告白どころか、

皆に自分のセクシャリティをカミングアウトする事も出来なかった。

そこは、セクシャリティと言う点は除外せざるを得ないけれど、

私が初めて手に入れた孤独や疎外感を感じず、生きられる場所だった。

それを万が一にでも、失うような選択を取れようはずも無かった。

にも関わらず、いや、だからこそ素晴らしい掛け替えの無い日々だった事には変わりはない。



59 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都):2011/06/27(月) 01:19:00.86 ID:ohC8dyoI0




けれど、人は楽園をいつか追放される。




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紬「ね、私を連れ出して?それで一緒に踊るの」#前編
[ 2011/10/10 21:18 ] 非日常系 | | CM(0)

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