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メタルギアソリッド×けいおん!#後編 【クロス】


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メタルギアソリッド×けいおん!#前編
メタルギアソリッド×けいおん!#後編




78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 17:49:30.61 ID:wpCa8h470

ノーマッド機内でオタコンは愛国者のAIが国境無き軍隊に掌握されるのを確認した。
しかし、それだけでは彼らの勝ちではない。
この先にまだ何かあるのだ。

「ハル兄さん……」

「大丈夫だ、サニー。何とかしてみせる、希望を捨てちゃいけない」

オタコンはサニーを心配させないよう、優しく微笑んだ。

『こちら、ロイキャンベルだ。聞こえるか?』

ディスプレイ上のウィンドウに大佐の顔が映る。

「大佐、愛国者のAIが!」

『こちらでも確認した。それと、どのネットワークでもいいチャンネルを開いてみてくれ』

オタコンは言われるがまま適当なニュースチャンネルを開く。
そこに写ったのは崩壊しかけのショッピングモール内にある吹き抜けの屋内広場だった。
奥にはソリッドスネークらしき人物が横たわっている。

「何なんだ……これ……まさか……メタルギアの視点か!?」

『おそらくな。そしてこれは全世界の全メディアに流れている。
 我々は専用のホットラインを解し、愛国者のシステムの外で通信を行っている。

 だが他は、一般市民は愚か軍内部の一般事務コンピューターやテレビまでも完全に乗っ取られ
 この映像が流れている。各交通機関、ガスや天然資源の一部のエネルギー供給もストップしている。
 医療機関、一般航空は最低限運航出来るだけの余力は与えられているようだが、
 それ以外は全てストップしていると考えていい』



79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 17:53:18.88 ID:wpCa8h470

テレビ画面の映像に事件の首謀者カズヒラ・ミラーが姿を現す。

『マスター……ミラー』

かつて同じ機関に所属したミラーを目にし大佐は言葉を失った。
画面の中のミラーがゆっくりと口を開く。

『かつて……ザ・ボスと呼ばれる1人の兵士がいた。
 特殊部隊の母、伝説の兵士、祖国を売った売国奴、ソ連の地に核を撃った狂人……
 人によって解釈は異なる。しかし彼女は確かに歴史を変えた。

 かつて……ビッグボスと呼ばれる1人の兵士がいた。
 ザ・ボスを殺し、祖国を捨て、あらゆるものに縛られない本当の意味での自由国家を作った。
 彼は確実に歴史の流れを作った。

 かつて……ゼロと呼ばれる男がいた。
 愛国者なる組織を形成し世界を合理的なシステム下に置こうとした。
 やがてその思想はAIへと引き継がれ戦争経済による需要の上に世界を構築した。
 彼は確実に歴史の支配者だった。

 しかし今俺達は、全てを失った。
 冷戦が再び復活するのか、それとも世界大戦が始まるのか、誰も分かりはしない。
 行く先を照らしてくれる指導者もシステムももはや存在しないんだ。
 戦争経済は破綻した。
 世界は新たな在り方を模索する』



80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 17:56:29.65 ID:wpCa8h470

『俺達は怖い。資源を求め、このどさくさに紛れ大国に飲み込まれるのが。
 俺達は怖い。独立と報復を仰ぎ、小国に反旗を翻されるのが。
 俺達は怖い。報復と報復の螺旋が。
 俺達は怖い。不安定なこの片足立ちの世界が。

 今、この世界に必要なものは何か?
 それは混沌とした世界を法の下に裁ける公平かつ強力な力だ。
 一言で言うなら
 
 そう……抑止力だ。
 
 かつてコールドマンが唱えた抑止力論とは違う。
 機械が核を撃つんじゃない。人間が核を持つ事に意味がある。
 人は核を……報復の為に、核を撃てるんだ。
 皮肉にもコールドマンはそれを証明してしまった。
 そしてその力を持つものは真の意味で公平でなければならない。
 愛国者達が目指した完全な支配とは違う、国家と抑止力の完全なバランス。
 
 ……俺達は手に入れる。
 国家間の政治的理由に左右されない国家と同様の……いや、それ以上の力を!』

オタコンはぎゅっと拳を握り締めた。

「何を馬鹿な事を……僕達は…僕達は銃を突きつけあう為に戦ってるんじゃない……」

『俺達が力を得るには愛国者のこのシステムと、もう1つ……必要なものがある』

オタコンがごくりと唾を飲み込んだ。

『世界中に点在するメタルギアの亜種、それらを強奪する』



97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 19:29:51.88 ID:wpCa8h470

「大佐……」

『ああ、一般回線は死んでいるが軍同士のネットワークは生きている。
 直ちに国連軍を派遣し国境なき軍隊をこの世界から排除しなければならない』

大佐はすぐにでも連合軍を組織する勢いだ。

『と……その前にやっておかなければならないことが1つある』

ミラーはサングラスをくいと上げた。

『ここまで大口を叩いてきたが俺にとってはココからが正念場だ。
 俺達が世界の法となるか、ただの笑いものになるかは「眠れる森の美女」に全てを託すしかない』

「何のことを言ってるんだ……」

『火の始末はちゃんとしたか?車は車道の脇に止めているか?
 それが出来たなら次にお前たちが目覚めた時、世界は新たな時代を迎えた後だ』

ESP、ネットワークシステムの掌握、ゼロAI、平沢唯
そして……眠れる森の美女。

ピースがオタコンの中でカチリとはまる。

「駄目だ!大佐!!今すぐ家のブレーカーを落とすんだ!!!」

ディスプレイの中でミラーはチシャ猫のように、にやりと笑う。


『それでは皆様……良い夢を』



100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 19:35:59.44 ID:wpCa8h470

スネークがその重い体を起こしミラーの方に向き直る。
ミラーはスプリガンの方を向いていたが彼もまたスネークに視線を戻す。

『アーイースゥー!アーイースゥー!』

スプリガンが大音量で謎の言葉を発した途端ずしりとスネークの体が重くなる。
殴り合いのせいではない。
強制的に脳が動かなくなるという感覚だ。
強烈な脱力感にまぶたが痙攣する。
目を閉じれば確実に意識を失う自信があった。

「驚いたな、スネーク。ESP洗脳対抗訓練を受けているとは言えたいしたもんだ」

「何を……した……」

「平沢唯の脳の状態と、この声を聞いている全ての人間の精神状態を強制的にリンクさせる。
 ゼロAI、そして愛国者のネットワーク、彼女の声が持つ能力をフルに使ってな」

「な……何だ…と?」

「平沢唯のESP能力はお前も知っているだろう。
 自分の脳波を他者に同調させる声を持っていると。
 彼女の能力は微弱だがゼロAIを介すことで出力を調節する事が理論上では可能だった。
 メタルギアRAXAのデータが生きたんだ。
 機械とESP能力者の相互運用に成功した数少ない事例だからな。CIAには感謝しなきゃならない。
 ぶっつけ本番だったが……行動しない手は無かった」



103 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 19:39:38.56 ID:wpCa8h470

より一層体へ睡眠への欲求が体を蝕む。
スネークは咄嗟に耳を塞いだ。

「無駄だ。この声は聴覚神経を骨伝導により刺激する。
 その信号は脳の腹外側視索前野を介して入眠ニューロンの活性化を促す。

 さらにニューロン間の低周波での同期を利用し、
 平沢唯が置かれている浅い眠りノンレム睡眠状態へ一気に移行させる。
 俺達MSFには聴覚神経にこの信号が入った時それを遮断するナノマシンが注入されてる。
 この世界で今起きてるのは一部の医療関係者と航空旅客機のパイロットそれに俺たちだけだ」

スネークは白目を向いていた。
ミラーが何を言っているのかもはや理解できない。
限界だった。

「彼女が眠れば世界も眠る」

ミラーは倒れたスネークの前に立ち見下ろした。

「スネーク、俺はこの世界を変えてみせる。目覚めを楽しみにしておけ」

そう言うとミラーはスネークの前から姿を消した。
その後ろ姿を見たが最後、彼の意識は深い闇の中へと落ちていった。



107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 19:44:46.51 ID:wpCa8h470



サニーはパソコンの前に突っ伏して眠っているオタコンを見上げていた。
画面上ではロイキャンベルが同じように机の前に突っ伏して寝息をたてている。
オタコンと大佐が眠っている理由は今も尚、
世界中に流れ続けているこの平沢唯の声のせいだというのは分かる。

しかし、サニーは何故自分が起きていられるのか不思議だった。
幸いノーマッドは自動飛行中である。
しかしこの状態をほおっておくのは不味かった。

「ま、まずは……ハル兄さんをお、起こさなきゃ……」

オタコンの服のすそを持ち、ぐいと引っ張る。
ぐにゃりとオタコンがサニーに覆いかぶさりそれを必死で受け止めると
よたよたとした足取りでオタコンを床に寝かせた。
オタコンが座っていた席にサニーは座り平沢唯の声紋と分析データを解析する。
原因と思われる複数のファクターを除去するフィルタープログラムを突貫工事で進めた。

データには既に目を通していた事もあり見る見るうちにプログラムが組みあがった。
システムをスパコン内ですぐさま実行すると今度はオタコンの横へ行く。

「ハル兄さん……起きて……ハル兄さん」

「う……サニー……目玉焼きはもう食べられないよ…むにゃ」

オタコンは体をゆすっても起きなかった。
口から出るのは寝言ばかりである。
GABA作動系神経が抑制状態で固定されているのが原因なのだろう。



109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 19:50:10.76 ID:wpCa8h470

サニーは機内の奥からメタルギアMk2の予備機Mk3を持ち出した。
赤いカラーリングのMk3のコントローラーを持ち動作確認をする。

「これなら……いけるかも」

Mk3からマニュピュレーターが伸び青白い火花をぱちぱちと鳴らす。

「え、えいっ!」

オタコンにマニュピュレーターが触れ、陸に打ち上げられた跳ねる魚のようにビクンと体がうねった。

「うわぁああああああああ!!」

「ハル兄さん!」

「え……あ……あれ?僕は何してたんだっけ?あ、サニーおはよう」

「おはようじゃない、大変。みんな眠っちゃった」

「眠ったって……僕は……そ、そうだ!ミラーは!?」

オタコンはずれたメガネを直しモニターを確認する。

『ショートケーキィー、モンブラーン。アハハハハァー、ウフフフゥー』

テレビのチャンネルはどの局からも呪文のような声が流れていた。
スプリガンはショッピングモール屋上にて不気味な笑い声を上げ続けている。

急いでオタコンは世界の状況を確認した。
メディアが溢れかえる各国の首都圏は完全に沈黙し
軍事基地も満足に機能しておらずパニックを起こしている状態だ。
あの演説は軍関係者を釘付けにする罠だったのだ。

考えうる中で最悪に近い状況である。



111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 19:54:48.30 ID:wpCa8h470

スネークが意識を失う直前までの会話も勿論耳を通す。

「何てことだ……」

いくつかの基地は襲撃が始まっているらしく、運良く催眠放送を聞かなかった兵士も
音響装置と共に進軍するテロリストに手も足も出ない。
対生物兵器装備でも音の攻撃には成す術が無いようだ。
今すぐに状況を打開しなければ世界はミラーが望む世界が待っている。

人類の歴史のターニングポイント、今まさにオタコンの肩にそれが圧し掛かっていた。

「考えろ……考えるんだ……」

オタコンは頭を抱えた。
スネークならこの状況にどう立ち向かったのだろう、そんな事を考えてしまう。

「ハル兄さん……どうなっちゃうの?」

サニーにはいつも心配を掛けてしまう。
自分が彼女を守らなければならないのに、先ほども彼女の手によって目を覚ます事が出来た。
サニーがいなければ今頃は……

「……あれ?」

おかしい。
1つの疑問がぶくぶくと音を立てて膨れ上がる。
オタコンはサニーの方を見た。
サニーはきょとんとしている。

「サニーは……どうして眠らなかったんだ?」



113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 19:59:42.91 ID:wpCa8h470



平沢唯は白い空間にいた。
空も床も周りの空間も全て白い。
ただ1つ白いテーブルがありその上には色とりどりのケーキと紅茶が並んでいる。

「もぐもぐ、あぁ~幸せぇ~!こんなに沢山のケーキがあるなんて夢みたいだよぉ」

ケーキはいくら食べてもなくならず、お腹もまったく膨れない。
彼女にとっては夢のような場所だった。

口元がクリームまみれの唯が顔を上げると、テーブルの向かいに凛々しい顔をした女性が座っていた。
体にフィットするその白いスーツは普通の服には見えず、戦闘用に開発されたもののようだ。
そして床を見ると緑のイグアナがぺたぺたと地面をはっている。

「相互リンク各AI安定化、現状態デ固定シマス」

イグアナが急に口を利き唯は目を輝かせた。

「わぁ!このイグアナ喋るよ!凄いね!」

「彼はレプタイルよ、スプリガンを動かしているのは彼」

向かいに座った女性が口を開いた。

「へぇーそうなんだー。
 すぷりがんが何なのか良くわかんないけど……あ!これ美味しそう!あむっ、もぐもぐ」

唯はシフォンケーキを頬張る。

「もぐもぐ、あなたの名前は?」

唯はテーブルに身を乗り出す。
ケーキと紅茶カップを乗せた皿がカタンと踊る。

「私はザ・ボス」

「変わった名前だねぇ~。えっと、私は平沢唯!よろしくね」

にへらと笑うと唯はまたケーキやアイスクリームの虜になった。



116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 20:06:14.28 ID:wpCa8h470



サニーはあの平沢唯が発信源の催眠音波を聞いても眠らなかった。
その原因をオタコンはひたすら考える。
世界中の人間とサニー、何がこの結果を生んだのか。
生まれ持った体質なのか、それとも別の要因か。

タコンが考えを巡らせていると桜が丘高校の校門前で
自動待機モードにセットしていたMk2のカメラが生徒を偶然映した。
眠っているのではない、4人が何やら話し込んでいるようだ。

少し距離があり映像が鮮明ではなかったが、
明らかに彼女らにはこの洗脳放送が効いていないようだった。

「何……だって?どういう事なんだ?」

オタコンはすぐさまMk2の待機を解除する。
カメラをズームし彼女らの輪郭を捉えたとき、オタコンは1つの答えに辿り着いた。

4人の生徒、それは律、澪、紬、梓だった。

「そうか……歌だ……」



118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 20:11:29.84 ID:wpCa8h470

オタコンはサニーに向き直る。

「サニー、君は彼女らの歌をずっと、それこそ何十回も聞いていたよね?」

「……うん」

「君が眠らなかったのは彼女たちの歌が原因だったんだよ!」

オタコンは興奮した様子でボイスサンプルを引っ張り出す。

「彼女の歌はノルアドレナリンやセロトニンの分泌を促すんだ。
 彼女の歌を聴き続ける事でGABA作動神経回路が組み変わったんだよ!
 だから同じ部で活動していた彼女たちも平気なんだ。
 毎日彼女の歌声を聞くことで抗体をつけていたんだ」

「けど……それだけじゃ状況は変わらない……」

サニーは冷静だった。

「あ……そうか……そう、だよね」

そう、オタコンとサニー、女子高生4人ではどうする事も出来なかった。
各国で戦闘は既に始まっている上に愛国者の強大なネットワークはMSFの手中にある。

「いや、まだだ……諦めるもんか!」

オタコンはMk2のステルス迷彩を切る。

「出来る事をしよう!僕たちに出来る事を探すんだ!」



120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 20:15:22.53 ID:wpCa8h470



「梓!そっちはどうだった!?」

「駄目です……みんな眠っちゃって……体を揺すっても起きなくて」

軽音部のメンバーは校門前に集まりこの街に起こった怪現象に戸惑いを隠せずにいた。
生徒も、先生もそれどころか街の住民が寝息を立て、テレビからは唯の声が延々と流れている。

「唯ちゃん……大丈夫かな」

紬がスカートのすそをぎゅっと握る。
澪は電柱にへたり込みぽろぽろと泣いていた。
律が慰めようとするも、どう声を掛けていいのか分からず出しかけた手をそっと引っ込めた。

「先輩!あれ!」

梓が指差す校門の方からラジコンのようなロボットのような物体が近付いてくる。
足にローラーがついているのか、あっという間に小さなロボットは軽音部の前にやってきた。
ディスプレイが開き、画面に1人の男が映る。
白衣を着てメガネを掛けた科学者のような出で立ちの男だ。

『君達……軽音部の部員だね?』

「な……何もんだ!」

律は警戒している。他のメンバーも怯えていた。
この状況下では無理も無い。



122 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 20:18:38.13 ID:wpCa8h470

『僕はハル・エメリッヒ。
 スネーク……いやジョン・コジマの友人だ。
 僕の事はオタコンと呼んでくれてかまわない』

「ジョン先生の友達!?なぁ、唯はどうなった?大丈夫なんだろうな!」

律がMk2に掴みかかり機体をぐらぐら揺らす。よほど心配なのだろう。

「あああああ、揺らさないで!バランサーがおかしくなる!」

律がぱっとMk2から手を離す。

「ふぅ……平沢唯の安全は大丈夫と言えば大丈夫だ。
 今彼女は夢を見てる。覚めない夢をね、この放送が証拠さ」

「夢?何のことだよ!」

オタコンは現在平沢唯が置かれている状況、そして彼女の能力
スプリガンについて出来るだけわかり易く簡潔に彼女らに伝えた。

何かの手がかりなればいい。
藁にもすがる思いだった。



124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 20:21:29.79 ID:wpCa8h470

唯がシュークリームを食べ終わると不意にペタペタ床を這うレプタイルの方を見た。
依然として白い空間の中である。

「いい事思いついた!ねえ、レプタイル」

イグアナが首を唯の方に向ける。

「ハイ」

「あだ名をつけてあげるよぉ」

「アダナ?」

「そう!」

「ソノヨウナ言葉ハ登録サレテオリマセン」

「うーんと、要するに名前みたいなもんだよ!仲良くなりたいなーって思った時にはこの名前で呼ぶの!」

「……理解シタ」

「えーと、じゃあねぇ……あなたの名前はレプ五郎ね!可愛いでしょう!?よろしくねレプ五郎!」

「カワイイ……レプ五郎……」

「気に入らなかった?」

「……認識シタ」

「そっかぁ~よかったぁ。あ!ザ・ボスのあだ名も考えて……」

「……私はそのままでいい」

ザ・ボスはそう言うと唯の方を見た。
目つきが鋭い。

「ボーちゃんって言うんだけど……ダメ?」

上目遣いでぶりっ子してみる。

「……私はそのままでいい」

失敗だった。



126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 20:25:53.35 ID:wpCa8h470

「あの……司令」

擬装トラックの中で通信兵がミラーを呼び止めた。
今から港へ向かい国内からの脱出を企てる所である。

「どうした?」

モニターの方へミラーが近付く。

「これ……どう思われます?」

兵士が指差す先には各AIの動作状況を示す画面が開かれていた。
AIママル、AIゼロ。そして……AIレプ五郎。
各AIの表記は確かにそう書き換わっている。

「ウィルスか?」

ミラーは苦虫を噛み潰したような顔だ。

「いえ、外部からの干渉ではないと考えられます。表記が変わったのは今から1分前。
 ゼロAIつまり平沢唯がレプタイルAIに相互干渉を促した形跡があります」

3つのAIはデータを常に断片的に共有し、
個々の自我を保ちながら互いにバージョンアップを繰返す。

特にママルとレプタイルは大脳と小脳のような関係にあり、情報交換が顕著だ。
しかしこの唯による奇妙な干渉はイレギュラーな事態だった。
干渉しなければ唯の催眠音波は外部に発信できない。

「撤退の準備を急ぐ。この先何が起こるか想像がつかん。
 ショッピングモールに残るスプリガン及び全部隊も、迎えの船が来る前に港に移動させろ」

「了解、スプリガンには港への進行ルートを送信してあります。
 彼女の脳波も固定されています。問題ありません」

ミラーはそっとレプ五郎の文字を指でなぞる。

「問題ありません……か……嫌なフラグだ」



128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 20:31:14.21 ID:wpCa8h470

「じゃあ、唯は蟹の化けモンの中でグーグー呑気に寝てるって言うのかよ?」

『あわわ、また!揺らさないで!壊れちゃうよ』

律は興奮気味に再びMk2をゆさゆさ揺さぶった。

「唯を……唯を助ける方法は無いんですか!?どうやったら目を覚ますんですか!?」

がっくりとうな垂れていた澪もほんの小さな変化に希望を託し、オタコンに詰め寄った。

『彼女の眠りの状態は特殊なんだ。
 放送を聞く限り睡眠の誘発と食欲中枢に何らかのショックを持続的に与えられ続けてる。
 別の要因、つまりそれ以外の大きなショックを彼女に与えないと彼女は目を覚まさない』

「あの……1ついいですか?」

梓がおずおずと手を上げる。

「もし仮に唯先輩がその眠りから覚めたらどうなるんですか?……まさか死んじゃったりしないですよね!?」

『それは大丈夫だと思う。ゼロAIは浅い眠りの時、
 つまりノンレム睡眠時意外の脳波を送り続けるとシステムエラーを起こすんだ。
 システムは搭乗者の精神汚染を最優先で保護するようプログラムされてるからね。
 ゼロAIが停止すると相互情報伝達が不可能になり、ママルとレプタイルは機能を一時停止するだろうけど
 ……問題が1つある』

「問題?」

「彼女にどうやってショックを与えるかさ。
 スプリガンはイングランドじゃ「宝を守る番人」とも呼ばれている。
 その名前を冠したこのメタルギアは守りに特化したAI兵器だ。
 仮に核爆弾が頭上で爆発しても各AIは作動し続ける。
 仮に僕が乗ってるノーマッドで特攻をかけてもキズ1つ付けられない」

「あの~私からもいいですか?」

今度は紬が小さく手を上げる。

「外で起こってることは唯ちゃんには伝わるんですか?
 浅い眠りの時って、外の影響を受けやすいじゃないですか。
 夢を見たりするのってその時ですよね?」

『感覚器官を司るレプタイルと相互情報交換をしているから少しは入ってくるだろうけど……
 受け取り手側の平沢唯が興味を示すものじゃないとゼロAIはそれを受け取らない』



130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 20:35:12.30 ID:wpCa8h470

「それって、唯が興味を示す事をすればいいって事?」

澪が顎に手をやって何やら考えているようだ。

『そうだよ……けどそれは不可能に近い。
 彼女の脳波、放送を分析する限り彼女はあの夢から出たくないはずだ。
 あの世界で不変を望んでる。好きなものを好きなだけ食べる。
 平沢唯の資料には菓子類が好物とあるし、それを壊すなんて僕には無理だ』

Mk2が首を横に振る。
しかし何故か4人の表情が次第に明るくなる。
示し合わせたように互いに顔をみて頷きあっている。

「あんたはさ、機械とか科学の事よく知ってるのかもしれないけど、
 私らは唯の事を誰より知ってるつもりだ。
 私は……私達は今出来る事をやる。
 ジョン先生にそう教えてもらったんだ」

『俺は俺が出来る事をする、だから君は……君が今出来ることをするんだ』

スネークの言葉が律の心にはちゃんと残っていた。
律がそう言うと、澪も紬も梓も力強く頷いた。
オタコンだけは何をこれからするのか分からない。

「君達……これからどうする気なんだ?」

「手伝ってよ、今この街で起きてるの私らだけなんだからさ!」

放課後ティータイムのメンバーが校舎に向かって走り出す。
オタコンはわけが分からないまま彼女達の後についていった。



132 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 20:41:03.80 ID:wpCa8h470



夢の中では時間の概念があやふやな様に、
唯もまた時間と言う概念を無視しながらケーキをほお張り紅茶をすする。
ケーキは現在110個目に突入していたがその数を把握しているのはレプタイルだけだった。

「平沢唯」

「ふぁふぃ?」

対面に座るザ・ボスが急に口を開く。

「お前は何に忠を尽くす?国か?恩師か?名誉か?思想か?」

「ちゅう?」

「何を信じるか、と言うことだ」

ケーキを口に運ぶのをやめ、眉をへの字にして唯は考える。
そんな事を考えた事が無かった。
普段難しい事を考えないせいか頭から湯気が出る。

ふとどこかで、何かが聞こえた気がした。
唯の中で何かがコトコトと動いた気がする。
そしてその正体がザ・ボスが出した質問の答えのような気がした。

「何だろう……音が聞こえる……」

かすかに聞こえた音の断片が次第に輪郭を現す。
それらは繋がり、交わり、重なってひとつとなる。

はっと唯は顔を上げた。
この音が何なのか知らないはずが無い。

毎日聞いた、あの音の波を。
毎日弾いた、あの弦の感触を
毎日叫んだ、あの歌を

唯は急に立ち上がる。



134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 20:45:32.69 ID:wpCa8h470

見つけたのだ、自分なりの答えを。

「分かったよ!ザ・ボス!歌うこと、歌う事だよ!」

「歌う事?」

「うん!好きな事してると、あぁ~!生きてるぅ~!って感じするでしょう!?」

唯は急にそわそわしだす。
この場所にはケーキと紅茶しかない。
聞こえる音はどんどん大きくなってきているのに、何も出来ないジレンマが唯を襲った。

「じっとしていられない……と言う顔だ」

「うん……演奏したい!1人でじゃなく、みんなと!」

「そうか……いいだろう。ならレプタイルを連れて走れ」

レプタイルはくるりと顔をザ・ボスのほうへ向ける。

「ママルAIザ・ボスの提案ヲ、処理能力過多ノタメ放棄シマス。平沢唯二コノ件ヲ委譲」

「行くよ!私!」

唯は地べたを這っていたレプタイルを抱き上げる。

「ありがとう!あ、ザ・ボスその紅茶あげるよ!」

唯はレプタイルを抱いて曲が流れてくる方向へ走り出した。

ザ・ボス、正確には彼女の精神を模したAIは
そんな唯の背中を見ながら自分が何に忠を尽くしてきたのか考えた。

生前ザ・ボスは任務に忠を尽くした。
けれどその生命最後の感情は、自ら銃を捨て歌う事だった。
最後の記憶はミラーが加筆したデータだ。
ママルポットのオリジナルを搭載したピースウォーカーの最後。

自己犠牲の果てに世界に平和を願い、歌を歌った。
平沢唯もまた同じように歌いたいのだと言う。
それを何故か暖かいと感じる自分がいる。
なるほど、これが嬉しいと言う事なのかもしれない。

唯の紅茶に彼女は手を伸ばす。
暖かかった。

「……おいしい」



137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 20:51:05.70 ID:wpCa8h470

ミラーの乗るトラックの中は異常を知らせる警告音が響いていた。

「ゼロAI異常発生!パルス異常誤差30%!尚も増加中」

「何事だ?」

「分かりません、しかし、平沢唯の心理グラフが乱れています
 GABA抑制が緩和、各種覚醒物質が規定値を超え始めました」

ミラーはスプリガンのライブ映像を食い入るように見つめる。

催眠放送が不意に止み、スプリガンが勝手にショッピングモール屋上から下り始める。

「スプリガンが下り始めた、催眠放送も止まった!」

「こちらからは何も指示していません!……これは……」

画面を見たミラーは体が固まった。
通信兵が状況を報告する。

「ゼロAI平沢唯が……レプタイルAIを掌握……しました」

スプリガンが地上に降り立つと何かを探すように全周囲を見回した後、移動を開始する。

『ムギチャン……リッチャン……ミオチャン……アズニャン』



140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 20:56:27.61 ID:wpCa8h470

桜が丘高校の体育館で、放課後ティータイムのメンバーは唯抜きの演奏を行っていた。
学校の放送設備は何とかオタコンが掌握し、校舎内にある全てのスピーカーを解放して
スプリガンに向けて曲を演奏しているのだ。
律も澪も紬も梓も、自分たちが音楽を奏でる事が
唯が興味を示す事であり大好きな事なのだと確信していた。

1曲目を歌いきると梓はMk2に聞いた。

「どう……ですか?何か変化ありま……」

『すごい!すごいよみんな!催眠音波が止まった!
 スプリガンのセンサー郡に君たちの演奏が引っかかったんだ!』

オタコンは興奮していた。無理も無い。

「えへへへ」

梓が照れくさそうに笑う。

「よし!ジャンジャン演奏して唯の目を覚まさせるんだ!」

律がドラムのスティックを振り上げる。
メンバー全員が揃って頷く。

「よし次は筆ペンボールペン、行くぞ!」



143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 21:01:53.84 ID:wpCa8h470

オタコンは催眠放送が止まったこの時を待っていた。

「スネーク!起きてくれ!スネーク!」

『ぐう……むにゃ』

通信を入れるも効果が無い。
放送が止んでも催眠効果は持続するのだ。
現にオタコンもサニーに電撃を与えられ半ば強制的に目を覚まさざるを得なかった。
スネーク体内にあるナノマシンが正常に稼動していたのは幸いで
傷口はだいぶ塞がり、ダメージも回復しているようだった。

「……しょうがない……恨まないでくれよ」

オタコンは放電スイッチを押した。スネークの体に衝撃が走る。
ミラーにダメージを与えたあの電撃だ。

「ぐああああああああ!」

放電がおわるも、スネークはぐったり横たわったままだ。
体からプスプスと細い煙が立ち昇る。

「だ……大丈夫かい?スネーク」

オタコンが恐る恐る聞く。

「うう……オタコンか……」

「目を覚ましたんだね!良かった!」

「次は……もっとマシな方法で起こしてくれ……いつか心臓が止まりそうだ」

スネークがゆっくり半身を起こす。

「頭がひどくボンヤリする。状況は?」

「スプリガンを何とか出来るかも知れない。すぐにスプリガンの元へ向かってくれ。
 何が起こってもいいように彼女の傍にいて欲しいんだ」

「ああ、詳しい話はそっちに向かいながら聞く。場所を教えてくれ」

スネークは頭を振ると銃を拾い出口に向かって走り出した。



147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 21:08:26.33 ID:wpCa8h470



唯はレプタイルを抱いて白い空間を走った。夢と現実の狭間で彼女は息を弾ませる。
頭に届く音が次第に大きくなる。
ドラムの音がビートを刻む。ベースがラインを敷く。ギターとキーボードがメロディーを奏でる。
自分もその音の波に飛び込みたかった。

「ゼロAI平沢唯二、駆動制御機関オヨビ視覚野ガ制圧サレマシタ。機能ノ委譲ヲ行イマス」

白い空間がパァっと開き、外の視界が360度一気に開ける。
ちょうどそれは唯の通学路だった。視界が開けると唯の走るスピードがぐんと上がった。

そういえば、入学式の時もこの道を走った。
何かしなきゃ
何をすれば良いんだろうと思いながら
このまま大人になってしまうのかな……と焦りながら。

機械の足がアスファルトをえぐって足跡を残す。
ガードレールがひしゃげ引きちぎられる。
脚が引っかかって街路樹が根元から倒壊する。

大丈夫だよとあの時の自分に言い聞かせる。
すぐに見つかるから。自分にも出来る事が、夢中になれることが。

踏み切りを飛び越え、商店街を走り抜ける。

自分には帰る場所がある。
そう、自分にとって大切な……大切な場所が。



149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 21:14:08.28 ID:wpCa8h470

ミラーは不測の事態に戸惑いを隠せなかった。
当初、入力していたスプリガンの移動コースが修正され桜が丘高校へ向かうようデータが上書きされているのだ。
こちらからの要請は受け入れられず正に暴走という状態に陥ってしまった。

各AIのやり取りは活性化の兆を見せており、ママルAIと唯が交信を行った後
レプタイルが唯に掌握されたのだという事が分かった。

唯は半覚醒状態にある。
完全に目覚めてしまえばゼロAIとの神経接続が途切れ、
スプリガンは待機モードに移行するようプログラムされていた。

「俺達の部隊は直ちにスプリガンを追う!催眠効果はまだ持続中だ、スプリガンを再起動させる!
 残り1機の月光も俺達のトラックに並走させろ」

退避命令が出ていた月光もその場でぴたりと止まり向きを変える。
重々しい雄たけびを上げるとトラックを護衛しながら移動を開始しだした。

「唯を解き放ったのは……ザ・ボス……アンタなのか?」

擬装トラックはタイヤを軋ませながら180度ターンすると、もと来た道を猛スピードで走った。
心にモヤモヤとした気持ちを残しつつミラーは邁進するスプリガンを追った。



152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 21:18:17.66 ID:wpCa8h470



誰もいない体育館のステージで、澪は歌う。
恥ずかしがり屋の澪が、あらん限りの声を出してがむしゃらに。
細い首筋からは汗が流れて、それをぬぐう事もせず全力を曲に注いだ。

澪だけではない。
律も、紬も、梓も自分の音を全力で奏でる。
こんな時なのに、世界中の人間が眠ってしまっているのに
彼女たちは言い知れぬ幸福感に満ちていた。

彼女たちは決して、超能力者でもなければ預言者でもない。
けれど信じる事が出来た。

今、自分がやるべきことは歌を歌う事なのだと。

地響きが遠くから聞こえる。
律がニッと笑みをこぼす。

彼女の足音だ。
それはだんだん大きくなってきて、足にビリビリと振動が伝わる。
巨大なものが自分たちに近付いてくるのだ。

最後のメロディーラインを奏で終えると同時に体育館の側壁をぶち破り
彼女は姿を現した。



155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 21:24:48.26 ID:wpCa8h470

『やった……奇跡だ……奇跡だよ……』

Mk2がマニュピュレーターと小さな液晶画面をパタパタさせながら喜ぶ。

『ゼロAI接続者トノ神経接続断絶。緊急停止シマス。オツカレサマデシタ』

半身を体育館に突っ込んだスプリガンは、廃熱蒸気を排出すると動かなくなった。

『今だ!』

Mk2がスプリガンに近付く。それを見ていたメンバーたちも走ってスプリガンの所へ走った。
足元にある緊急用のコックピットハッチにオタコンはMk2経由でデータを入力する。
機械音とガスが抜ける音が鳴り、コックピットが開いた。

「唯!」

「先輩!」

ヘッドギアをつけた唯はギー太と一緒にぐったりしていた。
律と梓は、コックピットによじ登る。澪と紬も心配そうにその様子を見守った。

「唯!しっかりしろ!唯!」

律が唯のヘッドギアを外す。

「先輩!返事をしてください!」

梓は涙を流しながら唯の肩を揺らした。

「うう……あずにゃん?……りっちゃん?……」

唯がゆっくりと手を伸ばす。

「ああ!そうだぞ!私だ!部長だぞ!」

律は唯の手をぎゅっと握った。

「あ……あずにゃん……」

「何ですか……ぐすっ、唯先輩……」

「軽音部のこと……ぐふっ!……よどじぐで……あふっ」

「先輩!どうしたんですか!?先輩!!」

「私は……もう駄目だよ……自分で分かるもん……軽音部最後の星は……げふっ!あずにゃん、あなたよ……」

「おい唯!しっかりしろ!唯!」

唯の手はするりと律の手を離れ、紐の切れた操り人形のようにガクッとうな垂れた。

「先輩?……唯先輩?……ぐすっ……ぐすっ……返事をしてください……ぐすっ、唯先輩!!!!」



159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 21:30:37.88 ID:wpCa8h470

「なーんちゃってぇー」

「え?」

唯が顔を上げぱぁっと笑う。律と梓は目に涙をためたままポカンとしていた。

「いやぁ~、こんなチャンス滅多に無いからねぇー。こー言うの一度やってみたかったんだぁ~」

「……じゃあ先輩……何とも無いんですか?」

「うん!大丈夫だよぉあずにゃん!」

唯はあっけらかんと笑っている。下で見ていた澪とムギも目が点だ。

「じゃあ、あずにゃん!早速復帰祝いのムチュチュ~」

口を蛸のように尖らせて梓に抱きつく。カウンターで梓の平手打ちを食らう唯。

「あ、あれ?」

「……お前が悪い」

律はジトッとした表情で唯を見つめ、むんずと唯の襟をつまむとコックピットから引きずり下ろした。

「えへへぇ~、ただいま~みんな」

頬に紅葉マークをつけた唯はいつも通りだ。

「はぁ……心配するだけ損したよ……でも、何も無くて良かったな」

澪が笑う。

「えへへ~ごめんねぇ」

「唯先輩は緊張感に欠けてます!この状況下でありえないです!」

「まぁまぁ梓ちゃん」

梓もプリプリ怒っていたがどこか嬉しそうだった。なだめる紬にも何時もの笑顔が戻る。

『感動の再開を喜んでもらってるところ悪いんだけど……』

Mk2が輪になって喜び合う彼女達に近付き会話に割ってはいる。。

『1つお願いがあるんだ。君達にしか出来ない事だ』

「何だよ?唯を助けるの手伝ってくれたんだ、出来る事があったら手伝うぜ」

律がMk2に向かってニッと歯を見せる

『君達にもう一度、歌を歌って欲しいんだ』

「歌?」

『それも、全世界に向けてね。我ながら科学者らしからぬ作戦だとは思うけど、僕は君たちの可能性を信じてる』



165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 21:39:03.85 ID:wpCa8h470

オタコンがMk2経由でスプリガンの起動データを書き換えている間、
メンバーたちは音楽機材とMk2の接続、楽器の移動を行っていた。
オタコンの話によれば唯の歌は普段の声とは性質がやや異なり脳を活性化させる効果があるのだという。
その能力とスプリガン、そして愛国者AIの力があれば、
今世界中で起こっている現象の逆の事が出来るかもしれないと、彼はそう言うのだ。
自分達の歌声で世界が目を覚ます、何ともスケールの大きい話だ。

「ねームギちゃん、本当に上手くいくのかな?」

ギー太を抱いた唯が心配そうな顔でキーボードのセッティングを行っているムギを見つめた。

「不安なの?唯ちゃん」

「う……うん」

唯は足をもじもじさせている。

「大丈夫よ、唯ちゃんは1人じゃない。私達も一緒よ」

「……ありがとう……ムギちゃん」

「これが終わったら皆でお菓子を食べましょう。もちろん、オタコンさんもジョン先生も呼んでね」

「……うん!」

唯はどうやら吹っ切れたようで、力強く頷くとまた機材を運び出した。



167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 21:44:25.07 ID:wpCa8h470

「ハル兄さん!これ!」

オタコンと一緒にスプリガンのデータをいじっていたサニーがモニターの1つを指差す。
サニーがスプリガン経由で国境無き軍隊の指揮車にハッキングを仕掛けたのだ。
発見した敵のGPS地図によると彼らはこの高校に向かってきており、ご丁寧に月光を1機引き連れている。
後数分もすれば桜が丘高校に到着するだろう。
スネークがこちらへ急いでいるがこのままでは間に合わない。

「サニー、指揮車両の完全な掌握はできそうかい!?」

「だめ……指揮車両には強力なプロテクトがかけられてて覗き見するのがせいいっぱいなの……」

「そうか……いや、まだ手はある」

オタコンは1つウィンドウを開くと指揮車両であるトラックを経由せずスプリガンから直接月光にアクセスを開始する。
指揮車両が破壊されても月光がスプリガンを護衛するよう、この両者にもネットワークが形成されているのだ。
月光のAIモードを指揮車の護衛からスプリガンの護衛に変更し、敵認識項目に指揮車両のコードナンバーを入力する。

指揮車から月光へのAI上書きの時間が約5秒。
その表示はを見たオタコンが口元を緩めた。

「5秒もあれば十分だっ!」

オタコンは迷わず手元のエンターキーを押した。

トラックと並走していた月光がオタコンの発信した信号を受理、
敵として認識したトラックのどてっぱらに強烈な蹴りを入れる。
トラックは勢いをつけたまま180度回転してガードレールを突き破り雑居ビルに激突した。
車両は大破し、司令塔としての機能が完全。
主をなくした月光は咆哮を上げるとその場で待機モードに移行した。

「やったぞ!指揮車両は機能を停止した!」

オタコンは額ににじみ出た冷や汗を拭った。

「急ごうサニー!プログラムの修正箇所はまだまだある」

世界有数の天才科学者達は再びキーボードを指先で叩き始めた。



169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 21:51:06.06 ID:wpCa8h470

演奏の準備が急ピッチで進む。
エフェクターとMk2を繋ぎ各楽器の調整を行う。
唯は開放したままのコックピットに乗り込みヘッドギアをつけた。
勿論、ギー太も一緒だ。

「ほんとにもう一度乗って大丈夫なんでしょうか?」

Mk2でオタコンが作業していると不意に梓に声をかけられた。

『ああ、今までは彼女が眠っていないとシステムは作動出来ないようにプログラムされてたんだけど、
 逆に脳が活性化しているときでないと動かないよう、データを書き換えてるところだ』

「あの……そういう事じゃなくて」

『暴走の事かい?そんなことはもうしない。彼女がそんな事を望まないのは君たちが一番良く知ってるはずだ』

「……そう……そうですよね。すいません、変なこと聞いちゃって」

『……あの子はいろんな人に愛されてるんだね。羨ましいな』

「おーい梓!曲目きめるぞー!」

「あ、はーい!」

律に呼ばれ梓はMk2に小さくお辞儀するとそっちの方にトコトコ走っていった。

メンバー全員が揃って何を歌うか相談する。

「全世界に歌が流れるんだからな!ここはババーンとヘビメタ調で!」

「律先輩……そーいうジャンルの曲やったことないでしょ……澪先輩も何か言ってやってください」

「全世界……世界配信……あわわわ……」

澪は律と梓の会話を尻目に1人カタカタ震えていた。

「おいおい、大丈夫かよ……」



173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 21:56:39.15 ID:wpCa8h470

そんな彼女達を横に唯は自分たちが練習してきたスコア表と睨めっこしていた。

「よし!」

唯は1人大きく頷くと紬が持ってきた洋楽のアレンジスコア集のある1ページを開きメンバーに見せる。

「私これがいい!」

「ほぉ」
「へぇ」
「うん」
「まぁ」

各々が唯の開いたページを見て声を出す。
練習に何度か演奏した曲だ。皆が顔を見合わせ頷く。
曲目は決まった。

各々が指定の位置に立つ。
体育館の側壁を突き破ったメタルギアのコックピットを取り囲むように彼女達は配置された。
何時もと違う立ち位置が少しもどかしい。
梓は2,3回弦を弾き梓がギターの調子を整え、ふとコックピットを見上げた。
唯がヘッドギアをつけギー太を抱いている。えもいえない緊張感が梓の中に広がった。

「梓」

「はっ、はい!」

急に澪に声をかけられ裏返った声で返事してしまう。

「頑張ろうな」

澪が持つピックが少し震えているのを梓は知っていた。
そんな状況なのに澪は梓のことを気に掛けてくれる。嬉しかった。

そして、それ以上に彼女や他のメンバーたちに恩返ししたいと言う気持ちで一杯になる。
今出来る自分の最大の恩返しは……考えなくても分かる事だ。

「はい!私精一杯演奏します!」

梓の元気の良い答えに澪は一瞬キョトンとしたが、すぐに笑みを取り戻す。

「ああ、最高の演奏にしよう!」



179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:04:01.58 ID:wpCa8h470

『愛国者へのアクセス及びスプリガンの再起動を開始するよ!用意は良いかい?』

がコード中継をかねているMk2からメンバーに声をかける。

「いつでも来い!やってやらぁ!」

律がスティックを振り上げ合図する。

『10カウントから開始するよ!10、9、8、7』

メンバーがごくりと唾を飲む。

『6、5、4、3、2,1』

スプリガンから起動音がスタートの合図だ。

唯がゆっくりと口をひらく。

「どもー放課後ティータイムです!いやーいきなり世界デビューって事になっちゃってぇ~えへへへへ。
 自分でもビックリしてるんだけど、あ!コレ世界に聞こえてるんだよね!
 英語じゃないとまずいよね!え、え~と、ハ、ハロー!アイアムジャパニーズ!アイライクお菓子」

「うぉおおい!MCからやるんかい!」

律が突っ込む。

「みんな寝てるとは言え世界にこの痴態は恥ずかしすぎます……」

「ああ……」

澪と梓はガックリ肩を落とした。
唯はえへへと舌を出す。

「つい、何時もの癖で~。ほいじゃ早速いきますよ!準備いい!?」

メンバーの顔つきが変わる。
演奏前のあの心地よい緊張感だ。

「放課後ティータイム!曲はカーペンターズで、SING!!」



YouTube:Carpenters - Sing (Japan 74)



184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:13:28.81 ID:wpCa8h470



ミラーは足を引きずりながら桜が丘高校体育館前に着いた。
大破したトラックから1人脱出しやっとの思いでココまでたどり着いたのだ。
肋骨と足の骨がやられているのが分かる。頭部からは血が流れ、時折意識が飛びそうになる。
つい先ほど街の町内放送用スピーカーからコントが聞こえてきた。
敵はスプリガンの乗っ取りに成功し、あまつさえ愛国者にアクセスを開始したのだ。
世界中に今のコントが配信されたと思って間違いはないだろう。

『放課後ティータイム、曲はカーペンターズでSING!!』

スピーカーから聞こえる唯の声。
間違いない、彼女らは唯の歌の性質を利用して眠っている人間を起こす気だ。

「しかし……よりによって……この歌とはな……」

手に持つXM8アサルトライフルをぐっと握る。

キーボードの心地よい前奏の後、次々に音が重なる。
ミラーは体育館の入り口でへたり込んだ。
血を失い、足ももう既に言う事を聞いてくれない。

この歌を止めなければ世界は目を覚まし作戦は失敗してしまう。

『sing, sing a song sing out loud sing out strong
 sing of good things, not bad sing of happy, not sad』

唯の歌声だ。優しく、包み込むような声。
ミラーはライフルの銃口を唯に向けた。この歌を止めさせるには彼女を殺すしかない。
愛国者へのAIへはアクセス出来なくなるが、この際仕方が無い。



190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:19:30.14 ID:wpCa8h470

『sing, sing a song make it simple to last your whole life long』

膝を立て銃を固定する。

『don't worry that it's not good enough for anyone else to hear』

ドットサイト内から唯を覗く。
スコープ越しに見るその姿はさながら世界に愛を降りまく天使のようだ。

『just sing, sing a song……』

耳に聞こえるこの曲は40年の時を越えてミラーの心に染み込んでゆく。
ピースウォーカー、いや、ザ・ボスがこの歌を愛したその意味をミラーは感じた。

『la la la la la la la la la la la la』

メンバー全員の歌声が唯の声と交じり合った。
世界が平和であることを望む為に、ミラーは彼女に銃を向ける。

「動くな」

ミラーの後ろで声がする。
見なくても判る。伝説の英雄ソリッドスネークだ。

『sing, sing a song let the world sing along』

照準は合っている。後は引き金を引くだけだった。

『sing of love there could be sing for you and for me』

「スネーク、俺は引き金を引く。そのために俺はここにいるんだ」

ミラーは銃を構えたままそう呟く。まるで自分に言い聞かせるかのように。



194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:25:52.06 ID:wpCa8h470

『sing, sing a song make it simple to last your whole life long』

「マスター、アンタには撃てない。その気があるのなら俺が銃を向けた時、その引き金を引いてたはずだ」

『don't worry that it's not good enough for anyone else to hear』

「これからは、PMCの時代でも、核の時代でも、戦争の時代でも、ましてや俺たちの時代なんかじゃない。

 これからは彼女達の時代だ。
 俺はこの螺旋から降りる。俺たちが突き付けあった銃を降ろさない限り、彼女たちに未来はやってこない」

後ろで銃をしまう音がする。
戦場で敵に情けをかける。
伝説の英雄もなんてことは無い、感情に身を委ねてしまう愚か者だ。

『just sing, sing a song』

ミラーの握っている手から力が抜け、銃口が下を向いた。
あらゆるしがらみからの開放。ミラーが得た感情はそれに近かった。
リキッドに殺されたあの日、自分は自由になったのだと思っていた。
けれど実際は戦いに身を起き、殺し合いの上になる世界で同じ事をしていたに過ぎない。

『just sing, sing a song』

涙を流したのは何年ぶりだろう。
ミラーはふとそんな事を考える。本当に自由になれた気がした。
通信機を手に取り世界中で戦う仲間たちに回線を開く。

「カズヒラ・ミラーだ。作戦は失敗、現時刻を持って各部隊は撤退を開始しろ。
 だが、心配するな、時代は変わる。俺は……そう確信した」



199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:32:36.27 ID:wpCa8h470

『la la la la la la la la la la la,,,,,,,,』

唯が、放課後ティータイムのメンバーと一緒に歌を口ずさむ。
全世界に向けてこの歌を歌っている事を唯は遠に忘れていた。

歌おう、歌を歌おう
生涯を共にできるように やさしい歌にしようね
誰かに聞かせる程上手くない、
なんてそんなことは心配しないで
ただ、歌を歌おうよ

この歌詞の意味を唯は深く考えた事がない。


けれど、優しげなこのメロディーと、幸せな気分にさせてくれる雰囲気が好きだった。
ギターを鳴らし、前のめりに歌う。
これからも、ずっとこのメンバーで歌っていけたらと思いながら。


傍でザ・ボスが笑った気がした。



204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:37:18.65 ID:wpCa8h470



今事件において後に語り継がれる記録は、曖昧なものであり多くの謎を残した。
国境なき軍隊は各作戦地域から撤退し、組織はそのすぐ後に解散、消滅。
各国の見解によれば事件の首謀者であるカズヒラ・ミラーの消息は生死も把握されておらず、
桜が丘高校の体育館の玄関にカズヒラ・ミラーの血液がついた
アサルトライフルが1つ残っていたというのが最後の手掛かりであった。

スプリガンの中にあるG・W識別コードは
何者かが感染させたウィルスによって破壊されており、愛国者と人を繋ぐ唯一の道は失われた。
一説によればこのウィルスの件にソリッド・スネークとハル・エメリッヒが関与しているという
不確定な情報があるも、日本政府はこれを拒否。

事件の最重要参考人である平沢唯と放課後ティータイムの証言はCIAと日本政府のごく一部の人間が知るのみで、
国際連合アンチテロ組織最高司令官に任命されたロイ・キャンベルの情報封鎖が主な原因であると言われている。

密に世界を救った放課後ティータイムはその後、
半月にも渡る聞き取り調査と現場検証で心身ともにクタクタな日々を送る羽目になった。
事件の全容は無論他言無用であり、それを条件に
街の復興と生徒たちの心のケアを目的とした医師団と復興作業班の派遣で彼女達は合意。

英語教師ジョン・コジマはその姿を消し、
放課後ティータイムのメンバーは彼が何者だったのか知らされないまま
後に「スリーピングビューティー」と呼ばれる今回の事件は幕を下ろした。



206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:43:01.19 ID:wpCa8h470

エピローグ

事件から3ヵ月後、改装工事が終わったばかりの体育館には生徒や地元住民が溢れかえっていた。
街の復興とそこに住む住人に元気になってもらおうと桜が丘高校と地域の自治体、
それに国連の復興作業班が協力して「復興祭」なる催しを行ったのだ。
学校を取り囲むように屋台が並び、校内でも様々な催し物が行われていた。

「あわわわわ……律、むりだよ……学園祭の比じゃないよ」

舞台袖で澪が目を白黒させている。

「何言ってんだよ澪、お前の歌全世界に発信されたんだぞ?これぐらいの人数で怖がってどーすんだよ」

「あの時は私たちしか居なかったんだ。今は体育館に入りきらないぐらい人が入ってんだぞ」

澪が必死に訴えるもココまで来たら引き返すわけにはいかない。

「澪先輩、大丈夫ですよ。あれだけの事、乗り越えたんですから今回もきっと平気ですって」

梓が澪をなぐさめる。

「ハァ……そうだな……いつまでもこのまんまじゃジョン先生に示しがつかないもんな」

ふと澪が横を見る。

「聞かせてあげたかったね……新しい曲」

ギー太を抱えた唯はいつもより少し元気が無かった。

今回の「復興際」にあわせ彼女達は新しい曲を作ったのだ。
けれど一番聞いてほしかった人はここには居ない。

「唯ちゃん」

唯の肩に紬がそっと手を置く。柔らかくそれでいて暖かい。

「大丈夫よ、きっと届くわ……あの時のようにね」

唯はその言葉を聞くと曇った顔をほころばせた。

「そうだよね……そうだよね!」

目をきらきらさせる唯はいつもの唯だ。

「うん、だから頑張りましょう」

紬がそういうとメンバー全員が頷いた。



209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:47:36.87 ID:wpCa8h470

『それでは桜が丘軽音部、放課後ティータイムのミニライブです』

放送の後、幕がゆっくりと上がる。
今まで経験した事の無い拍手の波が彼女達を包んだ。
唯は用意されたマイクに向かってお辞儀をする。
勿論、おでこをぶつけ観客の笑いを誘うのはいつもの事だ。

「あわわ!ごめんなさい、えっと、放課後ティータイムです」

唯がギー太をジャジャンと鳴らす。
再び沸きあがる拍手。

「えへへへ、みんな今日は来てくれてありがとう。
 私たち放課後ティータイムは桜が丘高校でバンド活動を行っています。
 体育館も綺麗になってなんだかホッとしています。

 3ヶ月前に起こった事は今でも実感が湧きません。
 私たちもその場に居合わせてすッごく怖かったけど、
 未来を変えようと頑張った人達のお陰でこうやってまたステージに立つことが出来ました」

唯はそう言って頭を下げる。

「今回の事で、テロだとか戦争だとか誰かのせいだとか、
 そういう事を私はあまり言って欲しくないなって思います。
 みんなが未来を良くしようとして、それが誰かとぶつかっちゃって、
 その……何ていえばいいのか分からないけど、みんな一生懸命だったんです」

唯は下げた頭を上げる。
彼女なりに何かを訴えようとしているのだ。

「私は歌を歌う事しか出来ません。スポーツも駄目だし、勉強もあんまり得意じゃありません。
 お料理も憂が全部やってくれてます。

 けど、そんな私にも出来る事があるんだって
 それで何かを変えられるんだって……
 今私たちが出来るせいいぱいいの事を、放課後ティータイムはしていきたいと思います。
 だから……」



211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:51:50.61 ID:wpCa8h470

不意に体育館のドアが開き3つの影が姿を見せる。

「だから……」

白髪に白いひげ。英国紳士のような出で立ちの男。
隣にはメガネをかけ少しウェーブのかかった髪が特徴の如何にも研究者らしい出で立ちの男。
そして青い薔薇の花飾りを頭につけた小さな女の子。

唯は一瞬目を丸くしてメンバーの方を振り返る。
皆小さく頷くと笑みを見せた。

唯は大きく頷くと振り返り腕を突き出し彼らにⅤサインを決めた。
ひまわりのような笑顔が眩しい。

「だから皆さん!私たちの歌を聞いてください!」


世界中のみんなに、この歌が届きますように


「放課後ティータイムで SAY-Peace!!!」


おわり



228 名前::2010/06/28(月) 23:09:54.74 ID:wpCa8h470

長々と半日かけてうpしてきましたが自分の妄想を読んで下さった皆様お疲れ様でした。
会社で暇な時にしていた妄想を活字にするのは難しかったです。
製作は何だかんだで半月ちょいかかりました。

ピースウォーカーに感化されて勢いで書きましたがまた何か機会があればまたうpしたいと思います。

規制支援も助かりました。
また似たような感じで妄想して書きたくなったら頑張ります。

ではまたその時まで~ごきげんよう
さようなら~

http://www.nicovideo.jp/watch/nm10583863




212 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:53:31.44 ID:6Mf0TD0u0

乙!!!



214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:53:40.37 ID:nCimw+g7O

お疲れ!>>1乙!



215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:54:14.46 ID:Zht4fgQF0

良いセンスだ >>1乙!



217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:55:10.38 ID:HWAh/TEo0

面白かったぜ!
乙!!



218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:56:08.87 ID:MVMKrRHv0

久々に名作に出会った




220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:58:09.51 ID:TCiA3j21O





221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 22:58:50.21 ID:NAb4pkB5O

おかげで夕方から退屈しなかったぜ。
乙!



225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 23:02:56.93 ID:QekoedYAP

クオリティたけえ




227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 23:07:16.40 ID:Tn2gYi5Y0

面白かった




229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 23:10:37.22 ID:6lpg6aDa0

おもしろかった
また書いてくだせえ



230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 23:12:39.66 ID:lCZj4I/Q0


間違いなくこれは名作



231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 23:18:45.36 ID:TCiA3j21O

久しぶりにPWやろっかな



232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 23:25:44.27 ID:r2nUSh3y0

久しぶりに良いスレを見た



233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 23:26:01.34 ID:eFvMUcht0

面白かった、ログ残しとくぜ



235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 23:43:59.36 ID:UlJsysC00

>>1
なんだかわからないけど涙が出た



236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 23:48:40.40 ID:xRc0n3ne0





238 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/28(月) 23:58:44.06 ID:990ij5v50

すげえ

VIPでこんな本格的なSS見れるとは思わなかった。

ありがとう



242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/29(火) 00:44:01.85 ID:IQ+ZYhBc0

久々にクオリティの高い作品を見せてもらった
>>1



243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/29(火) 00:46:30.34 ID:9O4J8sCOO

乙!
感動した!

明日読もうと思ったけど結局よんじまった…
テストェ…



246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/29(火) 02:31:20.21 ID:odKuhuN70

乙・・・



248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/29(火) 03:13:19.48 ID:8zqxLliVO


面白かった



249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/29(火) 05:40:52.24 ID:eHKju23XQ

最高だ!超乙!!



252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/29(火) 09:14:56.48 ID:08x4/fyF0

ちゃんと両作を知ってる上でのSSぽかったから面白かった




254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/29(火) 11:47:28.75 ID:bkHFxoRgO

いいセンスだ
乙!






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タイトル:
NO:4083 [ 2011/10/16 17:42 ] [ 編集 ]

これ懐かしいな
おもしろかったのに当時は全然まとめに載ってなかった

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