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憂梓「日常的非日常」#後編 【非日常系】


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憂梓「日常的非日常」#前編
憂梓「日常的非日常」#後編




108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 19:09:59.01 ID:SY6dAa8vO

放課後

梓「唯先輩、今日部活終わったら楽器屋さんに行きませんか?新しいピックが欲しくて…」ギュッ

唯「うん、いいよ♪」ギュッ

テクテク

紬(…へぇ)ニコッ

音楽室

紬「ごめんね、遅れちゃった」ガチャッ

律「おうムギ。珍しいな」

紬「それと…悪いんだけど私これから用事があるの…」

澪「そうか…じゃあ仕方ないな。また明日な」フリフリ

梓「お疲れさまでした」ペコリ

唯「バイバイ、ムギちゃん」フリフリ

紬「ごめんね…」バタン



109 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 19:15:01.21 ID:SY6dAa8vO

唯「…何か寂しいね」

梓「5人揃っての放課後ティータイムですからね」

ピロリーン

律「メールだ」

 「…」

 「悪い!私と澪用事があったんだ!」

梓「何のですか?」

律「いや、なんか町内会で何か私達呼ばれててさ。なあ澪?」

澪「え?何のはな…」

律「フンッ!」ゲシッ

澪「痛っ!」ジンジン

唯「いた…?」キョト

律「いやぁ、何かこいつ将来板前になりたいらしくてな。たまに口走っちゃうんだよ」

 「ということで帰るぞ澪!」グイッ

バタバタ



110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 19:17:57.60 ID:SY6dAa8vO

梓「皆さん帰っちゃいましたね…」

唯「皆忙しいんだね~」

 「そうだ、楽器屋さん行こっか!」ガタッ

梓「そうですね!」ガタッ

楽器屋

梓「ん~、どれがいいかな…」

唯「あずにゃん、これなんかどう?」サッ

梓「あ!それいいです!それにします!」キラキラ

唯「じゃあ私が買ってくるよ」トコトコ

梓「そんな、悪いですよ!」

唯「いいよいいよ~♪」

 「年上の好意はありがたく受け取るものだよ?」フンス

梓「…それじゃあお願いします」ペコリ

トコトコ



111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 19:20:02.31 ID:SY6dAa8vO

唯「はい、あずにゃん♪」サッ

梓「ありがとうございます」ペコリ

唯「そしてそして~、じゃーん!」パッ

 「あずにゃんとお揃い!」ニコッ

梓「あっ…///」

唯「これでもっとギター頑張れるよ~♪」

唯先輩の一つ一つの言動が嬉しい。
子供みたいな無垢な笑顔。
この笑顔を見るだけでとても癒される。
私にしか向けられていないと思うと、何て幸せ者なんだろうと思う。
このピックは宝物だ…



112 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 19:22:09.44 ID:SY6dAa8vO

帰り道

唯「アイス食べたいよ~」

梓「今の時期にアイス食べたらお腹壊すかもしれませんよ?」

唯「あずにゃんわかってないね~。この時期に食べるアイスがオツなんだよ~♪」

梓「…全く分かんないです」

 「あ、黒猫だ」

唯「あれはあずにゃん3号!朝のリベンジ!」タタタッ

 「おいでおいで~♪」パチパチ

黒猫「…」タタタッ

唯「…あ、あずにゃんの方に行っちゃった」シュン…

黒猫「…」ジッ…

…黒猫がジッと私を見ている。
私が同じ猫にでも見えるのだろうか。
猫に似てるかもしれないけど、私は猫じゃないよ、
そんな事でも言おうかと思っていると、突然猫が飛び掛かってきた。

梓「きゃっ!」フラッ



120 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 19:55:22.85 ID:SY6dAa8vO

あまりにも突然のことにびっくりして、私はふらついて倒れそうになった。

プァアアアアアアアア!

胸の奥の奥に響くような音が鳴り響く。
これはトラックのクラクションかな、私死んじゃうのかな。
そんな事を考えていると、物凄い力で道に引っ張られた。
転げながら視界の端に捉えたのは、私の笑顔の最愛の人。
…しかしそれは一瞬で消える。
笑顔があった場所にはトラックがあった。
…フロントガラスまで赤い飛沫のあるトラックだった。

通行人1「キャアアアアアアアアア!」

通行人2「おいっ!誰か救急車を呼べっ!早く!」

通行人3「事故です!はい、女子高生がトラックに!場所は…」

唯「…」

黒猫「にゃあ…」ペロペロ



121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 19:57:02.83 ID:SY6dAa8vO

頭の中が真っ白になっていた私を、通行人の喧騒が現実に引き戻した。
騒がしい野次馬。
赤く染まったトラック。
その綺麗な赤は唯先輩の血。
私を庇って犠牲になった唯先輩の…
私が驚かなければ…
私が楽器屋に誘わなければ…
私のせいだ…
私の…

梓「いやああああああああああああああああああああああああああああああああ!」



124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 20:00:03.30 ID:SY6dAa8vO

病院

手術室のランプが赤く光っている。
その色が、唯先輩の事故現場を思い出させる。
吐き気を催したけど、ぐっと堪える。
唯先輩の方が辛いんだ…
私が負けるわけにはいかない。
そんな事を考えていると、慌ただしい足音が聞こえてきた。

憂「ハァハァ…」

梓「憂…」

憂「…」キッ

…憂から鋭い眼差しを受ける。
それもそうだろう。
絶対に守るなんて言いながら、守られたのは私だ。
…私は憂のどんな非難も受け入れる。

憂「…何で梓ちゃんがここにいるの?」



126 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 20:03:26.92 ID:SY6dAa8vO

憂が口に出したのは予想外の言葉だった。
物凄い罵詈雑言が飛んでくるに違いないと思っていたのに。

梓「それは…唯先輩と一緒に楽器…」

憂「そうじゃないっ!」

私が答えようとすると、憂は凄い剣幕で私の声を遮った。
…それにしても…そうじゃない?
そうじゃないってどういう…

憂「…言い方が悪かったね」

 「何でそこに座ってるのがお姉ちゃんじゃなくて梓ちゃんなの?」

 「何で手術台の上にいるのが梓ちゃんじゃなくて…お姉ちゃん…なの…?」ポロッ



128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 20:06:20.17 ID:SY6dAa8vO

どんな言葉でも受け入れる覚悟はしていた。
でも、まさか憂からこんな言葉を浴びせられる訳なんてない、
どこか心の底でそう思っていたんだろう。
悲しくて、悔しくて、涙が溢れそうになる。
思いっきり泣き叫んでスッキリしてしまいたい。

――…それに、やっぱり泣いてるあずにゃんはあんまり見たくないや
これからは皆笑っていこう?約束だよ?

…約束。
そうだ、私はまだ約束を守らないといけない。
泣き腫らして赤くなってしまった目何かで唯先輩と対面したくない。
唯先輩に心配をかけたくない。



129 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 20:10:38.02 ID:SY6dAa8vO

それから少し経って、憂も言いたい事は言い終わったのか、
私の向かいの椅子に座って唯先輩の手術の成功を祈っている。
暫くして、ランプが消えた。
少ししてから、主治医なのだろうか、男の人が手術室から出てきた。

憂「先生!お姉ちゃんは!?」

医者「…手術は成功したよ」

…成功したのに何で浮かない顔してるんだろう。

医者「ご両親は?」

憂「今海外に行ってて…これからこっちに向かうそうです」

医者「そう…そちらも妹さんかな?」

梓「あ…」

憂「あ、彼女はお姉ちゃんの後は…」

梓「…恋人です!」

医者「…そう」ニコッ



130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 20:13:18.80 ID:SY6dAa8vO

医者「…いずれ君たちの耳にも届くことになるだろうけど」

  「…これからの話は親御さんと一緒に聞いた方がいいかな」

憂「…私は大丈夫です」

梓「…私も覚悟はできてます」

医者「そう…じゃあこっちにおいで」スタスタ

私達は無機質な部屋に通された。
診察室だろう、ベッドやレントゲンがある。
私達が椅子に腰掛けて暫くすると、医者はとても重そうに口を開いた。
話の内容はこうだ。
手術は『一応』成功した。
恐らく数日後には目を覚ますだろう。
しかし、体の損傷が激しすぎる。

…私は、最後の言葉を告げる時の医者の表情を、今でもはっきり覚えてる。
苦痛に歪んだような顔。
自分の無力さを恨むかのような悲しい顔。
私の心境を映し出したような顔だったから。

医者「…もう以前のような生活は出来ない」

…半身麻痺らしい。
それも右半身。
…だから『一応』

…私と憂はこの日から疎遠になった。



131 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 20:16:20.50 ID:SY6dAa8vO

数日後

私はあの出来事があっても部活は休んでいない。
先輩達だって辛いはずなのに、部活には毎日顔を出している。
…最後の学園祭で唯先輩に最高の歌を聞かせたいからって。
先輩達は一段落つくまで部活は休んでいい、って言ってくれた。
でも、私が休む訳にはいかない。
私だって放課後ティータイムの一員だ。
唯先輩に最高の歌を聞かせたいから。
…私のギターと、声で。



133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 20:19:30.52 ID:SY6dAa8vO

ブーッブーッ

梓(…誰だろ?)

 (病院!?)ガタッ

 「あの、失礼します!」ガチャッ

―――

ガチャッ

澪「何だったんだ、梓?」

律「…梓、帰っていいぞ」

梓「…え?」

 「でも…」

律「いいから帰れ!お前最近練習に身が入ってなかっただろ!」

 「そんな状態で練習されても私達が困るんだ!少しは頭を冷やしてこい!部長命令だ!」

梓「あの…」

 「ありがとうございました!」ペコリ



134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 20:24:59.51 ID:SY6dAa8vO

ガチャッ

律「やっと行ったか…」ヘナー

紬「りっちゃん、何であんな事言ったの?梓ちゃん凄く頑張ってるのに…」

澪「それにあの電話は何だったのか…」

律「多分唯が目を覚ましたんだろ。あいつが帰ってきた時の表情見たら分かったよ」

澪「でも…行ってこい、ぐらいで良かったんじゃないか?」

律「おいおい、あんな生真面目で超頑固な梓が、それだけで素直に行くと思うか?」

 「あれぐらい言わないと、あいつは絶対行かないさ。いくら浮かれててもな」



135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 20:28:54.79 ID:SY6dAa8vO

澪「…凄いな、律は。私達の事、何でも分かってる」

律「当然だろ~?私は部長だぞ~?」

 「それにしても悪役はしんどい…」グダッ

紬「ふふっ」

 「りっちゃんが優しい子だって、皆分かってるわ。勿論梓ちゃんも」

律「よせやい、照れるだろ~」ハハッ

澪「ん?」

 「…律の梓への発言は、本当は全部裏返しってとれるな」フム…

律「なっ!うるせー!///」

紬「あらあら」フフッ



136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 20:31:58.48 ID:SY6dAa8vO

病室前

梓(…ここだ)ハァハァ…

ガラッ

梓「…憂」

病室から出てきたのは、かつての親友、憂だった。

憂「…外に行こう?」スタスタ



憂「…何しに来たの?」

梓「唯先輩が目を覚ましたって聞いたから…」

憂「…お姉ちゃん、梓ちゃんに会いたくないんだって」

梓「…え?」

思わず全身の力が抜けそうになる。
…会いたくない?私に?



139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 21:01:32.32 ID:SY6dAa8vO

憂「…約束も守れないで私をこんな風にしちゃった梓ちゃんを許せない、って言ってた」

…全身の力が抜けた。
今まで必死に堪えてきたけど、もう無理だ。
地面に崩れ落ちるのと同時に、涙が零れてくる。

憂「…泣いて済む問題なのかな?」

梓「…」フルフル

憂「…もう帰って。二度とお姉ちゃんに近寄らないで」クルッ

スタスタ

…唯先輩、ごめんなさい。
私、また約束破っちゃいました…

トテトテ



140 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 21:05:36.56 ID:SY6dAa8vO

子供「ねぇねぇ、お姉ちゃん大丈夫?」

梓「…うん、ちょっと色々あって」グスッ

子供「そうだ!これあげる!」スッ

そういって、私にくれたのは、飴玉だった。
…これ、唯先輩が大好きなやつだ。
…私は飴玉を口にふくむ。
甘い…
様々な唯先輩の表情が頭をよぎる。
嬉しそうな顔、楽しそうな顔。
悲しそうな顔、怖がってる顔。
飴玉の甘さが、私を落ち着かせてくれた。

子供「お姉ちゃん、元気になった?」ニコッ

満面の笑みで私に尋ねる。
…唯先輩の笑顔に似てる。
笑顔…
瞬間、私の頭をよぎったのは、轢かれる前に私に見せた唯先輩の笑顔。
…笑顔?



141 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 21:10:20.07 ID:SY6dAa8vO

確かに唯先輩はあの時、私に笑顔を見せてくれた。
…何で笑顔だったんだろう。

……
そうか!

梓「ありがとう、元気出たよ」ニコッ

子供「本当!?良かった~」ホッ

  「あ、ママが呼んでる。じゃあね!」フリフリ

梓「うん、バイバイ」フリフリ

まさかあんな子供に助けられるなんて…
私の足は、再び唯先輩の病室へ向けて歩を進めた。
最愛の人が待っている場所へ…



143 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 21:17:39.07 ID:SY6dAa8vO

病室前

病室前に辿り着く。
扉の前には憂が立っていた。

憂「…二度と近寄らないでって、私言ったよね?」

梓「…憂、聞いて」

憂「…言い訳は聞くつもりないよ?」

梓「いいから聞いて!」キッ

看護師「…」ジロッ

憂「…外に行こう。ここじゃ迷惑になっちゃう」



憂「…それで、話って何?」

梓「…唯先輩は私を拒んだりなんかしない」

憂「…何でそんな事が分かるの?」

梓「…唯先輩が轢かれる前にね、私に向かって微笑んでくれたの」

憂「…それで?」



144 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 21:24:08.75 ID:SY6dAa8vO

梓「それは私が道に転がってからだった。凄く安心したような、そんな笑顔」

憂「…」

梓「私には分かる。今までずっと唯先輩を見てきたんだから」

 「私が助かって、本当に安心したような顔だった!」ウルッ

憂「…うん」

梓「私達は愛し合ってた…ううん、愛し合ってる!繋がってる!それは今も変わらない!」

 「…だから分かるの」

 「唯先輩は私を拒まない!」

 「私が唯先輩に会いたいように、唯先輩は今も私を待ってる!」

憂「…」

 「…ごめんね、梓ちゃん」

 「…私嘘吐いちゃってた」



146 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 21:31:23.18 ID:SY6dAa8vO

梓「憂…」

憂「お姉ちゃんがあんなになっちゃっても、梓ちゃんがお姉ちゃんを好きでいてくれるか」

 「…不安で不安で仕方なかった」ウルッ

 「…でも梓ちゃんは、あの時の梓ちゃんのまま」

 「本当にっ…安心した…」グスッ

憂「それに…前もっ…あんなに酷いごど言って…」ヒック

 「梓ちゃんは悪ぐないって分かってだのに…」ヒクッ

 「誰かに当だらないと…お姉ちゃんの一番近ぐにいた梓ちゃんに当たらないと…」

 「私は私が保でながっだ…」

 「ごめんなざいっ!」ペコリ

梓「…」

 「…いいよ、憂。頭を上げて?」ナデナデ

憂「…え?」グスン



147 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 21:38:21.82 ID:SY6dAa8vO

梓「私だって憂の立場ならあんな事言うかもしれないし…仕方ないよ」

 「…それに、私がしっかりしてなかったせいだから」

憂「梓ちゃんは悪くないよ!」

 「…何もかも私が悪いの」

梓「…じゃあ二人でごめんなさいって言おうか」

 「それでお互い様って事で、そうしよう?」ニコッ

憂(梓ちゃん…お姉ちゃんみたい…)

 「うん、ありがとう梓ちゃん」

梓「ううん。じゃあ、せーのっ」

梓憂「ごめんなさい!」ペコリ

梓「仲直り…だよね?」

憂「うん!これからもまたよろしくね?」ニコッ

梓「うん!」ニコッ



148 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 21:42:25.28 ID:SY6dAa8vO

梓「そうだ憂、一つ訂正」

憂「なぁに?」

梓「私は、唯先輩のこと『好き』じゃないよ」

憂「え?」

梓「『愛してる』の!」ニコッ

憂「妬けちゃうね」フフッ

梓「えへへ…///」

憂「お姉ちゃんの所に行こっか?」

梓「うん!」

今行きます、唯先輩!



149 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 21:46:37.44 ID:SY6dAa8vO

病室前

…この扉の向こうに唯先輩がいる。
会いたくて会いたくて仕方がなかった人。
…笑顔だ。
満面の笑顔で会おう。

憂「…」コンコン

「はーい」

…?
聞こえてきたのは唯先輩の声ではない。
看護師だろうか。
出来れば私達だけで会いたかったけど仕方がない。
目を覚ましたばかりなのだから。

憂「梓ちゃん、どうぞ」ガラッ

梓「こんにちは~…」ソロソロ

唯「あずにゃん!」パアッ

いた。
私の一番大切な人。
私を見るなり満面の笑顔で迎えてくれた。
そして、その隣には…



150 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 21:50:38.47 ID:SY6dAa8vO

唯母「あら、あなたが梓ちゃん?こんにちは」ニコッ

唯父「こんにちは。話は唯から聞いてるよ」

唯先輩のお母さんとお父さんが立っていた。
お母さんの方はおっとりした感じで、お父さんの方はとてもしっかりしてそうな人。
それに美男美女、見惚れてしまいそうな程に。
このご両親がいての唯先輩と憂なんだろうと思う。

梓「は、初めまして!私、唯先輩の『後輩』の中野梓って言います!」

唯母「あら、ただの『後輩』なの?」ニヤッ

そう言うと、唯先輩のお母さんは悪戯っぽく笑った。
…こういう所は受け継がれてないんだな。



152 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 22:00:59.26 ID:SY6dAa8vO

梓「あっ、あの…///」カァッ

唯「お母さん!虐めたらあずにゃんが可哀相だよ!」ムッ

唯母「ふふっ、冗談よ」

唯父「…少し話があるんだけど、梓ちゃんちょっといいかな?」

梓「はい?」

病室前

梓「あの…お話って…」

唯母「梓ちゃん、今まで唯に良くしてくれてありがとう」

梓「いえ、そんな…」

唯父「…唯の体の事は知ってるよね?」

梓「…はい」



154 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 22:05:18.49 ID:SY6dAa8vO

唯父「もう唯は今まで通り生活できない。梓ちゃんと出掛ける事だって難しい」

唯母「そう。唯は梓ちゃんの大きな足枷となってしまうの」

  「私達は梓ちゃん、あなたに唯に縛られて生きてほしくない。」

梓「…縛られるなんて考えてません」

 「私は私自身の意志で決めたんです。唯先輩に添い遂げるって」

 「それに、どうなろうが唯先輩は唯先輩です。私の愛する唯先輩なんです」

 「愛する人を足枷なんて思いません」

 「…だから、私を信じてください」

 「お願いします」ペコリ



155 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 22:09:46.75 ID:SY6dAa8vO

父母「…」

ガラッ

唯母「憂…どうしたの?」

憂「私からもお願いします」ペコリ

梓「…憂!」

憂「梓ちゃんは本気だよ。私には分かる。確信できる」

 「それに、お姉ちゃんが愛した人なんだよ?」

 「お父さん達は、お姉ちゃんを信じてないの?」

唯母「…ふふっ」

唯父「…はっはっ」

憂「…何で笑ってるの?」

唯父「愛する…いいじゃないか」

唯母「若いっていいわねぇ~」

唯父「僕達もかつては…」



156 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 22:14:30.35 ID:SY6dAa8vO

唯母「あら…私は今も愛してるわよ」

唯父「ふふっ…僕もさ」

唯母「あなた…」

憂「…ふざけるのも程々にしたら?」

唯母「それもそうね」フフッ

  「…梓ちゃん、大変かもしれないけど唯の事よろしくね?」

唯父「僕は割と真面目だったんだけど…」シュン

梓「え?あの…」

唯父「まあいい。梓ちゃん、そもそも僕達はこうなる事は分かってたんだ」

梓「…え?」キョト



158 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 22:21:43.71 ID:SY6dAa8vO

唯母「あら、あなた達外で揉めてたじゃない。話の内容聞いてたらこうなる事は分かったわ」

憂「…じゃあ何で」

唯父「面と向かって聞きたかったのさ。梓ちゃんの口からね」

  「どれ程唯のことを好いてくれているのか。僕達も親だ。心配なんだよ」

唯母「一生付き合っていく人だから尚更」

梓「じゃあ本当に…」

唯母「ええ、唯を頼むわ」ニコッ

唯父「僕達も出来る限りのサポートはするよ」ニコッ

梓「唯先輩のお父さん、お母さん…ありがとうございます!」ペコリ

憂「私からも、ありがとうございます」ペコリ



159 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 22:30:33.56 ID:SY6dAa8vO

唯母「いいのよ、私達が悪かったわ」

唯父「唯先輩のお父さんか…」

  「梓ちゃん、僕の事は『お義父さん』、もしくは『パパ』と呼んでくれ!」

唯母「じゃあ私は『ママ』で♪」

梓憂「ははっ…」

病室

唯「あ、あずにゃん達遅かったね~」

唯母「積もる話があったのよ」

唯父「そうそう、僕達は今日は帰るよ。もう遅い」

憂(…なるほど)

 「さ、帰ろう!私が晩ご飯作るよ」

唯父「愛娘の晩ご飯…何て素晴らしい…」

憂「分かったから早く出ていって!」

 「二人共また明日ね!」



160 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 22:34:52.87 ID:SY6dAa8vO

ガチャッ

唯「行っちゃった。まだ5時なのに」

梓「気を遣わせちゃいましたね…」

唯「…」

梓「…」

…沈黙。
話したい事は沢山あったはずなのに…
まるで何ヵ月も会っていないかのような錯覚に陥る。
遠距離恋愛の人達は会うたびにこんな気持ちを味わうんだろうか。
…沈黙を破ったのは唯先輩だった。

唯「…あずにゃん、ごめんね?」

梓「…謝らなきゃいけないのは…」

私の方です。
そう言い掛けたところで遮られた。



161 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 22:37:50.77 ID:SY6dAa8vO

唯「あの時私凄い力で引っ張っちゃって…」

 「あずにゃんが転けちゃったから怪我させちゃったかなって、今日ずっと考えてた…」

この人は…

唯「痛かったよね?ごめんね、あずにゃん…」

この人は何を言ってるんだ…
身を呈して私を守ってくれた。
私の怪我なんて、唯先輩の怪我に比べたら可愛いもの。
…それなのに、まだ私の身を案じてくれている。
この人は…

梓「唯先輩は…馬鹿ですよ…」



163 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 22:40:01.31 ID:SY6dAa8vO

梓「どうしようもないくらい…馬鹿ですっ…」

 「何で…まだ私なんかの心配をするんですかっ!」

 「唯先輩の方が重傷なんですよ!?」

 「それに…謝らなきゃいけないのは私の方なのにっ!」

 「何で唯先輩が…謝るんですかぁ…」ポロッ

唯「あずにゃんだからだよ」

梓「…?」グスッ

唯「私にとって、理由はそれだけで十分」ニコッ

 「あずにゃん、こっちにおいで?」クイクイ

唯先輩に手招きされ、唯先輩の側へ向かう。
唯先輩の隣に立つのは久しぶりだ。
とても優しい、ふんわりした空気。
…心が次第に落ち着いてくる。



164 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 22:42:26.75 ID:SY6dAa8vO

梓「唯先輩…私、約束破っちゃいました…」

唯「大丈夫だよ。それに、ずっと笑っててって結構酷い約束だよね…」

 「あずにゃんの気持ちを無視しちゃってた…ごめんなさい」

梓「いえ、いいんです」ニコッ

唯「あずにゃん、一つだけ言いたい事があるんだ」

梓「何ですか?」

唯「…あずにゃんにね、『私なんか』って言って欲しくないなって」

梓「でも、私はそれぐらい…」

唯「私はあずにゃんを愛してるの!」ギュッ

私と唯先輩の手が繋がる。



166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 23:00:39.17 ID:SY6dAa8vO

唯「あずにゃんも私を愛してくれてる!その私が愛してる人は…」

 「『私なんか』…なの…?」

梓「…っ!」

私は、私が嫌いになりかけていた。
約束を全然守る事が出来なかったから。
そして、咄嗟に出た言葉…
…それが唯先輩を傷つけたんだ。

梓「…ごめんなさいっ!」

唯「ううん…私も大声出しちゃってごめんね…」

 「でもあずにゃん、これからは自分で自分を傷つけるような事は…」

梓「はい、絶対言いません!や…」



168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 23:01:54.41 ID:SY6dAa8vO

約束です!
そう言い掛けたところで、私は口を閉ざした。
私は二度も約束を破っている。
私に約束なんて言う資格はない。
突然黙った私に、唯先輩は一言だけ言った。

唯「信じてるよ」ニコッ




169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 23:04:21.24 ID:SY6dAa8vO

お姉ちゃんは順調に回復している。
この調子でいくと、学園祭の頃には外出許可が下りる可能性が高いらしい。
頑張って、お姉ちゃん…
学園祭と言えば、今年の軽音部は、一曲だけ梓ちゃんが歌うらしい。
何でも、お姉ちゃんに自分の成長した姿を見てもらいたいからって。
だから、この事はお姉ちゃんには秘密。
お姉ちゃんすっごく喜ぶだろうなぁ…



172 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 23:08:17.02 ID:SY6dAa8vO

学園祭一週間前

~~~♪

律「梓のボーカルもなかなか様になってきたな」

紬「本当ね~♪」

梓「本当ですか!?ありがとうございます!」パアッ

律「こりゃあ澪が抜かれる日も近いんじゃないか~?」ニヤッ

紬「でも…今度が私達の最後のライブなのよね…」

澪「…そうだな。唯抜きになっちゃって寂しいけど…」

梓「大丈夫ですよ!唯先輩は来てくれます」



173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 23:11:21.48 ID:SY6dAa8vO

梓「一緒に演奏してなくても私達5人は繋がってます」

 「もうそれは放課後ティータイム5人の演奏と一緒ですよ!」ニコッ

澪「…そうだな」フフッ

律「何だか成長したな、梓は」ナデナデ

紬「ええ、本当。去年までが嘘みたい」フフッ

梓「ム、ムギ先輩!余計な事は…」

ブーッブーッ

梓「電話…憂だ」

 「ちょっとすみません」ピッ

 「もしもし。憂、どうしたの?」

 「…唯先輩が!?」ガタッ



174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 23:14:58.67 ID:SY6dAa8vO

紬「唯ちゃんがどうしたの!?」

梓「容態が急に悪化して…意し…」

律「皆!唯の所に行くぞ!急げ!」ガタッ

梓「憂っ!今からそっちに行く!」ピッ

唯先輩…
唯先輩っ…!

病院

手術室の前に平沢家が揃っている。
…唯先輩を除いて。
赤く手術中のランプが灯っている。
唯先輩はあそこに…



176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 23:18:18.35 ID:SY6dAa8vO

梓「憂っ!」ハァハァ…

憂「梓ちゃん…それに皆さんも…」グスッ

律「憂ちゃん!唯は!?」

そっと、憂は手術室の方を指す。

唯母「あなた達が軽音部の…」

澪「はい。それで、唯は一体…」

唯父「くそっ!何で唯がこんな目に遭わなきゃならないんだ…」ポロッ

唯母「…皆、聞いてくれる?」

唯先輩のお母さんの説明によると、こうだ。
普通なら有り得ないような医療事故。
…唯先輩のお腹の中には鉗子が置き忘れてあったらしい。



177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 23:22:07.01 ID:SY6dAa8vO

唯母「…私がもっと早く伝えてればっ!」グスッ

少し前から唯先輩に異変はあったらしい。
気分が優れないと言って、夕方頃までは寝ていたって。
…夕方まで。
…そう、私がお見舞いに行くまで。
夕方になると唯先輩は無理矢理起きたらしい。
…あずにゃんが来るからって。
あずにゃんが来るから寝てなんかいられないって。
キツい体で、だけれど満面の笑みで私を迎えてくれていた。
毎日、毎日…
…笑顔の裏で必死に戦いながら。



178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 23:25:24.64 ID:SY6dAa8vO

梓「…私の…せいだ」ポロッ

 「私が毎日お見舞いに行ったからっ…」ヒック

 「私がっ…唯先輩の異変に気付けなかったからっ…!」グスッ

 「毎日毎日お見舞いに行って…唯先輩に辛い思いをさせたからっ…!」ブワッ

憂「…梓ちゃん、それは違うよ」

梓「…っ」グスッ

憂「お姉ちゃん、梓ちゃんに会う時凄く幸せそうだった」

 「お姉ちゃんの笑顔は本物だよ。それは梓ちゃんが一番分かるはず…」



179 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/03(土) 23:29:25.05 ID:SY6dAa8vO

憂「…ねぇ梓ちゃん。梓ちゃんとお姉ちゃんは繋がってるんだよね?」

梓「…」コクッ

憂「梓ちゃんは、お姉ちゃんと会う時どんな気持ちだった?」

梓「…幸せ…だった」

憂「ほら、もう答えは出てるよ?」

梓「唯先輩は…幸せ…だった…?」

幸せ…
そっか、唯先輩も幸せだったんだ。
私達は繋がってる。
私が幸せなのに唯先輩が幸せじゃないはずがない。
…とっても大事な事を忘れそうになってた。



185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 00:00:02.91 ID:fliGRy/IO

梓「ありがとう、憂」

憂「ううん、いいよ。それより」

 「祈ろう、お姉ちゃんの無事を…」ギュッ

梓「うんっ」ギュッ

私に出来る事は無事を祈るだけ。
また、最愛の人と笑って過ごせるように…

数時間後

手術中のランプが灯りを失う。
…手術が終わった。
手術室の扉が開き、医者が一人出てくる。

唯父「唯はっ!?唯は無事なんですか!?」ガシッ

…医者は何も言葉を発さない。
嫌な予感がする。



189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 00:06:21.42 ID:fliGRy/IO

医者「…一命は取り留めました」

…?
何で成功って言わないの?
医者の言葉に疑問を感じていると、また医者が口を開く。

医者「…しかし」

  「今夜が山です…」

律「おい!ふざけんなよ!」ガシィッ

 「お前達のミスのせいでこんなことになったんだろ!?」

 「それが今夜が山!?ふざけるのも…大概にしろよ!」ポロッ



192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 00:12:05.59 ID:fliGRy/IO

唯母「律ちゃん、落ち着いて…」

  「…それで、唯が助かる見込みは…?」

…次の言葉で、私達はどん底に突き落とされた。
恐らく、絶望とはこんな気持ちなのだろう。

医者「…今晩は、皆さん一緒にいてあげてください」

…誰も言葉を発さなかった。
いや、発せなかった…
…この言葉が持つ意味を、私達は理解したから。



194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 00:17:20.40 ID:fliGRy/IO

少しして、唯先輩が目を覚ましたとの報せが入った。
病室に行くと、既に全員揃っていた。
唯先輩にはチューブが沢山繋がっていた。
あまりにも痛々しくて、思わず目を背けそうになる。
でも、あれが今の唯先輩の姿。
私が目を逸らす訳にはいかない。
私はしっかりと唯先輩を見据えて、歩を進める。

梓「…唯先輩、私ですよ」ギュッ

唯「…あず…にゃん」ギュッ…

私は唯先輩の手を握る。
とても弱々しく、握り返してくれた。
その弱々しさが、唯先輩に残されている時間を表しているようで…

梓「唯…先輩…」ポロッ



197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 00:22:06.82 ID:fliGRy/IO

唯「あずにゃん…何で…泣いてるの…?」

梓「何でも…ありません…」グシッ

憂「…あのね、梓ちゃん」

私は事前にお姉ちゃんに頼まれていたように、全員を病室から出した。
お姉ちゃんは、皆と話したいらしい。
だから、順番に病室に入って欲しい、との旨を伝えた。



198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 00:26:17.49 ID:fliGRy/IO

最初はお父さんとお母さんが入っていった。
少しすると、お父さんとお母さんが号泣して病室から出てきた。
…二人のこんな姿は初めてみる。
思わず私も泣きだしそうになったけど、必死の思いで堪える。

次は律さん、澪さん、紬さんが入って行く。
少しして、部屋の中から3人分の大きな嗚咽が聞こえてくる。
…お姉ちゃん、とても愛されてるんだな。

…次はいよいよ私の番だ。



199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 00:30:43.45 ID:fliGRy/IO

憂「…お姉ちゃん」ガラッ

唯「…憂、おいで」

私はお姉ちゃんの傍に立つ。
笑顔だ…
本当はとっても苦しいはずなのに…

唯「…憂、頼りないお姉ちゃんでごめんね…」

 「私、憂がいなかったら何も出来なかった…」



200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 00:35:47.00 ID:fliGRy/IO

憂「そんな…もう終わりみたいに言わないでよ…!」ッ

 「最近はお姉ちゃんも家のこと色々手伝ってくれてるよ!?」

 「何も出来ないことなんてないよ…」

 「むしろ何も出来ないのは私の方…」

 「お姉ちゃんの笑顔が、お姉ちゃんの喜ぶ姿が、私のやる気を出してくれた…」

 「お姉ちゃんの笑顔や温かさを貰う度に、何か私に出来る事はないかって…」

 「だから今まで休まないでやってこれたの!」

唯「…私ね、憂が妹で本当に良かったって思う」



201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 00:39:40.68 ID:fliGRy/IO

唯「私は、いつもいつも憂の真心に助けられてた」

 「憂は私の誇りだよ。憂、大好き」ニコッ

憂「おね…えっ…ぢゃん…」ブワッ

唯「憂、もう少し近くに来て…」

憂「っ…えぐっ…」スッ

唯「よしよし、いい子いい子…」ナデナデ

憂「…っ」グシッ

唯「…落ち着いた?」ナデナデ

憂「うん…っ…」ヒック



203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 00:43:00.78 ID:fliGRy/IO

唯「えへへ…」

 「最後に…お姉ちゃんらしい事できたかな…」

憂「お姉ちゃんはお姉ちゃんだよっ!」ギュッ

唯「ありがとう、憂」ギュッ…

 「………」

 「…ごめんね、あずにゃん呼んで欲しい…」

憂「…分かった」パッ

 「…またね、お姉ちゃん!」ニコッ



214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 01:02:03.13 ID:fliGRy/IO

…憂が出てきた。
…出てくると同時に、床に泣き崩れる。
頑張ったね、憂…

最後は私だ。
最後は絶対に泣かない…
笑顔で唯先輩と…最愛の人と別れよう…

梓「…唯先輩」ガラッ

唯「あずにゃん…」

私はすぐに唯先輩の傍に行く。
出来るだけ長く唯先輩を感じていたいから。

唯「あずにゃん…」

梓「何ですか?」

唯「ギューッてして?」

梓「…唯先輩は甘えん坊ですね」ギュッ



215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 01:07:10.51 ID:fliGRy/IO

唯「もっと…」

梓「…」ギュ-ッ

唯「もっと強く…」

梓「…」ギュ-ッ

唯「…ありがとう、あずにゃん」スッ

唯「ん…」チュッ

梓「…っ!」ウルッ

…ほっぺたへのキスは挨拶……
…きっと、今のキスは……

…バイバイ、あずにゃん

…お別れのキス。
私は…



216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 01:13:18.52 ID:fliGRy/IO

梓「ん…」チュッ

…私もキスをした。
バイバイ、何て悲しい挨拶じゃない。

…またいつか…会いましょう。

そんな意味を込めて…

唯「…ありがとう、あずにゃん」ポロッ

梓「…唯先輩、愛してます」ギュッ

唯「…わた…し…も……愛っ…し…てる…」ニコッ

ピーー

医者達が病室に入ってくる。
私は唯先輩から引き剥がされる。
部屋の外からは、絶叫とも悲鳴ともとれるような悲痛な叫び声。
医者達が懸命に蘇生措置を行っている。
…しかし、懸命な措置も実らず。

唯先輩は、私が世界で一番愛する人は、遠い、とても遠い世界へと旅立った…



222 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 01:21:13.87 ID:fliGRy/IO

学園祭

私達は今、ステージの裏にいる。
出場も危ぶまれたけど、先輩達も何とか立ち直ったので、私達はここにいる。


律「放課後ティータイムにとって最後のライブだ。絶対成功させようぜ!」

澪「ああ。皆、最高の演奏をしよう!」

紬「そうね。全力を出し切りましょう!」

梓「皆さん、最高のライブにしましょうね!」グッ

律澪紬「おーっ!」グッ

『次は、放課後ティータイムによるライブ演奏です』



225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 01:28:45.60 ID:fliGRy/IO

―――

梓「最後の曲の前にお話があります…」

 「…皆さんご存知かと思いますが、私達放課後ティータイムは5人編成でした」

 「しかし、先日、ギター・ボーカルの平沢唯さんが亡くなられて、今の私達になります」

 「でも、私達はここに4人しかいない何て考えてません」

 「私達は強い、とても強い絆で繋がっています」

 「唯先輩がどこにいても、私達は繋がってる…」

 「だから私達は4人じゃない!ちゃんと5人揃った放課後ティータイムです!」

 「それでは放課後ティータイムの最後の曲…」

 「ふわふわ時間!」



226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 01:32:52.21 ID:fliGRy/IO

~~~♪

唯先輩、見てますか?
私、唯先輩と同じギター・ボーカルになったんですよ。
いつか見た、私が憧れた唯先輩と同じパート…
まだまだ唯先輩に追い付いてないけど…
いつかは追い付けるように、追い越せるように…

私達の曲…
私の声…
…唯先輩に届けっ!



227 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 01:37:08.49 ID:fliGRy/IO

一年後

…私の日常は再び変わった。
お父さんとお母さんは、今も日本で暮らしている。
私を一人にしたくないそうだ。
それは有難いけど、お姉ちゃんがいた時も、もう少し家にいて欲しかった。

梓ちゃんは、お姉ちゃんが亡くなった日から毎日家に来てくれている。
お姉ちゃんに会うために。
お父さんとお母さんも梓ちゃんを歓迎していて、本当の娘のように可愛がっている。
ちなみに、梓ちゃんはお父さん達を『おとうさん』、『おかあさん』と呼ぶようになった。
省略して『お父さん、お母さん』なのか、それとも『お義父さん、お義母さん』なのか。
…後者なら嬉しいな。



228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 01:42:53.74 ID:fliGRy/IO

…そして、一番の変化はお姉ちゃんがいないこと。
もう、アイスも強請られないしギターの音も聞こえない。
最初の頃はとても寂しかった。
でも、梓ちゃんや純ちゃん、軽音部の皆さん、お父さんお母さんが私を支えてくれた。
皆のおかげで私は今を生きていける。
皆には感謝してもしきれない。
…それに、嫌でも人間は新しい環境に適応してしまう。
良い事なのか悪い事なのか…
とにもかくにも、私の日常は再び崩れ、また再び構築された。
…私が最初に望んだ日常とは、大きくかけ離れた形で。

…ふと、時計に目を移す。
もうこんな時間だ。
梓ちゃんももうすぐ私の家に着くはず。
私は一つ、ヘアピンをつけた。



230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 02:00:39.36 ID:fliGRy/IO

今日は特別な日だ。
そう、唯先輩が旅立った日。
私は様々な出来事を思い出す。
唯先輩との出会い。
唯先輩と付き合った日。
唯先輩と遊園地に行った日。
…唯先輩と最初で最後の口づけを交わした日でもある。
唯先輩が楽器屋で選んでくれたピック。
…楽器屋からの帰りに起こった悲劇。
…そして、去年の今日。唯先輩が亡くなった日。

私の中は唯先輩で埋め尽くされている。改めて実感した。

そういえば、憂とは結構衝突したな…
でも、衝突出来るからこそ、親友と呼べるのかもしれない。


…もうこんな時間だ。
もうそろそろ出ないと遅刻しちゃうかも。
一つ髪留めをつける。
私は、もう一つの私の家に向かった。



231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 02:05:23.86 ID:fliGRy/IO

平沢家

ピンポーン

憂「梓ちゃん、あがって」ガチャッ

玄関から憂が私を出迎えてくれる。
憂の髪には私と同じ髪留め。
…やっぱり似合ってるな。
流石は姉妹といったところか。

唯母「あら、梓ちゃん」

唯父「こんにちは」

梓「こんにちは、お義母さん、お義父さん」ニコッ

唯父「はっはっ。パパでもいいんだよ?」

梓「丁重にお断りします」

唯父「…そう…か」シュン

憂「何で本気で落ち込んでるの…」

唯母「梓ちゃん、ゆっくりしていってね」ニッコリ

梓「はい、そうさせていただきます」ニコッ



232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 02:10:20.11 ID:fliGRy/IO

結構な時間が経ち、私達は唯先輩のお墓へ向かった。
お墓には『平沢家』の文字。
まだ綺麗だ。
一年しか経っていないから当然か。
…私も、この中に入れるのかな。
平沢梓…ふふっ。
…何だか似合ってないや。
私達はお墓参りを終え、それぞれの家路に着いた。

中野家

私は机から一枚の手紙を取り出す。
…唯先輩の枕の下から出てきたらしい。
色々落ち着いてから、憂から手渡された物だ。
…その手紙は、酷く乱雑な文字で書かれていた。
慣れない左手で懸命に書いてくれたのだろう。
唯先輩の真剣な表情が目に浮かぶ。
…その不恰好な文字からは、唯先輩の温かさが滲み出ていた。

…私は一年に一回、今日だけこの手紙を読む事に決めた。



233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 02:15:57.94 ID:fliGRy/IO

~~~

あずにゃんへ

あずにゃんがこの手紙を読んでるって事は、私がこの世にいない時だと思う。
私ね、分かってたんだ。
いきなり体調が悪くなっちゃって、もう助からないなって。
でね、これから書くことはあずにゃんに直接お話しようと思ったんだけど、
最期はあずにゃんに抱きしめてて貰いたいから、今手紙を書いてる。

私ね、あずにゃんが軽音部に入ってくれた時、とっても嬉しかった。
私の初めての後輩だったから。
可愛い可愛い私の後輩。
初めて先輩になれて、すごく嬉しかった。
でもね、それよりも嬉しかった事があるよ。
それは、あずにゃんと付き合えた事。
私、すっごく幸せだったよ。
きっと、あずにゃんも同じ…だよね。



234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 02:21:45.61 ID:fliGRy/IO

私達、遊園地でデートしたよね。
男の人に話し掛けられた時、怖くて泣き出したかった。
あの時、あずにゃんが来てくれて凄く安心した。
あずにゃんが守ってくれた。
あの時の言葉は嘘じゃないんだって。
あの時のあずにゃんの顔、今でも思い出す。
真面目なあずにゃんでも、甘えるあずにゃんの顔でもない。
初めて見た、すごくかっこいいあずにゃんだったから。
…あの時、あずにゃんに一生ついていこうって改めて思った。
観覧車での事、今でもはっきり覚えてる。
私とあずにゃんの距離がぐっと縮まったよね。
夢じゃないかってぐらい嬉しかった。
あずにゃんを感じれて。
私とあずにゃんは、本当に恋人同士なんだって思えて。



235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 02:24:08.79 ID:fliGRy/IO

私が入院して、目を覚ました時、あずにゃんは憂とケンカしちゃってたよね。
あれ、実は全部聞こえてたんだ。
もしあずにゃんが帰っちゃったらどうしようって凄く不安だった。
私はこんな姿になっちゃったし、私よりも憂を信じたらどうしようって。
でも、あずにゃんは私を信じてくれたね。
こんな姿の私でも変わらずに愛してくれた。
本当に嬉しかった。

私、今までの事思い返してみたんだ。
そしたらね、あずにゃんでいっぱいだった。
楽しい時も悲しい時も、どんな時にでもあずにゃんがいた。
平沢唯って人間はね、あずにゃん抜きじゃ語れないぐらい、
それぐらいあずにゃんは私にとって大きな大きな存在なんだ。

だからあずにゃん、自分で自分を傷つけちゃ駄目だよ?
それはね、同時に私も傷つけちゃう事になるんだ。
…あずにゃんはそんな事望んでないよね?



236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 02:26:27.56 ID:fliGRy/IO

それと、あずにゃんに謝らなくちゃいけない事がある。
約束してた水族館、行けなくってごめんね…
それに、学園祭にも行けなくてごめんなさい…
もっとあずにゃんと過ごしたかったけど、
あずにゃんの晴れ姿を見たかったけど、どれも私には出来なくなっちゃった…

あずにゃん、私は、遠い、とっても遠い所にお出かけしなくちゃいけない。
寂しくて、悲しくて、泣いちゃうかもしれない。
…最初はそう思った。
でもね、私大丈夫だよ。
あずにゃんがいるから大丈夫だって。



240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:00:41.72 ID:fliGRy/IO

私達は繋がってる。
いつでも私の傍にあずにゃんがいる。
だからあずにゃん、私の事は心配しないでいいよ。
あずにゃんはあずにゃんの人生を精一杯生きて。
大丈夫、私が傍にいる。
嬉しい時も、楽しい時も、悲しい時も、寂しい時も。
私は、ずっとあずにゃんの傍で見守ってるから。

私はこれからもずっと、ずーーっと、あずにゃんを愛し続けるよ。

ありがとう、あずにゃん。

愛してます。

唯より

~~~



241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:02:05.05 ID:fliGRy/IO

私は手紙を読み終え、机の中にしまう。
その中には、あの時唯先輩から貰ったピックも一緒にしまってある。
唯先輩から貰った大切な大切な宝物。使えるはずがない。
だから私は、同じ種類のピックを買って使っている。



242 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:03:11.87 ID:fliGRy/IO

そういえば、憂とお揃いのヘアピンの話だけど、
クラスの皆は『可愛いね』、『仲良くて羨ましいや』なんて言ってくれている。
だけど、純は気づいてるみたい。
これが唯先輩の物だって。
でも、私達が一つずつ付けている理由までは気づいてるかな?

純「梓、どうしたの?」キョト

梓「ううん、なんでも」ニコッ

憂「次は移動教室だね。行こっか」ニコッ

私は色んな人に支えられて、色んな人に守られて精一杯生きている。
…日常と化した、非日常を。

終わり



244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:04:54.59 ID:fliGRy/IO

終わりです

唯の手紙は本当長いと自分でも思ったけど唯が頑張ったという事で

読んでくれた人ありがとう



247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:08:26.60 ID:fliGRy/IO

あと唯が死ぬ前の憂のセリフはキャラソンです



249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:13:54.28 ID:fliGRy/IO

最後に言うと、憂の梓は黒猫発言
手術室で憂に
梓ちゃんは私にとって黒猫。
日常を壊す不吉ばかり持ってくる。
って言わせようと思ったので
憂はいい子なので言いませんでした




248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:08:51.35 ID:eWsK2cTmP

乙!!良い話だった。唯のヘアピンだったのか
また何か書いてほしい


250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:18:34.56 ID:XZbQPu0FO

ヘアピン一つずつ付けてるのは何か深い意味はあるの?





252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:23:08.29 ID:fliGRy/IO

梓は唯に憧れてました
ずっと追いつけるように頑張ってます
つまり、まだまだ自分は未熟者、唯には追いついてないと思ってます
その状態じゃ2つは付けれない
唯に追いつけた時2つ付けよう、と
それまで憂に預かってもらってます
こんな感じ



253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:29:01.20 ID:fliGRy/IO

憂に関しては、付けてることで
唯はここにいるよ、見てるよ
だから梓ちゃん頑張って
と自分なりにエールを送ってるつもりです




245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:06:01.90 ID:deWBaOOV0


よかった



246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:06:50.03 ID:IOvafXOeO

おつかれ



254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:29:05.01 ID:aIUEJOslO


まあ最近は術後直後に術野レントゲン撮るから置き忘れ放置はまずないんだが…言っちゃ野暮だわな
面白かったよ



255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:29:48.44 ID:XZbQPu0FO

なるほどそんな感じか
一日中おつかれ



256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 03:56:59.70 ID:J8HrCmcr0

面白かったよ





257 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/04(日) 05:14:56.55 ID:HRHF0m7kO


よかった





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