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唯「牛乳!」#7 【日常系】


唯「牛乳!」#index




155 名前: ◆DNHuZ8CQvo :2010/10/31(日) 06:00:21.42 ID:z9BPyxoo

唯梓です
ちょっときつい話だけど悪しからず





156 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:01:31.94 ID:z9BPyxoo

チーン

私は電子レンジからミルクの入ったカップを取り出した。
コーヒーも出来たようだ。もう一つのカップに注ぐ。ミルクと砂糖は入れない。
二つのカップを盆に載せ、彼女の眠る部屋へと向かう。

コトッ  ガチャッ

盆を床に置いて扉を開くと、ベッドの上のふくらみはまだ規則正しい呼吸を続けていた。

「唯先輩、朝ですよ。起きてください」



157 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:02:05.01 ID:z9BPyxoo

「う、う~ん……おはよ、あずにゃん」

「おはようございます。唯先輩」

「ん?なんだ。まだ6時じゃん。お休みなんだからもう少し寝かせてよ」

「今日は二人で遠出しようって約束したじゃないですか。早く準備しましょうよ。
寝るなら電車の中で寝てください」

「え~わかってないねぇ、あずにゃん。旅というのは目的地に辿り着くまでにこそ楽しみがあるんだよ。
 途中で寝るなんてもってのほかだよ」

「そうですか。でも唯先輩は放っておいたらまた夢の世界に旅立ちそうですからここで起こさないとダメです。はい、これ飲んで目を覚ましてください」

「ん、ありがとね」

唯先輩はホットミルク。私はブラックコーヒー。
フーフーして熱を冷まし、一杯目をすする。

「あったかいねぇ」

「そうですね」

「でも昨晩のあずにゃんの方があったかかったよ」

「は、恥ずかしいこと言わないでください!」

私と唯先輩が普通の先輩後輩じゃなくなってから2ヶ月。
私と唯先輩が身体を重ねるようになってから1ヶ月。

私はシーツの隙間からのぞく唯先輩の白い肌を見つめた。



158 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:02:43.23 ID:z9BPyxoo

2ヶ月前。10月。


帰り道。
澪先輩、律先輩、ムギ先輩と別れ、唯先輩と二人きりで歩いている時だった。

唯「お、あずにゃん。たい焼き屋だよ!」

梓「ほんとですね」

唯「あれ?なんでそんなに冷めてるの?いつもなら飛び跳ねて喜ぶのに」

梓「そんな反応したことありません。今財布がピンチで、たい焼き一つ買うのだって惜しんでいるんですよ」

本当は凄く食べたい。
あのお店は雑誌やテレビでも取り上げられている幻のたい焼き屋。
この町に来るのは二月に一回といったところか。私もこの目で見るのは初めてだ。

唯「そっかぁ。じゃあ私がおごってあげるよ!」

梓「え、悪いですよ」

唯「まあまあ、ここは先輩を立てたまえよ、あずにゃん君」

そう言うなり唯先輩は屋台へとダッシュした。相変わらず勝手な人だ。



159 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:03:09.80 ID:z9BPyxoo

唯「うぅ、何でたい焼き一個で200円もするのぉ?高すぎだよぉ」

梓「まぁそれくらいの価値があるんでしょう。じゃあいただきましょうか」

私達は川原に並んで腰掛けていた。あの演芸大会の練習をした川原だ。
あの後も何度か二人で来ることがあった。

唯「ああ。やっぱりあずにゃん食べたかったんだね~。よだれ垂らしちゃって」

梓「垂らしてません!もう。いただきます!」

ん。あれ? 普通のたい焼きと大して変わらない。

唯「なんていうか」

梓「あんまりおいしくないですね」

唯「ぼったくりだよ!」

梓「ですね」

唯先輩が珍しく腹を立てている。



160 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:03:50.36 ID:z9BPyxoo

唯「はぁ……。まぁいいよ。こうしてあずにゃんといられる時間が増えたんだし」

梓「……そんなこと言ったって何も出ませんよ」

この人の言葉は掴みどころがない。本気なのか、冗談なのか、ただの天然なのか。

唯「ツれないなぁ。ほら、私の白あんをあげよう」

梓「はぁ。じゃあ私の粒あんをどうぞ」

私達は半分ほど食べたところでお互いのたい焼きを交換した。
うん。やっぱり……。

唯「白あんなんて邪道だ!」

……この人に心を読まれるなんて、なんたる屈辱。
私は黙ってそっぽを向いた。



161 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:04:24.28 ID:z9BPyxoo

唯「あずにゃ~ん。図星だった?」

粒あんを食べ終えた唯先輩が後ろから抱きついてきた。

梓「私の心はそんなに狭くありません。白あんも粒あんも大好きです」

唯「私のことは?」

梓「だいすk……って何言わせるんですか」

唯「私はあずにゃんのこと大好きだよ~」

唯先輩は私の肩に顎を乗っけてより密着度を高める。左腕なんか私の胸に思いっきり触れている。人がいないからってくっつきすぎですよ。
まぁ人がいないし、離れさせる必要もないか。

唯「……やっぱりドキドキしてないね」

梓「えっ?」

唯先輩は突然低い声を出した。

唯「ねぇあずにゃん。私の胸、触ってみて」

梓「へっ?」

唯先輩は私の右手を掴むと自らの左胸にそれを押し当てた。

梓「ちょっ、唯先輩!?」

突然の不可解な行動に私は混乱した。
が、すぐにあることに気付いた。ブレザー越しの背中では気付かなかったけど。

唯先輩、どうしてこんなにドキドキしてるの?



162 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:04:56.99 ID:z9BPyxoo

唯「最近さー」

唯先輩は間延びした口ぶりで語り始めた。

唯「あずにゃんを見たり、あずにゃんに抱きついたり、あずにゃんのことを考えたりするとさ。身体が熱くなるんだよね。血が全身を駆け巡っているような感覚になるんだー」

いつも抱きしめられているのに気が付かなかった。

唯「よーく考えたよ。一人でね。憂とか和ちゃんとかりっちゃん達に相談したらいけない気がしたんだー」

きっといけないですね。だってその感情はきっと……。

唯「結論は出たよ」

……。

唯「でも諦めたよ」

どうしてですか。

唯「だってさ」

なんですか。

唯「私の片思いなんだもん」

梓「違います」



163 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:05:30.67 ID:z9BPyxoo

唯「えっ……」


梓「私がドキドキしないのは唯先輩との距離が近くなりすぎたせいです。一緒にいるのが当たり前になったからです」


梓「初めて演奏を聞いた時は憧れました。この人と同じバンドでギターを弾きたいと思いました。けど、そんなイメージはすぐに崩壊しました。
こんなにだらしない人だとは思いませんでした」


梓「でも、毎日抱きつかれたら、毎日手を焼いていたら、何度も手を引かれたら、何度も助けられたら」


梓「頭も身体も、あなたから離れられなくなりました」


私は唯先輩に抱きついた。
私から抱きつくのは初めてだ。

唯「あずにゃん……」

梓「唯先輩……」

私は唯先輩の顔を見つめた。
唯先輩の瞳には私しか映っていない。まるで私が唯先輩に捕らえられたみたいだ。
縮まる距離。……誰も、見てないよね。



164 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:06:16.83 ID:z9BPyxoo

翌日。


憂「おはよう、梓ちゃん」

梓「あぁ、おはよう。憂」

憂「? なんだか眠そうだね。大丈夫?」

梓「大丈夫だよ。昨晩はちょっと眠れなくて」

川原での興奮が夜になっても冷めなかったんだ。でもさすがに正直に言うわけにはいかない。
憂の様子からして、唯先輩は私達の関係をまだ憂には知らせていないようだ。

私と唯先輩の関係は変わってしまった。これからどうするかは二人でよく話し合おう。
しばらくの間は二人だけの秘密。ふふ。なんだかいい響きだな。「二人だけの」って。

純「なにニヤニヤしてんだが」

梓「なっ!?じゅ、純。いつの間に?」

純「おはようって言ったじゃん。なのに梓ちゃんときたら朝っぱらから一人でニヤけてて。
  何?もしかして彼氏でもできたとか?」

憂「そうなの?梓ちゃん」



165 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:06:55.31 ID:z9BPyxoo

梓「違うよ!そんなんじゃない!」

純「じゃあ何よ?クマなんか作っちゃって。ゆうべはお楽しみだったんじゃない?」

梓「昨日は……そう、遅くまで映画見てんだよ!」

純「エロ……」

梓「……先行くね」

思春期の少女は無視するのが一番だ。

純「あ、待ってよ梓」

憂「もう、純ちゃんったら」

憂もそんなにニコニコしてないで助け船出してよ。別にやましいことはしてないからね。

……やましくはないですよね。唯先輩。



166 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:07:31.52 ID:z9BPyxoo

教室。


私は結局二人を置いて一人で登校した。

梓「おはよー」

教室の出入り口付近にいたグループに挨拶したが返事がなかった。何やらひそひそ話をしているようだ。

梓「……おはよー」

クラスメートA「え!あ!な、中野さん!おはよう!」

クラスメートB「お、おはよう梓ちゃん。今日は憂ちゃん達と一緒じゃないんだ」

梓「まぁね」

クラスメートC「へー……。もしかして今日は先輩と一緒に登校とか?」

Cさんがそう言うとAさんとBさんが焦りの色を浮かべてCさんを見た。

梓「? ううん。途中までは憂と純と一緒だったよ」

C「そっかー。ところで梓ちゃんって軽音部の先輩とすごく仲がいいって聞いたよ。羨ましいなぁ」

梓「そ、そうかな。私も先輩達のことは好きだよ」

AさんとBさんはCさんに向けていた視線を私の方に向け直した。
何だろう。驚いているような、戸惑っているような、そんな目だ。

純「あずさー。本当に置いてくなんてひどいじゃない」

憂「みんなおはよう」

純と憂が来て、間もなくホームルームの時間になったのでAさん達との会話は打ち切られた。

この時私は大して気にしてはいなかったんだ。ただの世間話だと思っていた。
いや、いくら気にしたところで結果は変わらなかっただろうな。
人の口に戸は立てられない。



167 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:08:05.25 ID:z9BPyxoo

放課後。


唯「あーずにゃんっ!!」

梓「にゃっ!」

部室に入るといつも通りの手荒い歓迎。

唯「えへへぇ。会いたかったよぉ」

梓「もう、大袈裟ですよ。いつも会ってるじゃないですか。離れてください」

しかし、私達は昨日までの私達じゃない。私はいつもよりほんの少し抵抗の力を弱めた。

律「あはは、お前ら相変わらず仲いいなぁ」

紬「梓ちゃん、今日はケーキよ~」

澪「ほら、唯。そんなにくっついてたら梓がケーキ食べられないぞ」

律先輩達はいつも通りだ。唯先輩は昨日のことを話してはいないし、みんな気付いていないみたいだ。

律「でさぁ、その時澪が……」

澪「わ、わあぁ!やめろ!言うな律!」

紬「まぁまぁまぁ。気になるわぁ」

唯「ケーキ美味しいなぁ」

梓「そろそろ練習しましょうよ……」

本当にいつも通りだった。
……やっぱり言わない方がいいのかな?もし私達のことを言ったらこの楽しい時間が壊れてしまいそうで怖い。唯先輩もきっとそうだ。

唯先輩と目が合う。唯先輩はフォークを口に含みつつ首を横に振った。
……今は二人だけの秘密、ですよね。



168 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:08:53.42 ID:z9BPyxoo

一週間後。6限目。


眠い。どうしても我慢できず私は机に突っ伏していた。昨日の夜、唯先輩と遅くまでメールしてたせいかな。

ご高翌齢の古典の先生の呟きと板書の音だけが教室に響いていた。
私以外にも眠そうな生徒がちらほら。中には手紙を回す人もいる。
あ、純には手紙渡さないんだ?はは、純嫌われてるなぁ。
……違うよね。
わかっているんだ。そりゃ一週間もすればどんなに鈍感でも気付く。

ばれたんだ。私と唯先輩のことが。

どうやらあの日、あの川原付近に桜高の生徒がいたらしい。周りに人がいないことをちゃんと確認しておけばよかった。
翌日のあのクラスメートの妙な態度もそういうことだったんだ。そして噂はどんどん広まっていった。
噂が私の耳に直接入ってきたわけではないが、みんなの私に対する接し方を見ればわかることだ。
今だって私と純と憂を避けて手紙のやり取りが行われている。きっと私のことだろうね。

気がかりなのは唯先輩だ。

唯先輩もきっと私と同じような目に合っているんだろうけど、私にそのことを話そうとはしない。私も噂に関する話を唯先輩にしていない。お互い何気ない素振りで接している。
でも、そろそろ限界じゃないかな。

潔くカミングアウトするか、隠し通すか、それとも別の選択肢をとるか。
いずれの道を選ぶにしても、唯先輩と二人で決めなければならない。
いつまでも逃げ続けるわけにはいかない。


……けど、もうすこしだけ、恋人として、二人だけの静かなひと時を過ごしたかったな。



169 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:10:33.83 ID:z9BPyxoo

純「梓。ちょっといいかな?」

放課後、部活に行こうとした私を純が呼び止めた。隣には憂がいる。
二人ともいつになく深刻そうな表情をしている。

梓「何?」

純「時間は取らせないからさ、ちょっと来てくれない?」

梓「……いいよ」


二人に連れられた場所は今は使われていない空き教室だった。カーテンが閉まっていて薄暗い。掃除が行き届いていないせいか埃っぽい。

純「けほっ。別の場所の方がよかったかな?まぁいいや、すぐに終わらせれば済むことだし」

憂「うん。早速だけど、梓ちゃん」

この薄暗さの中でもわかるほど、憂の瞳にはまっすぐな光が宿っていた。

憂「梓ちゃん。私達に隠してることがあるんじゃないかな」

やっぱり憂達の耳にも私達の噂は入っていたようだ。

梓「ないよ。何にも」

憂「梓ちゃん」

憂は両手で私の左手を掴んで胸の前に持ってきた。憂の手は震えていた。必死の懇願であることが十分に伝わってくる。

憂「梓ちゃん、お願い。梓ちゃんだって誰にも相談できないのはつらいでしょ。私達でよければ力になるから」

憂の目には涙が溜まっていた。それでも私は……。

梓「何を聞いたのかは知らないけど、根も葉もない噂を信じちゃダメだよ。じゃあ私部活があるから」

私は憂の手から逃れて教室から出て行こうとした。

憂「梓ちゃんだけの問題じゃないでしょ!」

私は扉に手を掛けたところで思わず静止して振り返った。



170 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:11:25.59 ID:z9BPyxoo

憂「梓ちゃんの問題は私達の問題だよ。それにお姉ちゃんのことだって……」

……唯先輩。

梓「憂達にはわからないよ」

純「ああ、わかんないよ」

今まで沈黙を守ってきた純が突然口を開いた。

純「今まで同性のことを好きになった人なんて見たことないから、どう接していいか、どうアドバイスしたらいいかなんてわからないよ」

ストレートな物言いだった。やっぱりもう大体のことがばれちゃってたんだ。

純「でも、世間一般の考え方なんていいんだよ、どうでも」

純が私の方に歩み寄ってきた。

純「梓は唯先輩のことが好きなんでしょ」

純は先程の憂と同じように、今度は私の右手を掴んだ。

純「そして唯先輩も梓のこと大好き。それでいいじゃん」

気付いたら憂も再び左手を握っていた。

憂「お姉ちゃんなら、絶対梓ちゃんのこと大事にしてくれるよ。私達だっているからね」

純「澪先輩達だってきっと応援してくれるよ。梓と唯先輩のこと」

二人は優しく微笑んだ。

梓「憂……純……」

あぁ。もうなんて言えばいいんだろう。

梓「あり……が…とう」

私は何とか声を絞り出せた。



171 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:12:27.68 ID:z9BPyxoo

部室。


律「おーっす、梓」

澪「おお、待ってたぞ」

紬「こんにちは、梓ちゃん」

先輩達はいつも通りに見えた。でも本当はきっと演技しているんだ。

唯「あずにゃーん!」

唯先輩が飛びついてきた。
ムギ先輩達の方をちらっと見ると、三人とも若干表情が強張っているように見えた。
もうこの抱きつきが単なるスキンシップには見えないのだろう。

梓「唯先輩」

唯「ん?なあに?」

梓「もういいんじゃないですか。話しても」

唯「えっ……?」

私は唯先輩を引き離して三人の方を向いた。

梓「皆さん、今日はお知らせしたいことがあります」

唯「ちょ、ちょっとあずにゃん」

梓「唯先輩」

私は唯先輩の耳元で囁いた。きっと大丈夫です、と。

澪「な、何だ?」

紬「何かな?梓ちゃん」

律「ど、どうしたんだよ、唯。そんなに焦っちゃって」

唯「ええと……」

梓「私と唯先輩は」

みんなが私に注目し、ゴクリと唾を飲み込んだ。

梓「一週間前に恋人になりました」



172 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:13:56.94 ID:z9BPyxoo

吹奏楽部の演奏と運動部の掛け声以外の音が消失した。

梓「驚かれたかもしれませんね。もっとも、既に噂でお聞きになったかもしれないですけど」

誰も口を開かない。いや開けないのか。四人の顔から血の気が引いていているように見えた。

梓「女同士なんて気持ち悪いのかもしれません。これからのことだって何もわかりません。でも」

でも。

「澪先輩。律先輩。ムギ先輩」

どうか。放課後ティータイムだけは。

梓「私達と、今まで通りに接していただけませんか?」

私は頭を下げた。

唯「……お願い」

唯先輩も頭を下げていた。

唯「私達、変なのかもしれないけど、このまま友達でいてほしいんだ。お願い。
  りっちゃん。ムギちゃん。澪ちゃん」

私達は二人並んで床をじっと見つめていた。夕日に照らされて部室は赤く染まっていた。
三人の影が私たちの足元にまで伸びていた。



173 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:14:49.21 ID:z9BPyxoo

律「……許さねーよ」

梓「えっ……」

顔を上げられない。

律「どうしてもっと早く教えてくれなかったんだよ!」

唯「えっ」

私達は同時に顔を上げた。

紬「唯ちゃん、梓ちゃん。よく話してくれたね。ごめんなさい、知らないふりして。二人の口から聞くまでは信じられなかったの」

ムギ先輩は優しく微笑んでいた。

澪「私達は応援するよ。ただ、唯と梓がどうしたいのかを聞くまではどんな風に接していいのか迷っていたんだ」

澪先輩は私達を交互に見つめて笑った。

律「全く。部長に無断で部内恋愛とは。けしからんなぁ」

律先輩は私と唯先輩の肩に腕をからませて茶化してきた。

唯「みんな……ありがとう」

梓「ありがとうございます」

ようやく全員の顔にいつもの笑顔が戻った。

律「ようし。じゃあ、これから二人の恋愛成就を祝いにファミレス行こうぜー!」

唯「お、いいねぇりっちゃん!」

梓「ダメです!練習してからです!」

紬「その前にお茶にしない?」

澪「紅茶、冷めてる……」

よかった。
私達はこのままでいられるんだ。



174 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:15:47.66 ID:z9BPyxoo

1ヶ月前。11月。


帰り道。
澪先輩、律先輩、ムギ先輩と別れ、唯先輩と二人きりで歩いている時だった。

唯「あずにゃん。今夜泊まりに来ない?」

唯先輩は徐に口を開いた。

梓「家の人は?」

唯「お父さんとお母さんはいないよ。憂は和ちゃんの所に泊まりに行くよ。一緒にケーキ作るんだって」

明日は土曜日。そして唯先輩の18歳のバースデー。

梓「いいですよ。どっちみち明日は唯先輩の家でお祝いですからね」

唯「うん。じゃあまた後でね」

私達は手を振って別れた。

明日はみんなが平沢家に集まることになっている。
澪先輩、律先輩、ムギ先輩、純、さわ子先生、和先輩。私と唯先輩と憂も入れると、9人。
私と唯先輩の関係を知っている9人だ。

他の人には話していない。この1ヶ月、何度か質問されることもあったが、ただの先輩後輩です、で通してきた。
またあらぬ噂(事実だけど)を立てられたくなかったので、唯先輩は人前であまり抱きつかなくなった。
その分部室とかお互いの部屋とかでは今まで以上にくっついていた。

くっつくというのは別に変な意味ではない。



175 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:17:08.93 ID:z9BPyxoo

お母さんに先輩の家に泊まりに行くことを伝えて家を出た。
平沢家にはもう何度も泊まりに行っているのでお母さんも「迷惑かけないようにね」と言っただけで、特に気にせず送り出してくれた。

梓「寒くなってきたな」

和「そうね」

梓「わっ!」

和「こんにちは、梓ちゃん」

梓「ど、どうもです。和先輩。今お帰りですか」

和「ええ」

気付いたら隣に赤縁眼鏡の生徒会長がいた。

和「梓ちゃんはこれからお出かけ?」

梓「ええ。唯先輩の家に」

和「そう。今夜は憂がいないから、唯のこと、よろしくね」

梓「は、はい」

和「ふふ、そんなにかしこまらなくていいわよ」

和先輩に私達のことを話したのは唯先輩だ。その時の和先輩の反応は
「そう。おめでとう、唯」
これだけだったらしい。
元より大した交流はなかったものの、それ以来私と和先輩が顔を合わせる機会は激減した。というより私が避けていた。



176 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:18:24.93 ID:z9BPyxoo

和「受験生なんだから本当は誕生日祝いなんて派手にやるものじゃないとは思うけど、一日くらいは大丈夫よね」

梓「え、ええ。私が唯先輩の家を訪ねる時はいつも勉強時間はちゃんと確保してますから大丈夫だと思います」

和「あら、そうなの。やっぱり梓ちゃんに唯を任せて正解だったわね」

梓「そ、そんなことないですよ」

和「いいえ。唯は私にとっては家族みたいなものだから、まともな相手と付き合ってほしいと思っていたけど、あなたなら大丈夫だと思えるわ」

梓「……女同士でもですか」

和「ええ」

私達の周りには理解のある人が多くて幸運だったのかもしれない。

和「梓ちゃんもね」

梓「えっ?」

和「梓ちゃんも、これからは私の妹みたいなものよ」

梓「えっ?」

和「あら、嫌だった?」

梓「いえ、嬉しいです」

ちょっと恥ずかしいけど。



177 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:20:10.98 ID:z9BPyxoo

和「でも、家族であっても言えないことってあるわよね」

梓「はい?ええ、そうですね」

和先輩は葉がほとんど落ちてしまった街路樹を眺めながら呟いた。

和「唯だってそうよ。あんなに明るい子だけど、隠し事の一つや二つは絶対にあるわ」

それはわかる。唯先輩は私への想いを長い間誰にも言わずに溜め込んでいた。
でも和先輩は何を言おうとしているのだろう。

和「今日の昼休みのことなんだけどね」
――――――――――――――――――――――

唯「うーん」

和「唯、わかった?」

唯「わっかんないー」

和「もう、だからこれはここをこうして」

唯「お腹すいたよー」

和「さっき食べたでしょ」

唯「昼休みくらい休ませてよー」

和「唯。もう進路決めたんだからそろそろ気合入れないと。澪達と同じ大学行くんでしょ」

唯「だけどさぁ」

和「将来のこともちゃんと考えないと駄目よ」

唯「……将来、か」

和「?」

――――――――――――――――――――――



178 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:21:05.70 ID:z9BPyxoo

和「あの時の唯の表情、きっと梓ちゃんのこと考えてたんだと思うわ」

梓「私のこと?」

和「唯は大抵のことなら私や憂や澪達に相談するけど、あなたに関することは特別なのよ」

梓「そんなこと……」

和「唯だってもう子供じゃないもの。女性同士のカップルが世間からどんな目で見られるかっていうことへの危機感は十分持っていると思うわ」

和先輩は私の顔を覗き込んだ。

和「だからね梓ちゃん。唯のことしっかり見ていてほしいの。唯が助けを求めてきたらしっかり受け止めてちょうだい。それができるのはあなただけなのよ」

梓「できるんでしょうか。私に」

和「できないなら別れなさい」

梓「えっ?」

和「言いすぎたわね。それくらいの覚悟を持ってほしいってことよ。唯には幸せになってほしいからね」

和先輩は遠くの空を見つめて言った。

和「結局、周りがいくら助けてくれたって本人達がしっかりしてなきゃどうにもならないのよ。同性同士のカップルってそういうものだと思うわ」

梓「わかっています」

和「梓ちゃんにばかり辛い思いをさせるのは悪いとは思うわ」

梓「いえ、これが私と唯先輩が選んだ道ですから」

和「そう」

和先輩は立ち止まった。

和「じゃあ私こっちだから」

梓「あ、失礼します」

和「最後に一つだけ」

梓「はい?」

和「あなたが唯を支えてくれるように、唯もあなたを支えてくれる。私はそう信じているわ。辛い時は分け合うといいわ」



179 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:22:25.87 ID:z9BPyxoo

平沢家。


唯「あずにゃんいらっしゃーい。入って入って」

梓「お邪魔します」

唯先輩はエプロンを着けていた。

梓「唯先輩が料理、ですか?」

唯「何その目?私だって料理くらいできるよ」

何度か泊まりに来てはいるがその時はいつも憂が作っていた。

梓「この匂いはカレーですね」

唯「うん、今日は中辛に挑戦だよ」

梓「手伝いましょうか?」

唯「いいのいいの。あずにゃんはお客様なんだから休んでて」

いや、ちょっと不安なんですけど。でもせっかく唯先輩がやる気を出してくれてるんだし。

梓「わかりました。じゃあ唯先輩の部屋に行っててもいいですか」

唯「うん。どうぞー」



180 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:23:23.60 ID:z9BPyxoo

唯先輩の部屋。
唯先輩の香りを肺いっぱいに吸い込む。……何だか変態みたい。

ひとまず乱れたベッドや散らかっている服、漫画を綺麗に整えることにした。
全くだらしない人だ。受験生は漫画を読む暇なんてないでしょうに。
ふと数枚の写真が貼られているボードに目がいった。ボードの中心に張られている写真は唯先輩と私のツーショット。
ちょっとうれしいな。


ひと通り片付いたところで私は唯先輩のベッドに腰掛ける。
シーツをなでながら、私はこの1ヶ月を振り返る。
二人だけの秘密は一週間ももたなかった。でもすぐにみんなが祝福してくれた。
相変わらず他の人達が私達に向ける目は冷たくて疑いに満ちたものであったが、これまでやってこれたのはみんなのおかげ。
だから後は私達の決意次第なんだ。

でも、どうすればいいんだろう。
何かが欲しかった。唯先輩と共に歩んでいくことを決定づけてくれる何かが。
シーツをなでる手を止め、シーツにじっと目を凝らした。
私達が異性だったら……。

ぶんぶんと首を横に振る。
唯先輩はそんなことをしたいなんて思ってはいないはずだ。これまで何度か同じ布団の中で寝たことはあるが、せいぜい抱き合う程度だった。
それで満足だった。……満足だよ。

シーツから目を逸らすと、ギー太と目が合った。
私は腰を上げ、ギー太を手に取った。
前はギー太に嫉妬したりなんて恥ずかしいこともしたけど、思えば唯先輩がギー太に出会わなければ唯先輩と私の出会いもなかったかもしれないんだ。
ありがとね、ギー太。

唯「あずにゃん浮気ぃ?」

梓「なっ!?」

唯先輩がすぐ後ろに立っていた。物音がしなかったから気付かなかった。

唯「ご飯できたよ、行こっか」

梓「もう、驚かさないでくださいよ」



181 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:24:30.10 ID:z9BPyxoo

唯「うぅ、やっぱり中辛はつらいよ」

梓「そうですか?とってもおいしかったです。ごちそうさまでした」

唯「えへへ、褒められちゃった。私の料理を毎日食べたいって思ってくれたかな?」

梓「毎日はカンベンですね」

唯「えぇ~!?」

梓「私だって料理くらいできますよ」

唯「あ、なるほど~。じゃあ奇数の日は私、偶数の日はあずにゃんってことでいいかな?」

梓「それじゃあ唯先輩ばっかり疲れちゃいますよ」

唯「じゃあ朝食とお弁当はあずにゃん、夕食は私で」

梓「毎日それだと辛いですから、たまには交代しましょうね」

唯「う~ん、朝はつらいしなぁ」

梓「私が起こしますから」

唯「頼むよ~」

二人で食器を洗った後、私達は自然とこんな話をしていた。
まるで、同棲か結婚を控えたカップルのようだ。



182 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:25:22.03 ID:z9BPyxoo

唯「いってらっしゃい、あなた」

梓「唯先輩は仕事しないんですか」

唯「う~ん、何ができるのかなぁ」

梓「……ミュージシャン、とか」

唯「さわちゃんに却下されたよ」

梓「私が言っても却下されそうですね」

唯「あずにゃんならなれるよ」

梓「いえ、現実的に考えましょう」

唯「じゃあ、さわちゃんみたいに高校で音楽を教えるとか」

梓「あ、それはいいかもしれませんね。桜高に戻って来て後輩に指導するのもいいですね」

唯「軽音部が廃部になってなければね」

梓「……大丈夫です。絶対に阻止しますから」

唯「じゃああずにゃんはそれで」

梓「あれ、唯先輩の話じゃなかったんですか」

唯「私はそうだなぁ。幼稚園の先生とか?」

梓「いいですね。きっと子供たちにも大人気ですよ」

唯「そうかな?」

梓「ええ。ちょっと頼りないですけど」

唯「ひどーい」

おままごとみたいなものだが、私達は和やかに未来予想図を語り合った。
でも唯先輩はそろそろ勉強した方がいいんじゃないかな。



183 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:26:17.69 ID:z9BPyxoo

唯「そして20年後や30年後には」

梓「唯先輩。そろそろ」

唯「20年後、30年後……」

梓「唯先輩?」

唯「あずにゃん」

この時私は和先輩との会話を思い出した。今日の昼休み、唯先輩は恐らくこんな顔をしていたんだ。

唯「20年後、30年後、私達は一緒にいるのかな?」

梓「そんな先のことはわかりませんよ」

唯「あずにゃんは一緒にいたい?」

梓「当たり前です」

唯「でも私達、女同士なんだよ」

梓「お金さえ稼げればなんとかなります」

唯「でも、他の人から冷たくされるかもしれないよ。今だって」

梓「唯先輩、辛いですか?」

唯「……正直、ね」

唯先輩は目を伏せた。どこか疲れた表情をしていた。

唯「1ヶ月でこれなんだもん。何年ももつかなぁ」

唯先輩のこんな表情は初めて見た。
誰からも好かれる明るい性格の唯先輩には初めての経験なのかもしれない。人から奇異の眼差しを向けられるのは。
私だって辛い。
でも、私は決心したんだ。

梓「私がいます」



184 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:27:19.43 ID:z9BPyxoo

唯「えっ?」

梓「私は絶対に唯先輩の隣にい続けます。私が唯先輩を守ります」

今の私には恥ずかしいという感情すらなかった。だって本心なんだから。

唯「そんなこと……証明できないでしょ」

唯先輩は目に涙を溜めている。

唯「あずにゃんもきっとそのうち疲れて私のことな…んか……?」

私は唯先輩を優しく抱きしめた。左手で頭をなで、右手で背中をさすった。

梓「私のこと信じられませんか」

唯「そ、そんなわけじゃ」

梓「確かに未来の私達を保証するものは何もありません。今だって辛いのにましてや未来なんて」

唯「私は怖いよ」

梓「でも、私達は今本気で愛し合っていますよね。違いますか」

唯「違わない」

梓「この気持ちがなくなると思いますか」

唯「なくしたくないよ」

……あれを提案したら、唯先輩はどう思うだろうか。あれをすれば私たちが愛し合った証ができるはずだ。女同士でもそうなのかはわからないが。
でも、このまま何もせずに終わるなんてやだ。
私は唯先輩の傍にいたい。

梓「唯先輩、今日は一緒に寝ませんか」



185 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:28:46.53 ID:z9BPyxoo

唯「え、いいけど」

唯先輩はきっとただ寝るだけだと思っているんだろう。でも違いますよ。

梓「唯先輩に私の跡を残させてくれませんか?」

唯「えっ?」

唯先輩はどういう意味なのか頭を巡らせているようだ。やがてその意味に気付いて赤面した。唯先輩にもさすがにそういう知識はあるのか。

唯「で、でも女同士でどうやって?」

梓「私だってそんなに詳しくは知りませんよ。その、指を入れたりとか、くっつけ合ったりとか、じゃないですか」

唯「そ、そもそもどうして?」

梓「恋人しての証です」

唯「証?」

梓「恋人じゃなきゃそんなことしないでしょ」

唯「それは……そうだけど」

梓「唯先輩、私は本気で唯先輩が好きなんです。それを示すにはこうするしか思いつかないんです」

私は唯先輩を強く抱きしめた。
強引かもしれない。でもちょっとくらい強引じゃないとこれからやっていけないと思う。
精神的にタフだと思っていた唯先輩がこんなに弱っているんだ。
私が引っ張らないとダメなんだ。

別に行為自体にそれほどの意味があるとは思っていない。
ただ、不安を消すくらいならできるんじゃないかと思うんだ。唯先輩の不安も、私の不安も。

唯「……わかった」

梓「唯先輩?」

私は唯先輩を腕から解放した。

唯「その前にお風呂かな。準備して来るね。あずにゃん、先に入っていいよ」

唯先輩は私に顔を見せることなく部屋を出て行った。



186 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:29:27.32 ID:z9BPyxoo

私はベッドに腰掛けて唯先輩が風呂からあがるのを待っていた。

唯「おまたせ。ん?メール?」

梓「はい、先輩達にです」

唯「何かあったの?」

梓「いえ、明日の集合時間を9時から10時に変更しないかって提案を」

唯「どうして?」

梓「遅くまでかかるかもしれないじゃないですか、今夜」

唯先輩はまた赤面したが、顔を見られたくないのかすぐに私に背を向けた。

梓「もちろん、皆さんにそういう理由だって伝えたわけじゃないですよ。唯先輩がどうしても深夜映画を見たいって聞かないからって伝えました」

唯「あずにゃんの意地悪」

そう言うと唯先輩は振り向いてベッドの方に歩いて来た。
そしてベッドの向こう半分に身体を寝かせた。また私に背を向けていた。
私も身体を横にし、唯先輩の背中に身体をぴったりくっつけた。

梓「やっぱり、怖いですか」

唯「うん」

梓「しょうがないですよ。初めてなんですから……」

唯「そっちじゃないよ」

梓「えっ?」

唯「これからのこと。私たちが大人になってからのこと。先のことが全然見えなくてすごく怖いよ」

梓「唯先輩」

私は目の前の震えた身体に腕を回した。震えが少し弱まった気がする。

唯「でも、私まだまだ頑張れる気がするよ」

梓「どうして?」

唯「だって、あずにゃんが一緒に来てくれるんでしょ」

振り向いた唯先輩の顔はよく見えなかった。
だってすぐにくっついちゃったから。



187 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:30:20.00 ID:z9BPyxoo

「あずにゃん」

「はい?」

「どうしたの、ボーっとしちゃって。眠い?」

「いえ、ちょっと考え事を」

「そっか。でもそろそろ準備しなくていいの?」

時計を見ると既に6時半だった。

「じゃあこれを飲んでからです」

「そうだね」

唯先輩はホットミルク。私はブラックコーヒー。

「しばらくあずにゃんと頻繁には会えなくなるね」

「受験ですから。しょうがないです」

「だから今日はいっぱい思い出作ろ」

「ええ、そうですね」



188 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:31:26.84 ID:z9BPyxoo

私はコーヒーを口に含む。苦い。
まだ器には半分ほど残っているが、飲み切れるか不安だ。

隣の唯先輩を見ると半開きの目でミルクを飲んでいる。
唯先輩には甘いものが合う。子供っぽいから、ではない。

いつも私をとろけさせる甘い香り。
気負いすぎの私を優しく鎮めてくれる優しい腕。
私のすべてを受け入れてくれるあたたかい笑顔。
私が一番守りたいもの。
勝手だけど唯先輩にはずっとホットミルクを飲んでいてほしい。

私はコーヒーを口に流し込むことにした。

「あずにゃん」

唯先輩はカップから口を離していた。

「なんですか」

「カップ貸して」

「? はい」

唯先輩にカップを手渡した。
すると唯先輩は自分のミルクを私のコーヒーに入れ、スプーンでかき混ぜた。

「なにしてるんですか、唯先輩」

「えへへ、あずにゃん」

唯先輩はミルク入りコーヒーを一口飲んだ。

「一緒に飲もうよ、あずにゃん」

あぁ、やっぱり敵わないな。

私もミルク入りコーヒーを一口飲んだ。


END



189 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 06:31:56.87 ID:z9BPyxoo

全然牛乳関係なくてすまんね




190 名前:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします :2010/10/31(日) 08:36:34.60 ID:fNZ/8VQo

乙です






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唯「牛乳!」#7
[ 2010/10/31 12:55 ] 日常系 | 唯梓 | CM(0)

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