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梓「そらとぶおもい!」 【非日常系】


http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1320077019/l50




1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:03:39.62 ID:gsaexmsW0

◆登場人物◆


中野 梓ちゃん。今回の主人公。
桜が丘高校の軽音部で部長をつとめる、ツインテールが可愛い女の子です。
彼女には、誰も知らない、梓ちゃんさえも知らない秘密があるとか。


平沢 唯先輩。梓ちゃんの恋人。
可愛いものと甘いものと、ギターのギー太が大好きな可愛い女の子です。
梓ちゃんいわく、あったかくてふわふわで、甘い匂いがするそうで。


???。近所のうわさになっています。
奇声を上げて、つけまわして、襲うらしいです。



それでは、はじまりはじまり!





3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:04:40.77 ID:gsaexmsW0

ここはとある桜が丘。
その一角に、一組のラブ×2カップルが住んでいます。

梓「ああ唯せんぱい、あなたは今どこで何をしているんでしょうか?」

おや…どうやら今は、愛する二人は別れ別れ。遠距離恋愛の真っ最中のようです。

梓「だけど私は寂しくなんかありません!だって……」

梓ちゃんの手には毎日届く唯先輩からの手紙。
ピンクの便せんにハートの封がかわいらしいですね。
開いて見れば、カラフルでかわいい絵といっしょに、梓ちゃんへのメッセージがたくさん!
もちろん筆ペンで書いてありますよ。

…内容は、二人だけの秘密です。

梓「唯せんぱい…………きゅんきゅん♪」

梓ちゃん、とっても嬉しそう。
手紙をなんども読み返すうちに、時計は夜遅くを指していました。そろそろ眠る時間ですね。
梓ちゃんは、今夜もあたたかい心で眠れそうです。

梓「ふわぁ~…おやすみなさい、唯せんぱい」

おやすみなさい。

――――――
――――
――



5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:06:10.98 ID:gsaexmsW0

梓「zzz...」

……その日、いいえ。その日も。
梓ちゃんは夢を見ました。

~ ・ ~ ・ ~ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・

梓「ふんふーん♪」すいー

まわりにはきらきらお星様。足もとには住みなれた町。
そうです、梓ちゃんは夜空を自由に飛びまわる風になっているのです!

梓「お星さま、こんばんわ!」

星「きらきら」

梓「からだがふわふわで、なんだか心も浮き上がるみたい!」

梓「こんなに気分がいいと、子供みたいに大きな声で歌を歌いたくなっちゃう!ぶぶえー♪」

星「やめて!」

空を飛べる梓ちゃん。彼女がすることは……言うまでもありませんね。

梓「唯せんぱーい」

暗い夜じゃ、どこがどこだかまるでわかりません。地図だって読めません。
でも大丈夫、大好きなひとの場所はそんなものなくたってわかります。
だってそうでしょう?大好きなんですから。



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:07:24.74 ID:gsaexmsW0

梓「唯せんぱーーい!」

びゅうっ、梓ちゃんは風のよう!今の彼女には鳥や車、猫バスだって追いつけやしません。
だから、山を越え、川を越え、町を越え。そして先輩たちが通う大学を過ぎて……、
飛んで。飛んで。また飛んで。
ほら、見えてきましたよ。

梓「見つけた!唯せんぱいの寮だ!」

部屋だってすぐわかりますよ。何度もこうやって遊びに来てますから。
部屋には明かりが点いていますね。

梓「唯せんぱい…」

明かりの先には唯先輩。仲良しの先輩たちも一緒です。
楽しくおしゃべりしているようです。

梓「今日もこんな遅くまで起きてる…せんぱいたち、みんな不良です!」

梓「でも、元気でよかった…」

梓「唯せんぱいかわいいな…あっ、笑った!」

そうやって、少し離れて唯先輩たちをしばらく見ています。
だけど会いに行くようなことはしません。なかなかそういうことは思い付きません。
夢ってそういうものなんです。



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:10:12.37 ID:gsaexmsW0

さて、梓ちゃんが唯先輩を見ている間、少しだけ二人の思い出を覗いちゃいましょうか。
梓ちゃんが大好きな唯先輩。素直になれない梓ちゃん。
二人にはそれはそれはたくさんの、いろいろなことがありました。
聞くも涙、語るも涙のものがたりです。

でもそれは今回のお話には関係がないので今度にしましょう。疲れちゃいますからね。
だから最後だけ話します。いまから季節が三つほどさかのぼった頃。

梓「こっ、これ受け取ってください!!」ひゅがっ

唯「わあっ、チョコレート!チョコレートだぁ!わーいっ♪」びりばばりー

梓「せんぱい…そのちょっとビターで、
  でもとっても甘い私のスイートハートを受け取ったってことは」

梓「もしかして…わ、私と付き合いたいとか思っちゃってますか?」

梓「しょ、しょうがないですねぇ。
  どーしてもっていうならOKしてあげてもいーんですよ?」

梓(言っちゃった……どきどき///)

唯「んむ?いいよー」

梓「お……」

梓「おにゃんこぽーーーーーーーーーーーーーーん!!!!」

唯「おいひー」もすもす

そうして愛し合う二人は晴れて恋人同士になりました。感動的ですね!



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:13:00.73 ID:gsaexmsW0

二人が付き合い始めてからは、梓ちゃんはずいぶん素直になったものだから、
人目をはばからずいつでもイチャイチャ、どこでもイチャイチャ。
「私がいないとだめなんだから…」なんていって、
なんと学校で手まで繋いじゃうんですよ!

★。.:*:・'゚☆。.:*:・'゚ 。.:*:・'゚☆。.★。.:*:・'゚☆。.:*:・'゚ 。.:*:・'゚☆。.


唯「あずにゃん……ずっと一緒だよ」きりっ


梓「はい、唯せんぱい……」


★。.:*:・'゚☆。.:*:・'゚ 。.:*:・'゚☆。.★。.:*:・'゚☆。.:*:・'゚ 。.:*:・'゚☆。.

このやり取りだって何回やったことでしょう。数える人なんていやしません。
でもたくさんやってることだけは確かです。
こうして桜が丘は、みんなの吐いた砂ですっかり砂漠化が進んでしまったとか。
そんなことはお構いなしに二人はラブ×2でした。
おしまい、めでたしめでたし。

なーんて、世の中なかなかうまくいきませんよね。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:16:12.35 ID:gsaexmsW0

年の差カップルには、いつだって苦労がつきものです。
唯先輩は、大学というところに行って、大人になるための勉強をしなければならないのですが、
なんとそれは、電車をたくさん乗り継がなければいけないほど遠いところだったのです。
引越しの当日。

唯「あずにゃ~~~~~ん!!」

梓「唯せんぱいーっ!」

ぶおーーーん。
トラックは無情にも唯先輩を連れ去ってしまいました。ああ無情。レ・ミゼラブルです。

梓「めそめそ…」

泣かないで梓ちゃん。
たった一年の辛抱です。
ただ、梓ちゃんには唯先輩のいない日々がまるで永遠のように感じられることでしょう。
だけどそれも愛の試練!

梓「私、必ずむかえに行きますからーーーーっ!!」

梓ちゃんは決意を新たにし、必ず唯先輩と同じ大学に行くことを誓いました。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:17:16.11 ID:gsaexmsW0

でも、心配事はそれだけじゃありません。
いまこの町には……おっと、日が昇ってきてしまいました。
梓ちゃんは早起きですから、そろそろ起きる時間です。


・ ~ ・ ~ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~ ・ ~


梓「ふぁ~……。んーーーっ!いい朝!」

おはよう、梓ちゃん。
今日は日曜日、晴れ。学校はお休みです。
日曜日といえば、友達と遊びに行ったり、お買い物に出かけてみたり、一日中ごろごろしてみたり。
梓ちゃんもふつうの女の子ですから、そんな日もありますが、
今日は用事があります。
ぱたぱたと身の回りのことを済ませた梓ちゃん、部屋で机に向かいます。お勉強でしょうか?

梓「さて…お返事しなきゃ!」

そう、手紙の返事を書かないとですね。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:19:16.31 ID:gsaexmsW0

梓「ふっでぺーんふっふー!」

梓ちゃんは手紙を書きます。週に三日は書きます。
もちろん梓ちゃんだって筆ペンです。
本当はもっとたくさん書きたいけれど、お財布にあまり優しくないから週に三日だけ。
そうして身の回りで起こったことを報告したり、逆に唯先輩の話を聞いてみたり、
おいしいお菓子を教えたり、そして時々愛をささやいてみたりもします。

だけど、いちばん大事なことは言いません。
唯先輩に心配させまいと、
手紙の梓ちゃんは少しだけ強がって昔の梓ちゃんに逆戻り。

やっぱり手紙の内容は、二人だけの秘密です。

梓「おーげーんーきーでーすーか。わーたーしーはー……」

……だけど、聞こえてくるのは仕方がないですよね?



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:21:00.79 ID:gsaexmsW0

  でぃあー 唯せんぱい。

  お元気ですか? 私は元気です。羽虫がうっとうしい季節になりましたね。
  うっとうしいといえば、最近身の回りで変わったことが起こっているので教えちゃいます。

  この間、ポストに針のない注射と、ぐりせりん(たしかバクハツする薬です!)が入ってました。
  もしかしてあとでお金をとるサギでしょうか!?
  あと、近所でUMAが出るってうわさです。なんでも、気味の悪い声を上げて空を飛ぶらしいです。
  獣がしゃべるような声で、ひたひたと人をおいかける、とも聞きます。
  ほかにも動物をおそうとか…なんでもありですね。
  私も、最近誰かに見られてるような気がします。

  だけど怖いなんてちっとも思ってないので心配しなくてもいいですよ!
  ほんとうですよ!

  唯せんぱいのまわりでは変なことはありませんか?
  せんぱいってば、私がいないとすっごく頼りないので、きっとUMAに狙われてしまいます。
  もしあやしいUMAを見つけても、ついていっちゃいけませんからね!

  それに、夜は冷えるので、唯せんぱいが夜更かしして、カゼをひかないか心配しています。
  だから、手紙にきのこをそえて送ります。おなべにして食べてください。
  またお手紙します。
                            ゆあー あずさ

  P.S. 好き嫌いしちゃダメですよ!
  さらにP.S. あ、そうそう。こないだ友達が立てかけたほうきと間違えられて――


……そうして今回も、たくさん書いてしまったみたい。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:24:32.06 ID:gsaexmsW0

さて、筆ペンが乾いてしまいそうなほどたくさん書かれた手紙。
お気に入りの黄色い便せんにいれて、これもお気に入りの黒ねこシールで封をします。
きのこを一緒に入れても、なんとか切手代は120円で収まりそう。
それじゃあさっそくポストに行きましょう!

梓「っと、その前に」

おやおや、梓ちゃんはまたあたらしい手紙を広げて何かを書き始めたようです。
もう封はしてあるのに、どうするのでしょうか?

梓「……よしっ」

結局梓ちゃん、唯先輩に送る手紙のほかに、もう一枚だけ手紙を書きました。

梓「いってきまーす」



22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:27:29.82 ID:gsaexmsW0

休日の静かな住宅街を歩く梓ちゃん。

梓「……」きょろきょろ

まるで何年かぶりに外に出た引きこもりのようにおどおどしています。
だけど、それは梓ちゃんが根暗で友達が少ないこととはあまり関係ありません。

梓「ぶるぶる…UMA、出ないよね……?」

梓ちゃんはUMAに怯えていたのです。
今は、たとえ梓ちゃんのような根暗で友達が少ないような子でなくても、みんな不安に思うのです。

この町の心配事、それはUMAです。先ほどの手紙にも出ていましたね。噂によると、
気味の悪い声を上げて空を飛び、
獣がしゃべるような声で人をつけまわし、
動物を襲うとか。

名前はありませんが、少なくとも空を飛ぶ変質者はいないので、UMAと言われているようです。
ただのくるくるぱーな人が言いふらしているだけの妄想に思えなくもないですが、
それを見た、あるいは聞いた人があまりにも多くて、
実際に鳥や動物が何者かに食い殺されているのです。

だから学校でも、なるべく一人にならないように注意を呼びかけていますが、
いつだって誰かといるのは難しいですよね。
特に梓ちゃんのように根暗で友達が少ないような子の場合は。



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:29:37.49 ID:gsaexmsW0

梓「ぶ、ぶぶえ~~~♪」

不安な気持ちをごまかすように、いい年して大声で歌を歌う梓ちゃん。
端から見れば相当恥ずかしい光景ですから、他の人は真似しちゃだめですよ。

だけど梓ちゃんは知らなかったのです。
何か悪いことが起きるとき、
いつも巻き込まれるのはそういう行為をする人だということに……


ひた。ひた。

梓「てじえっ!!?」

ひた。ひた。
いつの間にか、何者かが梓ちゃんの後をつけていたのです。

梓(どどどど、どうしよう!?)

すたすたすたすた、気づかない振りして足を速める梓ちゃん。
ひたひたひたひた。だけど後ろの足音は少しも離れてくれません。
それどころか、

?「にゃん…にゃんにゃん…」

まるで獣のような声がすぐ後ろから聞こえてくるではありませんか!



26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:33:24.39 ID:gsaexmsW0

間違いありません。
巷でうわさのUMAが梓ちゃんを狙っているのです。
どうする梓ちゃん!

梓(早く逃げないと…)

梓(きっとUMAに頭からバリバリ食べられちゃうよーっ!)

梓「こうなったら……」

もう形振りかまっていられません。
やるべきことは一つ!

梓「ひーーーーーーん!!」

梓ちゃん、脱兎……脱猫のごとく駆ける!駆ける!駆ける!
UMA出遅れた!必死に後を追うがトップとの差は大きい!

足にはあまり自身がない梓ちゃんですが、何とか逃げ切ることができそうです。
それというのも、梓ちゃんはただがむしゃらに走っていたわけではなく、
人の多い大通りを目指していたのです。

そしてとうとう、背後から聞こえる足音はなくなりました。

梓「ひどい目にあったよー…」

楽しい日曜日のはずだったのにね。
だけどさすがの梓ちゃん、手紙はちゃんと帰りにポストへ入れました。
もう一枚の手紙は……?いつの間にか梓ちゃんがどこかへやってしまったようです。



27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:34:46.17 ID:gsaexmsW0

それからしばらくは、

梓「きゃーーっ唯せんぱいーっ!」ごろごろごろごろ

手紙を読んで。

梓「おーげーんーきーでーすーかー」

手紙を書いて。

ひたひた。

梓「ひ~ん」たたた

追い回されて。

梓「唯せんぱい…えへへ」

夢を見る。

・ ~~~~ ・ ~~~~ ・ ~~~~ ・ ~~~~ ・ ~~~~

こんな風にちょっとスリリングだけど幸せな日々を繰り返していました。
しかし、ある日のこと。
梓ちゃんの身に、たいへんな事件が起こったのです。



28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:39:18.68 ID:gsaexmsW0

ざぱーん。 ざっぱーん。

梓「……」

海です。
世が世ならきっとここで罪の告白をしているでしょう。
梓ちゃんが何をしにここに来ているのかというと……

梓「唯せんぱい。本当はさみしい、あいたい…だけどそれは言っちゃだめ」

梓「だから、こうやって紙飛行機にしてそんな気持ちはポイします!」

梓「でも、ちょっとだけ。
  ちょっとだけこの紙飛行機が唯せんぱいに届くかも、なんて……きゃっ」

そうです。あの一枚だけ送らなかった手紙。
そこに一番の、会いたいの気持ちを込めては、ここに捨てに来ていたのです。
ロマンチストですね。



29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:40:17.91 ID:gsaexmsW0

梓「どぅーゆーびりーびんらーぶ!」

えいやっ!と腕をひとふり!
どんなに力いっぱい飛ばしたって、紙飛行機は大して飛ばないのだけれど、
そんな乙女心は応援したくなりますね。

そのとき。びゅうっと強い向かい風が吹きました。
海へと飛び立つはずだった紙飛行機は、今や梓ちゃんのずっと後ろ。
人生と同じで、ものごとはなかなかうまくいきません。

……本当に。


?「いぇーっさいじゃっふぃーりんなーう!」

梓「えっ…?まさか唯せんぱ」

男「『あいたいです』だなんて…ぶひひ、愛の奇跡見せられちゃったのにゃん…!」

梓ちゃんの後ろには、醜く太り異臭を放つ男が黒ずんだ歯をむき出しに立っていたのです!

梓「ひぃぃぃぃ!!!!」

その醜悪さ、言葉に表すことができるでしょうか!いいや、できない!



31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:43:05.37 ID:gsaexmsW0

男「ぼくもずっと会いたかったのにゃん!これは相思相愛!さっそくにゃんにゃんなのにゃん!」

手には紙飛行機。なんということでしょう、大事な唯先輩への手紙は汚されてしまいました。

男「tsukuruyo!miracleにゃん!あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!!」

もうお分かりですね。
突然現れたこの男、このごろ梓ちゃんをずっとつけまわしていたUMAの正体です。
それがこんな名状しがたきものだったなんて。
UMAがチュパカブラであったほうがどれほど良かったでしょうか!

梓「いやーっ!はじめては結婚するまでとっとくって決めてるのーっ!」

ひた。ひた。 ぴちゃ、ぴちゃ。
汚らしい笑顔のまま、じわりじわりと梓ちゃんににじり寄る男。
男の古い靴からは油分が染み出し、歩くたびに湿った音とともに異臭が広がります。

男「そこはぼくと唯ちゃんで前と後ろを使えば、ぼくは後ろを使えてしかも唯梓の絡みを見られる」

男「まさに、一石二鳥にゃん!あずにゃんだって唯ちゃんとエッチできるしwin-winの関係にゃん?」

梓「ひっ…」

炎天下に放置されたカニの10倍を軽く凌駕するほどの悪臭と涎と一緒に出てきた言葉は、
それに負けず劣らずの、醜い心の表れでした。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:45:18.83 ID:gsaexmsW0

梓「こっち来ないでよー!」

梓ちゃんが一歩下がれば、男が一歩にじり寄る。梓ちゃんが二歩下がれば、男が二歩にじり寄る。
助けを呼ぼうにも、手紙を捨てるために、じっくりいい場所を選んだため、
まったく人の気配はありません。
…ふいに、男が口を開きました。

男「ぼくがこんなに紳士的に接してるのに、あずにゃんは少しも話を聞かないにゃん…」

男「仕方ないのにゃん…一度あずにゃんには落ち着いてもらう必要があるのにゃん」

びちゃっ。びちゃっ。びちゃっ!
男は一気に詰め寄り、梓ちゃんにつかみかかろうとします。

梓「やだやだー!助けてーーー!!」

梓ちゃん、逃げながら石や木の枝を投げて抵抗しますが、とうとう追い詰められてしまいました。
もう後ろは崖、逃げ場はありません。

そのときです。



36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:47:45.24 ID:gsaexmsW0

がらっ。


はじめ、この音に梓ちゃんも男も気づきませんでした。
必死の二人には、ここがどこであるかなんて、ささいなことだったのです。

そうです。二人が立っていた足場は、まるで切り取られるかのように地面を離れて、
梓ちゃんも、男も足を踏み外してしまいました。

はるか下は岩肌の見えるあらぶる海。落ちれば無事ではすまないでしょう。
梓ちゃん絶体絶命!
最後に浮かんだ顔は…

梓(唯せんぱいっ……!)



ふたつの人影が、海へと消えました。



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:52:04.57 ID:gsaexmsW0

――――――
――――
――



梓ちゃんは、夢を見ました。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ・ 



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:53:32.59 ID:gsaexmsW0

梓ちゃんはいつものように、空を飛んでいます。
いつもと違うのは、お日様が全部沈んでいないということ。

梓(…………あれ?)

梓(私、なにしてたんだっけ…)

まるで休日の寝起きみたいな、ぐるぐるの頭で考えてもなんだかよくわからない。
だけど、赤く明るい空をふわふわしているうちに……

梓「……私……海に落ちて…」

梓「……」

梓「……そっか、私」

梓「死んだんだ」

全部、思い出してしまいました。



40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:55:13.89 ID:gsaexmsW0

梓「これから私、どうしたらいいんだろう…」

何をすればいいのか分からなくなって、一人ごちても周りにあるのは空ばかり。
答えは返ってきません。それに、死んだことのある人なんていませんから。

とにかく、梓ちゃんは、ふわりふわりと宙を舞います。
徐々に暗くなる町並みを見下ろして、
山を越え、川を越え、町を越え。
飛んで。飛んで。また飛んで。
……見えてきましたよ。

いつもと状況が違っても、できることはまた同じ。

梓「唯せんぱい…」

いつもより早く、いつものように、唯先輩の部屋を覗きます。
いつもにぎやかなその場所は、いつもと違ってとても静かで、
たった今明かりがついた部屋の、少し開いた窓からは、
いとしい人の姿が見えました。

やはり少し離れてそれを眺める梓ちゃん。
だけど、心は別のことを考えていて、とても悲しそう。

梓(きっと…これが最後の夢なんだ)

梓ちゃんはそう予感していたのです。



41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 01:57:59.48 ID:gsaexmsW0

だから、

梓(せめて夢の最後まで唯せんぱいと一緒にいよう…)

梓「唯せんぱい…」

梓ちゃんは、唯先輩の顔のすぐそばまで顔を寄せました。
たとえ気づいてもらえなくても一緒にいたかったのです。

気づかれることはない…はずなんですが。


唯「あずにゃん…?えっ、あずにゃん!?」

梓「え…」

唯「やっぱりあずにゃんだー!って、あずにゃん!?!?」

梓「うっ、うぇぇ…っ、しぇんぱいぃ…」じわっ

梓「わぁーーーん!!」

唯「お、おぉぅっ」

不安な気持ちと、ずっと会いたくてやっと会えた気持ちと、とにかくいっぱいになって、
梓ちゃんはとうとう唯先輩の胸に飛び込んで、泣き出してしまいました。



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 02:01:24.99 ID:gsaexmsW0

梓「うっく…へんなひとが、ゆーまでね、うみで、おっこちて、わたしねっ、ひっく、こわくてっ」

だけどおかしな話です。
梓ちゃんは死んでいなかったのでしょうか。
確かに梓ちゃんはここまで飛んできましたし、現実に唯先輩の胸に抱かれています。
しかし、間違いなく海には二人、落ちたのです。もちろん他に人はいませんでした。
では何が起こったのでしょう?

唯「だ、大丈夫だよ!大丈夫だから落ち着くんだあずにゃん!ひっひっふーだよ!ひっひっふー!」

それに、梓ちゃんをなだめる唯先輩も、少し様子がおかしいのです。
答えは唯先輩が知っていそうですね。

梓「は、いっ。ぐすっ。ひっ、ひっく、ふぅ…うっく、ひっく」

唯「ひっひっふー、ひっひっふー。……ふー」

唯「あー…あの、えーっとね、あずにゃん。
  ゆっくり話は聞くから、その。ひ、一つだけ聞いていい?」

梓「うっんっ…ひっく」

唯「えーと……すっっごく言いにくいんだけど……」

唯「あずにゃん、体……」

唯「どこに忘れてきちゃったの?」



44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 02:04:37.65 ID:gsaexmsW0

同じころ、ところかわって桜が丘。


男「ひどい目にあったのにゃん…体は血まみれ、腕も変な方向に曲がってるのにゃん…」

なんと、男はしぶとくも生きていたのです。残念ですね。

男「そしてぼくは見たのにゃん!海に落ちる直前、あずにゃんの首が空を飛ぶのを!!」

男「狙っていた子が思わぬクリーチャーで、ほんの…ほんの少しだけショックにゃん……」

男「……だけど逆に考えたら、ひひひ」

男「可愛くない顔の女をさらって首を切り取って、上をあずにゃんにすれば…ひひっ」

男「あずにゃんのいろんなあにゃるが愉しみ放題にゃん!!ぼくって天才なのにゃん!!」

?「……」てくてく

男「あれは…生首があるいてるのにゃん」



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 02:06:48.84 ID:gsaexmsW0

?「……」てくてく

男「間違いない!愛は奇跡を起こすのにゃん!さっそく生首あずにゃん確保にゃん!!」

梓「…」くるり

男「がっちゃ!!今度は問答無用なのにゃん!!」

梓「……デス」

男「あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!!」

梓?「ヤッテヤルデス」

男「え――


男の行方は誰にもわかりません。



47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 02:08:54.15 ID:gsaexmsW0

さて、戻りまして唯先輩と首から上だけの梓ちゃん。
唯先輩はひざの上の梓ちゃんをなでてあげています。なんだか甘い香りがしそうな空気ですね。

唯「そっかぁ、そんなことがあったんだねー。怖かったねあずにゃん、よしよし」

梓「ぐすっ…」

唯「きっと寂しかったから、ずっと首だけがこっちにきてたんだね」

唯「ダメだよあずにゃん、会いたいならちゃんと言ってくれないと!私だって会いたいのに」

梓「ごめんなさい…」

唯「でも困ったねー。体は今ごろ海の中かぁ」

唯「…よし!とにかく今のままじゃよくないよ。ちょっと待っててね?」

そういって唯先輩が持ってきたのは、大きな大きな植木鉢。
中にはペースト状の何かが入っています。くさいです。

唯「ほら。ここに入って」

梓「……これは?」

唯「おばあちゃんが言ってた!ケガしたときはネギを塗るとすぐ治るって!」

唯「それで早く体元に戻して元気になろう!」

梓「…………」



48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 02:12:21.02 ID:gsaexmsW0

唯「あずにゃん?」

梓「…いや、です」

ところが、梓ちゃんから返ってきたのは意外な返事。

唯「そんな!だって体がないとあずにゃん困っちゃうよ!?」

梓「嫌です!困らないもん!唯せんぱいの肩でお手伝いするもん!」

梓「私が唯せんぱいのかわりに歌っちゃいますし唯せんぱいの嫌いなモノだって食べます!」

唯「嫌いなもの食べてくれるのは魅力的だけど…って、そうじゃなくってー」

梓「やです、やです!私は唯せんぱいの肩にくっついて一生過ごすのっ!!」

唯「わがまま言っちゃダメだよー…」

梓「やですー!うぅーっ!!」

唯先輩が言っても梓ちゃん、先ほどのことがよほど怖かったのでしょうか、
いやいやと首を振って唯先輩の話を聞こうとしません。

梓「ぐすっ…やだもん…」

すると、唯先輩。
梓ちゃんを抱き寄せて、優しく言いました。



51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 02:15:58.87 ID:gsaexmsW0

唯「ねえ、あずにゃん」

唯「体がないと、あずにゃんと手をつなげないし、ご飯の食べさせあいっこだってできないよ」

唯「怖いことがあったなら、今度はずっと一緒にいてあげる」

梓「うぅ、でも…」

唯「それに、ぎゅってしてあげても、頭だけだとなんだかさびしいよ…」

唯「ちょっとがまんするだけだから。お願い、あずにゃん」

梓「……じゃあ、毎日おはようとおやすみ言ってくれますか?」

唯「言うよ!家にいる間はずっとお話する!」

梓「…ときどき、なでなでしてくれますか?」

唯「もちろん!髪の毛ぐしゃぐしゃになるまでやって、その後セットもしてあげる!」

梓「大好きって言ったら?」

唯「大大好きって返すよ!だから…ね?」

梓「…………」こくり

植にゃんの誕生です。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 02:17:54.53 ID:gsaexmsW0

それから……

唯「それじゃああずにゃん、学校いってきます!」なでなで

梓「いってらっしゃい、唯せんぱい!」

植木鉢の梓ちゃん、唯せんぱいの部屋でお留守番。
学校は休みになってしまったけれど、辛くなんてありません。

梓「んふふ♪」にこにこ

梓ちゃん、とってもご機嫌です。
だって、これからは毎日唯先輩にあえるんですから!

梓「はやく唯せんぱい帰ってこないかなー」

来年の春にはきっとステキな体が生えてくるでしょう。
体があれば、今よりずっとずっと、何倍も何十倍も、何百倍も幸せな毎日です。
それまでの辛抱です、頑張れ梓ちゃん!

梓「でも、ちょっとたいくつかも…」

……しばらくして、町では首が生えた植木鉢を抱えた女の子を見かけるようになったとか。



53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 02:19:00.38 ID:gsaexmsW0

唯梓「おしまい!」




54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 02:20:13.07 ID:9KM84b5P0

それにしてもこの男は分かってないにゃん
可愛くない女の顔をあずにゃんの頭とすげ替えたぐらいで
女があずにゃんになるはずがないのにゃん
頭とあずにゃんの体揃って、本物のあずにゃんになるのにゃん
顔があずにゃんなだけの別人には全くもって興味はないのにゃん

あずにゃんにゃん!あずにゃんにゃん!



55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/11/01(火) 02:22:23.13 ID:vflwAOdY0

お、おつ






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梓「そらとぶおもい!」
[ 2011/11/01 19:00 ] 非日常系 | | CM(1)

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タイトル:
NO:4254 [ 2011/11/01 20:44 ] [ 編集 ]

遂にかずにゃんも登場人物として参戦か

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