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純「将来、か」 【非日常系】


純「うい…好きだよぉ…あんっ///」 より
http://yutori7.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1278929755/




7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 20:54:57.38 ID:KNFoSdSJ0

純「将来、か」

 高校二年生の夏、十七歳の夏、青春最盛期の夏が緩やかに終わろうとしていた。
 
 頬を撫でる風は涼しくて、少し寒い。橙赤色の夕日は、宵の静寂を一層強調していた。

 カラスの鳴き声が、やけに大きく、閑静な住宅街に響き渡った。

 かあ、かあ、かあ、夕焼けの空から、落ちるように声が聞こえる。
 
 自分達の夕飯を示すかのように、
 あたりからは今夜の夕飯であろうカレーや秋刀魚の匂いがした。 
 腹の音がぐう、と鳴り、私の顔はあの空みたいに赤くなる。





10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 21:05:05.86 ID:KNFoSdSJ0

 今日は8月31日。夏休み最後の日。
 
 その日の夕刻、私―――純と、私の親友、憂は一緒に帰路についていた。
 
 今日は一日中、市民プールで遊んでいたのだ。
 
 それを主張するように、私達の手には水着の入った袋が握られていた。
 
 「楽しかったね、憂」私は何か会話しようと口を開いた。
 
 「うん………でも、明日から学校かあ」
 
 「ああ、学校か。やだよね」

 「うん。私もそう思う。学校なんて、無くなればいいのにね」



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 21:07:48.48 ID:KNFoSdSJ0

 そうだ。学校なんて、無ければいい。

 宿題も、読書感想文も、先輩とのいざこざも、大学受験も、将来も、何も考えないで済むのだ。

 天国じゃないか。極楽じゃないか。少なくとも、地獄ではないだろう。
 
 でも、学校はあるから。私達がなくなれと願っても、平然とした顔で、
 明日になったら校舎という名の口を開いて、私達を食べようとしているのだろうから。
 私達は、学校に通うことを余儀なくされる。

 将来のためか、いい大学に入るためか、自分のためか、ノートを無駄に消費して、
 資源を無駄遣いするためなのか判らないけど、私達は学校に行く羽目になってしまうのだ。

 「ねえ」私はふと気になって、憂に聞いてみた。「憂は、どこの大学に行くつもりなの?」
 
 憂はやや躊躇いがちに、でもどこか決意してるような口調で、言った。
 
 「●●大学ってとこにしようかなって、思ってるの」



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 21:10:46.84 ID:KNFoSdSJ0

 「●●大学ってとこにしようかなって、思ってるの」
 
 私は驚愕した。そう言ってしまっては失礼かもしれないが、
 憂はまだ行きたい大学すら決めてないと思っていたからだ。
 お姉ちゃんと一緒の大学がいいとか、そんなことを言ってそうだな、
 と言う先入観が、そうさせたのかもしれない。
 
 「卒業後は?なりたい職業は?」焦り気味の口調が、自分でもわかる。
 
 「あたしね、医者になりたいの」
 
 確かに●●大学は、有名な医大だ。
 
 「へえ」私は感嘆の息を漏らすことしか出来なかった。



13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 21:13:15.22 ID:KNFoSdSJ0

 「純ちゃんは、何になりたいの?」

 「私、私は……」
 
 何故私は躊躇しているのだろうか。
 
 確かに私の志望している大学の偏差値は、
 憂の●●大学より劣るが、何も低いわけじゃない。むしろ、高いほうだ。
 
 だが、私のちっぽけで意地汚いプライドが、志望校名を言わせなかった。
 
 何だか、負けた気持ちになっていたのと相成って、私は嘘をついてしまった。

 良心の呵責が、憂と目を合わせることを許さなかったけど。
 
 「まだ、決めてないや」
 
 私は伏し目がちに言った。嘘だとばれませんように、と今はまだ見えない星に願いながら。
 
 憂はそっか、と呟いた。それっきり、私達の間には沈黙が訪れた。



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 21:15:32.85 ID:KNFoSdSJ0

 星はまだ見えず、月も姿を現さないが、空は淡い藍色に支配されつつあった。あと少しで夜になる。

 その後朝が来て、学校が始まる。帰ってきたら、今と同じ色の空を見るだろう。
 
 その繰り返しが何度も何度も続いて、やがて私達は大人になっていくに違いない。
 
 「なんか、むなしいね」憂の呟きに、私はそうだね、と答えた。何かとっても、やるせない。
 
 私の家は、もう近くだった。少し歩いて、十秒と経たずに家の門の前についてしまった。

 ピンポーンとインターホンを押し、「お母さん、開けてー」と言うと、
 
 すぐに玄関のドアが開いた。母親が出てきた。
 
 「もう!遅かったじゃない」と言うのをごめーん、と私は棒読み気味に言った。

 いいじゃん、門限なんて無いんだし、夜遊びするような相手なんていないしね、と心の奥底で毒づいた。



15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 21:18:39.06 ID:KNFoSdSJ0

 玄関で靴を脱ぎながら、私は思った。多分十年後には、私はこの家を出て行ってしまっているだろう。

 いや、二、三年後にも居なくなってるかもしれない。だって嫌でも、大人になるのだから。

 行きたい大学は、そう自慢できるほどではないし、将来も憂みたいにはっきりしていなくて、
 
 曖昧模糊としていて、漠然とし過ぎていて、常時、暗中模索状態だけど。

 だけどそれでもいつかは大人になって、親離れ……巣立ちをしなくちゃいけない時が来るのだろう。
 
 でも今は、高校二年生の今は、まだ、子供でいられるこの時分だけは、友達と遊んでいたいから。

 下らないことでわいわいして、テストどうだったーって見せあいっこして、お
 
 祭りに行ったり、現実的なところで、プリクラとったり。
 
 ――――――せめて今、この瞬間は、憂と………親友といられる幸せを、かみしめたいから。

 もうご飯出来てるわよ、という呆れ気味の母の声を背にしながら。
 
 満面の笑顔を浮かべられるよう最善の努力を尽くして、私は語を継いだ。

 「また明日ね。憂」
 
 と、私は憂に顔を向け、言った。

 「―――うん。また、明日」

 と憂も、五月晴れのような笑顔を顔を私に向けて、言った。



16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 21:20:29.91 ID:KNFoSdSJ0

              * * * * * * * * * *
 時計の針は、ちょうど0時を指していた。

 とうとう、終わってしまった。高2の夏休み。

 何となく寝付けなくて、私は自室の窓辺に立って、夜空を見上げていた。

 満点までとは行かないが、90点ぐらいの星空が、漆黒を彩っていた。

 「きれい……」無意識のうちに、口に出ていた。誰かに聞かれてたら恥ずかしい。

 私は頬が赤くなっていくのを感じた。

 静寂を切り裂くように、携帯がぶぅー、ぶぅーと振動した。



17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 21:22:22.55 ID:KNFoSdSJ0

 メールが来たらしい。

 差出人は、中野梓。

 本文は簡潔に一言、『起きてる?』。

 私はすぐに『うん』と返信した。

 そしたらまたすぐに、メールが来た。
 
 『今日、何してたのー?』。どうやら梓も眠れないらしい。

 私はプールで憂と遊んでいたことを、本文にして、憂の水着姿を添付し、送信した。

 ついでに、梓は何してたの?付け加えるように、数秒後、送信した。

 2,3分経って、また返信。
 
 どうやら梓は、けいおん部の先輩達と買い物に行ってたらしい。
 
 真ん中に『友&愛』とかかれたTシャツを買ったみたいだった。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 21:25:32.80 ID:KNFoSdSJ0

それから、私達は眠るまでメールし合った。

 休み明けテストのことや、ジャズ研の先輩のこと。
 
 クラスメートの彼氏の噂話。話題の種は尽きなかった。

 私は軽く聞いてみる感じで、送信した。『どこの大学志望してるの?』純粋に聞いてみたかった。

 返信はやや遅めに、『●大』と書かれてあった。

 そこはいわずと知れた国立大学だった。私の志望校よりも、格段に偏差値が高い。

 それを知って、私は少し悲しくなる。

 なんだか、溝を感じたような気がして。

 それから何通かのやり取りをした後、
 
 『じゃあ、あたし寝るね』と送られたので、そこでメールするのをやめた。

 きりぎりすが、鳴いていた。

 時計の針は、1時半を示している。

 そろそろ寝ようかな。

 私はそう思い、用を足しにいった。

 自室に戻り、ベッドの中に入り込む。心地のいい暖かさが、私を包んだ。



19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 21:27:00.32 ID:KNFoSdSJ0

意識が深淵に飲み込まれていくのを感じながら、私は思った。
 
 もっと、頑張ろう―――――――――。

 それはどこまでも、あやふやな決意だったけど。

 それは確かに、私をやる気にさせた。

 「将来、か」

 小さな小さな呟きは、私の意識が睡魔にやられると同時に、消えてしまった。



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 21:29:32.73 ID:KNFoSdSJ0

              * * * * * * * * * *
 9月1日、朝。
 
 小鳥の調べを耳に残しながら、私は昨日、バカみたいに黄昏ていたことを後悔した。

 そして、焦燥に身を駆られていた。

 「あーっ!!宿題やり忘れたー!」

 バッグのなかから出てきたそれは、私の苦手な教科のテキスト。
 
 一ページも埋まってない。空白だらけ。

 夏休みまで終わらせろって言われたことを、すっかり忘れていた。

 ため息を大きく吐きながら、頭を抱えた。あーあ。 

 そして、決意を撤回するように、私は憂に答えをみせてもらおう、と思うのだった。

 まあ、明日から頑張ろう。絶対、明日から……。

                            <了>



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/12(月) 21:59:07.46 ID:GMVnXkf80


いいSSだ






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純「将来、か」
[ 2011/11/01 19:37 ] 非日常系 | | CM(0)

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