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律「狼人間!」#後編 【ファンタジー】


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律「狼人間!」#前編
律「狼人間!」#後編




153 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/30(土) 22:54:16.23 ID:HPL6B5VRO

黒服5「へ?」

ぽかん、と開けた口から間抜けた声がこぼれる。

次の瞬間、男は空を飛んで、他の男達を巻き込んで転がっていた。

男の頬に赤く残った靴の跡だけが、彼は蹴られたのだという事実を男達に教えてくれる。

黒服6「な…――うわっ!!」

着地音が聞こえ黒服6が振り返ると、律がすぐそばに立っていた。

黒服6「こ、こいつ――」

腰に差した警棒型のスタンガンを抜こうとする黒服6。

前髪の下の黄金の瞳が走り、その得物を捉える。

風を切る勢いで律の腕が振るわれ、男が握った警棒は、バラバラになって床に転がった。

黒服6「ぎゃっ!?」

驚きの光景に目を見張る間もなく、男の顔面に拳がめり込んだ。

崩れ落ちた黒服6と、変わり果てた姿の律を、男達も澪も、ただ呆然と眺める。

律はふぅ、と一息つくとブレザーを脱ぎ捨て、爪を構えて小さく微笑んだ。

律「――がおー…なんちって」



165 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/30(土) 23:37:29.18 ID:HPL6B5VRO

さわ子「オラオラオラァ!!飛ばしていくわよぉ!!」

眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせて、さわ子はハンドルを握る手に力を込める。

唯「さ、さわちゃん先生、早いのは助かるけど…捕まっちゃったらお終いだよ!?」

さわ子「ふん!!その時はその時よ!!
    カーチェイスって奴を味わってみようじゃない!!警察も現場に連れて行けて、一石二鳥よ!!」

唯「いや…警察には圧力がかかってるってむぎちゃん言ってたじゃん」

梓「う、うぅ…何だか気持ち悪くなってきた…」

紬「あ、私も…何だか気持ち悪いの通り越して楽しくなってきちゃった♪うふふふふふふ」

和「――…これ、本当に大丈夫かしら…」



166 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/30(土) 23:40:00.72 ID:HPL6B5VRO

束になってかかってきた男達を、殴り飛ばす。

律は、次々と溢れてくる力に任せ、男達を文字通り蹴散らしていた。

律(うわぁ…無数の大人の男に勝てちゃってるよ)

背後から迫ってきた男に裏拳を一撃。

かえす刀で正面からかかってきた男のスタンガンを破壊し、股間を思い切り蹴り上げる。

悶絶する男をさらに蹴飛ばして、奥にいた男を転ばせ、腹に蹴りを入れる。

澪「きゃ…」

澪の小さな悲鳴が耳を掠め振り返ると、

どさくさに紛れて再び澪を拘束しようと、男が一人彼女に迫っていた。

律「――澪に近づくなぁ!!」

律は側にいた男が振り下ろしてきたスタンガンを避けると、

それを奪い取って思い切り澪に迫る男へ投げつけた。

回転しながら空を切るそれは、見事に男の頭にぶち当たり、彼の意識を狩る。

投擲の姿勢のまま息をついて、頬を伝う汗を拭ったときだった。



167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/30(土) 23:42:20.26 ID:HPL6B5VRO

澪がこっちを見て、焦燥を含む悲鳴に近い声で叫んだ。

澪「律!危ない!!」

律「え――」

バスッ

律(痛っ…!!)

くぐもった銃声が聞こえたと思うと、首筋に衝撃が走った。

ちくりとした痛みに、律は眉をひそめて首に手をやる。

――何かが刺さっている。それがわかったと同時に、思考が鈍り、足先がしびれ始めた。

慌てて律はそれを引き抜き、地面に放り捨てた。麻酔だ。



168 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/30(土) 23:45:17.33 ID:HPL6B5VRO

人が動く気配がして、瞳を走らせると、無数の銃口がこちらを向いていた。

律「嘘だろっ…」

バスッバスッ、と何発も鈍い音が響き、律は慌てて駆ける。が、

律(足が―…!!)

思うように動かない。逃げるどころか、絡まって体勢を崩してしまった。そして、

律「あぅっ…!!」

背中に針が刺さる小さな痛みが数回。

思うように体が動かず、律は業を煮やしながら麻酔銃を構える男達を振り返った。



169 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/30(土) 23:48:09.81 ID:HPL6B5VRO

しかし。

律「えっ――」

かく、と片膝が折れ地面に付いた。男達が勝利を確信した笑みを浮かべた。

黒服1「ふう…一時はどうなるかと思ったが…捕獲完了だ」

澪「り、律!!」

歪む視界に律は頭を振り、何とか立ち上がろうとするも、

意志とは逆に体は言うことを聞かずその場に横倒しになってしまった。

律「…ぁ…」

律(最悪…)

黒服1「まさか、お嬢ちゃんも薬が効いてたとはね…。手土産が増えたな」

黒服2「さて、連れて行きますか…」

律(ちくしょ…二人仲良く実験台か…)



170 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/30(土) 23:53:48.39 ID:HPL6B5VRO

律は痺れる体を地面に横たえたまま、瞳を動かし、天井を見上げた。

所々穴が開いたそれからは、月光が差し込んでいる。

あぁ、だから妙に明るかったんだな、と律は何だかわからず納得した。その時。

律(…――!!!)

天井に開いた一際大きな穴に目をやると、そこからはっきりと月が見て取れた。

それは、影一つ無い綺麗な綺麗な――満月だった。

どくん

何人かの男が、律の体を束縛しようと迫る。

全てを諦め、途方に暮れて崩れ落ちる澪に、再び男達が歩み寄る。

牙が軋み、体毛がざわめく。

――一瞬、頭の中が真っ白になった。



171 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/30(土) 23:56:36.34 ID:HPL6B5VRO

律「ぐ、う、あああああああああああぁっ!!!」

気付けば自分でも驚くような咆吼を上げて、自分を囲んでいた男達を壁に叩きつけていた。

苦しい。ブラウスに体が圧迫されて息がしにくい。

何も考えずに、ボタンをブラウスと下着ごと引きちぎる。全身がふさふさした体毛に覆われていた。

すぐ後ろで小さな悲鳴が聞こえ、

人がまだ傍にいたことに気付いて、そいつを尻尾でぶん殴る。尻尾?いつの間に?

瞳を走らせると、澪が再び拘束されようとしていた。

痺れが吹き飛んだ体で、一気に肉薄する。

こちらに気付いた男達が、驚愕の表情を浮かべながら麻酔銃を構えるが、それを爪でことごとく粉砕する。

牙の生えそろった口から、狼の咆吼そのものが飛び出し、大の大人が悲鳴を上げて、腰を抜かした。

澪「り、つ…?」

澪の目に映ったの律は、狼そのものだった。



174 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/30(土) 23:58:42.90 ID:HPL6B5VRO

黒服1「ひ、ひぃ…」

律「大の大人がなっさけないのー。女子高生一人相手にびびるなんてさぁ」

律(ま、どこにこんな格好した女子高生がいるんだって話だけどね…)

天井の穴から満月を見上げる律。

青白い光りが、体の底から満たしてくれているような気がした。

律「なるほどねぇ…満月見ると、完全に狼になれるのか」

黒服2「こ、この化け物が!!」

男の一人が震える手で麻酔銃を構えて発砲する。が、

豊かな体毛に包まれた尻尾を器用に動かし、律はその弾を弾き落とした。

黒服2「う、うわあぁ」

律「化け物、か。誰のせいでこんなことになったと思ってるんだよ。
  私だって、好きでこんな格好してるんじゃないんだぞ」

爪と牙を光らせて、律はニヤリと笑った。

律「さぁて、覚悟はできたよな?」



175 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 00:00:22.65 ID:paEvcPaVO

数分後。

ぱんぱんと手を叩く律の前には、全ての男達が地面に突っ伏して気を失っていた。

殺してしまわないように手を抜いたが、しばらく全員起き上がることはできないだろう。

律は改めて窓に映った自分の姿を見て、顔を歪める。

律(うわ…もう完璧に狼だよ…。すんごい暴れちゃったし、こりゃ澪に引かれたかな…)

男達でさえ、恐怖に顔を引きつらせ、中には涙と鼻水で顔面ずるずるの者もいたのだ。

はぁ、とため息を牙の間から漏らし、律はその場に座り込んだ。

後ろから、足音が近づいてくる。

律「見ないで…」

澪「律…」

足音が止まる。今まで散々見られてたに決まってるのに、

今更何を言っているんだ、と律は自嘲めいた笑みを浮かべる。

律「澪にだけは見られたくなかったんだけどなぁ…。
  まさか、まだ誰にも見せてない完全変身まで見せちゃうことになるなんて」

澪「……」

律「――怖い、よな…。こんなの…」

何故か、消え入りそうな声。何だ私。泣きそうになってるのか。



177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 00:03:57.63 ID:paEvcPaVO

澪「怖くなんか、ないよ」

立ち止まったまま、澪は優しく囁く。律の体毛がふわっと揺れた。

澪「ありがとう、律…。律が来てくれなかったら、私どうなっていたか――」

律は振り返ろうとしなかったが、

腰の辺りから生えたフサフサの尻尾が二、三度ぱたぱた振られた。

澪の表情に思わず笑みが浮かぶ。恐怖心なんて、全くなかった。

律の背中にふわっと重みがかかった。

体毛のせいか少し大きくなった様に見える律の体を、澪は優しく抱きしめる。

ふわふわの体毛に、澪は顔を埋めた。獣特有の匂いではなく、温かく優しい匂いを感じる。

澪「――あったかい…律の匂いだ…。どんな風になっても、律は律なんだよ」

律「澪…」



180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 00:06:17.58 ID:paEvcPaVO

澪「…律達も見てただろ?私も最近やばくてさ…。
  血を見ると、自分を見失っちゃうんだよ。
  我を忘れて、ただ飲みたいっていう衝動にだけかられる。気持ち悪いだろ」

律「全然。どうなったって澪は澪、だろ?」

先ほど自分が言った言葉を返され、澪は小さく微笑んだ。

澪「でも…何でなんだろ…。今までこんなことなかったのに、急に血が恋しくなっちゃってさ。
  ――律も…まさか昔からそうだった訳じゃないだろ?」

頭を押さえて澪は呻くように呟く。律は、そっと振り返った。

澪「それに…むぎも…一体何が何だかわかんない…。ここどこなの…?」

今まで考える余裕がなかった分、一気に謎が頭に押しかけて混乱気味のようだ。

律は澪に向き直ると、優しく抱きしめた。ふわふわの体毛に、顔を埋めさせる。

律「大丈夫、落ち着いて澪…。全部説明するからさ」

耳元で小さく囁き、律は澪をなだめる。澪は震える手で、きゅっと律の体毛を握った。



182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 00:08:27.11 ID:paEvcPaVO

澪「――じゃあ私は…吸血鬼になりつつあるってことなの…!?」

驚愕の面持ちで、澪は涙ぐみながら律に確かめるように訊ねる。

律は黙って頷いた。ショックかもしれないが、事実を黙っているわけにはいかない。

律「で、私は狼人間。唯と梓は薬が効かなかったみたい。
  ――むぎのお父さんがきっと元に戻るためのワクチンを持ってるだろうからさ、
  落ち着いたらもらいに行こうと思ってる」

澪「でも、むぎのお父さんは私を実験台にするためにここに連れてきたんだろ?
  ワクチンをもらいに行くなんて…実験台にしてくれって言いに行くようなものじゃないか」

返す言葉が無くて、律は黙り込んでしまう。

確かに、その通りだ。だが…他に方法はあるだろうか。

沈黙に堪えきれなくなったのか、澪は小さくため息をついた。

澪「でも…まさかむぎがそんな薬をお菓子の中に入れてたなんて…」

悲しげな声に、律は顔を上げた。



184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 00:10:02.14 ID:paEvcPaVO

そういえば、澪を気絶させて男達に引き渡したのも紬だ。

彼女に対する不信感を抱いてしまってもおかしくない。

それでも――

律「むぎを許すか、許さないかは澪にしか決められないことだから私は口は出さない。
  だけど、むぎは好きで澪を傷つけたわけじゃないし、凄く後悔してた…。
  それだけは、理解してやってくれ」

それでも、自分たちは軽音部の仲間としてずっと共に過ごしてきたのだ。

紬は悪意を持ってやったわけではないということを、律は澪にわかって欲しかった。

澪「――うん、わかった…。大丈夫…むぎのことは、恨んでない。
  ただ、相談して欲しかった。一人で悩まずに――私達は仲間なんだから…」

それを聞き、安心した律は、ニッコリと微笑んだ。

律「そっか…良かった」

澪「ふふ…変なの。狼が笑ってる」

律「な、なんだとー」



185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 00:12:05.81 ID:paEvcPaVO

それから、いくら経っただろうか。

律「おぉ…ようやく戻ってきたか…」

いつの間にか顔から首にかけて、人間の状態に戻っていた。

律「あいたっ…」

ちくり、と首筋が疼き、そこに手をやると、血が滲んでいた。麻酔の痕だ。

律「あ~すっかり忘れてた…。
  麻酔銃で撃たれることになるなんて、思ってもなかったぜ。なぁ澪…澪?」

律は澪の異変を察知し、彼女の肩に手をやった。息が荒い。

律「お、おい澪?大丈夫?」

澪「り、つ…ごめ…私――」

苦しそうな瞳が、自分の首筋へと走る。ま、まさか――



187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 00:14:35.61 ID:paEvcPaVO

澪『血を見ると、自分を見失っちゃうんだよ。
  我を忘れて、ただ飲みたいっていう衝動にだけかられる』

律「あ、あの…澪ちゅわん?」

澪「血…血が…欲しい…」

がっ、と両肩を掴まれた。そのまま強引に引き寄せられる。

律「ちょ、待っ、わかった!後で飲ませてやるから、ちょっと我慢し――ひゃあっ!?」

問答無用で、澪は律の傷に口を付けた。

澪の舌が律の首を這い、血を舐めとっていく。

律「いっ…や、はっ…み、澪!くすぐったい、って…!」

力尽くで澪を押しのけようとして、律はさらに重大な出来事に気付いた。

律(ちょ、ちょっと待て…。
  体が元に戻ってきたは良いけど――私よく考えたら上半身素っ裸じゃん!!)

全身を包んでいた体毛は、少しずつ引っ込みつつあった。

すでに腕と胸の辺り以外は、人間に体に戻っている。



189 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 00:16:20.50 ID:paEvcPaVO

これはまずい。すこぶるまずい。

このままじゃ、とても人聞きの悪い状況になってしまう。

男達は気を失っているし、今のところ二人っきりだからまだマシだが――

もし唯達が来たらとんでもないことになるんじゃないか?

何ていうか、未知の領域まで誤解されるんじゃないか?

いや、っていうか、この状況を見られるって――

律は顔が火が付きそうなほど熱くなっていくのを感じた。

律「み、澪!!ちょ、どいてくれ!!そこのブレザー取ってくれぇ!!」

真っ赤な顔で律は懇願するが、澪は一心不乱に律の血を味わっている。

どいてくれるどころか、押し倒さんばかりの勢いだ。

律「はぁっ…う、ぅ…澪ぉ…やめてくれよぉ…」

何だか変な気分になってきた。やばい。非常にやばい。

その間にも体毛はどんどん引いていって――

律「――…!!み、みおおおおおおおお!!だ、誰か助けてえええええぇ!!」

救いを求める声を、律は涙目になってあげた。そして、それに応えるかのように――



191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 00:17:59.39 ID:paEvcPaVO

唯「りっちゃあああああああん!!大丈夫だよ!!今助けに――…Oh…」

梓「今の悲鳴、律先輩…ぶふぉっ!は、鼻血が…」

和「律!!――…えっ。なにこれえろい」

紬(キマシtowerーーーーーー!!1!!!11!1!
  ――じゃなくって…澪ちゃん大丈夫で良かった…)

さわ子「あなた達…」

皆が現れた。半裸状態の律と、

その彼女を押し倒して首に口を付ける澪を見て、各々違った反応を見せる。

妙な沈黙が流れた。

律「……終わった…」



193 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 00:19:20.38 ID:paEvcPaVO

澪「――…もう、お嫁に行けない…」

律「それはこっちのセリフだっ!!」

しばらくして我に返った澪は、律の隣で小さくなって赤面した。

男の一人からシャツを拝借して、ブレザーを羽織った律は、さらに真っ赤な顔をして澪に怒鳴る。

唯「んー、でも、私もりっちゃんの完全変身見たかったなぁ」

律「のんきなもんだなぁ…。こっちはいろいろ大変だったってのに」

唯「ごめんごめん。あ、そうだ。はいりっちゃん、カチューシャ」

律「あ、あぁ、持ってきてくれたのか。ありがとな」

唯から渡されたカチューシャを受け取り、律は手早く前髪を上げてそれを付け直した。

律「変身しちゃったら目つき鋭くなっちゃうから、
  あんまり目見られたくなかったんだよな。みんなに怖がられたくなかったし…」

澪「…気にすることないよ。律は律なんだから」

律「――だな」

小さく笑い合う二人を見て、さわ子が意地悪げな笑みを浮かべる。

さわ子「あらあら、仲良いわねぇお二人さん?一線を越えちゃったからかしら?」

律澪「な、何を!!」



194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 00:21:35.51 ID:paEvcPaVO

紬「澪ちゃん…私…」

うつむきがちに、紬が澪の前にでる。

澪「ムギ、律から全部聞いた」

紬「ごめんなさい…本当に、ごめんね…!
  謝っても許してもらえないことをしちゃったけど、でも――」

澪「許すよ。だからそんなに謝らないで。
  ムギも好きでやってたわけじゃないってことはわかってるよ」

紬「澪ちゃ…ぐすっ」

澪「怖かったんだよな。
  私だって、もしパ…お父さんがそんなになっちゃったら、
  どうしようもなくなっちゃうに決まってる」

涙ぐむ紬の頭を優しく撫でて、澪は微笑んだ。

澪「辛かったよなムギ。今度からは悩み事があったらみんなに相談しなよ?約束だ」

紬「うん…うん。ありがとう澪ちゃん…」

良かった、大丈夫そうだ。

律は二人が無事に仲直りできたことに安心して息を吐いた。その時だった。



197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 00:32:40.04 ID:paEvcPaVO

?「おや、これはこれはお嬢さん方…。こんなところで何をしているのかね?」

撫でるような気味の悪い声に、皆は表情を凍り付かせ、入口を振り返る。

白衣を着た薄気味悪い男が、笑みを浮かべて立っていた。

紬「あなたは…博士…」

博士「おぉ紬お嬢さん。ふむ、ということは…この子達は例の実験サンプルかな?」

怯えた表情を浮かべる紬を見て、博士は顎を撫でた。

紬「…みんなのことを、そんな風に言わないで下さい…」

怒りからか恐れからか、震える声で反論する紬。博士は汚い歯をむいて笑う。

博士「ふっふっふ。何をおっしゃるやら。お嬢さんがこの子達に薬を投与したんでしょうが」

紬「――っ…それは…」

律「…やめろ」

表情を曇らせる紬の肩に手を置いて、律は博士を睨んだ。



200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 01:02:35.98 ID:paEvcPaVO

博士「おやおや。私は本当のことを言っているだけなのだが――」

律「うるさい。お前がむぎのお父さんを変えたせいで、むぎはずっと苦しんでるんだぞ」

博士「はて、変えた?何のことかわかりませんな。私は旦那様に、実験の話を持ちかけただけですが」

さわ子「はっ…とぼけても無駄よ」

ずっと黙っていたさわ子が、眼鏡の奥から鋭い眼光で睨む。

さわ子「琴吹グループの財力を利用し、利益と名声を手に入れてメシウマ――そんな甘い考えが目に見えてわかるわよ?」

博士「おっと、こちらの威勢の良い年増はどちら様で?」

ビキッ、と音が立てて青筋が立ちそうなほど、さわ子はその顔に怒りをあらわにした。

さわ子「おもしれぇこというじゃねぇかコラ」

唯「先生、落ち着いて」

眼鏡を取って殴りかかりに行こうとするさわ子の袖を唯が引いて止める。



201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 01:04:17.69 ID:paEvcPaVO

博士「それはそうと、これは一体どういうことですかな?私の可愛い助手達が全滅ではないか」

あちこちに横たわる黒服の男達を見て、博士は肩をすくめる。

彼にとっては不利な状況なはずなのに、全く動じていない様子を見て、律は眉をひそめた。

博士「まさかそこの年増が暴れたとは思えないが…。
   そういえば、薬の反応がでたという報告が入ってましたな」

切歯扼腕して睨むさわ子を華麗に無視し、博士は不気味な視線を唯達に滑らせる。

博士「果たしてどなたの仕業かな?」

博士の嫌らしい瞳が澪を捉え、彼女はびくりと身を震わせた。

博士「ふむ、貴方が例の吸血鬼サンプルですか。噂は聞いてますよ」

澪「何を…」

ガクガクと震える澪の後ろで、律は唇を噛みしめ、再びブレザーのボタンへ目を落とす。

静かな怒りを燃やすその小さな体に戦慄が走った。

博士「我々の新薬開発のため、私にその身体を差し出して下さいませんかね?
   えぇ、丁重に扱わせていただくつもりですよ?」

澪「ひっ…」



203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 01:09:37.70 ID:paEvcPaVO

澪が喉の奥であげた悲鳴が引き金となり、変身を終えた律は文字通り吼えた。

律「このやろおおおおおぉ!!」

皆の輪を飛び出して、律は拳を握って疾走する。

――だが、博士は驚いた様子もなく、ただニヤリとほくそ笑んだ。

律(――!?)

瞬間、凄まじい悪寒を感じ、律は自分の体が何者かに支配されるような感覚を覚えた。

律(何、これ…!?)

博士まで後数十センチというところで、体が完全に動かなくなる。

澪「り、律…!?」

拳を振りかぶったまま動かなくなった律を見て、澪が不安げな声を投げかける。

博士「ふっふっふっふ…」

律「…何、を…したんだ?」

途切れ途切れに訊ねる律を、博士は嫌らしい笑みを浮かべて見つめる。

その後ろから、一人の男が現れた。



207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 01:13:02.19 ID:paEvcPaVO

紬「…さ、斉藤…!?」

生気のない顔をして現れた男を見て、紬が驚愕の声を上げた。

嫌な予感がし、澪は律に駆け寄ろうと立ち上がる。が、

博士「やれ」

博士の小さな呟きに、斉藤はぬるりと首を動かして一度目を閉じると、見開いた目で澪の足を睨んだ。

途端、澪はつんのめって転け、激しく床をスライディングした。

澪「いった…!!」

澪(あ、足が…動かない!!)

唯「澪ちゃん!?」

梓「――!?か、体が動きません!!」

澪に駆け寄ろうとした梓がそう声を荒げて叫んだ。

それは、皆の体も同じだった。全身が凍り付いたように動かなかった。

博士の様子を見るに、斉藤が何かをしたのは明らかだ。



208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 01:14:30.61 ID:paEvcPaVO

紬「斉藤!何をしたの!!…一体どうして…!?」

動けぬ体で斉藤を見つめながら、紬は悲痛な声で叫ぶ。

斉藤はただ黙って、呆然とした面持ちで博士の横に立っていた。

博士「今の斉藤と目を合わせない方が良いですよ、お嬢さん。石になりたくないでしょう?」

紬「石…?」

戸惑いの表情を浮かべる紬の後ろで、和が小さく息を飲む。

和「まさか…斉藤さんも、薬で妖怪に…」

博士は嫌みなほどニッコリ笑って斉藤の肩に手を置いた。

博士「ご名答。まぁ、普通はそう考えるでしょうな。
   彼が飲んだのは私が作ったなかなか出来の良かった即効性の薬――ゴルゴンの薬です。
   まぁ、能力を求める余り服用者の体にかなりの負担がかかるのが少々欠点ですが…」

紬「…!」

唯「ゴルゴン…?」

聞き慣れぬ単語に首をひねる唯。そんな彼女を、和が瞳を動かして見やる。

和「目があった者を石に変えてしまう怪物よ…。メデューサって言ったらわかるかしら」

唯「あ…何か聞いた事あるかも…」



211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 01:15:54.90 ID:paEvcPaVO

紬「斉藤、どうして!一体何があったの!?返事なさい!斉藤!!」

博士「無駄ですな。今の斉藤は私の言葉しか受け付けません。…さて」

博士は、すぐ傍で固まる律に目をやった。恨めしそうな目で睨んでくる彼女を見て、面白そうに微笑む。

博士「狼人間…。しかも、なかなかの適応度。貴方は素晴らしいサンプルだ…。
   私の助手を全滅させたのもおおよそ貴方の仕業でしょう」

律「――うっさい…」

振りかぶったままの拳に力を込める律。だが、体がぎしぎし軋むだけで、全く動かせる気配はない。

博士「ふむ、気に入った。貴方も斉藤と同じように、私の言いなりになってもらおう」

律「何…!?」

博士はおもむろに懐に手をやると、小さい妙な機械を取り出した。



213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 01:17:42.12 ID:paEvcPaVO

律「何だよ…それ…」

博士「首筋に取り付けると、電気信号であなたの脳を支配してくれる優れものです。
   最初の内は頭痛に悩まされるでしょうが、すぐに楽になれますよ。
   何も考えられなくなりますからね」

律「まさか…斉藤さんにも、それを…」

瞳を巡らせると、確かに斉藤のうなじあたりにそれは取り付けられていた。

博士「便利な機械でしょう?人間をロボット化するようなものです。
   私の言うことだけを聞く奴隷になってくれるんですよ」

紬「もしかして…お父様がおかしくなってしまったのも――」

博士「大正解ですな。素晴らしい研究施設と金。
    それさえあれば、彼は必要ありません。私の手足となってもらうだけです」

梓「最低ですね…」

和「典型的な悪役ね。最低かつ勝ち誇った態度。
  そんなこと私達に教えてしまうなんて、おしゃべりにもほどがあるわ」

博士「はんっ。知ったところで体の動かない君たちはどうしようもないだろう。
   そこでお友達が私の手に落ちるのを眺めていなさい」

ぬるり、と視線を律にやる。彼女は喉の奥で小さく息を飲んだ。



214 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 01:20:23.42 ID:paEvcPaVO

澪(このままじゃ律が――…!)

澪(くそっ…動け!)

動かすことのできる手で、何度も足を殴るが意味がない。

這って動こうにも、距離が遠すぎて間に合わない。

博士「ふっふっふ…とりあえず貴方の能力をよく知りたいですからなぁ。
   まず始めにお友達を始末してもらいましょうか」

恐怖と怒りがない交ぜになった律の顔を、博士はそっと指で撫でる。

律「さ、わんな…変態…!!」

博士「これはこれは。まぁ、貴方の感情を奪った後で、ゆっくりと楽しむことにしましょうかな」

律(い、嫌――…)

澪の目に、滅多に見せることのない、恐怖に歪む律の表情が焼き付く。

澪(律…!!!)

――…布を裂いたような音が響いた。



215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 01:23:11.77 ID:paEvcPaVO

博士「お?」

博士は自分の身に何が起きたのか、理解するのに時間を要した。

手に持っていたはずの機械が床を転がり、自分は倒れ込んでいた。

律「み、澪…!!」

ふわり、と肩に手が置かれ、きつく閉じていた目を開いた律は、そこに彼女の姿を捉える。

――その背中には、制服を突き破って、コウモリのような羽が生えていた。

澪「あ、あは…。――律、私…空飛べちゃった…」

自分でも驚いた様子で、澪は律に固い笑みを向ける。

と、ぼんやりと立ち尽くしている斉藤の姿が目に入り、

澪は動かぬ足の代わりに羽をはためかせて彼のそばへ行く。

博士「おい!やめろ!貴様!!」

澪は機械を確認すると、それを鷲掴んで強引に握りつぶす。

強化された握力の下に、機械はあっけなくばらばらになった。



217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 01:26:47.15 ID:paEvcPaVO

斉藤「私は…――!」

二、三度頭を振って、ハッとした顔つきになる斉藤。さすが、状況整理が早い。

博士「…くそ、あの小娘…」

悪態をつきながら体を起こした博士の目の前に、仁王立ちの斉藤がいた。

博士「なんだ貴様…――!!」

澪が斉藤の機械を破壊したことを思い出した博士は、

乾いた悲鳴を上げて、四つん這いになって逃げようとする。

その後ろ姿を、斉藤は目を見開いて睨み付けた。

不格好なまま、博士はその場に凍り付く。

博士「ひ、ひいいいぃ…!!」

紬「斉藤!元に戻ったの!?」

斉藤「お嬢様、申し訳ありませんでした。すぐに術を解きますので…」

斉藤は目を閉じて、しばらく黙り込んだ。

すると、ずっと皆を押さえ込んでいた体の硬直がすっと消えて無くなった。
―― 一名を除いて。

博士「た、助けて…」



240 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 10:13:44.95 ID:paEvcPaVO

梓「どうします?」

不格好な姿で固まる博士に、皆が冷ややかな視線を送る。と、

さわ子「ちょっと待った。ここは、私に任せて」

拳をバキバキ鳴らしながら、さわ子がにこやかな笑みを浮かべた。

背後にどす黒いオーラをまとっているように感じ、皆が道を空ける。

博士「あ」

さわ子「どーもー?威勢の良い年増でーす♪」

博士「ひ…」

さわ子「ちなみにこの黒服集団全員をぶちのめすほど暴れるのはさすがに無理だけど、
    人一人ボッコボコにするぐらいの自信ならありまーす♪」

博士「ひいいいいいいいぃいいいい!!!」

静かな夜空に、凄まじい悲鳴が響き渡った。



241 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 10:22:42.36 ID:paEvcPaVO

さわ子「あーすっきりした」ニコニコ

斉藤「うぅ…申し訳ございませんでした、お嬢様。私としたことが…不意を突かれてしまいました…」

紬「斉藤が無事ならそれで安心よ。一時はどうなるかと思ったけれど、本当に良かっ――」

突如斉藤はその場に崩れ落ちた。紬は顔を真っ青にして彼に駆け寄る。

紬「どうしたの!?」

斉藤「も、申し訳ございません…。酷く目眩が…」

和「そういえば…体に凄く負担がかかるってあの博士が言ってたわ」

紬「ど、どうしよう…」

斉藤「落ち着いてください、お嬢様…。私は大丈夫です…」

さわ子「――じゃあ、こうしましょう。私は斉藤さんと一緒にここに残るわ。
    この男共を全員締め上げなきゃいけないしね」

梓「で、私達はムギ先輩のお父さんの方に行く、ということですか」

さわ子「そういうこと。頼んだわよ、あなた達」



244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 10:35:48.77 ID:paEvcPaVO

律「わかった、そうしよう。みんなも良いよな」

澪「う、うん」

唯「平気だよー」

梓「早くムギ先輩のお父さんも目を覚まさせてあげないといけないですからね」

和「力になれるかわからないけど…頑張るわ」

紬「すみません、さわ子先生…お願いします。斉藤も私に振り回されて…本当にごめんなさい」

斉藤「いえ…私は紬お嬢様を支えるのが役目ですから…。力になれなくて申し訳ありません」

律「よし、じゃあ決定だな」



246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 10:39:41.51 ID:paEvcPaVO

さて、と息をつき、律は頑丈そうな扉に歩み寄る。

律「うーん…カードキーが必要みたい」

唯「あ、じゃあ博士さんの借りれば――」

踵を返し、気絶した博士の懐を漁る唯。

唯「おぉ、あったよー」

それらしき物を見つけ、嬉しげに笑いながら唯は扉へ向き直る。

ズガッ!!

ズズズ…と音を立てて、真一文字に切り裂かれた分厚い扉はゆっくりと倒れ、

いつの間にか変身を終えていた律は振るった腕をぐるぐると回して息をついた。

律「よし、行くぞー」

唯「」

梓「お疲れ様です」

カードキーを掲げたまま固まる唯の肩に手を置き、梓はそう声をかけた。



247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 10:42:43.90 ID:paEvcPaVO

必要なくなったカードキーを放り捨てて、ふくれっ面をする唯。と、

唯「あれ?りっちゃん」

律「んあ?」

中へ進もうとしていた律は呼ばれて振り返る。ぽかんとしていた唯の瞳がキラキラと輝く。

唯「あー!りっちゃん狼の耳が生えてきてる!」

律「…は?」

頭のてっぺんに手をやる律。確かに、それはそこに存在した。

律「なんっじゃこりゃああああ!!」

紬「狼人間化が進行してるのね。そのうち尻尾とかも生えてくるかも」

唯「律わんの完成が近付いてるんだね」

律「じょーだんじゃないぞ!…とにかく急ごう!」



249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 10:45:52.56 ID:paEvcPaVO

和「暗いわね」

紬「私もこの研究所の奥には入ったことがないから、設計がどうなってるのかわからないの…」

真っ暗な細い通路を進んでいく。

唯「澪ちゃん、いつもならガクガク震えて怖がるのに、今日は平気だね」

澪「ホントだな。むしろ居心地が良いくらいだよ」

唯「澪ちゃんも吸血鬼化が進んでるからだね!」

澪「うぅ…怖くないのは嬉しいけど、やっぱり早く元に戻りたい…」

梓「あ、また扉ですね」

律「ほいほいっと」

分厚い扉はあっという間に引き裂かれて原型をなくす。

律「お、通路が広くなった。電気もついてるぞ」

唯「わいるどだね、りっちゃん…」



251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 10:50:19.30 ID:paEvcPaVO

壁も天井も真っ白な広い通路。右と左に別れている。

梓「どっちに行けばいいんでしょうか」

澪「ちょっと怖いけど二手に分かれる?」

和「いや、やっぱりそれは不安だわ。…一つずつ確認した方がいい気がするけど」

どちらに行けば良いのかわからず立ち往生してしまう。と、その時だった。

澪「――!ちょっと待て…右から何か来てる…」

紬「え…何も聞こえないけど――」

律「いや、私にも聞こえる。何か嫌ーな予感がするぞ」

その足音は、すぐに他の皆にも聞こえてきた。同時に伝わってくる地響き。

律「これマズイ予感しかしない。左に行くぞ!」

唯「う、うん!」

慌てて駆け出す唯達。走りながらちらりと振り返った梓が悲鳴に近い声を上げた。

梓「でたあああああああああぁ!!」

曲がり角から姿を見せたのは、巨大な体躯をした体中つぎはぎだらけの大男。

まさしくフランケンシュタインだった。



252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 10:55:01.35 ID:paEvcPaVO

律「なんっだあれえええええええええ!?」

澪「ひいいいいいいぃ!!」

雄叫びを上げ、ゆっくりとした足取りで距離を詰めてくるフランケンシュタイン。

唯「何あれ!?何なの!?」

和「知らないわよ!」

全員涙目になりながら逃げ回る。と、梓の目に小さなドアが入った。

梓「皆さん!こっちです!!」

甲高い声に皆振り返り、ドアに駆け寄る梓を見つけ、そのドアへと向かう。

一番初めに辿り着いた梓が、それを開けて隣の部屋へと移る。瞬間。

梓「――えっ!?」

梓の足下の床が音もなく開き、奈落の闇が彼女を引きずり込んだ。



253 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 11:00:13.50 ID:paEvcPaVO

梓「きゃあああああああああぁぁぁ…!!」

唯「あ、あずにゃん!!」

梓の次にドアをくぐった唯がぽっかり空いた穴をのぞき込むが、

真っ暗な穴は相当深いようで、もはや悲鳴も聞こえてこなかった。

唯「あずにゃん!!あずにゃあああああああん!!」

律「唯!どうした!?」

ようやく皆が辿り着く。律は、涙を流して叫ぶ唯を見て色めき立った。

唯「あずにゃんが…!!」

?「あっはっは…そんな単純なトラップに引っかかるとは」

低い笑い声と足音が響き、全員顔を上げる。

紬「お父様…」

だだっ広い部屋の中心で、紬の父は満面の笑みを浮かべていた。



254 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 11:02:42.33 ID:paEvcPaVO

ムギ父「君たちの活躍はモニターで一部始終観察させてもらったよ」

そう言う彼の背後には、大きな装置が設置されていて、

無数のモニターが様々な場所を映しだしていた。

真っ白い壁には、小さな小瓶が多数並んでいる。研究で生み出した薬であろう。

たくさんありすぎて、どれがワクチンなのかわからない。

唯「あずにゃんを…あずにゃんを返して!!」

普段の温厚さからは想像できない勢いで、唯が叫ぶ。

紬の父は微笑みを浮かべたまま、そんな彼女を一瞥した。

ムギ父「返すも何も…今頃ただの肉片と化しているだろうが…。処理してくれるのかな?」

唯の顔から血の気が引いていく。蹌踉めいた彼女の体を支えながら、紬は父を見つめた。

紬「お父様!もうやめて!!博士はもう捕まったのよ!!
  もうこんなこと、意味がないじゃない!!」

ムギ父「博士が捕まったのならば、彼の意志を引くのは私の役目だ」

冷めた目で自分の娘を見下す紬の父。



255 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 11:07:25.08 ID:paEvcPaVO

和「博士が捕まっても機械は作動し続けるのね」

律「やっぱあれを壊さないと駄目みたいだな」

律は腰を落として、彼を睨んだ。そして、立ち尽くす唯の前に空いた穴を見る。

律(梓…)

のぞき込んでもそこにあるのは闇ばかり。見慣れた小さな姿は、もう目の前には現れない。

律「くそ…!――とにかく、私がムギのお父さんの動きを止める!
  澪は穴を下りて梓を救出してやってくれ!!」

足に力を込めて、律は叫ぶ。が、澪の表情は曇った。

澪「で、でも…梓は――」

変わり果てた梓の姿を見たくなかったのだろう。躊躇った彼女の様子に、律も唇を噛む。

ムギ父「何をぐだぐだやっているのか知らないが、君たちの相手は私だけではないぞ?」

そう言って、紬の父が何かのパネルのような物を操作する。すると、

轟音と共に、壁を突き破って先ほどのフランケンシュタインが現れ、皆は慌てて部屋の中央へと走った。

ムギ父「良くできたロボットだろう?いずれは本当に人造人間を作って見たいのだがね」

和「…どうすんのよ、これ…」

ぽつりと呟きを漏らす和。

律は余裕の笑みを浮かべたままの紬の父とフランケンシュタインを交互に見やり、口を開く。



256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 11:14:14.99 ID:paEvcPaVO

律「やっぱり私はムギのお父さんの相手になる。
  唯と和とムギは、とにかく逃げ回るんだ。
  澪は…あのでっかいのの相手、頼めるか?」

澪「わ、私が!?む、無理だよ!!」

律「大丈夫。アイツ、動きはとろいから頭の周りを飛びまくってたら時間稼ぎになる。
  すぐにムギのお父さんの機械ぶっ壊して、停止してもらうからさ」

震え上がって首を振る澪の肩に手を置き、律は優しく言い聞かせる。

澪はしばらくフランケンロボを見上げていたが、きゅっと顔を引き締めると、小さく頷いた。

澪「わかった…。やってみるよ」

フランケンが腕を振り上げる。それを合図に、皆が散った。

澪は宙を駆け、律は紬の父へと突進し、残った者達はとにかく走って逃げ回る。

律「このおおおおおおおぉ!!」

握った拳を思い切り振るう。だが、それは虚しく空を裂いた。



283 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:57:49.25 ID:paEvcPaVO

律「何…!?」

ムギ父「ふむ…見事に薬が適合しているね君は。良いデータになってくれそうだ」

律「いくらムギのお父さんの頼みとは言え…お断りですよ!」

がむしゃらになって腕を振るう律。それをことごとくかわしていく紬の父。

その隙に、紬がゆっくりと彼の背後に回る。

律の攻撃に集中している今なら、気付かれずに首筋の機械に手を出せるはず。

律もそれに気付き、紬が背後から彼に飛びかかるタイミングを見計らって

同時に正面から飛びかかる。が、

ガスッ!

律「いっ…!!」

紬の父が振るった腕が律の脇腹に直撃して、彼女は面白いぐらいに飛んだ。

薬の並んだ棚に背中を打ち付け、小瓶が数本落下して割れる。

ムギ父「私に逆らうつもりか紬」

振るった腕でそのまま紬の胸ぐらを掴んでねじ上げる紬の父。

紬は浮いた足をばたつかせて必死に抵抗した。



285 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 20:59:30.37 ID:paEvcPaVO

和は放心状態の唯を連れて逃げ回るので精一杯で紬を助けに行く余裕がない。

澪も澪でフランケンの相手で手一杯だ。

律は咳き込みながらも何とか立ち上がった。

律「げほっ…何て怪力だよ…。肋骨が折れるかと――まさか…」

この人並み外れた身体能力。心当たりは一つしかない。

ムギ父「紬…どうしてわかってくれないんだ。こんなにも素晴らしい発明なんだぞ。
    世の中が大いに変わるきっかけになる商品になるに違いない」

紬「嫌!そんなのおかしいわ!こんな人体を弄ぶような発明が素晴らしいはずない!」

ムギ父「そんなこと言わずに見てくれ紬。私が研究した中でも最高傑作のこの薬の効果を――」

紬の父の体が嫌な音を立てて軋みながら一回り、二回りと大きくなっていく。

紬は見た。自分をねじ上げる父の腕が鱗に覆われ、鋭い爪が伸びていくのを。

律「おいおい…こんなのありか…」

呆然と立ち尽くす律の目の前で、ドラゴンが牙をむいて笑っていた。



288 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:01:35.80 ID:paEvcPaVO

澪「ちょおおおおお!何だよこれえええぇ!!」

フランケンシュタインの相手しているだけでも恐怖で頭がおかしくなりそうなのに、

あんな化け物まで現れたらどうしようもない。

澪は錯乱しながらも必死に巨大な腕をかいくぐってフランケンの足止めに努めた。

和「これは夢。これは夢。これは夢よ」

正直現実逃避しなくちゃやってられない。

和は念仏のように同じ言葉を繰り返しながらフランケンの足を唯と共に走り回って避ける。

律「どうしろって言うんだよこのやろー!!」

やけくそ気味に律は駆ける。とにかく紬を助け出さなければ。

紬「お父様…なんてことを…」

紬は紬で変わり果てた父親の腕に抱えられて、どうすることもできず途方にくれている。

律は紬の父の足に向けて鋭い爪を振るうも、固い鱗の表面に傷をつけるだけで終わってしまう。



290 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:03:01.64 ID:paEvcPaVO

ムギ父「はっはっは…ほら、もっと頑張りなさい」

大きな足が振り降ろされる。律は避けることができず、それを受け止めにかかった。

律「くっ…お、重っ…!!」

ムギ父「大人しく私に協力するなら助けてやろう。
    しかしまだ抵抗を続けるなら
    ――申し訳ないがモニターで君の身体能力データはだいたい採れたんでね、
    後は体さえ手に入ればそれでいいんだよ。つまり手短に言うと――死んでもらう」

律「協力なんて、しませんよ…!
  どうせ今助かったところで、ひとしきりまた身体能力検査して、
  体内のデータ採るのに…解剖しまくって、あとは廃棄なんだろ…!?」

ムギ父「ふむ…。君は変なところで頭が回るね。
    仕方ない、君がそのつもりなら私もそれなりに対処する」

徐々に体重がかけられ、律の腕が支えきれずに曲がっていく。

紬「お父様、やめて!私の大切な友達なのよ!?」

ムギ父「私にとってはもはや役に立たない実験用モルモットだ」



292 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:04:55.23 ID:paEvcPaVO

澪「――!律!!」

紬の悲痛な声に律の状態に気付き、そちらに気が取られる澪。瞬間。

澪「うわっ!!」

大きな手のひらが目の前に現れ、

気付けば澪はフランケンシュタインに鷲掴みにされていた。

和「澪!!」

澪「わ、私は大丈夫だから律の方を!」

澪はもがきながら必死に声を張り上げる。和は狼狽した。

和「そうは言ってもどうしたら…!」

怪物化する能力のない和はどうしようもなく、何か使えるものがないかあたりを見渡す。

目に入ったのは、無数のモニターとそれを操作するパソコン。

その操作画面を見て、和は自分でも操作できそうな事を確認すると、急いでキーボードを叩いた。



294 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:06:30.64 ID:paEvcPaVO

律「う…ぐっ…!!」

次第に反り始める背中。先ほど殴られた脇腹がじんじんと痛む。

律(やばっ…苦しっ…)

紬が腕の中で暴れるも、紬の父はそれをものとせず体重をかけ続ける。

律(もう…駄目…!)

律の脳裏に諦めの文字がよぎった。その時だった。

和「――律、左を見て!!」

律「…っ何…!?」

和「早く!左よ!!」

ぎりぎりの状態で、律は言われた通りにその方を見やる。と、

律「――!!」

彼女の目に入ったのは、モニターに映し出された満月だった。



296 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:08:50.69 ID:paEvcPaVO

律「――があああああああぁああ!!」

気合いの咆哮を張り上げ、完全変身を遂げた律は思い切り大きな足を押し返した。

ムギ父「なっ!!」

体勢を大きく崩す紬の父。

律はその隙に飛び上がって彼の腕にしがみつくと、

力任せに紬と鱗まみれの腕を引きはがした。

律「平気か、ムギ」

紬「あ、ありがとうりっちゃん!」

律(このまま機械まで行けるか?――つーか機械どこだよ!?)

紬を抱きかかえたまま、太い腕の上で紬の父を操る機械の位置を探す。だが、見つからない。

ムギ父「貴様ぁ!!」

長い首を巡らせて、紬の父は律を睨んだ。その頭頂部に、それはあった。

律「なんであんなとこにあるんだよ!」



297 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:10:39.15 ID:paEvcPaVO

馬鹿みたいに鋭い牙が生えそろった大きな口が目の前で開く。

その奥が、かすかに怪しく輝いた。

律「ちょ、マジか!!」

嫌な予感を察知し、慌てて飛躍する律。

直後大きな口から業火が放たれ、それはわずかに律の体毛を掠めた。

律「科学の力は恐ろしい…」

紬を降ろしてやりながら、律は呆れたように呟いた。

澪(良かった、律大丈夫そうだ…)

澪「さて、どうしようかな…」

冷や汗が額を伝うのを気にとめず、澪は困った笑みを浮かべてフランケンシュタインを見つめる。

力の限りに指を引きはがそうにもビクともしない。

当の本人(?)は足下を逃げ回る和達を追い回すのに夢中になっている。



300 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:13:37.35 ID:paEvcPaVO

律「澪!大丈夫か!!」

澪の危機に気付いて律が叫ぶ。だが、紬の父が救助に行くのを許さない。

フランケンシュタインはしばらく和達を追い回すのに夢中になっていたが、

痺れを切らしたように澪を顔の前へと持ってきた。

澪「何する気――!」

急に澪を握る手に力を込め始めるフランケンシュタイン。今度はこっちが潰される危機に瀕した。

データ採取がまだちゃんとされていないはずだが、フランケンは本気で潰す気でいるようだ。

紬の父は律の反抗があまりにもしぶとくて頭に血が上ったのか、こちらの様子には気付いていない。

澪「嘘、だろっ…!」

すさまじい圧迫感が体中にかかる。息が詰まる感覚に、

澪は悲鳴も上げられずに痛みに歯を食いしばった。その時だった。

地の底から唸るような声が、部屋に響き渡った。



303 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:14:52.10 ID:paEvcPaVO

フランケンの動きが止まる。

刹那、ぽっかりと開いたままになった床の穴から、大きな黒い影が飛び出した。

澪は見た。その影の正体は、ライオンのように大きな黒猫だった。

ふたまたに分かれた尻尾がうごめいて、鋭い牙が光り、フシャーと威嚇するような鳴き声が轟く。

澪「次から次に…何なんだよもう…。勘弁して…」

次々と現れる異形の存在に、抵抗する気も失せて澪はうな垂れる。と、

大きな黒猫は飛び上がってフランケンに襲いかかり、澪を掴む腕に食いついた。

バチバチと火花を立てて、ロボットのフランケンの腕はへし折られて千切れる。

力が抜けた指から澪はもがいて逃げ出す。

その様子を、黒猫が鋭い目で見つめていて、澪は体勢を立て直すと身構えた。と、

黒猫「大丈夫でしたか、澪先輩」

澪「へ?」

黒猫「すみません。早く上がってきたかったんですけど、
   四足歩行に慣れるのに時間がかかっちゃって…」

澪「その声…もしかして、梓か!?」



305 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:16:34.71 ID:paEvcPaVO

梓「はい、心配をおかけしました」

澪「もう、何が何だか…」

父から逃れていた紬が、二人に駆け寄ってきた。

紬「梓ちゃん、今になって薬の効き目がでたのね…」

梓「みたいですね。何ですかこれ」

紬「何だったかしら…。えっと――」

ムギ父「猫又だよ。日本妖怪に化ける薬も作ってみたかったんでね」

梓の存在に気付いた紬の父が、牙をむいて微笑みつつ彼女達の方を見やる。

梓「何ですかアレ…」

紬「――紹介するわ。私の父よ」



309 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:20:36.71 ID:paEvcPaVO

律「あ、梓なのか!?良かった、無事だったんだな!」

ムギ父「だが、何も解決してはいない。結局の所、重要なサンプルが増えただけだ」

律(くそっ…それが問題なんだよな。どうしようもないだろこれ…)

小さく唸り声を上げつつ、律は紬の父を睨み上げた。

梓「律先輩、苦戦してそうですね…。
  とにかくこっちのでかいのを壊して、早く援護につきましょう」

澪「そうだな。ムギ、危ないから和の所に行っててくれるか」

紬「えぇ…ごめんね」

小さく澪に謝ってから、紬は和と合流する。

和「良かった…梓ちゃん、無事だったのね」

紬「うん。本当に良かった」

和「これで唯も安心でき――あら?そういえば、唯はどこに…」

紬「え?」



311 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:22:19.35 ID:paEvcPaVO

二人は慌てて辺りを見回す。どこにも唯の姿はない。

紬「和ちゃん、一緒に逃げてたんじゃ…」

和「えぇ。でも、律を助ける為にモニターいじりに行ったから…その時にはぐれたのかも」

紬「一体どこに…?」

二人が困惑していることなどつゆ知らず、律は果敢に紬の父に攻めていく。

律(やばいな…そろそろ変身が解ける…。
  また変身するまでにはちょっと時間がかかるから
  ――その隙に襲われればアウトだぞ!どうする!?)

焦る律。すでに牙や尻尾は元に戻りつつあった。変身中は丸いものを見ても意味がない。

それに気付き、勝ち誇った笑みを浮かべる紬の父。

ムギ父「チェックメイトだ!!」

大きな爪が振り上げられる。律はきつく目を閉じた。と、その時。

「やっほ~」

緊張感のない声がどこからともなく聞こえてきた。



313 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:24:35.05 ID:paEvcPaVO

律「…唯?」

ムギ父「どこだ…。どこにいる…!?」

割と近くから聞こえたその声の出所を探す。だが、二人とも見つけることができない。

唯「ここだよ、ここ」

またも聞こえてくる声。

唯「ムギちゃんのお父さんの、頭の上」

驚愕に目を見開き、律は瞳を巡らせた。

確かに唯はそこにいた。先ほどまではそんなところにいなかったはずなのに。

ムギ父「貴様、いつの間に――」

紬の父も全く気が付かなかったというように、口をあんぐり開けている。

唯はゆっくりと彼を操る機械に足をかけ、微笑んだ。

唯「チェックメイトだよ」



316 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:26:35.02 ID:paEvcPaVO

――唯によって機械を破壊された紬の父は、すぐに正気に戻った。

フランケンロボの方も、澪と梓の活躍により、見るも無惨に破壊されてしまった。

長い首を振って何度も頭を下げ、謝罪の言葉を繰り返す紬の父。

ドラゴンに頭を下げられるという貴重な経験をした唯達は、

無事にワクチンを手に入れることができた。

律「しっかし、何で唯は誰にも気付かれずに
  ムギのお父さんの頭の上まで行けたんだ?――ってあれ?唯どこ行った?」

和「あら…?まただわ。さっきも急にどこかに行っちゃって――」

唯「失礼だなぁ、ここにいるよ。和ちゃんの前」

和「え?…きゃ!びっくりさせないでよ…」

唯「ビックリさせるも何も、さっきからいたよ!」

澪「な、何が起こってるんだ?」



317 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:28:04.53 ID:paEvcPaVO

ムギ父「たぶん、彼女が飲んだこの薬の能力だろう」

紬の父が差し出した薬の瓶には、『ぬらりひょん』と書かれたラベルが貼ってあった。

ムギ父「自由奔放にのらりくらりと行動するつかみ所のない日本妖怪だ。
    人に気付かれずに動き回るのが得意な妖怪だね」

律「なるほど…だから今日はよく唯を見失ったんだな…」

紬「日本妖怪の薬は、効き目がでるのが遅かったのね…」

唯「いやぁ、あずにゃんが無事で本当に安心したよ~。
  っていうか、あずにゃん本当にあずにゃんになったんだねぇ」ダキッ

梓「意味がわかりませんよ」

猫又梓をよーしよしよしと声をかけながらなで回す唯を見て微笑みつつ、紬の父は再度頭を下げた。

ムギ父「君たちには本当に迷惑をかけたよ…。
    薬は全て処分する。資料も全てだ。博士達の処遇も、こちらが引き受けよう」

こうして、今回の騒動は幕を閉じた。



319 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:29:46.82 ID:paEvcPaVO

律「ふー…とりあえず一件落着だなぁ」

廃墟から出た律は大きくのびをしながら息を吐く。そして、ワクチンの入った小瓶を見つめた。

律「この厄介な体ともおさらばか…」

唯「んー、もうちょっとぬらりひょんライフを堪能したかったよ」

梓「私は一刻も早く戻りたいですね。このままじゃサーカス行きですよ。…あれ?唯先輩どこですか」

唯「だからここにいるよ!」

笑い合う唯達。そして、ワクチンのふたを開けた。

澪「それじゃあ、元に戻ろっか」

律「あぁ」

唯「――ちょっと待って!」

小瓶の中の液体を律達が飲み干そうとした時、ふいに唯が声を上げた。

唯「良いこと思いついたよ!」



322 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:31:02.97 ID:paEvcPaVO

――時刻はすでに九時を回っていた。

連絡も無しに帰ってこない姉を、心底心配する妹がいた。そう、憂だ。

憂「お姉ちゃぁん…」

涙目になって時計を見つめる憂。

警察に連絡しようかと電話の前をウロウロしていたとき、インターホンが鳴った。

憂「――!はい!!」

慌てて駆け出す憂。ドアの外には、紬と和がいた。

紬「憂ちゃん、今大丈夫?」

憂「は、はい。あの、お姉ちゃん知りませんか?帰りがまだなんですけど――」

和「その唯のことでちょっと話があるの」

憂「…?」



324 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:33:35.77 ID:paEvcPaVO

暗い夜道を駆け、学校へとたどり着く憂達。と、次の瞬間。

梓「フシャアアアァ!!」

憂「!?」

大きな黒猫が背後から突然現れた。

憂「きゃあああああああ!!」

驚いて駆け出す憂。追いかける梓と紬と和。

澪「憂ちゃん…」

憂「――!澪さ…」

声が聞こえてきた方へ目をやると、牙をむいた澪が木に逆さまになってぶら下がっていた。

澪「血を飲ませてくれないかな…?」

憂「!?!?」



326 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:35:37.90 ID:paEvcPaVO

憂「ひいいいいいいいぃ!!」

涙目になって逃げ出す憂。その視線の先に、律が立っているのが見えた。

憂「り、律さん!助け――」

律「う、う、うぅ…ウオオオオオオオオォン!!」

憂「!?!?!?」

救いを求める憂の目の前で、律は満月を仰いで狼人間と化す。凍り付く憂。

憂「いや、いやぁ…」

猫又と吸血鬼と狼人間に囲まれ、憂は震えあがる。そして、

唯「――…トリック・オア・トリートォ…」

憂「」

締めに憂の前に気付かれずに移動した唯が、

おどろおどろしい声でそう言って姿を見せると、憂はその場に卒倒した。



329 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:38:41.23 ID:paEvcPaVO

唯「ういいいいいいいいいぃ!!」

律「まぁ…シャレにならんわな」

澪「仮装なんて可愛いものじゃないからな…」

梓「だからやめましょうって言ったのに」

唯「あずにゃんノリノリだったじゃん!!」

和「ホント、騒がしいわね…」

紬「まぁせっかくのハロウィンだから…やってみたかったっていう気持ちはわかるかも」

騒ぐ唯達を眺めつつ、紬と和は小さく笑った。



その後目を覚ました憂に、みんなこっぴどく叱られたそうな。



おしまい。




330 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:39:52.90 ID:+/4rDuPv0

うむ、乙乙



331 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:40:12.64 ID:NDYXVkxR0

おつ



333 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:40:47.37 ID:jmPpp/WU0

乙!
唯は透明人間だと思ってた



336 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:44:39.41 ID:pTn9VvpE0


途中のりっちゃんがイケメンすぎて漏れた



338 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 21:46:16.51 ID:m0EuoHpR0

乙。面白かった
狼りっちゃん格好よかった





344 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:07:01.01 ID:RxRR3cKL0

首に歯をたてて血を飲んで頂きたかったぜ。
面白かったよ。乙



345 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:11:01.44 ID:paEvcPaVO

>>344
どこかに入れたかったんだよね
どうしても血が飲みたくて仕方なくなった澪に律が飲ましてやるの
でも、話の展開上入りそうになくて泣く泣くカットした




348 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:17:05.25 ID:RxRR3cKL0

>>345
おまけ的なので良いから、ぜひ書いてくれ



349 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:19:33.48 ID:TJJgWCmE0

わファンにもあやまれ!





350 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:26:45.67 ID:paEvcPaVO

おまけか…
ちょっと構想考えるわ

>>349
和ちゃんには活躍の場があったから許して




351 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:36:35.50 ID:m0EuoHpR0

描き殴りだけど狼りっちゃん描いてみた
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1226964.jpg

www_dotup_org1226964.jpg



354 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:39:51.87 ID:cIuv7e+v0

>>351
おーすごいカコイイ



356 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:47:26.24 ID:RxRR3cKL0

>>351
うめぇ
そういや、完全版狼りっちゃんは破いたの上だけだから下はスカートだったんだよな?


口では否定しても尻尾振りまくってるとか最高だよね。



357 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 22:49:03.51 ID:Qx6ZeY9D0

>>351
テライケメン





359 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:19:54.24 ID:paEvcPaVO

本当にただ澪が律から血をいただくだけのおまけになるけど…
それでよければ今から直書きで投下していきます



362 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:28:47.07 ID:paEvcPaVO

もし、研究所突入前に澪が血を求め始めていたら――


唯「律わんの完成が近付いてるんだね」

律「じょーだんじゃないぞ!…とにかく急ごう!」

澪「…ごめん、律。ちょっと、待ってくれ…」ゼェゼェ

乾いた苦しそうな息の下で、澪が呻くように口を開く。律は慌てて彼女に駆け寄った。

律「どうした澪!大丈夫か!?」

澪「凄く、喉が…乾くんだ…。正直かなり、辛い…」

律「マジか…どうすっかな…」

肩で息をする澪。唯達も心配そうにそんな彼女の様子を見守っている。

さわ子「そこで転がってる男達からちょっと血をもらっちゃいなさい。それしかないわ」

腕を組んで考え込んでいたさわ子が、立てた親指で気絶した男達を指す。が、澪は小さく首を振った。



364 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:38:53.99 ID:paEvcPaVO

澪「それは…ちょっと…」

そりゃ見ず知らずの人、しかも男に噛み付けというのは、澪には少し酷な話だ。

律はしばらく口を閉ざし思考を巡らせ、意を決した様にみんなを振り返った。

律「ごめんみんな…ちょっとだけ外で待っててくれないか?」

梓「何するつもりですか?」

律「いや、その…私の血なら、澪も変な気使わなくてすむかなって…」

紬(Oh…)

澪「でも、律…」

律「苦しいんだろ?私のことは良いからさ」

澪は俯いて本当に囁くような声で、じゃあ頼むよ、と律に頭を下げた。



367 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/10/31(日) 23:47:53.10 ID:paEvcPaVO

律「…そういうことだからさ、しばらく待っててくれ」

唯「りっちゃん…献身的だね…」

和「唯でもそんな言葉使えるのね」

唯「さすがに私に失礼だよ和ちゃん」

ぷう、と頬を膨らませつつも外へと向かう唯。他のみんなもあとに続く。

最後に紬がどこか後ろめたそうに外に出て、

廃墟の中には律と澪、そして気絶した男達だけが残された。

律「ふぅ…さてと。さすがに何か小っ恥ずかしいからなぁ、血を吸われてるとこ見るのって」

澪「…ごめんな、律…」

律「ばーか、気にすんなって。仕方ないじゃんか」

澪「…うん」



368 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:00:15.68 ID:49llWlv7O

澪を安心させるために明るく振る舞う。

律は部屋の中を見回して、ぼろぼろのソファを見つけると、

ホコリをいくらか叩き落とした後それに腰掛けた。

律「よっしゃ、じゃあ早く済ませちゃおうぜ。長引くと辛いだろ」

澪「あ、あぁ。…ど、どうしよう」

律「そうだなぁ…とりあえず腕にでも噛み付いて――」

袖をめくろうとして気が付いた。自分が今は半狼人間となっていることに。

腕は見事にふさふさの毛が生えそろっていて、牙をたてても皮膚に届きそうにない。

律「あっちゃー…そっか、腕は無理だな…」

さてどうしようか。律は考える。

自然と頭に思い浮かべるのは、ホラー映画に出てくる吸血鬼の吸血シーン。

…それは先ほど澪に血を舐められた時と状況が酷似していた。

律「あー…うぅ…」

急に恥ずかしくなって、律は顔が熱くなるのを感じた。横目で澪を見る。凄く苦しそうだ。

律(…恥ずかしがってる暇、ないよな)



369 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:15:42.03 ID:49llWlv7O

律は一つ息をつくと、黙ってシャツのボタンを少し外し、首筋をはだけた。

律「ん。ひと思いにがぶっといっちゃってくれ」

澪「えぇ…!?そ、そんな本格的にいかなくても…」

律「つーかここぐらいしか良い場所がないんだよ。悪いな」

律は目を閉ざして、恥ずかしいのを必死に堪える。

そんな彼女の様子を見て、本気で考えてくれているのだと理解した澪は、

ゆっくりと律の前に立った。

澪「――わかった。ごめんな律、ちょっと痛いかも」

律「…おう。大丈夫だから、気にすんな」

目を閉じたまま返事を返す律。澪は震える口から長く息を吐くと、律の肩に手をかけた。

澪「じゃあ、えっと…いただきます?」

律「…恥ずかしいからやめろ」



371 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:27:16.66 ID:49llWlv7O

きめ細かくてすべすべした律の首筋に、澪は鋭くとがった牙をたてた。

ぴくり、と律が反応する。

澪(…ごめん)

心の中でもう一度謝り、一気に噛み付く。

皮膚を突き破って牙が侵入してくるのを感じ、律は小さく呻いて眉を顰めた。

じわりと血がにじみ、流れ出す。澪はその温かな血を、丹念に舌で舐め取った。

鋭いものが突き刺さる痛みと、首筋を舌が這いずるくすぐったさが

ない交ぜになって律の体を電流のようにかける。

律「は、ぁ…」

そのどうしようもない感覚に、自然と涙が滲み、息が荒くなる。

先ほどの傷口を舐められたくすぐったさとは、比べものにならない感覚だった。



374 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:43:50.42 ID:49llWlv7O

澪(何だろ…凄い喉が渇いてたからかな…。――律の血、凄くおいしい…)

一心不乱に舌を這わせる澪。もっと、もっと飲みたい。

もっとこの最高に喉を潤してくれる律の血を味わいたい。

その欲望が澪を支配し、彼女は滴ってくる血を舐めるのでは飽きたらず、直接吸い出し始めた。

律「――うっ…ぐ…」

またも経験したことのない感覚が律を襲い、律の体が小さく震えた。

牙の刺さった傷口からどんどん血が吸い出されていくその痛いようなくすぐったいような、

言葉にできない感覚は、だんだんの律の思考を麻痺させていく。

律(なんだこれ…何か、変な感じ…)

たまらず大きく息を吐き出す。その呼気は澪の長い髪をくすぐり、揺らすが、

それを意に介さず澪は血を吸うことに夢中になった。



379 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 00:59:17.68 ID:49llWlv7O

澪(おいしい…もっと…)

律の肩にかけた手に力が入る。

澪は律を先ほどと同様押し倒さんばかりの勢いで覆い被さっていく。

律「み、お…」

明らかにコントロールが効いていない様子の澪を抑えようとするも、

体に全く力の入らない律は為す術もなくされるがままになってしまう。

澪(もっと…欲しい…)

牙がさらに深く律の肩口に食い込んだ。

律「――…つっ!あ、ぅ…」

走る痛み。さらに溢れ出す鮮血。それを吸い出し、飲み込んでいく澪。

澪「…ふっ…」

息をするのも難しくなるぐらい律の血を貪る。

飲み損なった血が、口内に溜まった唾液と共に少しばかりこぼれ落ちる。



382 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:10:26.45 ID:49llWlv7O

自分の血のにおいが鼻を掠め、律は涙が滲み霞んだ視界で澪を見た。

律(どれだけ…夢中になってんだよ…)

これがあの指を切ったぐらいでガクガク怯えていた澪なのだろうか。

夢中になって首筋に食らいつくその姿は、まさに映画で見た吸血鬼そのものだった。

律「はぁ…う、ぅ…」

何とも言えない感覚が全身を満たし、指を動かすのも辛いぐらい力が抜けていく。

そろそろ限界だった。頭もクラクラする。

律「み、お…澪……!」

何とか声を張り上げる。だが、澪は吸血をやめようとしない。

舌を這わせたり、吸い出したりを交互に繰り返し、無我夢中で血を貪る。



385 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:21:23.46 ID:49llWlv7O

律(まず、い…)

完全に我を失っている。このままじゃ自分の命に関わってくる可能性もある。

律(澪…目を、覚ませ…!)

限界の体に鞭打って、律は腕をなんとか伸ばす。

律「がるる…」

歯を食いしばって必死に手を動かすと、

つい喉の奥から狼のような唸り声が迫り上がってくる。

律はその手を澪の背中に回した。

まだ自分の首に食らいついたままの彼女を正気に戻すため、律は強硬手段に出た。

律「ごめ、ん…!」

力を振り絞って澪の背中に爪を食い込ませる。

澪「――!あ、ぐ…!」

痛みに思わず悲鳴を上げ、澪の口はようやく律の首筋から離れた。



386 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:33:50.75 ID:49llWlv7O

律(なんとか…成功…)

肩で息をしつつ霞む目で澪を見る。

死力を尽くした律は、安心したと同時に急激に気が遠くなるのを感じた。

澪の背に回した手がずり落ち、ソファの上に倒れ込んだ。

澪「いたた…あ――ご、ごめん律、私…律!?」

痛みで我に返った澪は、すっかり暴走してしまったことを思い出し、慌てて律に謝ろうとする。

だが、その律は完全に力尽き、ソファの上で崩れ落ちていた。

澪「律!律!!」

自分のせいで、律をこんな目に合わせてしまった。澪は半泣きになりながら律の体を揺する。

律「――…大丈夫…だから。…っへへ、狼人間の体力…なめるなよ…?」

澪「律ぅ…ホントに、ごめんな…」



388 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:41:10.10 ID:49llWlv7O

その後、澪は外で待っていたみんなを呼び戻し、再び全員が合流した。

律「ごめん…まだちょっと、休憩させて欲しい…。若干貧血気味で頭クラクラする…」

ソファの上でぐったりとなった律、

そしてその首筋に残る牙の後を見て、唯がごくりと生唾を飲んだ。

唯「おぉ…なんか、生々しいね」

梓「はい…何だかドキドキします…」

律「ホント凄いぞ…。きっとお前らが想像してるよりも遙かにいろいろ大変だからな」

澪「うぅ…恥ずかしい…」

和と紬に介抱してもらいつつ律は、

一刻も早くワクチンを手に入れて澪を元に戻さねばと改めて心に誓うのだった。


おしまい。




389 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:45:58.05 ID:tqYlPvGI0

おぉーいいねーお疲れ様おもしろかったー



390 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:46:32.64 ID:LKwDqWgx0

おつ



392 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:48:26.57 ID:pQAx86Co0

書いてくれてありがとう。




393 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 01:55:09.29 ID:9IAW6liB0

これで心おきなく狼りっちゃんの夢を見られる




394 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/11/01(月) 02:02:37.07 ID:UdywOtvv0

乙。良い吸いっぷりだった。
そして調子に乗ってまた描いた。吸血澪
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org1227390.jpg

www_dotup_org1227390.jpg






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律「狼人間!」#後編
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タイトル:
NO:7 [ 2010/11/01 20:50 ] [ 編集 ]

りっちゃんエロいよ天使だよ

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