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律「…イリス」#後編 【クロス】


http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1282655675/

梓「レギオン?」
唯「ギャオス?」
律「…イリス」#前編
律「…イリス」#後編




177 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:09:11.39 ID:fy8DZflQ0

― 同 10時07分 桜ヶ丘東町 柳星神社


汗ばむ日差しの中、自衛隊員が祠の残骸の周りに集結していた。


澪「ここの…窪みに」

律がいた祠の後ろの窪み。
澪が指さした先を89式小銃を構えた防護服姿の自衛隊員が入っていく。

自衛隊員A「生物はもういないようです!」

その声に続いて化学防護隊員が歩み出る。

化学防護隊隊員①「窪みになにかあります」



178 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:10:03.45 ID:fy8DZflQ0

鳥類学者「これは…」

鳥類学者がピンセットで落ちていた粘液質な塊を拾い上げる。

それを自衛隊員が受け取って別の隊員に渡す。

化学防護隊隊員②「おい、分析にまわせ」

化学防護隊班長「以前のギャオスとは様子が違うな…」

鳥類学者「見た目や印象で決めるのは危険です…」

澪「…」

通信手「班長!桜台南で民家複数が変異体に襲撃されたとのこと!転進命令です!」

化学防護隊班長「何!?」



180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:27:03.76 ID:fy8DZflQ0

― 同 10時36分 桜台南

澪を含め、化学防護隊が現場に到着した時には、

先着した自衛隊員が半壊した家々から遺体を運び出す最中であった。

新興住宅地に建ち並ぶ真新しい家々はどこかしらが壊れている。

9月の妙に強い太陽の光と異様な匂いが立ち込める中、高機動車から降りてしまった澪が

所在無げに現場を見回していると、パトカーの車載無線機を使っている警察官の会話が耳に入った。

警察官「―43歳女、高橋風子、18歳女。計32名。以上です。どうぞ!」

澪「た…高橋風子!?」

本部『―了解。なお現在収容先不足につき、自衛隊方には一旦搬送待つようを要請を願いたい。どうぞ!』

警察官「桜585、了解」



181 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:27:45.91 ID:fy8DZflQ0

白ヘルメットの警察官は通話を終わらせると車載無線機のフックにマイクを戻す。

そしてため息を付いたのを見届けてから澪は警察官に話しかけた。

澪「あの。高橋風子さんって…桜が丘高校ですか?」

警察官「あー、そうだよ…。3年生の…あ、君は…桜高か。友達かい?」

ヘルメットの警察官は気を使っているのか曖昧だ。

鑑識課員「これ高橋風子さんね」

その声に振り返ると鑑識課員が遺体に掛けられた毛布にタグを付けようしていた。

鑑識課員「あっおい、見ない方が…」

澪は制止も聞かず遺体に掛けられたらくだ色の毛布をめくった。

その下には担架に乗せられている変わり果てた風子の姿があった。



182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:29:16.99 ID:fy8DZflQ0

― 同 14時44分 寿町 三十七総合病院 特別室


医者「取り込まれた影響か、海馬体が異常に肥大してます」

唯「カイバタイ?」

和「記憶の形成なんかに関わる場所よ」

医者「ええ。その通りです」

医者「前回の平沢さんのケースとは違い、彼女はうわ言も繰り返してます」

医者「やはり…ガメラのケースと同じ、または近いのかも知れない…」

唯「ガメラと同じ?」

和「目を覚まさない理由がですか?」

医者「ええ…例の生物が精神的に何か干渉してるんかもわかりません」

紬「とにかくよろしくお願いします」

医者「もちろんです」



183 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:30:51.39 ID:fy8DZflQ0

― 同 数十分後 某所

国道を走るクラウンマジェスタの車中。


唯「ねぇムギちゃん。りっちゃんあんな勾玉持ってたっけ?」

紬「私も初めて見たわ…」

ベッドに寝かされていた律の首には見慣れない勾玉が掛けられていたのだ。

和「大きさも形も唯のとは微妙に違うけど…」

和が助手席から振り返った。

唯「…あれってイリスの?」

唯は呟いた。



184 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:31:26.32 ID:fy8DZflQ0

― 同 15時22分 桜ヶ丘郊外 桜山ハイキングコース

ハイキングコースを歩くカップル。

森ガール「あれ?なんだろ」

リア充「お?」

女は森の中を見つめている。

男もつられるように森の中を見るが何も見当たらない。

リア充「おいなんだよ。なんもねぇ―」

森ガール「きゃっ!」

急に何かに引っ張られて女が雑木林に消える。



185 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:32:10.29 ID:fy8DZflQ0

リア充「え?」

女「きゃああああああ」

リア充「由紀恵!?」


激しく茂みの中からはガサガサという音と悲鳴が聞こえる。

リア充「おおい!」

男が慌てて森の中に分け入ろうとすると何かが放り出されて地面に転がる。


リア充「うわああああああああああああああ」

放り出されたのはミイラ化した女だった。



186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:33:27.98 ID:fy8DZflQ0

― 同 秋山家 澪の自室

澪は掛け布団を被って床にうずくまっていた。

瞼を閉じる度に変わり果てた風子の姿がフラッシュバックする。

「…ひどい」

思わず呟いた。

「私がケリをつける」

澪はやおら布団を振り払うと、机の上に置いてあった十握剣を取り上げた。




187 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 20:47:41.36 ID:15078J/n0

体液吸われるのってどんな感覚なんだろ・・・
自分が干からびていくの知覚できんのかな?
ギャオスに食われるのといい、そんな死に方だけはしたくない(´;ω;`)

人間に生まれて本当によかった
グリズリーマンの悲鳴を思い出した



188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:04:39.06 ID:X5U3Cd/pP

最初は意識あるだろうがすぐに脳に血が届かなくなって、苦しむ間もなく死にそうだな

イリスが人間襲うシーンはあまり無いにも関わらず、とんでもない化物だって
強く印象づけられたわ





189 名前:サルってました:2010/08/25(水) 21:12:16.34 ID:fy8DZflQ0

― 同 16時24分 寿町 三十七総合病院 特別室

梓「律せんぱーい」

憂「お見舞いに来ましたー」


梓「あれ?」

憂「いない?」

病室に思えないほどだだっ広く、応接セットまで設えてある特別室の中は

がらんとし、誰かが入院していたような痕跡はなかった。

梓「あれ?ここだよね?部屋間違えたかな?」

憂「それはないよ」

二人は顔を見合わせた。

梓「ムギ先輩に聞いてみようか」

そう言って二人は部屋を後にした。



190 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:13:28.17 ID:fy8DZflQ0

― 同 17時24分 寿町 三十七総合病院 ナースステーション


紬「移送ってどういう事!?そんな指示誰が出したの!?」

廊下までムギの怒鳴り声が響き渡る。

医師「ええ…お嬢様の代理と名乗る方で…
   書類に不備もなかったし不審な点もなくて…申し訳ありません…」

医師はムギに目を合わせないようにしながら移送指示書を紬に手渡した。

紬「移送要請者…曽我部恵…?」



191 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:17:01.02 ID:fy8DZflQ0

― 9月25日 4時22分 中上町 マンション

マンションの一室。

カーテンで締め切られ、真っ暗な白い部屋の壁には異様な文字が四面に張り巡らされている。

その部屋の中央に置かれたベッドには律が横たわっていた。

恵はその前に立つと手を合わせる。

恵「海神の底に眠りし甲羅は悪しき魂の憑代なり。
  中つ国のために、悪しき魂を屠り、地の果てに追いやらん―」

経文のようなものを唱えながら恵は勾玉を強く握り締める。

律「…」

律はまるで何の反応も示さず眠っている。

その一方で恵は電撃が走ったように勾玉を手放した。

恵「はぁ…はぁ…」

その傍ら、恵はそのままベッドの律の横に突っ伏した。



192 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:18:30.61 ID:fy8DZflQ0

― 同 5時47分 平沢家

『ギャオス、世界的規模で大量発生』、『きょう午前にも安保理緊急招集へ』

朝刊の一面にはギャオスの見出しが大きく載っている。

憂「…お姉ちゃん」

憂はポストから取ったその朝刊を片手に唯の枕元に立っていた。

唯は静かに寝息を立てている。

唯「むにゃ」

唯をしばらく見つめてから憂は再び朝食の支度と弁当の仕込みに戻っていった。


― 同 6時00分 桜台 陸上自衛隊桜ヶ丘駐屯地


通信手「了解。防衛出動命令発動。第54普通科連隊は1000を以って桜山まで前進する。終わり!」

朝日の中、防衛出動命令を受けた陸上自衛隊第54普通科連隊がイリスを掃討すべく出動した。

偵察バイクを先頭に、続々と車列が駐屯地の正門を走り抜けていくのを警衛が見送っていた。



194 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:25:52.95 ID:fy8DZflQ0

― 同 10時55分 桜山 登山口

静かな山間にV8ディーゼルエンジンの爆音が響く。

停車した73式大型トラックからは
迷彩のフェイスペイントを施した普通科隊員達が飛び降りてくる。

「二班前!」

「了解!」

「一班止まれ」

「三班右!」

号令が響き、隊員達が分散するように雑木林の前に並ぶ。

小隊長「戦闘指揮所、こちら先遣。準備完了」

小隊長「…了解!」


戦闘指揮所からの返答を受けた小隊長は通信手にハンドマイクを渡すと、号令を下す。

小隊長「小隊ー!前進用意!前へ!」

それを合図に89式小銃を構えた小銃小隊員達は続々と雑木林に突入した。



196 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:31:17.18 ID:fy8DZflQ0

― 同 同時刻 桜ヶ丘 桜が丘駅前

前日夜、和は恵と接触することを決意していた。

そして唯にははっきりと恵が何らかの形で噛んでいると考えられると伝えた。

唯は意外なことにそれを納得し、恵と会うことも快諾した。

その一方で憂には知られないようにした上で、二人は恵と会った。


中途半端な時間なのか乗客が閑散とした桜が丘駅の広場で三人は顔を合わせた。

和「お久しぶりです」

現れた恵に和は会釈する。

恵「久しぶりね」

唯「りっちゃんはどこですか?」

恵「あら。平沢さんも」

まるで予測していたような口調で恵は微笑んだ。



197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:33:11.91 ID:fy8DZflQ0

― 同 13時20分 桜山 山中

OH-1が上空を飛び回る中、すっかり巨大化したイリスは雑木林に静かに佇んでいた。

その回りには様々な動物のミイラ化した死体が転がり、さながら地獄絵図と化している。

通信手「巨大生物、依然として動きなし」

通信手が額に汗を滲ませながら小隊通信機で定時報告を行う。

連隊長『こちら連隊長、目標と十分な距離をとり、監視を続行せよ!』

小隊長「了解!」

89式を構え、息を殺して隊員達はイリスを見つめていた。



198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:34:44.83 ID:fy8DZflQ0

― 同 15時23分

まるで昼寝から目覚めるかのように生物は動き出した。

あくびのようなイリスの唸り声は低く雑木林に響き渡る。

小隊長は双眼鏡から目を離すと通信手からハンドマイクをひったくった。

「戦闘指揮所。こちら先遣小隊。目標、活動開始!」


イリスは先遣小隊に向かって緩慢ながらも向かい始める。

小隊長「射撃用意」


― 同 桜山 戦闘指揮所 82式通信指揮車


連隊長「先遣、詳細を報告せよ。先遣どした!?」

しかし先遣小隊からの連絡はない。

連隊長が山を見上げたとき、遠くから乾いた銃声が響いた。

連隊長「!?」



199 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:36:08.34 ID:fy8DZflQ0

― 同時刻 桜が丘駅前通

曇り空の中、駅前通を三人は歩いていた。

恵「ギャオスは人類の天敵として創造されたとしたらどう?」

突然先を歩いていた恵が振り返った。

恵「増えすぎる人口を調節し、腐敗した人類の文明をリセットするために」

和「誰がそんな事を!?」

恵「私と同意見の人ね」

和「ならガメラはそういう傲慢な考えを打ち砕くために生み出されたんですね」

恵「正しいわ」



200 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 21:36:54.01 ID:fy8DZflQ0

唯「ガメラをどう思ってるんです?」

恵「ガメラの墓場の話、聞いてるわよね?
  ガメラは古代人が創りだした地球の意思を受ける器。ガメラは人よりも地球の意思を優先する」

唯「ガメラは人との関わりを断ち切ったんじゃ」

恵「勾玉が壊れたときにね。でもガメラの復活を願ったのは人。それがガメラの最大の弱みよ」

恵「ついてきて…田井中さんのところに案内するわ」

再び恵は背を向けて歩き出した。



202 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 22:02:02.58 ID:fy8DZflQ0

― 同 15時55分 桜山 山中

乾いた銃声が山間に激しく響き、89式5.56mm普通弾がイリスに降り注ぐ。

先遣小隊の面々は迫るイリスにじりじりと後退しながらも攻撃の手は緩めない。

隊員r「小銃てき弾、前方120!」

銃口に小さなロケット弾のような06式小銃てき弾を装着した隊員が進み出る。

小隊長「撃て!」

数発のてき弾はゆっくりと飛翔していき、
イリスの至近距離で炸裂して対軽装甲用の調整破片がイリスに襲いかかる。

しかしイリスはそれを砂粒か何かの直撃のように受け流して進行する。

隊員r「効果なし!」

なおもミニミ機関銃、89式小銃からは真鍮色の薬莢が飛び、
硝煙の煙が白く立ちこめる中イリスはゆっくりと先遣小隊へ向かってくる。



203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 22:02:42.59 ID:fy8DZflQ0

小隊長「無反動射撃用意!」

砲手「準備よーし!」

その号令と共に無反動砲組が狙いを付けて前に進み出る。

小隊長「テェッ!」

84mm無反動砲から発射された対戦車榴弾が
立て続けにイリスに直撃するが、イリスはそれをも物ともしない。

その触手が雑木林を薙払ったのは一瞬の出来事だった。

隊員a「ぎゃあああああ」

隊員b「くそー!」

隊員c「おい!大丈夫か!?」

小隊長「連隊長に報告!小隊は第二警戒線まで交代する!」

通信手「こちら先遣小隊!損害多大!第二警戒線まで後退する!」

倒木で負傷者が相次ぎ部隊は戦力を一気に奪われる。



204 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 22:05:48.79 ID:fy8DZflQ0

隊員f「大丈夫か!?」

隊員d「しっかりしろ!」

そこに負傷した隊員の救出や分隊支援火器の弾切れが重なり攻撃の手が一瞬緩まった。

立て直しを始めて緩んだところを狙うように今度はイリスは直接隊員達を吹き飛ばした。

「退避!」

「飛ぶぞ!」

「う、わ!」

凄まじい風圧が隊員達を襲い、先遣小隊は遂に全滅した。

邪魔のいなくなったイリスは空へと舞い上がる。



205 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 22:07:19.74 ID:fy8DZflQ0

― 同時刻 中上町 マンション 805号室

和「律…」

唯「りっちゃん…」

恵「…」

律はベットに腰掛けぼんやりと三人を眺めている。

しかしその目はまるでなんの感情を抱いていないかのようだった。



206 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 22:09:18.27 ID:fy8DZflQ0

紬「曽我部先輩」

突然の声に恵が振り返ると、そこには数人の警察官とムギの姿があった。

恵「琴吹さん…」

紬「律ちゃんは病院へ運ばせて貰います」

恵「…」

紬「巨大生物は…ギャオス変異体は
  神経系統との融合を試みた可能性があります。命に関わるかもしれません!」

恵「生物は融合を試みてそれをどうしようと…?」



207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 22:10:20.65 ID:fy8DZflQ0

一瞬間をおいて和が口を開いた。

和「…融合した後、自己進化するのでは」

急に外を風が強く吹き抜け、ガラス窓を揺らした。

紬「何か来る!?」

和「!」

恵「!?」

ムギの一言で窓の向こうを見る。

空をイリスが飛び去っていくのが目に入った。



208 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 22:13:59.33 ID:fy8DZflQ0

― 16時32分 航空自衛隊早期警戒機E-2C

数十キロ離れた上空を飛行する早期警戒機E-2Cホークアイ。

灰色のターボプロップ機の背中には回転する巨大な円盤の状レドームが搭載されている。

レーダーオペレーター「こちらセントラ。目標を捕捉、追尾開始」

その捜索レーダーにはしっかりとイリスが捉えられていた。



209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 22:16:51.10 ID:fy8DZflQ0

― 16時37分 東京都府中市 航空総隊司令部 作戦指揮所


LCD画面に明滅する表示。

先任要撃管制官「こいつか!?やりたい放題やってくれたギャオスは!」

幹部要撃管制官「ギャオスとは確認されていません。形態が著しく違うようです」

先任「セントラは追尾できるか?」

要撃管制官D「大丈夫です」

先任「近傍のFは?」

要撃管制官E「百里の15が東京湾上空でガメラ警戒中です」

先任「アプローチさせろ」

要撃管制官E「間もなく一帯は暴風圏に入りますが?」

先任「目標の進路は人口密集地だ。まずは市街地から引き離せ」



211 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 22:18:22.10 ID:fy8DZflQ0

雲を突き抜け、透き通った空にイリスは躍り出た。

虹色の飛行膜を展開したイリスはそのままホバリングするように宙を漂う。


そこへ転進命令を受けたF-15Jが2機猛然と襲いかかる。


要撃管制官A「パルサー1、パルサー2接敵。射程距離です!」

先任「威嚇射撃を許可する」

F‐15のM61バルカン砲が唸り、
タングステン合金製の20ミリM50榴弾が火線を引きイリスに殺到する。

要撃管制官A「目標、射撃に反応し、触手のようなもので攻撃して来ます!」

先任「回避させろ」

要撃管制官A「パルサー1、パルサー2、回避せよ」


パイロット「目標が再び攻撃してくる!」

飛行形態となったイリスは既に恐るべし飛行能力を持っていた。



212 名前:>>210 基本的にはそう:2010/08/25(水) 22:24:19.66 ID:fy8DZflQ0

先任「ミサイル発射を許可する」

しかしF-15は飛行を開始したイリスをロックオンするどころか

まともに後ろを取ることすらできずに苦闘していた。

パイロット「…目標の運動は当機を凌駕、ロックオンできません!」

触手の先端からはレーザーのようなものを発射し、凄まじい運動能力を持つイリス。

戦闘機相手の格闘戦とはまるで違う、生物相手の戦い。

2機のF-15は増槽を投棄してもなおギリギリの回避を強いられる。



215 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 23:00:48.81 ID:fy8DZflQ0

イリスとF-15Jを一瞬雲が隔てた瞬間、雲が割れて突如黒い影が現れる。

雲が散っていくにつれその全貌が明らかになる。

パイロット「ガメラ!?」

F‐15のパイロットは思わず瞬いた。

月明かりに照らし出されたガメラはF-15とイリスの間に割って入り、イリスへ立ちはだかった。



要撃管制官C「目標付近に新たな飛行物体現出、500Ktで交戦域に接近中!」

同時にLCDの表示は二つになった。

要撃管制官A「パルサー1、ミサイル発射不能。パルサー2、ミサイル残弾なし」

要撃管制官C「目標転進!北上開始!」



216 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 23:04:16.81 ID:fy8DZflQ0

遂に二体の守護獣、朱雀と玄武ことガメラとイリスが対峙する。

一瞬の静寂を置き、イリスとガメラは激しくぶつかり合った。



副司令「先程海自より東京湾沖合にガメラ現出との連絡があった。
    新たな目標はガメラだ。行動中の各機を誘導し排除行動に移れ!」

管制台に副司令がいきなり割って入った。

先任「するとこっちの飛行生物は!?」

主導権を奪われた先任が負けじと叫ぶ。

副司令「ガメラの掃討が先だ。第3高射隊にペトリオットの準備をさせろ!」

LCDに表示されるマーカーが静かにからに変更される。


その上空では激しい巨大生物同士の空中肉弾戦が繰り広げられていた。

回転ジェットでの体当たり、イリスの触手攻撃。

ガメラの血は何度も霧のように空中に舞い散った。



217 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 23:05:53.28 ID:fy8DZflQ0

― 16時55分 陸上自衛隊霞ヶ浦駐屯地 航空自衛隊第3高射隊ペトリオットPAC3陣地

隊員達が慌しく走りまわる中、並んだ発射機には電源供給用のメタルコンセントが接続され、

M901発射機は目を覚ますように立ち上がり、モーター音を立てて回頭した。

レーダー員「目標探知!」

射撃管制員「射撃用意!」



― 同時刻 患者搬送車 車中


律「はぁ…はぁ…」

何が起きているのか律の息は荒くなり、首にかけられた勾玉も青く光り出す。

和「律をまだ求めて…完全に融合しようと…」

唯「…」

紬「急いでください!」


運転手「はい!」



218 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 23:09:45.86 ID:fy8DZflQ0

― 16時57分 航空総隊司令部 作戦指揮所

要撃管制官①「第3高射隊、ペトリオット発射準備完了」

副司令「発射を許可する!」


数秒後、発射機からは甲高いロケットモーターの音を響かせ、
1発3億円のPAC3ミサイルが空へ真っ白な噴煙を残し飛び立った。



要撃管制官②「ペトリオット発射確認」

要撃管制官①「着弾まで20Second!」

LCDの画面上に現れたは高速でに移動していく。



219 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 23:15:37.39 ID:fy8DZflQ0

そして2発のミサイルはその使命を全うすべく、イリスと戦うガメラに躊躇うことなく突っ込んだ。

凄まじい爆発、ペトリオットの直撃を受けたガメラは失速する。


要撃管制官①「着弾を確認、ガメラ速力低下」

要撃管制官②「飛行生物、転進、降下します!」

先任「どこに降りるんだ!?Fで阻止させろ!」

要撃管制官①「…市街地、桜が丘方向へ戻ります!」

要撃管制官A「間に合いません!」


イリスは、失速し怒りのこもる咆哮を上げるガメラを引き離すと、Uターンして急降下を始めた。



220 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 23:20:13.02 ID:fy8DZflQ0

― 17時47分 寿町 三十七総合病院 特別室

律が再び病院に戻された時には律の症状が収まっていた。


恵「人は緩慢な自滅の道を歩いている…ギャオスがいなくてもいずれ滅ぶ。
  しかし滅亡より悪い未来が待ってるかもしれない。
  そうなる前に人類の幕を引いてもらおうと言うのが
  ギャオスを生んだ者の考え。ガメラがそれを止めるのは―」


唯「ギャオスに人類なんて滅ぼせません」


恵「ギャオスじゃない。もう新たな存在よ。
  あらかじめ用意されていたのか自己進化の結果か。
  かつてガメラがそうしたように、人と交感してより強くなろうとした。
  しかも融合してガメラを超えようとしている…」



221 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 23:21:04.46 ID:fy8DZflQ0

唯「…」

恵「ガメラは勝てない」

和「どんなにみっともなくても生物は最後の瞬間まで生き延びます!人類だって!」


律「来た…」

その応酬の最中、突然律が窓の外を見上げた。



223 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 23:25:04.82 ID:fy8DZflQ0

― 17時51分 桜ヶ丘駅前北口 コンビニ

降りしきる雨はガラス窓を濡らし、客足は鈍い。

姫子はレジで18時の現金チェックに勤しんでいた。

純「ふんふん♪」

店内にはいつもの立ち読み常連の癖毛爆弾爆発頭が20分ほど前から蔓延り、

客が1人になってからは鼻歌まで歌いだす始末、姫子の神経は激しく逆撫で続けられていた。

姫子「…」

雨というのもあり苛立った姫子は現金チェックを中断し、レジを片付けて売り場へ出る。



224 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 23:27:37.39 ID:fy8DZflQ0

姫子「あの、お客様―」

今日こそ癖毛爆弾頭を店内から駆逐すべく声をかけた瞬間だった。

凄まじい揺れが襲い、棚という棚から商品が大量に落下する。

姫子「な、何?地震!?」

二度目の揺れで今度は店内の照明が消える。

それは大雨の中、イリスが桜が丘に再び帰ってきた瞬間だった。

純「あ、あれ!」

姫子「!」

濡れた窓の外には巨大な生物がいた。

展開した虹色の飛行膜が光を受け艶かしく光る。



225 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 23:28:46.41 ID:fy8DZflQ0

― 同時刻 桜が丘駅前踏切

帰宅ラッシュとなり混雑していた桜が丘駅一帯は一瞬でパニックに陥った。

イリスの飛来は人々が目の当たりにした渋谷のトラウマを呼び起こし、一層混乱を拡大させる。

怒号と悲鳴、クラクションが鳴り響き、

踏切では乗り捨てられた車が引っかかり、

遮断機が降りきらず鐘を鳴らす踏切。


市民「逃げろー!」

市民「助けてー」

市民「わああああああああああ!!!」

逃げ場もわからず走りまわる人々で小さな駅は大混乱に陥り、

自転車はところ構わず乗り捨てられ、傘や持ち物が辺りに散乱した。

そしてその中には阿鼻叫喚をかき分けて走る澪の姿があった。




226 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/25(水) 23:48:22.34 ID:ulo7iC4t0

人が死ぬのと、着陸して木が踏み倒されるってのは
おそらくガメラの中では一緒なんだよな(少なくとも3くらいでは)

子供を助ける、みたいな結果になっても
あくまでそのときの状況の一つであり、人間の側の意識の違いにすぎなくて、
たまたま踏み倒されなかった木があったのとあんまり変わらない・・・
怪獣映画ってこえぇ・・・(´д`; )





228 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 00:12:26.06 ID:6HVfjX+d0

― 同時刻 寿町 三十七総合病院

澪「律!」

唯「りっちゃん!」

律は急に走り出す。

まるで何かに呼ばれたかのように廊下に飛び出すと、一目散に消えていく。

和「待ちなさい!」

唯「りっちゃん!」

その後を三人が追う。

時を同じくしてイリスは市街地を踏みつぶしながら何処かへ進んでいた。



229 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 00:12:57.38 ID:6HVfjX+d0

― 桜が丘女子高等学校


律「…イリス」

一行が律に追いついたのは桜高の屋上だった。


律が見つめるその先には美しくも巨大で禍々しい生き物がいる。


紬「あれが…」

恵「ギャオスを生んだ者達は滅ぼされたがその末裔はこの国へ来た!
  縄文弥生を生き抜いてかつて巫女だった者、あの怪物と交わる役割は本来私」

恵は叫ぶようにまくし立てた。

恵「しかし時は私の家の血を薄めた!
  交わって悪魔を産むにはこの時代の少女の方が相応しい!
  選ばれたのが田井中律だったのよ!」

振り返った恵の目には嫉妬とも憎悪とも取れぬ狂気があった。



230 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 00:13:43.45 ID:6HVfjX+d0

和「!」

その後ろ、凄まじい暴風雨の中、ほとんど直角に急降下してくるガメラ。

イリスはそれを迎え撃つかのように触手を振り上げた。

振り上げられた触手に沿って街並みには火柱が上がっていく。

律「…」

和「街が…」

イリスの長い腕は一瞬で慣れ親しんだ街を燃え上がらせた。


5人の頭上をかすめたガメラは住宅街を舐める様に水平飛行に移る。

その風圧によって信号機、屋根瓦、アンテナ、標識、電信柱、看板、自転車、車と、
ありとあらゆるものが掠め取られて宙を舞う。




231 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 00:15:24.55 ID:6HVfjX+d0

警察官「急いで!早く早く早く!」

人「ああああああああああああああああ!」

人「逃げろー!」


架空線を引きちぎり、電柱や家をなぎ倒しながらガメラが着地すると、咆哮を上げる。

桜が丘が炎に包まれる中、南北の二対が対峙した。

雨は止み、一瞬の静寂に包まれる。

雲は晴れ、濃青色の空には月が覗いた。



232 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 00:18:36.21 ID:6HVfjX+d0

逃げまどう人々の雑踏をかき分けて進む澪には邪魔が入った。


警察官「ああー!?桜高の方は立入禁止や!止まりなさい!」

誘導灯片手の太った警察官が澪の前に立ちはだかった。

しかし次の瞬間には凄まじい咆哮とともに二対は再びその姿を表した。

警察官「出たああああああああああ」

警察官は驚きのあまりなのか澪の手を掴む力が弱まる。

それを振り払い澪は再び二体の怪獣の方へ走った。



誰もいなくなった生活道路の水溜りに二匹の影が映る。

がっぷり組み付いた二体はどんどん桜高の方へ進んでいく。

その足元では民家はマッチ箱か何かのように簡単に押しつぶされて瓦礫と化していく。

駅ではガメラが押されて、桜ヶ丘駅の小さな駅舎を押し潰して架線柱をなぎ倒す。

停車中の電車はそれに吹き飛ばされて宙を舞い近くの建物に落下する。



233 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 00:19:31.00 ID:6HVfjX+d0

― 桜が丘女子高等学校 屋上

明々と燃え上がる街を背景に今や二体は直ぐ側まで迫り、

その火災の激しさは夕闇の中でも詳細なディテールが見て取れる程だった

律「イリス。殺して!」

それに呼応するかのようにイリスは手甲をガメラの腹部に突き刺した。

ガメラの苦悶の声と共に夥しい緑色の血が飛び散る。

律「殺して!」

唯「りっちゃん!違う!」

唯は律の腕を掴んで引っ張った。

和「唯、ガメラとまだ!?」

律「…」

唯「違う、りっちゃんの方!」



234 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 00:22:53.65 ID:6HVfjX+d0

唯「りっちゃんがガメラと戦ってる!」

和「!?」

唯「ガメラは誰も殺したくないの!りっちゃんがやめないとみんな死ぬの!
  あの火を見て!あの中には!りっちゃん!」

唯は街を指差しながら絶叫した。

和「律!」


恵「!」

恵は突然律が下げていた勾玉を奪い取った。

そして目の前に迫って来る二対。

和「律!」

和は咄嗟に律を引っ張った。

その瞬間、遂にガメラとイリスが桜高の敷地になだれ込んだ。



235 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 00:24:58.02 ID:6HVfjX+d0

恵「我、直日神と交わりて、悪しき魂と戦わん!」

恵は屋上の端ギリギリまで歩み、

律から奪い取った勾玉を上に掲げてガメラとイリスを見据えた。

だが、二体の戦いに何の変化も見えては来ない。

恵「無理なの?」

恵が絶望したように呟いたとき、勾玉が鈍く光りだした。

時を同じくしてガメラは甲羅まで貫いたイリスの手甲を無理やり引き抜く。


しかしそのまま押して来るイリスと共によろめいて校舎の方へ倒れこんだ。



236 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 00:27:36.90 ID:6HVfjX+d0

和「律!」

律「…」

和は咄嗟に棒立ちしている律を手前へ引っ張る。

一瞬空けて校舎が半分一気に吹き飛ぶ。

3年間の思い出が詰まる音楽室も何ら抵抗することなくそのまま一瞬で瓦礫の山と化す。

水槽のトンちゃん、律のドラムセット、梓が運悪く置き忘れたむったん、
壊れた扇風機の果てまで、全てが破壊された。


恵「これが死…」

それは一瞬で端に佇む恵も消し去った。



237 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 00:31:16.52 ID:6HVfjX+d0

律「殺してくれ!そいつを殺せ!」

律の叫びは異常な熱気を帯び、その目は狂気に満ちていた。

唯「りっちゃんダメ!」

唯が叫んだ。

そこへ支持を失って落ちてくる校舎の一部が倒れこみ、和と律を遮る。

加えてその残骸は和に襲い掛かった。

和「!」


唯「く…」

和「…うっ」

唯「和ちゃん!?」

砂埃が晴れたそこにはコンクリート片に挟まれた和の姿があった。



243 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 01:01:26.64 ID:oDarAEOL0



澪「はぁ…はぁ…」

更なる崩壊を目にして咄嗟にロッカーの陰に隠れた澪は無傷だった。


学校にたどり着いた時には既に校舎はほとんど崩壊し、

イリスとガメラが取っ組み合っている光景に澪は目を疑った。

律「…」

そして校舎の屋上には律の姿があった。


澪「律…!」

それを確認した澪はそのまま傾いた階段を駆け上がり、ここに至っていた。



今や瓦礫の向こうでガメラはそのまま倒れこみ、死んだように動かない。

邪魔がいなくなったイリスは律の方に向き直る。

律「イリス…お前なのか…」

その声に呼応するようにイリスが金色の光を放ち始めた。



244 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 01:02:44.02 ID:oDarAEOL0



澪が押し倒されたロッカーをようやくどかしてスロープ状態となった3階から、

2階の廊下に降り立つと、廊下の先で律が呆然と立ち尽くしてイリスと見つめ合っていた。

律「…」

澪「律!」

しかし律は澪の声が耳に入らないのか全く反応を示さない。

この後起きる事態は最悪の結果しか生まないと悟った澪は、

思いっきり片手の十握剣をイリスに向かって放り投げた。



245 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 01:03:44.94 ID:oDarAEOL0

澪「なんとかして!」

澪の手を離れた十握剣は回りながらイリスに当たり、そのまま跳ね返った。

律「…!」

その切っ先が頬を掠めた律は急に目を覚ましたようにこちらを振り返る。

澪「律!」

十握剣がカランと床に落ちた。

律「澪…」

律はゆっくりと澪に向かって歩き出した。



246 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 01:05:52.31 ID:oDarAEOL0

しかし油断していた二人の隙を突くようにイリスの腹部が開き触手が飛び出す。

澪が十握剣を拾い上げたときには既に遅かった。

律「イリス!ダメ!」

そしてイリスがもう律の言うことを聞くこともなかった。

澪「!」

澪はそのまま吹き飛ばされ、律はそのままイソギンチャクのような触手に引き摺り込まれる。

澪「…律」

澪は遠のく意識の中、必死に手を伸ばしていた。



247 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 01:07:45.25 ID:oDarAEOL0

唯「り…り…りっちゃん…」

律が引きずり込まれていく瞬間を見た唯はへたり込んだ。

和「ゆ…融合した!?」



248 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 01:09:32.91 ID:oDarAEOL0

律(イリス…)

律は気づくと奇妙な世界にいた。上も下もないような不気味な液体の中だ。

ふと目を開けると聡が見える。

手を伸ばそうとするとすぐに聡は焔の中に消えていった。


次に気づくと部室の真ん中に立っていた。

誰もいない音楽室。トンちゃんの水槽は空だった。

窓の外を覗くとガメラが立っている。ガメラはそのまま窓に向かって拳を振り上げた。



249 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 01:10:43.03 ID:oDarAEOL0

次に意識が戻るとイリスが見たであろう光景が広がった。

夜の住宅地。砕け散るガラス。振り向く風子の恐怖に満ちた表情。

(イリス…お前なのか?…私なのか…?)

続いて現れた光景でも登場する人々の表情は揃って絶望と恐怖に満ちていた。

(私がみんなを殺したのか…?)


律の意識はどんどん遠くなっていく。

足元が崩壊し地面に向かって行くような異様な感覚に全身が包まれる。

(崩れる…助けて…誰か……)



250 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 01:12:43.40 ID:oDarAEOL0

その瞬間だった。ガメラのクローはイリスを貫いた。

イリスは苦悶の声をあげながら、そのまま返すようにガメラの左腕を己の触手で突き刺す。

唯「!」

二体は唸りながら再び睨み合う。

ガメラは腕にイリスのクローが突きさっているにも関わらず一歩も引くことはない。


和「巻き込まれる!唯!逃げて!」

和はコンクリートの下から叫ぶ。

唯「諦めちゃダメ!最後まで!」

唯はそばに落ちていた鉄骨をテコのように隙間へ突き刺した。

唯「ガメラも闘ってる!」



251 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 01:15:33.24 ID:oDarAEOL0

ガメラの手を突き刺しているイリスの触手に異様な閃光が何度も走る。

やがてイリスの両方の触手からはまるでガメラのような火球が作り始められる。


しかし、それを阻止するかのようにガメラは至近距離で火球を放った。

ただ、その火球の行く先はイリスではなくガメラ自身の右腕であった。

手甲を突き立てられていた右腕は吹き飛び、ガメラは自由を取り戻す。


和「腕を!?」

唯「ガメラ!」

その弾みの振動で瓦礫がずれ、和が抜け出す。

唯は和の腕を引っ張り、二人は転がるようにそこから離れた。



252 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 01:20:12.99 ID:oDarAEOL0

遂にイリスはガメラのようにプラズマ火球を放った。

ガメラはそれを右腕の切り口で受け止めると、火球で燃え上がる腕をそのまま振り上げた。

その炎の拳はイリスの腹部に突き刺ささり、イリスはそのまま強烈な光に包まれた。


夜目に映える巨大な火焔が立ち昇り、市街地を明るく照らし出した。

その砂煙と爆炎が晴れたとき、ガメラは倒れこんだイリスにトドメを刺すかのようにその頭を踏み潰した。


和「…」

唯「…」

離れて見守っていた二人の下に近づいてきたガメラは、

まるで拾った何かを渡すように和と唯の足元に手を下ろす。

その手にはイリスの一部と思われる肉塊があった。

ガメラはそれをそっと二人の前に置いて離れる。


和「まさか!?」

唯「和ちゃん!」



262 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 10:33:29.04 ID:oDarAEOL0

― 同時刻 東京都府中市 航空総隊司令部 作戦指揮所

今や作戦指揮所では総隊司令官以下、指揮所の全員がLCD画面を睨んでいた。

幕僚「司令官。長官よりお電話が入ってます」

司令官は片手をあげると手元の受話器を取った。

司令官「はい」



263 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 10:34:51.73 ID:oDarAEOL0

― 同時刻

ガメラが見守る中二人は粘液質の肉塊を必死にかき分けた。

やがて律の姿が現れるとすかさず律を引きずり出す。

唯「りっちゃんしっかり!」

しかし律の息はない。

和「律!」

和が張り付いた粘液を払いのけて心臓マッサージを始める。


冷たい雨が再び降り出す中、ガメラはそれを黙って見つめている。



264 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 10:35:35.78 ID:oDarAEOL0

その雨はまるで律の意識を暗黒から引き戻したかのようだった。

和の膝の上で律は再び目を開けた。

律「…」

?「律!」


和「まさか…」


瓦礫を押しのけて澪が現れた。

澪「律!」

唯「澪ちゃん!」



265 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 10:38:11.71 ID:oDarAEOL0

律「どうして私を助けたんだ…?」

律はゆっくりと起き上がりガメラの方を見る。

ガメラはそんな律をただ黙って見つめている。

澪「律…」


澪は駆け寄ってくるとそばに座り込んだ。

澪「イリスは…?死んだのか…」

律「ごめんなさい…ごめんなさい…」

律はそう言いながら俯く。


右腕を失ったガメラはそれを見届けたかのように咆哮した。



267 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 10:44:26.85 ID:oDarAEOL0

―同時刻 東京都府中市 航空総隊司令部 作戦指揮所


司令官は直通回線の受話器を置くとしばらく黙りこみ、手をこねていた。

その沈黙に指揮所内の視線が一斉に司令官へ集まり、静寂が広がる。

幕僚長「長官はなんと!?」

幕僚長は待ちわびたように沈黙を破った。

司令官「アメリカ中国並びにロシア軍からの情報によると、
    わが国にギャオスの群れらしき多数の飛行体が向かってきているとの事だ」

幕僚長「その数は…」

指揮所の隊員達が一斉に色めき立つ。

司令官「把握されていない!」

そして司令官は立ち上がり、指揮所内を見回しながら声を張り上げた。

司令官「総理から命令が下った!直ちに攻撃目標をガメラからギャオスに変更、
    陸海空全自衛隊の総力を結集し、これに対処せよ!」

そしてLCD画面のマーカー、は不明敵を示す黄色から青に変わった。



268 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 10:48:24.32 ID:oDarAEOL0



燃え上がる炎と雨の中、ガメラは去っていく。

和「ガメラは何か…」

和は唯に尋ねる。

唯「なにも…。でもわかってる。ガメラは闘うつもり。最後まで、独りになっても」

和「…ガメラは独りじゃないわ」


その後ろで律は小さく呟いた。

律「ガメラ…」


ガメラの次の敵は日本に迫るギャオスなのか。

ガメラは炎の中をどこかへ歩んでいく。

4人はそれを黙って見つめる。

そしてガメラは再び高らかに咆哮を上げた。


糸冬




269 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 10:50:54.94 ID:wQQ+ja/6P





278 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 13:41:32.44 ID:KyW0miWz0


世の中にはガメラ4というものがあってだな…



279 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 14:15:22.95 ID:KyW0miWz0

そういえばこれでけいおん!SSで平成ガメラ三部作全部見たのか



281 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/08/26(木) 16:15:22.73 ID:JIGiSs1x0

そういえば梓のレギオンの時ってガメラ出てないんだよな
省かれた部分やって欲しいわ






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[ 2011/12/10 20:56 ] クロス | ガメラ | CM(0)

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