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梓「あごらえせうてんぽ」#前編 【音楽】


http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1284049461/

律「バンドミーティング」

梓「あごらえせうてんぽ」#前編
梓「あごらえせうてんぽ」#後編

澪「Living On The Edge」
紬「ね、私を連れ出して?それで一緒に踊るの」




1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/10(金) 01:24:21.99 ID:lvrtdpQQ0

立ったら:0w0DA0rqPが書く





2 名前:1:2010/09/10(金) 01:44:18.04 ID:0w0DA0rqP

ピアノのアドリブソロ。

私はする事が無いので、手持ち無沙汰でフルアコのコードに指を絡ませる。

ピアノが得意顔でアイコンタクトをベースに送る。

ベースも得意顔でそれを受けてベースのソロ。

そこにお約束のように拍手がパラパラと。

ここでも、する事が無いので周りを見回す。

ベースの彼はあまり高い技術を持っていないので少しハラハラさせられる。

ドラムは(本当にありがち!)煙草を燻らせているし、

ピアノは自分の見せ場を終えた事からか、椅子から立って得意顔で客席にアピール。





3 名前:1:2010/09/10(金) 01:47:12.14 ID:0w0DA0rqP

ベンベンベン。

ベースのソロが終わりに近づいて私はギターを抱えなおす。

他のメンバーもまた演奏に戻る準備。

ベースが私達にアイコンタクト。

お約束の拍手。

はい、揃って演奏に戻る。

何小節か。

エンド。

観客席から抑制の効いた拍手。

他のメンバーは手を上げたりしてアピール。

私も何となく合わせてアピール。

少し自己嫌悪。



4 名前:1:2010/09/10(金) 01:48:15.70 ID:0w0DA0rqP

・・・


ピアノ「中野さん、この後の打ち上げ出るでしょ?」

梓「あ、すいません。今日この後ちょっと用事が入ってるんで…」

ベース「付き合い悪いぞー」

ドラム「馬鹿、彼氏だよ。ねー、中野さん?」

私は、苦笑しながら、断りを入れる。

梓「すいません…」



5 名前:1:2010/09/10(金) 01:49:06.80 ID:0w0DA0rqP

用事なんて本当は無いけどね。

だって、別に打ち上げやるほどのライブじゃないし。

アマチュアジャズバンド。

ルーティンの曲。

ルーティンの演奏。

ルーティンの客。

それで、ルーティンの打ち上げ。

それで…。

ルーティンの生中?

梓「つまんないよね」



7 名前:1:2010/09/10(金) 02:26:49.74 ID:0w0DA0rqP

ジャズには臭いがするらしい。

『ジャズってのは演劇みたいなものだ。
 型ばっかりで内容が無い。臭いですぐ嗅ぎ分けられる』

『ジャズかよ。銃殺刑ものだな』

顔の下半分を骸骨が描かれたバンダナで隠した男達が私を壁際の棒に縛り付ける。

…。

タタタッ。

マシンガンが火を噴いて私の身体を吹き飛ばす。

壁には私から噴出した血がベットリと…。



8 名前:1:2010/09/10(金) 02:27:42.03 ID:0w0DA0rqP

梓「うえ、変な想像しちゃったな…」

丁度、空っ風が吹いて来て、その事と合わせてちょっと身体が震える。

梓「寒っ…」

私はモッズパーカーのポケットに手を突っ込む。

梓「一応、ちゃんと調べておこうかな…」

インタビュー求められた時に使えるかも知れないし。

何の?

梓「そりゃあ、私が有名ミュージシャンになった時に…」

恥ずかしい想像。

梓「無いよねぇ…」



9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/10(金) 02:29:08.22 ID:0w0DA0rqP

パーカーのポケットからスマフォを取り出して起動。

梓「えーと、Jazz~」

これか。

『Jazz is not dead, it just smells funny.』

そっか、ザッパの言葉だったのかぁ。

梓「そりゃあ、面白い臭いもするよね。
  何しろ客置いてけぼりで自分達だけが楽しんでるんだもんね」



10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/10(金) 02:30:41.19 ID:0w0DA0rqP

何故、高校時代のバンドはあんなに凄かったんだろう。

練習はろくすっぽしなかったし、

ちゃんと活動したかった私はその事で凄いストレスを溜めてたはずなのに。

ふと、四人の先輩の顔が思い浮かぶ。

私は、知り合いの誰もいない東京の空を見上げる。



11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/10(金) 02:32:23.77 ID:0w0DA0rqP

着信。

表示はっと…。

鈴木純。

…。



12 名前:1:2010/09/10(金) 02:34:03.41 ID:0w0DA0rqP

いた。

いたね。

こいつも知り合いだった。

梓「何?」

純「あ、梓?」



13 名前:1:2010/09/10(金) 03:06:13.63 ID:0w0DA0rqP

スピーカーからは純の言葉より大音量の音楽が聞こえてきていて、純の言葉が良く聞き取れない。

純「今から来ない?」

梓「えー、今日ライブだったし。今終わったばっかりで疲れてるし」

純「えー、良いじゃん。おいでよー。VIPルーム入れるようにしとくからさあ」

梓「でもさぁ、今日は服がなぁ」

純「ナイトクラビングはナスティにドレスダウンって言うのが、逆ドレスコードと言うかさ…」

梓「逆逆、逆だってば、今日ライブだったからスーツ姿だもん」

純「OKOK、逆にOK」

梓「だって、後でクリーニングに出すの面倒臭いよ」

純「私は回すときはいつもスーツ姿だぞぉ!だから、今日もスーツ。
  マイスタイルに対して面倒臭いとかなんだ。大体、煙草の煙で…」



15 名前:1:2010/09/10(金) 03:09:23.64 ID:0w0DA0rqP

…。

純「梓もスーツなら、私達は今夜から東京スーツシスターズと名乗って…?
  ちょっと、語呂が良くないな」

ふう。

梓「分かった。行くよ。行きますよ」

純「Good!」

私は、通話を切る。

テンション高い。

もう、テンション無駄に高いよね。

梓「まあ、良いや。打ち上げでしょっぱいお酒飲むより、こっちの方が楽しいよね」

ノーマティブな日常をやり過ごすために、疎外感から逃れるために、

私は音楽をしているのに、そこでも疎外感に襲われる。

だから、もう一段逃れる必要がある。



16 名前:1:2010/09/10(金) 03:12:18.40 ID:0w0DA0rqP

終電に間に合って良かった。

途中までしか電車が無かったら、タクシーって事になっちゃうもんね。

社会人成り立ての貧乏一般職にはタクシーなんて厳しいし。



17 名前:1:2010/09/10(金) 03:13:35.25 ID:0w0DA0rqP

近づくに連れて低音で地面が揺れているような気がしてくる。

そんな訳無いのにね。

最初は面倒臭いと思ったけど、やっぱりテンション上がるんだよね。



18 名前:1:2010/09/10(金) 03:15:07.88 ID:0w0DA0rqP

私が地階に下りていくと、当然の事ながら、
エントランスで黒人のガチムチバウンサーに止められる。

ふう。

確かに年齢よりは若く見られる事が多いけど…。

いやいや、それは被害妄想だ。

20年前ならいざ知らず今時、誰だってIDの提示は要求されるもんだ。



19 名前:1:2010/09/10(金) 03:16:46.67 ID:0w0DA0rqP

運転免許証運転免許はっと…。

バ「OK」

どうだ。

もう立派な大人なんだ。

バ「\2000」

梓「あー、えっと…。I am friend with today’s resident DJ .」

伝わったかな?

バウンサーは肩をすくめるジェスチャーを取る。

なんだよ、純の奴。

入れるようにしとくんなら、ちゃんとしといて欲しいよね。



20 名前:1:2010/09/10(金) 03:20:13.06 ID:0w0DA0rqP

私はバウンサーに合わせるようにオーバーアクションを取る。

梓「だから、ワタシ、ジュン・スズキ、フレンドフレンド」

バウンサーは苦笑する。

何、その苦笑?

バ「ボクニホンゴワカルカラ」

梓「は?」

バ「タダ、アナタガジュンズフレンドトイツワッテルカノウセイアルヨネ?」

アルヨネ?じゃないよ。

私は、ため息をついて、しっかりと言ってやった。

梓「純を呼んで」



21 名前:1:2010/09/10(金) 03:22:59.90 ID:0w0DA0rqP

・・・


純「梓ぁ、機嫌直してよぉ」

梓「何が入れるようにしておくからだよ」

純「だって、来てくれたゲストの人らに挨拶もしなきゃいけないし」

梓「友達より名前売る方が大事?ヒドイね」

純「だって、この業界それ凄い重要だし」

梓「分かるけどさ…」

純「まあまあ、お酒奢りますから」

梓「私は元々ただ酒飲みに来たんだけど?」



22 名前:1:2010/09/10(金) 03:25:46.58 ID:0w0DA0rqP

純「あはは、梓の方がひどいじゃん」

梓「ふふ」

純は、手元のコールボタンを押して店員を呼ぶ。

純「あ、○○くん?ドリンク持って来てよ」

純、すっかり馴染んでる感じ。

今日のレジデントだから当然なんだけどさ。

純「梓は何が良い?」

梓「まずはカルアミルクかな」

純「カルア二つ持って来て」



24 名前:1:2010/09/10(金) 03:33:06.05 ID:0w0DA0rqP

梓「そろそろ出てかなくて良いの?」

純「んー、だって、まだ2時回ったところじゃん。本番はこれからっしょ」

?!

梓「念のため聞くけど、今日って何時まで?」

純はいやらしい笑いを浮かべる。

嫌な予感。

純「今日は月末だから、アフターアワーズ有りなのです。だから、9時過ぎかな?」

梓「ちょっと、聞いて無い」

純「私はラストまで回すよ。梓も付き合うよねぇ?」

まあ、良いよ。

付き合うよ。

どうせ明け方帰って寝ても、夕方までは寝ちゃうだろうし。



25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/10(金) 03:36:41.45 ID:0w0DA0rqP

純「じゃあ、フロア行こっか。今、回してる奴、結構良い感じなんだよ」

梓「おー、上から目線」

純「おほほ、レジデントDJですから」



26 名前:1:2010/09/10(金) 03:39:28.15 ID:0w0DA0rqP



ピークタイムを迎える。

素早いカット。

とてもスムーズに、繋ぎ目が分からないように。

十秒単位でレコードを変えて。

時には、ピッチをプラス6や7に上げる。

曲はスピードアップされてアップリフティングに。

激しいイコライジング。

幾つかの曲がミックスされて、まるで別の曲のように。



27 名前:1:2010/09/10(金) 03:42:01.75 ID:0w0DA0rqP

ポップスの雑食性とは言うが、個別アーティストが雑食な訳ではない。

でも、DJは本当に雑食でなくてはならない。

盛り上げる。

そして、思いを、感情を伝える。

それが何より優先される。



29 名前:1:2010/09/10(金) 03:54:20.30 ID:0w0DA0rqP

そして、ラストの曲はそれまでとはちょっと趣を変えて、

びっくりするぐらいにセンチメンタルな曲をセンチメンタルに掛けてみたり。

今日のラストはMaryann Farra & Satin SoulのYou Got to Be the One。

君は特別な人になったなんてね…。

センチメンタル過ぎ無い?



31 名前:1:2010/09/10(金) 03:55:25.17 ID:0w0DA0rqP

朝日が眩しかった。

目がシバシバするし、スーツは皺だらけで、

汗とタバコの煙が染み込んで公衆便所みたいな臭いを放ってしまっていた。

純「その格好で家まで帰るのダルイよね?女捨ててるって見られちゃうよね?」

梓「うん」

純「泊ってくでしょ?」

梓「好意に甘えさせて頂きます」

純の家はクラブから徒歩5分。

都心3LDK50㎡家賃20万円。

人気DJ凄い!



32 名前:1:2010/09/10(金) 03:58:06.09 ID:0w0DA0rqP

純「おー、サードぉ(名前はあずにゃん三世らしい)、
  ただいまー、良い子にしてたかー?」

同居人が純が扉を開けた途端に飛び付いてくる。

正確には同居猫かな。

純「今日はお祖母ちゃんも一緒だよぉ」

梓「先シャワー浴びさせて貰って良い?臭くって…」

純「猫は綺麗好き…」

純が何か言ったみたいだけど、無視しておこうね。



33 名前:1:2010/09/10(金) 03:59:12.85 ID:0w0DA0rqP

微温湯のシャワーが気持ちよかった。

梓「あー、徹夜明けのシャワーって最高だよねー…」



34 名前:1:2010/09/10(金) 04:04:35.58 ID:0w0DA0rqP



純はジャズをやる才能は無かったと思う。

でも、ミーハーで、だけどジャズをやろうしてた感覚がこう言う道を選択させたのだと思う。

中学、高校ぐらいでジャズなんて事を言い出すのは、私もだけどやっぱり両親の影響と言うのが大きい。

その影響の物質的な表出と言う話になると、それはもう一言で言えばレコードコレクションと言う事になると。



35 名前:1:2010/09/10(金) 04:05:50.49 ID:0w0DA0rqP



純が高校を卒業して、「プレイヤーはもうやめた」と言う話を聞いた時はあまり驚かなかった。

元々、そんなに一生懸命であるように見えなかったし、

ミーハー過ぎてジャズをやるのに向いているように思えなかったからだ。

それでも、「DJになりたい」って言い出した時はちょっと耳を疑った。

そんな素振り見せた事無いじゃん、と言う感じで。



36 名前:1:2010/09/10(金) 04:08:02.16 ID:0w0DA0rqP

純「だからさ」

梓「ん、何?反対ならしないけど」

純「梓んちのレコードコレクション貸して!」

梓「はぁ?!」

純「だって、梓んちのレコード棚見てて思ったんだけど、
  ジャズだけじゃなくてソウルやファンクも結構な量があったし」

梓「『あったし』じゃないよ。大体、純の家にだって…」

純「それだけじゃ足りないから。自分だけの武器が欲しいんだよね」

確かにレコードコレクションはDJに取って大きな武器だ。



37 名前:1:2010/09/10(金) 04:09:18.77 ID:0w0DA0rqP

最初はそのふざけた態度に、
その癖の強い髪にさらにパーマをかけてチリチリにしてやろうかと思ったけど
(だってWHO IS THIS BITCH ANYWAY?のマリーナ・ショウみたいになった純なんて面白すぎるでしょ?)、

態々私の実家まで来て父親に頭を下げてるのを見ると、反対する気も失せてしまった。



38 名前:1:2010/09/10(金) 04:12:01.53 ID:0w0DA0rqP

純はそれからすぐにクラブでのバイトを始めた。

店員をしながら、DJのセットリストを盗み見て、ストーリーの構成を勉強する。

技術の事も色々あるだろう。

家に帰ると、忘れない内に練習し、店が開けば新たなレコードを仕入れに走る。

勿論、私(正確には父親のだけど)が貸したレアなレコードを聴き込み、

使用する箇所のチェックもしなければならない。

そんな毎日が続けば、大学に行く暇なんてのは無い。

パーティサークルの大学生が手作りパーティでちょっと繋ぎ方を覚えて盛り上がる

アンセムばかりを集めて回すって言うのとは訳が違って、目指す目標が高かったのだ。



41 名前:1:2010/09/10(金) 04:15:16.00 ID:0w0DA0rqP

梓「純、DJの修行は良いんだけどさ、大学はちゃんと行ってんの?」

純「辞めて来た」

梓「辞めたって…、これからどうすんの?!」

純「キャリアを積む」

高校の時、私は友達だけど、純を見下してた部分と言うのが有ったと思う。

つまり、純が音楽に対してあまり一生懸命じゃないところに関してだけど。

でも、いやだからこそ、純のこの選択って言うのは私に大きな事実を突き付けた。

私はいまや何も目指していないと言う事実を。

そして、大学サークルで自分のやっているバンド活動なんてのが、

エクスキューズ付きのお遊びで有ると言う事も。



42 名前:1:2010/09/10(金) 04:17:13.04 ID:0w0DA0rqP

梓「で、でもバイト料だけじゃ家も維持出来ないんじゃ…」

純「うん。だから、もう引き払ってきた。レコードはレンタルコンテナに移した」

梓「純はどこに住むの」

純「クラブの倉庫にベッドルーム作らせて貰った。あはは、まさにレジデントだよねー?」

純は能天気に笑う。

梓「そ、そうなんだ…。頑張ってね」

純「うん、ありがとう、梓!」

私はもう何も言えなかった。



44 名前:1:2010/09/10(金) 04:20:14.96 ID:0w0DA0rqP

・・・


純はサードにキャットフードを与えていたが、風呂上りの私を見てふざけた事を言い出す。

純「パンティにキャミだけなんて、そんな刺激的な格好で…、誘ってる?」

寂しすぎるとパートナーは女でもOKだって?

ぷぷぷ、馬鹿な冗談。

梓「はいはい。先に寝てるね」

純「はーい」

ベッドルームに入る。

女2人で眠るには十分過ぎるセミダブルベッド。

買った途端に彼氏に逃げられて本来の用途を果たせなかった可哀想なベッド。



45 名前:1:2010/09/10(金) 04:22:21.01 ID:0w0DA0rqP



週末の夜には必ず家にいない。

休日の前日にも家にいない。

午前7時の出勤前に煙草の臭いを纏いつつ、おかしなテンションで帰宅する同居人。

「おやすみなさい」と「行って来ます」が交差する出鱈目な生活のすれ違い。

(夜に働く人だって同じ問題を抱えているのかも知れないけど)
そう言う同棲生活を続けていくのは、その彼氏に取っては難しかったんだろうね。

うん、普通の感覚だと思うけど…、つまらない奴だよね。



46 名前:1:2010/09/10(金) 04:24:42.26 ID:0w0DA0rqP

壁一面のレコード棚を見る。

床に詰まれたダンボールに詰め込まれたレコードを見る。

一目見て、また増えてるのが分かる。

梓「ふぁ~あ…」

欠伸が出る。

レコード棚の感想よりも眠さが勝る。

私はベッドに身体を投げ出すと同時に、入眠。



47 名前:1:2010/09/10(金) 04:27:25.46 ID:0w0DA0rqP

・・・



私は顔を這う何かの感覚で目を覚ます。

これは…、猫の舌か…。

身体を起すと、私の身体の上にいたのであろう、

サードが足場の急激な変化に驚いたのか素っ頓狂な声を上げて飛びのく。

窓の外を見ると、すっかり暗くなっている。

梓「もう夜なんだ…」

横を見ると既に純の姿は無い。

私は、ベッドから起き上がりサードを抱き上げる。

梓「お前のご主人様は早起きだねー?」



48 名前:1:2010/09/10(金) 04:29:04.07 ID:0w0DA0rqP

純「あ、起きてきたぁ?」

純は顔をノートPCに向けたまま声を掛けてくる。

私はサードを抱えたまま背中越しに覗き込む。

梓「何してるの?」

純「んー、自分のページに昨日のミックス音源を上げてる」

梓「へー、反応ある?」

純「ボチボチかなぁ。まだ始めたばっかしだし、私自体がまだまだだからねー」

梓「そっか…」

純「これが仕事に繋がれば良いとは思うけど、中々そこまではねー…」



50 名前:1:2010/09/10(金) 04:31:11.32 ID:0w0DA0rqP

私に疎外感を与える、ノーマティブな日常、そして惰性でやっているバンド。

それらからの逃亡先であるナイトクラビングや純の家でのこの私は本当の私かも知れない。

でも、その本当の私はただ何もしないでいるだけの人間だ。

私は、純の後姿に羨望の視線を送る。

そんな気持ちがサードを抱いていた手が緩ませたのか、

サードが私の手からスルリと抜けてテーブルの上に降りる。

そして、PCに刺さっているUSBメモリを…。

画面にエラーの文字。

純「先に食事にしよっか…?」

梓「わ、私作るっ!」

純「そ、それじゃお願い、し、しよっかな…」



51 名前:1:2010/09/10(金) 04:34:25.89 ID:0w0DA0rqP

梓「ごめん!ほんっとーに、ごめん」

純「良いって、別にぃ」

私はあまりショックな様子も見せずパスタを口に運ぶ純に改めて頭を下げる。

梓「でもさ…」

純「また、後でやり直せば済む事だし…。そんな、謝られる方が心苦しいよ」

そう言って純はニカっと笑う。

純「それはそうと…」

梓「ん、何?」

純はフォークで私を指す。

梓「ちょっと、純、それマナー違反…」

純「梓は今の生活続けていくの?これからどうして行きたいの?」



52 名前:1:2010/09/10(金) 04:35:33.39 ID:0w0DA0rqP

え?

急に何言い出すの?

クールに、クールになれ私。

梓「そ、そう言うのって、普通はさ、私みたいな会社勤めをしてる方が
  純みたいな職業の人に言うセリフじゃないの?そう普通はねー…」

純「普通とか良いから、梓はどうするの、これから」

梓「どうするもこうするも…。こ、このまま会社勤めしていくよ。
  それで、月一回ぐらいのペースで趣味のバンドをやって…。それで、その内結婚してって感じ?」

純「…そっか…」

梓「え、私何か変な事言った?」

純「ううん、別に…。いや、梓が良いと思うんなら良いと思うよ。普通万歳」

私は、純が何を言わんとしていたか、わざと分からない振りする。

自分が色々と間違いを犯していると言う事を認めたく無いから。



54 名前:1:2010/09/10(金) 04:37:12.35 ID:0w0DA0rqP

梓「何か、棘あるなぁ」

純は苦笑して、

純「無いよ、そんなのどこにも無いから」

梓「そう?なら良いけど…。あ、じ、じゃあ、純はさ、どうしていくの、これから?」

純「私?私はキャリアを積みたいな。
  明日の朝、突然40代になってて、まだ週一のDJしか仕事が無いなんてごめんだもん」

ああ、やっぱり私だけがただ何もせずに取り残される人間なんだ。

純「ごちそうさま」

梓「あ、うん…」

純「送ってくよ」



55 名前:1:2010/09/10(金) 04:40:18.11 ID:0w0DA0rqP

・・・


純が最近買ったと言うハイブリッドカーが静かに夜の街を疾走する。

私達はさっきの話のせいか無言で、
ゲッツのクールなサックスにアル・ヘイグのリリカルなピアノ、
そしてそこにコンガの音が絡んで盛り上げて行くSkull Busterだけが車内に鳴り響いていた。

私は純の言葉に改めて自分の現状を気付かされて傷ついていたし、少しだけ気分を害してもいた。

純は…、どうだろ?

ちょっと、分からないけど。



56 名前:1:2010/09/10(金) 04:43:45.90 ID:0w0DA0rqP

・・・


私の住処であるところの西武線沿いの安アパートに到着。

一時間程のメランコリックナイトドライブも終了。

梓「あ、ありがと」

純からは返事が無い。

私はため息をついて、車から降りようとする。

純「ねぇ、梓?」

純はハンドルに手を置いて前を見たまま、私に声を掛けてくる。

梓「ん…?」

まだ、何か用?



57 名前:1:2010/09/10(金) 04:46:02.38 ID:0w0DA0rqP

純「梓、最近のヒットチャートとかってチェックしてる?」

梓「いや、特に…。TVあまり見て無いし…」

純「そっか…」

梓「なんかお薦めの曲とかそう言う話?」

純「あー…、うん…、あのね…」

梓「何?」

純「唯先輩…、って覚えてる?」

忘れる訳無い。

私の心の奥に今も大切に仕舞われている、そうとても大切な…。



58 名前:1:2010/09/10(金) 04:49:06.28 ID:0w0DA0rqP

純「唯先輩、最近メジャーデビューしたんだよね…」

え?!何?

純、今何て言った?

梓「嘘?!」

純「梓に嘘ついてどうすんの」

梓「だって…。えっと、律先輩とか澪先輩とかと一緒にって事?」

三人は去年の年末に会った時はまだ3ピースでバンドをやっていると言っていた。



59 名前:1:2010/09/10(金) 04:52:23.09 ID:0w0DA0rqP

純「いや、一人。ソロアーティストとして。確か名前をローマ字にするかなんかしてて…」

梓「どう言う事?」

純「それは、知らないけど。で、チャートも初登場一桁で…、あ、梓?!」

梓「純、送ってくれてありがと。また、連絡するね」

私は、車を降りると部屋まで駆け出す。



60 名前:1:2010/09/10(金) 04:54:10.53 ID:0w0DA0rqP



部屋の扉を閉めて、そのままベッドに飛び込む。

私は枕に顔を埋めた。

感情の昂りを押さえられない。

涙が出てくる。

駄目だ、堪えろ。

堪えろ、私…。

閾値を容易く越えた感情が、涙腺を決壊させる。

もう、止められなかった。

梓「うぁぁー」



62 名前:1:2010/09/10(金) 04:56:16.33 ID:0w0DA0rqP

梓「はぁ、酷い顔…」

私は洗面所の鏡に映った自分の顔にげっそりとする。

寝不足は目の下に大きな隈を作っていたし、涙で瞼は腫れぼったかった。



63 名前:1:2010/09/10(金) 04:57:57.17 ID:0w0DA0rqP

梓「さてと…」

少し落ち着きを取り戻した私は、動画共有サイトを検索。

身体を伸ばして大きく深呼吸して、それから再生。

YUIのPVが再生される。

梓「本当に唯先輩だ…」

私は、その姿に少し感動して…、だけど、その感動は長く続かなかった。

私が高校時代に衝撃を受けたそれはどこにも無かったのだ。

ライブのマジックとかそう言う事では無くて、あの煌めきはどこにも無かったのだ。

私は、最後まで聞く事が出来なくて再生を中止する。



64 名前:1:2010/09/10(金) 04:59:02.44 ID:0w0DA0rqP

投稿者からはもうすぐアルバムの発売が予定されていると言うコメントが付けられている。

梓「誰が買うか。こんなの買う奴馬鹿だ。何も知らない奴だけだ」

何でこうなってしまったんだろう。

私は一人取り残されて、そして唯先輩は墜落し、頚骨骨折で息絶えんとしている。

本当に、何でこうなってしまったんだろう?



65 名前:1:2010/09/10(金) 04:59:55.98 ID:0w0DA0rqP



純と憂にメールを打つ。

憂には…。

『唯先輩メジャーデビューしてたんだね。おめでとう』

純には…。

『明日からの会社に行きたく無くなった。どうしてくれる』



66 名前:1:2010/09/10(金) 05:00:59.67 ID:0w0DA0rqP



こんな結末最低だ。

先輩達に別れを告げた時、私は何かを失ったと思って涙が止まらなかったけど、その時より辛い。

本当に、どうしてくれるんだ。

何で、純はこんなこと私に教えたんだ。

しかも、教える前に私の現状をわざわざ再認識させた上で。

私をこんな気分にさせた純なんか強いパーマかけられて

パム・グリア(コフィの時みたいな)みたいになってしまえば良いんだ。



67 名前:1:2010/09/10(金) 05:02:44.71 ID:0w0DA0rqP


私はバンドのメンバーに、仕事が忙しいので半年ほど休止させてくれと頼んだ。

二度と復帰する気なんて無かったけど、脱退なんて言ったらどうせ根掘り葉掘り聞かれるんだ。

また、半年後に同じ事言ってやればあいつらは気が済むんだから、本当の事なんか絶対言わない。



68 名前:1:2010/09/10(金) 05:05:27.73 ID:0w0DA0rqP



純からは『ごめんね』と言うメールが帰って来る。

でも、ピコピコ動くデコメールで。

梓「何これ!何だよこれ!!全然謝る気無いよね。もう良いよ!純とは絶交」

憂からは、ちょっと抑制の効いたメール。

『ありがとう。でも…、うん、良い事だもんね、きっと』

憂…。



69 名前:1:2010/09/10(金) 05:08:42.78 ID:0w0DA0rqP




それからの半年は本当に何も無かった。

だって、凪のように生きようと決めたから。

私の一番大事な何かは死んだ。

残念な事だけど、私はもう泣かない。



70 名前:1:2010/09/10(金) 05:12:09.32 ID:0w0DA0rqP



純からは時々『遊びに来ない?』と言うメールが入っていて、
憂からは『アルバムが出たよ』と言うメールが来た。

純からのメールは全部無視したけどね、憂には一応『うん、買うね』と返信した。

YUIのアルバムはオリコン初登場7位だったらしいよ。

私は迷った末(それでも迷ったのだ)に、結局買わなかったけれど。



71 名前:1:2010/09/10(金) 05:14:50.67 ID:0w0DA0rqP




半年間の私の生活としてはこう言う感じだ。

会社に行く×5、部屋の掃除をする、

買い物に行くor一日中ネットor自己流ピラティスをする。

変化の無い、静かな生活。

感情を持たない生活。



73 名前:1:2010/09/10(金) 05:18:43.09 ID:0w0DA0rqP



梓「そう言えば、最近笑って無いな…。表情筋動かさないと…」

私はファッション誌に出ていた、

笑顔のトレーニングと言うページに従って顔の筋肉を動かす。

最初は上手く出来なかったが、少しづつ感覚を掴めてくる。

よしよし、これで私も愛され笑顔を作って…。

…。

やめた、馬鹿馬鹿しい。

合コンで人気者になる趣味は無いし。

そんな時、着信。



75 名前:1:2010/09/10(金) 05:21:06.78 ID:0w0DA0rqP

表示は…。

鈴木純。

ふふふ…。

少し迷って、でもやっぱりと思い返して電話を取る。

私はちょっと緊張して、遠慮がちに言葉を発する。

梓「久しぶり…」

私の言葉を遮るように純ははっきりとした言葉を並べる。

純「梓、今から来れる?」

梓「今日、日曜だよ?社会人には…」

純「違う違う、クラブの方じゃなくて、家の方で…、ああ、もう!良いから私の家に来い!」

純はそれだけ捲し立てると、自分から通話を切る。



77 名前:1:2010/09/10(金) 05:22:34.52 ID:0w0DA0rqP

自分の言いたい事だけ言われてもさっぱり分からない。

梓「ま、まあ、良いや。あれだけ言うんだ、何かあるんでしょ」

何も無かったら…。

何か良いレコードでも貰って来よう。

最近は、唯先輩のジャケット見るのが怖くてCDショップにも行って無い。



78 名前:1:2010/09/10(金) 05:25:01.08 ID:0w0DA0rqP

・・・



梓「…久しぶり…」

純「上がって上がって」

純は私みたいな緊張とか後ろめたさなんて何も無い様だった。

当たり前か。

私が、勝手に落ち込んで勝手に怒っていただけなんだから。

純はDJブースや機材の組まれた部屋に私を連れ込む。

梓「んで、何…」

純「取り合えず、これ聞いて」

ヘッドフォンを渡される。

純はすでにターンテーブルにセットされていた12インチに針を落とす。



86 名前:1:2010/09/10(金) 10:37:17.94 ID:0w0DA0rqP




バーン。

最初のイントロで吹っ飛ばされる。

ベースラインが世界を揺らす。

キックは鼓動を刻む。

トランセンデンタルな体験。

アウトロ。

少しづつ音は小さく絞られていき…。



87 名前:1:2010/09/10(金) 10:42:33.82 ID:0w0DA0rqP

純「梓…」

梓「え、何…」

私は泣いていた。



88 名前:1:2010/09/10(金) 10:47:03.54 ID:0w0DA0rqP

人間は誰しも皆感情を持つ。

外的な世界だけで無く、内的な世界に対しても。

それは深い深いものだ。

『その中身を私にも教えて頂けないだろうか?』

普通の人はその内3割を言葉に出来るか。

それを得意とする人は5割ぐらいは言語化出来るかも知れない。

その全てを言語化出来ないからか、その抱く感情の中身ゆえだろうか。

それとも自分を取り巻く世界のせいだろうか?

人はいつしか感情を忘れる。

でも、その曲は私に感情を想起させた。

その曲は冷え冷えとしていた私の心に温もりを届けたんだ。



89 名前:1:2010/09/10(金) 10:51:38.10 ID:0w0DA0rqP

梓「この曲は…?」

純がスリーブを放ってよこす。

その白いスリーブには大きくプロモオンリーの文字が印刷されており、
曲名とレーベル名とアーティスト名だけが印刷されたステッカーが遠慮がちに貼ってあった。

レーベル名はHTTレコーズ。

アーティスト名は平沢唯。



92 名前:1:2010/09/10(金) 11:10:47.41 ID:0w0DA0rqP


梓「え、あ…?」

純が座り込んだ私の肩に手を置く。

純「これからどうして行きたい?」

答えるまでも無いよね。



93 名前:1:2010/09/10(金) 11:13:32.24 ID:0w0DA0rqP

純「で、連絡取るの?」

梓「よしてよ。そんなの向こうだって求めて無いでしょ」

純「じゃあ、どうすんの?」

梓「向こうから連絡が来る様にすれば良いんだ。私、曲作るから」

そうだ、当然の事だけど、自分でも何かしなければならないんだ。

純はやれやれと言う感じの反応。

ふん、その内驚きでグレイス・ジョーンズのSlave To The Rhythmみたいな表情になるようにしてやるから。



94 名前:1:2010/09/10(金) 11:16:17.43 ID:0w0DA0rqP

私はいつも使っているバーにバンドメンバーを呼び出した。

梓「お久し振りです」

ベース「うん、仕事はひと段落着いたんだ?」

梓「ええ」

ピアノ「そっか、良かったね」

ドラム「じゃあ、またライブもやって行けるね」

梓「あ、あの、これからの活動に関してなんですけど…」

ドラム「おー、熱心」

ベース「ライブ出来なくて欲求不満が溜まってたりして」

ピアノ「デリカシー無いぞ」

ベース「うは、ごめんね、中野さん」

私はこの人たちを頼りにしなければならないと言う事実に少し陰鬱になるとともに、
この人たちが提案を了解するだろうか、と不安にもなる。



95 名前:1:2010/09/10(金) 11:17:36.30 ID:0w0DA0rqP

梓「いえ…」

ドラム「で、どうする?今まで、大体一月に一回だけだったけど、
    回数増やしたいとかそう言う感じ?」

そう言う事じゃない。

そう言う事では無いんだ。

梓「あ、あの…」



96 名前:1:2010/09/10(金) 11:23:02.12 ID:0w0DA0rqP


---

深海に落ちて行くような感覚。

息が苦しい。

私は魚人間になる。

深呼吸しろ。

水を吸い込め。

えら呼吸で生きていけば良い。



100 名前:1:2010/09/10(金) 12:40:04.46 ID:0w0DA0rqP

梓「ライブじゃなくて、その、レコーディングして見ませんか。
  それで、どっかのレーベルに送ったりって…、駄目…ですかね」

ピ、ベ、ド「ん?」

三人が一様に驚いたような顔をする。

ドラムはちょっと呆れたような表情で、それから可哀想なものを見るように。

ベースは少しの嘲りを含んだ表情に。

ピアノは困ったような表情で私に言い聞かせるように。

ピ「いや、うん。一つの方針としては良いんじゃないか?
  でもさ、今の日本で僕らがやってるような音楽が
  どれぐらい流通してるかって、中野さんは分かってる…、よね?」



101 名前:1:2010/09/10(金) 12:44:50.70 ID:0w0DA0rqP

昔のようにピュアにそのジャンルを追及出来る状況じゃないって事が言いたいの?

でも、世界にはあるジャンルでちゃんと過去に対するリスペクトを持ちながら、
現代に耐え得るものを作っている人たちもいる。

そう言うものはちゃんとあるのだ。



102 名前:1:2010/09/10(金) 12:53:14.52 ID:0w0DA0rqP

ベース「もしかして、『クラブ』ジャズみたいな感じで、って事かな」

ベースが少し嘲るようなニュアンスで語り出す。

お前は黙ってろ。

ベ「DJ的だか何だか知らないけど、そう言う切り取り方って
  逆に先人に対するリスペクトが無いし、
  ちょっと、中野さんの考え方には賛成出来ないなあ」

偏見に満ちた通り一辺倒な解説ありがとう。

返しはこうだ。



103 名前:1:2010/09/10(金) 12:54:23.76 ID:0w0DA0rqP

ジャズとは何か?

知るか!

ハッ!

ジャズとはコーンフレークに入ってる塩漬け豚だ。

ジャズとは何か?

知るか!

ハッ!

ジャズとは風呂のベルだ。

ジャズとは何か?

知るか!

ハッ!

ジャズとはトイレットペーパーで巻かれたジョイントだ。



105 名前:1:2010/09/10(金) 13:03:23.01 ID:0w0DA0rqP

ド「中野さんには悪いけど、ウチはライブ感を追求したいし」

うるさい。

私は何でこんな奴らが頼りになるなんて思ってたんだ?

何でこんな奴らと何かをやろうとしてたんだ。

純への対抗心?

もう我慢出来ない。

ただ、私は…。



106 名前:1:2010/09/10(金) 13:09:20.14 ID:0w0DA0rqP

梓「ジャズだけって、それはそれで素晴らしいものかも知れないですけど…」

私は、息を大きく吸い込む。

深海へ潜るために。

梓「それ、ちっとも格好良く無いですよね?楽しく無いですよね?少なくとも私はごめんです」

私は呆気に取られているメンバーを尻目に駆け出す。



107 名前:1:2010/09/10(金) 13:10:17.31 ID:0w0DA0rqP

---


私は、この人たちとは違う世界に生きるんだ。

サラバイバイ。



112 名前:1:2010/09/10(金) 16:28:18.34 ID:0w0DA0rqP

結局、純に頼る事にした。

持つべきものは親友だ。

純「で、どうするの?」

梓「機材を貸して頂けると…」

純「どんな感じの曲作りたいとか、もうはビジョン出来てるの?」

梓「いや…、まだ…」

純「機材の使い方は?」

梓「それも教えて頂けると…」

純は大きくため息をつく。



113 名前:1:2010/09/10(金) 16:30:21.34 ID:0w0DA0rqP

いや、そう言う態度は傷付くんだけどね、こっちが悪いのも分かるけど。

純「じゃあ、合宿でも組みますか!」

梓「は?!」

純「だって、私二週間後にって事で、友達にリミックス作業頼まれてるし」

な!?

純「だから、作業追い込みで、梓に教えてる暇とか惜しいし」

にゃっ?!

純「私がやる作業の一部始終を見てるのも勉強になるよ!」

梓「随分とスパルタ方式のような…」

純「何か言った?」

梓「いえ、何も…」

純「そうだ、ついでに会社も休んじゃえ!一週間ぐらい」

結局、私は三日だけ有給を取った。



116 名前:1:2010/09/10(金) 16:53:56.92 ID:0w0DA0rqP

高校時代私はとても熱心に音楽をやっていると自認していた。

実際、先輩達の音楽の取り組みには何時もイライラさせられていたものだ。

だけど、それはとても一面的な音楽への取り組みでしか無かったのだと、

純の作業を手伝っていると感じさせられた。

でも、そんなのはささやかな挫折に過ぎない。



117 名前:1:2010/09/10(金) 17:04:10.88 ID:0w0DA0rqP

自分の頭の中で鳴り響く音を一人で形にする事。

音楽を構成する要素をどう組み合わせ、どうシンクロさせるか。

それはこれまで漠然としか捉えていなかった部分であり、
それこそが今私がしなければならない問題なのだ。



118 名前:1:2010/09/10(金) 17:05:15.92 ID:0w0DA0rqP



例えば、今私が唯先輩の前にノコノコと顔を出して、
これは凄く図々しい言い方だと理解出来るのだけど、
「うん、一緒にやろう」なんて唯先輩が言ってくれたと仮定する。

これはそれ自体凄く幸福なことだ。

だって、またあの魔法のような時間を生きる事が出来るんだから。



119 名前:1:2010/09/10(金) 17:49:43.20 ID:0w0DA0rqP

でも、きっとそこで待っているのは、
『中野梓は何の実力も無いくせに、
平沢唯に上手くくっついて音楽が出来る振りをしている』なんて言う、
現状ではそれを否定する事が出来ないような周囲の評価だろう。

だから私は、そんな声が出て来ないように、
予め奴ら掃討しておくようなチャレンジをしなければいけないんだ。



120 名前:1:2010/09/10(金) 17:51:17.51 ID:0w0DA0rqP

繰り返されるちょっとした焦り(つまり思うように音を捉えられないこと)
の中で私は音を形にしようと苦闘していた。

時には、自分の楽器の経験が邪魔をする事もあった。

これは唯先輩の二枚目以降のジャンルレスな別バージョンを聞くたびに、
一から構想を練り直さなければならなくなる事と大きく関係していて、本当にきついことだった。



121 名前:1:2010/09/10(金) 17:58:00.19 ID:0w0DA0rqP

私の生活サイクルは激変した。

仕事、純の家に直行、作業。

純の家から出勤。

純「おやすみなさい」

梓「じゃあ、私は行って来るから」

まあ、こんな形で生活自体は重ならなかったんだけどね。



123 名前:1:2010/09/10(金) 18:08:13.80 ID:0w0DA0rqP

そんな生活を続けた結果、二ヵ月後に何となく形を掴めるようにはなっていた。
(純の助けが大きかったなんて絶対言わないけどね)



125 名前:1:2010/09/10(金) 18:41:43.74 ID:0w0DA0rqP

リズム、ベースライン、コード、ギミック、自分が出したい雰囲気。

私は仕上げとして、唯先輩の曲を聞いて受けた衝撃を、
あの魔法の何分の一かでも再現出来たらと言う願いを、
再び自分はこの世界に戻るのだと言う決意を、
そう言う色んなソウルを注ぎ込むようにギターを弾いた。



127 名前:1:2010/09/10(金) 18:55:54.62 ID:0w0DA0rqP

もう、今日の仕事のことは考えられなかった。

そのままミックス作業に突入。

既に、朝と言うよりは昼と言った方が良いような時間になる頃、最後の作業は完了した。

曲を聴き直すことも無く、私はベッドルームにフラフラと入っていくとそのままベッドに倒れこんだ。

私の身体の下で、毛玉が何か『フギャッ!』と言う音を立ててたけど、

私は疲労の方が勝って、そのまま眠りに落ちた。



129 名前:1:2010/09/10(金) 19:08:31.17 ID:0w0DA0rqP

梓「ああ、もう夕方かぁ…!?」

私は目を覚まし、そして自分の目の前にある渋い顔をした純に驚く。

梓「何で、純?」

純「そこから?!」

梓「え、だって…」

純「私が寝てたら、梓が倒れこんで来て、そのまま爆睡した。
  私はまったく眠れなかったけど、優しい私は
  『梓作業で肉体精神両面ともが疲れてるんだろうなー、もちろん私も疲れてるんだけど』
  なんて思って、今、梓が起きるまでこの姿勢を保持してたから」

梓「何か恩着せがましい…」

純「いや、これぐらい許されるでしょ。それより、も…」

ん?

純「早くどけー!!」

うわわっ?!



130 名前:1:2010/09/10(金) 19:18:00.57 ID:0w0DA0rqP

---


純「で、早く聞かせてよ」

…。

純「早く」

梓「恥ずかしい…」

純「は?」

梓「いや、だから…」

純「はぁ…」

分かってるよ。

こんなとこで恥ずかしがってるようじゃ駄目って事は。

で、でも、助走期間だって必要でしょ?

何事もソフトランディングが重要と言うか。

梓「あ、あの…、取り合えず、隣の部屋にいるんで…」

純は少し呆れたような顔になる。

純「ばーか」



131 名前:1:2010/09/10(金) 19:29:30.86 ID:0w0DA0rqP

私はソファでサードを抱いて、純が部屋から出て来るのを待っていた。

少し長めの曲だけど、幾らなんでも30分と言うのは長過ぎ無いか?

あまりにへぼいから、私にどう言う言葉を掛けたら良いか分からなくて…。

ああ!そんな事ある訳無い!

とは、言い切れないからね。



134 名前:1:2010/09/10(金) 20:12:33.47 ID:0w0DA0rqP

---


梓「あ…」

純「感想は聞かないの?」

梓「どう…、でしたでしょうか…」

純「うん、良かったと思うよ」

イエィ!

純「色々拙い部分もあるけど、それも味でしょ」

梓「それ褒めてんの?」

純「うん」

梓「あんま、そう聞こえないんだけど」

純「私は作曲を専門に勉強した訳じゃないし、ミュージシャンと言う訳でも無いからね。
  それに、聞き方はどうしても一般的な人とは違っちゃうから」

…。



136 名前:1:2010/09/10(金) 20:18:56.46 ID:0w0DA0rqP

純は少し困ったような顔をして、それから私の肩に手を掛ける。

梓「純…?」

純「でも、それでも、感情を喚起するものはあったから!」

痛い!

痛いよ、純。

純「だから、だから…、これ送ってみなって!」

梓「う、うん…」



139 名前:1:2010/09/10(金) 20:35:24.36 ID:0w0DA0rqP



ひょっとしたら、これは自分の望んでいたレベルのものでは無いかも知れない。

完成した時の高揚感が私を満足させたのでは無いかと、少し怯えながら再生する。

そうでは無かった。

魔法はちゃんとそこにあった。

まだ、辿々しさの残る稚拙なものかも知れないけど、そこにはあったのだ。

私は言葉に出来ない愛しさを感じて何かを抱きしめたくなって、

でもドアのところに立っている毛玉に抱きつくのはどうかと思って…。

でも、結局純に抱きついた。

梓「純ーっ!」

純「よしよし、良く頑張ったねー…」



140 名前:1:2010/09/10(金) 20:39:15.13 ID:0w0DA0rqP



私はレズでもバイでも無いつもりだけど、こう言う感覚になる事って時々あるでしょ?

それに、純は親友だし…。

おかしくないよね?

ないよね?



145 名前:1:2010/09/10(金) 22:57:53.41 ID:0w0DA0rqP

送るまでにそれだけの事があったにも関わらず、

私は返答が来る事に確信が持てなかった。

朝晩二回、ドキドキしながら受信トレイを見ては、

レーベルから何の反応も無い事にがっかりする日々が続いた。



146 名前:1:2010/09/10(金) 22:59:27.35 ID:0w0DA0rqP



もう、連絡は無いのだと半分諦めた頃、突然それは来た。

『デモ良かったよ。一度、会おう』

私はギターをかき鳴らした。

梓「Dogs borocks!Yes!Yes!Ye~sssss!!」

隣人から文句が来て、すぐ止めなければならなかったんだけどね。



147 名前:1:2010/09/10(金) 23:01:35.56 ID:0w0DA0rqP

私の気持ちは高ぶっていたけど、でもそれと同時にとてもナーバスになっていて、
エレベーターで事務所が入っているのフロアのボタンを押す時から指は震えたし、
勿論事務所の入り口で呼び出しボタンを押して、スタッフが現れる数分が無限の時間に感じた。

スタッフ「えーと、中野梓さん?」

梓「ひ、ひゃい!」

痛っ。

舌噛んだ。



149 名前:1:2010/09/10(金) 23:12:32.20 ID:0w0DA0rqP

私は会議室みたいなところに通され、コーヒーを出される。

何で、コーヒー?

HTTなら紅茶でしょ?

それに私ミルクと砂糖無しじゃ飲めないし…。

あ、持って来た。

だったら、最初から持って来るべきでしょ。

教育がなって無い。



151 名前:1:2010/09/10(金) 23:28:59.53 ID:0w0DA0rqP

私は砂糖とミルクを大量に入れる。

ふふふ、こうやってコーヒー牛乳みたいにすればね…。



152 名前:1:2010/09/10(金) 23:33:45.07 ID:0w0DA0rqP

扉が開く。

…。
何か派手な人が入って来た。

如何にもなロックスターと言う印象。



153 名前:1:2010/09/10(金) 23:36:03.80 ID:0w0DA0rqP

私はちょっと気分を害する。

だって、こんなワナビーロックスターな感じの人が唯先輩とやっていて、

私はなんでこんな所にいるの?って話だもん。

どこで知り合ったか知らないけど、

正直な話こんな業界人気取りの人には近づいて欲しくないよ。



154 名前:1:2010/09/10(金) 23:45:06.95 ID:0w0DA0rqP

?「初めまして、私がレーベルオーナーの…」

梓「あ、はい、中野梓です。初めまして…」

?「ああ、座ったままで良いよ。
  私は音楽を売る、君は音楽を作る。うちでは対等の関係だから」

梓「そうなんですか…」

?「うん。だからもっとリラックスしてよ」

梓「は、はい」



157 名前:1:2010/09/11(土) 00:03:12.72 ID:ZgdhC+SyP

---


このレーベルオーナーとの対面の話は少しはしょろうと思う。

結局、この日私が得たのは懐かしい再会と言う奴だった。

まず、言わなければいけないのは、

高校の頃の印象と変わらず、律先輩は大馬鹿野郎だと言う事だ。

私はこのレーベルオーナーこと、律先輩との会話の中で、
後々無かった事にしたくなるようなセリフを幾つも使ってしまって、
と言うかそれを誘発させたのは律先輩の悪ふざけで、本当になんて言うか最低だと思ったし、
その見栄の張り方と言うかセレブ気取りの振る舞いには呆れてしまう。



158 名前:1:2010/09/11(土) 00:03:56.71 ID:ZgdhC+SyP

でも、やっぱりこの人は凄い人で、
一人でけいおん部を復活させようとしたように、
私がウジウジと下らない事で悩んでる間も動き続け、
もう一度皆でティーパーティを出来るようにしようと、
ずっと奮闘し続けていたんだ。

そんな人は滅多にいない。

だから、私は律先輩と言う人が大好きなんだ。



159 名前:1:2010/09/11(土) 00:07:36.70 ID:ZgdhC+SyP

ただ、少し落ち込む事もあった。

それは自分の作った曲に関する事で、自分ではクールに出来たつもりだったけど、
唯先輩から幾つか指摘されて、それは確かに頷ける事だった。



160 名前:1:2010/09/11(土) 00:09:48.91 ID:ZgdhC+SyP


でも、律先輩は

『少し手直ししてこれ出そうぜ。そのためにHTTレーベルはあるんだぜ?』

と言ってくれて、


唯先輩も

『そうだよ、あずにゃん。私達は大手のやり方とは違うんだから。
 あずにゃんが込めた感情が伝わる人にだけ売れば良いんだから。
 そう言う人にこそ届ける必要があるよ』

と言ってくれた。



162 名前:1:2010/09/11(土) 00:19:44.29 ID:ZgdhC+SyP

私は涙が出るほど嬉しくて、感動して…、だから会社を辞めた。

二人の言葉に単純に乗せられた訳では無いけれども、翌週には辞表を出してしまった。

自分は違う世界の人間なのだと態々アピールするために、

最終日はモッズスーツで出勤するのだから我ながら頭がおかしいと言わざるを得ないよね。

でも、モッズの有り方が本質的に逃避主義と言う事であるなら、私はさらに性質が悪いよ。

もはや、ノーマティブな世界との二重生活を捨てて、もう一つの世界で生きる事を決意したのだから。

私はHTTと共に生きることに決めた。

それが、私の生きる世界だと決めた。



164 名前:1:2010/09/11(土) 00:40:41.18 ID:ZgdhC+SyP

唯先輩の作業を手伝いながら、

地方のレコード屋、ライブハウス、クラブに売り込みを掛けたり。

自分の作曲にも時間を割く。

夜は、律先輩と飲み歩いたり、回す曜日の増えた純のパーティに皆で押しかけたり。



166 名前:1:2010/09/11(土) 00:54:09.96 ID:ZgdhC+SyP

開けてゆく空の中、家路の途中。

私は、選択したく無かった職業に就いて憂鬱な一日を過ごさなければいけない人たちとすれ違う。

ツィートツィート。

『皆さんおはようございます、私は今から就寝です』なんて呟く。



169 名前:1:2010/09/11(土) 01:06:15.22 ID:ZgdhC+SyP



最初の一ヶ月が過ぎた。

それでもう私はこの生活の虜となってしまっていた。

たしかに、純の言う『危機感』(キャリア云々て話ね)が

常に私はロックオンしていた事は認めるけどね。

にも関わらず、私は幸せだったんだ。

自分の好きな事で、自分の人生が構成されていく。

私は物心ついてからずっと、音楽に携わる職業に就く事で生きて行きたいと思っていた。

最近はちょっと(いや、ほんのちょっとだよ?)忘れていたけど。

ほら、夢が実現しているんだよって。

分かるでしょ?



170 名前:1:2010/09/11(土) 01:07:25.03 ID:ZgdhC+SyP



でも、問題が無い訳でも無い。

それは、ストレートな世界、つまりは一般社会と言う事だけど、
そことの断絶をパーマネントなものとして考えなくてはならないって事。

律先輩は私に経済的な保障を与えてくれていたから、その点は取り合えず問題無かったのだけど、
家族にこう言う生活に関する不安を抱かせてしまうことは避けられなかった。

私の場合はもはや

『若いうちに少し回り道をして見ました。
 でも、一般社会に着地します。それから結婚して、出産して…』

と言う類のものでも無いのだから、両親の心配ももっともで、
特に私の家は両親がこう言う生活に足を突っ込んだ事があるから(けど?)なお更だ。



171 名前:1:2010/09/11(土) 01:38:06.59 ID:ZgdhC+SyP

律「そこは大きな問題だよなー?」

唯「それでもやっぱり、雑誌とかそう言うメディアにサポートして貰えるならって、思うけど?」

律「『NHKに出てみたら親類が一気に増えました!』とかそう言う感じか?」

唯「もー、こっちは真面目に話してるんだからぁ」

律「つっても、それは唯の家族の問題だろ?
  雑誌に写真入りで出てれば憂ちゃんも何をしてるか安心出来るって話でさ」

唯「ぶー、違うよ。だって、メジャーでやってた時だって…」

律「それは、唯が顔会わせるたびに暗い顔して
  『つまんないつまんないつまんないなー』っていってたからだろ?」

梓「ああ、そう言えば、憂とメールした時結構ロウな感じでしたね」

唯「私のせい?!」



173 名前:1:2010/09/11(土) 02:33:09.05 ID:ZgdhC+SyP

律、梓「ははは」

律「でもメディアってのは自分達の都合の良いフレームで取り上げるからなー。
  そこら辺は大手レコード会社と一緒で」

唯「あー、ああ言う押し付けはもうごめんだよねー」

梓「律先輩は家族からの問題ってのは無いんですか?」

律「まあ、私の家はほら弟がいるしさ」

梓「ああ、なるほど…」

律「おい、なんだよ、その何となく分かりました的な顔は?」

梓「いえ、別に」

律「中野ぉ!」

唯「あはは」



174 名前:1:2010/09/11(土) 02:34:22.73 ID:ZgdhC+SyP



こう言う多少の問題は抱えていたものの、私の新たな生活は総じて幸福なものだった。




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